JP3640863B2 - イオン伝導性固体電解質 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池の固体電解質として利用できるイオン伝導性固体電解質、特にリチウムイオン伝導性固体電解質に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルカリ金属塩などの電解質を高濃度まで溶解し、かつ固体状態で高いイオン伝導性を示す高分子材料が見いだされ、これらはイオン伝導性高分子あるいは高分子固体電解質と呼ばれている。このイオン伝導性高分子は軽量で成形性に富む固体膜として得られるため、弾性、柔軟性を有する新しい固体電解質としてエネルギー、エレクトロニックス分野への応用が期待されている。
【0003】
今までに研究されているイオン伝導性高分子ひとつの基本構造としてはポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアミン系、ポリスルフィド系の直線状ポリマーがある。これらの化学構造を有するイオン伝導性高分子は多相系の結晶性高分子であるため、イオン伝導性が相変化の影響を受けやすく室温でのイオン伝導率が低い。この不具合を解消するため、比較的高いイオン伝導性を示すエーテルセグメントを中心に▲1▼それらを含むポリマー▲2▼ポリエーテル架橋したポリマー▲3▼高分子電解質型イオン伝導体▲4▼可塑化した高分子などが種々報告されている。
【0004】
しかし、上記の▲1▼のポリマーは分子量が低いと液状高分子となり、高分子量でも機械的強度が十分でないという不具合がある。▲2▼のポリマーは高い力学的強度を示すが、加工性が低く成形が困難である。▲3▼のポリマーはカチオンが強く対アニオンサイトに束縛されるため、イオン導電率が低い。▲4▼のポリマーは有機溶媒を使用しており、安全性の問題がある。
【0005】
例えば、特開昭63−193954号公報には、有機ポリマーが主鎖となるポリエチレンオキサイドにエステル結合を介して導入された側鎖としてエチレンオキサイド付加物を有する分岐ポリエチレンオキサイドからなるリチウムイオン伝導性ポリマーが開示されている。また、特開平2−207454号公報には、ポリホスファセンの主鎖にオリゴエチレンオキシ鎖の側鎖を導入した有機ポリマーを用いた全固体リチウム二次電池が開示されている。
【0006】
これらの有機ポリマーはオリゴエチレンオキサイド鎖が側鎖となって結合している。そのため主鎖を構成する繰り返し単位が十分な機械的強度を持ったものでないと電解質を溶解したイオン伝導性固体電解質では、その機械的物性を保持することが困難である。これらの有機ポリマーは、いずれも主鎖が軟質系の重合体であり力学的強度が不足し成形性などの点で問題を有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、オリゴエチレンオキサイド鎖を有する分岐型高分子をリチウム塩と共に有機ポリマーに導入することにより、従来のイオン伝導性固体電解質のイオン伝導性の不具合を解消して電池などに利用できるイオン伝導性固体電解質を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、イオン伝導性固体電解質のイオン伝導性の不具合を改良することを鋭意検討した結果、イオン導電性高分子にオリゴエチレンオキサイド鎖を含む高分岐ポリマーを配合することによりイオン導電性が向上することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明のイオン伝導性固体電解質は、主鎖にエーテル結合を有するポリオキシアルキレンである基材ポリマーと、主鎖にオリゴエチレンオキシド鎖と該オリゴエチレンオキシド鎖に結合したジオキシベンゾエート連結分子とからなる繰り返し単位を有する高分岐ポリマーと、リチウム塩とからなり、該基材ポリマーと該高分岐ポリマーとの配合割合において該高分岐ポリマーが20重量%以下であることを特徴とする。
【0010】
前記ジオキシベンゾエートのオキシ基は、オリゴエチレンオキシド鎖と結合し、ジオキシベンゾエートのカルボキシル基はオリゴエチレンオキシド鎖の末端の水酸基とエステル結合を形成していることが好ましい。
【0011】
なお、前記オリゴエチレンオキシド鎖の重合度は1〜20であることが好ましい。また、前記基材ポリマーは、分子量が少なくとも16000以上のものを用いることが好ましい。
【0012】
前記高分岐ポリマーの主鎖のオリゴエチレンオキシド鎖に結合した連結分子は、側鎖に第2のオリゴエチレンオキシド鎖が結合し該第2のオリゴエチレンオキシド鎖に連結分子が結合とすることができる。
【0013】
前記第2のオリゴエチレンオキシド鎖は前記ジオキシベンゾエートに結合していることが好ましい。
【0016】
前記リチウム塩は、(CF3SO2)2NLi、(CF3CH2SO2)2NLi、CF3SO3Li、LiBr、LiSCN、LiI、LiBF4、LiA3F4、LiClO4、LiC6F13SO3、LiCF3CO2、LiHgI3などから選ばれる一種を用いることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のイオン伝導性固体電解質は、主鎖にエーテル結合を有するポリオキシアルキレンである基材ポリマーと、高分岐ポリマーとの配合割合において高分岐ポリマーが20重量%以下である複合体に、リチウム塩を添加してなる。
【0018】
本発明の特徴は、高分岐ポリマーをイオン伝導性を有する基材ポリマーに配合して複合体とすることにより、従来のイオン伝導性高分子電解質に比べイオン導電率、イオン輸率、電気化学的安定性、およびリチウム金属との電解質界面の電気化学的安定性が向上して電池用の固体電解質として利用することができる。
【0019】
高分岐ポリマーは、架橋でなく連結分子で分岐したオリゴエチレンオキシド鎖が形成できるのでエチレンオキシド鎖が非晶性を保持してイオン伝導性を有し、イオン伝導性の基材ポリマーと複合体を形成すると両者の相乗効果によりイオン伝導性を高めることができる。
【0020】
この高分岐ポリマーは、主鎖にオリゴエチレンオキシド鎖と該オリゴエチレンオキシド鎖に結合した連結分子とからなる繰り返し単位を有し、前記連結分子は官能基を3個有し分岐状のオリゴエチレンオキシド側鎖を有する高分子とすることができる。その一般式を化学式1に示す。
【0021】
【化1】
化1式でRはH、CH3、COCH3基などの炭素数3以下のアルキル基または炭素数3以下のアシル基を示す。また、式中nはオリゴエチレンオキサイドの重合度を示す数で1〜20である。mは繰り返し単位を表す任意の整数である。
【0022】
なお、末端基がOHである場合は金属イオンがOH基に捕捉され、金属イオン移動が阻害される。このため、末端基はOH基以外のものが好ましく、例えばエステル化されていることが好ましい。
【0023】
連結分子は、オリゴエチレンオキシド鎖の末端とエーテル結合を、オリゴエチレンオキシド鎖の他の末端とエステル結合によりオリゴエチレンオキシド鎖の繰り返し単位を形成することができる。
【0024】
前記連結分子としては、ジオキシベンゾエートが利用できる。ジオキシベンゾエートでは、ジオキシ基のそれぞれがオリゴエチレンオキシド鎖の1末端がエーテル結合し、オリゴエチレンオキシド鎖の他端がカルボキシル基とエステル結合した繰り返し単位で分岐して枝状に伸びて高分子化する。この場合ジオキシベンゾエートのベンゼン核に結合したオキシ基の位置は、オリゴエチレンオキシド鎖と容易にエーテル結合が可能であればカルボキシル基に対してo−位、m−位、p−位のいずれでもよく、例えば3,5位あるいは、3,4位のジオキシベンゾエートが利用できる。特にオキシ基が対称位置に結合した3,5−ジオキシベンゾエートが枝状の高分子を形成するには好ましい。
【0025】
また、前記連結分子に結合したオリゴエチレンオキサイド鎖の一部は、第2のオリゴエチレンオキサイド鎖として化2式に示す分岐側鎖を形成していてもよい。第2のオリゴエチレンオキサイド鎖の末端は、水素、炭素数が3以下のアルキル基(メチル、エチル、プロピルなど)、アシル基(アセチル、プロピオニルなど)から選ばれる有機基が結合していてもよい。リチウム塩などを電解質として使用する場合はオリゴエチレンオキシドの末端が水酸基となる水素は、塩類と結合を形成し易いのでアルキル基、アシル基であることが望ましい。これらは、イオンの配位を妨げない程度の嵩高さであることが望ましい。
【0026】
【化2】
前記高分岐ポリマーは、化2式に示したように、連結分子に結合した第2のオリゴエチレンオキシド鎖が分岐側鎖を形成した繰り返し単位がランダムに混在している。この第2のオリゴエチレンオキシド鎖は、分岐側鎖を形成しているので分子内での自由度が高く電解質イオンとの親和性とイオンの移動しやすさとが付与できイオン伝導性より高めることができる。
【0027】
高分岐ポリマーは、連結分子を介してオリゴエチレンオキシド鎖が2方向に枝状に伸びる分岐型ポリマーであるので、架橋ポリマーの場合とは異なり前記した複合体の成形性を保持して機械的特性を高めることができる。また、この有機ポリマーは分岐型ポリマーであり非結晶性の高分子であるのでポリマーの相変化によるイオン伝導性の影響を除くことができる。
【0028】
高分岐ポリマーの合成は、例えば、ジオキシベンゾエートのフェノール性水酸基にエチレンオキサイドの付加や、ハロゲン化オリゴエチレンオキサイド、一方の末端を保護したオリゴエチレンオキシドのハロゲン化物とフェノール性水酸基とのエーテル化反応により得られるモノマーのジオリゴエチレンオキシベンゾエートのエステルを触媒(例えば錫触媒)の存在下に加熱する縮重合反応によって合成することができる。
【0029】
高分岐ポリマーの繰り返し単位を構成するオリゴエチレンオキシド鎖の重合度として1〜20が好ましい。高分岐ポリマーの重合度か低いとイオン伝導性能が十分でなく、逆に重合度か高くなりすぎるとオリゴエチレンオキシド鎖内で伝導性を阻害する結晶化が起こりやすくなるためである。オリゴエチレンオキシド鎖の原料としては、重合度1のジエチレングリコール、重合度2のトリエチレングリコール、オリゴポリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノクロルヒドリン(HOCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2Cl)、ジエチレングリコールモノクロルヒドリン(HOCH2CH2OCH2CH2Cl)、オルゴエチレングリコールモノクロルヒドリン(HOCH2CH2(OCH2CH2)3〜16OCH2CH2Cl)、トリエチレングリコールモノブロムヒドリン(HOCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2Br)、ジエチレングリコールモノブロムヒドリン(HOCH2CH2OCH2CH2Br)、オルゴエチレングリコールモノブロムヒドリン(HOCH2CH2(OCH2CH2)3〜16OCH2CH2Br)等を使用できる。
【0030】
高分岐ポリマーが配合される基材ポリマーは、主鎖にエーテル結合を有するポリオキシアルキレンであるイオン伝導性を有する基材ポリマーが用いられる。この基材ポリマーは、分子量が少なくとも16000以上であることが好ましい。分子量が小さい場合、基材ポリマーと高分岐ポリマーとの複合物のフイルム成形が困難となり好ましくない。また、基材ポリマーと高分岐ポリマーとの複合物は、通常溶液からのフイルム化を行うため、溶媒に可溶とするため分子量が高すぎても好ましくない。また、架橋等で溶解不可のものも好ましくない。
【0031】
前記の基材ポリマーは、具体的にはエーテル結合を有するアルキレンオキサイドポリマーのイオン伝導性を有する公知の高分子が利用できる。これらの基材ポリマーは高分岐ポリマーが配合されることにより両者の相乗効果によりイオン伝導性を高めることができる。
【0032】
前記の有機ポリマー、特に基材ポリマーとして、エーテル結合を有するポリオキシアルキレンと高分岐ポリマーを用いた場合には、イオン伝導性が向上すると共に電解質特性、機械的特性を向上させることができる。すなわち、オリゴエチレンオキシド鎖が連結分子と結合し、連結分子を介して分岐して延びている。このためオリゴエチレンオキシド鎖が、電解質の陽イオン、例えばリチウムイオンを高密度で配位したり移動させることができ、基材ポリマーのポリアルキレンオキシド鎖のイオン伝導性を高めることができると考えられる。
【0033】
前記基材ポリマーと前記高分岐ポリマーとの配合割合は、高分岐ポリマーが20重量%以下であることにより、イオン伝導率と高分子電解質の機械的特性の点から好ましい。
以上
【0034】
前記の基材ポリマーと前記高分岐ポリマーとの複合物には、従来のポリマー電解質に用いられているリチウム系の電解質と複合させてイオン伝導性固体電解質が構成できる。電解質としてはCF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、(CF3CH2SO2)2NLi、LiBr、LiSCN、LiI、LiBF4、LiA3F4、LiClO4、LiC6F13SO3、LiCF3CO2、LiHgI3、Li(CF3CF2SO2)2Nなどのリチウム塩が挙げられる。このリチウム塩の基材ポリマーの複合体に配合する量は通常の配合される範囲であれば可能であり、特に規定されるものではない。
【0035】
前記の基材ポリマーと前記高分岐ポリマーの複合物に電解質を複合させる一般的手段としては、ポリマーと電解質をそれぞれ所定量溶解した溶媒を混合した後、溶媒を揮発除去する方法が適用できる。この方法により電解質が、基材ポリマーと共に高分岐ポリマーのオリゴエチレンオキサイド鎖を配位座として固定され溶媒を除去した後もその状態が保持でき、成形体は優れたイオン導電性を示すので好ましいが、この方法に限定されるものではない。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により具体的に説明する。
【0037】
(高分岐ポリマーのモノマー合成例)
[1]8−(第三級ブチルジフェニルシロキシ)−1−ヒドロキシ3,6−ジオキシオクタン(1)の合成
攪拌機、還流冷却管を装備した200ml三つ口フラスコにトリエチレングリコール10.0g(66.6mmol)、第三級ブチルジフェニルシリルクロライド18.3g(66.6mmol)およびアセトニトリル100mlを秤取り、攪拌しながらトリエチルアミン4.0g(39.5mmol)を溶解した10mlのアセトニトリルを滴下し、16時間加熱還流して反応させた後、エバポレータで溶媒のアセトニトリルを留去し油状物を得た。
【0038】
この油状物を塩化メチレンを溶離液としたシリカゲルカラムに通し、トリエチレングリコールを含んだ第1バンド、第2バンド、第3バンドを除き、溶離液を酢酸エチルに変えて残った第4バンドの吸着物を集め、溶媒を減圧留去した。その結果、無色の油状物(2)を12.4g得た。この油状物(1)は8−(第三級ブチルジフェニルシロキシ)−1−ヒドロキシ3,6−ジオキシオクタン(化3式)であることをNMRおよび赤外スペクトルで確認した。
【0039】
【化3】
(ButPh)2SiOC2H4−(OC2H4)2−OH
[2]1−ブロモ−8−(第三級ブチルジフェニルシロキシ)−3,6−ジオキシオクタン(2)の合成
攪拌機を装備した200mlのナスフラスコに上記で得た油状物(1)11.5g(29.6mmol)、四臭化炭素12.8g(38.7mmol)およびテトラヒドロフラン60mlを秤り取り、窒素雰囲気下で四臭化炭素が完全に溶解するまで攪拌した。次にトリフェニルホスフィン10.2g(38.8mmol)を加え再度窒素雰囲気下で15分間室温で攪拌した。析出した白色固体を吸引濾過で取り除き、濾液をエバポレータで濃縮留去して油状物を得た。この油状物を塩化メチレンを溶離液としてシリカゲルカラムに通し、未反応物を含む第1バンドを除き、第2バンドの吸着物を溶離して集め、集めた溶媒を減圧濃縮することにより無色の油状物(2)を7.28g得た。この油状物(2)は1−ブロモ−8−(第三級ブチルジフェニルシロキシ)−3,6−ジオキシオクタン(化4式)であることをNMRおよび赤外スペクトルで確認した。
【0040】
【化4】
(ButPh)2SiOC2H4−(OC2H4)2−Br
[3]メチル−3,5−ビス[{8’−(第三級−ブチルジフェニルシロキシ)−3’,6’−ジオキシオクチル}オキシ]ベンゾエート(3)の合成
攪拌機、還流冷却器を装備した300mlナスフラスコに上記で合成した油状物(2)11.9g(26.4mmol)、メチル−3,5−ジヒドロキシベンゾエート2.2g(13.2mmol)、炭酸カリウム3.7g(26.4mmol)、18Crown−6 0.1g(0.4mmol)、およびアセトニトリル110mlを秤り取り、フラスコ内を窒素雰囲気として、激しく攪拌しながら16時間加熱還流した。反応後、析出した赤褐色固体を吸引濾過で濾別し、濾液をエバポレータにより留去して油状物を得た。得られた油状物は塩化メチレンを溶離液としてシリカゲルカラムに通し、未反応物を含む第1バンドおよび第2バンドを取り除き、溶離液を酢酸エチルに変えて残った第3バンドを溶離して集め、集めた溶媒を減圧濃縮することにより濃黄色油状物を得た。この油状物(3)は、メチル−3,5−ビス[{8’−(第三級−ブチルジフェニルシロキシ)−3’,6’−ジオキシオクチル}オキシ]ベンゾエート(化5式)であることをNMRおよび赤外スペクトルで確認した。
【0041】
【化5】
【0042】
[4]メチル−3,5−ビス[(8’−ヒドロキシ−3’,6’−ジオキシオクチル)オキシ]ベンゾエート(4)の合成
攪拌機を装備した100mlのナスフラスコに上記(3)6.50g(7.14mmol)、3%の塩化水素を含むメタノール20mlを秤取り、窒素雰囲気下で3時間攪拌した後、エバポレータで溶媒を留去し油状物を得た。得られた油状物をジエチルエーテルとアセトン(1/2/ml)の混合溶媒を溶離液としてシリカゲルカラムを通し、第1バンド、第2バンド、第3バンドを除き、残った第4バンドを溶離して集め、溶媒を減圧除去することにより黄色の油状物として得た。この油状物はメチル−3,5−ビス[(8’−ヒドロキシ−3’,6’−ジオキシオクチル)オキシ]ベンゾエート(4)(化6式)であることをNMRおよび赤外線スペクトルで確認した。
【0043】
【化6】
【0044】
(高分岐ポリマーの合成)
攪拌機を装備した10mlナスフラスコに上記で合成したモノマー(4)220mgと錫触媒のジーnーブチルスズジアセテート22mgをで加え、窒素気流下で165℃に加熱して20分間重合した。得られたゴム状固体を少量のテトラヒドロフランに溶解し、ヘキサン中に投入して沈殿させることにより精製した後、減圧下で乾燥させることによりポリ[ビス(トリエチレングリコール)ベンゾエート](5)をゴム状固体として得た。このゴム状固体を再度少量のテトラヒドロフランに溶解し、メタノールを加えて沈殿させ、上澄み液として低分子量のものを除き、高分子量のポリマーを回収し、減圧下で乾燥させゴム状固体を得た。得られた重合体はNMR(図11Hのチャート、図213Cのチャート)および赤外線スペクトルのチャート(図3)により化7式に示す分子構造を有する高分岐ポリマー(MW=25000)であることを確認した。
【0045】
【化7】
【0046】
高分岐ポリマーポリ[ビス(トリエチレングリコール)ベンゾエート]の末端基のアセチル化(ポリマー6)
攪拌機を装備した50mlナスフラスコに上記で得たポリマー(5)0.45gとアセチルクロライド0.7g(8.92mmol)を秤り取り、攪拌しながらトリエチルアミン1.78g(17.6mmol)を溶解した塩化メチレン10mlを滴下し、室温で48時間加熱攪拌した。攪拌後、反応溶液を100mlの分液ロートに入れ、塩化メチレンと水を加えて分離し、塩化メチレン層を水洗し硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過により硫酸マグネシウムを除去した。エバポレータにより濾液を濃縮して、得られたゴム状固体を少量の塩化メチレンに溶解し、ジエチルエーテルに再沈殿させることにより精製し、減圧下で乾燥することによりアセチル化したポリ[ビス(トリエチレングリコール)ベンゾエート](6)をゴム状固体として得た。この高分岐ポリマー(5)の水酸基は、全てアセチル化されていることを赤外線スペクトルで確認した。
(イオン伝導性固体電解質の作成)
予め重さを秤量した上記で合成したアセチル化したポリ[ビス(トリエチレングリコール)ベンゾエート](6)(約MW=25000)とポリエチレンオキシド(MW=5×106)を所定の重量比(アセチル化したポリ[ビス(トリエチレングリコール)ベンゾエート]ポリマー(6)/アセチル化したポリ[ビス(トリエチレングリコール)ベンゾエート]ポリマー(6)+PEO)で混合し、グローブボックス(アルゴン下)中で少量のアセトニトリルに溶解し、これに(CF3SO2)2NLiをLi/(EO)=1/8となる量添加して均一の溶液とした。そしてキャステング法によりテフロンシート上にキャステングしグローブボックス内で1時間放置した後、40℃に設定した乾燥炉で4時間減圧乾燥し、さらに60℃で20時間減圧乾燥することにより本実施例(配合比、高分岐ポリマー10WT%、20WT%、50WT%)および比較例(PEO100WT%および高分岐ポリマー100WT%)の電解質膜を形成した。
(イオン伝導性の評価)
作製した各フィルムを、測定中一定の厚さを保つためにテフロン製リングと共にステンレス電極で挟み込み、それを複素交流インピーダンス測定装置に導線を用いて接続し、その抵抗値を測定した。測定は20℃から80℃まで10℃毎に行い、測定した抵抗値より60℃と80℃のイオン伝導率を求めた。
【0047】
伝導率σ(S/cm)は次のように定義される。
【0048】
σ=C/R (C=I/S)
ここでIは試料の厚さ、Sはその面積、Rは抵抗を示す。IとSの値は常にそれぞれ0.04cm、0.785cm2になるようにフィルムを作成している、Cの値は常に0.05096である。抵抗値Rは複素交流インビータンス測定を行い決定した。この方法を用いれば、周波数変化に対応するインビータンス変化並びに位相の変化を解析することにより、バルク、粒界あるいは電極の挙動を明らかにすることができる。上記の式で測定した抵抗値Rを代入し伝導率を計算し、X軸は高分岐ポリマー(poly−Ac1bと略記した)の基材ポリマー(PEO)との複合体中での配合比を、Y軸は伝導率(logσ)としてプロットした結果を図4に示した。
【0049】
図4のグラフに示したように高分岐ポリマーを10WT%(0.1の配合比)配合した場合に、60℃および80℃でのイオン伝導率がピークとなりポリエチレンオキサイド(PEO)単独の場合より向上していることが分かる。なお、図4のグラフの両端はそれぞれのポリマーの単独の場合の値であり高分岐ポリマー単独ではイオン伝導率が低い。よって、PEOポリマーへ少量の高分岐ポリマーの複合することでイオン伝導率が向上することを示している。
【0050】
上記の基材ポリマーと高分岐ポリマーとの配合割合を変えた複合体とからなるイオン伝導性固体電解質の電気伝導度、Li輸率、絶縁破壊電圧を測定した結果を表1に示した。この場合も高分岐ポリマーを10WT%配合した場合に、基材ポリマー単独の場合よりも測定値が向上していることが分かる。
【0051】
【表1】
【0052】
絶縁破壊電圧の測定は、Li/ポリマー電解質/SS(ステンレススチール)のセルを用いSS電極を作動電極としリチウム電極を反対電極として電圧電流計(Solarton 1286を使用)で一次走査を行った時の絶縁破壊電圧を示した。
【0053】
Li輸率の測定は、Li/ポリマー電解質/SS(ステンレススチール)のセルを用いEvansnの方法(J.Evance,C.A.Vincent,P.G.Bruce,Polymer,28(1987)2324)により行った。Li輸率は以下の式に基づきdc分極前後のacインピーダンスにより算定した。
【0054】
tLi+=IS(△V−I0R0)/I0(△V−ISRS)
△Vは、セルのdc分極値
I0、ISは、初期および定常状態での分極時の電流値
R0、RSは、初期および定常状態での抵抗値
【0055】
【発明の効果】
本発明のイオン伝導性固体電解質は、イオン伝導性を示す基材ポリマーにオリゴエチレンオキシド鎖を有する高分岐型ポリマー構造を配合したことにより、リチウムイオンが配位する酸素原子の密度が高く、また、キャリアとなるリチウム塩の濃度を高くしても枝分かれのために基材ポリマーの結晶化は起きにくく、かつ成形性も高い。
【0056】
また基材ポリマー、高分岐ポリマー単独の場合よりイオン伝導率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で合成したポリマー(5)の1HNMRスペクトルのチャートである。
【図2】実施例で合成したポリマー(5)の13CNMRスペクトルのチャートである。
【図3】実施例で合成したポリマー(5)の赤外線スペクトルのチャートである。
【図4】基材ポリマーのポリエチレンオキサイドポリマーと高分岐ポリマーの配合割合を変化させた場合のイオン伝導率の測定結果のグラフである。
Claims (9)
- 主鎖にエーテル結合を有するポリオキシアルキレンである基材ポリマーと、主鎖にオリゴエチレンオキシド鎖と該オリゴエチレンオキシド鎖に結合したジオキシベンゾエート連結分子とからなる繰り返し単位を有する高分岐ポリマーと、リチウム塩とからなるイオン伝導性固体電解質であって、該基材ポリマーと該高分岐ポリマーとの配合割合において高分岐ポリマーが20重量%以下であることを特徴とするイオン伝導性固体電解質。
- 前記基材ポリマーと前記高分岐ポリマーとの配合割合において高分岐ポリマーが5重量%以上であることを特徴とする請求項1記載のイオン伝導性固体電解質。
- 前記ジオキシベンゾエートのオキシ基は、オリゴエチレンオキシド鎖と結合し、前記ジオキシベンゾエートのカルボキシル基はオリゴエチレンオキシド鎖の末端の水酸基とエステル結合を形成している請求項1に記載のイオン伝導性固体電解質。
- 前記オリゴエチレンオキシド鎖の重合度は1〜20である請求項1に記載のイオン伝導性固体電解質。
- 前記オリゴエチレンオキシド鎖の末端には、水素、炭素数3以下のアルキル基または炭素数3以下のアシル基から選ばれる有機基が結合している請求項1に記載のイオン伝導性固体電解質。
- 前記基材ポリマーは、分子量が少なくとも16000以上である請求項1に記載のイオン伝導性固体電解質。
- 前記高分岐ポリマーの主鎖のオリゴエチレンオキシド鎖に結合した連結分子は、側鎖に第2のオリゴエチレンオキシド鎖が結合し該第2のオリゴエチレンオキシド鎖に連結分子が結合している請求項1に記載のイオン伝導性固体電解質。
- 前記第2のオリゴエチレンオキシド鎖は前記ジオキシベンゾエートに結合している請求項7に記載のイオン伝導性固体電解質。
- 前記リチウム塩は、(CF3SO2)2NLi、(CF3CH2SO2)2NLi、CF3SO3Li、LiBr、LiSCN、LiI、LiBF4、LiA3F4、LiClO4、LiC6F13SO3、LiCF3CO2、LiHgI3などから選ばれる一種である請求項1に記載のイオン伝導性固体電解質。
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