JP2008057618A - 歯車変速機 - Google Patents
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Abstract
【課題】動力源との間の動力伝達・遮断を択一的に切換可能とした一対のメインシャフトのいずれか一方に動力源からの動力が伝達されている状態での変速段の切換えにあたって両メインシャフトのいずれか他方およびカウンタシャフト間の歯車列を確立することを可能とした歯車変速機において、部品点数を低減するとともに必要スペースを小さくした構造で、予備変速時の騒音の発生を防止する。
【解決手段】変速段の切換え時に両メインシャフト15,16のうち動力源からの動力伝達が遮断されているメインシャフトに減速または加速回転動力を付与する単一のシンクロ手段116を備える。
【選択図】 図2
【解決手段】変速段の切換え時に両メインシャフト15,16のうち動力源からの動力伝達が遮断されているメインシャフトに減速または加速回転動力を付与する単一のシンクロ手段116を備える。
【選択図】 図2
Description
本発明は、動力源との間の動力伝達・遮断を択一的に切換可能とした一対のメインシャフトと、カウンタシャフトと、選択的な確立を可能として前記両メインシャフトおよびカウンタシャフト間に設けられる複数変速段の歯車列とを備え、前記両メインシャフトのいずれか一方に前記動力源からの動力が伝達されている状態での変速段の切換えにあたって両メインシャフトのいずれか他方および前記カウンタシャフト間の歯車列を確立することを可能とした歯車変速機に関する。
このような歯車変速機は、たとえば特許文献1で既に知られている。
特開2005−61626号公報
ところで、変速段の切換えにあたって、動力源からの動力伝達が遮断されているメインシャフトおよびカウンタシャフト間の歯車列を予備変速のために確立する際に、確立すべき歯車列の一部を構成してメインシャフトまたはカウンタシャフトに回転自在に支承されるアイドル歯車と、メインシャフトまたはカウンタシャフトに相対回転不能かつスライド可能に支承されるシフタとの回転速度差が大きいと、変速動作がスムーズに行えないばかりか、前記アイドル歯車に前記シフタが係合する際の係合音が大きくなってしまう。そこで上記特許文献1で開示されたものでは、メインシャフトまたはカウンタシャフトと、アイドル歯車を結合するにあたってシンクロ機構を用いて係合音の発生を抑えているが、各アイドル歯車毎にシンクロ手段が必要であり、部品点数が多くなるとともに、歯車変速機の必要スペースが大きくなってしまう。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、部品点数を低減するとともに必要スペースを小さくした構造で、予備変速時の騒音の発生を防止し得るようにした歯車変速機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、動力源との間の動力伝達・遮断を択一的に切換可能とした一対のメインシャフトと、カウンタシャフトと、選択的な確立を可能として前記両メインシャフトおよびカウンタシャフト間に設けられる複数変速段の歯車列とを備え、前記両メインシャフトのいずれか一方に前記動力源からの動力が伝達されている状態での変速段の切換えにあたって両メインシャフトのいずれか他方および前記カウンタシャフト間の歯車列を確立することを可能とした歯車変速機において、前記変速段の切換え時に前記両メインシャフトのうち動力源からの動力伝達が遮断されているメインシャフトに減速または加速回転動力を付与する単一のシンクロ手段を備えることを特徴とする。
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記シンクロ手段が、両メインシャフトの一方に連動する連動回転軸と、両メインシャフトの他方に連結されるとともに当該他方のメインシャフトから伝達される回転動力を増速する第1歯車伝動機構ならびに前記回転動力を減速する第2歯車伝動機構と、前記連動回転軸の第1および第2歯車伝動機構への択一的な連結および連結解除を切換える連結切換え機構とを備えることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成に加えて、一方のメインシャフトを他方のメインシャフトに同軸に貫通せしめて相対回転可能に配置される前記両メインシャフトの一端部および前記動力源間に、断・接を択一的に切換える一対のクラッチが設けられ、それらのクラッチと複数変速段の前記歯車列との間に配置される前記第1および第2歯車伝動機構が前記他方のメインシャフトに連結され、前記両メインシャフトと平行な軸線を有する前記連動回転軸が、前記複数変速段の歯車列を前記第1および第2歯車伝動機構との間に挟む位置で前記一方のメインシャフトの他端部に連動、連結されることを特徴とする。
さらに請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成に加えて、前記シンクロ手段を駆動するアクチュエータが、前記両クラッチの側方に配置されることを特徴とする。
なお実施例のエンジンEが本発明の動力源に対応する。
請求項1記載の発明によれば、変速段の切換え時に両メインシャフトのうち動力源からの動力伝達が遮断された状態にあるメインシャフトおよびカウンタシャフト間の歯車列を確立するにあたっては、動力源からの動力伝達が遮断されているメインシャフトの回転速度が、シンクロ手段によって減速または加速されるので、前記歯車列の確立時に係合する部材同士の回転速度差を小さく抑えて係合に伴う騒音の発生を抑えることができる。しかもシンクロ手段は全ての歯車列に共通にして単一のものであり、部品点数を低減するとともに必要スペースを小さくすることができる。
また請求項2記載の発明によれば、シンクロ手段が両メインシャフト間に設けられるものであり、シンクロ手段の小型化による変速装置の小型化を図ることができる。
請求項3記載の発明によれば、複数変速段の歯車列間にシンクロ手段が配置されることがなく、両メインシャフトおよびカウンタシャフトの軸線に沿う方向で複数変速段の歯車列をコンパクトに配置し、両メインシャフトおよびカウンタシャフトの軸方向長さをより短くすることができる。
さらに請求項4記載の発明によれば、両クラッチの側方の空きスペースを利用してアクチュエータを配置して、シンクロ手段のうち前記両クラッチと複数変速段の前記歯車列との間に配置される第1および第2歯車伝動機構にアクチュエータを近接させることができ、変速装置全体のコンパクト化を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
図1〜図10は本発明の一実施例を示すものであり、図1はパワーユニットの基本構成を簡略化して示す図、図2は変速装置の一部を示す縦断面図、図3は図2の右半部の拡大図、図4は図2の左半部の拡大図、図5は図2の5−5線矢視図、図6は図3の6−6線断面図、図7は第2速で走行中のシフトダウン時の第1および第2メインシャフトの回転速度の変化を示す図、図8は第2速で走行中のシフトダウン時にシンクロ手段が作動したときの動力伝達経路を示す図、図9は第2速で走行中のシフトアップ時の第1および第2メインシャフトの回転速度の変化を示す図、図10は第2速で走行中のシフトアップ時にシンクロ手段が作動したときの動力伝達経路を示す図である。
先ず図1において、たとえば自動二輪車に搭載されるパワーユニットPは、たとえば4気筒であるエンジンEと、該エンジンEの出力を変速して図示しない後輪に伝達するための変速装置Mとから成り、変速装置Mは、選択的に確立可能な複数変速段の歯車列たとえば第1〜第5速用歯車列G1〜G5を有する歯車変速機7と、前記エンジンEおよび歯車変速機7間に設けられるクラッチ装置8とを備える。
図2をさらに併せて参照して、前記エンジンEが備えるクランクシャフト9(図1参照)からの回転動力は、一次減速装置11およびダンパばね12…を介してクラッチ装置8に入力される。また前記クランクシャフト9から一次減速装置11およびダンパばね12…を介して伝達される動力の歯車変速機7への伝達および伝達遮断が前記クラッチ装置8で切換えられる。
エンジン本体10が備えるクランクケース14は、自動二輪車の進行方向前方を向いた状態で右側および左側に位置する右側壁14aおよび左側壁14bと、右および左側壁14a,14b間の中間部に配置される中間壁14cとを有しており、前記歯車減速機7は左側壁14bおよび中間壁14c間でクランクケース14内に形成される変速機収容室13に収容される。
歯車減速機7は、前記クランクシャフト9と平行な軸線を有する円筒状の第1メインシャフト15と、軸方向相対位置を一定としつつ相対回転を可能として第1メインシャフト15を同軸に貫通する第2メインシャフト16と、第1および第2メインシャフト15,16と平行な軸線を有するカウンタシャフト17とを備え、それらのシャフト15〜17はクランクケース14で回転自在に支承される。
第2メインシャフト16は、その一端部をクランクケース14の右側壁14aから外方に突出させるとともに他端部を左側壁14bから外方に突出させるようにしてクランクケース14の右側壁14a、中間壁14cおよび左側壁14bを回転自在に貫通する。また第1メインシャフト15に同軸にかつ相対回転不能に結合されて第2メインシャフト16を同軸に囲繞する伝動筒軸18がクランクケース14の右側壁14aに締結された支持リング26を回転自在に貫通し、この伝動筒軸18および前記支持リング26間にボールベアリング19が介装され、伝動筒軸18および第2メインシャフト16間にはニードルベアリング20…が介装され、左側壁14bおよび第2メインシャフト16間にボールベアリング21が介装される。第1メインシャフト15は、クランクケース14の中間壁14cを回転自在に貫通し、中間壁14cおよび第1メインシャフト15間にはボールベアリング22が介装され、第1および第2メインシャフト15,16間にはニードルベアリング23…が介装される。
カウンタシャフト17の一端部はクランクケース14の中間壁14cにボールベアリング24を介して回転自在に支承されており、カウンタシャフト17の他端部はクランクケース14の左側壁14bを回転自在に貫通し、左側壁14bおよびカウンタシャフト17間にはボールベアリング25が介装される。
図3を併せて参照して、クラッチ装置8は、前記一次減速装置11から伝達される動力の第1メインシャフト15への動力伝達および遮断を切換える多板式の第1油圧クラッチ28と、前記一次減速装置11から伝達される動力の第2メインシャフト16への動力伝達および遮断を切換える多板式の第2油圧クラッチ29とを備える。
一次減速装置11は、前記クランクシャフト9に設けられる駆動歯車30と、該駆動歯車30に噛合する被動歯車31とから成り、被動歯車31は、第1メインシャフト15を同軸に囲繞するとともに第1メインシャフト15に相対回転不能に結合される円筒状の第1ボス32にローラベアリング33を介して相対回転自在に支承される。
第1および第2クラッチ28,29は共通な入力部材34を備えており、この入力部材34は、第2メインシャフト16の軸線に沿う方向で一次減速装置11の外方側に隣接配置される環状板部34aと、一次減速装置11と反対側で前記環状板部34aの内周側に基端が直角にかつ一体に連設される円筒状の内筒部34bと、該内筒部34bを同軸に囲繞するようにして前記環状板部34aの外周側に基端が直角にかつ一体に連設される外筒部34cとから成る。この入力部材34における環状板部34aの周方向複数箇所には、前記内筒部34bおよび前記外筒部34cとは反対側に延びる連結ボス34d…が一体に設けられており、それらの連結ボス34d…は周方向に長く延びるようにして被動歯車31に設けられた長孔35…に挿通される。また入力部材34と反対側で被動歯車31に対向する保持板36が前記連結ボス34d…に当接しており、各連結ボス34d…を貫通するリベット37…で保持板36が連結ボス34d…の端面に結合される。しかも保持板36および被動歯車31間には、被動歯車31を前記入力部材34の環状板部34aに当接させるばね力を発揮する板ばね38が設けられる。
前記各長孔35…と周方向にずれた複数箇所で被動歯車31には周方向に長く延びる保持孔39…が設けられており、各保持孔39…には、被動歯車31と、前記入力部材34および保持板36との間に介在するようにしてダンパばね12が収容、保持される。
第1油圧クラッチ28は、上述の入力部材34の内筒部34bと、該内筒部34bを同軸に囲繞する第1円筒部40aを有するとともに前記第1ボス32に固着されることで第1メインシャフト15に相対回転不能に連結される第1出力部材40と、第1円筒部40aに相対回転不能に係合される複数枚の第1クラッチディスク41…と、入力部材34の前記内筒部34bに相対回転不能に係合されるとともに第1クラッチディスク41…と交互に重なって配置される複数枚の第1クラッチプレート42…と、交互に重なって配置される第1クラッチディスク41…および第1クラッチプレート42…に前記環状板部34a側から対向する環状の第1受圧板43と、交互に重なって配置される第1クラッチディスク41…および第1クラッチプレート42…に前記環状板部34aと反対側から対向する環状の第1押圧板部44aを有して入力部材34の開放端側に配置される第1クラッチピストン44と、第1押圧板部44aを第1受圧板43から離間せしめる側に付勢するばね力を発揮する第1クラッチスプリング45とを備える。
環状の第1押圧板部44aを外周に有する第1クラッチピストン44の内周部は、第1ボス32の外周に液密に摺接するものであり、また第1出力部材40は、前記第1ボス32に内周部が溶接されて第1クラッチピストン44に外方から対向する皿状の連結板部40bの外周に第1円筒部40aの一端が一体に連設されて成るものであり、第1クラッチピストン44における第1押圧板部44aの外周は前記連結板部40bの外周部内面に液密にかつ摺動可能に嵌合される。而して第1クラッチピストン44および第1出力部材40間には第1油圧室46が形成され、第1クラッチスプリング45は、第1油圧室46の容積を収縮せしめる側に第1クラッチピストン44を付勢するようにして、第1ボス32の外周に装着される第1リテーナ47および第1クラッチピストン44間に設けられる。また第1受圧板43の外周に第1押圧板部44aとは反対側から当接する止め輪48が、第1円筒部40aの開放端寄り内面に装着される。
このような第1油圧クラッチ28では、第1油圧室46の油圧増大に応じて第1押圧板部44aおよび第1受圧板43間に、交互に重なった第1クラッチディスク41…および第1クラッチプレート42…が挟圧されて摩擦係合し、入力部材34の内筒部34bから第1出力部材40に動力が伝達されるものであり、クランクシャフト9からの動力が第1ボス32から伝動筒軸18を介して第1メインシャフト15に伝達される。
第2油圧クラッチ29は、入力部材34の外筒部34cと、該外筒部34cの内方で第1油圧クラッチ28の第1円筒部40aを同軸に囲繞する第2円筒部50aを有して第2メインシャフト16に相対回転不能に連結される第2出力部材50と、前記外筒部34cに相対回転不能に係合される複数枚の第2クラッチディスク51…と、第2円筒部50aに相対回転不能に係合されるとともに第2クラッチディスク51…と交互に重なって配置される複数枚の第2クラッチプレート52…と、交互に重なって配置される第2クラッチディスク51…および第2クラッチプレート52…に前記環状板部34a側から対向する環状の第2受圧板53と、交互に重なって配置される第2クラッチディスク51…および第2クラッチプレート52…に前記環状板部34aと反対側から対向する環状の第2押圧板部54aを有する第2クラッチピストン54と、第2押圧板部54aを第2受圧板53から離間せしめる側に付勢するばね力を発揮する第2クラッチスプリング55とを備える。
第2メインシャフト16の一端部には、第2メインシャフト16を同軸に囲繞する円筒状の第2ボス59が相対回転不能に結合されており、第2出力部材50は、第1油圧クラッチ28における第1出力部材40の連結板部40bに外方から対向するとともに前記第2ボス59に内周部が溶接される皿状の連結板部50bの外周に第2円筒部50aの一端が一体に連設されて成るものである。また環状の第2押圧板部54aを外周に有して第2出力部材50の連結板部50bに外方から対向する第2クラッチピストン54の内周部は、第2ボス59の外周に液密に摺接し、第1油圧クラッチ28の第1クラッチピストン44よりも大径である第2クラッチピストン54が第1クラッチピストン44と軸方向に並ぶように配置される。
さらに第2クラッチピストン54における第2押圧板部54aの外周を液密にかつ摺動可能に嵌合せしめる第3円筒部60aを外周に有して皿状に形成されるとともに第2クラッチピストン54との間に第2油圧室56を形成するケース部材60の内周が、第2ボス59に液密に固着される。第2クラッチスプリング55は、第2油圧室56の容積を収縮せしめる側に第2クラッチピストン54を付勢するようにして、第2出力部材50の連結板部50bに装着された第2リテーナ57および第2クラッチピストン54間に設けられる。また第2受圧板53の外周に第2押圧板部54aとは反対側から当接する止め輪58が、第2円筒部50aの開放端寄り内面に装着される。
このような第2油圧クラッチ29では、第2油圧室56の油圧増大に応じて第2押圧板部54aおよび第2受圧板53間に、交互に重なった第2クラッチディスク51…および第2クラッチプレート52…が挟圧されて摩擦係合し、入力部材34の外筒部34cから第2出力部材50に動力が伝達されるものであり、クランクシャフト9からの動力が第2ボス59から第2メインシャフト16に伝達される。
而して第1および第2メインシャフト15,16の一端部は、クランクケース14における右側壁14aの外方でクラッチ装置8の第1および第2油圧クラッチ28,29にそれぞれ連結され、前記右側壁14aには、前記クラッチ装置8を覆うクラッチカバー61が締結される。
図4において、クランクケース14の左側壁14bはエンジンカバー63で覆われており、このエンジンカバー63には、端壁64を内端に有する通路孔65が第1および第2メインシャフト15,16と同軸に設けられており、該通路孔65の外端はキャップ66で液密に閉じられる。
前記通路孔65内には壁部材67が液密に嵌合されており、この壁部材67および端壁64間には第1作動油供給室68が形成され、前記壁部材67および前記キャップ66間には第2作動油供給室69が形成される。しかも第2メインシャフト16には、その一端側を閉じるとともに他端側を開放した有底の中心孔70が同軸に設けられており、一端部を中心孔70の閉塞端近傍に配置して中心孔70に同軸に挿入される内側供給筒71の他端部が前記端壁64を貫通して前記壁部材67に液密に保持され、内側供給筒71の一端部および中心孔70の内面間には環状のシール部材72(図3参照)が介装される。また内側供給筒71の一端部付近まで延びるようにして中心孔70に同軸に挿入されて内側供給筒71を同軸に囲繞する外側供給筒73の一端部および中心孔70の内面間には環状のシール部材74(図3参照)が介装され、外側供給筒73の他端部は、クランクケース14の左側壁14bを液密に貫通するとともに前記通路孔65の端壁64に液密に嵌入、保持される。
図3に注目して、第1油圧クラッチ28の第1油圧室46に通じる複数の第1連通路75…が、第1ボス32、伝動筒軸18および第2メインシャフト16にわたって放射状に設けられており、これらの第1連通路75…を第1作動油供給室68に通じさせる環状の第1油圧路76が、内側供給筒71および外側供給筒73間に形成される。また第2油圧クラッチ29の第2油圧室56に通じる複数の第2連通路77…が、第2ボス59に放射状に設けられており、これらの第2連通路77…を第2作動油供給室69に通じさせる第2油圧路78が、内側供給筒71内および中心孔70の内端部で形成される。
すなわち第2メインシャフト16内には、クラッチ装置8における第1および第2油圧クラッチ28,29の第1および第2クラッチピストン44,54に個別に油圧を作用せしめるための第1および第2油圧路76,78が、第2メインシャフト16の他端側から作動油を供給することを可能として同心状に形成されることになる。
第1および第2油圧路76,78への作動油の供給は油圧制御手段100で制御されるものでであり、この油圧制御手段100は、エンジンEのクラッチ装置8とは反対側の側面すなわちエンジンカバー63の外面に取付けられる。
図5を併せて参照して、前記油圧制御手段100は、第1油圧路76すなわち第1作動油供給室68への作動油の供給を制御する第1ソレノイド弁101と、第2油圧路78すなわち第2作動油供給室69への作動油の供給を制御する第2ソレノイド弁102とを備える。第1および第2ソレノイド弁101,102は共通のバルブボディ103を有するものであり、該バルブボディ103が複数のボルト104…で支持板105に締結される。すなわち第1および第2ソレノイド弁101,102は共通の支持板105で支持されるものであり、この支持板105が、前記キャップ66よりも上方位置で前記エンジンカバー63の外面に複数のボルト106,106…によって結合される。
ところで、油圧制御手段100の第1ソレノイド弁101および第1作動油供給室68間は第1連絡油路107で結ばれ、第2ソレノイド弁102および第2作動供給室69間は第2連絡油路108で結ばれるのであるが、第1および第2連絡油路107,108の少なくとも一方、この実施例では第1連絡油路107の一部が、前記エンジンカバー63および前記支持板105の結合面間に形成される。すなわちエンジンカバー63の外面には、図2で示すように、前記支持板105との間に第1連絡油路107の一部を構成する溝109が設けられる。また第2連絡油路108の一部は、前記支持板105に一端が連結されて第2ソレノイド弁102に接続されるとともに他端が第2作動油供給室69の近傍でエンジンカバー63に連結される接続管路110によって形成される。
前記油圧制御手段100の下方でエンジンカバー63にはオイルフィルタ112が取付けられており、前記キャップ66に近接した下方で4エンジンカバー63には歯車変速機7における第1〜第5速用歯車列G1〜G5の確立状態を切換えるための動力を発揮するシフト制御用モータ113が取付けられる。さらにエンジンカバー63からは、前記歯車変速機7で変速された動力で回転駆動される出力軸111が支持されており、この出力軸11は、前記油圧制御手段100の側方で前記エンジンカバー63から突出される。
図4に注目して、歯車変速機7の第2および第4速用歯車列G2,G4は第1メインシャフト15およびカウンタシャフト17間に設けられ、第1、第3および第5速用歯車列G1,G3,G5は第2メインシャフト16およびカウンタシャフト17間に設けられる。またクランクケース14の左側壁14bから突出した前記カウンタシャフト17の他端部から出力される動力は、ダンパばね81および二次減速装置82を介して前記出力軸111に伝達される。
第2速用歯車列G2は、第1メインシャフト15に一体に設けられる第2速用駆動歯車83と、前記カウンタシャフト17に相対回転自在に支承されて第2速用駆動歯車83に噛合する第2速用被動アイドル歯車84とから成り、第4速用歯車列G4は、第1メインシャフト15に固定される第4速用駆動歯車85と、前記カウンタシャフト17に相対回転自在に支承されて第4速用駆動歯車85に噛合する第4速用被動アイドル歯車86とから成る。
また第2および第4速用被動アイドル歯車84,86間でカウンタシャフト17には、第2および第4速用被動アイドル歯車84,86のいずれかに係合する状態ならびに第2および第4速用被動アイドル歯車84,86のいずれにも係合しない状態を切換え可能として第1シフタ87がスプライン結合されており、第1シフタ87の軸方向移動により、第2および第4速用被動アイドル歯車84,86をカウンタシャフト17に対して自由に回転させる状態(ニュートラル状態)と、第2および第4速用被動アイドル歯車84,86のいずれかをカウンタシャフト17に相対回転不能に結合して第2速用歯車列G2および第4速用歯車列G4のいずれかを確立する状態とを切換可能である。
第1速用歯車列G1は、第2メインシャフト16に一体に設けられる第1速用駆動歯車88と、前記カウンタシャフト17に相対回転自在に支承されて第1速用駆動歯車88に噛合する第1速用被動アイドル歯車89とから成り、第3速用歯車列G3は、第2メインシャフト16に軸方向のスライドを可能としつつ相対回転不能にスプライン結合される第3速用駆動歯車90と、前記カウンタシャフト17に相対回転自在に支承されて第3速用駆動歯車90に噛合する第3速用被動アイドル歯車91とから成り、第5速用歯車列G5は、第2メインシャフト16に相対回転自在に支承される第5速用駆動アイドル歯車92と、カウンタシャフト17に軸方向のスライドを可能としつつ相対回転不能に支承されて第5速用駆動アイドル歯車92に噛合する第5速用被動歯車93とから成る。
また第3速用駆動歯車90は、第2メインシャフト16に相対回転自在に支承されている第5速用駆動アイドル歯車92との係合および係合解除を切換え可能として第2メインシャフト16にスプライン結合された第2シフタ94に一体に設けられ、第5速用被動歯車93は、カウンタシャフト17にそれぞれ相対回転自在に支承されている第1および第3速用被動アイドル歯車89,91のいずれかに係合する状態ならびに第1および第3速用被動アイドル歯車89,91のいずれにも係合しない状態を切換え可能としてカウンタシャフト17にスプライン結合された第3シフタ95に一体に設けられている。
而して第2および第3シフタ94,95の軸方向移動によって、第5速用駆動アイドル歯車92を第2メインシャフト16に対して自由に回転させるとともに第1および第3速用被動アイドル歯車89,91をカウンタシャフト17に対して自由に回転させる状態(ニュートラル状態)と、第1速用被動アイドル歯車89をカウンタシャフト17に相対回転不能に結合して第1速用歯車列G1を確立する状態と、第3速用駆動歯車90を第2メインシャフト16に相対回転不能に結合するとともに第3速用被動アイドル歯車91をカウンタシャフト17に相対回転不能に結合して第3速用歯車列G3を確立する状態と、第5速用駆動アイドル歯車92を第2メインシャフト16に相対回転不能に結合して第5速用歯車列G5を確立する状態とを切換可能である。
第1、第2および第3シフタ87,94,95は、第1、第2および第3シフトフォーク96,97,98で回転自在に保持されており、前記シフト制御用モータ113の作動に応じたシフトドラム(図示せず)の回動によって第1〜第3シフトフォーク96〜98および前記各シフタ87,94,95を軸方向にスライド作動せしめることにより、第1〜第5速用歯車列G1〜G5が選択的に確立することになる。
ところで、クラッチ装置8の第1および第2油圧クラッチ28,29の断・接は択一的に切換えられるものであり、歯車変速機7における第1および第2メインシャフト15,16のいずれか一方にエンジンEからの動力が伝達されている状態での変速段の切換えにあたっては、予備変速のために第1および第2メインシャフト15,16のいずれか他方およびカウンタシャフト17間の歯車列の1つを確立するものであり、たとえば第1油圧クラッチ28を接続状態として第1メインシャフト15にエンジンEからの動力が伝達されている状態で第2速用歯車列G2を確立した第2速での走行時に、第1速にシフトダウンする前には動力遮断状態にある第2油圧クラッチ29に連なる第2メインシャフト16およびカウンタシャフト17間の第1速用歯車列G1を確立すべく第3シフタ93が第1速用被動アイドル歯車89に係合する側にスライド作動し、第3速にシフトアップする前には第2メインシャフト16およびカウンタシャフト17間の第3速用歯車列G3を確立すべく第3シフタ93が第3速用被動アイドル歯車91に係合する側にスライド作動する。
このような変速段の切換え時に予備変速のために確立すべき歯車列の一部を構成して第2メインシャフト16またはカウンタシャフト17に回転自在に支承されるアイドル歯車と、第2メインシャフトまたはカウンタシャフト17に相対回転回転不能かつスライド可能に支承されるシフタとの回転速度差が大きいと、前記アイドル歯車に前記シフタが係合する際の係合音が大きくなってしまう。そこで第1および第2メインシャフト15,16のうちエンジンEからの動力伝達が遮断されているメインシャフトに減速または加速回転動力を付与するための単一のシンクロ手段116が設けられる。
前記シンクロ手段116は、第1および第2メインシャフト15,16の一方、この実施例では第2メインシャフト16に連動する連動回転軸117と、第1および第2メインシャフトの他方すなわちこの実施例では第1メインシャフト15に連結されるとともに第1メインシャフト15から伝達される回転動力を増速する第1歯車伝動機構118ならびに前記回転動力を減速する第2歯車伝動機構119と、連動回転軸117の第1および第2歯車伝動機構118,119への択一的な連結および連結解除を切換える切換え機構120とを備える。
前記連動回転軸117は、図2〜図6では図面の構成上第1および第2メインシャフト15,16の上方に描かれているが、第1および第2メインシャフト15,16と平行な軸線を有して両メインシャフト15,16の下方に配置される。この連動回転軸117の一端は、支持部材125にボールベアリング121を介して回転自在に支承され、連動回転軸117の他端はクランクケース14の左側壁14bにボールベアリング122を介して回転自在に支承される。而して前記支持部材125は、クランクケース14の右側壁14aに締結されて伝動筒軸18を支承している支持リング26に締結される。
第1および第2歯車伝動機構118,199は、第1および第2油圧クラッチ28,29を有するクラッチ装置8と、第1〜第5速用歯車列G1〜G5との間に配置されて、第1メインシャフト15に連結されるものであり、第1メインシャフト15に相対回転不能に結合されている伝動筒軸18の前記クラッチ装置8とは反対側の端部寄りに一体に設けられた第1大径歯車123と、第1大径歯車123に噛合する第1小径歯車124とで第1歯車伝動機構118が構成され、前記伝動筒軸18のクラッチ装置8とは反対側の端部に一体に設けられた第2小径歯車125と、第2小径歯車125に噛合する第2大径歯車126とで第2歯車伝動機構119が構成される。
而して第1および第2大径歯車123,126は同一径に形成され、第1および第2小径歯車124,125は同一径に形成され、第1および第2大径歯車123,126は第1および第2小径歯車124,125よりも大径である。
第1小径歯車124および第2大径歯車126は、連動回転軸117がその一端側に同軸にかつ一体に有する大径部117aに相対回転不能に支持されるものであり、第1小径歯車124を前記大径部117aに相対回転不能に連結する第1の状態、第2大径歯車126を前記大径部117aに相対回転不能に連結する第2の状態、ならび第1小径歯車124および第2大径歯車126のいずれをも前記大径部117aに連結しない第3の状態が、切換え機構120で切換えられる。
前記切換え機構120は、従来周知のシンクロメッシュ機構として構成されており、詳細な説明は省略するが、スリーブ127を前記大径部117aの軸方向にスライドさせることにより、前記第1〜第3の状態が切換えられる。
また前記連動回転軸117は、歯車変速機8における第1〜第5速用歯車列G1〜G5を第1および第2歯車伝動機構118,119との間に挟む位置で、第2メインシャフト16の他端部に連動、連結される。すなわち連動回転軸117の他端部に設けられた歯車128が、クランクケース14の左側壁14bおよび第1速用駆動歯車88間で第2メインシャフト16に固定された歯車129に噛合し、両歯車128,129は同一径に形成される。
図6を併せて参照して、前記切換え機構120のスリーブ127は、アクチュエータ130で駆動されるものであり、このアクチュエータ130は、第1および第2油圧クラッチ128,129を有するクラッチ装置8の側方に配置され、油圧シリンダ131と、該油圧シリンダ131の作動を制御する一対の電磁切換弁132,133とを備える。
前記油圧シリンダ131は、シリンダボディ134にピストン135が摺動可能に嵌合されて成り、前記切換え機構120およびクラッチ装置8間で切換え機構120の下方に配置される。しかも前記シリンダボディ134内には、前記ピストン135の両端を臨ませる第1および第2制御油圧室137,138が形成されており、第1および第2制御油圧室137,138にはピストン135を中立位置側に付勢するばね139,140が収納される。
而して第1制御油圧室137の油圧が増大するとともに第2制御油圧室138の油圧が減少すると、ピストン135が第2制御油圧室138の容積を減少する側に移動し、第1歯車伝動機構118を連動回転軸117に相対回転不能に連結する側に前記スリーブ127を作動せしめるようにピストンロッド141およびフォーク142が作動する。また第2制御油圧室138の油圧が増大するとともに第1制御油圧室137の油圧が減少すると、ピストン135が第1制御油圧室137の容積を減少する側に移動し、第2歯車伝動機構119を連動回転軸117に相対回転不能に連結する側に前記スリーブ127を作動せしめるようにピストンロッド141およびフォーク142が作動する。
第1および第2電磁切換弁132,133は前記クラッチ装置8の下方に配置されるものであり、オイルパン145に取付けられる。なお図2および図3においては、図面の構成上、オイルパン145がクランクケース14よりも上方に位置するように描かれているが、オイルパン145は図6で示すようにクランクケース14の下部に結合される。
第1電磁切換弁132は、クランクケース14に設けられた作動油供給路146に接続管147を介して接続されるようにしてオイルパン145に設けられた油路148を、前記第1制御油圧室137に通じる供給路149に連通する状態、ならびにクランクケース14内に開放するようにしてオイルパン145に設けられた解放路150に前記供給路149を連通する状態を択一的に切換えるようにして、第1制御油圧室137の油圧を増減制御するものであり、供給路149は、オイルパン145と、該オイルパン145に締結される蓋板151との間に形成される。
また第2電磁切換年133は、前記オイルパン145の油路148を第2制御油圧室138に連通させる状態、ならびに第2制御油圧室138の油圧をクランクケース14内に解放する状態を択一的に切換えて、第2制御油圧室138の油圧を増減制御するものである。
次にこの実施例の作用について説明すると、エンジンEからの動力伝達状態を択一的に切換可能とした第1および第2メインシャフト15,16と、カウンタシャフト17との間に、選択的な確立を可能とした第1〜第5速用歯車列G1〜G5が設けられており、第1および第2メインシャフト15,16のいずれか一方にエンジンEからの動力が伝達されている状態での変速段の切換えにあたって第1および第2メインシャフト15,16の他方およびカウンタシャフト17間の歯車列を確立して予備変速する際に、両メインシャフト15,16のうちエンジンEからの動力伝達が遮断されているメインシャフトには、各歯車列G1〜G5に共通な単一のシンクロ手段116によって減速または加速回転動力が付与される。
これにより歯車列の確立時に係合する部材同士の回転速度差を小さく抑えて係合に伴う騒音の発生を抑えることができる。たとえば第1油圧クラッチ28を接続状態として第1メインシャフト15にエンジンEからの動力が伝達されている状態で第2速用歯車列G2を確立した第2速での定速走行時に、第1速にシフトダウンする前には第2メインシャフト16およびカウンタシャフト17間の第1速用歯車列G1を確立すべく第3シフタ93が第1速用被動アイドル歯車89に係合する側にスライド作動するのであるが、この際、シンクロ手段116は、エンジンEからの動力伝達が遮断されている第2メインシャフト16に、第1メインシャフト15から第1歯車伝動機構118によって増速された回転動力を付与することになる。
ところで第2速での走行中に第2メインシャフト16は、図7で示すように、遮断状態にある第2油圧クラッチ29のひきずりによって第1メインシャフト15の回転速度NAとほぼ同一の回転速度NBで回転している。しかるに時刻t3で第1速歯車列G1を確立すると、第2メインシャフト16にシンクロ手段116からの回転動力付与を行わない状態では、図7の鎖線で示すように、第2メインシャフト16の回転速度NBが第1メインシャフト15の回転速度NAに対して急激に増大する。これは第2速用歯車列G2および第1速用歯車列G1の減速比の差分に起因するものであり、カウンタシャフト17とともに回転する第3シフタ93の回転速度に対して、第2メインシャフト16からの動力伝達によってカウンタシャフト17の軸線まわりに回転している第1速用被動アイドル歯車89の回転速度は、第3シフタ93の第1速用被動アイドル歯車89への係合前には低くなっており、そのような回転速度の差によって大きな係合音が生じるものである。
しかるに前記時刻t3前の時刻t1で、シンクロ手段116におけるアクチュエータ130の作動を開始し、時刻t3前の時刻t2で第1歯車伝動機構118を連動回転軸117への連結を終了するようにすると、図8の矢印で示すように、シンクロ手段116の第1歯車伝動機構118によって増速された回転動力が第2メインシャフト16に伝達されることにより、第2メインシャフト16の回転速度が増大し始め、時刻t2では、時刻t3での第1速用歯車列G1の確立に伴う第2メインシャフト16の最終的な回転速度に近い速度まで第2メインシャフト16の回転速度が増速されることになる。
すなわちシンクロ手段116による増速された回転動力の付与がなされないときの時刻t3での第2メインシャフト16の回転速度変化量aに対して、シンクロ手段116によって増速された回転動力を付与したときの時刻t3での第2メインシャフト16の回転速度変化量bはごく小さいものとなる。これにより第2速での定速走行時にシフトダウンに備えて第1速用歯車列G1を確立する予備変速を行ったときに、第3シフタ93および第1速用被動アイドル歯車89の回転速度差を小さく抑えて、第3シフタ93および第1速用被動アイドル歯車89の係合に伴う騒音の発生を抑えることができる。
また第1クラッチ28を接続状態として第1メインシャフト15にエンジンEからの動力が伝達されている状態で第2速用歯車列G2を確立した第2速での定速走行時に、第3速にシフトアップする前には、第2メインシャフト16およびカウンタシャフト17間の第3速用歯車列G3を確立すべく第3シフタ93が第3速用被動アイドル歯車91に係合する側にスライド作動する。この際、図9で示すように、時刻t3で第3速歯車列G3を確立すると、第2メインシャフト16にシンクロ手段116からの回転動力付与を行わない状態では、図9の鎖線で示すように、第2メインシャフト16の回転速度NBが第1メインシャフト15の回転速度NAに対して急激に減少する。これは第2速用歯車列G2および第3速用歯車列G3の減速比の差分に起因するものであり、カウンタシャフト17とともに回転する第3シフタ93の回転速度に対して、第2メインシャフト16からの動力伝達によってカウンタシャフト17の軸線まわりに回転している第3速用被動アイドル歯車91の回転速度は、第3シフタ93の第3速用被動アイドル歯車91への係合前には高くなっており、そのような回転速度の差によって大きな係合音が生じる。
しかるに前記時刻t3前の時刻t1で、シンクロ手段116におけるアクチュエータ130の作動を開始し、時刻t3前の時刻t2で第2歯車伝動機構118を連動回転軸117への連結を終了するようにすると、図10の矢印で示すように、シンクロ手段116の第2歯車伝動機構119によって減速された回転動力が第2メインシャフト16に伝達されることにより、第2メインシャフト16の回転速度が減少し始め、時刻t2では、時刻t3での第3速用歯車列G1の確立に伴う第2メインシャフト16の最終的な回転速度に近い速度まで第2メインシャフト16の回転速度が減速されることになる。
すなわちシンクロ手段116による減速された回転動力の付与がなされないときの時刻t3での第2メインシャフト16の回転速度変化量cに対して、シンクロ手段116によって増速された回転動力を付与したときの時刻t3での第2メインシャフト16の回転速度変化量dはごく小さいものとなる。これにより第2速での定速走行時にシフトアップに備えて第3速用歯車列G3を確立する予備変速を行ったときに、第3シフタ93および第3速用被動アイドル歯車91の回転速度差を小さく抑えて、第3シフタ93および第3速用被動アイドル歯車91の係合に伴う騒音の発生を抑えることができる。
しかもシンクロ手段116は全ての歯車列G1〜G4に共通にして単一のものであり、部品点数を低減するとともに必要スペースを小さくすることができる。
またシンクロ手段116は、第2メインシャフト16に連動する連動回転軸117と、第1メインシャフト15に連結されるとともに第1メインシャフト15から伝達される回転動力を増速する第1歯車伝動機構118ならびに前記回転動力を減速する第2歯車伝動機構119と、連動回転軸117の第1および第2歯車伝動機構118,119への択一的な連結および連結解除を切換える連結切換え機構120とを備えるものであり、シンクロ手段116を両メインシャフト16,17間に設けるようにして、シンクロ手段116の小型化による変速装置Mの小型化を図ることができる。
また第1および第2メインシャフト15,16は、第2メインシャフト16を第1メインシャフト15に同軸に貫通せしめて相対回転可能に配置されるものであり、量メインシャフト15,16の一端部およびエンジンE間に、断・接を択一的に切換える第1および第2油圧クラッチ28,29が設けられ、それらの油圧クラッチ28,29と第1〜第5速用歯車列G10G5との間に配置される第1および第2歯車伝動機構118,119が第1メインシャフト15に連結され、第1および第2メインシャフト15,16と平行な軸線を有する連動回転軸117が、第1〜第5速用歯車列G1〜G5を第1および第2歯車伝動機構118,119との間に挟む位置で第2メインシャフト16の他端部に連動、連結されるので、第1〜第5速用歯車列G1〜G5間にシンクロ手段116が配置されることがなく、両メインシャフト15,16およびカウンタシャフト17の軸線に沿う方向で第1〜第5速用歯車列G1〜G5をコンパクトに配置し、両メインシャフト15,16およびカウンタシャフト17の軸方向長さをより短くすることができる。
またシンクロ手段116を駆動するアクチュエータ130が、第1および第2油圧クラッチ28,29を有するクラッチ装置8の側方に配置されるので、両油圧クラッチ28,29の側方の空きスペースを利用してアクチュエータ130を配置して、シンクロ手段116のうち前記両油圧クラッチ28,29と第1〜第5速用歯車列G1〜G5との間に配置される第1および第2歯車伝動機構118,119にアクチュエータ130を近接させることができ、変速装置M全体のコンパクト化を図ることができる。
歯車変速機7は、第1油圧クラッチ28に一端部が連結されてクランクシャフト9と平行に配置される第1メインシャフト15と、第2油圧クラッチ29に一端部が連結されて第1メインシャフト15を同軸に貫通する第2メインシャフト16とを有し、第2メインシャフト16内には、第1および第2油圧クラッチ28,29の第1および第2クラッチピストン44,54に油圧を個別に作用せしめる第1および第2油圧路76,78が、第2メインシャフト16の他端側から作動油を供給することを可能として同心状に形成されている。
したがってパワーユニットPがクラッチ装置8側で側方に大きく突出することを回避することができ、自動二輪車に搭載した場合でもバンク角を比較的大きく設定することが可能となる。
また第1および第2油圧路76,78への作動油の供給を制御する油圧制御手段100が、エンジンEのクラッチ装置8とは反対側の側面を構成するエンジンカバー63に配設されるので、歯車変速機7を収容するようにしてクランクケース14内に形成される変速機収容室13の周囲でクランクケース14が上下に大きくなることを回避して、クランクケース14を小型化することができる。
しかもエンジンカバー63に支持板105に油圧生業手段100が支持され、油圧制御手段100および前記第1および第2油圧路76,78間を結ぶ第1および第2連絡油路107,108の少なくとも一方、この実施例では第1連絡油路107の一部が、エンジンカバー63および前記支持板105の取付け面間に形成されるので、前記連絡油路107の一部を、容易に形成することができる。
さらにクラッチ装置8では、エンジンEからの動力が入力される環状板部34aと、該環状板部34aの内周側に基端が一体に連設される円筒状の内筒部34bと、該内筒部34bを同軸に囲繞して前記環状板34aの外周側に基端が一体に連設される円筒状の外筒部34cとから成る入力部材34が、前記内筒部34bを第1油圧クラッチ28の入力側とするとともに前記外筒部34cを第2油圧クラッチ29の入力側としつつ第1油圧クラッチ28を第2油圧クラッチ29で同心状に囲繞して配置される第1および第2油圧クラッチ28,29に共通に設けられ、第1および第2油圧クラッチ28,29がそれぞれ備える第1および第2クラッチピストン44,54が前記入力部材34の開放端側に配置されている。
このようなクラッチ装置8の構成によれば、クラッチ装置8の部品点数を低減することが可能となるともにクラッチ装置8全体の小型化を図ることができ、しかも両油圧クラッチ28,29の断・接を切換える際に共通な入力部材34に両油圧クラッチ28,29の出力部材40,50が係合することになり、断・接切換え時の慣性力変化を小さくすることができ、断・接切換えを滑らかに行うことができる。
しかも第1油圧クラッチ28が備える第1出力部材40が、前記内筒部34bを同軸に囲繞する第1円筒部40aを有して第1メインシャフト15に相対回転不能に連結され、第2油圧クラッチ29が備える第2出力部材50が、前記外筒部34c内で第1円筒部40aを同軸に囲繞する第2円筒部50aを有して第2メインシャフト16に相対回転不能に連結されるので、両油圧クラッチ28,29の出力部材40,50の一部である第1および第2円筒部40a,50aを近接配置することが可能であり、両油圧クラッチ28,29の出力側慣性マスを近づけて断・接切換え時のフィーリングに大きな変化が生じないようにすることができる。
第1および第2油圧クラッチ28,29の第1および第2クラッチピストン44,54は、第1クラッチピストン44よりも第2クラッチピストン54を大径として軸方向に並んで配置され、第2メインシャフト16内には、第1および第2クラッチピストン44,54側に作動油を供給するための第1および第2油圧路76,78が形成されるので、クラッチ装置8の外方に両油圧クラッチ28,29の断・接切換えのための機構を配置することを回避して、クラッチ装置8よりも外方に前記機構を配置するためのスペースを確保することが不要となる。
さらに入力部材34の環状板部34aと、エンジンEに連なる被動歯車31との間にダンパばね12が介設されるので、共通なダンパばね12でエンジンEから両油圧クラッチ28,29に伝達される動力の変動を吸収することができる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
15,16・・・メインシャフト
17・・・カウンタシャフト
28,29・・・クラッチ
116・・・シンクロ手段
117・・・連動回転軸
118・・・第1歯車伝動機構
119・・・第2歯車伝動機構
120・・・切換え機構
130・・・アクチュエータ
E・・・動力源であるエンジン
G1〜G5・・・歯車列
17・・・カウンタシャフト
28,29・・・クラッチ
116・・・シンクロ手段
117・・・連動回転軸
118・・・第1歯車伝動機構
119・・・第2歯車伝動機構
120・・・切換え機構
130・・・アクチュエータ
E・・・動力源であるエンジン
G1〜G5・・・歯車列
Claims (4)
- 動力源(E)との間の動力伝達・遮断を択一的に切換可能とした一対のメインシャフト(15,16)と、カウンタシャフト(17)と、選択的な確立を可能として前記両メインシャフト(15,16)およびカウンタシャフト(17)間に設けられる複数変速段の歯車列(G1〜G5)とを備え、前記両メインシャフト(15,16)のいずれか一方に前記動力源(E)からの動力が伝達されている状態での変速段の切換えにあたって両メインシャフト(15,16)のいずれか他方および前記カウンタシャフト(17)間の歯車列を確立することを可能とした歯車変速機において、前記変速段の切換え時に前記両メインシャフト(15,16)のうち動力源(E)からの動力伝達が遮断されているメインシャフトに減速または加速回転動力を付与する単一のシンクロ手段(116)を備えることを特徴とする歯車変速機。
- 前記シンクロ手段(116)が、両メインシャフト(15,16)の一方(16)に連動する連動回転軸(117)と、両メインシャフト(15,16)の他方(15)に連結されるとともに当該他方のメインシャフト(15)から伝達される回転動力を増速する第1歯車伝動機構(118)ならびに前記回転動力を減速する第2歯車伝動機構(119)と、前記連動回転軸(117)の第1および第2歯車伝動機構(118,119)への択一的な連結および連結解除を切換える切換え機構(120)を備えることを特徴とする請求項1記載の歯車変速機。
- 一方のメインシャフト(16)を他方のメインシャフト(15)に同軸に貫通せしめて相対回転可能に配置される前記両メインシャフト(15,16)の一端部および前記動力源(E)間に、断・接を択一的に切換える一対のクラッチ(28,29)が設けられ、それらのクラッチ(28,29)と複数変速段の前記歯車列(G1〜G5)との間に配置される前記第1および第2歯車伝動機構(118,119)が前記他方のメインシャフト(15)に連結され、前記両メインシャフト(15,16)と平行な軸線を有する前記連動回転軸(117)が、前記複数変速段の歯車列(G1〜G5)を前記第1および第2歯車伝動機構(118,119)との間に挟む位置で前記一方のメインシャフト(16)の他端部に連動、連結されることを特徴とする請求項2記載の歯車変速機。
- 前記シンクロ手段(116)を駆動するアクチュエータ(130)が、前記両クラッチ(28,29)の側方に配置されることを特徴とする請求項3記載の歯車変速機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006233986A JP2008057618A (ja) | 2006-08-30 | 2006-08-30 | 歯車変速機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006233986A JP2008057618A (ja) | 2006-08-30 | 2006-08-30 | 歯車変速機 |
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JP2008057618A true JP2008057618A (ja) | 2008-03-13 |
Family
ID=39240624
Family Applications (1)
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JP2006233986A Pending JP2008057618A (ja) | 2006-08-30 | 2006-08-30 | 歯車変速機 |
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JP (1) | JP2008057618A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016070355A (ja) * | 2014-09-30 | 2016-05-09 | 本田技研工業株式会社 | 内燃機関の変速駆動機構 |
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2006
- 2006-08-30 JP JP2006233986A patent/JP2008057618A/ja active Pending
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