JP3651272B2 - 電動車両搭載電池温度調整装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気自動車等の電動車両に搭載される電池の温度を調整する装置、即ち電動車両搭載電池温度調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動車両例えば電気自動車には、車両推進用の電力をモータ等に供給するための大規模な電池が搭載されるのが一般的である。通常、この種の用途に適する電池は、その使用温度が常に所定の範囲内にあれば、より長期間に亘り使用し続けることができる。そこで、従来から、電池の寿命を確保乃至延長するために、電池を冷却/暖機する手法がいくつか提案されている。例えば特開平8−40088号公報に記載されている電気自動車では、車外からキャビンにエアを導入するダクトの途中に分岐を設け、電池へとエアを導入するためのダクトをこの分岐箇所に接続している。更に、この分岐箇所には、車外からのエアをキャビンに導入するのかそれとも電池側に導入するのかを切り換え、またキャビンへのエア導入量と電池側へのエア導入量をどのような比率とするかを設定するためのバルブが、設けられている。従って、上記公報に記載の電気自動車では、ある場合にはキャビンに、他の場合には電池に、というようにエア導入先を切り換えることや、キャビン・電池間のエア導入量の比率を制御することが、可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように分岐を用いた構成では、キャビン内の空調と電池の冷却/暖機とを好適に両立させるのは困難である。例えば、キャビン内の空調がリフレッシュモード(車外のエアの導入に伴いキャビン内のエアを車外に排出するモード)であるときは、キャビンに大量のエアを導入する必要があるため電池側へのエア導入量は絞らざるを得ず、十分な冷却/暖機を行い得ないことがあり得る。無論、電池の冷却/暖機を優先させることもできるが、その場合には、キャビン内を十分に空調できないことも起こりうる。
【0004】
本発明の目的の一つは、電池側へのエアの導入経路に変更を施すことにより、キャビン内の空調と電池の冷却/暖機とを好適に両立できるようにすると共に、キャビン内の空調と電池の冷却/暖機とを併せた熱利用効率を高めることにある。本発明の目的の他の一つは、電池側へのエア導入経路に施した変更を利用乃至応用することにより、キャビン内のエアの汚濁をより確実に防止乃至低減することにある。本発明の目的の他の一つは、流路の切換のための手順と構造に改変を施すことにより、構造の簡素化、低コスト化等を実施することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明に係る電動車両搭載電池温度調整装置は、キャビンから電池収納ケース内に至る導入用流路と、電池収納ケース内から電池収納ケース外に至る強制排出用流路と、電池収納ケース内部から車外に至る自然排出用流路と、導入用流路内に配設され送風指令に応じてキャビンから電池収納ケース内へのエアの流れを発生させる強制送風部材と、電池収納ケース内の電池を冷却又は暖機する際に強制送風部材を動作させる制御部と、を備え、電動車両に搭載される電動車両搭載電池温度調整装置において、強制送風部材が動作していないときには自重又はバネ付勢力により導入用流路を閉鎖し同時に自然排出用流路を電池収納ケース内に連通させ、動作しているときには自重又はバネ付勢力に抗する強制送風部材からのエアの圧力により押され自然排出用流路を閉鎖し同時に導入用流路を電池収納ケース内に連通させる吸入口側従動部材と、強制送風部材が動作していないときには自重又はバネ付勢力により強制排出用流路を閉鎖し、動作しているときには自重又はバネ付勢力に抗する強制送風部材からのエアの圧力により押され強制排出用流路を電池収納ケース内に連通させる排出口側従動部材と、を備え、更に、制御部が、電池からのガスの排出が予測されるときに強制送風部材を停止させることを特徴とする。
【0006】
本発明においては、強制送風部材が動作しているときには、強制送風部材からのエアの圧力によって吸入口側及び排出口側従動部材が開く。この状態では、キャビンから導入用流路を経て電池収納ケース内部に至り更に強制排出用流路を経て電池収納ケース外に至るエアの流れが生じる。従って、電池収納ケース内の電池を、キャビンの空調に使用されたエアにて冷却又は暖機できるから、本発明によれば、従来に比べ効率的な熱利用を実現できる。また、キャビン内に大量のエアを導入する必要があるときに電池側へのエアの導入量を絞る、といった必要もなく、電池を十分に冷却又は暖機できる。
【0007】
さらに、本発明においては、電池からのガスの排出が予測されるときに、制御部が強制送風部材を停止させる。強制送風部材が停止すると、吸入口側従動部材及び排出口側従動部材(例えばバタフライ)は自重及び/又はバネ付勢力によって導入用流路及び強制排出用流路を閉じる。導入用流路が吸入口側従動部材によって閉ざされている状態では、自然排出用流路が開いているから、電池からガスが発生したとしても、このガスは自然排出用流路から排出されることとなる。従って、本発明によれば、電池からガスが発生したとしてもそのガスによってキャビン内のエアが汚濁されることはない。また、電池を冷却/暖機するためエアの流れを形成している状態から、ガスを排出するため自然排出用流路を開いている状態への切換は、強制送風部材例えばブロアを停止させるだけで実現でき、構造が単純であると共に、制御も簡便である。
【0008】
尚、電池からのガスの放出は、電池の温度や充電状態(SOC)を管理する制御装置を設け、電池が高温或いは過充電状態や過放電状態に至らないようにすることによって、発生しないようにするのが好ましい。本発明におけるキャビンへのガス漏れ防止機能は、電池のSOCの管理を補助し、当該管理に何らかのフェイルがあったとしてもキャビンにガスが漏れないようにする機能として用いるのが好ましい。
【0009】
また、本願では、本発明が「電動車両搭載温度調整装置」の発明であると述べているが、本願の開示を参照した当業者であれば、本発明を他のカテゴリ例えば調整方法、電動車両等として把握及び表現変更することが可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態に関し図面に基づき説明する。
【0011】
図1に、本発明の一実施形態に係る装置を搭載した電気自動車の構成、特にその後部の概略構造を示す。この図に示すように、本実施形態では、キャビン10から独立した室であるラゲージ12の内部に、多数の電池14を集積した構造を有する電池アセンブリ16が、ケース18に収納された状態で配置されている。電池アセンブリ16は、例えば図2に示されるように、通常の電池14又はそれを複数個連結したブロックを、複数枚のバルクヘッド19にて要所要所支持した構造を有している。電池アセンブリ16が収納されるケース18の内部は、その前面上部にて流路22に連通しており、この流路22は、キャビン10からのエア吸入口26に連通している。流路22の内部には、エア吸入口26からケース18の内部へと、キャビン10のエアを強制送風するブロア28が設けられている。更に、ブロア28から見てケース18側には、ブロア28によって送風が行われているときにはエアの圧力によって開き、行われていないときには自重で閉じて流路22を閉鎖するバタフライ32が配設されている。更に、バタフライ32が設けられている部位には、流路34が連通している。流路34は、ケース18から見て上方において車外に開口している排出グリル36に連通している。バタフライ32は、ブロア28によって送風が行われているときにはエアの圧力によって流路34を閉鎖し、行われていないときには流路34をケース18内に連通させる。他方、ケース18の背面下部にはラゲージ12と連通した流路40が連通しており、この流路40には、ブロア28によって送風が行われているときにはエアの圧力によって開き、行われていないときには自重で閉じて流路40を閉鎖するバタフライ42が設けられている。これら、電池14の冷却又は暖機にかかる各種の部材は、リアシート44の背面に配設されている。なお、流路40はエア排出口39においてラゲージ12に連通し、ラゲージ12を介して車両側方開口たるベンチレーション38に連通している。また、バタフライ32をエア吸入口26側に付勢するばねや、バタフライ42を閉じ方向に付勢するばねを設けてもよい。バタフライ42の自重(+ばね付勢力)は、後述するガスの圧力では開かず、ブロア28の風圧では開くよう、設定する。
【0012】
本実施形態においては、まず、キャビン10から流路22を経てケース18にエアを導入することができる。従って、キャビン10内の空調に使用されたエアを利用し、すなわち廃熱利用によって、電池14の冷却又は暖機を行うことができるため、電池14の冷却又は暖機にかかる熱利用効率を改善することができる。更に、ラゲージ12とキャビン14の仕切り部分には通常若干の隙間があり、従って、流路40からラゲージ12を経てキャビン10に至るエアの流れを形成することができる。
【0013】
図3に、図1に示す装置を制御する制御部44及びその周辺構成を示す。この図に示すように、制御部44は、車両操縦者によるスイッチ操作等により設定されるキャビン内空調モードや、SOCセンサ46及び温度センサ48により検出される電池アセンブリ16特にその電池14のSOCや温度に基づき、ブロア28を動作/停止させる。
【0014】
図4に、制御部44の動作手順の一例を示す。この図に示す手順においては、制御部44は、まず、電池14の温度等に基づき、電池14の冷却/暖機が必要であるか否かを判定する(100)。必要であると判定した時には、原則として、制御部44はブロア28を動作させ(102)、流路22を介したケース18内へのエアの導入を開始する。ただし、このときのエアの導入量は、キャビン内の空調モードに応じた導入量とする。また、ステップ100において冷却/暖機が不要であると判定した時には、制御部44は、ブロア28を停止させる(104)。
【0015】
ステップ100において冷却/暖機が必要であると判定した時であっても、電池14のSOC等からみて電池14が過充電気味又は過放電気味であると判定した時には(106)、制御部44は、ブロア28を停止させる。この制御を実行することにより、ケース18から排出グリル36に至る流路34が形成され、同時に、キャビン10から流路22、ケース18、流路40を経てエア排出口39に至る流路が閉鎖される。この状態では、電池14からケース18内部に万一放出された場合の微量のガスは、流路34を介して車外に排出されることとなるから、ラゲージ12内におけるガスの濃度を抑えながら、ガスを迅速に排出することができる。これは電池14が放出するガスが、一般には比較的比重が小さいガスであり、作用する浮力によって図中下から上へと流れることによる。
【0016】
従って、本実施形態においては、キャビン10内の空調やエアのリサーキレーションに影響を与えることなく、また従来に比べ効率的に熱を利用して、電池14の冷却や暖機を実行することが可能になる。更に、電池14にて水素ガス等のガスが発生したとしても、このガスがキャビン10側に漏れ出すことはなく、キャビン10内のエアの汚濁ひいてはその居住性の低下を防止することができる。
【0017】
また、自重やばね付勢力にて風圧に抗するバタフライ32及び42を用いるとともに、ガス発生予測又は推定時にブロア停止制御を行っているため、特願平9−60602号に開示の構成に比べ、制御が簡便で装置も簡素・低コストなものとなる。
【0018】
なお、以上の説明では、電池14からのガスの放出に言及していたが、実際には、電池14からのガスの放出はほとんど生じ得ない。これは、電池14のSOCを検出することによって、電池14が過充電状態又は過放電状態に至っていること又はその傾向を示していることを、早期に検出できることによる。すなわち、電池14からのガス放出の可能性があることや当該ガスの放出量は、電池14のSOCを検出し電池14が過充電気味又は過放電気味であることを検出することによって推定できるのであるから、逆に言えば、電池14のSOCを例えばその充放電電流量の管理によって所定範囲内に維持しておけば、電池14からのガス放出を防止することができる。上述の実施形態におけるガス放出への対策は、電池14のSOC管理によるガス放出防止を補助する位置づけのものである。すなわち、電池14のSOCの管理に何らかの異常乃至故障が発生したときを想定して、キャビン10へのガス漏れをより信頼性よく防止するためのものである。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、強制送風部材からのエアの圧力によって開く吸入口側及び排出口側従動部材を設け、キャビンから導入用流路を経て電池収納ケース内部に至り更に強制排出用流路を経て電池収納ケース外に至るエアの流れを発生させるようにしたため、電池収納ケース内の電池をキャビンの空調に使用されたエアにて冷却又は暖機でき、従来に比べ効率的な熱利用を実現でき、また電池を十分に冷却又は暖機できる。更に、強制送風部材が動作していないときに自重又はバネ付勢力により導入用流路を閉鎖するよう吸入口側従動部材を設け、また、強制送風部材が動作していないときに自重又はバネ付勢力により強制排出用流路を閉鎖するよう排出口側従動部材を設けているため、電池からのガスの排出が予測されるときに強制送風部材を停止させることにより、導入用流路を閉鎖させ自然排出用流路を開くことができる。従って、電池からガスが発生したとしてもそのガスによってキャビン内のエアが汚濁されることはなく、また、そのための構造や制御手順を簡素化簡便化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る装置を搭載した車両の後部概略構成を示す図である。
【図2】 電池アセンブリの一例構成を示す斜視図である。
【図3】 制御部を示すブロック図である。
【図4】 制御部の動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 キャビン、12 ラゲージ、14 電池、16 電池アセンブリ、18ケース、22,34,40 流路、26 エア吸入口、28 ブロア、32,42 バタフライ、36 排出グリル、38 ベンチレーション。
Claims (1)
- キャビンから電池収納ケース内に至る導入用流路と、電池収納ケース内から電池収納ケース外に至る強制排出用流路と、電池収納ケース内部から車外に至る自然排出用流路と、導入用流路内に配設され送風指令に応じてキャビンから電池収納ケース内へのエアの流れを発生させる強制送風部材と、電池収納ケース内の電池を冷却又は暖機する際に強制送風部材を動作させる制御部と、を備え、電動車両に搭載される電動車両搭載電池温度調整装置において、
強制送風部材が動作していないときには自重又はバネ付勢力により導入用流路を閉鎖し同時に自然排出用流路を電池収納ケース内に連通させ、動作しているときには自重又はバネ付勢力に抗する強制送風部材からのエアの圧力により押され自然排出用流路を閉鎖し同時に導入用流路を電池収納ケース内に連通させる吸入口側従動部材と、
強制送風部材が動作していないときには自重又はバネ付勢力により強制排出用流路を閉鎖し、動作しているときには自重又はバネ付勢力に抗する強制送風部材からのエアの圧力により押され強制排出用流路を電池収納ケース内に連通させる排出口側従動部材と、
を備え、更に、
制御部が、電池からのガスの排出が予測されるときに強制送風部材を停止させることを特徴とする電動車両搭載電池温度調整装置。
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