JP3647346B2 - 固形粉末化粧料の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固形粉末化粧料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
固形粉末化粧料は、一般に、容器に原料組成物を充填後圧縮して固化させるプレス成型法により製造されている。しかし一般の固形粉末化粧料は、油剤の配合量が比較的少ないため粉体間結合力が弱い。従って、特に、深い凹凸や複雑な形状の凹凸を有する意匠性が高い固形粉末化粧料を製造する場合に前記プレス成型法を用いると、高いプレス圧が必要となり、結果、得られた成形品は一般的に硬く粉っぽい感触になる。また、固形粉末化粧料の深さ方向の密度分布が大きくなり、結果、深い凹凸が形成されている部分と、そうでない部分とで、使用時に、化粧料の取れ方が異なったり、化粧料が収納容器に部分的に残ってしまう場合がある。
【0003】
逆に、固形粉末化粧料の硬度を低くすると、通常はそれに伴って粉体間結合力が低下するため、特に意匠性が高い固形粉末化粧料は外力によって割れ易くなる。
【0004】
プレス成型法以外の成型法として、化粧料基材を低沸点有機溶剤などに混合してスラリー状とし、それを容器に充填した後、溶剤を除去して固化させる溶剤法(特開昭56−108703号公報)がある。溶剤法は、内容物を均一に充填できる点で有利であるが、乾燥時にスラリー中の多量の溶剤が揮発するのに伴って収縮やひび割れが生じたり、成形後の内容物が外力により割れ易かったり、ケーキング(固形粉末化粧料の使用中にテリが発生したり、一部分のみ固化する現象)し易いという欠点があった。
【0005】
従って本発明は、意匠性に優れ、やわらかで使用感に優れ、外力による割れが起こりにくい固形粉末化粧料の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、所定形状の凸状部を有し、該凸状部の最高位置における基面からの高さH1と、前記最高位置を通り且つ平面視において前記凸状部の横断長が最小となるように引かれた直線における該横断長D1との比(H1/D1)が0.1〜0.4で、アスカーゴム硬度計C1L型で測定された硬度が70以下であり、且つ薄形浅底容器に収容され且つ該薄形浅底容器が外装容器に装填された状態で50cmの高さから厚み25mmのベニア板上に繰り返し落下させたときに異常が生じるまでの落下回数が20回以上である固形粉末化粧料の製造方法であって、
粉体40〜94.9重量%、弾性率が0.3〜200kg/cm 2 の皮膜形成性高分子0.1〜14重量%及び揮発性溶剤5〜40重量%を混合して得られた混合物を、所定形状の容器内で、プレス圧0.1〜2.0MPaで圧縮充填し、次いで前記揮発性溶剤を揮発させる固形粉末化粧料の製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0007】
また本発明は、所定形状の凹状部を有し、該凹状部の最低位置における基面からの深さH2と、前記最低位置を通り且つ平面視において前記凹状部の横切長が最小となるように引かれた直線における該横断長D2との比(H2/D2)が0.1〜0.4で、アスカーゴム硬度計C1L型で測定された硬度が70以下であり、且つ薄形浅底容器に収容され且つ該薄形浅底容器が外装容器に装填された状態で50cmの高さから厚み25mmのベニア板上に繰り返し落下させたときに異常が生じるまでの落下回数が20回以上である固形粉末化粧料の製造方法であって、
粉体40〜94.9重量%、弾性率が0.3〜200kg/cm 2 の皮膜形成性高分子0.1〜14重量%及び揮発性溶剤5〜40重量%を混合して得られた混合物を、所定形状の容器内で、プレス圧0.1〜2.0MPaで圧縮充填し、次いで前記揮発性溶剤を揮発させる固形粉末化粧料の製造方法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の固形粉末化粧料の製造方法をその好ましい実施形態に基づき説明する。なお、以下の説明においては、本発明の製造方法に従い製造された固形粉末化粧料のことを便宜的に本発明(又は本実施形態)の固形粉末化粧料という。
【0010】
図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態の固形粉末化粧料1は、浅底の収容凹部を備えた薄形浅底容器2における該収容凹部内に圧縮充填された状態で収容されている。このような薄形浅底容器2は、コンパクト等の外装容器(図示せず)における所定部位に装填されるものであり、ファンデーションやアイシャドウ等の固形粉末化粧料を収容する容器として広く用いられている。
【0011】
固形粉末化粧料1は、表面が平坦な平坦部1a及び該平坦部1aの表面である基面1bから隆起した凸状部1cを有する。凸状部1cは、最高位置Sを有し、該最高位置Sにおける基面1bからの高さはH1となっている。最高位置Sを通り且つ固形粉末化粧料1の平面視において凸状部1cの横断長が最小となるように引かれた直線L1における該横断長はD1となっている。本実施形態においては、H1とD1との比(H1/D1)が0.1〜0.4、好ましくは0.13〜0.3となっている。該比の値は凸状部1cの意匠性の尺度の一つとなるもので、その値が大きい程一般に意匠性が高いと観者に認識される。本実施形態において前記比の値が0.1未満であると、意匠性が高いとさほど認識されない意匠となり、0.4超であると、使用時における化粧料の取れ方が異なったり、化粧料が収納容器に部分的に残ってしまう。
【0012】
尚、凸状部1cに同じ高さの最高位置が2箇所以上存在するときは、D1の値が最も大きくなる位置を本発明でいう最高位置Sと定義する。
【0013】
凸状部1cの形状によっては、図2に示すように固形粉末化粧料1全体が凸状部1cを構成し、平坦部が存在しない場合がある。このような場合における基面1bは凸状部1cの最低位置と定義する。
【0014】
固形粉末化粧料1は、アスカーゴム硬度計C1L型(高分子計器株式会社製)で測定された硬度が70以下、好ましくは65以下としてある。該硬度が70超であると、固形粉末化粧料1が硬くなり使用感が低下する。前記硬度の下限値は、パフやハケによる使用時の粉取れが多くならない様にする等の理由から10程度である。凸状部1cの形状によってはアスカーゴム硬度計先端子が接触するのに十分な面積が存在しない場合がある。その場合には、固形粉末化粧料1の中央部付近をカッターナイフで削り取って前記先端子が接触するのに十分な面積を確保し、当該位置で硬度を測定する。尚、カッターナイフで固形粉末化粧料1を削り取る際に固形粉末化粧料1の硬度が変化しないよう留意する。
【0015】
固形粉末化粧料1は、これを薄形浅底容器2に収容し且つ該薄形浅底容器2をコンパクト等の外装容器に装填した状態で50cmの高さから厚み25mmのベニア板上に繰り返し落下させたときに異常が生じるまでの落下回数が20回以上、好ましくは25回以上である耐衝撃性を有している。前記落下回数が20回未満では、薄形浅底容器2に収容され且つ該薄形浅底容器2が外装容器に装填された状態の固形粉末化粧料1を、その使用時に誤ってコンクリート等の固い地面あるいは床に落下させると、容易に異常を生じる。尚、薄形浅底容器2の収容凹部の形状や薄形浅底容器2の材質及び外装容器の形状や材質等によって前記落下回数の値は変化するが、本発明においては、固形粉末化粧料1が専用の浅底容器に収容され、専用の手法にて専用の外装容器に装填されている場合に、前記落下回数を充たす必要がある。ここで専用とは提供する商品に用いられている形態をいう。また、「異常が生じる」とは、固体粉末化粧料の表面にひびが見られたり、端面や凸状部が欠けるような、外観が変化した状態をいう。
【0016】
本実施形態の固形粉末化粧料1は、その配合組成として、粉体及び弾性率が0.3〜200kg/cm2 皮膜形成性高分子を含有する〔以下、この配合組成を配合組成(a) という〕。皮膜形成性高分子の弾性率は1〜150kg/cm 2 、とりわけ3〜100kg/cm 2 であることが好ましい。これらの成分、特に前記皮膜形成性高分子を含有することで、固形粉末化粧料1における前記比(H1/D1)、硬度及び落下回数が容易に前述した前記の値を満たすようになる。
【0017】
前記粉体としては、この種の固形粉末化粧料の形成成分として従来用いられている粉体組成物が用いられ、例えば以下の組成を含有する粉体混合物又はこれに類する粉体混合物が用られる。
シリコーン処理マイカ(平均粒径10〜25μm):15〜60重量%
シリコーン処理タルク(平均粒径7〜15μm) : 5〜20重量%
球状シリコーン樹脂(平均粒径3〜20μm) : 5〜20重量%
シリコーン処理酸化チタン : 0〜10重量%
シリコーン処理着色顔料 : 1〜 5重量%
【0018】
固形粉末化粧料1における前記粉体の配合量は、65〜99.9重量%、特に70〜99重量%であることが、固形粉末化粧料1に要求される種々の特性向上の点から好ましい。
【0019】
前記皮膜形成性高分子としては、重量平均分子量が10,000〜1,000,000程度のものが好ましく、例えば重合性二重結合を有する単量体の1種以上を重合させて得られる高分子や、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(特開平5−112423号公報、特開平7−133352号公報、特開平10−95705号公報)、ビニル・シリコーンブロックポリマー(特開平11−100307号公報)などが挙げられる。
【0020】
前記皮膜形成性高分子として、弾性率が0.3〜200kg/cm2 のものを用いることで、やわらかく、なめらかな使用感の固形粉末化粧料となる。前記皮膜形成性高分子の弾性率は次のように測定される。先ず、前記皮膜形成性高分子の10重量%溶液又は分散液を直径5cmのテフロン製シャーレに10g量り取り、10日間自然乾燥させる。得られた皮膜(厚さ0.3〜0.5mm)を縦15mm、横5mmの短冊状に切り、測定用試料とする。この試料を25℃・相対湿度30%下に24時間以上放置した後、動的粘弾性測定装置(UBM社製、レオスペクトラーDVE−V4)の引っ張り試験用治具に固定し、加振周波数10Hz、振幅10μmの条件で弾性率を測定する。
【0021】
固形粉末化粧料1に前記皮膜形成性高分子を配合する場合、その配合量は、0.1〜15重量%、特に0.5〜10重量%であることが、固形粉末化粧料を固くさせず、また粉っぽくさせないようにできるので好ましい。
【0022】
固形粉末化粧料1には、更に必要に応じて油剤を配合することも好ましい。油剤としては、例えばワセリン、ラノリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、カルナバロウ、キャンデリラロウ、高級脂肪酸、高級アルコール等の固形・半固形油分;スクワラン、流動パラフィン、エステル油、ジグリセライド、トリグリセライド、シリコン油等の流動油分;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤などが挙げられる。これらの油剤は単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
固形粉末化粧料1に前記油剤を配合する場合、その配合量は、0.1〜30重量%、特に3〜30重量%であることが、しっとりした使用感や高い耐衝撃性を有する固形粉末化粧料得る事ができるので好ましい。
【0024】
なお、本発明の範囲外であるが、固形粉末化粧料1の配合組成としては、前記配合組成(a) の他に以下の配合組成(b) 及び(c) が挙げられる。
配合組成(b):粉体、固形ワックス及び油剤を含有する。
配合組成(c):粉体、金属石鹸及び油剤を含有する。
これらの配合組成を用いることでも、前述した諸物性を満たす固形粉末化粧料を容易に得ることができる。
【0025】
前記配合組成(b) 及び(c) の何れを用いる場合でも、粉体及び油剤としては前記配合組成(a) と同様のものを用いることができる。
【0026】
前記配合組成(b) に用いられる固形ワックスとしては、通常化粧料に用いられているものを特に制限無く用いることができる。その例としてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス、カルナバロウ、キャンデリラロウ等の天然ワックスが挙げられる。これらの固形ワックスは単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
前記配合組成(c) に用いられる金属石鹸としては、一般式(RCOO)n M(式中、Rは炭素数10〜18の脂肪族炭化水素基を示し、MはNa、K、Rb、Cs及びFr以外の金属を示し、nはMの価数を示す。)で示される化合物が好ましく用いられる。Mとしては、例えばAl、Zn、Mg、Ca、Li等が挙げられる。前記一般式で示される金属石鹸の好ましい例としては、ミリスチン酸亜鉛、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0028】
前記配合組成(b) を用いる場合、前記粉体の配合量は50〜98.5重量%、特に60〜95重量%であり、前記固形ワックスの配合量は0.5〜20重量%、特に1〜15重量%であり、前記油剤の配合量は1〜30重量%、特に2.5〜25重量%であることが、塗布時のなめらかさややわらかさ等の使用感が高く、また高い耐衝撃性を有する固形粉末化粧料を得る事ができるので好ましい。
【0029】
前記配合組成(c) を用いる場合、前記粉体の配合量は50〜98.5重量%、特に60〜95重量%であり、前記金属石鹸の配合量は0.5〜20重量%、特に1〜15重量%であり、前記油剤の配合量は1〜30重量%、特に2.5〜25重量%であることが、使用時に粉散りが少なく、また高い耐衝撃性を有する固形粉末化粧料を得る事ができるので好ましい。
【0030】
次に、本発明の別の実施形態について、図3を参照しながら説明する。図3は図1(b)に示す図に相当するものである。尚、本実施形態については、図1及び図2に示す実施形態と異なる点についてのみ説明し、同じ点については特に説明しないが、図1及び図2に示す実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図3において図1(b)と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0031】
図3に示す固形粉末化粧料1は、図1に示す固形粉末化粧料とは逆に、表面が平坦な平坦部1a及び該平坦部1aの表面である基面1bから陥没した凹状部1dを有している。凹状部1dは、最低位置Bを有しており、該最低位置Bにおける基面1bからの深さはH2となっている。最低位置Bを通り且つ固形粉末化粧料1の平面視において凹状部1dの横断長が最小となるように引かれた直線(図示せず)における該横断長はD2となっている。そして、本実施形態においては、H2とD2との比(H2/D2)が0.1〜0.4、好ましくは0.13〜0.3となっている。この比(H2/D2)の値も前述したH1/D1の値と同様に、凹状部1dの意匠性の尺度の一つとなるものであり、その値が大きい程一般に意匠性が高いと観者に認識される。本実施形態において前記比(H2/D2)の値が0.1未満であると、意匠性が高いとさほど認識されない意匠となってしまい、0.4超であると、深い凹凸が形成されている部分と、そうでない部分とで、使用時における化粧料の取れ方がが異なったり、化粧料が収納容器に部分的に残ってしまう。
【0032】
尚、凹状部1dに同じ深さの最低位置が2箇所以上存在するときは、D2の値が最も小さくなる位置を本発明でいう最低位置Bと定義する。
【0033】
また凹状部1dの形状によっては、図2に示す場合と反対に固形粉末化粧料1全体が凹状部1dを構成し、平坦部が存在しない場合がある。このような場合における基面1bは凹状部1dの最高位置と定義する。
【0034】
図1及び図2並びに図3に示す実施形態の固形粉末化粧料1は、以下に述べるプレス成型法によって製造される。前記配合組成(a) を用いる場合には、先ず、前記皮膜形成性高分子と揮発性溶剤とを混合して混合物を得る。別途、前記粉体と必要に応じて油剤とを混合したものに前記混合物を混合する。ここで前記揮発性溶剤としては、例えば水;エタノール、イソプロピルアルコール等の低沸点アルコール、ヘキサン、イソパラフィン、アセトン、酢酸エチル、揮発性シリコーン油などが挙げられ、特に水又はアルコール水溶液が好ましい。
【0035】
前記成分の混合に際しては、耐衝撃性の低下防止、ケーキングの発生防止、及び使用感の低下防止の点から、前記粉体を40〜94.9重量%、好ましくは50〜94.9重量%配合する。また前記皮膜形成性高分子は、耐衝撃性の低下防止、及び固形粉末化粧料が硬くなることに起因する使用感の低下防止の点から0.1〜14重量%、好ましくは0.5〜10重量%配合する。また前記揮発性溶剤は、固形粉末化粧料が硬くなることに起因する使用感の低下防止、及びひび割れの発生防止の点から5〜40重量%、好ましくは5〜35重量%配合する。
【0036】
本発明の範囲外である前記配合組成(b) を用いる場合には、先ず前記固形ワックスを所定温度に加熱して融解させて、これを前記油剤中に溶解させる。引き続き、前記油剤中に前記粉体を添加混合して混合物を得る。前記固形ワックスの加熱温度は、その種類にもよるが、一般に40〜120℃とする。得られた混合物のプレス成形圧は0.5〜50MPa、特に1〜30MPaであることが好ましい。
【0037】
同様に本発明の範囲外である前記配合組成(c) を用いる場合には、先ず前記金属石鹸と前記粉末とを混合し、更に前記油剤を添加混合して混合物を得る。得られた混合物のプレス成形圧は前記配合組成(b) の場合と同様とすることができる。
【0038】
次に、図4(a)に示すように、薄形浅底容器2を、臼31と下杵32とからなる雌型3内に配置する。雌型3は、基盤となる下杵32の上に、上下に貫通したキャビティ部31aの形成された臼31が載置されて構成されている。臼31において、キャビティ部31aの最下部には、外側に向けて一段凹んだ逃げ部31bが形成されている。そして、下杵32の上に、薄形浅底容器2を載置し、更に逃げ部31bに薄形浅底容器2を嵌入させるように臼31を載置する。この状態においては、薄形浅底容器2の収容凹部21の側部21aと、臼31のキャビティ部31aとが面一になっている。
【0039】
次に、図4(b)に示すように、前記混合物4を雌型3内に投入する。これにより、薄形浅底容器2の収容凹部21には、前記混合物4が堆積する。前記混合物4を堆積させた後、その上からキャビティ部31aを覆うようにシート状の可撓性部材6を配置する。引き続き、駆動装置(図示せず)により雄型5を可撓性部材6の上方から雌型3のキャビティ部31a内に嵌入させる。雄型5は、所定の凹部又は凸部(何れも図示せず)の形成された圧縮端面51を備えている。そして、雄型5と雌型3とにより、可撓性部材6を介して間接的に前記混合物4を挟圧し、薄形浅底容器2の収容凹部21内に圧縮充填する。これによって、図4(d)に示すように、薄形浅底容器2内に圧縮充填された状態で収容され、且つ雄型5における圧縮端面51の前記凹部又は前記凸部の形状が反転転写した凸状部又は凹状部(何れも図示せず)が表面に形成された固形粉末化粧料1が得られる。前記混合物4に配合されている前記揮発性溶剤は、前記混合物4が圧縮充填された薄形浅底容器2を雌型3から取り出した後、該混合物4を乾燥させることで揮発・除去する。前記乾燥の条件は、前記揮発性溶剤の種類などによって一概に決められないが、通常40〜100℃、常圧下で2〜5時間程度である。
【0040】
前記混合物4と雄型5との間に介在させる可撓性部材6は、圧縮時に前記混合物4内に存在する空気の逃げを良くするために用いられるものであり、例えばナイロン、アセテート、ポリエステル、綿等からなる紡糸をそのまま或いは表面処理した後編まれた布、又は不織布等からなる。
【0041】
前記圧縮充填するときのプレス成型圧は、雄型5における圧縮端面51の前記凹部又は前記凸部の形状の固形粉末化粧料への転写性及び雄型5の破損防止の点から、0.10〜2.0MPaである。
【0042】
前記圧縮充填に際しては、圧縮を多段階に分けることが、前述した空気の逃げが一層良くなり、固形粉末化粧料1における凸状部1c又は凹状部1dの成形状態が良好となることから好ましい。例えば圧縮を2段階に分け、先ず予備圧縮を行い、次いで本圧縮を行うことができる。この場合、予備圧縮の圧力は本圧縮の圧力の1/50〜1/3であることが好ましい。また、雄型5を焼結金属等の多孔質体で形成することも同様の理由から好ましい。
【0043】
更に、図4に示す製造方法において、下杵32の上に薄形浅底容器2を載置せず、それに代えて雄型5を、その圧縮端面51を上方に向けた状態で挿入し、その上に前記混合物4を投入した後、更にその上に薄形浅底容器2を、その収容凹部21を下方に向けた状態で載置し、薄形浅底容器2に所定の手段で荷重をかけて前記混合物4を薄形浅底容器2の収容凹部21内に圧縮充填する方法も有効である。
【0044】
固形粉末化粧料が充填された薄形浅底容器2は、コンパクト等の外装容器に装填されて最終商品形態となる。
【0045】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、固形粉末化粧料1における凸上部1c及び凹状部1dの形状は、前記実施形態のものに限られず、デザイン上自由なものとすることができる。
【0047】
また、本発明の固形粉末化粧料は、ファンデーション及びアイシャドウに限らず、他の化粧料、例えばフェイスパウダーやほほ紅などのメイクアップ化粧料にも適用できる。
【0048】
〔実施例1〜10及び比較例1〜5〕
以下の表1に示す組成の粉体をヘンシェルミキサーを用いて混合した後、同表に示す油分を加えて混合し、更に同表に示す皮膜形成性高分子を同表に示す揮発性溶剤に分散させた状態で混合して混合物を得た。得られた混合物を図4に示す方法で薄形浅底容器の収納凹部内に圧縮充填し、図1に示す形状の凸状部を有する固形粉末化粧料を得た。圧縮充填の際のプレス成型圧を表2に示す。
【0049】
参考例1
表3に示す固形ワックスを65℃に加熱して融解させ、これを同表に示す油剤中に溶解させた。引き続き同表に示す粉体を添加混合して混合物を得た。その後は実施例1と同様にして固形粉末化粧料を得た(但し、プレス成型圧は表3に示す通り)。
【0050】
〔参考例2〕
表3に示す金属石鹸と粉体とを混合し、更に同表に示す油分を添加混合して混合物を得た。その後は実施例1と同様にして固形粉末化粧料を得た(但し、プレス成型圧は表3に示す通り)。
【0051】
得られた固形粉末化粧料について、約25℃・50〜70%RHの室内で、H1/D1の値、アスカー硬度及び落下回数(耐衝撃性)を測定した。落下回数の測定に用いた薄型浅底容器は、厚さ0.5mmのアルミニウム板を打ち抜き加工した円形容器で、その深さは4.5mm、内径は52.0mmである。外装容器は花王ソフィーナファインフィットファンデーションUVパウダー用コンパクトケース(たて置きタイプ)である。薄型浅底容器は、その下面略中央に大智化学産業(株)製ペトロスターチングQB105が20g塗布されて外装容器に固定された。また、固形粉末化粧料の意匠性を、専門パネラー15名による目視観察で評価した。更に、同パネラーにより、化粧料を専用パフでとって顔に塗布してもらい、やわらかさ、なめらかさ、粉取れムラ、粉散りを評価した。各項目は、以下の5段階のスコアで評価し、その平均スコアを以下の「◎」〜「×」の判定基準とした。その結果を表2及び表3に示す。
【0052】
〔スコア〕
5・・・かなり良い
4・・・良い
3・・・普通
2・・・悪い
1・・・かなり悪い
〔判定基準〕
◎;4.5以上5以下
○;3.5以上4.5以下
△;2.5以上3.5以下
×;2.5未満
【0053】
【表1】
Figure 0003647346
【0054】
【表2】
Figure 0003647346
【0055】
【表3】
Figure 0003647346
【0056】
表2及び表3に示す結果から明らかな通り、H1/D1、アスカー硬度及び落下回数が特定の範囲となる各実施例の固形粉末化粧料(本発明品)は、各比較例の固形粉末化粧料に比して、意匠性が高く、やわからか且つなめらかであり、更に粉取れのムラや粉散りが少なく、使用感に優れていることが判る。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、意匠性に優れた上、やわらかで使用感に優れ、外力による割れが起こりにくい固形粉末化粧料の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は薄形浅底容器に収納された本発明の固形粉末化粧料の一実施形態を示す斜視図であり、図1(b)は図1(a)におけるb−b線断面図である。
【図2】本発明の固形粉末化粧料の別の実施形態を示す断面図〔図1(b)相当図〕である。
【図3】本発明の固形粉末化粧料の他の実施形態を示す断面図〔図1(b)相当図〕である。
【図4】図1及び図2並びに図3に示す実施形態の固形粉末化粧料の好ましい製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
1 固形粉末化粧料
1a 平坦部
1b 基面
1c 凸状部
1d 凹状部
2 薄形浅底容器
21 収納凹部
3 雌型
31 臼
31a キャビティ部
31b 逃げ部
32 下杵
4 混合物
5 雄型
51 圧縮端面
6 可撓性部材

Claims (4)

  1. 所定形状の凸状部を有し、該凸状部の最高位置における基面からの高さH1と、前記最高位置を通り且つ平面視において前記凸状部の横断長が最小となるように引かれた直線における該横断長D1との比(H1/D1)が0.1〜0.4で、アスカーゴム硬度計C1L型で測定された硬度が70以下であり、且つ薄形浅底容器に収容され且つ該薄形浅底容器が外装容器に装填された状態で50cmの高さから厚み25mmのベニア板上に繰り返し落下させたときに異常が生じるまでの落下回数が20回以上である固形粉末化粧料の製造方法であって、
    粉体40〜94.9重量%、弾性率が0.3〜200kg/cm 2 の皮膜形成性高分子0.1〜14重量%及び揮発性溶剤5〜40重量%を混合して得られた混合物を、所定形状の容器内で、プレス圧0.1〜2.0MPaで圧縮充填し、次いで前記揮発性溶剤を揮発させる固形粉末化粧料の製造方法
  2. 所定形状の凹状部を有し、該凹状部の最低位置における基面からの深さH2と、前記最低位置を通り且つ平面視において前記凹状部の横切長が最小となるように引かれた直線における該横断長D2との比(H2/D2)が0.1〜0.4で、アスカーゴム硬度計C1L型で測定された硬度が70以下であり、且つ薄形浅底容器に収容され且つ該薄形浅底容器が外装容器に装填された状態で50cmの高さから厚み25mmのベニア板上に繰り返し落下させたときに異常が生じるまでの落下回数が20回以上である固形粉末化粧料の製造方法であって、
    粉体40〜94.9重量%、弾性率が0.3〜200kg/cm 2 の皮膜形成性高分子0.1〜14重量%及び揮発性溶剤5〜40重量%を混合して得られた混合物を、所定形状の容器内で、プレス圧0.1〜2.0MPaで圧縮充填し、次いで前記揮発性溶剤を揮発させる固形粉末化粧料の製造方法
  3. 雌型内に前記混合物を堆積させた後、その上から、布又は不織布からなるシート状の可撓性部材を配置し、次いで雄型を該可撓性部材の上方から雌型内に嵌入させ、該可撓性部材を介して該混合物を間接的に圧縮充填する請求項1又は2記載の固形粉末化粧料の製造方法
  4. 圧縮を、予備圧縮及び本圧縮の2段階に分け、本圧縮の1/50〜1/3で予備圧縮を行い、次いで本圧縮を行う請求項1ないし3の何れかに記載の固形粉末化粧料の製造方法。
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