JP3649283B2 - 紫外レーザ光用光学材の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外領域のレーザ光(以下、紫外レーザ光という)の光路に設けられる窓材、レンズ材、アッテネータ(attenuator)材、ビームスプリッタ(beam splitters)材、レーザキャビティオプティクス(laser cavity optics)材及びビームシェイピングオプティクス(beam-shaping optics)材等の紫外レーザ光用光学材の製造方法に関する。更に詳しくは四ほう酸リチウム単結晶(Li2B407)からなる紫外レーザ光用光学材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
工業的に利用されている紫外レーザ光としてエキシマレーザ(excimer laser)がある。エキシマレーザは、1970年にソ連のBasov等により液体Xeを電子ビームで励起する方法で初めて実現した。1976年には放電励起方式でも発振に成功し、産業用レーザとして使用されるようになった。放電励起エキシマレーザは紫外線のパルス繰返し発振レーザであって、ArF(193nm)、KrF(248nm)、XeCl(308nm)などの化合物が発する紫外光を光共振器により増大させ、レーザ光として取り出したものである。このレーザの応用としては、高分子材料の加工(アブレーション加工)、表面改質、マーキング、薄膜作製等の他に、医薬品の製造、同位体の分離、レーザレーダなどの多くの研究が進められている。
【0003】
このエキシマレーザで発生する紫外レーザ光を取り出し、使用に供するために、紫外レーザ光を透過可能な窓材、レンズ材等が設けられている。
従来、この種の紫外レーザ光用窓材、レンズ材等は、CaF2、MgF2、合成シリカ等により構成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、CaF2やMgF2は透過率が良好である反面、熱伝導率が悪く、もろく割れ易い欠点があった。またCaF2やMgF2はカラーセンタが発生し易く、紫外レーザ光用光学材に使用するときには、カラーセンタが発生していない箇所を選別する必要があった。また合成シリカはカラーセンタは発生しにくいものの、曇り易い欠点があった。
本発明の目的は、熱伝導率が良好で割れにくく、カラーセンタが発生せず、曇りのない紫外レーザ光用光学材を製造する方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、高出力の紫外レーザ光を損傷することなく高い透過率で透過可能な紫外レーザ光用光学材を製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、チョクラルスキー法により四ほう酸リチウム融液から四ほう酸リチウム単結晶を引上げてこの単結晶から紫外レーザ光用光学材を製造する方法において、上記四ほう酸リチウム融液表面と上記融液直上10mmの間の第1温度勾配を50〜150℃/cmとし、上記融液直上10mmより上部の第2温度勾配を上記第1温度勾配より小さい5〜50℃/cmとしてこの単結晶の直胴部を0.1〜2mm/時間の引上げ速度で引上げることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の四ほう酸リチウム単結晶は、図2に示すようにチョクラルスキー法(CZ法)により製造される。即ち、四ほう酸リチウム単結晶の育成装置20は、四ほう酸リチウム多結晶が融解されている白金るつぼ21を有する。四ほう酸リチウムは酸化物の中では低融点であるため、白金るつぼで育成することができる。白金るつぼ21の周囲には断熱材22、23を介してるつぼ21内の四ほう酸リチウム多結晶を融解させるための抵抗加熱ヒータのような加熱装置24が設けられる。るつぼ21内の融液21aの温度は熱電対29により検出される。るつぼ21の上部には断熱壁25、26が二重に設けられており、種結晶が取付けられる引上げ軸27が断熱壁25、26を貫通している。
【0007】
この育成装置20を用いて四ほう酸リチウム多結晶から直径1インチ〜4インチ程度の四ほう酸リチウム単結晶28を育成し、その後この単結晶を紫外レーザ光用の窓材、レンズ材、アッテネータ材、ビームスプリッタ材、レーザキャビティオプティクス材及びビームシェイピングオプティクス材等の光学材に応じた形状に加工する。
【0008】
図1に示すように、四ほう酸リチウム単結晶からなる窓材11が紫外レーザ光の光路10に設けられ、四ほう酸リチウム単結晶からなるレンズ材12が紫外レーザ光の光路10に設けられる。また図示しないが、四ほう酸リチウム単結晶からなるアッテネータ材が紫外レーザ光の光路に設けられ、四ほう酸リチウム単結晶からなるビームスプリッタ材が紫外レーザ光の光路に設けられる。また四ほう酸リチウム単結晶からなるレーザキャビティオプティクス材が紫外レーザ光の光路に設けられ、更に四ほう酸リチウム単結晶からなるビームシェイピングオプティクス材が紫外レーザ光の光路に設けられる。
四ほう酸リチウム単結晶は、レーザ入射光の波長に対する透明領域が広く、光損傷しきい値が高く、良質の大型結晶の作成が容易で、加工性に優れるため、紫外レーザ光用の窓材、レンズ材、アッテネータ材、ビームスプリッタ材、レーザキャビティオプティクス材及びビームシェイピングオプティクス材等の光学材として最適である。
ここでレンズはレーザビームの集光又は拡大に使用される。アッテネータは光強度が強すぎる場合に所望の強度まで減衰させるために、またビームスプリッタはレーザビームを分割するためにそれぞれ使用される。レーザキャビティオプティクスは光共振器を構成するレンズ、ミラーを含む光学部品である。更にビームシェイピングオプティクスはレーザビーム幅を調整するための光学部品である。
【0009】
この育成装置20を用いた四ほう酸リチウム単結晶の育成方法の一実施の形態を述べる。
所定のモル比の四ほう酸リチウム多結晶を白金るつぼ21内に充填し、加熱装置24で融解した後、所定の引上げ方位、例えば<110>で四ほう酸リチウム単結晶28を引上げる。このとき融液表面と融液直上10mmの間の第1温度勾配を50〜150℃/cmにし、それより上部の第2温度勾配を第1温度勾配より小さい5〜50℃/cm、好ましくは10〜40℃/cmにする。四ほう酸リチウム単結晶28の直胴部を引上げる際の引上げ速度を0.1〜2mm/時間、好ましくは0.3〜1mm/時間にする。
【0010】
融液表面と融液直上10mmの間の第1温度勾配が50℃/cm未満であると、育成される四ほう酸リチウム単結晶が多結晶化し易くなる。この温度勾配が150℃/cmを越えると、熱歪みによって育成される四ほう酸リチウム単結晶中に転位が生じ易くなる。また融液直上10mmより上部の第2温度勾配を融液表面と融液直上10mmの間の第1温度勾配より小さくすることにより、育成後期の熱膨張差によるクラックを抑制することができる。更に引上げ速度が0.1mm/時間未満では生産性に劣り、2mm/時間を越えると、単結晶中に亜結晶粒(subgrain)が生じたり、或いは結晶内部に気泡が発生して単結晶が白く濁り易くなる。
【0011】
【実施例】
次の本発明の実施例を比較例とともに説明する。
<実施例1>
図2に示した育成装置を用いて四ほう酸リチウム単結晶28を育成した。所定のモル比の純度99.99%の四ほう酸リチウム多結晶原料粉末を白金るつぼ21に充填した後、このるつぼ21を抵抗加熱ヒータ24で加熱して原料粉末を融解した。種結晶は<110>の結晶方位のものを用いた。融液表面と融液直上10mmの間の温度勾配(降温勾配)を100℃/cmにし、それより上部の降温勾配を30℃/cmにした。更に単結晶の直胴部育成時には0.5mm/時間の速度で単結晶を引上げ直径2インチの四ほう酸リチウム単結晶28を育成した。この育成した単結晶28をトポグラフで観察した結果、無欠陥であり、屈折率変動が10-6/mm以下であった。これらのことから単結晶28が紫外レーザ光用の窓材、レンズ材、アッテネータ材、ビームスプリッタ材、レーザキャビティオプティクス材及びビームシェイピングオプティクス材等の光学材に適していることが判った。
そのため、上記紫外レーザ光用光学材の中で、30mm×30mm×1mmの正方形の窓材11及び直径20mmの凸レンズ材12を単結晶28より加工した。
【0012】
<比較例1>
市販の紫外レーザ光用のCaF2からなる実施例1と同形同大の窓材及び凸レンズ材を比較例1とした。
<比較例2>
市販の紫外レーザ光用のMgF2からなる実施例1と同形同大の窓材及び凸レンズ材を比較例2とした。
<比較例3>
市販の紫外レーザ光用の合成シリカからなる実施例1と同形同大の窓材及び凸レンズ材を比較例3とした。
【0013】
<比較評価>
(a) 透過率
実施例1及び比較例1〜3の窓材について、透過率を調べた。その結果を図3に示す。図3から明らかなように、エキシマレーザのArF(193nm)及びKrF(248nm)の波長において、四ほう酸リチウム単結晶からなる実施例1は、フッ化物結晶の比較例1,2より劣るが、合成シリカからなる比較例3と比べて透過率が高かった。
【0014】
(b) 光損傷しきい値
実施例1及び比較例3の窓材について、レーザ光を絞って屈折率変動が生じる光損傷しきい値を測定した。即ち、Nd:YAGレーザ(1064nm)により10ナノ秒間レーザ光を照射して光損傷しきい値を測定した。その結果を図4に示す。図4より明らかなように、四ほう酸リチウム単結晶からなる実施例1の窓材は合成シリカからなる比較例3の窓材と比べて、約4倍であった。このことは強力な紫外レーザ光の照射に対して、実施例1の窓材は比較例3の窓材より耐久性が良好であることを示している。
【0015】
(c) カラーセンタの生成状況
実施例1及び比較例1〜3の凸レンズ材について、カラーセンタの生成状況を調べた。即ち、400Hz、100mJのKrF(248nm)のエキシマレーザを光学研磨した実施例1及び比較例1〜3の凸レンズ材に照射した。その結果、1時間の照射で比較例1及び比較例2のフッ化物結晶には着色が見られた。この着色は結晶中にカラーセンタが生じたことによる。一方、100時間照射しても実施例1の四ほう酸リチウム単結晶及び比較例3の合成シリカには着色は生じなかった。カラーセンタが生じると、透過率が低下し、レーザ品質が低下するようになる。
【0016】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の方法によれば、紫外レーザ光用窓材及びレンズ材を四ほう酸リチウム単結晶により製造することができる。四ほう酸リチウム単結晶で構成することにより、窓材及びレンズ材は熱伝導率が良好で割れにくくなり、カラーセンタ及び曇りを生じず、また高出力の紫外レーザ光を損傷することなく高い透過率で透過することができる優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の紫外レーザ光用窓材及びレンズ材を含むエキシマレーザ装置の構成図。
【図2】その窓材及びレンズ材の母材となる四ほう酸リチウム単結晶の育成装置の構成図。
【図3】実施例1及び比較例1〜3の窓材の真空紫外領域での透過率を示す図。
【図4】実施例1及び比較例3の窓材の光損傷しきい値を示す図。
【符号の説明】
10 紫外レーザ光の光路
11 窓材
12 レンズ材
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外領域のレーザ光(以下、紫外レーザ光という)の光路に設けられる窓材、レンズ材、アッテネータ(attenuator)材、ビームスプリッタ(beam splitters)材、レーザキャビティオプティクス(laser cavity optics)材及びビームシェイピングオプティクス(beam-shaping optics)材等の紫外レーザ光用光学材の製造方法に関する。更に詳しくは四ほう酸リチウム単結晶(Li2B407)からなる紫外レーザ光用光学材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
工業的に利用されている紫外レーザ光としてエキシマレーザ(excimer laser)がある。エキシマレーザは、1970年にソ連のBasov等により液体Xeを電子ビームで励起する方法で初めて実現した。1976年には放電励起方式でも発振に成功し、産業用レーザとして使用されるようになった。放電励起エキシマレーザは紫外線のパルス繰返し発振レーザであって、ArF(193nm)、KrF(248nm)、XeCl(308nm)などの化合物が発する紫外光を光共振器により増大させ、レーザ光として取り出したものである。このレーザの応用としては、高分子材料の加工(アブレーション加工)、表面改質、マーキング、薄膜作製等の他に、医薬品の製造、同位体の分離、レーザレーダなどの多くの研究が進められている。
【0003】
このエキシマレーザで発生する紫外レーザ光を取り出し、使用に供するために、紫外レーザ光を透過可能な窓材、レンズ材等が設けられている。
従来、この種の紫外レーザ光用窓材、レンズ材等は、CaF2、MgF2、合成シリカ等により構成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、CaF2やMgF2は透過率が良好である反面、熱伝導率が悪く、もろく割れ易い欠点があった。またCaF2やMgF2はカラーセンタが発生し易く、紫外レーザ光用光学材に使用するときには、カラーセンタが発生していない箇所を選別する必要があった。また合成シリカはカラーセンタは発生しにくいものの、曇り易い欠点があった。
本発明の目的は、熱伝導率が良好で割れにくく、カラーセンタが発生せず、曇りのない紫外レーザ光用光学材を製造する方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、高出力の紫外レーザ光を損傷することなく高い透過率で透過可能な紫外レーザ光用光学材を製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、チョクラルスキー法により四ほう酸リチウム融液から四ほう酸リチウム単結晶を引上げてこの単結晶から紫外レーザ光用光学材を製造する方法において、上記四ほう酸リチウム融液表面と上記融液直上10mmの間の第1温度勾配を50〜150℃/cmとし、上記融液直上10mmより上部の第2温度勾配を上記第1温度勾配より小さい5〜50℃/cmとしてこの単結晶の直胴部を0.1〜2mm/時間の引上げ速度で引上げることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の四ほう酸リチウム単結晶は、図2に示すようにチョクラルスキー法(CZ法)により製造される。即ち、四ほう酸リチウム単結晶の育成装置20は、四ほう酸リチウム多結晶が融解されている白金るつぼ21を有する。四ほう酸リチウムは酸化物の中では低融点であるため、白金るつぼで育成することができる。白金るつぼ21の周囲には断熱材22、23を介してるつぼ21内の四ほう酸リチウム多結晶を融解させるための抵抗加熱ヒータのような加熱装置24が設けられる。るつぼ21内の融液21aの温度は熱電対29により検出される。るつぼ21の上部には断熱壁25、26が二重に設けられており、種結晶が取付けられる引上げ軸27が断熱壁25、26を貫通している。
【0007】
この育成装置20を用いて四ほう酸リチウム多結晶から直径1インチ〜4インチ程度の四ほう酸リチウム単結晶28を育成し、その後この単結晶を紫外レーザ光用の窓材、レンズ材、アッテネータ材、ビームスプリッタ材、レーザキャビティオプティクス材及びビームシェイピングオプティクス材等の光学材に応じた形状に加工する。
【0008】
図1に示すように、四ほう酸リチウム単結晶からなる窓材11が紫外レーザ光の光路10に設けられ、四ほう酸リチウム単結晶からなるレンズ材12が紫外レーザ光の光路10に設けられる。また図示しないが、四ほう酸リチウム単結晶からなるアッテネータ材が紫外レーザ光の光路に設けられ、四ほう酸リチウム単結晶からなるビームスプリッタ材が紫外レーザ光の光路に設けられる。また四ほう酸リチウム単結晶からなるレーザキャビティオプティクス材が紫外レーザ光の光路に設けられ、更に四ほう酸リチウム単結晶からなるビームシェイピングオプティクス材が紫外レーザ光の光路に設けられる。
四ほう酸リチウム単結晶は、レーザ入射光の波長に対する透明領域が広く、光損傷しきい値が高く、良質の大型結晶の作成が容易で、加工性に優れるため、紫外レーザ光用の窓材、レンズ材、アッテネータ材、ビームスプリッタ材、レーザキャビティオプティクス材及びビームシェイピングオプティクス材等の光学材として最適である。
ここでレンズはレーザビームの集光又は拡大に使用される。アッテネータは光強度が強すぎる場合に所望の強度まで減衰させるために、またビームスプリッタはレーザビームを分割するためにそれぞれ使用される。レーザキャビティオプティクスは光共振器を構成するレンズ、ミラーを含む光学部品である。更にビームシェイピングオプティクスはレーザビーム幅を調整するための光学部品である。
【0009】
この育成装置20を用いた四ほう酸リチウム単結晶の育成方法の一実施の形態を述べる。
所定のモル比の四ほう酸リチウム多結晶を白金るつぼ21内に充填し、加熱装置24で融解した後、所定の引上げ方位、例えば<110>で四ほう酸リチウム単結晶28を引上げる。このとき融液表面と融液直上10mmの間の第1温度勾配を50〜150℃/cmにし、それより上部の第2温度勾配を第1温度勾配より小さい5〜50℃/cm、好ましくは10〜40℃/cmにする。四ほう酸リチウム単結晶28の直胴部を引上げる際の引上げ速度を0.1〜2mm/時間、好ましくは0.3〜1mm/時間にする。
【0010】
融液表面と融液直上10mmの間の第1温度勾配が50℃/cm未満であると、育成される四ほう酸リチウム単結晶が多結晶化し易くなる。この温度勾配が150℃/cmを越えると、熱歪みによって育成される四ほう酸リチウム単結晶中に転位が生じ易くなる。また融液直上10mmより上部の第2温度勾配を融液表面と融液直上10mmの間の第1温度勾配より小さくすることにより、育成後期の熱膨張差によるクラックを抑制することができる。更に引上げ速度が0.1mm/時間未満では生産性に劣り、2mm/時間を越えると、単結晶中に亜結晶粒(subgrain)が生じたり、或いは結晶内部に気泡が発生して単結晶が白く濁り易くなる。
【0011】
【実施例】
次の本発明の実施例を比較例とともに説明する。
<実施例1>
図2に示した育成装置を用いて四ほう酸リチウム単結晶28を育成した。所定のモル比の純度99.99%の四ほう酸リチウム多結晶原料粉末を白金るつぼ21に充填した後、このるつぼ21を抵抗加熱ヒータ24で加熱して原料粉末を融解した。種結晶は<110>の結晶方位のものを用いた。融液表面と融液直上10mmの間の温度勾配(降温勾配)を100℃/cmにし、それより上部の降温勾配を30℃/cmにした。更に単結晶の直胴部育成時には0.5mm/時間の速度で単結晶を引上げ直径2インチの四ほう酸リチウム単結晶28を育成した。この育成した単結晶28をトポグラフで観察した結果、無欠陥であり、屈折率変動が10-6/mm以下であった。これらのことから単結晶28が紫外レーザ光用の窓材、レンズ材、アッテネータ材、ビームスプリッタ材、レーザキャビティオプティクス材及びビームシェイピングオプティクス材等の光学材に適していることが判った。
そのため、上記紫外レーザ光用光学材の中で、30mm×30mm×1mmの正方形の窓材11及び直径20mmの凸レンズ材12を単結晶28より加工した。
【0012】
<比較例1>
市販の紫外レーザ光用のCaF2からなる実施例1と同形同大の窓材及び凸レンズ材を比較例1とした。
<比較例2>
市販の紫外レーザ光用のMgF2からなる実施例1と同形同大の窓材及び凸レンズ材を比較例2とした。
<比較例3>
市販の紫外レーザ光用の合成シリカからなる実施例1と同形同大の窓材及び凸レンズ材を比較例3とした。
【0013】
<比較評価>
(a) 透過率
実施例1及び比較例1〜3の窓材について、透過率を調べた。その結果を図3に示す。図3から明らかなように、エキシマレーザのArF(193nm)及びKrF(248nm)の波長において、四ほう酸リチウム単結晶からなる実施例1は、フッ化物結晶の比較例1,2より劣るが、合成シリカからなる比較例3と比べて透過率が高かった。
【0014】
(b) 光損傷しきい値
実施例1及び比較例3の窓材について、レーザ光を絞って屈折率変動が生じる光損傷しきい値を測定した。即ち、Nd:YAGレーザ(1064nm)により10ナノ秒間レーザ光を照射して光損傷しきい値を測定した。その結果を図4に示す。図4より明らかなように、四ほう酸リチウム単結晶からなる実施例1の窓材は合成シリカからなる比較例3の窓材と比べて、約4倍であった。このことは強力な紫外レーザ光の照射に対して、実施例1の窓材は比較例3の窓材より耐久性が良好であることを示している。
【0015】
(c) カラーセンタの生成状況
実施例1及び比較例1〜3の凸レンズ材について、カラーセンタの生成状況を調べた。即ち、400Hz、100mJのKrF(248nm)のエキシマレーザを光学研磨した実施例1及び比較例1〜3の凸レンズ材に照射した。その結果、1時間の照射で比較例1及び比較例2のフッ化物結晶には着色が見られた。この着色は結晶中にカラーセンタが生じたことによる。一方、100時間照射しても実施例1の四ほう酸リチウム単結晶及び比較例3の合成シリカには着色は生じなかった。カラーセンタが生じると、透過率が低下し、レーザ品質が低下するようになる。
【0016】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の方法によれば、紫外レーザ光用窓材及びレンズ材を四ほう酸リチウム単結晶により製造することができる。四ほう酸リチウム単結晶で構成することにより、窓材及びレンズ材は熱伝導率が良好で割れにくくなり、カラーセンタ及び曇りを生じず、また高出力の紫外レーザ光を損傷することなく高い透過率で透過することができる優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の紫外レーザ光用窓材及びレンズ材を含むエキシマレーザ装置の構成図。
【図2】その窓材及びレンズ材の母材となる四ほう酸リチウム単結晶の育成装置の構成図。
【図3】実施例1及び比較例1〜3の窓材の真空紫外領域での透過率を示す図。
【図4】実施例1及び比較例3の窓材の光損傷しきい値を示す図。
【符号の説明】
10 紫外レーザ光の光路
11 窓材
12 レンズ材
Claims (1)
- チョクラルスキー法により四ほう酸リチウム融液から四ほう酸リチウム単結晶を引上げて前記単結晶から紫外レーザ光用光学材を製造する方法において、
前記四ほう酸リチウム融液表面と前記融液直上10mmの間の第1温度勾配を50〜150℃/cmとし、前記融液直上10mmより上部の第2温度勾配を前記第1温度勾配より小さい5〜50℃/cmとして前記単結晶の直胴部を0.1〜2mm/時間の引上げ速度で引上げることを特徴とする紫外レーザ光用光学材の製造方法。
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