JP3640389B2 - コンクリート二次製品の低騒音成形方法と装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、成形用型枠に流し込んだ生コンクリートに水平の振幅を与え、生コンクリートの空気抜きと締め固めを行うためのコンクリート二次製品の低騒音成形方法と、この成形方法の実施に用いる低騒音成形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート二次製品の製造において、良質の二次製品を成形することができるように、生コンクリートを流し込んだ型枠に振動を与え、生コンクリートの空気抜きと締め固めを行うための成形方法や装置がすでに提案されている。
【0003】
従来の成形装置は、支点で支持されて揺動可能となる台車の内部に成形用型枠を一方向への移動が可能となるよう収納し、上記台車をシリンダで揺動させることで、成形用型枠を台車内で左右に移動させ、上記揺動と左右の移動で成形用型枠に流し込んだ生コンクリートを空気抜きと締め固めを行うようにした構造になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、別の成形装置としては、成形用型枠をサーボシリンダで揺動可能に支持し、このサーボシリンダを制御することで成形用型枠を振動させ、成形用型枠に流し込んだ生コンクリートに対して、上記振動で空気抜きと締め固めを行うようにしているものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−190820号公報(図2、図3)
【特許文献2】
特開平9−109118号公報(第1頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の成形装置は、その振動によって低周波振動と高周波振動が発生し、低周波振動は装置の固定部分から地中に伝わり、離れた所にある建物等の重量物を振動させ、振動公害として社会問題化している。
【0007】
また、高周波振動は、騒音を発生させ、製造工場内の作業者に耳栓等の難聴対策を必要とし、装置の稼働時には、装置の周辺で会話も思うようにできにくく、しかも、工場周辺の住民に騒音をまき散らし、騒音公害として社会問題化している。
【0008】
更に、従来の成形装置は、上下の振動を伴うため、成形用型枠に過大な振動が加わり、型枠の寿命を低下させると共に、高流動性コンクリートは、振動による材料分離が生じるため、このような材料の成形ができないという問題がある。
【0009】
そこで、この発明の課題は、成形時の騒音や振動の発生を少なくすることができ、成形用型枠の寿命を長くできると共に、高流動性コンクリートを用いた成形も可能となるコンクリート二次製品の低騒音成形方法と装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記のような課題を解決するため、方法の発明は、下部フレーム上にX動テーブルと、このX動テーブル上にY動テーブルを配置し、このY動テーブル上に成形用型枠を載置し、上記X動テーブルを下部フレームに対してX方向に往復移動させると共にY動テーブルをX動テーブルに対してY方向に往復移動させることにより、成形用型枠にX動とY動の複合した水平の振幅を与えながら生コンクリートを流し込んで、この生コンクリートの空気抜きと締め固めを行う構成を採用したものである。
【0011】
上記X動テーブルとY動テーブルの移動周波数を可変制御し、成形用型枠にコンクリート二次製品の種類に応じた水平の円又は楕円軌道振幅を与えるように構成することができる。
【0012】
また、装置の発明は、下部フレーム上にX動テーブルと、このX動テーブル上にY動テーブルを配置し、このY動テーブル上に成形用型枠を載置し、上記下部フレームとX動テーブルの間に、X動テーブルのX方向への移動を可能とする直動機構を設け、上記X動テーブルとY動テーブルの間に、Y動テーブルのY方向への移動を可能とする直動機構を設け、上記下部フレームにX動テーブルを往復移動させる駆動機構と、X動テーブルにY動テーブルを往復移動させる駆動機構をそれぞれ設けた構成を採用したものである。
【0013】
上記駆動機構が、可変制御可能な回転駆動機と、この回転駆動機の回転軸に連結した偏心量が可変となる偏心機構と、この偏心機構の偏心回転部分とテーブルを結合する連結部材とで形成されている構造とすることができる。
【0014】
ここで、駆動機構は、回転駆動機に連結した偏心機構の偏心回転部分が回転すると、この偏心回転部分の偏心回転が連結部材でテーブルに伝達され、テーブルは偏心量の直径分のストロークだけ往復移動することになる。
【0015】
また、上記回転駆動機は、電動モータを用い、インバータ等による回転の可変制御により、成形用型枠に与えるX動とY動の複合した水平の振幅を、成形せんとするコンクリート二次製品の種類に応じた適正な周波数の振幅パターンに設定することができ、この電動モータの回転制御と偏心機構の偏心回転部分の偏心量の調節とにより、多品種生産に対応できることになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0017】
図示のように、この発明の低騒音成形装置は、防振ゴム1を介して設置される下部フレーム2上にX動テーブル3と、このX動テーブル3上にY動テーブル4を配置し、このY動テーブル4上に成形用型枠5を載置し、上記下部フレーム2とX動テーブル3の間に、X動テーブル3のX方向への移動を可能とする直動機構6を設け、上記X動テーブル3とY動テーブル4の間に、Y動テーブル4のY方向への移動を可能とする直動機構7を設け、上記下部フレーム2にX動テーブル3を往復移動させるX動用の駆動機構8と、X動テーブル3にY動テーブル4を往復移動させるY動用の駆動機構9をそれぞれ設けた構造になっている。
【0018】
上記下部フレーム2とX動テーブル3の間に設けた直動機構6は、周知の直線スライダーを用い、X動テーブル3の下部四隅の位置を支持するように配置され、また、X動テーブル3とY動テーブル4の間に設けた直動機構7も同様の直線スライダーを用い、Y動テーブル4の下部四隅の位置を支持するように配置され、上下の上記直動機構6と7はその直動方向が直角の関係になっている。
【0019】
上記Y動テーブル4上の成形用型枠5は、クランプ機構10を用いてY動テーブル4上に着脱自在に固定され、成形せんとするコンクリート二次製品の種類に応じたものを選択することができるようになっている。
【0020】
上記下部フレーム2にX動テーブル3を往復移動させるために設けたX動用の駆動機構8は、X動テーブル3のX動方向に位置する下部フレーム2の一方端部に支持台11を設け、この支持台11上に可変制御可能な回転駆動機12を設置し、この回転駆動機12の回転軸に連結した偏心機構13の偏心回転部分と、X動テーブル3の端部に固定した接続ヒンジ14をリンク状の連結部材15で連結した構造になっている。
【0021】
上記回転駆動機12は、電動モータを用い、インバータ等による回転を可変制御できるようになっていると共に、このモータの回転軸に連結した偏心機構13は、その偏心回転部分の偏心量を、調整手段によって可変となる構造を有し、偏心回転部分に一方の端部が回転可能となるよう外嵌する連結部材15の他端が接続ヒンジ14にピン結合されている。
【0022】
また、Y動用の駆動機構9も上記したX動用の駆動機構8と同様の構造を有し、X動テーブル3のY動方向に位置する一方端部に支持台16を設け、この支持台16上に可変制御可能な回転駆動機12を設置し、この回転駆動機12の回転軸に連結した偏心機構13の偏心回転部分と、Y動テーブル4の端部に固定した接続ヒンジ14をリンク状の連結部材15で連結した構造になっている。
【0023】
従って、X動用の駆動機構8とY動用の駆動機構9は、平面的に直角の配置となり、両駆動機構8と9によるX動とY動の周波数を同調させることも、X動に対してY動の周波数に高低差をつけることも自由であり、X動とY動の同時付与により、成形用型枠5は、平面的に水平の円又は楕円軌道の運動が与えられることになる。
【0024】
この発明の低騒音成形装置は、上記のような構成であり、次に低騒音成形装置を用いたコンクリート二次製品の成形方法を説明する。
【0025】
図示のように、成形せんとするコンクリート二次製品に対応する成形用型枠5をY動テーブル4の上に載置し、クランプ機構10を用いてY動テーブル4上に固定すると共に、X動用の駆動機構8とY動用の駆動機構9の振動周波数を、成形せんとするコンクリート二次製品に合わせてセットし、また、両偏心機構13、13の偏心量も同様に設定しておく。
【0026】
この状態でX動用の駆動機構8とY動用の駆動機構9を起動させ、上記X動テーブル3をX動方向に、Y動テーブル4をY動方向にそれぞれ移動させることにより、成形用型枠5にX動とY動の複合した水平の円又は楕円軌道の振幅を与えながら、該成形用型枠5に生コンクリートを流し込んで、この生コンクリートの空気抜きと締め固めを行う。
【0027】
上記の成形時において、X動用の駆動機構8とY動用の駆動機構9の回転駆動機12、12を可変制御することにより、生コンクリートの投入から締め固めのための低周波及び仕上げ時の高周波にいたる成形パターンを制御できることになる。
【0028】
また、縦寸法と横寸法が同一又は略同一形状の正方体、円柱、円錐台形等のコンクリート二次製品の成形は、X動とY動の振幅周波数を略同程度で成形するが、縦寸法と横寸法が大きく異なる長方体のような形状のコンクリート二次製品の成形の場合は、X動(長手方向)とY動の振幅周波数を違えて成形することが容易に可能であり、多品種生産に対応できることになる。
【0029】
更に、高流動性コンクリートは、振動による材料分離を生じるため、従来の振動式成形方法では成形できなかったが、この発明は、X動テーブル3とY動テーブル4を用いた低騒音成形装置は、振動ではなく、円又は楕円軌道の平面的な振幅であるので、材料分離の発生がなく、高流動性コンクリートを用いたコンクリート二次製品の成形が可能であり、しかも、成形用型枠5に過大な振動がかからないため、成形用型枠5の長寿命化を図ることができる。
【0030】
また、上記成形時に、成形用型枠5に水平の円又は楕円軌道の振幅を与えることになるが、この成形用型枠5内の生コンクリートのX動とY動の両方において、振幅の始点と終点時に、それぞれ逆方向の力が発生することにより、一方向の振幅に比べて生コンクリート内の空気抜きと締め固めがより効果的に行えることになる。
【0031】
このようにして、成形用型枠5内に投入した生コンクリートに、所定時間にわたって水平の円又は楕円軌道の振幅を与えることで、空気の混入がない良質のコンクリート二次製品を成形することができる。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、この発明によると、X動テーブルを下部フレームに対してX方向に往復移動させると共にY動テーブルをX動テーブルに対してY方向に往復移動させることにより、Y動テーブル上の成形用型枠にX動とY動の複合した水平の振幅を与えながら生コンクリートを流し込んで、この生コンクリートの空気抜きと締め固めを行うようにしたので、成形用型枠に対して、振動ではなく水平の円又は楕円軌道の振幅を与えることになり、これによって、成形時の騒音や振動の発生を少なくすることができ、成形装置の稼働時において、成形装置の周辺でも普通の会話が可能である程の低騒音を実現し、製造工場の内外での振動や騒音の弊害を無くすことができる。
【0033】
また、成形用型枠に対して、振動ではなく、円又は楕円軌道の平面的な振幅を与えるようにしたので、材料分離の発生がなく、高流動性コンクリートを用いたコンクリート二次製品の成形が可能であり、しかも、成形用型枠に過大な振動がかからないため、成形用型枠の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るコンクリート二次製品の低騒音成形装置の正面図
【図2】同上において成形用型枠を省いた状態で上下直動機構の配置関係を示す平面図
【符号の説明】
1 防振ゴム
2 下部フレーム
3 X動テーブル
4 Y動テーブル
5 成形用型枠
6 直動機構
7 直動機構
8 X動用の駆動機構
9 Y動用の駆動機構
10 クランプ機構
11 支持台
12 回転駆動機
13 偏心機構
14 接続ヒンジ
15 連結部材
16 支持台
Claims (4)
- 下部フレーム上にX動テーブルと、このX動テーブル上にY動テーブルを配置し、このY動テーブル上に成形用型枠を載置し、上記X動テーブルを下部フレームに対してX方向に往復移動させると共にY動テーブルをX動テーブルに対してY方向に往復移動させることにより、成形用型枠にX動とY動の複合した水平の振幅を与えながら生コンクリートを流し込んで、この生コンクリートの空気抜きと締め固めを行うことを特徴とするコンクリート二次製品の低騒音成形方法。
- 上記X動テーブルとY動テーブルの移動周波数を可変制御し、成形用型枠にコンクリート二次製品の種類に応じた水平の円又は楕円軌道振幅を与えることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート二次製品の低騒音成形方法。
- 下部フレーム上にX動テーブルと、このX動テーブル上にY動テーブルを配置し、このY動テーブル上に成形用型枠を載置し、上記下部フレームとX動テーブルの間に、X動テーブルのX方向への移動を可能とする直動機構を設け、上記X動テーブルとY動テーブルの間に、Y動テーブルのY方向への移動を可能とする直動機構を設け、上記下部フレームにX動テーブルを往復移動させる駆動機構と、X動テーブルにY動テーブルを往復移動させる駆動機構をそれぞれ設けたコンクリート二次製品の低騒音成形装置。
- 上記駆動機構が、可変制御可能な回転駆動機と、この回転駆動機の回転軸に連結した偏心量が可変となる偏心機構と、この偏心機構の偏心回転部分とテーブルを結合する連結部材とで形成されている請求項3に記載のコンクリート二次製品の低騒音成形装置。
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