JP3641737B2 - トルクコンバータの共振音発生防止構造 - Google Patents

Description

【０００１】
【従来の技術】
一般に、自動車用自動変速機の発進要素として流体式トルクコンバータ（以下、単にトルクコンバータという）が用いられている。トルクコンバータは、流体を介して動力の伝達やトルクの増幅を行い、発進クラッチとしての機能と無段変速機としての機能とを併せ持っている。図３は従来のトルクコンバータの縦断面図である。トルクコンバータＴＣは、フロントカバーＦとポンプシェルＰｓを一体的に結合した外殻を有しており、該外殻内には流体が充填されている。ポンプシェルＰｓには多数のポンプブレードＰｂが一体的に取り付けられており、ポンプＰを形成している。また、トルクコンバータＴＣ内には、前記ポンプＰと対向して、タービンＴが配置されている。該タービンＴは、タービンシェルＴｓと該タービンシェルＴｓに一体的に取り付けられた多数のタービンブレードＴｂとからなり、ハブＴｈを介して自動変速機の入力軸（図示せず）に動力伝達可能に連結している。一方、前記フロントカバーＦには複数のセットブロックＳＢが固定されており、該セットブロックＳＢにはエンジンの出力軸に取り付けられたドライブプレート（図示せず）がボルトにより固定されている。よって、エンジンの動力は「ドライブプレート」→「フロントカバーＦ」→「ポンプＰ」→「流体」→「タービンＴ」→「自動変速機の入力軸」の順に伝達される。
【０００２】
更に、前記ポンプＰとタービンＴとの間にはステータＳが配置されている。該ステータＳは、一方向クラッチを介して自動変速機のケースに形成された円筒状のステータサポート（図示せず）に支持されている。該ステータＳは、ポンプＰとタービンＴとの回転差が大きいときは、タービンＴから流出する流体の流れの方向を、ポンプＰの回転を助長する方向に変換することによりトルク増幅作用を行う。一方、ポンプＰとタービンＴとの回転差が小さくなると、前記一方向クラッチの作用によりステータＳが流体の流れに追従して空転し、ポンプＰ−タービンＴ間で効率のよい動力伝達が行われる。
【０００３】
ところで前記タービンＴは、図４に示すように、タービンブレードＴｂに一体的に形成された複数のタブＴｔを、タービンシェルＴｓに形成された対応するスリットＳｔに挿通し、該タブＴｔを折り曲げることで組み立てられている。ところが、タービンシェルＴｓとタービンブレードＴｂとの間や、スリットＳｔとタブＴｔとの間には、僅かな隙間が生じるため、該隙間から流体が漏洩して伝達効率を低下させ一因となっている。また、タービンブレードＴｂは、タブＴｔでのみタービンシェルＴｓに固定されているため、強固な結合が得られにくい。そこで、一部のトルクコンバータにおいては、従来の方法でタービンシェルにタービンブレードを固定した後、ロウ付けを施し、前記隙間をなくすとともに、タービンブレードとタービンシェルとの結合強度を高め、トルクコンバータの性能およびタービンの耐久性の向上を図っている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
このように、タービンＴをロウ付けしたトルクコンバータにおいては、作動時に大きな高周波音を発生することがあった。このような高周波音は車両の静粛性を損ない、搭乗者に不快感を与えるため、その発生を防止することが望まれる。そして、本発明の発明者らの鋭意研究の結果、この高周波音は、ロウ付けにより剛性の向上したタービンが発生する共振音であり、さらに詳しくは、トルクコンバータの作動に伴って、タービンブレードの出口側で発生する流れの剥離がタービンブレードを振動させ、該振動がタービン全体に伝達することで、タービンが共振を起こして発生する共振音であることが解明できた。そこで、本発明は、前記研究の結果から、タービンの耐久性を低下させることなく効果的にタービンの共振音の発生を防止し、もって車両の静粛性を確保できる、トルクコンバータの共振音発生防止構造を提供するものである。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明においては上述の課題を達成するために、トルクコンバータのタービンブレードの出口側端部に少なくとも１つの切欠きを形成したことを特徴とする。
【０００６】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。図１は、本発明を適用したトルクコンバータの縦断面図である。図１に示すように、本実施形態においては、タービンブレードＴｂの出口側端部の略中央部に円弧状の切欠きＡが形成されている。これは、タービンブレードＴｂ出口側における流れの剥離が、タービンブレードの幅方向中央部付近で発生している場合に有効である。すなわち、タービンブレードの、流れの剥離が起こる部分を削除することにより、流れの剥離を低減し、タービンブレードに加振力が作用することが防止できる。なお、前記切欠きＡの位置、個数および大きさは図１に示すものに限定されることはなく、図２ａ，図２ｂに示すように、トルクコンバータの機種の違い等に応じて、流れの剥離が発生する位置に対応して位置、個数及び大きさを変更すればよい。また、前記切欠きＡの形状も円弧形状に限定されるものではなく、必要に応じて他の形状を用いてもよい。また、本発明はタービンにロウ付けを施したトルクコンバータだけでなく、タービンにロウ付けを施していないトルクコンバータに用いてもよい。
【０００７】
【発明の効果】
本発明においては、トルクコンバータのタービンブレードの出口側端部に少なくとも１つの切欠きを形成したので、トルクコンバータ作動時に、タービンブレードに流れの剥離による加振力が作用することがなくなり、トルクコンバータの性能およびタービンの耐久性を低下させることなくタービンの共振音の発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明を適用したトルクコンバータの縦断面図
【図２ａ】本発明の他の実施の形態によるトルクコンバータの縦断面図
【図２ｂ】本発明の他の実施の形態によるトルクコンバータの縦断面図
【図３】 従来のトルクコンバータの縦断面図
【図４】 タービンシェル側から見たタービンの平面図
【符号の説明】
Ａ 切欠き
Ｆ フロントカバー
Ｐ ポンプ
Ｐｂ ポンプブレード
Ｐｓ ポンプシェル
Ｓ ステータ
ＳＢ セットブロック
Ｓｔ スリット
Ｔ タービン
ＴＣ トルクコンバータ
Ｔｂ タービンブレード
Ｔｈ ハブ
Ｔｓ タービンシェル
Ｔｔ タブ

Claims (1)

1. 流体式トルクコンバータにおいて、ステータとの間に所定の空間を残しているタービンブレードの出口側端部に少なくとも１つの小さな円弧状切欠きを形成したことを特徴とするトルクコンバータの共振音発生防止構造。

Images