JP3652162B2 - 自動製パン機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般家庭において用いられる自動製パン機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から製パンには、混練・発酵・焼成の工程を要する。小麦粉・水・イースト等の製パン材料を用い、これらの工程を自動制御することにより、製パンを行う自動製パン機は実用化されている。また、パンの種類としては、食パン・ソフト食パン・ぶどう食パン・フランスパン等が挙げられ、これらのパンの種類は製パン材料および配合により製パン時間および製パン工程が異なることは一般的に知られている。さらにそれらの製パンコースを複数個有する自動製パン機も実用化されている。(表1)に自動製パン機における一般的な食パンの配合を示す。
【0003】
【表1】
【0004】
次に、製パンを行うための自動製パン機における一般的な自動製パン機の構成および食パンの製パン工程について説明する。
【0005】
図2は、自動製パン機の構成を示すものである。1は焼成室で、2は練り羽根、3はパンケース、4は羽根を回転させる駆動源であり、パンケース3にいれた製パン材料を練り羽根2が駆動することにより混練・ガス抜きを行う。5は加熱を行うための加熱手段であり、パン生地の発酵・熟成の行程を行う。6は焼成室内の温度を検知する温度検知手段である。そして、7は温度検知手段6、駆動源4、加熱手段5等を制御する制御手段である。また、8はこの制御手段の制御条件を設定する入力手段であり、複数の製パンコースを選択できる選択手段でもある。
【0006】
このような構成で、パンケースに製パン材料を投入し、入力手段に焼きあがり時刻等を入力すると、駆動源が所定時刻に運転を開始し、焼成室が所定温度、あるいは所定時間になると、駆動源が停止し発酵工程に入る途中に、駆動源の回転によるガス抜き動作が数回行われながら進行し、そして所定時間経過後に焼成工程が行われ、所望時刻にパンが焼きあがるものである。
【0007】
図3は、上記構成の自動製パン機による食パンの製パン工程を示している。まず、イースト以外の製パン材料を混練(第1混練工程)し、生地を作る。そして、生地の中へ、イーストを投入し、生地を休ませ(ねかし工程)た後、生地とイーストを混練(第2混練工程)し、パン生地を作る。そして、パン生地を発酵・熟成(第1発酵工程:約100分、25℃〜32℃)させ、ガス抜き後、再びパン生地を発酵・熟成・膨化(整形発酵工程:約50分、35℃〜38℃)させる。整形発酵したパン生地を焼成(焼成工程)する。これにより、パンが焼きあがる。この一連の工程を制御手段に記憶された制御条件により制御するようにしてある。
【0008】
次に、各工程の働きを説明する。混練工程において、混連により小麦粉の蛋白質が結合する(以下、これをグルテンと呼ぶ)。また、発酵工程において、イースト・小麦粉および砂糖によるガス発生によりパン生地が膨化しパンの組織を形成する。かつ、小麦粉および砂糖・イーストによるアルコール生成および糖による乳酸等の有機酸を生成するものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
一般に成績のよいパンとは、容積が大きく、形が整い、かつキメが細かく舌触りのよいパンのことをいう。このような出来のよいパンを焼きあげるには、混練工程においてグルテンが充分に生成され、かつ発酵工程においてガス発生が充分であることが重要であ。
【0010】
またパン生地を膨化させる酵母としては、イーストが代表的である。しかしながらイーストの他に、天然酵母と称される野生の酵母を主体とする酵母や、乳酸菌や麹菌等を混合した酵母などが使用される場合がある。本発明において天然酵母とは、従来のイーストの他に、野生の酵母や麹、さらには乳酸菌等が混合され生態系をなしている酵母のことをいう。この天然酵母を使用すると従来のイーストのパンとは異なる風味、食感が得られる。さらに天然素材から作られるため食品添加物を全く使わないパンが出来る。(表2)に従来のイーストと天然酵母パンの食味の特徴を示す。
【0011】
【表2】
【0012】
ところが、上記のような天然酵母は酵母数が一般的に少なく、膨化が起こりにくい傾向がある。したがって従来のイースト使用の製パンコースで製パンを行うと、発酵時間が短いためにパン生地が膨化せず成績のよいパンができないという問題点を有していた。
【0013】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、天然酵母を使用した場合でも充分に膨化した成績のよいパンをつくる自動製パン機およびその製パン方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は天然酵母を使用する際、イーストを使用した製パンコースとは別に天然酵母を使用した製パンコースを設け、発酵時間をイースト使用のコースより天然酵母の発酵力に応じて長く設定し、第1混練工程終了後、生地中のグルテンを再生させて引き締めるように、発酵工程300分〜1500分中に第1発酵工程、第2発酵工程を設け、前記第2発酵工程の途中と終了後にガス抜きを行い、前記第1発酵工程の後で、かつ前記第2発酵工程の前に1回以上の混練工程を設けることで膨化のよい食味の優れたパンができるようにしたものでである。
【0015】
上記構成により、天然酵母を使用した際でも発酵が十分になされ、風味が良く出来映えの良い天然酵母パンを作ることができる自動製パン機を提供することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
請求項1記載の発明は、製パンを行うための焼成室と、製パン材料を入れる練り羽根つきのパンケースと、練り羽根を回転させ混練・ガス抜きを行う駆動源と、焼成室の温度を検知する温度検知手段と、複数の製パンコースから特定の製パンコースを選択できる選択手段と、これらを制御する制御手段とを備え、複数の製パンコースの1つとして製パン材料の発酵材に天然酵母を用いた製パンコースを有し、天然酵母を用いた製パンコースの発酵時間をイースト使用の製パンコースの発酵時間より天然酵母の発酵力に応じて長く設定し、第1混練工程終了後、生地中のグルテンを再生させて引き締めるように、発酵工程300分〜1500分中に第1発酵工程、第2発酵工程を設け、前記第2発酵工程の途中と終了後にガス抜きを行い、前記第1発酵工程の後で、かつ前記第2発酵工程の前に1回以上の混練工程を設けたことを特徴とする自動製パン機とするものであり、この構成により、天然酵母を用いた場合でも天然酵母に適した製パン方法で製パンが行えるようになり膨化の良い成績の良いパンを得ることができる。
【0017】
また、イーストに比べ発酵力の弱い天然酵母を使用してもイーストのパンと同じように膨化の良いパンが得られる。
【0018】
また、グルテンを生成させるための混練工程後、発酵工程に入りパン生地を発酵熟成させるのだが、天然酵母の製パンコースは発酵時間が長いため、発酵の途中でグルテンが消失してしまい、発酵により発生したガスを充分包含できなくなってしまう。
【0019】
したがって、発酵工程中に1回以上の混練工程を行うことで生地中のグルテンを再生させグルテンを引き締め、発生したガスをうまく包含できるようにし、充分に膨化したパンを得ることができるようにした。またグルテンの再生により生地の熟成がさらに進み風味の良いパンを得ることも可能となる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。なお本発明の自動製パン機の構成は、従来の自動製パン機と同様であるので説明を省く。
【0021】
(実施例1)
本発明の実施例1について説明する。図1は、本発明の全体構成を示す図2の電気接続を示すブロック図である。
【0022】
8は入力装置にもうけられている選択手段で、天然酵母を使用した際の製パンコースを選択設定するためのものである。また9は選択手段8の情報を受け、製パンコースの種類の指定を制御手段7に伝達する加熱出力パターン決定手段である。10は製パンコースに対応する加熱出力パターンを記憶している加熱出力パターン記憶手段である。
【0023】
以下、本実施例の動作及び製パン工程の特徴について説明する。図4は本実施例の選択手段により天然酵母の製パンコースを選択したときの製パン工程を示したものである。図4に従って、本発明の自動製パン機について説明する。
【0024】
まず、小麦粉、塩等の製パン材料と天然酵母を混練しパン生地を作る。これを第1混練工程(10〜20分)と称する。天然酵母パンにおける製パン材料の配合を(表3)に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
次に、このパン生地の発酵、熟成を行うための発酵工程を行い、ガス抜きを行った後、パン生地を膨化させるための整形発酵工程を行う。そして膨化したパン生地を加熱し、焼成工程を経てパンが焼きあがる。
【0027】
本発明においては天然酵母の発酵力を十分に得るためにイーストの製パンコースに比べ天然酵母の製パンコースでは発酵時間を長くしている。従来のイーストの製パンコースの発酵時間が約100分(25℃〜32℃)であるのに対し天然酵母の製パンコースでは約300分(25℃〜32℃)と3倍程度長く設定した。また、発酵工程中にパン生地の熟成が進みすぎることでグルテンが消失してしまうのを防ぐために発酵工程中に1回以上の混練工程を設けグルテンを再生させている。従って1回の混練の場合、発酵工程中の混練を第2混練工程とし、発酵工程を第1発酵工程、第2発酵工程とする。本実施例では、発酵工程300分を第1発酵工程180分〜200分、第2混練工程を10分、第2発酵工程を60分〜100分とし、第2発酵工程の途中でガス抜きを行う。第2発酵工程終了後さらにガス抜きを行い整形発酵工程約60分を経て焼成工程に入り、焼成工程約45分後にパンが焼きあがる。
【0028】
尚、本実施例では発酵時間を約300分としたが使用する天然酵母の発酵力により時間は300分とは限らない。発酵力が弱い酵母の場合さらに長く設定できるし、逆に強い場合は短く設定してもかまわない。さらに発酵材として天然酵母以外に従来のイーストを混合したものでもかまわない。従って発酵時間は、天然酵母の発酵力に応じ可変することが出来る。例えば発酵力が強い天然酵母の場合、或いはイーストを多く混合した場合には発酵時間は100分〜150分、発酵力の弱い天然酵母の場合には1500分まで発酵時間を変えることが出来る。ただし発酵時間が300分以上になる場合には発酵温度は300分の場合より低く設定した方が良い。発酵時間が長くなるとグルテンの消失が起こりやすくそれを抑制するために発酵温度は15℃〜30℃の範囲で設定した方が良い。また、本実施例では発酵工程途中の混錬を1回としたが、天然酵母の発酵力に応じ、2回、3回、と入れても良い。この場合第2混錬工程、第3混練工程となり発酵工程も第3、第4となる。
【0029】
(表4)は天然酵母を用いて従来の製パンコースで製パンした場合と、本実施例の天然酵母コースを用いて製パンした場合の、生地の膨化高と焼きあがったパンの高さ及びパンの出来映えについて官能評価したものである。
【0030】
【表4】
【0031】
(表4)から明らかなように天然酵母を用いた場合、従来の製パンコースでは高さが低く成績の良いパンができなかったのに対し、天然酵母の製パンコースを用いることにより、高さの優れた、きめの細かい、風味の良いパンができることがわかる。
【0032】
(参考例1)
図5は本発明の製パン工程を示したものである。上記実施例1と相違する点は天然酵母の製パンにおいてドライフルーツ等を投入する場合、専用のコースを設け選択できるようにし、さらにその製パン工程において、ドライフルーツ等の投入工程を設けたことである。すなわち、第1混錬工程終了後、発酵工程中に投入工程を設けたものである。本参考例においては第1混練工程終了後5分以内に投入する工程を設けている。
【0033】
ドライフルーツ等を投入した後、パン生地は発酵工程に入るが、第2混錬工程によりドライフルーツは破壊されずにパン生地に分散されるためドライフルーツが原型を保ち、パン生地を染めることなく色が白く、ドライフルーツがパン内層に均一に点在した見栄えの良いパンを得ることができる。
【0034】
(参考例2)
図6は参考例2の製パン工程を示したものである。上記実施例1及び参考例1と相違する点は、天然酵母のパン生地作り専用のコースを設けパン生地作りをする際に選択できるようにし、さらにその製パン工程において発酵時間を長くしたものである。すなわち第1混練工程(10〜20分)終了後、発酵工程に入り、第1発酵工程(180〜200分)終了後、第2混練工程を約10分設け、さらに第2発酵工程(30〜60分)終了後にパン生地は出来上がる。パン生地を取り出し好みの形に整形し、さらに発酵を続け、整形発酵を経て焼成(この場合はオーブン等を使用)することでパンは焼きあがる。
【0035】
天然酵母のパン生地を作るときは発酵状態を確認しながら製パン工程の途中で取り出さなければならないが専用コースを選択することで取り出すタイミングを計測する必要がなく、ばらつきの少ない良好なパン生地を作ることができる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の発明によれば、製パン材料の発酵材として天然酵母を用いた場合に、イーストの製パンコースとは異なる天然酵母専用の製パンコースを設け選択できるようにしたものであり、天然酵母に適した製パン方法でパンが焼けるため、膨化の良い出来映えの良いパンを焼くことができる。
【0037】
また、天然酵母の製パン工程において、発酵力の弱い天然酵母の発酵力を十分に高めるために発酵時間をイーストの製パン工程より天然酵母の発酵力に応じて長く設定している。さらに発酵時間が長いことによるグルテンの消失を防ぐために発酵工程300分〜1500分中に第1発酵工程、第2発酵工程を設け、前記第2発酵工程の途中と終了後にガス抜きを行い、前記第1発酵工程の後で、かつ前記第2発酵工程の前に1回以上の混錬工程を設け、混錬することによりグルテンを再生させて引き締め、パン生地をひきしめている。よって、天然酵母を使用しても膨化の良いきめの細かい良好なパンを得ることができる。
【0038】
このように本発明は、家庭用の自動製パン機で天然酵母のパンを焼く場合、酵母の発酵力を十分に確保するために発酵時間を長く設定し、天然酵母に適した製パン工程で焼くことができ、出来映えの良いおいしい天然酵母のパンをつくることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例である自動製パン機の構成を示すブロック図
【図2】 同、構成を示す断面図
【図3】 従来の自動製パン機における製パン工程図
【図4】 本発明の自動製パン機の実施例1における製パン工程図
【図5】 本発明の自動製パン機の参考例1における製パン工程図
【図6】 本発明の自動製パン機の参考例2における製パン工程図
【符号の説明】
1 焼成室
2 練り羽根
3 パンケース
4 駆動源
5 加熱手段
6 温度検知手段
7 制御手段
8 入力装置(選択手段)
Claims (1)
- 製パンを行うための焼成室と、製パン材料を入れる練り羽根つきのパンケースと、練り羽根を回転させ混練・ガス抜きを行う駆動源と、焼成室の温度を検知する温度検知手段と、複数の製パンコースから特定の製パンコースを選択できる選択手段と、これらを制御する制御手段とを備え、複数の製パンコースの1つとして製パン材料の発酵材に天然酵母を用いた製パンコースを有し、天然酵母を用いた製パンコースの発酵時間をイースト使用の製パンコースの発酵時間より天然酵母の発酵力に応じて長く設定し、第1混練工程終了後、生地中のグルテンを再生させて引き締めるように、発酵工程300分〜1500分中に第1発酵工程、第2発酵工程を設け、前記第2発酵工程の途中と終了後にガス抜きを行い、前記第1発酵工程の後で、かつ前記第2発酵工程の前に1回以上の混練工程を設けたことを特徴とする自動製パン機。
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1999
- 1999-03-15 JP JP06815999A patent/JP3652162B2/ja not_active Expired - Fee Related
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