JP3648195B2 - 蓄圧式分配型噴射ポンプのヘッド構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄圧室に蓄圧した高圧燃料を、分配手段により各気筒へ分配して供給する、蓄圧式分配型燃料噴射ポンプの構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ディーゼルエンジンにおいては、ますます排気エミッション規制が厳しくなる傾向にあって、低燃費で且つNOxとパーティキュレートの低減等が望まれており、これに対応するため、燃焼効率を向上すべく燃料噴射圧の高圧化が進んできている。
そして、燃料噴射圧の高圧化とともに、エンジンの回転速度にかかわらず噴射圧を任意に制御することを可能とする電子制御方式の蓄圧式の燃料噴射ポンプが増加してきている。
この蓄圧式の燃料噴射ポンプは、蓄圧室内に蓄圧した高圧燃料を、各気筒に供給するものであり、例えば、特表平7−509042に記載の如くである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述の蓄圧式燃料噴射ポンプにおいては、燃料蓄圧室や、高圧燃料圧送用のプランジャや、燃料噴射制御用の噴射制御弁や、燃料を各気筒に分配する分配手段や、圧力制御弁等の、常時高圧がかかる高圧経路を構成するための機能部材が具備されており、この燃料蓄圧室は、燃料蓄圧室を構成するハイドロリックヘッドの穴の一端のみを外部に開口して構成されているため、内面粗さの高精度を要求される燃料蓄圧室の仕上加工を行うことが困難であり、耐圧性も不十分だった。
また、燃料蓄圧室の高圧により、分配軸穴やプランジャバレル穴に常に高圧がかかるため、分配軸スリーブやプランジャバレルに変形や歪みが生じ、分配軸の片当たりや焼付き事故等の不具合が引き起こされることがあった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
請求項1においては、ハイドロリックヘッドHhに、分配軸9部と蓄圧室31を有し、蓄圧室31に蓄圧した高圧燃料を分配軸9部により各気筒へ分配して供給する蓄圧式分配形噴射ポンプ1において、分配軸穴hb及びプランジャバレル穴haと直交する方向に設けた蓄圧室31を左右対称位置に配置するとともに、蓄圧室31を構成するハイドロリックヘッドHhの穴の両端部は外部に開口しており、該開口部は、プラグ又は弁により閉塞する構成とし、該蓄圧室31と略同じ高さ位置で、平行となる方向に、分配軸9の外周に環状溝部9aを設けたものである。
【0006】
請求項2においては、請求項1記載の蓄圧式分配型噴射ポンプのヘッド構造において、分配軸9を回転自在に分配軸スリーブ10に嵌挿し、該分配軸スリーブ10の下端の位置の、分配軸9の外周又は分配軸スリーブ10の内面の、どちらかに環状の盗み部分を設けたものである。
【0007】
請求項3においては、ハイドロリックヘッドHhに、分配軸9部とプランジャバレル8部と蓄圧室31を有し、蓄圧室31に蓄圧した高圧燃料を分配軸9部により各気筒へ分配して供給する蓄圧式分配形噴射ポンプ1において、分配軸穴hb及びプランジャバレル穴haと直交する方向に設けた蓄圧室31を左右対称位置に配置するとともに、蓄圧室31を構成するハイドロリックヘッドHhの穴の両端部は外部に開口しており、該開口部は、プラグ又は弁により閉塞する構成とし、該蓄圧室31の位置と略同じ高さ位置で、平行となる方向に、プランジャ7が嵌挿されるプランジャバレル8の内径嵌合穴側に、環状のリーク戻し溝8aを設けたものである。
【0008】
請求項4においては、請求項3記載の蓄圧式分配型噴射ポンプのヘッド構造において、前記プランジャバレル8の内径嵌合穴側に設けたリーク戻し溝8aと略同じ高さ位置において、プランジャバレル8の外径側に環状段部8bを構成したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の燃料噴射ポンプにおける燃料噴射時の状態を示す概略図、図2は同じく燃料噴射ポンプにおける燃料無噴射時の状態を示す概略図、図3は燃料噴射ポンプを示す側面断面図、図4は同じく正面断面図、図5は同じく平面断面図、図6は分配軸スリーブの変形度合を示した図、図7はプランジャバレルの変形度合を示した図である。
【0010】
なお、図6および図7に示す変形度合を示す曲線は変化を誇張したものであり、盗みを設けた部分(プランジャバレルの内周もしくは外周に沿って切欠板部分)における変形度合いの表現は、他の部分と参照し易いように近接して配置したものである。
【0011】
まず、本発明の蓄圧式分配型燃料噴射ポンプの概略構成について説明する。
図1、図2、及び図3乃至図5に示すように、蓄圧式分配型燃料噴射ポンプに構成される燃料噴射ポンプ1は、高圧燃料が蓄圧される蓄圧室31、該蓄圧室31へ燃料を圧送するプランジャ7、蓄圧室31から圧送される燃料を各気筒の噴射ノズル29へ分配して供給する分配軸9等を具備している。
プランジャ7は、カム軸4に形成されるカム5により、タペット11を介して上下摺動駆動され、該プランジャ7の上方に形成されるプランジャ室7aは、逆止弁28を介して蓄圧室31と接続されている。
【0012】
また、プランジャ室7aは、圧力制御弁27を介して低圧側回路32と接続されている。
そして、圧力制御弁27がオン状態のときには、プランジャ室7aと低圧側回路32とが分断され、オフ状態のときにはプランジャ室7aと低圧側回路32とが連通するように構成している。
【0013】
蓄圧室31と分配軸9とは噴射制御弁26を介して接続されており、該分配軸9は、噴射ノズル29と接続される各気筒の吐出弁18と、連通可能に構成されている。また、蓄圧室31には、該蓄圧室31内の圧力を検出する圧力センサ30が付設されている。さらに、蓄圧室31には安全弁24が接続されており、該蓄圧室31内の圧力が一定圧以上となった場合には、該圧力を低圧側ドレン回路100へ逃がすようにしている。
噴射制御弁26内には下部バルブ36a、上部バルブ36c、及びピストン36dが摺動自在に収納されており、下部バルブ36aはスプリング37により蓄圧室31側に付勢されている。
また、噴射制御弁26は三方弁に構成されており、下部バルブ36aが反蓄圧室31側に摺動した状態では、蓄圧室31は、分配軸9を経て逆止弁28を介して噴射ノズル29に連通し、逆に下部バルブ36aが蓄圧室31側に摺動した状態では、分配軸9を経て吐出弁18に至る油路r7と低圧側回路32とのみが連通するように構成されている。
【0014】
噴射制御弁26の反蓄圧室31側端部は、接続路34によりパイロットバルブ25と接続されており、該接続路34はバイパス回路33を介して蓄圧室31と接続されている。
パイロットバルブ25は、接続路34と低圧側回路32との連通を断接するものであり、該パイロットバルブ25がオン状態のときに接続路34と低圧側回路32とが連通し、オフ状態のときに接続路34と低圧側回路32とが分断されるように構成している。
また、前記パイロットバルブ25、圧力制御弁27、及び圧力センサ30は、電子制御装置(以下「ECU」と記載する)20と接続されている。
【0015】
このように構成される燃料噴射ポンプ1においては、プランジャ室7a内に燃料タンクから燃料が供給されており、蓄圧時には図1に示す如く、ECU20の制御により圧力制御弁27がオン状態となってプランジャ室7aと低圧側回路32とが分断されており、カム5によって上方摺動するプランジャ7によりプランジャ室7a内の燃料が圧縮されて蓄圧室31へ圧送される。
蓄圧室31へ圧送された燃料は逆止弁28により逆流が防止されており、該蓄圧室31内は適宜圧力に蓄圧されている。
一方、蓄圧を要しないときは図2に示す如く、圧力制御弁27がオフ状態となってプランジャ室7aと低圧回路32とが連通し、プランジャ室7aの燃料は低圧側回路へドレンされる。
【0016】
バイパス回路33により蓄圧室31と接続される前記接続路34には、該蓄圧室31から絞り33aを介して燃料が供給されている。燃料噴射時には、ECU20の制御により噴射制御弁26のパイロットバルブ25はオンされて接続路34と低圧側回路32とが連通されると、接続路34の圧力が低下するので、噴射制御弁26のピストン36dの蓄圧室31方向への押圧が解除される。
従って、該下部バルブ36aは、蓄圧室31の圧力により反蓄圧室31側に付勢されて反蓄圧室31側に摺動し、蓄圧室31と分配軸9とが連通する。
これにより、蓄圧室31内の燃料が分配軸9へ圧送されて、各気筒へ分配され吐出弁18を経て噴射ノズル29から噴射されることとなる。
【0017】
一方、燃料無噴射は、図2に示す如く、ECU20の制御により噴射制御弁のパイロットバルブ25がオフされ、蓄圧室31から絞り33aを介して燃料が供給される前記接続路34と低圧側回路32とが分断されるため、供給された燃料により該接続路34内の圧力が上昇して、噴射制御弁26のピストン36dが蓄圧室31側へ押圧される。
これにより、上部バルブ36cを介して下部バルブ36aが蓄圧室31側に摺動し、下部バルブ36aがシート36eに着座するとともに、噴射制御弁26から吐出弁18までの間の油路r6・r7と低圧側回路32とが連通して、ドレン圧となり噴射が終了する。
尚、スプリング36bは、下部バルブ36aを蓄圧室31側に付勢しており、起動時の蓄圧室31の圧力上昇用のバネである。
【0018】
次に、図3乃至図5を用いて燃料噴射ポンプの全体構成について説明する。
図3乃至図5に示すように、燃料噴射ポンプ1の下部には、カム5が固設されるカム軸4が横設され、該カム軸4の一端部は、カム軸受12を介してカム軸ハウジングHに回転自在に軸支されている。
カム軸ハウジングHの上方には、プランジャ7、蓄圧室31、及び分配軸9等の各構成部材のハウジングである、ブロック状部材のハイドロリックヘッドHhが連設されている。
【0019】
カム5の上方には、カム軸4の軸方向と略直交する方向にプランジャ7が配設されている。該プランジャ7は、ハイドロリックヘッドHhに嵌装されるプランジャバレル8に上下摺動自在に嵌挿されている。該プランジャ7の下端にはタペット11が付設されている。
プランジャ7及びタペット11はスプリング16等の付勢手段により下方へ付勢され、該タペット11がカム5に当接しており、該カム5の回転によりプランジャ7が上下往復動するように構成している。
【0020】
また、プランジャ7の上端部には、該プランジャ7による燃料圧送の制御用電磁弁である前記圧力制御弁27が配設されており、該圧力制御弁27は、弁体27aがカム軸4の軸方向と略直交する方向、即ち上下方向に摺動するように配置されている。
【0021】
また、プランジャ7の側方には、分配軸9が該プランジャ7と軸心を平行に配設されており、該分配軸9は、ハイドロリックヘッドHhに嵌装される分配軸スリーブ10に回転自在に嵌挿されるとともに、該分配軸9の下端部に連結した分配駆動軸39により回転駆動される。
該分配駆動軸39及び分配軸9はカム軸4の軸方向と略直交する方向に配置されており、分配駆動軸39とカム軸4とを傘歯車19により接続している。これにより、分配軸9を傘歯車19を介してカム軸4により回転駆動可能としている。
尚、ハイドロリックヘッドHhにおける分配軸9の周囲には、気筒数分の吐出弁18が嵌装されている。
【0022】
ハイドロリックヘッドHhにおける、分配軸9の反プランジャ7側の側方部分には、前記噴射制御弁26が嵌装され、カム軸4の軸方向と略直交する方向に配置されている。即ち、噴射制御弁26は、上下バルブ36c・36aがカム軸4の軸方向と略直交する方向に摺動するように配置されている。
該噴射制御弁26の上端部には前記パイロットバルブ25が配設されており、該パイロットバルブ25は、弁体25aがカム軸4の軸方向と略直交する方向、即ち上下方向に摺動するように配置されている。
【0023】
燃料噴射ポンプ1の制御系機能部材である、前記プランジャ7、分配軸9、及び噴射制御弁26は、カム軸4の軸方向に、ハイドロリックヘッドHhの一端部側からプランジャ7、分配軸9、及び噴射制御弁26の順に、略直列状態で配置されている。
尚、蓄圧室31内の圧力を検出する圧力センサ30はハイドロリックヘッドHhの一側面に取り付けられている。
【0024】
また、ハイドロリックヘッドHhには、分配軸穴hb及びプランジャバレル穴haと直交する方向で、カム軸4の軸方向と略平行に、軸方向に二つの長い穴が穿設されて、蓄圧室31・31が構成されている。
該蓄圧室31・31は、互いに並列配置され、前記プランジャ7、分配軸9、及び噴射制御弁26等の制御系機能部材に対して左右対称位置に配置され、互いにハイドロリックヘッドHhに形成される油路31aによって連通されている。
また、蓄圧室31を構成するハイドロリックヘッドHhの穴の両端部は外部に開口しており、該開口部は、プラグ35又は前記安全弁24により閉塞されている。
例えば、二つの蓄圧室31の内、一方の蓄圧室31を構成する穴の一端の開口部を安全弁24により閉塞し、他端の開口部および他の蓄圧室31を構成する穴の両端の開口部をプラグ35により閉塞している。
【0025】
これにより、内面粗さの高精度を要求される蓄圧室31の砥粒研磨等の仕上加工を容易に行え耐久性の向上を図ることができるとともに、燃料噴射ポンプ1を全体的に小型、軽量化することができる。
【0026】
また、前記蓄圧室31は分配軸9の環状溝部9aに平行に、且つ略同じ高さ位置になるように設けられている。
さらに、蓄圧室31の圧力荷重による変形を考慮して、分配軸スリーブ10の下端の変形度合に応じて、可能な限り下方に延ばした分配軸9と分配軸スリーブ10の嵌合部の下端に、即ち分配軸スリーブ10の下端の内面に、蓄圧室31の圧力荷重による分配軸スリーブ10の変形を緩和するための盗み部分(切欠き部分)10aが設けられている。但し、盗み部分は分配軸スリーブ10の下端の内面に設ける代わりに、分配軸9の下端に設けることもできる。
本実施例において、分配軸スリーブ10の下方にはカム軸4が配設されており、前記盗み部分10aは、蓄圧室31の近傍であって、分配軸スリーブ10のカム軸側に設けられるものである。
【0027】
そのため、分配軸スリーブ10に蓄圧室31からの圧力荷重がかかると、従来のように盗み部分10aが設けられていない場合、図6に示すように、分配軸スリーブ10はたる形をとるように変形し、特に蓄圧室31の略側方である分配軸スリーブ10下端で最も変形する。しかし、分配軸スリーブ10下端に盗み部分10aを設けることによって、最も変形度合の大きい分配軸スリーブ10下端の高さ位置での分配軸スリーブ10の変形度合を抑えることができる。
したがって、蓄圧室31内の高圧による、変形、歪みの分配軸穴内周への影響を緩和させ、変形に付随して引き起こされる分配軸9の片当たり、焼付き事故等の不具合を防止することができる。また、交差穴間の肉厚の適正化を図ることができるため、燃料噴射ポンプ1を全体的に小型化することができる。
【0028】
また、プランジャバレル8の蓄圧室31と略同じ高さ位置にリーク戻し溝8aが設けられている。そして、蓄圧室31の圧力荷重による変形を考慮し、プランジャバレルの内径嵌合穴の変形度合に応じて、蓄圧室31の圧力荷重による変形を緩和するために、リーク戻し溝8aの位置ならびに長さの適正化を図るようにしている。
【0029】
そして、リーク戻し溝8aをプランジャバレル8の段部8bと略同じ高さ位置に設けることにより、蓄圧室31の圧力荷重による変形を緩和する効果をさらに高めることができる。
すなわち、プランジャバレル8の穴側(外径側)に形成されたプランジャバレル8の段部と略同じ高さ位置でプランジャバレル8内径嵌合穴側(プランジャ7側)にプランジャバレルのリーク戻し溝8aを設け、圧力変形の影響を回避するものである。
【0030】
そのため、プランジャバレル8に蓄圧室31からの圧力荷重がかかると、従来のようにリーク戻し溝8aが設けられていない場合、図7に示すように、プランジャバレルはひょうたん形をとるように変形し、特に蓄圧室31と略同じ高さ位置で最も変形する。しかし、蓄圧室31と略同じ高さ位置にリーク戻し溝8aを設けることによって、最も変化度合の大きい蓄圧室31と略同じ高さ位置でのプランジャバレル8の変形度合を抑えることができる。
これにより、蓄圧室31内の高圧による、変形、歪みのプランジャバレル穴内周への影響を緩和させ、変形に付随して引き起こされるプランジャ7の片当たり、焼付き事故等の不具合を防止することができる。また、交差穴間の肉厚の適正化を図ることができるため、燃料噴射ポンプ1を全体的に小型化することができる。
【0031】
前記カム軸ハウジングHの一端面には、カム軸4の回転により駆動され燃料を圧送するためのフィードポンプであるトロコイドポンプ6が付設されている。該トロコイドポンプ6により燃料タンクに貯溜される燃料が、カム軸ハウジングHに穿設形成される油路r1及びハイドロリックヘッドHhに穿設形成される油路r2を通じて、燃料供給室27bからプランジャ室7aへ圧送される。
即ち、トロコイドポンプ6の吐出口から燃料供給室27bに至り、さらに圧力制御弁27の弁体27aを結ぶプランジャ部のプランジャ室7aまでが、油路r1及び油路r2により連通されている。
そして、プランジャ室7aへ圧送された燃料は、油路r3を通じて逆止弁28へ導入され、該逆止弁28から油路r4を通じて蓄圧室31へ導出される。
【0032】
逆止弁28は、ハイドロリックヘッドHhに形成される嵌装孔hdに嵌装されている。該逆止弁28の下方におけるハイドロリックヘッドHhには前記油路r3及び油路r4が形成されている。油路r3の一端部は、逆止弁28の燃料導入口28aに接続され、油路r4の一端部は、逆止弁28の燃料導出口28bに接続されている。即ち、逆止弁28は、ハイドロリックヘッドHhに形成される油路r3及びr4を介して接続されている。
【0033】
蓄圧室31内へ送出され蓄圧された高圧燃料は、パイロットバルブ25の制御状態によっては(パイロットバルブ25がオンされているときには)、油路r5を通じて噴射制御弁26へ導入され、該噴射制御弁26から油路r6を通じて分配軸9へ導出される。
【0034】
噴射制御弁26は、ハイドロリックヘッドHhに形成される嵌装孔hcに嵌装されている。該噴射制御弁26の下方におけるハイドロリックヘッドHhには前記油路r5及び油路r6が形成されている。油路r5の一端部は、噴射制御弁26の燃料導入口26aに接続され、油路r6の一端部は、噴射制御弁26の燃料導出口26bに接続されている。即ち、噴射制御弁26は、ハイドロリックヘッドHhに形成される油路r5及び油路r6を介して接続されている。
【0035】
分配軸9へ送出された燃料は、各気筒に対応する油路r7を通じて吐出弁18へ案内され、各気筒の噴射ノズル29から噴射される。
【0036】
以上のように、本燃料噴射ポンプ1における燃料の高圧経路を構成する、プランジャ7、分配軸9、圧力制御弁27、逆止弁28、噴射制御弁26、圧力センサ30、安全弁24、吐出弁18、パイロットバルブ、及び蓄圧室31等といった機能部材が、一つのブロック状部材にて構成されるハイドロリックヘッドHhに纏めて配設されている。
尚、プランジャバレル8、分配軸スリーブ10等の機能部材は高圧通路を形成しており、ハイドロリックヘッドHhに焼き嵌めや冷し嵌め等によって油密に嵌合している。
【0037】
また、噴射制御弁26及び分配軸9の下方における、ハイドロリックヘッドHhとカム軸ハウジングHとの境界部には、低圧室15が形成されている。該低圧室15は、主にハイドロリックヘッドHhに形成されるキリ孔で構成された低圧側回路32に接続されており、蓄圧室31へ燃料を圧送するプランジャ7とプランジャバレル8との嵌合隙間から漏れ出る燃料や、ハイドロリックヘッドHhに形成される分配軸穴hbに嵌装される分配軸スリーブ10と分配軸9との間から漏れ出る燃料等を、該低圧室15に回収し、低圧側ドレン回路100を通じて燃料タンクへ戻すように構成している。
【0038】
また、蓄圧室31に設けられる前記安全弁24のドレンポート24aは、ハイドロリックヘッドHhに形成されたキリ孔で構成される連通路r11により低圧側回路32と接続されており、蓄圧室31から安全弁24を通じて排出される燃料を低圧側ドレン回路100により燃料タンクへ戻すようにしている。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
即ち、請求項1に示す如く、ハイドロリックヘッドに、分配軸部と蓄圧室を有し、蓄圧室に蓄圧した高圧燃料を分配軸部により各気筒へ分配して供給する蓄圧式分配形噴射ポンプおいて、分配軸穴及びプランジャバレル穴と直交する方向に設けた蓄圧室を左右対称位置に配置するとともに、蓄圧室の両端を開状態に構成したので、内面粗さの高精度を要求される蓄圧室の砥粒研磨などの仕上加工を容易に行え耐久性の向上を図ることができると共に、小形、軽量化の要求を満足させることができる。
【0040】
また、前記蓄圧室を、分配軸の環状溝部に平行に、且つ略同じ高さ位置になるように設けたので、蓄圧室内の高圧による、変形、歪みの分配軸穴内周への影響を緩和させ、変形に付随して引き起こされる分配軸の片当たり、焼付き事故などの不具合を防止することができる。
また、交差穴間の肉厚の適正化を図ることができるため、燃料噴射ポンプを全体的に小型化することができる。
【0041】
請求項2に示す如く、分配軸9を回転自在に分配軸スリーブ10に嵌挿し、該分配軸スリーブ10の下端の位置の、分配軸9の外周又は分配軸スリーブ10の内面の、どちらかに盗み部分を設けたので、蓄圧室内の高圧による、変形、歪みの分配軸穴内周への影響を緩和させ、変形に付随して引き起こされる分配軸の片当たり、焼付き事故などの不具合を防止することができる。
また、蓄圧室31の穴と、分配軸穴hbの交差する穴間の肉厚の適正化を図ることができるため、燃料噴射ポンプを全体的に小型化することができる。
【0042】
請求項3に示す如く、該蓄圧室31の位置と略同じ高さ位置で、平行となる方向に、プランジャ7が嵌挿されるプランジャバレル8の内径嵌合穴側に、環状のリーク戻し溝8aを設けたので、蓄圧室内の高圧による、変形、歪みのプランジャバレル穴内周への影響を緩和させ、変形に付随して引き起こされるプランジャの片当たり、焼付き事故などの不具合を防止することができる。
また、蓄圧室31の穴と、プランジャバレル穴haの交差穴間の肉厚の適正化を図ることができるため、燃料噴射ポンプを全体的に小型化することができる。
【0043】
請求項4に示す如く、前記プランジャバレル8の内径嵌合穴側に設けたリーク戻し溝8aと略同じ高さ位置において、プランジャバレル8の外径側に環状段部8bを構成したので、蓄圧室内の高圧による、変形、歪みのプランジャバレル穴内周への影響を緩和させ、変形に付随して引き起こされるプランジャの片当たり、焼付き事故などの不具合を防止することができる。
また、蓄圧室31の穴とプランジャバレル穴haの交差穴間の肉厚の適正化を図ることができるため、燃料噴射ポンプを全体的に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の燃料噴射ポンプにおける燃料噴射時の状態を示す概略図。
【図2】 同じく燃料噴射ポンプにおける燃料無噴射時の状態を示す概略図。
【図3】 燃料噴射ポンプを示す側面断面図。
【図4】 同じく正面断面図。
【図5】 同じく平面断面図。
【図6】 分配軸スリーブの変形度合を示した図。
【図7】 プランジャバレルの変形度合を示した図。
【符号の説明】
Hh ハイドロリックヘッド
ha プランジャバレル穴
hb 分配軸穴
9 分配軸
31 蓄圧室

Claims (4)

  1. ハイドロリックヘッドHhに、分配軸9部と蓄圧室31を有し、蓄圧室31に蓄圧した高圧燃料を分配軸9部により各気筒へ分配して供給する蓄圧式分配形噴射ポンプ1において、
    分配軸穴hb及びプランジャバレル穴haと直交する方向に設けた蓄圧室31を左右対称位置に配置するとともに、蓄圧室31を構成するハイドロリックヘッドHhの穴の両端部は外部に開口しており、該開口部は、プラグ又は弁により閉塞する構成とし、
    該蓄圧室31と略同じ高さ位置で、平行となる方向に、分配軸9の外周に環状溝部9aを設けたことを特徴とする蓄圧式分配型噴射ポンプのヘッド構造。
  2. 請求項1記載の蓄圧式分配型噴射ポンプのヘッド構造において、
    分配軸9を回転自在に分配軸スリーブ10に嵌挿し、該分配軸スリーブ10の下端の位置の、分配軸9の外周又は分配軸スリーブ10の内面の、どちらかに環状の盗み部分を設けたことを特徴とする蓄圧式分配型噴射ポンプのヘッド構造。
  3. ハイドロリックヘッドHhに、分配軸9部とプランジャバレル8部と蓄圧室31を有し、蓄圧室31に蓄圧した高圧燃料を分配軸9部により各気筒へ分配して供給する蓄圧式分配形噴射ポンプ1において、
    分配軸穴hb及びプランジャバレル穴haと直交する方向に設けた蓄圧室31を左右対称位置に配置するとともに、蓄圧室31を構成するハイドロリックヘッドHhの穴の両端部は外部に開口しており、該開口部は、プラグ又は弁により閉塞する構成とし、
    該蓄圧室31の位置と略同じ高さ位置で、平行となる方向に、プランジャ7が嵌挿されるプランジャバレル8の内径嵌合穴側に、環状のリーク戻し溝8aを設けたことを特徴とする蓄圧式分配型噴射ポンプのヘッド構造。
  4. 請求項3記載の蓄圧式分配型噴射ポンプのヘッド構造において、 前記プランジャバレル8の内径嵌合穴側に設けたリーク戻し溝8aと略同じ高さ位置において、プランジャバレル8の外径側に環状段部8bを構成したことを特徴とする蓄圧式分配型噴射ポンプのヘッド構造。
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