JP7265157B2 - Co2を吸収して炭素に分解する方法 - Google Patents
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Description
なお、本発明におけるアルカリ珪酸化物は、Na 2 O・SiO 2 等のようなアルカリ金属の珪酸塩を意味する。そのため、本明細書においてアルカリ珪酸化物とする場合は、アルカリ金属珪酸塩を表すものとする。
(1)アルカリ金属珪酸塩であるnが2.6~4.6のnNa 2 O・SiO 2 と石英ウールとが質量割合で1:40~1:6000の比率となるようにし、かつ少なくとも一部で互いに接触した状態で反応系内に存在させ、これら反応系内材料にCO2を含んだCO2含有ガスを接触させることで、該CO2含有ガス中のCO2を反応系内材料に吸収させる工程Aと、
反応系内を非酸化性雰囲気にして350℃以上700℃以下に加熱することで、前記反応系内材料が吸収したCO2を炭素に分解する工程Bとを有することを特徴とする、CO2を吸収して炭素に分解する方法。
(2)前記工程Aでは、反応系内材料を室温以上650℃以下の温度にした状態でCO2含有ガスを接触させる、(1)に記載のCO2を吸収して炭素に分解する方法。
(3)前記アルカリ金属珪酸塩は、3.6Na2O・SiO2 である、(1)又は(2)に記載のCO2を吸収して炭素に分解する方法。
(4)前記工程Bの後、再び、前記工程Aと前記工程Bとを行って、CO2の吸収と炭素への分解を繰り返すようにする、(1)~(3)のいずれかに記載のCO2を吸収して炭素に分解する方法。
本発明においてCO2を吸収して炭素に分解する方法では、アルカリ珪酸化物と石英ウールとが質量割合で1:40~1:6000の比率となるようにし、かつ少なくともこれらが一部で互いに接触した状態で反応系内に存在させ、これら反応系内材料にCO2を含んだCO2含有ガスを接触させることで、CO2含有ガス中のCO2を反応系内材料に吸収させる工程Aと、アルカリ珪酸化物と石英ウールとを含んだ反応系内を非酸化性雰囲気にして350℃以上700℃以下に加熱することで、反応系内材料が吸収したCO2をCに分解する工程Bとを有している。
例えば、Na2O・SiO2系化合物であるnNa2O・SiO2や、K2O・SiO2系化合物であるnK2O・SiO2、Li2O・SiO2系化合物であるnLi2O・SiO2等、更に石英ウールは最大量の酸素原子を有しており、還元物質としては作用できない。したがって、反応の進行に還元物質は関与しておらず、これらのアルカリ珪酸化物は触媒として作用すると考えられる。また、前述したように、これらのアルカリ珪酸化物がCO2を吸収すると、例えば、nK2O・SiO2のK2Oの一部がK2CO3類似の構造を有する化合物へと変化すると推測している。
3.6Na2O・SiO2は一般には市販されておらず、以下の工程により合成した。
先ず、市販の水酸化ナトリウム(粒状の特級試薬)とケイ砂(SiO2)(200~300メッシュ)を、Na2O:SiO2比が3.6:1となり、水酸化ナトリウムとケイ砂が反応して3.6Na2O・SiO2が生成した場合に約20gとなる量を各々秤量し、上部内径が約36mm、深さが約36mmのニッケルルツボに装入した。これをニッケルルツボごと内径約41mm、深さ約115mmの石英ルツボへ入れた。石英ルツボにアルミナ製の蓋をし、Ar雰囲気の加熱炉で1100℃まで10℃/分で昇温し、30分間保持後、室温まで自然冷却した。冷却後、ニッケルルツボの中にはほぼ無色透明の均一なガラス状物質が生成していた。この生成物の質量減少を測定すると、水酸化ナトリウムが完全に脱水し、ケイ砂と反応して3.6Na2O・SiO2が生成した場合の質量減少と一致し、3.6Na2O・SiO2が生成したことが確認された。
反応皿2の内面に塗布する3.6Na2O・SiO2を0.1gとしたこと以外は、上記実験例1と全く同様にして実験を行ったところ、およそ0.011gのCO2が反応系内材料3に吸収され、また、加熱処理Bにより黒色物が生成した。次いで、反応容器1内から反応皿2を取り出し、石英ウールを取り出して、反応皿2の内面に塗布した3.6Na2O・SiO2の表面に析出した黒色物のかなりの部分に相当する約0.0006gを小型のスパチュラで掻き出した。このようにして回収した黒色物を燃焼赤外線吸収法で炭素分析したところ、90%以上が炭素であった。反応容器1内における炭素源は先の工程Aで反応系内材料3に接触させたCO2しかなく、反応系内材料3に吸収されたCO2が加熱処理BによりCに還元されたと考えられる。上記分析から、反応系内材料3が吸収したCO2のCへの転化効率は大凡18%であることが判明した。
反応皿2の内面に塗布する3.6Na2O・SiO2を0.005gとし、また、その後に装入した石英ウールを25gとしたこと以外は、上記実験例1と全く同様にして実験を行ったところ、およそ0.0007gのCO2が反応系内材料3に吸収され、また、加熱処理Bにより黒色物が生成した。次いで、反応容器1内から反応皿2を取り出し、石英ウールを取り出して、反応皿2の内面に塗布した3.6Na2O・SiO2の表面に析出した黒色物のかなりの部分に相当する約0.00002gを小型のスパチュラで掻き出した。このようにして回収した黒色物を燃焼赤外線吸収法で炭素分析したところ、90%以上が炭素であった。反応容器1内における炭素源は先の工程Aで反応系内材料3に接触させたCO2しかなく、反応系内材料3に吸収されたCO2が加熱処理BによりCに還元されたと考えられる。上記分析から、反応系内材料3が吸収したCO2のCへの転化効率は大凡9%であることが判明した。
反応皿2の内面に塗布する3.6Na2O・SiO2を0.5gとし、また、その後に装入した石英ウールを15gとしたこと以外は、上記実施例1と全く同様にして実験を行ったところ、およそ0.04gのCO2が反応系内材料3に吸収された。次に、加熱処理Bを行ったが、黒色物の生成は確認されず、微量の灰色の部分が生成したのみであった。念のため、この部分全てを燃焼赤外線吸収法により炭素分析したが炭素は検出されなかった。燃焼赤外線吸収法の炭素分析下限は5μgであり、仮に炭素が生成していたとしても生成量は5μgより少ない量である。このことから、反応系内材料2が吸収したCO2のCへの転化は進まなかったか、進んだとしてもその効率は0.05%未満と非実用的な値であった。
反応皿2の内面に塗布する3.6Na2O・SiO2を0.003gとし、また、その後に装入した石英ウールを24gとしたこと以外は、上記実施例1と全く同様にして実験を行ったところ、およそ0.004gのCO2が反応系内材料3に吸収された。次に、加熱処理Bを行ったが、黒色物の生成は確認されず、微量の灰色の部分が生成したのみであった。念のため、この部分全てを燃焼赤外線吸収法により炭素分析したが炭素は検出されなかった。燃焼赤外線吸収法の炭素分析下限は5μgであり、仮に炭素が生成していたとしても生成量は5μgより少ない量である。このことから、反応系内材料2が吸収したCO2のCへの転化は進まなかったか、進んだとしてもその効率は0.5%未満と非実用的な値であった。
石英ウールを使用しない点を除いては、上記実施例1と全く同様にして実験を行ったところ、およそ0.037gのCO2が反応系内材料3に吸収された。次に、加熱処理Bを行ったが、黒色物の生成は確認されず、微量の灰色の部分が生成したのみであった。念のため、この部分全てを燃焼赤外線吸収法により炭素分析したが炭素は検出されなかった。燃焼赤外線吸収法の炭素分析下限は5μgであり、仮に炭素が生成していたとしても生成量は5μgより少ない量である。このことから、反応系内材料2が吸収したCO2のCへの転化は進まなかったか、進んだとしてもその効率は0.05%未満と非実用的な値であった。
反応系内材料2の各々の量は実施例1と同じであるが、3.6Na2O・SiO2と石英ウールとを接触させず、15mm以上離れた状態とし、他は上記実施例1と全く同様に実験を行った。すなわち、本比較例4では、3.6Na2O・SiO2が塗布された反応皿2に石英ウールを装入するかわりに、反応容器1内で反応皿2から15mm以上離れた位置に配するようにした。そして、工程Aによりおよそ0.038gのCO2が反応系内材料2に吸収された。
次に、加熱処理Bを行ったが、黒色物の生成は確認されず、微量の灰色の部分が生成したのみであった。念のため、この部分全てを燃焼赤外線吸収法により炭素分析したが炭素は検出されなかった。燃焼赤外線吸収法の炭素分析下限は5μgであり、仮に炭素が生成していたとしても生成量は5μgより少ない量である。このことから、反応系内材料2が吸収したCO2のCへの転化は進まなかったか、進んだとしてもその効率は0.05%未満と非実用的な値であった。本比較例4と実施例1から、CO2を炭素へ分解するためには、アルカリ珪酸化物と石英ウールの接触が必要であることが分かる。
加熱処理Bの温度を750℃とした点を除いては上記実施例1と全く同様に実験を行った。工程Aによりおよそ0.039gのCO2が反応系内材料2に吸収された。次に、加熱処理Bを行ったが、極わずかな量の灰色の物質が生成したのみであった。この灰色の物質は3.6Na2O・SiO2と固着しており回収することができなかった。本比較例5では加熱処理Bの温度が高すぎたため、加熱処理Bの昇温途中でいくらかは生成したかもしれない炭素は3.6Na2O・SiO2と反応し気体となって飛散したと想像される。このように、750℃は加熱処理Bの温度としては高すぎ、本発明では比較的低温の方がCO2から生成した炭素を回収できることが分かる。
Claims (4)
- アルカリ金属珪酸塩であるnが2.6~4.6のnNa 2 O・SiO 2 と石英ウールとが質量割合で1:40~1:6000の比率となるようにし、かつ少なくとも一部で互いに接触した状態で反応系内に存在させ、これら反応系内材料にCO2を含んだCO2含有ガスを接触させることで、該CO2含有ガス中のCO2を反応系内材料に吸収させる工程Aと、
反応系内を非酸化性雰囲気にして350℃以上700℃以下に加熱することで、前記反応系内材料が吸収したCO2を炭素に分解する工程Bとを有することを特徴とする、CO2を吸収して炭素に分解する方法。 - 前記工程Aでは、反応系内材料を室温以上650℃以下の温度にした状態でCO2含有ガスを接触させる、請求項1に記載のCO2を吸収して炭素に分解する方法。
- 前記アルカリ金属珪酸塩は、3.6Na2O・SiO2 である、請求項1又は2に記載のCO2を吸収して炭素に分解する方法。
- 前記工程Bの後、再び、前記工程Aと前記工程Bとを行って、CO2の吸収と炭素への分解を繰り返すようにする、請求項1~3のいずれかに記載のCO2を吸収して炭素に分解する方法。
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