JP3648505B2 - 炭酸ガス吸収材の再生方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は炭酸ガス吸収材の再生方法に係り、特にリチウムシリケートを含有する炭酸ガス吸収材の再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭化水素を主成分とする燃料を燃焼させる発動機等の装置において、排気ガス放出部分は炭酸ガスの回収に適した場所であるものの、300℃以上の高温になることが多い。
【0003】
炭酸ガスの分離方法としては、従来より酢酸セルロースを用いる方法、アルカノールアミン系溶媒による化学吸収法等が知られている。しかしながら、前述した分離方法では、いずれも導入ガス温度を200℃以下に抑える必要がある。したがって、高温度でのリサイクルを要する排気ガスに対しては、一旦、熱交換器等により200℃以下に排気ガスを冷却しなければならない。こうした方法を用いた場合には、結果として、炭酸ガス分離のためのエネルギー消費量が多くなるという問題があった。
【0004】
500℃を超える高温域で炭酸ガス吸収能を発揮する炭酸ガス吸収材として、リチウムジルコネートを主成分とするものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この炭酸ガス吸収材は、リチウムジルコネートが500℃以上の温度で炭酸ガスと反応して、ジルコニアと炭酸リチウムとが生成される現象を利用したものである。
【0005】
また、リチウムジルコネート以外のリチウム化複合酸化物、例えばアルミニウム、チタン、鉄あるいはニッケルを含有するリチウム化複合酸化物を用いた炭酸ガス吸収材も提案されている(例えば、特許文献2参照)。こうしたリチウム化複合酸化物は、200℃を超える高温で炭酸ガスを吸収して、酸化物(アルミナ、酸化チタン、酸化鉄あるいは酸化ニッケル)と炭酸リチウムとを生じる。
【0006】
酸化物と炭酸リチウムとは、より高温で加熱することによって逆向きに反応し、リチウム化複合酸化物を再生することができる。こうした特性を有することから、炭酸ガス吸収材としてリチウム化複合酸化物を用いることが注目されている。特に、酸化物として二酸化珪素を用いた場合には、他の酸化物を用いた場合よりも軽量なリチウムシリケートからなる炭酸ガス吸収材を得ることができる(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−99214号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平11−90219号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2000−262890号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、リチウムシリケート含有する炭酸ガス吸収材に炭酸ガスを吸収させた後、この炭酸ガスを放出させて炭酸ガス吸収材を再生するという工程を長期にわたって繰り返して行なった場合には、炭酸ガス吸収材の吸収性能が低下することが確認された。
【0011】
そこで本発明は、リチウムシリケートを含む炭酸ガス吸収材の吸収性能の低下を抑制して、長期にわたって繰り返し使用可能とするために、炭酸ガス吸収材を再生する方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様によれば、リチウムシリケートを含み、第1の温度での加熱により炭酸ガスを吸収した炭酸ガス吸収材を、前記第1の温度より高い第2の温度で加熱して前記炭酸ガスを放出させ、前記炭酸ガス吸収材を再生する方法であって、
前記第2の温度での加熱は、炭酸リチウムを添加して行なわれることを特徴とする炭酸ガス吸収材の再生方法が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明者らは鋭意検討した結果、リチウムシリケートを含有する炭酸ガス吸収材に炭酸ガスを吸収させ、その炭酸ガスを放出させて繰り返し使用した際の吸収特性の低下は、炭酸ガス吸収材からの炭酸リチウムの溶出に起因することを見出した。
【0015】
ここで、リチウムオルトシリケート(Li4SiO4)を例に挙げて、炭酸ガスの吸収反応および放出反応を説明する。リチウムオルトシリケートの炭酸ガス吸収反応および放出反応は、それぞれ以下に示す反応式(1)および(2)で表わされる。
【0016】
吸収:Li4SiO4+CO2→Li2SiO3+Li2CO3 (1)
放出:Li2SiO3+Li2CO3→Li4SiO4+CO2 (2)
リチウムオルトシリケートは、室温〜700℃程度の吸収温度域(第1の温度)で加熱することによって、前記反応式(1)で表わされる反応により炭酸ガスを吸収し、リチウムメタシリケート(Li2SiO3)と炭酸リチウム(Li2CO3)とが生成される。炭酸ガスを吸収した炭酸ガス吸収材を、前述の吸収温度域を越える温度(第2の温度)で加熱した場合には、前記反応式(2)で表わされる反応によって炭酸ガスが放出される。なお、炭酸ガスの吸収温度域は、反応雰囲気下における炭酸ガスの濃度に依存して変化し、炭酸ガス濃度が高くなるにしたがって吸収温度域の上限温度は高くなる。
【0017】
前記反応式(2)で表わされるように炭酸ガスが放出されることによって、炭酸ガス吸収材は再生される。この反応が進行して炭酸ガス吸収材が完全に再生されるためには、リチウムメタシリケートと同等のモル数で炭酸リチウムが存在していなければならない。しかしながら、炭酸リチウムが減少してリチウムメタシリケートとの組成比がずれていき、前記反応式(2)で表わされる反応が十分に進行せずリチウムオルトシリケートが完全に再生されない場合があることが、本発明者らの研究によって明らかになった。
【0018】
炭酸ガスの吸収反応により生じた炭酸リチウムの融点は、720℃付近である。したがって、炭酸ガスを放出させるために720℃以上の温度で炭酸ガス吸収材が加熱された場合には、炭酸リチウムは熔融状態となる。
【0019】
また、リチウムオルトシリケートを含有する炭酸ガス吸収材には、炭酸ガスの吸収速度を高めるために炭酸ナトリウムや炭酸カリウムといった他のアルカリ炭酸塩が添加されることがある。炭酸リチウムは、こうしたアルカリ炭酸塩と反応して共晶塩を形成し、材料の融点が低下する。その結果、リチウムが移動しやすくなり炭酸ガスの吸収速度が高められるものの、炭酸リチウムは熔融状態となって溶出することが考えられる。
【0020】
いずれの場合も、熔融した炭酸リチウムは、容器を構成している材料と反応するおそれがある。例えば、反応容器が酸化アルミニウムなどを含有する場合には、溶融した炭酸リチウムと酸化アルミニウムとが反応することが考えられる。炭酸ガスの吸収・放出を繰り返して多数回行なうことにより、炭酸リチウムが徐々に失われてリチウムシリケートの組成がずれ、その結果、吸収性能が低下して炭酸ガス吸収材の劣化の原因となると考えた。
【0021】
そこで本発明の実施形態においては、炭酸リチウムを添加して炭酸ガス吸収材の再生が行なわれる。これによって炭酸リチウムが補給されるので、リチウムシリケート中の炭酸リチウムが溶出して減少した場合であっても、前記反応式(2)で表わされる反応が十分に進行して、炭酸ガス吸収材を良好に再生することが可能となる。
【0022】
添加される炭酸リチウムは、例えば平均粒径0.5〜50μm程度の粉末状、または平均粒径200〜2000μm程度の顆粒状とすることができる。炭酸ガス吸収材が成形体の場合には、炭酸リチウムも成形体として添加してもよい。この場合、炭酸リチウムが偏在するのを避けるために、炭酸リチウム成形体は、炭酸ガス吸収材よりも小さいことが望まれる。
【0023】
炭酸リチウムは、これ自体を添加するのみならず、水酸化リチウム水溶液を供給して炭酸ガスとの反応により生じた反応生成物であってもよい。水溶液中の水酸化リチウムは、下記反応式(3)に示されるように炭酸ガスと反応して炭酸リチウムを生じる。
【0024】
2LiOH+CO2→Li2CO3+H2O (3)
粉末や顆粒状、または成形体状の炭酸リチウム、あるいは水酸化リチウム水溶液といった炭酸リチウム源は、以下のような方法で反応容器内に供給することができる。例えば、炭酸ガスの吸収反応が行なわれる前に、炭酸ガス吸収材とともに容器内に予め導入しておく方法が挙げられる。また、炭酸ガスの吸収反応や放出反応が行なわれている容器内に炭酸リチウム源を供給してもよい。この場合には、吸収反応または放出反応をいったん中断し、開放可能な温度まで反応容器を冷却する。反応容器を開けて所定の炭酸リチウム源を導入し、炭酸ガス吸収材と均一に混合して、再び連続して炭酸ガスの放出反応を行なわせる。場合によっては、反応をいったん中断して炭酸ガス吸収材を反応容器から取り出した後、炭酸リチウム源を供給し、再度炭酸ガス吸収材を容器内に戻して再生を行なってもよい。
【0025】
炭酸ガスの吸収・放出反応を繰り返して多数回行なう場合には、必ずしも放出反応のたびに炭酸リチウムを添加する必要はなく、炭酸ガス吸収材の吸収性能の低下が確認された場合に、炭酸リチウムを添加すればよい。
【0026】
いずれの場合も、反応容器の中では、炭酸ガス吸収材と炭酸リチウムとが均一に混合されていることが好ましい。炭酸ガスの放出反応の際、添加される炭酸リチウムの量は、炭酸ガス吸収材に対して0.1wt%以上10wt%以下であることが望まれる。0.1wt%未満の場合には、失われた炭酸リチウムを十分に補填することが困難となり、一方、10wt%を越えた場合には、炭酸リチウムが液化して炭酸ガス吸収材の表面を覆ってしまい、良好に再生することができないおそれがある。なお、炭酸リチウム源として水酸化リチウム水溶液を添加する場合には、前記反応式(3)により生成される炭酸リチウムの量が炭酸ガス吸収材に対して0.1wt%以上10wt%以下となるように、水溶液の濃度や添加量を調整すればよい。
【0027】
本発明の実施形態に用いられる炭酸ガス吸収材は、例えば、以下に説明する方法により製造することができる。
【0028】
まず、二酸化ケイ素および炭酸リチウムを、モル比で1:2となるように秤量し、メノウ乳鉢等で約0.1時間から約1時間混合する。得られた混合粉末をアルミナるつぼに収容し、箱型電気炉等で大気中、約0.5時間から約20時間、600〜1200℃で熱処理する。この熱処理によって、下記化学式(4)で示す反応が生じて、原料粉末としてのリチウムオルトシリケートが合成される。
【0029】
SiO2+2Li2CO3→Li4SiO4+2CO2 (4)
必要に応じて、このリチウムシリケート原料粉末には、炭酸ガス吸収材の炭酸ガス吸収速度を促進させるために、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムから選択される少なくとも1種のアルカリ炭酸塩を添加してもよい。こうしたアルカリ炭酸塩を添加する場合には、リチウムシリケートの割合が過度に減少して炭酸ガスの吸収性能が低下するのを避けるために、添加量を40mol%以下とすることが望まれる。アルカリ炭酸塩は、焼成する前の原料粉に添加して、その後共に焼成してもよい。
【0030】
粉末状の炭酸ガス吸収材は作業性が悪く、特に反応容器に吸収材を充填して用いる場合には、粉末が細かすぎることに起因して密集し圧力損失を生じるおそれがある。そこで、粉末状の炭酸ガス吸収材を成形して、気孔率40%程度の多孔体として用いることが好ましい。成形体に加工された炭酸ガス吸収材は、扱いやすくなることに加えて、炭酸ガスの流通経路が確保されるために圧力損失も生じにくくなる。
【0031】
焼成粉を成形するに当たっては、例えば、造粒や押し出しなどの手法を用いて、顆粒、円柱状、円盤状、またはハニカムなどの形状とすることができる。原料粉の成形および焼成の順番は特に規定されず、焼成前および後のいずれの原料粉を成形してもよい。
【0032】
粉末状の炭酸ガス吸収材を成形する際には、粒子を結合させるためのバインダ材料(結合材)を用いることができ、バインダとしては、無機質および有機質のいずれの材料を用いてもよい。無機質材料としては、例えば、粘土、鉱物、石灰乳などが挙げられる。また有機質材料としては、澱粉、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、パラフィンなどが挙げられる。バインダ材料の添加量は、リチウムシリケート原料粉に対して0.1wt%以上20wt%以下の範囲内とするのが好ましい。バインダは、水または有機溶媒などの適切な溶媒に溶解して、溶液として添加することができる。
【0033】
本発明の実施形態にかかる方法により炭酸ガス吸収材を再生するには、以下に説明する炭酸ガス分離装置を用いることができる。
【0034】
図1には、炭酸ガス分離装置の一例の概略断面図を示す。
【0035】
第1、第2の吸収筒11、12は、内管21、22と外管31、32とを含む二重構造になっている。内管21、22の内側が第1、第2の反応容器211、212であり、内管21、22とその外周に設けられた外管31、32との間が第1、第2の加熱器(加熱手段)201、202として配置されている。第1、第2の加熱器201、202によって、反応容器211、212をそれぞれ加熱することができる。
【0036】
第1、第2の反応容器211、212内には、炭酸ガス吸収材41、42がそれぞれ充填されている。炭酸ガス含有ガス供給管5から分岐された第1、第2の炭酸ガス含有ガス供給分岐管61、62は、第1、第2の反応容器211、212の上部にそれぞれ連結され、第1、第2のバルブ71、72が、第1、第2の炭酸ガス含有ガス供給分岐管61、62にそれぞれ設けられている。
【0037】
炭酸ガス回収用ガス供給管8から分岐された第1、第2の回収用ガス供給分岐管91、92は、第1、第2の反応容器211、212の上部にそれぞれ連結されている。第3、第4のバルブ73、74は、第1、第2の回収用ガス供給分岐管91、92にそれぞれ設けられている。
【0038】
第1、第2のガス排出分岐管101、102の一端は、第1、第2の反応容器211、212の下部にそれぞれ連結され、これらのガス排出分岐管101、102の他端は処理ガス排出管11に連結されている。第5バルブ75は、処理ガス排出管11に設けられている。第1、第2の回収ガス排出分岐管121、122の一端は、第1、第2の反応容器211、212の下部にそれぞれ連結され、これらの回収ガス排出分岐管121、122の他端は回収ガス排出管13に連結されている。第6バルブ76は、回収ガス排出管13に設けられている。
【0039】
さらに、第1,第2の反応容器211、212には、炭酸リチウムまたは水酸化リチウム水溶液といった炭酸リチウム源を導入する炭酸リチウム源導入管221,222が連結されている。これらの炭酸リチウム源導入管にはバルブ251,252が設けられており、こうした炭酸リチウム源導入管を介して、粉末状または成形体状の炭酸リチウム、あるいは水酸化リチウム水溶液といった炭酸リチウム源が反応容器内に導入される。炭酸ガス吸収材が十分に再生された後には、反応容器の下部に連結された炭酸リチウム源排出分岐管231,232および炭酸リチウム源排出管24を介して、炭酸リチウム源は反応容器から排出される。
【0040】
燃料ガスを燃焼する燃焼器14は、第1の吸収筒11に隣接して配置されている。燃焼ガス供給管15の一端は燃焼器14に連結され、その他端から、第1、第2の燃焼ガス供給分岐管161、162が分岐されている。第1、第2の燃焼ガス供給分岐管161、162は、第1、第2の加熱器201、202の下部側面にそれぞれ連結され、第7、第8のバルブ77、78が設けられている。
【0041】
第1、第2の排気管171、172は、第1、第2の加熱器201、202と連通して連結されている。燃焼器14に燃料ガスを導入すると、ここでの燃焼により生じた燃焼ガスは、燃焼ガス供給管15および第1、第2の燃焼ガス供給分岐管161、162を通して、第1、第2の加熱器201、202にそれぞれ供給される。燃焼ガスは、さらに、加熱器201、202の空間を流通して、第1、第2の排気管171、172から排気される。燃焼ガスが前記空間を流通する間に第1、第2の反応容器211、212内に充填された炭酸ガス吸収材41、42が加熱される。
【0042】
第1、第2の反応容器211、212に流通するガスの時間当たりの流通モル数は、炭酸ガス吸収材41、42の充填モル数に対して約4倍以上約50倍以下に設定することが好ましい。ガスの時間当たりの流通モル数が約50倍を超える場合には、第1、第2の反応容器211、212の容積利用率の観点から炭酸ガス吸収を効率よく行なうことが困難になる。一方、ガスの時間当たりの流通モル数を約4倍未満の場合には、吸収反応に伴う発熱量が大きくなりすぎて通過ガスの温度が上昇し、吸収反応自体が阻害されるおそれがある。反応容器容積の利用効率と、速やかな吸収反応の進行という両者の観点から、ガスの時間当たりの流通モル数は、約8倍以上約30倍以下にすることがより望ましい。
【0043】
炭酸ガス吸収材41、42が収容された第1、第2の反応容器211、212においては、以下に説明するような手順(1−1)、(1−2)で炭酸ガス吸収反応、炭酸ガス放出反応を交互に行なわせることによって、炭酸ガスの吸収および炭酸ガス吸収材の再生を連続して実施することができる。
【0044】
(1−1)第1吸収筒11での炭酸ガス吸収操作
まず、第1の反応容器211に連結された第1の炭酸ガス含有ガス供給分岐管61に設けられた第1バルブ71、および処理ガス排出管11に設けられた第5バルブ75を開き、残りのバルブ72、73、74、76、77、および78を閉じる。炭酸ガス含有ガス供給管5から炭酸ガス含有ガスを第1の炭酸ガス含有ガス供給分岐管61を通して、第1の反応容器211に供給する。第1の反応容器211に流通するガスの時間当たりの流通モル数は、前述したようにリチウムシリケートの充填モル数に対して約4倍以上約50倍以下に設定しておくことにより、ガス中の炭酸ガスは、炭酸ガス吸収材41に速やかに吸収・保持される。炭酸ガス濃度が低減されたガスは、第1のガス排出分岐管101および処理ガス排出管11を通して排出される。
【0045】
第2吸収筒12での炭酸ガス吸収も、同様な操作により行なわれる。
【0046】
(1−2)第2吸収筒12における炭酸ガス吸収材の再生操作
前記(1−1)で説明した第1の吸収筒11での炭酸ガス吸収操作を行なっている間に、第2の吸収筒12に連結された第2の回収用ガス供給分岐管92に設けられた第4バルブ74、回収ガス排出管13に設けられた第6バルブ76および第2の燃焼ガス供給分岐管162に設けられた第8バルブ78を、それぞれ開く。
【0047】
この後、燃焼器14から燃焼ガスを、燃焼ガス供給管15および第2の燃焼ガス供給分岐管162を通して第2の加熱器202に流通する。これによって、第2の反応容器212に充填された炭酸ガス吸収材42を約800℃以上に加熱するとともに、炭酸ガス回収用ガス供給管8から所望の回収用ガスを第2の回収用ガス供給分岐管92を通して前記第2の反応容器212に供給する。
【0048】
第2の反応容器212内には、炭酸リチウム源導入管222を介して粉末状または成形体状の炭酸リチウム、あるいは水酸化リチウム水溶液を予め導入しておく。炭酸ガスの吸収反応や放出反応をいったん停止して、炭酸リチウム源を導入することもできる。場合によっては、炭酸ガス吸収材42を反応容器212から取り出して炭酸リチウム源を導入し、再度、炭酸ガス吸収材を容器内に戻してもよい。
【0049】
炭酸ガス吸収材42にすでに吸収された炭酸ガスは、炭酸ガス放出反応が生じて速やかに放出され、それによって高濃度の炭酸ガスを含むガスが、第2の回収ガス排出分岐管122および回収ガス排出管13を通して回収される。第2の反応容器212内には炭酸リチウム源としての炭酸リチウム等が存在しているので、炭酸ガス吸収材42を再生することができる。
【0050】
第1吸収筒11における炭酸ガス吸収材の再生も、同様な操作により行なうことができる。
【0051】
上述したように、第1吸収筒11での炭酸ガス吸収操作を行なう際には、第2吸収筒12における炭酸ガス吸収材42の再生操作が同時に行なわれる。また、第1吸収筒11において炭酸ガス吸収材41の再生操作を行なう際には、第2吸収筒12での炭酸ガス吸収操作が同時に行なわれる。これらの操作を交互に繰り返すことによって、第1および第2の反応容器内に収容された炭酸ガス吸収材を連続的に再生することができる。
【0052】
内管21、22、外管31、32、第1、第2の炭酸ガス含有ガス供給分岐管61、62、第1、第2の回収用ガス供給分岐管91、92、第1、第2のガス排出分岐管101、102、および第1、第2の回収ガス排出分岐管121、122は、任意の材料により構成することができる。例えば、緻密質アルミナ、ニッケル、鉄からなる金属類などが使用できる。また、第1、第2の反応容器211、212内で生成される炭酸ガスを効率よく分離するためには、第1、第2の加熱器201、202の容量を大きくすることが望ましい。さらに、燃料ガスと炭酸ガス吸収材41、42との接触時間を長く保つことを考慮すれば、ガス流通方向に向け長い管状の形態が望ましい。
【0053】
また、原料ガスの反応温度によって必要に応じ、反応容器内の温度を所定の温度に設定するようにヒーターなどの温度制御を反応容器の内部あるいは外部に設定することもできる。
【0054】
本発明の実施形態にかかる方法によれば、炭酸ガスを吸収してリチウムメタシリケートが形成された炭酸ガス吸収材は、炭酸リチウムを添加し加熱して炭酸ガスを放出させることによって再生される。十分な量の炭酸リチウムが存在しているので、リチウムメタシリケートは炭酸リチウムと反応することによって、実質的に全てがリチウムオルトシリケートとなり、炭酸ガス吸収材はほぼ完全に再生される。
【0055】
こうして再生された炭酸ガス吸収材は、使用前の吸収性能とほぼ同等の特性を有しているので、炭酸ガスの吸収に再度用いることができる。炭酸ガスを吸収後の炭酸ガス吸収材は、上述したような本発明の実施形態にかかる方法により再生して、長期にわたって繰り返して使用することが可能となる。
【0056】
【発明の実施の形態】
以下、具体例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
【0057】
(実施例1)
二酸化珪素粉末(平均粒径10μm)と炭酸リチウム粉末(平均粒径1μm)とを、二酸化珪素:炭酸リチウムのモル比が1:2となる量で準備した。また、アルカリ炭酸塩としての炭酸カリウム粉末(平均粒径1μm)を、二酸化珪素:炭酸リチウム:炭酸カリウムのモル比が1:2:0.1となる量で準備した。これらの粉末をボールミルにて粉砕しながら混合し、平均粒径5μmの原料混合粉とした。得られた原料混合粉を、箱型電気炉にて大気中、1000℃で8時間熱処理して、リチウムオルトシリケートを主成分とする粉末状の炭酸ガス吸収材を得た。
【0058】
この炭酸ガス吸収材50gをアルミナ製のこう鉢に収容し、さらに1gの炭酸リチウム粉末(平均粒径1μm)を添加した。炭酸ガス吸収材と炭酸リチウムとが収容されたこう鉢を電気炉内に配置して、炭酸ガス:空気=20%:80%のガスを流した。600℃で1時間保持して炭酸ガス吸収材に炭酸ガスを吸収させた後、炭酸ガス吸収材の重量を測定した。次いで、850℃で1時間保持して炭酸ガス吸収材から炭酸ガスを放出させ、放出後の炭酸ガス吸収材の重量を測定した。1回目の吸収性能を、吸収後の重量変化率(wt%)により算出した。
【0059】
同様な条件で炭酸ガスの吸収・放出を100回繰り返して、1回目の場合と同様の手法により、100回目における吸収性能を求めた。
【0060】
(繰り返し100回後における吸収性能)/(繰り返し1回後の吸収性能)から、炭酸ガス吸収材の吸収性能維持率を求めたところ、98%であった。
【0061】
(実施例2)
前述の実施例1と同様の手法により、平均粒径約5μmのリチウムオルトシリケート粉末を合成した。このリチウムオルトシリケート粉末を内径5mmの金型内に充填し、加圧成形することにより気孔率約40%の多孔質体からなる炭酸ガス吸収材を作製した。
【0062】
この炭酸ガス吸収材50gをアルミナ製のこう鉢に収容し、さらに1gの炭酸リチウム顆粒(平均粒径500μm)を添加した。炭酸ガス吸収材と炭酸リチウムとが収容されたこう鉢を電気炉内に配置し、前述の実施例1と同様の条件にて炭酸ガスの吸収・放出を行なって、炭酸ガス吸収および放出繰り返し性能を同様に評価した。
【0063】
実施例1と同様に炭酸ガス吸収材の吸収性能維持率を求めたところ、96%であった。
【0064】
なお、水酸化リチウム水溶液を供給して、炭酸ガスとの反応により生じた炭酸リチウムを添加した場合にも、炭酸ガス吸収材の吸収性能維持率は同程度であった。
【0065】
(比較例)
実施例1と同様の手法により炭酸リチウムと二酸化珪素と炭酸カリウムとを含有する原料混合粉を調製し、この混合粉を粉砕混合して原料混合粉を得た。この原料混合粉を箱型電気炉にて、大気中900℃で8時間熱処理し、リチウムシリケート焼成粉を合成した。このリチウムオルトシリケート粉末を内径5mmの金型内に充填し、加圧成形することにより気孔率約40%の多孔質体からなる炭酸ガス吸収材を成形した。
【0066】
この炭酸ガス吸収材50gのみが収容されたアルミナ製のこう鉢を電気炉内に配置し、前述の実施例1と同様の条件にて炭酸ガスの吸収・放出を行なって、炭酸ガス吸収および放出繰り返し性能を同様に評価した。
【0067】
実施例1と同様に炭酸ガス吸収材の吸収性能維持率を求めたところ、75%であった。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、リチウムシリケートを含む炭酸ガス吸収材の吸収性能の低下を抑制して、長期にわたって繰り返し使用可能とするために、炭酸ガス吸収材を再生する方法が提供される。
【0069】
本発明により、高温域で炭酸ガスを吸収できるとともに、軽量なリチウムシリケートを含有する炭酸ガス吸収材を極めて効率よく使用することが可能となり、その工業的価値は絶大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に用いられる炭酸ガス分離装置の構成を表わす断面図。
【符号の説明】
11,12・・・吸収塔
21,22・・・内管
31,32・・・外管
41,42・・・炭酸ガス吸収材
5・・・炭酸ガス含有ガス供給管
61,62・・・炭酸ガス含有ガス供給分岐管
71,72,73,74,75,76,77,78・・・バルブ
8・・・炭酸ガス回収用ガス供給管
91,92・・・回収用ガス供給分岐管
101,102・・・ガス排出分岐管
11・・・処理ガス排出管
121,122・・・回収ガス排出分岐管
13・・・排出ガス分岐管
14・・・燃焼器
15・・・燃焼ガス供給管
161,162・・・燃焼ガス供給分岐管
171,172・・・排気管
201,202・・・加熱器
211,212・・・反応容器
221,222・・・炭酸リチウム源導入管
231,232・・・炭酸リチウム源排出分岐管
24・・・炭酸リチウム源排出管
251,252,253,254・・・バルブ
Claims (7)
- リチウムシリケートを含み、第1の温度での加熱により炭酸ガスを吸収した炭酸ガス吸収材を、前記第1の温度より高い第2の温度で加熱して前記炭酸ガスを放出させ、前記炭酸ガス吸収材を再生する方法であって、
前記第2の温度での加熱は、炭酸リチウムを添加して行なわれることを特徴とする炭酸ガス吸収材の再生方法。 - 前記炭酸ガス吸収材は、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される少なくとも一種をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の炭酸ガス吸収材の再生方法。
- 前記添加される炭酸リチウムの量は、前記炭酸ガス吸収材に対して0.1wt%以上10wt%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭酸ガス吸収材の再生方法。
- 前記添加される炭酸リチウムは、粉末状であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の炭酸ガス吸収材の再生方法。
- 前記添加される炭酸リチウムは、成形体であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の炭酸ガス吸収材の再生方法。
- 前記添加される炭酸リチウムは、水溶液として供給された水酸化リチウムが前記炭酸ガスと反応することにより生じたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の炭酸ガス吸収材の再生方法。
- 前記リチウムシリケートは、Li4SiO4で表わされるリチウムオルトシリケートを含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の炭酸ガス吸収材の再生方法。
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