JP3641868B2 - ジオレフィン系(共)重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性、引張強度に優れ、操縦安定性が良く、転がり抵抗の小さいタイヤ部材に好適なジオレフィン系(共)重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の自動車に対する低燃費化要求にともない、タイヤ用ゴム材料として転がり抵抗が小さく、耐摩耗性、破壊特性に優れ、さらにウエットスキッド抵抗に代表される操縦安定性能をも兼ね備えた共役ジオレフィン系ゴムが望まれている。タイヤの転がり抵抗を低減するためには、加硫ゴムのヒステリシスロスを小さくすれば良く、加硫ゴムの評価指標としては、50〜80℃の反撥弾性、50〜80℃のtanδ、グッドリッチ発熱などが用いられ、50〜80℃の反撥弾性が大きいか、50〜80℃のtanδあるいはグッドリッチ発熱が小さいゴム材料が好ましい。
【0003】
ヒステリシスロスの小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、またはポリブタジエンゴムなどが知られているが、これらは、ウエットスキッド抵抗性が小さいという問題がある。
ウエットスキッド抵抗を損なうことなく、ヒステリシスロスを低減する方法として、炭化水素溶媒中で有機リチウム開始剤で重合された種々の構造のスチレン−ブタジエン共重合体の重合体末端に官能基を導入する方法が、種々提案されている。
例えば、重合体末端をスズ化合物で変性またはカップリングして得られるスチレン−ブタジエン共重合体(特開昭57−55912号公報など)、重合体末端をイソシアナート化合物(特開昭61−141741号公報など)、ラクタム化合物(特開昭61−43402号公報)、尿素誘導体(特開昭61−27338号公報)、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物(特開昭58−162604号公報)、特開昭58−189203号公報)などの含チッ素化合物で変性したスチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。
しかしながら、これらの重合体末端を官能基で変性したスチレン−ブタジエン共重合体では、導入される官能基は分子の片末端のみであり、また変性反応効率も定量的ではないため、上記した諸特性(耐摩耗性、破壊特性、低ヒステリシス性能)の改良が不充分である。
【0004】
重合体の両末端に官能基を導入する方法として、ジリチウム開始剤(リチウムナフタレンまたはナトリウムナフタレン)を用いて重合を行なったのち、活性な両末端を有機スルフェニルクロライドで変性する方法がある(特公昭44−855号公報)。しかしながら、この方法では、ジリチウム開始剤の調製が煩雑であり、また完全なジリチウム開始剤が得られず(両末端リビングな分子と片末端のみリビングな分子が共存し)、その結果、得られる重合体は分子量分布が広く、低ヒステリシスロス、耐摩耗性の改良幅は僅かである。
【0005】
また、上記に代わる、重合体の両末端に官能基を導入する方法としては、▲1▼リチウムアミド開始剤を用いて重合し、重合体末端を官能基で変性する(特開昭59−38209号公報、特公平5−1298号公報)、▲2▼官能基を有するビニル化合物を有機リチウム開始剤であらかじめ少量反応させておき、その反応物を開始剤として重合し、重合体末端を変性する(特公平5−1298号公報)の2つが知られている。
しかしながら、ここに例示した方法では、有機リチウム開始剤単独で重合した場合と較べて、重合体を得るのに長時間を要し、生産性を大幅に低下させることになる。さらに、重合体末端の反応性が低下してしまうため、重合体末端を官能基で変性する反応を行なう際、変性効率が悪いという欠点があり、重合体への官能基導入量を増すことが困難である。
【0006】
上記の▲1▼の方法の改良として、リチウムアミド開始剤の反応性を上げ、さらに重合された重合体の変性効率を向上させるために、アルコールと有機リチウム化合物との反応物あるいはリチウムアルコキシド化合物を併用させる方法(特開平6−279515号公報)がある。さらに、リチウムアミド開始剤の炭化水素溶剤への溶解性を向上させるために、有機アルカリ金属化合物やキレート剤を添加する方法(特開平6−199923号公報、特開平7−53616号公報)が提案されている。
これらの方法で得られる重合体は、優れた性能を有し、ウエットスキッド抵抗を維持しつつ、ヒステリシスロスが著しく低減し、さらに耐摩耗性の改良も達成される。しかしながら、上記のリチウムアミド開始剤は、第2級アミン化合物を原料としており、重合系中の不純物などで失活すると、第2級アミンが重合体中に混入する可能性がある。そして、第2級アミンは、発癌物質の要因と考えられるニトロソアミン化合物の原料となり得る危険性があることも良く知られている。従って、開始剤として、上記リチウムアミン開始剤と同様の性能改良効果があり、しかもニトロソアミン発生の危険性のない第3級アミン化合物から誘導される開始剤が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、ジオレフィン系(共)重合体に導入する官能基の量とその種類に着目し、その導入手法に対して鋭意検討を重ねた結果、重合体の一つの末端に芳香族性の第3級アミノ基を定量的に導入することができる新規な重合開始剤を使用したジオレフィン系(共)重合体の製造方法を開発した。
すなわち、本発明者らが開発した新規な重合開始剤とは、下記(a1−1)および(a1−2)に示す、少なくとも1つの芳香族環と、少なくとも1つの芳香族環に直接結合した第3級アミノ基と、少なくとも芳香族環に直接結合したメチル基を構造単位として有する化合物から誘導される。
芳香族に直接結合したメチル基は、有機リチウム化合物により容易にリチウム化される〔すなわち、メチル基の水素原子(H)がリチウム(Li)に置き換えられる〕ことは良く知られており、例えばトルエンとブチルリチウムとの反応でメチル基がリチウム化されたベンジルリチウムが生成する。
しかしながら、このようにして得られたベンジルリチウム型の化合物は、一般に共役ジオレフィンや芳香族ビニル化合物の重合開始剤とはならないことも良く知られている。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、驚くべきことに、ベンジルリチウム化合物に官能基として芳香族環に直接結合した第3級アミノ基を導入すると、共役ジオレフィンや芳香族ビニル化合物を効率的に重合することを発見した。また、第3級アミノ基を導入したベンジルリチウム化合物は、ブチルリチウムなどの有機リチウム化合物と同様に、いわゆる「リビングアニオン」重合の開始剤として働き、得られる(共)重合体は、分子量の揃った単分散ポリマーであり、かつその末端には、該開始剤の残基である芳香族第3級アミノ基が導入されることも発見した。
さらに、この開始剤からは、発癌性のニトロソアミンの原料となる化合物が発生することなく、またこの方法で開発したジオレフィン系(共)重合体が、ウエットスキッド特性を損なうことなく、低ヒステリシス性、耐摩耗性、破壊特性を改良することができることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
本発明の目的は、ニトロソアミン発生の危険性のない、第3級アミン化合物から誘導される新規開始剤を用いた、ジオレフィン系(共)重合体の製造方法を提供することにある。
さらに詳細には、本発明の目的は、ウエットスキッド特性を損なうことなく、低ヒステリシスロス性、耐摩耗性、破壊特性が同時に改良された、低燃費用タイヤ、大型タイヤ、高性能タイヤのトレッド用材料として使用可能な、新規ジオレフィン系(共)重合体の製造方法を提供することにある。
また、本発明のもう一つの目的は、新規開始剤により重合された、ウエットスキッド特性、低ヒステリシスロス性、耐摩耗性、破壊特性に優れた、新規ジオレフィン系(共)重合体をゴム成分中に含む、低燃費用タイヤ、大型タイヤ、高性能タイヤのトレッド材料に好適なゴム組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炭化水素溶媒中、必要に応じてエーテル化合物および/または第3級アミンの存在下で、共役ジオレフィン50〜100重量%と芳香族ビニル化合物50〜0重量%とを、下記(a1)および/または(a2)の芳香族第3級アミン化合物から誘導される開始剤を用いて重合することを特徴とするジオレフィン系(共)重合体の製造方法(以下「製造方法1」ともいう)を提供するものである。
(a1);下記一般式(a1−1)および/または(a1−2)の芳香族第3級アミン化合物(A)と有機リチウム化合物との反応生成物であって、(A)の構造中の芳香族環に結合したメチル基と有機リチウム化合物とが1:0.2〜5.0のモル比で反応して得られる反応生成物。
【0011】
【化7】
【0012】
(式中、nは1〜3の整数であり、R1 〜R2 は同一または異なり、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数6〜20のアリール基、R3 〜R4 は同一または異なり、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を示し、R1 〜R2 は互いに結合して環構造を形成していてもよく、またR3 〜R4 は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【0013】
【化8】
【0014】
〔式中、Xは空白(単結合)か、またはメチレン基、エチレン基、プロピレン基またはエーテル結合のいずれかであり、m+kは1〜4の整数、m、kは0〜2の整数であり、R5 〜R9 は同一または異なり、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数6〜20のアリール基、R10〜R13は同一または異なり、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を示し、R5 〜R6 は互いに結合して環構造を形成していてもよく、R7 〜R9 は互いに結合して環構造を形成していてもよく、R10〜R11は互いに結合して環構造を形成していてもよく、R12〜R13は互いに結合して環構造を形成していてもよい。〕
(a2);上記芳香族第3級アミン化合物(A)の少なくとも一つの水素原子がLiに置き換えられたリチオ化合物。
【0015】
また、本発明は、開始剤として、▲1▼製造方法1の(a1)および/または(a2)と、▲2▼(a1)および/または(a2)のリチウム1グラム原子当量あたり0.005〜0.5モルのカリウム化合物を用いる、ジオレフィン系(共)重合体の製造方法(以下「製造方法2」ともいう)を提供するものである。
【0016】
さらに、本発明は、開始剤として、開始剤として、▲1▼製造方法1の(a1)および/または(a2)と、▲2▼(a1)および/または(a2)のリチウム1グラム原子当量あたり0.01〜2.0モルの、下記(b1)および/または(b2)のヘテロ原子を2個以上有するアルコール化合物から誘導される化合物を用いる、ジオレフィン系(共)重合体の製造方法(以下「製造方法3」ともいう)を提供するものである。
(b1);下記一般式(b−1)、(b1−2)、(b1−3)、(b1−4)および(b−5)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種のヘテロ原子を2個以上有するアルコール化合物(B)と有機リチウム化合物とが1:0.7〜5.0のモル比で反応して得られる反応生成物。
【0017】
【化9】
【0018】
(式中、R14〜R16は同一または異なり、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、pは1〜3の整数を示す。)
【0019】
【化10】
【0020】
(式中、R17〜R21は同一または異なり、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、qは1〜3の整数を示す。)
R22 r N〔(CH2 )s −OH〕3-r ・・・・・(b1−3)
(式中、R22は炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基、rは0〜2の整数、sは1〜3の整数を示す。)
【0021】
【化11】
【0022】
(式中、R23〜R24は同一または異なり、水素原子または炭素数1〜3のアルキレン基、Yは−CH2 −、−O−、−NH−または=N−(CH2 )u OH、tは1〜3の整数、uは1〜3の整数を示す。)
【0023】
【化12】
【0024】
(式中、R25〜R26は同一または異なり、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、vは1〜3の整数を示す。)
(b2);上記アルコール化合物(B)の−OH基がLiに置き換えられたヘテロ原子を2個以上有するリチウムアルコキシド化合物。
【0025】
さらに、本発明は、開始剤として、▲1▼製造方法1の(a1)および/または(a2)と、▲2▼(a1)および/または(a2)のリチウム1グラム原子当量あたり0.005〜0.5モルの製造方法2のカリウム化合物、ならびに▲3▼(a1)および/または(a2)のリチウム1グラム原子当量あたり0.01〜2.0モルの製造方法3の(b1)および/または(b2)のヘテロ原子を2個以上有するアルコール化合物から誘導される化合物を用いる、ジオレフィン系(共)重合体の製造方法(以下「製造方法4」ともいう)を提供するものである。
【0026】
さらに、本発明は、製造方法1〜4いずれかの開始剤を用いて重合し、次いで重合活性末端が存在するうちに、重合活性末端を、下記(a)〜(k)の群から選ばれた少なくとも1種の化合物を変性剤もしくはカップリング剤(以下「変性剤」ともいう)として用い、変性もしくはカップリング反応(以下「変性反応」ともいう)させる、ジオレフィン系(共)重合体の製造方法(以下「製造方法5」ともいう)を提供するものである。
(a)イソシアナート化合物および/またはイソチオシアナート化合物
(b)イソシアヌル酸誘導体および/または誘導体対応のチオカルボニル化合物
(c)尿素化合物
(d)アミド化合物および/またはイミド化合物
(e)N−アルキル置換オキサゾリジノン化合物
(f)ピリジル置換ケトン化合物および/またはピリジル置換ビニル化合物
(g)ラクタム化合物
(h)ケイ素化合物
(i)エステル化合物
(j)ケトン化合物
(k)スズ化合物
【0027】
【発明の実施の形態】
【0028】
本発明のジオレフィン系(共)重合体の製造方法は、共役ジオレフィン単独もしくは共役ジオレフィンと芳香族ビニル化合物とを、炭化水素溶媒中で、特定の構造の芳香族第3級アミン化合物と有機リチウム化合物との反応生成物あるいは芳香族第3級アミン化合物のリチオ体に、必要に応じてカリウム化合物および/または特定の構造のアルコール化合物と有機リチウム化合物との反応生成物あるいは特定のリチウムアルコキシド化合物を添加した開始剤を用い溶液重合したのち、必要に応じて重合体の活性末端を変性することを特徴とする。
【0029】
ここで、上記「特定の構造の芳香族第3級アミン化合物」とは、(a1−1)および(a1−2)に示すとおり、少なくとも1つの芳香族環と、少なくとも1つの芳香族環に直接結合した第3級アミノ基と、少なくとも芳香族環に直接結合したメチル基を構造単位として有する化合物であり、これと有機リチウム化合物とが反応すると、メチル基の水素原子(H)がリチウムに置換された、ベンジルリチウム型の化合物が得られる。
また、上記の「特定構造の芳香族第3級アミン化合物のリチオ体」も、同様にメチル基の水素原子(H)がリチウムに置換されたベンジルリチウム型化合物を意味する。
本発明は、上記の(第3級アミノ基を有する)ベンジルリチウム型化合物を開始剤の必須成分として用いて重合したのち、必要に応じて重合体の活性末端を変性することを特徴とする。
【0030】
本発明で使用する共役ジオレフィンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、およびこれらの混合物などが用いられるが、共役ジオレフィンであれば、これらに限定されるものではない。
また、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、p−ジメチルアミノスチレン、p−ジエチルアミノスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、ビニルベンジルジメチルアミノエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、N,N−ジメチルアミノビニルスチレン、t−ブトキシスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられ、スチレンが好ましい。
【0031】
ここで、芳香族ビニル化合物の含量は、0〜50重量%、好ましくは5〜45重量%、さらに好ましくは10〜45重量%である。芳香族ビニル化合物の含量が50重量%を超えると、ヒステリシスロスが大きくなる。
また、(共)重合体の共役ジオレフィン部の1,2−結合および/または3,4−結合(以下「ビニル結合」ともいう)含量は特に制限されないが、15〜90%の範囲で任意に決定することできる。ビニル結合含量が15〜45%では、破壊強力、耐摩耗性、低ヒステリシスロス性の改良に有効であり、30〜70%では、特に低ヒステリシスロス性とウエットスキッド抵抗とのバランスに優れる。ビニル結合含量が50〜90%では、ウエットスキッド抵抗が向上し、操縦安定性の改良に効果がある。
【0032】
本発明に使用される炭化水素溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレンなどが挙げられる。
【0033】
本発明においては、重合開始剤として、特定の構造の芳香族第3級アミン化合物と有機リチウム化合物との反応生成物あるいは特定の構造の芳香族第3級アミン化合物のリチオ化合物が使用される。
重合開始剤において、上記の(a1−1)に該当する芳香族第3級アミン化合物の具体例としては、N,N−ジメチル−o−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチ−ルo−トルイジン、N,N−ジエチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジプロピル−o−トルイジン、N,N−ジプロピル−m−トルイジン、N,N−ジプロピル−p−トルイジン、N,N−ジブチル−o−トルイジン、N,N−ジブチル−m−トルイジン、N,N−ジブチル−p−トルイジン、o−ピペリジノトルエン、p−ピペリジノトルエン、o−ピロリジノトルエン、p−ピロリジノトルエン、N,N,N′,N′−テトラメチルトルイレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルトルイレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラプロピルトルイレンジアミン、N,N−ジメチルキシリジン、N,N−ジエチルキシリジン、N,N−ジプロピルキシリジン、N,N−ジメチルメシジン、N,N−ジエチルメシジン、(N,N−ジメチルアミノ)トルイルフェニルメチルアミン、1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−メチルナフタレン、1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−メチルアントラセンなどが挙げられる。
【0034】
また、上記(a1−2)に該当する芳香族第3級アミン化合物の具体例としては、3−メチル−4−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、N,N,N′,N′−テトラメチル−3−メチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N′,N′−テトラメチル−3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス−〔4−(N,N−ジメチル−3−メチルアニリノ)〕プロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0035】
さらに、上記(a2)に該当する芳香族第3級アミン化合物のリチオ体の具体例としては、上記(a1)成分として例示した種々の芳香族第3級アミン化合物(A)の少なくとも一つの水素原子(H)をLiに置き換えたものに相当する、リチオ化合物が挙げられる。
特に、(a1)成分として例示した種々の芳香族第3級アミン化合物(A)の水素原子のうち、芳香族環に直接結合したメチル基(−CH3 )の水素原子がリチウム化されやすい傾向にあり、またその芳香族環に直接結合したメチル基(−CH3 )の水素原子がリチウム化されたリチオ化合物が最も最適である。
【0036】
ここで、開始剤(a1)を生成させるために、上記芳香族第3級アミン化合物(A)と反応させる有機リチウム化合物としては、具体的にはエチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、あるいはこれらの混合物を挙げることができ、好ましくはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムである。
上記芳香族第3級アミン化合物(A)と有機リチウム化合物との反応は、(A)の構造中の芳香族環に結合したメチル基(−CH3 )と有機リチウム化合物とのモル比が1:0.2〜5.0の範囲で行う必要があり、好ましくは0.5〜2.0であり、さらに好ましくは0.8〜1.2である。有機リチウム化合物のモル比が(A)の構造中の芳香族環に結合したメチル基に対して5.0を超えると、破壊強度、耐摩耗性、低ヒステリシス性の改良効果が得られない。一方、有機リチウム化合物のモル比が0.2未満では、著しく重合速度が低下し、生産性を大幅に低下させることになるとともに、重合体末端を官能基で変性反応を行なう際の変性効率が低下する。
【0037】
本発明で使用される開始剤の反応性を向上させる場合、あるいは重合体中に導入される芳香族ビニル化合物をランダムに配列するかまたは芳香族ビニル化合物の単連鎖を付与する場合、重合開始剤とともに添加されるカリウム化合物(製造方法2、4〜5)としては、カリウムアルコキシド、カリウムフェノキシド、有機カルボン酸のカリウム塩、有機スルホン酸のカリウム塩、有機亜リン酸のカリウム塩などが用いられる。
【0038】
ここで、カリウムアルコキシド、カリウムフェノキシドとしては、例えばカリウムイソプロポキシド、カリウムt−ブトキシド、カリウム2−メチルプロポキシド、カリウム1,1−ジメチルプロポキシド、カリウムn−ヘプタオキシド、カリウムシクロヘキサオキシド、カリウムベンジルオキシド、カリウム2エチル−1−ヘキサオキシド、カリウム2−オクタオキシド、カリウム2−ヘプタオキシド、カリウムフェノキシド、カリウム2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノキシド、カリウム2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノキシド、カリウムオクチルフェノキシド、カリウムノニルフェノキシド、カリウムドデシルフェノキシド、およびこれらのカリウムアルコキシド、カリウムフェノキシドと炭素数1〜12の脂肪族、脂環族のアルコール、チオアルコール、第1級アミンおよび第2級アミンなどとの錯体が挙げられる。
【0039】
また、有機カルボン酸のカリウム塩としては、イソバレリアン酸、カプリル酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレイン酸、安息香酸、フタル酸、2−エチルヘキサン酸などのカリウム塩が挙げられる。また、これらの有機カルボン酸と炭素数1〜12の脂肪族または脂環族アルコール、チオアルコール、第1級アミン、第2級アミンなどとの錯体が挙げられる。
【0040】
さらに、有機スルホン酸のカリウム塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸などの有機スルホン酸のカリウム塩が挙げられる。また、これら有機スルホン酸のカリウム塩と炭素数1〜12の脂肪族または脂環族アルコール、チオアルコール、第1級アミン、第2級アミンなどとの錯体が挙げられる。
【0041】
さらに、有機亜リン酸のカリウム塩としては、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジラウリルなどの、有機亜リン酸のカリウム塩が挙げられる。
【0042】
これらのカリウム化合物は、開始剤の生成に使用される有機リチウム化合物のリチウム1グラム原子当量あたり、0.005〜0.5モルの量で添加できる。0.005モル未満では、カリウム化合物の添加効果(開始剤の反応性向上、芳香族ビニル化合物のランダム化または単連鎖付与)が現れず、一方0.5モルを超えると、重合活性が低下し、生産性を大幅に低下させることになるとともに、重合体末端を官能基で変性する反応を行なう際の変性効率が低下する。
【0043】
本発明で使用される開始剤の重合活性を向上させ、また重合体活性末端と変性剤との反応効率を向上させる場合、開始剤とともに添加される上記(b1)(製造方法3〜5)において、上記(b1−1)に該当するアルコール化合物としては、例えばテトラヒドロフルフリルアルコール、3−メチル−テトラヒドロフルフリルアルコール、4−エチル−テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールのオリゴマーなどが挙げられる。
また、(b1−2)に該当するアルコール化合物としては、例えばエチレングリコールモノフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0044】
さらに、(b1−3)に該当するアルコール化合物としては、例えばN,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジフェニルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジブチルプロパノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−エチルジプロパノールアミンなどが挙げられる。
【0045】
さらに、(b1−4)に該当する化合物としては、例えば1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、2−メチル−1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、2−メチル−1−(3−ヒドロキシプロピル)ピロリジン、1−ピペリジンエタノール、2−フェニル−1−ピペリジンエタノール、2−エチル−1−ピペリジンプロパノール、N−β−ヒドロキシエチルモルホリン、2−エチル−N−β−ヒドロキシエチルモルホリン、1−ピペラジンエタノール、1−ピペラジンプロパノール、N,N′−ビス(β−ヒドロキシエチル)ピペラジン、N,N′−ビス(γ−ヒドロキシプロピル)ピペラジンなどが挙げられる。
【0046】
さらに、(b1−5)に該当する化合物としては、例えば2−(β−ヒドロキシエチル)ピリジン、2−(γ−ヒドロキシプロピル)ピリジンなどが挙げられる。
これらの(b1)のアルコール化合物のうち、好ましくはテトラヒドロフルフリルアルコール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、1−ピペラジンエタノールアミンである。
【0047】
(b1)を生成させるために、上記アルコール化合物(B)と反応させる有機リチウム化合物としては、例えばエチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、あるいはこれらの混合物を挙げることができ、好ましくはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムである。
(b1)成分中のアルコール化合物(B)と有機リチウム化合物とのモル比は、1:0.7〜5.0であることが必要であり、好ましくは0.8〜2.0の範囲であり、さらに好ましくは0.9〜1.2である。有機リチウム化合物のモル比が5.0を超えると、破壊強度、耐摩耗性、低ヒステリシス性の改良効果が得られない。一方、有機リチウム化合物のモル比が0.8未満の場合には、著しく重合速度が低下し、生産性を大幅に低下させることになるとともに、重合体末端を官能基で変性する反応を行なう際の変性効率が低下する。
【0048】
また、(b2)の具体例としては、上記(b1)として挙げた種々のアルコール化合物(B)の−OH基の水素原子(H)をLiに置き換えたものに相当する、リチウムアルコキシド化合物が挙げられる。
【0049】
なお、(a1)〔芳香族第3級アミン化合物(A)と有機リチウム化合物との反応生成物〕あるいは(a2)〔芳香族第3級アミン化合物(A)の少なくとも一つの水素原子がLiに置き換えられたリチオ化合物〕に対する、(b1)〔アルコール化合物(B)と有機リチウム化合物との反応生成物〕あるいは(b2)〔アルコール化合物(B)の−OH基のHがLiで置き換えられたリチウムアルコキシド化合物〕のモル比は、1:0.01〜2.0であることが好ましい。
【0050】
また、上記(a1)成分および/または(a2)成分、必要に応じて使用されるカリウム化合物、さらに使用されることのある(b1)成分および/または(b2)成分とからなる開始剤を調製するに際し、1,3−ブタジエンやイソプレンなどの共役ジオレフィンを、(a1)成分あるいは(a2)成分に対して、1〜100倍モル、好ましくは1〜50倍モル添加して調製すると、重合反応が速やかに開始するので好ましい。
【0051】
本発明において(製造方法5)、重合後、重合活性末端が存在するうちに、この重合活性末端に反応させる特定の化合物としては、(a)イソシアナート化合物および/またはイソチオシアナート化合物、(b)イソシアヌル酸誘導体および/または誘導体対応のチオカルボニル化合物、(c)尿素化合物、(d)アミド化合物および/またはイミド化合物、(e)N−アルキル置換オキサゾリジノン化合物、(f)ピリジル置換ケトン化合物および/またはピリジル置換ビニル化合物、(g)ラクタム化合物、(h)ケイ素化合物、(i)エステル化合物、(j)ケトン化合物、ならびに(k)スズ化合物の群から選ばれた少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0052】
これらの化合物のうち、(a)成分であるイソシアナート化合物またはチオイソシアナート化合物の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメリックタイプのジフェニルメタンジイソシアナート(C−MDI)、フェニルイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ブチルイソシアナート、1,3,5−ベンゼントリイソシアナート、フェニルイソチオシアナート、フェニル−1,4−ジイソチオシアナートなどを挙げることができる。
【0053】
(b)成分であるイソシアヌル酸誘導体、該誘導体対応のチオカルボニル化合物の具体例としては、カルバミン酸メチル、N,N−ジエチルカルバミン酸メチルなどのカルバミン酸誘導体、イソシアヌル酸、N,N′,N′−トリメチルイソシアヌル酸などのイソシアヌル誘導体、およびこれら誘導体に対応するチオカルボニル化合物を挙げることができる。
(c)成分である尿素化合物の具体例としては、N,N′−ジメチル尿素、N,N′−ジエチル尿素、N,N,N′,N′−テトラメチル尿素、N,N−ジメチル−N′,N′−ジフェニル尿素などが挙げられる。
【0054】
(d)成分であるアミド化合物またはイミド化合物の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、アミノアセトアミド、N,N−ジメチル−N′,N′−ジメチルアミノアセトアミド、N,N−ジメチルアミノアセトアミド、N,N−エチルアミノアセトアミド、N,N−ジメチル−N′−エチルアミノアセトアミド、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、ピコリン酸アミド、N,N−ジメチルイソニコチンアミド、コハク酸アミド、フタル酸アミド、N,N,N′,N′−テトラメチルフタル酸アミド、オキサミド、N,N,N′,N′−テトラメチルオキサミド、2−フランカルボン酸アミド、N,N−ジメチル−2−フランカルボン酸アミド、キノリン−2−カルボン酸アミド、N−エチル−N−メチル−キノリンカルボン酸アミドなどのアミド化合物、コハク酸イミド、N−メチルコハクイミド、マレイミド、N−メチルマレイミド、フタルイミド、N−メチルフタルイミドなどのイミド化合物を挙げることができる。
【0055】
(e)成分であるN−アルキル置換オキサゾリジノン化合物の具体例としては、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,1−ジプロピル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−プロピル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−ブチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−(2−メトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−(2−エトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ−(2−エトキシエチル)−2−イミダゾリジノンなどを挙げることができる。
【0056】
(f)成分であるピリジル置換ケトン化合物またはピリジル置換ビニル化合物の具体例としては、メチル−2−ピリジルケトン、メチル−4−ピリジルケトン、プロピル−2−ピリジルケトン、ジ−4−ピリジルケトン、プロピル−3−ピリジルケトン、2−ベンゾイルピリジン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどを挙げることができる。
(g)成分であるラクタム化合物の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピペリドン、N−メチル−2−ピペリドン、2−キノロン、N−メチル−キノロンなどを挙げることができる。
【0057】
これら(a)〜(g)成分の使用量は、リチウム原子1g原子当量あたり、イソシアナート基、イソチオシアナート基、カルボニル基、ビニル基、アルデヒド基などの官能基を基準として、通常、0.2〜10当量、好ましくは0.5〜5.0当量であり、0.2当量未満では、加硫ゴムの反撥弾性、低発熱性の効果が劣り、一方10当量を超えると、未反応物が多くなり臭気が発生したり、加硫速度を早めたり、加硫ゴムの反撥弾性、低発熱性の効果が減少したりして好ましくない。
【0058】
(h)成分であるケイ素化合物の具体例としては、ジブチルジクロロケイ素、メチルトリクロロケイ素、メチルジクロロケイ素、テトラクロロケイ素、トリフェノキシメチルシランなどを挙げることができ、リチウム原子1g原子当量あたり、ハロゲン原子、フェノキシ基、エステル基を基準として、0.05〜5当量、好ましくは0.1〜1.5当量の範囲で添加することができる。
(i)成分であるエステル化合物の具体例は、アジピン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、マレイン酸ジエチルなどを挙げることができ、リチウム原子1g原子当量あたり、0.05〜1.5当量の範囲で添加することができる。
【0059】
(j)成分であるケトン化合物の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ニコチンアミド、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどを挙げることができ、リチウム原子1g原子当量あたり、0.05〜5当量の範囲で添加することができる。
【0060】
(k)成分であるスズ化合物の具体例としては、テトラクロロスズ、テトラブロムスズ、トリクロロブチルスズ、トリクロロメチルスズ、トリクロロオクチルスズ、ジブロムジメチルスズ、ジクロロジメチルスズ、ジクロロジブチルスズ、ジクロロジオクチルスズ、1,2−ビス(トリクロロスタニル)エタン、1,2−ビス(メチルジクロロスタニルエタン)、1,4−ビス(トリクロロスタニル)ブタン、1,4−ビス(メチルジクロロスタニル)ブタン、エチルスズトリステアレート、ブチルスズトリスオクタノエート、ブチルスズトリスステアレート、ブチルスズトリスラウレート、ジブチルスズビスオクタノエート、ジブチルスズビスステアレート、ジブチルスズビスラウレートなどを挙げることができる。(k)成分の添加量は、リチウム原子1g原子当量あたり、ハロゲン原子またはカルボキシレート基を基準として0.05〜5当量の範囲である。
【0061】
これらの(共)重合体製造後に反応させる化合物は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
なお、重合活性末端と上記化合物の反応効率を高めるため、(共)重合体製造後、重合系に、さらに1,3−ブタジエンをリチウム原子1g原子当量あたり、0.5〜500モル、好ましくは1〜200モル添加してから、末端変性反応を行なうことが好ましい。
【0062】
上記化合物のうち、(k)スズ化合物を用いた場合、本発明の目的とする耐摩耗性、低ヒステリシス性能の改良に優れた効果があり、低燃費用タイヤあるいは大型タイヤ用途に好適な重合体が得られる。さらに、ウエットスキッド性能に代表される操縦安定性や高破壊強力の要求される高性能タイヤ用途には、上記化合物のうち、(a)〜(j)の化合物が好ましく、これらの化合物で変性またはカップリングされた重合体には、伸展油や液状ゴムの添加が可能である。
本発明において、重合体末端を変性またはカップリングした重合体は、全重合体中、20重量%以上含まれることが好ましく、20重量%未満では、破壊強力、低ヒステリシス性能の点で劣り、好ましくない。
【0063】
重合反応および変性またはカップリング反応は、通常、0〜120℃の温度範囲で行われ、一定温度条件下でも上昇温度条件下でも良い。重合方式は、バッチ重合方式または連続重合方式のいずれでも良い。
また、必要に応じて、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、α−メトキシテトラヒドロフラン、ジメトキシベンゼン、ジメトキシエタンなどのエーテル化合物および/またはトリエチルアミン、ピリジン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタンなどの第3級アミン化合物を、重合系中に添加して、ジオレフィン系(共)重合体の共役ジオレフィン部分のミクロ構造(ビニル結合含量)を調整することができる。
【0064】
また、本発明で得られるジオレフィン系(共)重合体のムーニー粘度(ML1+4 、100℃)は、20〜200の範囲であることが好ましく、20未満では破壊強力、耐摩耗性、低ヒステリシスロス性が悪化し、一方200を超えると、加工性が低下する。ムーニー粘度(ML1+4 、100℃)が100を超える重合体も、そのままでは加工性が劣り好ましくないが、芳香族系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどの伸展油や、平均分子量が15万以下の液状ポリマーを添加することで、ムーニー粘度を100以下に下げて、加工上問題なく使用できるようにすることもできる。
ただし、(k)成分であるスズ化合物で変性またはカップリングした重合体に、芳香族系プロセスオイルを添加すると、スズ−炭素結合が容易い切断されるので、この場合は、好ましくない。
【0065】
本発明の方法で得られるジオレフィン系(共)重合体を含有した重合反応溶液は、通常の溶液重合法で得られる方法、例えば溶液状態で安定剤などを添加したのち、必要に応じて芳香族系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどの伸展油や、平均分子量が15万以下の液状ポリマー(あるいは上記液状ポリマーの溶液)を添加して、直接乾燥法やスチームストリッピング法によって、ゴムと溶剤とを分離して洗浄し、真空乾燥機、熱風乾燥機やロールなどにより乾燥し、目的のジオレフィン(共)重合体を単離することができる。
【0066】
本発明の方法で得られるジオレフィン系(共)重合体は、単独でまたは天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、乳化重合スチレン−ブタジエンゴムなどとブレンドし、補強材および各種配合剤と、ロール、バンバリーミキサーなどによって混練りしたのち、イオウ、加硫促進剤などを添加して、トレッド、サイドウオール、カーカスなどのタイヤ用ゴムをはじめ、ベルト、防振ゴム、その他の工業用品に使用することができる。
【0067】
本発明の方法で得られる共役ジオレフィン(共)重合体を、タイヤ、特にタイヤトレッドに使用する場合に充填される補強材としては、カーボンブラック、粒状シリカなどが挙げられる。
特に、加硫物を効果的に補強して、良好な耐摩耗性、破壊強度を期待するときには、カーボンブラックが好適に使用され、その充填量は、全ゴム成分100重量部に対し、20〜110重量部である。
また特に、低燃費タイヤ用途においては、加硫物のヒステリシスロスを低下させて良好な転がり抵抗を与えるとともに、ウエットスキッド抵抗を向上させる目的においては、粒状シリカの使用が好ましい。この粒状シリカの充填量は、全ゴム成分100重量部に対して、40〜120重量部である。
【0068】
さらに、シリカを充填剤に使用する際、その補強効果を高める目的で、公知の各種シランカップリング剤を使用することができる。このシランカップリング剤とは、分子中にアルコキシシリル基などのシリカ表面と反応可能な構成成分とポリスルフィド、メルカプト基、エポキシ基などの、ゴム、特に炭素−炭素二重結合と反応可能な構成成分を併せ持った化合物を指す。例えば、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどが、シランカップリング剤として良く知られている。
また、カーボンブラックと粒状シリカとを、上記充填量の範囲内で組み合わせて使用することで、良好な摩耗耗性、破壊強度と優れた低ヒステリシス性能、ウエットグリップ性能のバランスを両立させることもできる。
【0069】
【実施例】
以下、実施例を挙げ本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に何等制約されるものではない。
なお、実施例中、部および%は特に断らない限り重量基準である。また、実施例中の各種評価は、次のようにして測定した値である。
【0070】
ミクロ構造
赤外吸収スペクトル法(モレロ法)によって求めた。
結合スチレン含量
赤外吸収スペクトル法により、検量線を作製し求めた。
重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(ウオーター社製、244型)を用いて、ポリスチレン換算で求めた。
ムーニー粘度
JIS K6300に準じ、Lローター、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃で測定した。
カップリング効率
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(ウオーター社製、244型)を用いて測定した得られたGPC曲線より、カップリング前のポリマーとカップリングして分子量が増加したポリマーとのピーク面積比から算出した。
【0071】
加硫物の物性評価
原料ゴムを用い、表5に示す配合処方に従って、250ccラボプラストミルで混練りしたのち、145℃で所定時間、加硫を行った加硫物を用いて各種測定を行った。
引張強度
JIS K6301に従って測定した。
tanδ(50℃)
米国レオメトリックス社製の動的スペクトロメーターを使用し、引張動歪1%、周波数10Hz、50℃の条件で測定した。指数で表示し、数値が大きいほど、転がり抵抗が小さく、良好である。また、tanδ(0℃)は、同機器を使用し、引張動歪0.1%、周波数10Hz、0℃で測定した。指数で表示し、数値が大きいほど、ウエットスキッド抵抗が大きく良好である。
【0072】
ランボーン摩耗指数
ランボーン型摩耗試験機を用い、スリップ率が25%の摩耗量で表し、また測定温度は室温とした。指数が大きいほど、耐摩耗性は良好である。
ドライスキッド
英国道路研究所製、ポータブルスキッドテスターを使用し、ドライスキッドを測定した。測定値は、指数で表示し、数値が大きいほど、グリップ性能が高く、操縦安定性が良好である。このとき、試験面は、アスファルトを用いた。
【0073】
実施例1
チッ素で充分置換された内容積100mlの耐圧ビンに、シクロヘキサン20g、テトラヒドロフラン5g、(a1−1)成分としてN,N−ジメチル−o−トルイジン5.15mmolを添加して打栓したのち、n−ブチルリチウム5.15mmolを加え、50℃で15分間反応させたのち、1,3−ブタジエン1.39g(25.8mmol)を添加し、さらに15分間反応させた。
次に、充分にチッ素で置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応容器に、シクロヘキサン2,500g、テトラヒドロフラン2.00g、スチレン125g、1,3−ブタジエン365gを仕込んだ。反応容器内容物の温度を50℃に調整したのち、上記の開始剤溶液を全量添加して重合を開始した。
【0074】
重合転化率が100%に達したのち、1,3−ブタジエン10gを添加して5分間反応させて、重合体末端をブタジエニルリチウムにした。重合体溶液に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを添加し、スチームストリッピングにより、脱溶剤を行い、115℃熱ロールでゴムを乾燥した。
また、重合転化率が3%のとき、重合体溶液を一部抜き出し、重合体を単離して、 1H−NMRで分析したところ、重合開始末端の92%に第3級芳香族アミノ基が導入されていることが確認された。
【0075】
実施例2
N,N−ジメチル−o−トルイジン、n−ブチルリチウムの量を、表1のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の処方で、開始剤の調製、スチレン/ブタジエンの共重合反応を行った。
重合転化率が100%に達してから、1,3−ブタジエン10gを添加し、重合体末端をブタジエニルリチウムにしたのち、四塩化ケイ素1.86mmolを添加した。次いで、実施例1と同じ方法で脱溶剤、乾燥を行った。
また、重合転化率が3%のとき、重合体溶液を一部抜き出し、重合体を単離して、 1 H−NMRで分析したところ、重合開始末端の91%に第3級芳香族アミノ基が導入されていることが確認された。
【0076】
比較例1
内容積100mlの耐圧ビンで開始剤を調製する際、(a1)成分であるN,N−ジメチル−o−トルイジンを添加することなく、n−ブチルリチウム6.24mmolのみを添加する以外は、実施例2と同じ処方で重合体を得た。
【0077】
実施例3
開始剤として、(a2)成分のN,N−ジメチル−o−トルイジンのベンゼン核に直接結合しているメチル基の水素原子の1つをリチウム化したリチオ体を別途調製した使用する以外は、実施例2と同じ処方で重合体を得た。
【0078】
実施例4
耐圧ビン中での開始剤の調製時、n−ブチルリチウムの添加後、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム0.22mmolを添加する以外は、実施例2と同じ処方で重合体を得た。なお、重合転化率が3%のとき、重合体溶液を一部抜き出し、重合体を単離して、 1H−NMRで分析したところ、重合開始末端の98%に第3級芳香族アミノ基が導入されていることが確認された。
【0079】
実施例5〜6
開始剤の調製時に添加するドデシルベンゼンスルホン酸カリウムを、表1のとおりに変量する以外は、実施例4と同じ処方で重合体を得た。
実施例5〜6についても、重合転化率が3%のとき、重合体溶液を一部抜き出し、重合体を単離して、 1H−NMRで分析したところ、重合開始末端への第3級芳香族アミノ基の導入率は、それぞれ95%、100%であった。
【0080】
実施例7
開始剤の調製時に、(b1−1)成分として、N,N−ジエチルアミノエタノール3.71mmolを添加し、またn−ブチルリチウムの添加量を11.13mmolに変量する以外は、実施例2と同じ処方で重合体を得た。
重合転化率が3%のとき、重合体溶液を一部抜き出し、重合体を単離して、 1H−NMRで分析したところ、重合開始末端の100%に第3級芳香族アミノ基が導入されていることが確認された。
【0081】
実施例8
開始剤の調製時に、(b2)成分として、リチウム−N,N−ジエチルアミノエトキシド3.71mmolを添加する以外は、実施例2と同じ処方で重合体を得た。重合転化率が3%のとき、重合体溶液を一部抜き出し、重合体を単離して、 1H−NMRで分析したところ、重合開始末端の98%に第3級芳香族アミノ基が導入されていることが確認された。
【0082】
実施例9〜10
開始剤の調製時に添加するリチウム−N,N−ジエチルアミノエトキシドを、表1のとおり変量する以外は、実施例8と同じ処方で重合体を得た。
実施例5〜6についても、重合転化率が3%のとき、重合体溶液を一部抜き出し、重合体を単離して、 1H−NMRで分析したところ、重合開始末端への第3級芳香族アミノ基の導入率は、それぞれ96%、100%であった。
【0083】
実施例11
開始剤の調製時に、(b1)成分として、N,N−ジエチルアミノエタノール3.71mmolを添加し、またn−ブチルリチウムを11.13mmol添加したのちに、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウムを添加する以外は、実施例2と同じ方法で重合体を得た。
重合転化率が3%のとき、重合体溶液を一部抜き出し、重合体を単離して、 1H−NMRで分析したところ、重合開始末端の99%に第3級芳香族アミノ基が導入されていることが確認された。
【0084】
実施例12
シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、1,3−ブタジエニル、スチレンを仕込んだ内容積5リットルのオートクレーブ反応容器に、N,N−ジメチル−o−トルイジン7.42mmolを添加し、次いでn−ブチルリチウム7.42mmolを直接添加して、実施例2と同様にして重合体を得た。
重合転化率が5%のとき、重合体溶液を一部抜き出し、重合体を単離して、 1H−NMRで分析したところ、重合開始末端の90%に第3級芳香族アミノ基が導入されていることが確認された。
【0085】
実施例13
実施例12と同様の処方で、N,N−ジメチル−o−トルイジンの添加時に、N,N−ジメチルエタノールアミン3.71mmolを添加したのち、n−ブチルリチウム11.13mmolを直接添加して重合体を得た。
重合転化率が5%のとき、重合体溶液を一部抜き出し、重合体を単離して、 1H−NMRで分析したところ、重合開始末端の98%に第3級芳香族アミノ基が導入されていることが確認された。
【0086】
実施例14〜18
実施例13と同様の処方で、変性剤をそれぞれ、ポリメリックタイプのジフェニルメタンジイソシアネート(C−MDI)、アジピン酸ジエチル、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、四塩化スズ、ジ−n−ブチルジクロロスズに置き換える以外は、実施例13と同様にして重合体を得た。
【0087】
比較例2〜3
実施例13あるいは実施例16の開始剤成分として、(a1)成分であるN,N−ジメチル−o−トルイジンを添加せず、n−ブチルリチウムのみを添加して、同様にして重合体を得た。
実施例19
実施例17の開始剤の(a1)成分を、N,N−ジメチル−o−トルイジンからN,N−ジメチル−p−トルイジンに置き換える以外は、実施例17と同様にして重合体を得た。
【0088】
実施例20
実施例16の開始剤の(a1)成分を、N,N,N′,N′−テトラメチル−3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタンに置き換えて調製し、2官能性開始剤により重合する以外は、実施例16と同様にして重合体を得た。n−ブチルリチウム、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノンの添加量は、表3のとおりである。
【0089】
実施例21
実施例17と同様の処方で、重合初期にオートクレーブ反応容器に仕込む1,3−ブタジエンを375gに変量し、四塩化スズによる変性の前に、1,3−ブタジエン10gを追添加しない以外は、実施例17と同様にして重合体を得た。
【0090】
実施例22〜24、比較例4
実施例17の処方において、スチレン/1,3−ブタジエン量、テトラヒドロフランの量を表4のように変更する以外は、同様にして重合体を得た。
【0091】
実施例25
実施例13の開始剤の量〔(a1)成分、(b1)成分、n−ブチルリチウムの量〕を変更した以外は、実施例13と同様の処方で重合し、得られた重合体溶液に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを添加したのち、さらに重合体100部に対し、高芳香族系伸展油〔日本合成ゴム(株)製、AROMA〕を37.5部添加し、実施例1と同じ方法で脱溶剤、乾燥を行った。
【0092】
実施例26
実施例25の伸展油を液状ゴム(平均分子量=1万、結合スチレン含量=25%のスチレン−ブタジエン共重合体)に置き換えて重合体を得た。
【0093】
実施例27
実施例25の変性剤をC−MDIに置き換える以外は、同様にして重合体を得た。
【0094】
比較例5〜6
それぞれ、実施例25、実施例27の開始剤成分として、(a1)成分のN,N−ジメチル−o−トルイジンを添加せず、n−ブチルリチウムのみを添加する以外は、それぞれ同様にして重合体を得た。
【0095】
なお、実施例1〜13および比較例1の重合条件と得られた重合体の分子特性を表1〜2に、実施例14〜27および比較例2〜6の重合条件と得られた重合体の分子特性を表3〜4に示す。
【0096】
ゴム組成物の物性評価
▲1▼カーボンブラック系低燃費タイヤ用配合
伸展油または液状ゴム無添加のスチレン−ブタジエン共重合体を、表5の配合Aに示す「カーボンブラック系低燃費タイヤ用配合」の条件で加硫物を作製し、物性評価を行った。tanδ(0℃)、tanδ(50℃)、ランボーン摩耗の物性値は、比較例3(ポリマーU)の値を100とした指数で表し、いずれの物性も数字が大きい方が良好である。
評価に用いたポリマー、物性評価結果を表6に示す。
【0097】
▲2▼高性能タイヤ用配合
伸展油または液状ゴム添加のサンプルを、表5の配合Bに示す「高性能タイヤ用配合」の条件で加硫物を作製し、物性評価を行った。tanδ(0℃)、ドライスキッド、ランボーン摩耗の物性値は、比較例5(ポリマーAF)の値を100とした指数で表し、いずれの物性も数字が大きい方が良好である。
評価に用いたポリマー、物性評価結果を表7に示す。
【0098】
▲3▼シリカ系低燃費タイヤ用配合
伸展油または液状ゴム無添加のスチレン−ブタジエン共重合体を、表5の配合Cに示す「シリカ系低燃費タイヤ用配合」の条件で加硫物を作製し、物性評価を行った。tanδ(0℃)、tanδ(50℃)、ランボーン摩耗の物性値は、比較例1(ポリマーD)の値を100とした指数で表し、いずれの物性も数字が大きい方が良好である。
評価に用いたポリマー、物性評価結果を表8に示す。
【0099】
▲4▼カーボンブラック/シリカ併用系低燃費タイヤ用配合
伸展油または液状ゴム無添加のスチレン−ブタジエン共重合体を、表5の配合Dに示す「カーボンブラック/シリカ併用系低燃費タイヤ用配合」の条件で加硫物を作製し、物性評価を行った。tanδ(0℃)、tanδ(50℃)、ランボーン摩耗の物性値は、比較例1(ポリマーD)の値を100とした指数で表し、いずれの物性も数字が大きい方が良好である。
評価に用いたポリマー、物性評価結果を表9に示す。
【0100】
表1〜4、表6〜9より、以下のことが分かる。
▲1▼実施例2〜3と比較例1との比較、実施例17、実施例19と比較例3との比較、実施例14と比較例2との比較から、本発明の特定の芳香族第3級アミン化合物から誘導された新規な開始剤を使用することで、従来の有機リチウム化合物を開始剤に使用した場合と同様の分子構造の重合体が得られ、変性剤との反応効率も同等に高められることが分かる。
▲2▼実施例2と実施例4〜6とから、本発明の芳香族第3級アミン化合物から誘導される化合物にカリウム塩を添加することで、重合体への芳香族第3級アミノ基の導入率がさらに高められることが分かる。
【0101】
▲3▼実施例2と実施例7〜10から、本発明の芳香族第3級アミン化合物から誘導される化合物に、ヘテロ原子を2個以上含有する特殊なリチウムアルコキシド化合物を添加することで、重合体への芳香族第3級アミノ基の導入がさらに高められ、また変性剤との反応効率も高められることが分かる。
▲4▼実施例2と実施例12との比較、実施例7と実施例13との比較から、本発明の開始剤は、予備接触の有無に係わらず、従来の有機リチウム開始剤と同等の重合開始能力を有するとともに、変性剤との反応効率も良好であることが分かる。
【0102】
▲5▼表6のカーボンブラック系低燃費タイヤ用配合での評価結果より、本発明の開始剤から得られる重合体は、従来の有機リチウム化合物から得られる重合体より、破壊強度、耐摩耗性、ウエットスキッド性能(tanδ,0℃)と低ヒステリシス性能(tanδ,50℃)のバランスが改良されていることが分かる。
また、本発明の開始剤で重合された重合体の活性末端を、スズ化合物、イソシアナート化合物、ケトン化合物などで変性して、分子鎖の両末端に効率よく官能基を導入することで、諸物性の改良効果が著しいことが分かる。
【0103】
▲6▼表7の高性能タイヤ用配合による評価、表8のシリカ系低燃費タイヤ用配合による評価、表9のシリカ/カーボンブラック併用系低燃費タイヤ用配合による評価からも、本発明の開始剤から得られる重合体が、種々の配合において、従来の有機リチウム開始剤と対比して諸物性の改良効果を有することが分かる。
【0104】
【表1】
【0105】
DM−TOL;N,N−ジメチル−o−トルイジン
DM−TOL−Li;N,N−ジメチル−o−トルイジンのベンジル水素がリチウム化されたリチオ体
Et2NOH;N,N−ジエチルアミノエタノール
Et2NOLi;リチウム−N,N−ジエチルアミノエトキシド
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
DM−TOL;N,N−ジメチル−o−トルイジン
DM−p−TOL;N,N−ジメチル−p−トルイジン
Et2NOH;N,N−ジエチルアミノエタノール
DMA2−DPM;N,N,N′,N′−テトラメチル−3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン
DEAP;アジピン酸ジエチル
ABP;4,4′−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
BuSnCl;ジ−n−ブチルジクロロスズ
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
シランカップリング剤;ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
IPPD;N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン
NaBDC;ソジウム−ジブチルジチオカルバメート
DPG;ジフェニルグアニジン
MBTS;ジベンゾチアジルスルフィド
BBS;N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
CBS;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
【0112】
【表6】
【0113】
【表7】
【0114】
【表8】
【0115】
【表9】
【0116】
【発明の効果】
本発明によれば、芳香族第3級アミン化合物から誘導される新規なリチウム系開始剤に、必要に応じてカリウム化合物および/またはヘテロ原子を2個以上有するアルコール化合物から誘導される化合物を添加することにより、末端に芳香族第3級アミノ基が導入されたジオレフィン系(共)重合体の製造が可能となる。さらに、本発明の開始剤により重合された重合体の活性末端とスズ化合物、ケイ素化合物またはヘテロ原子を含む有機化合物とは、効率良く反応し、これらの化合物で変性されたジオレフィン系(共)重合体の製造が可能となる。
【0117】
本発明に用いられる開始剤は、ニトロソアミン化合物の発生源にはならない「芳香族第3級アミン化合物」から誘導されるので、従来のリチウムアミド開始剤のように、ニトロソアミン化合物の発生に基づく発癌性の危険がない。
このようにして得られる、第3級アミノ基が導入されたジオレフィン系(共)重合体、変性されたジオレフィン系(共)重合体の組成物は、破壊強度、耐摩耗性、低ヒステリシスロス性、ウエットスキッド抵抗性に優れ、特に高性能タイヤ、低燃費用タイヤなどのタイヤトレッドに好適に使用することができる。
Claims (5)
- 炭化水素溶媒中、必要に応じてエーテル化合物および/または第3級アミンの存在下で、共役ジオレフィン50〜100重量%と芳香族ビニル化合物50〜0重量%とを、下記(a1)および/または(a2)の芳香族第3級アミン化合物から誘導される開始剤を用いて重合することを特徴とするジオレフィン系(共)重合体の製造方法。
(a1);下記一般式(a1−1)および/または(a1−2)の芳香族第3級アミン化合物(A)と有機リチウム化合物との反応生成物であって、(A)の構造中の芳香族環に結合したメチル基と有機リチウム化合物とが1:0.2〜5.0のモル比で反応して得られる反応生成物。
(a2);上記芳香族第3級アミン化合物(A)の少なくとも一つの水素原子がLiに置き換えられたリチオ化合物。 - 開始剤として、▲1▼請求項1記載の(a1)および/または(a2)と、▲2▼(a1)および/または(a2)のリチウム1グラム原子当量あたり0.005〜0.5モルのカリウム化合物を用いる、請求項1記載のジオレフィン系(共)重合体の製造方法。
- 開始剤として、▲1▼請求項1記載の(a1)および/または(a2)と、▲2▼(a1)および/または(a2)のリチウム1グラム原子当量あたり0.01〜2.0モルの、下記(b1)および/または(b2)のヘテロ原子を2個以上有するアルコール化合物から誘導される化合物を用いる、請求項1または2記載のジオレフィン系(共)重合体の製造方法。
(b1);下記一般式(b−1)、(b1−2)、(b1−3)、(b1−4)および(b−5)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種のヘテロ原子を2個以上有するアルコール化合物(B)と有機リチウム化合物とが1:0.7〜5.0のモル比で反応して得られる反応生成物。
R22 r N〔(CH2 )s −OH〕3-r ・・・・・(b1−3)
(式中、R22は炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基、rは0〜2の整数、sは1〜3の整数を示す。)
(b2);上記アルコール化合物(B)の−OH基の水素原子(H)がLiに置き換えられたヘテロ原子を2個以上有するリチウムアルコキシド化合物。 - 開始剤として、▲1▼請求項1記載の(a1)および/または(a2)と、▲2▼(a1)および/または(a2)のリチウム1グラム原子当量あたり0.005〜0.5モルの請求項2記載のカリウム化合物、ならびに▲3▼(a1)および/または(a2)のリチウム1グラム原子当量あたり0.01〜2.0モルの請求項3記載の(b1)および/または(b2)のヘテロ原子を2個以上有するアルコール化合物から誘導される化合物を用いる、請求項1〜3いずれか1項記載のジオレフィン系(共)重合体の製造方法。
- 請求項1〜4いずれか1項記載の開始剤を用いて重合し、次いで重合活性末端が存在するうちに、重合活性末端を、下記(a)〜(k)の群から選ばれた少なくとも1種の化合物を変性剤として用い変性反応させる、請求項1〜4いずれか1項記載のジオレフィン系(共)重合体の製造方法。
(a)イソシアナート化合物および/またはイソチオシアナート化合物
(b)イソシアヌル酸誘導体および/または誘導体対応のチオカルボニル化合物
(c)尿素化合物
(d)アミド化合物および/またはイミド化合物
(e)N−アルキル置換オキサゾリジノン化合物
(f)ピリジル置換ケトン化合物および/またはピリジル置換ビニル化合物
(g)ラクタム化合物
(h)ケイ素化合物
(i)エステル化合物
(j)ケトン化合物
(k)スズ化合物
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