JP3643689B2 - NOxガス濃度検出器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、船舶、飛行機等の移動用、産業用の内燃機関の排ガス中、あるいはボイラ等の燃焼ガス中のNOxガス濃度を測定するNOxガス濃度検出器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、排ガス規制の強化に伴い、エンジン等の排ガス中のNOxを直接測定し、エンジン制御や触媒のコントロールを行う研究が行われている。例えば、特開平8−271476号公報には、第一の拡散律速通路を通じて被測定ガスが導かれる第一の内部空所と、その雰囲気が第二の拡散律速通路を通じて導かれる第二の内部空所と、第一の内部空所内の酸素分圧を制御せしめる第一の酸素ポンプ手段と、該第二の酸素ポンプ手段の作動により流れるポンプ電流を検出する電流検出手段とを設け、電流検出手段により検出されたポンプ電流の値から被測定ガス成分が求められる測定装置が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平8−271476号公報に提案された検出器は、被測定ガスを第一の内部空所に導くための第一の拡散律速通路と、被測定ガスを第一の内部空所から第二の内部空所に導くための第二の拡散律速通路という、2つの拡散律速通路を有するため、構造が複雑であるという問題点を有する。また、、製造上、検出器(ロット)間の出力値のバラツキが大きくなるという問題点を有する。加えて、2つの拡散律速通路を有するために応答性が劣るという問題点を有する。
【0004】
以上の事情に鑑み、本発明の課題は、簡素な構造のNOxガス濃度検出器を提供することである。別の課題は応答性が良いNOxガス濃度検出器を提供することである。また別の課題は正確に被測定ガス中のNOx濃度が測定できるNOxガス濃度検出器を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の各視点は下記の要素を備える。第1の視点には下記の要素がある。NOx濃度を変化させるために流路外へ導出される所定成分に応じた検出出力を生じる第1電極。前記流路外に設けられ前記第1電極に対して基準となる電位を自己生成する自己生成基準電極。第1電極の検出出力に基づいて、流路内のNOx濃度を変化させるようにセラミックス体を電気的に制御して所定成分を該流路外へ導出する第2電極。電圧が印加されて流路内に残留したNOxを酸素と窒素に解離する第3電極。第3電極によって生成された酸素がセラミックス体を移動することによって流れる電流を測定する手段。電流に基づき被測定ガス中のNOxガス濃度を決定する手段。第1、第2及び第3電極が、拡散抵抗が存在しない空所をなす一つの流路に面してセラミックス体上に形成されていること。前記第1電極と前記第3電極との間には、移動するNOx残留ガスに対する拡散抵抗が存在しないように、該第1電極と該第3電極とが互いに近接して配置されてなること。
【0006】
第2の視点には下記の要素がある。セラミックス体は被測定ガスが導入され移動する一つの流路に面するないし備える。セラミックス体上に形成された流路内の被測定ガス中の酸素濃度を測定するための酸素濃度検知電極を備える。前記流路外に設けられ前記酸素濃度検知電極に対して基準となる電位を自己生成する酸素濃度基準電極。セラミックス体上に形成されたものであって、酸素濃度検知電極の電位に基づき、流路内のNOx濃度を変化させるために、全てのNOxが実質的に解離(例えば、2NO→N2+O2)しないような電圧が印加されて流路内の酸素をセラミックス体の外部へ導出するための電極を備える。セラミックス体上に形成されたものであって、電圧が印加されてNOxを分解し生成した酸素を導出するための電極を備える。これらの電極が拡散抵抗が存在しない空所をなす一つの流路内に配置されている。酸素濃度検知電極とNOxを分解するための電極の間には実質的に拡散抵抗が存在しない。両電極が近接して配置されてなること。第3の視点には下記の要素がある。NOxを分解するための電極と一対の電極をなし該一対の電極間に解離した酸素に基づく電流が流れる電極と、前記酸素濃度基準電極とがセラミックス体中に封止ないし被覆された状態で設けられたこと。第4の視点には下記の要素がある。セラミックス体は、酸素イオン伝導性のセラミックス層が積層されてなる。酸素濃度検知電極とNOxを分解するための電極とが、同層のセラミックス層上に形成されたこと。第5の視点には下記の要素がある。流路外に設けられ酸素濃度検知電極に対して基準となる電位を生じる酸素濃度基準電極とNOxを分解するための電極と一対の電極をなし該一対の電極間に解離した酸素に基づく電流が流れる電極とが共通であること。第6の視点には下記の要素がある。酸素濃度検知電極と前記NOxを分解するための電極とが櫛状に形成される。これら両電極の櫛部が互いに組み合わされてなる。第7の視点には下記の要素がある。酸素濃度基準電極が自己生成基準極を形成するために流す(前記酸素濃度検知電極に対して基準となる電位を自己生成するために流す)微少電流として、NOxを分解するための電極と該電極と一対をなす電極間に流れるNOxガス濃度に応じた電流を用いる。第8の視点に係るNOxガス濃度検出器は、NOxを解離し、生成した酸素により酸素イオン伝導性のセラミックス体に流れる電流に基づいて被測定ガス中のNOxガス濃度を測定するNOxガス濃度検出器であって、前記セラミックス体は被測定ガスが導入され移動する一つの流路に面し、いずれも前記セラミックス体上に形成された、前記流路内の被測定ガス中の酸素濃度を測定するための酸素濃度検知電極と、前記酸素濃度検知電極の電位に基づき、前記流路内のNOx濃度を変化させるために、全てのNOが実質的に解離しない程度に該流路内の酸素を前記セラミックス体の外部へ導出するための電極と、電圧が印加されてNOxを分解し生成した酸素を導出するための電極と、が共に拡散抵抗が存在しない空所をなす前記一つの流路内に配置され、前記流路外に設けられ前記酸素濃度検知電極に対して基準となる電位を自己生成する酸素濃度基準電極を有し、前記酸素濃度検知電極と前記NOxを分解するための電極とが共通であることを特徴とする。これらの各視点は、酸素イオン伝導性セラミックス体を電気的に制御することによって、被測定ガスが該セラミックス体に面するないし備えられた流路を通じて移動する際に、被測定ガス中のNOx濃度を変化させるNOxガス濃度検出器、ないし、NOxを解離し、生成した酸素により酸素イオン伝導性のセラミックス体に流れる電流に基づいて被測定ガス中のNOxガス濃度を測定するNOxガス濃度検出器に適用される。
【0007】
上述の本発明の種々の視点においては、被測定ガス中のNOxは第1酸素イオンポンプセルによっては分解されずに、第2酸素イオンポンプセルによって分解されるように各酸素イオンポンプセルを作動させることが望ましいが、必ずしもその必要はなく、第1酸素イオンポンプセルによってNOxの一部が分解しても構わない。すなわち、第1酸素イオンポンプセルによって分解されずに残った少なくとも一部のNOxが第2酸素イオンポンプセルに供給されればよい。この場合、第1酸素イオンポンプセルによって分解されたNOx量によって第2酸素イオンポンプセルの一対の電極間に流れる電流値に影響があるため、被測定ガス中の酸素濃度、第1酸素イオンポンプセル及び第2酸素イオンポンプセルの各々の一対の電極間に流れる各電流値から目的とするNOxガス濃度を補正して算出することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明の好ましい実施の形態を説明する。好ましくは、それぞれ一対をなす酸素濃度検知電極及び酸素濃度基準電極、電圧が印加されてNOxを分解し生成した酸素を導出するための電極及び該電極と一対をなす電極の内、流路内ないし流路外に設けられる電極を共通化(酸素濃度検知電極と第2酸素イオンポンプセルの内側電極の共通化、又は酸素濃度基準電極と第2酸素イオンポンプセルの外側電極の共通化)することにより、センサの構造が簡素化され、製造工程及び酸素濃度基準電極の形成も簡略化される。
【0009】
酸素濃度検知電極と電圧が印加されてNOxを分解し生成した酸素を導出するための電極とを拡散抵抗を介さない近接した位置に配置することにより、NOxが分解される電極近傍の雰囲気をより正確に検知することができる。また、酸素濃度検知電極の電位に基づき流路内の全てのNOxが分解しない程度に流路内の酸素を導出する電極を制御することにより、被測定ガス中の酸素濃度がセンサ出力に与える影響を低減できる。また、NOxの解離は、NOxを解離するように電圧が印加される電極上の酸素濃度に影響されるところ、該電極上の酸素濃度を正確に把握することにより、酸素濃度が検出器出力のゲインないしオフセットに与える影響を正確に見積もることができるため、酸素濃度依存性の小さい正確なNOxガス濃度測定が可能となる。ところで、リーン領域ないしストイキ点近傍で運転される内燃機関、すなわち、リーンとリッチの切り替えが行われる内燃機関から排出されるガス中の酸素濃度は大きく変動する。従って、本発明に基づくNOxガス濃度検出器は、このような排気ガス中の酸素濃度が大きく変動するような内燃機関の排出系に装着されるNOxガスセンサとして、すぐれた利点を有することが明らかである。
【0010】
以下図面を参照して、本発明NOxガス濃度検出器の種々の形態を説明する。図1及び図2(A)に示す本発明の第1の実施形態に係る検出器は、セラミックス体を構成する3つの酸素イオン伝導性固体電解質層から概略構成され、第1酸素イオンポンプセル1、第2酸素イオンポンプセル6、酸素濃度検知セル5を備えている。そして、第1と第2の固体電解質層の間に、長手方向に法線をもつ端面が絶縁層、短手方向に法線をもつ側面が絶縁層と拡散抵抗部2で囲まれた流路3が形成されている。前記第1の固体電解質層の外側には第1酸素イオンポンプセル1の外側電極1a、その内側には流路3に面しては流路3の長手方向全長とほぼ同じ長さに(流路3のほぼ全平面に対向して)内側電極(第2電極、NOx濃度を変化させるための電極)1bがそれぞれ形成されている。第2の固体電解質層の上には、流路3に面して、酸素濃度検知電極(第1電極)5a及び第2酸素イオンポンプセル6の内側電極(第3電極、NOxを分解し解離するための電極)6a、流路3に面さず第2と第3の固体電解質層間に封止されて酸素基準電極5b及び第2酸素イオンポンプセル6の外側電極6bが形成されている(電極5b、電極6bは所定の拡散抵抗を有するリードを介して大気に連通している)。ここで、酸素濃度検知電極5aと第2酸素イオンポンプセル6の内側電極6aは、流路3内の入口(一端部側面)に設けられた拡散抵抗部(例えば多孔質アルミナ層)2から最も遠い位置に、両電極5a,6aが実質的に同一雰囲気にあり、ないし、両電極5a,6a間に実質的に拡散抵抗が存在しないように、互いに近接して配置されている(図2(A)参照)。電極1a、1b、5a、5b、6a、6bは図2に示すようなリード線と電気的に接続され、これらの電極の出力を取り出すこと、ないし制御することができる。固体電解質層間にはそれぞれ絶縁層(不図示)が形成され、層間のリーク電流を防止している。好ましくは、酸素濃度基準電極5bにはリード線を介して微少電流を供給し、これを自己生成基準電極とする。この場合、多孔質とされた酸素濃度基準電極5b近傍の酸素濃度が高くなるように、電極5a側から電極5b側に酸素が輸送される方向に電圧を印加することが好ましい。なお、酸素濃度基準電極5b近傍の雰囲気(参照用気体導入空間の雰囲気)を大気とし、酸素濃度基準電極に電流を供給しないように構成することもできる。
【0011】
このNOxガス濃度検出器によるNOxガス濃度測定方法を説明する。まず、第1酸素イオンポンプセル1の外側電極1a、内側電極1b間と、第2酸素イオンポンプセル6の内側電極6a、外側電極6b間とに電源をそれぞれ接続し、酸素濃度検知セル5の酸素濃度検知電極5a、酸素濃度基準電極5b間の電位差が所定の一定値となるように電極1a、1b間に接続された電源の電圧を制御し(全てのNOが実質的に解離しないように制御される)、電極6a、6b間に定電圧(全てのNOxが選択的に解離されるような電圧)を印加して、電極6a,6b間に接続された電流計(電流を測定する手段)により流れる電流を測定する。斯くして、(1) 被測定ガス中のNOxは第1酸素イオンポンプセル1の内側電極1a近傍ではその全てが実質的に分解されずに、酸素が電極1a及び第1の固体電解質層を介して流路3外へ導出され、流路3内のNOxガス濃度が変化する。(2) 流路内のNOx残留ガスが、第2酸素イオンポンプセル6の内側電極6a、外側電極6b間に印加された電圧により、多孔質な貴金属電極とされた内側電極6a上で酸素と窒素に分解される。(3) 分解の結果発生した酸素は、第2酸素イオンポンプセル6の内側電極6aで酸素イオンとなり、酸素イオン伝導性を有する第2の固体電解質層を通り、外側電極6bで再び酸素となる。(4) よって、第2酸素イオンポンプセル6の一対の電極6a、6b間に流れる電流は、被測定ガス中のNOxガス濃度に比例したものとなり、この電流に基づいてNOxガス濃度を測定できる。なお、予め、NOxガス濃度が既知のモデルガスを用いて、NOxガス濃度と電流との関係を定めておくことにより(NOxガス濃度決定手段)、被測定ガス中のNOxガス濃度が決定される。例えば、NOxガス濃度決定手段として、NOxガス濃度と電流との関係を記憶した記憶部を備えたマイクロコンピュータを用いてもよい。
【0012】
なお、前記実施形態においては、第1酸素イオンポンプセル1の電極1a,1b間に流れる電流より、被測定ガス中の酸素濃度を測定することができる。また、流路3内は、拡散抵抗が存在しない空所である。流路3は2層の固体電解質層の間に延在しているが、絶縁層と固体電解質層に挟まれて延在してもよい。電極1a,1bの長さと流路3の全長がほぼ等しいが、等しくなくてもよく、電極1a,1bと流路3の互いの長さを所定比率にしてもよい。
【0013】
図2(B)に示す本発明の第2の実施形態に係るNOxガス濃度検出器は、前記第1の実施形態の変形例であって、酸素濃度検知電極5aと第2酸素イオンポンプセル6の内側電極6aを同一セルの同一面に設けると共に、両電極形状が櫛形であり、両電極の櫛部が互いに組み合わされてなることを特徴とする。これによって、第2酸素イオンポンプセル6の内側電極6a上の酸素分圧をより正確に測定し、制御することができる。なお、本実施形態においては電極が櫛状に組合わさっているが、他の組み合わせ形状、例えば曲線的に組み合わされていてもよい。
【0014】
図3に示す本発明の第3の実施形態に係るNOxガス濃度検出器は、酸素濃度基準電極と第2酸素イオンポンプセルの外側電極を共通化(外側共通電極5−6b)したことを特徴とする。これによって、電極に接続されるリード線の数を削減することができ、更に、酸素濃度基準電極5bを自己生成基準電極とする場合、基準電極を形成するために流す微少電流として、第2酸素イオンポンプセルの内側電極と外側電極間に流れるNOxガス濃度に基本的に比例する電流を用いることができるため、センサ構成及び外部回路構成を簡略化することができる。また、酸素濃度基準電極5bを自己生成基準電極とすることにより、基準電位近傍の酸素濃度が安定するので、正確な酸素濃度検知が行われることとなり、ひいては高精度のNOxガス濃度検出が可能となる。
【0015】
図4に示す発明の第4の実施形態に係るNOxガス濃度検出器は、酸素濃度検知電極と第2酸素イオンポンプセルの内側電極を共通化(内側共通電極5−6a)したことを特徴とする。これによって、電極に接続されるリード線の数を削減することができるため、センサ構成及び外部回路構成を簡略化することができる。
【0016】
以下本発明の実施形態に係るNOxガス濃度検出器の好ましい製造例を説明する。検出器はZrO2グリーンシート及び電極用のペーストなどが積層され焼成されることにより作製される。絶縁コート、電極用のペースト材料は、所定のZrO2グリーンシート(第1、第2酸素イオンポンプセルの固体電解質層となる)にスクリーン印刷されることにより、絶縁層、電極が所定位置に積層形成される。次に、ZrO2グリーンシートなどの製造例を説明する。
【0017】
[ZrO2グリーンシート成形]
ZrO2粉末を大気炉にて仮焼する。仮焼したZrO2粉末、分散剤、有機溶剤を球石とともにトロンメルに入れ、混合し、分散させ、これに有機バインダーを有機溶剤に溶解させたものを添加し、混合してスラリーを得た。このスラリーからドクターブレード法により、厚さ0.4mm程度のZrO2グリーンシートを作製し、乾燥する。
【0018】
[印刷用ペースト]
(1)第1酸素イオンポンプセルの外側電極、酸素濃度基準電極、第2酸素イオンポンプ内側及び外側電極用: 白金粉末、ZrO2粉末、適量の有機溶剤を混合し、分散させ、これに有機バインダーを有機溶剤に溶解させたものを添加し、さらに粘度調整剤を添加し、混合してペーストを作製する。
【0019】
(2)第1酸素イオンポンプセルの内側電極、酸素濃度検知電極(測定電極)用: 白金粉末、ZrO2粉末、金粉末、適量の有機溶剤を混合し、分散させ、これに有機バインダーを有機溶剤に溶解させたものを添加し、さらに粘度調整剤を添加し、混合してペーストを作製する。
【0020】
(3)絶縁コート、保護コート用: アルミナ粉末と適量の有機溶剤を混合し、溶解させ、さらに粘度調整剤を添加し、混合してペーストを作製する。
【0021】
(4)Pt入り多孔質用(リード線用): アルミナ粉末、白金粉末、有機バインダ、有機溶剤を、混合し、さらに粘度調整剤を添加し、混合してペーストを作製する。
【0022】
(5)拡散抵抗部用: アルミナ粉末、有機バインダー、有機溶剤を混合し、分散させ、さらに粘度調整剤を添加し、混合してペーストを作製する。
【0023】
(6)カーボンコート用: カーボン粉末、有機バインダ、有機溶剤を混合し、分散させ、さらに粘度調整剤を添加し、混合してペーストを作製する。なお、カーボンコートを印刷形成することにより、一例を挙げれば、電極間の電気的接触が防止される。また、カーボンコートは流路を形成するために用いられる。カーボンは焼成途中で焼失するので、カーボンコート層は焼成体には存在しない。
【0024】
[ZrO2グリーンシート積層、脱バインダー及び焼成] 所定のペーストが印刷されたZrO2グリーンシートらを圧着する。圧着した成形体を、脱バインダーし、焼成する。
【0025】
第1、第2酸素イオンポンプセル及び酸素濃度測定セルをそれぞれ構成する酸素イオン伝導性を有する固体電解質層としては、Y2O3ないしCaOを固溶させたZrO2が代表的なものであるが、それ以外のアルカリ土類金属元素ないし希土類金属元素の酸化物とZrO2との固溶体を使用してもよい。また、ベースとなるZrO2にはHfO2が含有されていてもよい。また、ZrO2は部分安定化または安定化ジルコニアのどちらでもよく、さらにZrO2に代えて、CeO2、HfO2、ThO2を用いることができる。安定化剤として、例えばCaO,MgO,又はY2O3等の希土類酸化物(例えばLa2O3、Gd2O3)の一種以上を用いる。好ましくは、イットリア部分安定化ジルコニア粉末(YSZ)を用いる。他の安定化剤或いは他の固体電解質も用いることができる。
【0026】
【実施例】
[試験例]
図1に示す構造を有し、図2(B)に示したように流路3内の酸素濃度検知電極5aと第2酸素イオンポンプセル6の内側電極6aの形状を櫛形形状とし、且つ、図3に示すように流路3外側の酸素濃度基準電極と第2酸素イオンポンプセルの外側電極を共通外側電極5−6bとした本発明の実施例に係るNOxガス濃度検出器を用いて種々の試験を行った。また、比較例として、本発明者らが先に提案した構造のNOxガス濃度検出器を用いて同様の試験を行った。図5に示す比較例の検出器は、4層の固体電解質層が積層されてなり、2つの拡散抵抗部2、7と2つの流路3、8(第2流路8は絶縁層9で側面の一部が囲まれる)を有し、且つ、酸素濃度検知電極5aとNOxガス濃度に応じた電流が流れる第2酸素イオンポンプセル6の内側電極6aが異なる空間(離れた位置)に設けられ、第2の流路8内の酸素濃度を検知する代わりに第1の流路3内の酸素濃度を酸素濃度検知電極5aが検知する。比較例の検出器においては、第1拡散抵抗部2を通じて第1流路3に拡散した被測定ガス中の酸素が酸素濃度検知電極5aの電位に基づき第1酸素イオンポンプセル1の外側電極1a及び内側電極1bによって導出され、酸素濃度が所定以下に制御されたガスが第2拡散抵抗部7を介して第2流路8内に拡散する。第2酸素イオンポンプセル6の内側電極6a、外側電極6bには一定の電圧が印加されて、両電極6a、6b間にはNOx濃度に比例する電流が流れる。
【0027】
[試験例1]
実施例に係るNOxガス濃度検出器に実施の形態の欄で説明したような外部回路を取り付け、所定濃度のNOガスを含む被測定ガスを投入した。試験条件は下記の通りである。被測定ガス組成「NO:0〜1500ppm、O2:1%、CO2:10%、N2:bal.」、被測定ガス温度300℃、検知部温度800℃(検出器外層に取り付けたヒータ層により加温)。図6に、投入したNO濃度と第2酸素イオンポンプセルの内側電極と外側電極間に流れるNOガス濃度に比例した電流Ip2(検出器出力)の関係を示す。図6において、NO濃度の変化に対してIp2は直線的に変化している。従って、Ip2を測定することにより、NOガス濃度を求めることができることが分かる。
【0028】
[試験例2]
実施例に係るNOxガス濃度検出器に実施の形態の欄で説明したような外部回路を取り付け、NOガスを含まない被測定ガスを酸素濃度を変えて投入した。試験条件は下記の通りである。被測定ガス組成「NO:0ppm、O2:0〜15%、CO2:10%、N2:bal.」、被測定ガス温度300℃、検知部温度800℃。また、比較のため、図5に示した比較例の検出器を用いて同様に試験を行った。図7に、実施例と比較例の検出器における被測定ガス中の酸素濃度とIp2の関係をそれぞれ示す。実線が実施例の試験データを示し、破線が比較例の試験データを示す。図7より、酸素濃度0〜15%の変化に対して実施例のIp2の変化量が3μA程度であり、比較例のそれに比べて小さくなっている。従って、実施例の検出器では、第2酸素イオンポンプセルの内側電極上の酸素分圧がより正確に検知され、制御されていることが分かる。
【0029】
[試験例3]
実施例に係るNOx濃度ガス検出器に実施の形態の欄で説明したような外部回路を取り付け、被測定ガス中のNOガス濃度を0から1500ppmに変えて検出器出力の立ち上がり特性を調べた。また、図5に示した比較例の検出器を用いて同様の試験を行った。試験条件は下記の通りである。被測定ガス組成「NO:0→1500ppm、O2:10%、CO2:10%、N2:bal.」、被測定ガス温度300℃、検知部温度800℃。図8に、実施例と比較例の検出器におけるNOガス濃度を0ppmから1500ppmに変えて投入した際の検出器出力の応答性を示す。実線が実施例の試験データを示し、破線が比較例の試験データを示す。図8によれば、実施例の応答時間は比較例と比べて約半分であり、実施例のセンサによれば応答性良くNO濃度を測定できることが分かる。
【0030】
【発明の効果】
本発明に基づけば、簡素な構造のNOxガス濃度検出器が提供される。また、本発明に基づけば、被測定ガスが流れるにつれてNOxガス濃度が変化する流路内において、流路内の全てのNOxが分解しないように流路外へ導出される成分に応じた検出出力を生じる検出電極と、NOxを解離するための解離電極との間に実質的に拡散抵抗が存在しないこと、ないし、両電極を実質的同一の雰囲気に曝すことによって、応答性良く、且つ、被測定ガス中のNOx濃度を正確に測定できることとなる(NOx解離電極上の雰囲気を的確に把握できるため)。さらに、本発明に基づけば、上記両電極間に拡散抵抗部を設ける必要がないため、製造が容易となって、ロット間の検出器出力のバラツキも低減される。また、工数も削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るNOxガス濃度検出器を説明するための図であって、検出器を長手方向に切断した面を示す図である。
【図2】(A)及び(B)はそれぞれ図1中の矢視A、B線で示す方向に沿った平面図であって、(A)は本発明の第1の実施形態に係るNOxガス濃度検出器を説明するための図であり、(B)本発明の第2の実施形態(第1の実施形態の変形例)に係るNOxガス濃度検出器を説明するための図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るNOxガス濃度検出器を説明するための図であって、検出器を長手方向に切断した面を示す図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係るNOxガス濃度検出器を説明するための図であって、検出器を長手方向に切断した面を示す図である。
【図5】比較例に係るNOxガス濃度検出器を説明するための図であって、検出器を長手方向に切断した面を示す図である。
【図6】本発明の実施例に係るNOxガス濃度検出器の出力と投入したNO濃度の関係を説明するための図である。
【図7】本発明の実施例に係るNOxガス濃度検出器出力と比較例に係る検出器出力の酸素濃度依存性を説明するための図である。
【図8】本発明の実施例に係るNOxガス濃度検出器出力と比較例に係る検出器出力の応答性を説明するための図である。
【符号の説明】
1a 外側電極(第2電極と一対をなす電極)
1b 内側電極(第2電極、NOx濃度を変化させる電極)
2 拡散抵抗部
3 流路
4 絶縁層
5a 酸素濃度検知電極(第1電極)
5b 酸素濃度基準電極
6b 外側電極
6a 内側電極(第3電極、NOxを分解し解離するための電極)
5−6a 内側共通電極
5−6b 外側共通電極
Claims (8)
- 酸素イオン伝導性セラミックス体を電気的に制御することによって、被測定ガスが該セラミックス体に備えられた流路を通じて移動する際に被測定ガス中のNOx濃度を変化させるNOxガス濃度検出器であって、
NOx濃度を変化させるために前記流路外へ導出される成分に応じた検出出力を生じる第1電極と、
前記流路外に設けられ前記第1電極に対して基準となる電位を自己生成する自己生成基準電極と、
前記第1電極の検出出力に基づいて、前記流路内のNOx濃度を変化させるように前記セラミックス体を電気的に制御して前記成分を該流路外へ導出する第2電極と、
電圧が印加されて前記流路内に残留したNOx残留ガス中のNOxを酸素と窒素に解離する第3電極と、を有し、
前記第3電極によって生成された酸素が前記セラミックス体を移動することによって流れる電流を測定する手段と、
前記電流に基づき被測定ガス中のNOxガス濃度を決定する手段と、が付設され、
前記第1、第2及び第3電極が、拡散抵抗が存在しない空所をなす一つの前記流路に面して前記セラミックス体上に形成され、
さらに、前記第1電極と前記第3電極との間には、移動するNOx残留ガスに対する拡散抵抗が存在しないように、該第1電極と該第3電極とが互いに近接して配置されてなることを特徴とするNOxガス濃度検出器。 - NOxを解離し、生成した酸素により酸素イオン伝導性のセラミックス体に流れる電流に基づいて被測定ガス中のNOxガス濃度を測定するNOxガス濃度検出器であって、
前記セラミックス体は被測定ガスが導入され移動する一つの流路に面し、
いずれも前記セラミックス体上に形成された、前記流路内の被測定ガス中の酸素濃度を測定するための酸素濃度検知電極と、前記酸素濃度検知電極の電位に基づき、前記流路内のNOx濃度を変化させるために、全てのNOが解離しない程度に該流路内の酸素を前記セラミックス体の外部へ導出するための電極と、電圧が印加されてNOxを分解し生成した酸素を導出するための電極と、が共に拡散抵抗が存在しない空所をなす前記一つの流路内に配置され、
前記流路外に設けられ前記酸素濃度検知電極に対して基準となる電位を自己生成する酸素濃度基準電極と、
さらに、前記酸素濃度検知電極と前記NOxを分解するための電極の間には拡散抵抗が存在しないように、該両電極が近接して配置されたことを特徴とするNOxガス濃度検出器。 - 前記NOxを分解するための電極と一対の電極をなし該一対の電極間に解離した酸素に基づく電流が流れる電極と、前記酸素濃度基準電極と、が前記セラミックス体中に封止された状態で設けられたことを特徴とする請求項2記載のNOxガス濃度検出器。
- 前記セラミックス体は、酸素イオン伝導性のセラミックス層が積層されてなり、
前記酸素濃度検知電極と前記NOxを分解するための電極とが、同層の前記セラミックス層上に形成されたことを特徴とする請求項2又は3記載のNOxガス濃度検出器。 - 前記酸素濃度基準電極と、前記NOxを分解するための電極と一対の電極をなし該一対の電極間に解離した酸素に基づく電流が流れる電極とが共通であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一に記載のNOxガス濃度検出器。
- 前記酸素濃度検知電極と前記NOxを分解するための電極とが櫛状に形成され、該両電極の櫛部が互いに組み合わされてなることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一に記載のNOxガス濃度検出器。
- 前記酸素濃度基準電極が前記酸素濃度検知電極に対して基準となる電位を自己生成するために流す微少電流として、前記NOxを分解するための電極と該電極と一対をなす電極間に流れるNOxガス濃度に応じた電流を用いることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一に記載のNOxガス濃度検出器。
- NOxを解離し、生成した酸素により酸素イオン伝導性のセラミックス体に流れる電流に基づいて被測定ガス中のNOxガス濃度を測定するNOxガス濃度検出器であって、
前記セラミックス体は被測定ガスが導入され移動する一つの流路に面し、
いずれも前記セラミックス体上に形成された、前記流路内の被測定ガス中の酸素濃度を測定するための酸素濃度検知電極と、前記酸素濃度検知電極の電位に基づき、前記流路内のNOx濃度を変化させるために、全てのNOが解離しない程度に該流路内の酸素を前記セラミックス体の外部へ導出するための電極と、電圧が印加されてNOxを分解し生成した酸素を導出するための電極と、が共に拡散抵抗が存在しない空所をなす前記一つの流路内に配置され、
前記流路外に設けられ前記酸素濃度検知電極に対して基準となる電位を自己生成する酸素濃度基準電極を有し、
さらに、前記酸素濃度検知電極と前記NOxを分解するための電極とが共通であることを特徴とするNOxガス濃度検出器。
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