JP5050039B2 - 油圧クラッチ装置 - Google Patents
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Description
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、キャンセラープレートを備えた油圧クラッチ装置において、組付けの作業性を向上することを目的とする。
この構成によれば、キャンセラープレートの移動を規制する係止具を、クラッチピストンガイドの切り欠き部の内周溝に係合させて設け、係止具が内周溝によって外周側から支持されているため、クラッチピストンガイドが回転した際の遠心力によって係止具が外れることがない。このため、係止具の緊縛力を小さくでき、油圧クラッチ装置の組付けの作業性を向上できる。また、キャンセラープレートの凸部の基底円が、クラッチピストンガイドがキャンセラープレートに係合する部分の外径より大きいため、基底円とクラッチピストンガイドとの間に空間ができ、油圧キャンセラー室内の作動油がこの空間を通過することができる。このため、油圧キャンセラー室の作動油を通過させるための油路を特別に設ける必要がなく、構造を簡単にできる。
この構成によれば、係止具が線状のスプリングであるため、係止具を撓ませて容易に組み付けできると共に、軽量化を図ることができる。
また、前記キャンセラープレート(93)の内周面に形成された係合穴(124)に差し込まれる係合フック部(137)を前記係止具(135)に設けても良い。
この場合、係止具の係合フック部をキャンセラープレートの係合穴に差し込むことで、係止具の位置を規制でき、簡単な構造で係止具の回り止めを設けることができる。
この場合、キャンセラープレートの凸部が係合しない空所を設けたため、この空所を油圧キャンセラー室の作動油が通ることができ、油圧キャンセラー室の作動油を通過させ易い。
また、係止具が線状のスプリングであるため、係止具を撓ませて容易に組み付けできると共に、軽量化を図ることができる。
また、係止具の係合フック部をキャンセラープレートの係合穴に差し込むことで、係止具の位置を規制でき、簡単な構造で係止具の回り止めを設けることができる。
さらにまた、キャンセラープレートの凸部が係合しない空所を設けたため、この空所を油圧キャンセラー室の作動油が通ることができ、油圧キャンセラー室の作動油を通過させ易い。
図1は本発明の実施の形態に係るパワーユニットの一部切欠き背面図である。
エンジンEのエンジン本体11は、自動二輪車の走行方向前方を向いた状態で左側に配置される左エンジンブロック12Lと、走行方向前方を向いた状態で右側に配置される右エンジンブロック12Rと、左及び右エンジンブロック12L,12Rの両外端にそれぞれ結合される左及び右シリンダヘッド13L,13Rと、左及び右エンジンブロック12L,12Rに結合されるリヤケース14とを備える。リヤケース14は自動二輪車の走行方向に沿うクランクケース21の後部に結合される。
クランクケース21内の下部にはオイルポンプ144が収容されており、オイルポンプ144は、クランクシャフト22の回転に連動して駆動される。オイルポンプ144から吐出されるオイル(作動油)は,クラッチカバー50に設けられたオイルフィルタ139を経てクラッチアクチュエータ132側に導かれる。クラッチアクチュエータ132は、互いに独立して動作する第1電磁制御弁132A及び第2電磁制御弁132Bを有している。
図2に示すように、変速機Tは、歯車変速機構35と、歯車変速機構35及びクランクシャフト22(図1参照)間に設けられるクラッチ機構Cとを備えて構成され、クラッチ機構Cは、第1及び第2油圧クラッチ装置36,37を有している。第1及び第2油圧クラッチ装置36,37は、クランクシャフト22の回転動力を後輪(図示略)に伝達する動力伝達経路の途中に介設される。
円筒状に形成された第1メインシャフト38は、その一端が第2メインシャフト39に軸支されるようにして前部側壁21aと後部側壁21bとの中間部に位置し、他端が後部側壁21bを貫通して延び、後部側壁21bにおいてボールベアリング41を介して回転自在に支持されている。
第2メインシャフト39は、第1メインシャフト38よりも小径に形成されて円筒状の第1メインシャフト38を貫通し、第1メインシャフト38に対して相対回転自在であり、第1メインシャフト38に対する軸方向相対位置が一定となるように設けられている。第1メインシャフト38と第2メインシャフト39との間には複数のニードルベアリング42が介装されている。また、第2メインシャフト39の一端部は、クランクケース21の前部側壁21aにボールベアリング43を介して回転自在に支持されている。
リヤケース14には、クラッチ機構Cを外側から覆うクラッチカバー50が設けられ、クラッチカバー50内に形成されるクラッチ室51には、第1及び第2油圧クラッチ装置36,37が収容される。
また、第2速用駆動歯車56と第5速用駆動歯車60との間において第2メインシャフト39には、第5速用駆動歯車60との係合及び係合解除を切り替え可能とした第2シフタ65が相対回転不能かつ軸方向移動可能に支持されている。この第2シフタ65には、第3速用駆動歯車58が一体に設けられる。
第3速用被動歯車59と第1速用被動歯車63との間においてカウンタシャフト40には、第3速用被動歯車59に係合する状態、第1速用被動歯車63に係合する状態、ならびに第3速用被動歯車59及び第1速用被動歯車63のいずれにも係合しない状態を切り替え可能とした第4シフタ67が相対回転不能かつ軸方向移動可能に支持されている。この第4シフタ67には、第5速用被動歯車61が一体に設けられる。
また、第1シフタ64を第6及び第2速用駆動歯車56に係合しない状態で第3シフタ66を第4速用被動歯車55に係合することによって第4速用歯車列G4が確立し、第4シフタ67を第1及び第3速用被動歯車59に係合しない状態で第2シフタ65を第5速用駆動歯車60に係合することによって第5速用歯車列G5が確立し、第1シフタ64を第6速用駆動歯車52に係合することによって第6速用歯車列G6が確立する。
クラッチ室51内において、第2メインシャフト39の他端は第1メインシャフト38の他端から突出して設けられ、第2油圧クラッチ装置37は第2メインシャフト39の他端側に設けられ、第1油圧クラッチ装置36は第1メインシャフト38の他端側に設けられている。
そして、クランクシャフト22からの動力は、第1及び第2油圧クラッチ装置36,37に共通に設けられたクラッチアウタ72に、一次減速装置73及びダンパスプリング74を介して入力される。一次減速装置73は、クランクシャフト22に設けられる駆動歯車(図示略)と、この駆動歯車に噛合する被動歯車76とを有し、被動歯車76は、クラッチアウタ72と一体に連結される。
以下、第1油圧クラッチ装置36について詳細に説明する。また、第2油圧クラッチ装置37は、第1油圧クラッチ装置36と略同一構造で構成され、第1油圧クラッチ装置36に対して対称な位置関係で第2メインシャフト39に設けられており、第2油圧クラッチ装置37についての詳細な説明は省略する。
クラッチ作動機構82は、有底円筒状のクラッチアウタ72と、クラッチアウタ72内に収容される第1クラッチインナ84と、クラッチアウタ72に相対回転不能に係合される複数枚の駆動摩擦板85(第1の摩擦板)と、第1クラッチインナ84に相対回転不能に係合される複数枚の被動摩擦板86(第2の摩擦板)と、駆動及び被動摩擦板85,86に対向して第1クラッチインナ84に設けられる受圧板部84Dと、駆動及び被動摩擦板85,86を受圧板部84Dとの間に挟む加圧板部91Dとを備えて構成される。
ピストンガイド92は、ピストンガイド部92Aの内周面がボス部84Aの外周面に嵌合に嵌合して設けられ、ボス部84Aの外周面に係合する止め輪155によって軸方向の移動を規制されている。
クラッチピストン91は、第1クラッチインナ84とピストンガイド92との間に設けられ、ピストン部91Bと端壁部92Bとで囲われた空間は、クラッチの作動油が供給される制御油圧室96となっている。
また、ピストンガイド92のピストンガイド部92Aの先端には、組立て時において、キャンセラープレート93の移動を規制してピストンガイド部92Aとキャンセラープレート93との係合状態を保つクリップ135(係止具)が設けられている。
また、第2クラッチインナ184には、第2油圧クラッチ装置37の制御油圧室96に作動油を供給する油路150、及び、油導入部105を経て第2油圧クラッチ装置37の油圧キャンセラー室97に作動油を供給する油路151が形成されている。
第1仕切り部材205内の油路は、第2オイル通路204から径方向外側に貫通する油路211及び、第1メインシャフト38を径方向外側に貫通する油路212を介して第1クラッチインナ84の油路107に繋がっている。また、第2仕切り部材206内の油路は、第2オイル通路204から径方向外側に貫通する油路213を介して第2クラッチインナ184の油路150に繋がっている。
また、第3油室203は第2クラッチインナ184の油路151に連通しており、第3油室203を介して第2油圧クラッチ装置37の油圧キャンセラー室97に作動油が供給される。
図4、図5及び図6に示すように、ピストンガイド92は支持板部84Bの側に延びるピストンガイド部92Aを有し、ピストンガイド部92Aの平坦な先端部120には複数の突起121が立設されている。突起121は、円筒状のピストンガイド部92Aの壁部の一部をさらに軸方向に延出させるようにして形成されている。突起121は、互いに所定の距離をあけて隣接して配置された2つの突起121を一対の突起部121Aとして、3箇所に計6個配置されている。また、突起部121Aの外周面121Bは、ガイド面92Cよりも内周側に窪んで小径に形成されている。
また、第2の切り欠き部122Bには、先端部120から軸方向に突出した突出部125が複数形成されている。突出部125は、各突起部121Aの間に2個が配置され、互いに間隔をあけて計6箇所に形成されている。また、各突出部125の先端は、係合溝123よりも下方、すなわち先端部120と係合溝123との間に位置している。
図4及び図7に示すように、キャンセラープレート93は、リング状に形成されたプレート部93Aを有し、プレート部93Aの中央には、ピストンガイド部92Aが挿通される孔131が形成されている。プレート部93Aにおいて孔131の縁部近傍には、油圧キャンセラー室97の側に一段窪んだ段部130が設けられ、段部130は第1クラッチインナ84との間に油導入部105を形成する。また、ばね支持穴100は、プレート部93Aに円環状に並んで複数形成されている。外壁部93Bの外周面には、オイルシール98Aを収容するシール用溝部140が形成されている。キャンセラープレート93は、第1クラッチインナ84に組み付けられた状態では、戻しばね94によって押し付けられて支持板部84Bに支持されている。
クリップ135は、金属製の断面円形の線材をリング状に成形した線状のスプリングであり、クリップ135の一端135Aと他端135Bとの間には間隔が設定され、合口136が形成されている。合口136が形成された範囲は、平面視においてクリップ135を円形として見た場合、クリップ135が取り付けられていない状態において90°よりも大きな角度範囲に亘っている。
また、他端135Bでは、線材がリング状のクリップ135の径方向の外側に向けて折り曲げられており、フック状の係合フック部137が形成されている。
図4及び図9に示すように、キャンセラープレート93は、孔131がピストンガイド部92Aの各突起121に挿通されて組み付けられる。この状態では、キャンセラープレート93の3箇所の凸部133がそれぞれピストンガイド部92Aの第1の切り欠き部122に外周側から係合しており、各凸部133が、対になる各突起121の間、すなわち第1の切り欠き部122Aにそれぞれ位置することで、キャンセラープレート93はピストンガイド92に対して相対回転不能に設けられている。ただし、第1の切り欠き部122と各凸部133との間には、組み付けのためのクリアランスが設けられており、このクリアランスの分だけキャンセラープレート93は相対回転する。
また、クリップ135は、係合フック部137が突起121の係合穴124に内周側から係合することで位置決めされており、ピストンガイド92に対して相対回転不能となっている。このため、ピストンガイド92の回転に伴って係合溝123内でクリップ135が回転することを防止できる。さらに、クリップ135は、縮径された状態で径方向外側に広がる付勢力(緊縛力)を伴って係合溝123に確実に嵌め込まれており、合口136の開口範囲は90°以下になっている。
まず、単品のクラッチピストン91を用意し、円筒部91Aの内周面にピストンガイド92のピストンガイド部92Aを嵌合させる。次いで、クラッチピストン91の各ばね座99に戻しばね94をセットした後、キャンセラープレート93をピストンガイド部92Aの突起121に係合させ、キャンセラープレート93で戻しばね94を押圧し、戻しばね94が圧縮された状態でクリップ135を係合溝123に係合させる。これにより、クラッチピストン91、ピストンガイド92、キャンセラープレート93、及び、戻しばね94が一体に組み付けられた小組体250が形成される。この際、クリップ135の緊縛力が小さく設定されているため、クリップ135を容易に変形させて係合溝123に係合させることができる。すなわち、クリップ135は係合溝123によって外周側から支持され、遠心力に対抗するために緊縛力を大きくする必要がないため、クリップ135の緊縛力は、例えば、工具を用いずとも組み付け作業者の手指で容易に縮径可能な程度の小さな緊縛力に設定される。
その後、ピストンガイド92のピストンガイド部92Aを第1クラッチインナ84のボス部84Aの外周面に嵌合させ、止め輪155をボス部84Aに取り付けることで、小組体250の第1クラッチインナ84への組付けが完了する。このように、戻しばね94が予め圧縮された小組体250を第1クラッチインナ84に取り付けるため、小組体250を第1クラッチインナ84に組付ける際に戻しばね94を圧縮させる必要がなく、組付け作業が容易である。
また、クリップ135の係合フック部137をキャンセラープレート93の係合穴124に差し込むことで、クリップ135の位置を規制でき、簡単な構造でクリップ135の回り止めを設けることができる。
上記実施の形態では、受圧板部84Dは第1クラッチインナ84に設けられるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、受圧板部をクラッチアウタ72側に設けて、この受圧板部と加圧板部91Dとの間で駆動及び被動摩擦板85,86を狭圧しても良い。また、その他の細部構成についても任意に変更可能であることは勿論である。
37 第2油圧クラッチ装置(油圧クラッチ装置)
72 クラッチアウタ
84 第1クラッチインナ(クラッチインナ)
84D 受圧板部
85 駆動摩擦板(第1の摩擦板)
86 被動摩擦板(第2の摩擦板)
91 クラッチピストン
91D 加圧板部
92 ピストンガイド(クラッチピストンガイド)
93 キャンセラープレート
96 制御油圧室
97 油圧キャンセラー室
122 切り欠き部
123 係合溝(内周溝)
124 係合穴
131A 内周面(内周端)
133 凸部
135 クリップ(係止具)
137 係合フック部
184 第2クラッチインナ(クラッチインナ)
Claims (4)
- クラッチアウタ(72)と、該クラッチアウタ(72)で同軸に囲繞されるクラッチインナ(84,184)と、前記クラッチアウタ(72)に相対回転不能に係合される複数枚の第1の摩擦板(85)と、第1の摩擦板(85)に交互に重なって配置されると共に前記クラッチインナ(84,184)に相対回転不能に係合される複数枚の第2の摩擦板(86)と、相互に重なって配置される第1及び第2の摩擦板(85,86)に対向して前記クラッチインナ(84,184)または前記クラッチアウタ(72)の一方に設けられる受圧板部(84D)と、加圧板部(91D)に連設され制御油圧室(96)の油圧増大に応じて第1及び第2の摩擦板(85,86)を加圧する側に移動するクラッチピストン(91)と、前記クラッチピストン(91)との間に前記制御油圧室(96)を形成するクラッチピストンガイド(92)と、前記クラッチピストン(91)の前記制御油圧室(96)と反対側に油圧キャンセラー室(97)を形成するキャンセラープレート(93)とを設けた油圧クラッチ装置において、前記キャンセラープレート(93)の内周端(131A)に設けた凸部(133)と、前記クラッチピストンガイド(92)の端に設けられ前記キャンセラープレート(93)に設けた前記凸部(133)と係合する切り欠き部(122)とを係合して組付けると共に、前記切り欠き部(122)の内周溝(123)に係合して、前記キャンセラープレート(93)の前記クラッチピストンガイド(92)に対する軸方向の移動を規制する係止具(135)を設け、
前記キャンセラープレート(93)に設けた前記凸部(133)の基底円は、前記クラッチピストンガイド(92)が前記キャンセラープレート(93)に係合する部分の外径より大きく設定されていること、を特徴とする油圧クラッチ装置。 - 前記係止具(135)は、線状のスプリングであること、を特徴とする請求項1記載の油圧クラッチ装置。
- 前記キャンセラープレート(93)の内周面に形成された係合穴(124)に差し込まれる係合フック部(137)を前記係止具(135)に設けたこと、を特徴とする請求項2記載の油圧クラッチ装置。
- 前記クラッチピストンガイド(92)の前記切り欠き部(122)に、前記キャンセラープレート(93)の前記凸部(133)が係合しない空所を設けたこと、を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の油圧クラッチ装置。
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