JP3650265B2 - 光学機械の照明装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学機械の照明装置に関わり、特に、光学顕微鏡の照明装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガラスレンズやプラスチックレンズ(ポリカーボネート、アクリル等)を素材とする硬質のレンズを有する照明系を備えた光学機械の照明装置のうちの一つである光学顕微鏡の照明装置が知られている。
【0003】
光学ガラスを素材とするレンズでは、一般的に330nm付近の波長から急激に透過率が下がり、紫外線領域の波長の光を殆ど透過しなくなる。このため、蛍光顕微鏡や紫外線顕微鏡による標本等の観察において、紫外線領域の光源を必要とする場合、従来より石英やケイ石のような特殊な材料を用いたレンズが使用されてきた。
【0004】
しかしながら、石英やケイ石を用いたレンズの紫外線の透過波長領域は200乃至300nmが限界であり、更に、石英等の特殊な材料は非常に高価で、加工上も研磨を必要とすることからレンズ価格が非常に高くななる。従って、特に、このようなレンズは、低価格の光学顕微鏡への使用が困難であった。
【0005】
このため、比較的安価に製造できるプラスチックレンズを使用している光学顕微鏡もある。しかし、プラスチックレンズでもガラスレンズと同様、透過波長には限界がある。
【0006】
また、プラスチックレンズでは、使用材質の熱変形温度が100℃前後であるため、光源ランプ付近に配置して使用した場合、熱変形による光学特性の劣化等の不具合を生じる可能性がある。
【0007】
一方、光学素子を顕微鏡内部に固定する場合、光学ガラスを素材とするレンズでは、枠に直接接着する方法や枠に落し込んだ後に押さえ環で押さえるという方法が一般的に行われている。
【0008】
光学素子を枠に接着する場合は、接着剤が必要となり完全に固定するまでに多くの時間を必要とする。また、作業工程や作業環境に注意を払うことが必要となる。さらに、押さえ環で光学ガラスを素材とするレンズを押さえる場合でも押さえ環が別途必要となり、ゆるみ防止のために押さえ環をネジで固定する必要や接着して固定することが必要となる。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、紫外線の透過率に優れ、光源ランプ付近の高熱にさらされても熱変形等による光学特例の劣化が生じることはなく、しかも安価に製造できる光学素子を備えた光学機械の照明装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、光学素子の固定を容易にすることができる光学機械の照明装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
したがって、まず、上記目的を達成するために、第1の発明によれば、光学機械用の照明光を出力する照明手段と、前記照明手段によって出力された照明光の光路上で、かつ前記照明手段に隣接して配置され、ガラスにより形成された第1のレンズと、前記第1のレンズを通過した照明光の光路上で、かつ前記第1のレンズに隣接して配置され、前記照明手段からの熱に対する耐熱性を有するゴムにより形成された第2のレンズとを具備することを特徴とする光学機械の照明装置である。
【0011】
また、第2の発明によれば、複数のレンズと、照明用の光源とを有する光学機械の照明装置において、前記複数のレンズのうちの少なくとも前記光源と隣接したレンズを前記光源からの熱に対する耐熱性を有するゴムにより形成したことを特徴とする光学機械の照明装置である。
【0012】
さらに、第3の発明によれば、レンズと、照明用の光源と、前記光源を保持する光源保持部とを有する光学機械の照明装置において、前記光源保持部に保持され、ゴムにより形成されたレンズと、前記レンズと前記光源との間に配置された第1の平板ガラスと、前記レンズに対して前記第1の平板ガラスと反対側に配置された第2の平板ガラスとを備え、前記レンズは、前記第1の平板ガラス、前記第2の平板ガラス及び前記光源保持部によって密封されていることを特徴とする光学機械の照明装置である。
【0013】
【発明の実施の形態】
まず、最初に、本発明の実施の形態の概要について説明する。
<概要>
本発明の光学機械の照明装置に利用する光学レンズは、透明のゴム弾性体である。
【0014】
この透明のゴム弾性体として使用できる物質は、例えば、シリコーンゴム、アクリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、イソプレンゴム、フッ素ゴム、ブタジエンゴム、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、液状ポリイソプレンもしくは液状ポリブタジエン等、またはこれらの物質のうち2以上のものを混合した混合物等が使用できる。
【0015】
以下に述べる実施の形態においては、単に、ゴム或いはシリコーンゴム等として説明するが、上記種類のゴムであればいずれのゴムも使用することができる。
透明のゴム弾性体は、これらの物質にその本来の透明性を阻害する添加剤を添加しないか、またはその添加量を少なくすることにより得られる。
【0016】
ここでは、特に、シリコーンゴムの透明のゴム弾性体の特性を説明する。この透明のゴム弾性体は使用温度が200℃以上(最高約230℃)ある。通常のプラスチックではポリカーボネイトの約120℃で、他のプラスチック(アクリル等)は約100℃以下である。しかし、この透明ゴムはポリカーボネイトやアクリル等と比較すると線膨張率が約4〜5倍である。
【0017】
この透明のゴム弾性体は、約340nmの紫外から透過度が減少するが、石英や蛍石相当の約250nmの紫外の波長も約50%を透過する。これに対して通常のプラスチックレンズは、ポリカーボネイトで約400nmまで、アクリルで約380nmまでの波長の光しか通さない。
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光学顕微鏡の照明光学系を示す図である。
【0019】
同図において、1は光源ランプ、2は光源ランプ1からの光をほぼ平行な光束にするコレクターレンズ、3は光源ランプ1及びコレクターレンズ2とほぼ同一線上に配置され、コレクターレンズ2からの照明光を標本4に集光するコンデンサレンズ、5は標本観察用の対物レンズである。6は対物レンズ5の光軸で、この光軸にコンデンサレンズ3、コレクターレンズ2及び光源ランプ1が整列している。
【0020】
コレクターレンズ2及びコンデンサレンズ3は、シリコーンゴムの材料により成形したレンズで形成されている。このシリコーンゴムは、紫外線領域の波長、例えば200nm以下の波長の光も透過する透過率で、かつ、200℃以上の耐熱性を持ち、成形加工も容易である。
【0021】
本実施の形態の光学顕微鏡において、光源ランプ1から出た光は、コレクターレンズ2により平行光束となり、コンデンサレンズ3によってコレンターレンズ2からの光束が標本4に集光され標本4が照明されて対物レンズ5によって観察される。
【0022】
このとき、光源ランプ1から出る様々な波長の光の内、紫外線領域の波長、例えば200nm以下の波長の光も、シリコーンゴムにより形成されたコレクターレンズ2、コンデンサレンズ3を透過し、標本4を照明することになる。
【0023】
従って、本実施の形態の光学顕微鏡によれば、従来のプラスチックや石英等を用いたレンズを用いる場合と比較して、耐熱性が200℃以上まで上がることから光源ランプ1の近傍に配置しても熱変形が生じることはない。また、紫外線の透過率も高く、成形加工も容易なことから製造コストが安価な照明系を実現することができる。
【0024】
図2は、本発明の第1の形態の光学顕微鏡における照明光学系の変形例を示す図である。
各構成は図1と同様であるが、コレクターレンズ2をシリコーンゴムの材料により成形したレンズで形成し、コンデンサレンズ3をガラスまたはプラスチックの材料により形成しており、このコンデンサレンズ3の材料が図1と異なる。
【0025】
この場合、コレクターレンズ2は、200℃以上の耐熱性を持つので、プラスチックにより形成したレンズを使用する場合に比べて、光源ランプ1の近傍に配置しても熱変形や熱による着色(黄変)等の不具合の発生を抑えることができる。
【0026】
また、コンデンサレンズ3の材料に低分散ガラスを使用すれば、コンデンサレンズ3も360nm程度の紫外線を透過し、光源ランプ1からの紫外光で、コレクターレンズ2とコンデンサーレンズ3を介して標本4を照明することができるとともに、シリコーンゴムの成型で製造コストも低廉な照明光学系を提供することができる。
【0027】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る光学顕微鏡の照明光学系の変形例を示す図である。
図1と異なるのは、コレクターレンズ2が2つのコレクターレンズ2aとコレクターレンズ2bからなることであり、コレクターレンズ2aをシリコーンゴムの材料により成型したレンズで形成している。
【0028】
この場合、光源ランプ1に近いコレクターレンズ2aは、200℃以上の耐熱性を持つので、プラスチックにより形成したレンズを使用する場合に比べて、光源ランプ1の近傍に配置しても熱変形や熱による着色(黄変)等の不具合の発生を抑えることができる。
【0029】
また、コレクターレンズ2b及びコンデンサレンズ3の材料に低分散ガラスを使用すれば、コレクターレンズ2b及びコンデンサレンズ3も365nm程度の紫外線を透過し、光源ランプ1からの紫外光で、コレクターレンズ2a、コレクターレンズ2b及びコンデンサーレンズ3を介して標本4を照明することができるとともに、シリコーンゴムの成型で製造コストも低廉な照明光学系を提供することができる。
【0030】
本発明の第1の実施の形態の光学顕微鏡では、光源ランプ1の近傍に配置する少なくとも1つのレンズをシリコーンゴムの材料により成型したレンズとしたが、光源ランプ1の近傍に配置したレンズ以外は紫外光の照明の必要がなければ、プラスチックの材料を用いることができ、熱変形等の不具合の発生を抑えることができる。
【0031】
なお、本発明は、上述した実施の形態のような照明系に限らず、必要とされる機能、性能を考慮した上で光学顕微鏡の観察系に適用することもできる。
従って、本実施の形態によれば、ゴム特にシリコーンゴムの材料により成型したレンズで形成することにより、安価な光学顕微鏡を提供することができる。
<第2の実施の形態>
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る光学顕微鏡を示す図である。
【0032】
まず、最初に、透過照明光学系について説明する。
同図に示すように、ランプハウス11にはハロゲンランプ等のランプ12が設けられている。なお、13は、ランプ12のフィラメントを示す。
【0033】
また、ランプハウス11とフレーム16のベース14とはレンズ枠15によって連結されており、レンズ枠15のランプ12側の一端にはリング状の押さえ環17によってコレクターレンズ18が保持されている。また、コレクターレンズ18の外径とレンズ枠15の一部内径が嵌合して位置決めされていて、このレンズ枠15及び押さえ環17にはネジ部が形成されており、この各々のネジ部でコレクターレンズ18を保持している。
【0034】
レンズ枠15の他端には、シリコーンゴムの材料により成形したレンズで形成されたコレクターレンズ19が設けられている。このコレクターレンズ19は、レンズ自身のフランジ部でレンズ枠15に固定されている。
【0035】
ランプ12から照明光は、コレクターレンズ18,19を通して平行光となる。この平行光の光軸(透過照明の水平光軸)20a上には、視野絞り(FS)21を通過した照明光を透過照明の水平光軸20aに対して垂直方向、すなわち光軸20bに反射するミラー22が設けられている。
【0036】
ミラー22において反射した照明光は、窓レンズ23、コンデンサ受26上に載置されたコンデンサ27の開口絞り28及びコンデンサレンズ29、ステージ25上に載置された試料30、試料を拡大するための対物レンズ31、ダイクロイックミラー32、特定の波長成分を吸収するための吸収フィルタ33を通過する。ステージ受24は、フレーム16に対して上下動可能である。
【0037】
そして、吸収フィルタ33を通過した対物レンズ31からの平行光は、鏡筒35内の結像レンズ34によって結像された後、プリズム36によって偏向され、偏向された照明光の観察光軸20cに配置された接眼レンズ37に導かれる。なお、通常の透過照明の場合は、ダイクロイックミラー32と吸収フィルタは光軸20bから外しておく。
【0038】
この透過照明光学系においては、ハロゲンランプのフィラメントから出る光束を2つのコレクターレンズ18,19で平行光とする。そして、この平行光を窓レンズ23によって集光し、開口絞り28の位置にフィラメント像を投影し、コンデンサレンズ29でフィラメント像を平行光にして試料を照明する。すなわち、この透過照明光学系においては、ケーラー照明を採用している。
【0039】
上述のように、2つのコレクターレンズ18,19は、コレクターレンズのレンズ枠15に固定されている。このレンズ枠15は、ランプハウス11とベース14を連結している。
【0040】
光源ランプ12に近いコレクターレンズ(CL1)18は、リング状の押え環17によってレンズ枠15に固定され、コレクターレンズ(CL2)19はシリコーンゴムにより形成されており、レンズ自身のフランジでレンズ枠15に固定されている。
【0041】
例えば、ランプ12が100W以上になると、コレクターレンズ(CL1)18が200℃を超えてシリコーンゴムのレンズの耐熱を超えることがある。このような場合であっても、コレクターレンズ(CL1)18をガラスにより形成しているので、コレクターレンズ(CL2)19に伝わる熱は、レンズ枠15を伝わってくる伝導熱が主体になって、100℃以下となる。
【0042】
このように、光源ランプ12に近いコレクターレンズ(CL1)18をガラスにして、レンズ枠15を介したコレクターレンズ(CL2)19はシリコーンゴムにすることにより、透過の照明光学系を、光源ランプの近傍に配置しても熱変形が生じることはない。また、コレクターレンズ19の成形加工も容易なことから製造コストも低廉な照明装置を提供することが可能となる。
【0043】
光軸20b上に写真装置75を配置した場合、シリコーンゴムのレンズは耐熱があるので、熱による変色や着色がなく、写真装置の写真で良好な色再現(適正な色をだす)を確保できる。観察像の色の変化についても同様である。
【0044】
次に、落射蛍光の照明光学系について説明する。
落射蛍光の照明光学系においても、ケーラー照明が採用されている。すなわち、ランプハウス43に格納された水銀灯41のアーク42から出射した照明光は、投光管48内の2つのコレクターレンズ44、45によって開口絞り46付近に結像される。
【0045】
そして、この結像された像は、投影レンズ49により対物レンズ31の瞳の付近に集光され、対物レンズ31によりこの集光された照明光を平行光にして試料30が照明される。20dは落射照明の水平光軸で、水銀灯41からダイクロイックミラー32で偏向される間に配置されたコレクターレンズ44,45等の各光学素子の光軸である。視野絞り47は、投影レンズ49及び対物レンズ31で試料30に絞り像が投影され、絞りの径を変えると照明の範囲を変えることができる。
【0046】
投影レンズ49と対物レンズ31との間にある励起フィルタ50、ダイクロイックミラー32は平行平板であり、結像関係には関与しないが、蛍光観察のU励起の場合に励起フィルタ50、ダイクロイックミラー32で365nmの光を試料に照明して、試料から最も短い波長で青の500nm弱以上の蛍光をダイクロイックミラー32、吸収フィルタ33、結像レンズ34で接眼レンズ37に導いて、この蛍光を観察する。
【0047】
蛍光を観察するとき、2つのコレクターレンズ44,45や投影レンズ49は365nmの光を試料に照明する必要があり、対物レンズ31を含めて365nmの光を通さなければならないので、プラスチックレンズは使えない。シリコーンゴムのレンズは、2つのコレクターレンズ44,45や投影レンズ49に使うことができる。
【0048】
まず、アーク42に近いコレクターレンズ44をシリコーンゴムのレンズにするか、または2つのコレクターレンズ44,45をシリコーンゴムのレンズにする。
【0049】
更に、投影レンズ49もシリコーンゴムのレンズにすることができる。なお、アーク42に近いコレクターレンズ44を除くレンズ45,49をシリコーンゴムのレンズにするのが望ましい。蛍光観察のU励起の場合は照明波長が365nm程度であり、ガラスのコレクターレンズ44は従来から使われている低分散ガラスを使用する。
【0050】
水銀灯41のアーク42付近はかなりの高温になることがあり、ガラスレンズの方が望ましい。レンズの固定は透過の照明光学系と同様な機構にする。
コレクターレンズや投影レンズに、シリコーンゴムレンズを使用すると、石英や蛍石などの紫外の特殊なガラスレンズまたは石英や蛍石より扱いやすい低分散ガラスレンズに比べて、軽量で研磨不要である。また、プラスチックレンズより紫外線が通るので365nmなどのU励起蛍光観察の照明光学系に有効である。
【0051】
従来のガラスレンズを用いる場合に比較し、紫外線の透過率も高く、成形加工も容易なことから製造コストも低廉な照明系を構成することが可能となる。
なお、コレクターレンズ44,45は投光管48内に配置しても、コレクターレンズ44,45をランプハウス43側に配置して投光管48と連結してもよい。
【0052】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る他の光学顕微鏡を示す図である。
フレーム51のベース52にはランプ53が格納されている。ランプ53のフィラメント54から出射した照明光の光路上には、フロスト平板ガラス55、シリコーンゴムからなるコレクターレンズ56及び平板ガラス57が設けられている。
【0053】
フレーム51に対して上下動可能なステージ受け58にはコンデンサ受け59が設けられている。コンデンサー受け59はステージ受け58に対して上下移動可能で、コンデンサー受け59上にはコンデンサー60が設けられている。
【0054】
コンデンサー60は、開口絞り60、コンデンサーレンズ62を有する。コンデンサーレンズ62を通過した照明光は、ステージ63上に載置された試料64、レボルバ66に取り付けられた対物レンズ65を通過した後、鏡筒68内のプリズム69によって偏向される。光軸67は、コレクターレンズ56、コンデンサーレンズ62及び対物レンズ65の光軸である。
【0055】
このプリズム69によって偏向された照明光は、観察光軸70の上に設けられた接眼レンズ71を通して、肉眼72によって観察される。
本実施の形態の光学顕微鏡の照明光学系においては、ランプ53から出射した照明光は、コレクターレンズ56によって集光され、ランプ53のフィラメント像54が開口絞り61付近に結像される。
【0056】
このフィラメント像は、コンデンサーレンズ62により平行光束及び集光光束となって試料64を照明する。照明された試料64は、対物レンズ65、プリズム69を含む鏡筒68及び接眼レンズ71によって拡大観察される。すなわち、本実施の形態の光学顕微鏡の照明光学系は、簡易のケーラー照明である。
【0057】
なお、ケーラー照明の代わりにフィラメント像をコレクターレンズ56で平行光束にし、コンデンサーレンズ62で集光光束及びフィラメント像を集光するクリティカル照明でもよい。
【0058】
図6は、ベース内部を示す図である。
なお、図5と同一部分には同一符号を付して説明する。
同図に示すように、ランプ53はベース52にビス等(不図示)で一体化した底板52aと、この底板52aに取り付けられたランプソケット81により保持されている。ランプソケット81は、コード82を介して電源83に接続されている。電源83は、電源コード84を介して供給される商用電圧をランプの使用電圧に変換するためのものである。なお、ベース52の上面及び底面には放熱のための開口95が形成されている。また、ベース52の底面にはゴム足85が取り付けられている。
【0059】
ランプ53のフィラメント54は、コイルをつぶした形状であり、奥行きやコイルの隙間により理想平面ではない。フロスト平板ガラス55は、試料面をほぼ均一に照明にするために設けられている。
【0060】
フロスト平板ガラス55は、コレクターレンズ56側をフロスト面にして枠91に固定されている。また、枠91は、ネジ92によってレンズ枠93に固定されている。
【0061】
コレクターレンズ56は、シリコーンゴムにより形成され、ランプ53側の形状は球面形状で、試料側の形状は非球面形状である。また、コレクターレンズ56には、有効光束の径よりも大きい部分にフランジ56aが形成されている(図9参照)。
【0062】
そして、このフランジ56aをレンズ枠93と枠91とで挟むことにより、コレクターレンズ56を固定する。コレクターレンズ56の非球面形状の断面は円筒形状であり、レンズ枠93の内径と合わせることにより光軸に対する位置を定めている。
【0063】
コレクターレンズ56は、フロスト平板ガラス55及び平板ガラス57により密封されている。これは、コレクターレンズ56の外辺のレンズ枠付近に溜まったゴミを清掃するのは困難であることから、この部分にゴミが溜まるのを防ぐためである。
【0064】
ランプ53の直上に配置されたコレクターレンズ56をゴムにより形成することにより、レンズ自身が熱膨張して多少レンズの屈折率が変化するので、先に述べたケーラー照明の方が直接試料面に結像しない点で有利である。しかし、温度上昇が少なければクリティカル照明を適用することも可能である。
【0065】
また、コレクターレンズ56はゴムにより形成されているが、その形状をランプ側を球面形状、試料側を非球面形状とすることにより、球面収差の少なく、かつ安価なレンズを実現することができる。
【0066】
なお、大きな屈折率が必要な場合には、図7に示すように、ランプ53側の第1番目のレンズをシリコーンゴムにより形成された球面のコレクターレンズ101aとし、第2番目のレンズをシリコーンゴムにより形成された球面形状及び非球面形状を有する第2番目のコレクターレンズ101bとしてもよい。
【0067】
また、ランプ52の出力が大きい場合には、第1番目のレンズ101aをガラスにより形成されたレンズとする方が望ましい。さらに、図8に示すように、レンズ101a及びレンズ101bの位置を代えてもよい。
【0068】
図9は、図6に示したコレクターレンズを示す図である。
同図において、56aはフランジ部、56bはレンズ光軸に対して芯の出ている芯外径部(図中のD寸法部)、56cはコレクターレンズの非球面部、56dは球面部である。
【0069】
このコレクターレンズ56の形状は、芯外径が約40mm、非球面部56cの頂点と球面部56cの頂点との距離(光軸上)は約30mm、フランジ部56aの径は50mm、その厚さは約2mmである。
【0070】
このコレクターレンズの光学機械への組み込み方は図6に示した。ここで、コレクターレンズ56の固定の仕方について説明する。
レンズ光軸に対して芯の出ている芯外径部56bをレンズ枠の内径と合わせることで、レンズ枠の中心とレンズ光軸とが一致する。また、レンズの光軸に沿った光源ランプのフィラメントや他のレンズ等との位置をフランジ部56aのいずれか一方の面で合わせる。
【0071】
レンズの保持は、薄いフランジ部56aで行い、先のデータからレンズ厚みの約7%または約10%以下の部分で固定する。このフランジ部56aは、レンズの固定に大きな役割を果たす。
【0072】
フランジ部56aの厚さ薄くすることで非球面部56cと球面部56dの形状すなわちレンズに要求される性能を損なうことなく固定することができる。逆に、非球面部56c、球面部56d及び芯外径部56bからなる薄いフランジ部56aがないゴムのレンズを押え環等で力を加えて固定すると、非球面部や球面部またレンズ内部に歪みが入る等で所望のレンズ性能を発揮できないおそれがある。
【0073】
薄いフランジ部56aを表現を変えると、固定力緩衝部とも言い替えられる。このフランジ部56aは、ゴムレンズ自身にこの固定力緩衝部を一体的に成形できるので、成形加工も容易であり、製造コストも低廉な照明系を構成することが可能となる。
【0074】
図10は、固定力緩衝部を有するゴムにより形成されたレンズの変形例を示す図である。また、図11は、図10に示したレンズの正面図である。
同図に示すように、レンズ111は、レンズ保持部112にレンズ111のフランジ部111aで保持されている。フランジ部111aは、厚さの厚い鍔(つば)部と、厚さの薄い鍔部からなる。
【0075】
レンズの芯は、レンズ111の芯外径部111bとレンズ保持部の内径Aとで合わせる。レンズの光軸方向において、内径Bをフランジ部111aを変形させて内径Bを通過させ、フランジ部のうち厚さの厚い鍔部をレンズ保持部112に設けられた内径Cの溝にゴムの弾性を利用してはめ込む。
【0076】
ここで、厚さの厚い鍔部には固定力が働くが、厚さの薄い鍔部を介することにより、レンズ111の両面の球面部に働く固定力の影響がなくなる。このフランジ部のうち、厚さの薄い鍔部は、固定力緩衝部とも言い換えることができる。
【0077】
フランジ部111aには、孔111cが形成されている。この孔111cは、レンズ111を修理するためにレンズ111を取り外す場合に、この孔111cに棒状の外し治具等を挿入するためのものである。
【0078】
なお、フランジ部111aに孔111cを形成する代わりに、図12に示すように、突起部111dを設けてもよい。このような孔111cや突起部111dを設けることで、レンズ111やレンズ保持部112を修理するときに、レンズ111をレンズ保持部112から容易に外せるので修理性もよい。
【0079】
図13は、固定力緩衝部を有するゴムにより形成されたレンズの変形例を示す図である。また、図14は、図13に示したレンズ及びレンズ保持部の正面図である。
【0080】
図10においては、レンズ111のフランジ部111aをレンズ保持部112の内径にはめ込むことによりレンズ111を保持していた。本実施の形態においては、図13に示すように、レンズ111のフランジ部111aは薄い鍔部111fと、この薄い鍔部111fに略直交するように取り付けられた厚い鍔部111eを有する。
【0081】
レンズ保持部112の外周には、厚い鍔部111eをはめ込むための溝が形成されている。レンズ111の芯は、レンズ保持部112の外周に形成された溝に厚い鍔部111eをゴムの弾性を利用してはめ込む。すなわち、レンズ111の厚い鍔部111eと薄い鍔部111fとは、レンズ保持部112を抱き込むようにして、レンズ111を保持している。
【0082】
このようにレンズ111を固定することにより、厚い鍔部111eには固定力が働くが、薄い鍔部111fを介することにより、レンズ111の両側の球面部には固定力の影響は及ばない。
【0083】
厚い鍔部111eと薄い鍔部111fとを有するフランジ部111aは、図14の点線Aで示すように全周に形成されていても、また、実線Bのようにレンズ111の外周に部分的に形成されていてもよい。
【0084】
なお、修理の時に治具等によりフランジ部111aを外すことができるので、容易にレンズ111の固定を解除することができる。また、フランジ部111aは、レンズ111と一体的に形成することができるので、レンズ111を安価に製造することができ、その結果、安価な照明光学系を提供することができる。
【0085】
図15は、固定力緩衝部を有するゴムにより形成されたレンズの変形例を示す図である。また、図16は、レンズの取り付け部の詳細を示す図、図17は、図15に示したレンズ及びレンズ保持部の正面図である。
【0086】
図16に示すように、レンズ111のフランジ部111aは、厚さの薄い鍔部131と、厚さの厚い鍔部132とを有する。レンズ111の光軸方向の位置合わせはレンズ111の当てつけ面135によって行なわれ、光軸に直交する方向の位置合わせは、外径部136によって行われる。
【0087】
厚さの厚い鍔部132には、図16に示すように、球状の先端部を有する突起部133が形成されている。また、この鍔部132には、突起部133にまで連通する孔134が形成されている。
【0088】
レンズ111を固定するためには、ゴムの弾性を利用して突起部133をレンズ保持部112に形成された孔112aにはめ込み、その後、突起部133に設けられた孔134に棒状の固定治具を挿入することにより、レンズ111がレンズ保持部112に固定される。
【0089】
なお、このようなレンズ111にも、厚さの厚い鍔部132に固定力が働くが、厚さの薄い鍔部131を介することにより、レンズ111の両側の球面部に働く固定力の影響はなくなる。
【0090】
また、図17に示すように、フランジ部111aには、鍔部132に形成された孔134の両側に、円周に沿って長円の開口137が形成されている。この開口137は、修理等の時にレンズ111を外すために利用される。
【0091】
すなわち、この開口137に棒状の外し治具を挿入して、レンズ111をレンズ保持部材112から取り外す。なお、上記外し治具は、固定治具と同じものであってもよい。
【0092】
本実施の形態のレンズ111においても、固定力緩衝部を一体的に形成することができるので、製造コストが安価な光学顕微鏡の照明光学系を提供することができる。
【0093】
本実施の形態のレンズ111をレンズ保持部に保持する例を示したが、この保持の例は、第2の実施の形態のコレクターレンズ18(、19)やコレクターレンズ44、45及び投影レンズ49、他の実施の形態のコンデンサーレンズ3等に応用可能である。
<第3の実施の形態>
図18は、本発明の第3の実施の形態に係るプロジェクターの照明光学系を示す図である。
【0094】
ランプ121から出射した照明光は、凹レンズ等の拡散系のレンズにより広げられる。ここでは、拡散系のレンズとして、シリコーンゴムの材料により成型したレンズで形成されたフレネルレンズ122を使用する。
【0095】
フレネルレンズ122によって拡散された照明光は、凸レンズなどの集光系のレンズ123によって平行光とされ、平板ガラス124上に載置された試料125(ペン等で文字等が描かれた透明シート)を照明する。
【0096】
なお、集光系のレンズ123は、プラスチック材料により成型したフレネルレンズを使用している。
そして、試料125を通過した照明光は、投影レンズ126によって拡大され、ミラー127で反射された後に、スクリーン128に投影される。スクリーン128上の試料125のピントは、試料125を載置した平板ガラス124を投影レンズ126に対して図示の矢印の方向に上下に移動することにより合わせられる。
【0097】
なお、本実施の形態においては、拡散系のレンズにフレネルレンズを使用する場合について説明したが、球面レンズであってもよい。
本実施の形態によれば、ゴムにより形成されたフレネルレンズ122は加工が容易なことから安価な照明装置を提供することが可能となる。また、ゴムにより形成されたフレネルレンズは、光源121の近傍に配置しても熱により変形することがない。
【0098】
【発明の効果】
以上詳記したように、本発明によれば、安価な光学機械の照明装置を提供することができる。また、光学素子の固定を容易にすることができる光学機械の照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光学顕微鏡の照明光学系を示す図。
【図2】本発明の第1の形態の光学顕微鏡における照明光学系の変形例を示す図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る光学顕微鏡の照明光学系の変形例を示す図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る光学顕微鏡を示す図。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る他の光学顕微鏡を示す図。
【図6】同第2の実施の形態に係る光学顕微鏡のベースを示す図。
【図7】同第2の実施の形態に係る光学顕微鏡のコレクターレンズの変形例を示す図。
【図8】同第2の実施の形態に係る光学顕微鏡のコレクターレンズの変形例を示す図。
【図9】同第2の実施の形態に係る光学顕微鏡のコレクターレンズを示す図。
【図10】固定力緩衝部を有するゴムにより形成されたレンズの変形例を示す図。
【図11】図10に示したレンズの正面図。
【図12】固定力緩衝部を有するゴムにより形成されたレンズの変形例を示す図。
【図13】固定力緩衝部を有するゴムにより形成されたレンズの変形例を示す図。
【図14】図13に示したレンズ及びレンズ保持部の正面図。
【図15】固定力緩衝部を有するゴムにより形成されたレンズの変形例を示す図。
【図16】レンズの取り付け部の詳細を示す図。
【図17】図15に示したレンズ及びレンズ保持部の正面図。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係るプロジェクターの照明光学系を示す図。
【符号の説明】
1…光源ランプ、
2…コレクターレンズ、
2a…コレクターレンズ、
2b…コレクターレンズ、
3…コンデンサレンズ、
4…標本、
5…対物レンズ、
11…ランプハウス、
12…ランプ、
13…フィラメント、
14…ベース、
15…レンズ枠、
16…フレーム、
17…押さえ環、
18…コレクターレンズ、
19…コレクターレンズ、
20…光軸、
21…視野絞り(FS)、
22…ミラー、
23…窓レンズ、
44,45…コレクターレンズ、
55…フロスト平板ガラス、
56…コレクターレンズ、
56a…フランジ、
56b…芯外径部、
56c…コレクターレンズの非球面部、
56d…コレクターレンズの球面部、
57…平板ガラス、
62…コンデンサーレンズ、
91…枠、
92…ネジ、
93…レンズ枠、
101a…コレクターレンズ、
101b…コレクターレンズ、
111…レンズ、
111a…フランジ部、
111b…芯外径部、
111c…孔、
111d…突起部、
111e…鍔部、
111f…鍔部、
122…フレネルレンズ、
131…鍔部、
132…鍔部、
133…突起部、
134…孔、
135…当てつけ面、
136…開口。
Claims (7)
- 光学機械用の照明光を出力する照明手段と、
前記照明手段によって出力された照明光の光路上で、かつ前記照明手段に隣接して配置され、ガラスにより形成された第1のレンズと、
前記第1のレンズを通過した照明光の光路上で、かつ前記第1のレンズに隣接して配置され、前記照明手段からの熱に対する耐熱性を有するゴムにより形成された第2のレンズと
を具備することを特徴とする光学機械の照明装置。 - 複数のレンズと、照明用の光源とを有する光学機械の照明装置において、
前記複数のレンズのうちの少なくとも前記光源と隣接したレンズを前記光源からの熱に対する耐熱性を有するゴムにより形成したことを特徴とする光学機械の照明装置。 - 前記ゴムにより形成したレンズは、保持部に保持されることにより生ずる歪みを低減するための緩衝部を有効光束外に具備することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光学機械の照明装置。
- 前記緩衝部は、前記レンズを保持する厚肉部と、歪みを吸収する薄肉部とを有することを特徴とする請求項3記載の光学機械の照明装置。
- レンズと、照明用の光源と、前記光源を保持する光源保持部とを有する光学機械の照明装置において、
前記光源保持部に保持され、ゴムにより形成されたレンズと、
前記レンズと前記光源との間に配置された第1の平板ガラスと、
前記レンズに対して前記第1の平板ガラスと反対側に配置された第2の平板ガラスとを備え、
前記レンズは、前記第1の平板ガラス、前記第2の平板ガラス及び前記光源保持部によって密封されていることを特徴とする光学機械の照明装置。 - 前記ゴムにより形成したレンズは、非球面形状を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5いずれか1項に記載の光学機械の照明装置。
- 前記第1の平板ガラスは、フロストガラスで構成したことを特徴とする請求項5記載の光学器械の照明装置。
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