JP3639746B2 - 音響用電解コンデンサ用のセパレータおよび音響用電解コンデンサ - Google Patents

Description

【０００１】
【発明が属する技術分野】
本発明は音響用電解コンデンサ用のセパレータおよび音響用電解コンデンサに関する。
【０００２】
【従来の技術】
電解コンデンサは、陽極箔と陰極箔とをセパレータを間に挟んで巻回してなるコンデンサ素子に電解液を含浸した後、有底の金属製のケース内に収納し、開口部をゴムなどの封口体にて封緘し、陽極箔および陰極箔にそれぞれ接続されている引出しリードを封口体の貫通孔を通して外部に引き出してなる構造を有する。セパレータとしては通常、クラフトパルプ繊維やマニラ麻繊維などの繊維を原料として抄製してなるものが使用されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構造を有する電解コンデンサをオーディオ機器の電源平滑用コンデンサやカップリング用コンデンサに使用した場合、音圧の変化や本電解コンデンサを実装しているプリント基板から伝播される振動によってコンデンサ素子の箔のセパレータへの締め付け力が変化する。ことに電解液が含浸されているセパレータは、繊維間の機械的結合が弱い膨潤状態にあるため、陽極箔および陰極箔の厚さや曲げ状態などの影響を受けやすい状態になっている。
【０００４】
これにより、図１に示した電解コンデンサの電気的等価回路において、セパレータ自体の抵抗とセパレータに含浸された電解液の抵抗でなるセパレータの抵抗Ｒｅが変動し、電解コンデンサの電気的定数を変動させてしまう。なお、本回路においてＲｆは皮膜抵抗、Ｌはコンデンサの巻き構造や引出しリードによるインダクタンス分、Ｄは皮膜の極性、Ｃ＋は陽極酸化皮膜の靜電容量であり、Ｃ−は陰極の自然空気酸化皮膜の靜電容量を意味する。
【０００５】
従って、このようなセパレータを有する電解コンデンサを音響用電解コンデンサとして、オーディオ機器の電源平滑用コンデンサやカップリング用コンデンサに使用した場合、音圧の変化や内部振動および外部振動などにより、オーディオ信号の劣化や音質の歪みが生じやすかった。
【０００６】
そこで、音響用電解コンデンサでは、音圧の変化や振動による音質の変化を少なくするために、セパレータにセラミック粉末を含有させたり（特開昭５９−１４９０１７号公報）、セラミック繊維を混抄（特公平６−３０３２６号公報）して、補強したものが提案されている。
【０００７】
本発明も音圧の変化や振動による音質の変化が少なく、品質の高い再生音を有する音響用電解コンデンサおよびこれに用いるセパレータを提供することを目的とし、セパレータの膨潤状態における強度を補強することによって、セパレータの抵抗の変化をできるだけ小さくしようとするものである。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明の音響用電解コンデンサ用のセパレータは、フッ素雲母粒子を含有してなることを特徴とする。
【０００９】
また本発明の音響用電解コンデンサは、繊維を抄製してなるセパレータを陽極箔と陰極箔との間に挟んで巻回して電解液を含浸させてなるコンデンサ素子を、金属製のケース内に収納し密封してなり、セパレータがフッ素雲母粒子を含有してなることを特徴とする。
【００１０】
陽極箔としては、アルミニウム箔をエッチングし化成したものが使用でき、また陰極箔としてはアルミニウム箔をエッチングしたものが使用できる。
【００１１】
電解液には、溶質として例えば無機酸や、芳香族カルボン酸および脂肪族カルボン酸などの有機酸を使用でき、また溶媒としてはγーブチロラクトンなどの非プロトン溶媒やエチレングリコールなどのプロトン溶媒を使用できるが、これらに限定されるものではない。
【００１２】
電解液には、初期の損失角の正接（ｔａｎδ）を改善するためにケトン類を添加したり、ｐＨを調整するためにｐＨ調整剤を添加するなど、その他の添加剤を添加してもよい。
【００１３】
セパレータは繊維を紙のように抄製したものが使用され、繊維としては、クラフトパルプ繊維やマニラ麻繊維などの植物繊維や、ポリプロピレン、ビニロン、レーヨン、ポリエチレン、ポリエステルなどの合成繊維を単独で用いたりまたは混抄したり、あるいはこれらにガラス繊維を混抄させたものが使用される。
【００１４】
フッ素雲母粒子は、膨潤性のものでも非膨潤性のものでもよい。フッ素雲母粒子は天然でも合成でもよいが、不純物が少ない点から合成したものが好ましく、合成フッ素雲母粒子としてはフッ素キンウンモやフッ素シロウンモなどがある。フッ素雲母粒子の粒子径は１ｎｍ〜１０μｍの範囲のものが好ましい。粒子径が１ｎｍ未満では補強効果がなく、また１０μｍを超えると、電解液の含浸に影響しコンデンサ特性が低下する。
【００１５】
フッ素雲母粒子は、例えば水に分散させた状態で、抄製されたセパレータに吹き付けたり、水に分散させた状態で、抄製されたセパレータに塗布したり、あるいは抄製前の繊維液にフッ素雲母粒子を添加させるなどして含有せしめられる。前記のような方法によってフッ素雲母粒子はセパレータの繊維間に入り込んだ状態で保持される。
【００１６】
フッ素雲母粒子の使用量はセパレータに対して重量比で０．０５〜５０％が好ましく、０．０５％未満では補強効果がなく、５０％を超えると電解液の含浸に影響しコンデンサ特性が低下する。
【００１７】
なお抄製されたセパレータは、複数層からなっていてもよく、この場合、複数の層の一部の層または全部の層にフッ素雲母粒子を含有させる。
【００１８】
音響用電解コンデンサのタイプは、ＪＩＳ０４形に限らず、その他の形でもよい。
【００１９】
【実施例】
厚さ８０μｍのアルミニウム箔（純度４Ｎ）をエッチングし化成したものを陽極箔とし、厚さ４０μｍのアルミニウム箔（純度２Ｎ）をエッチングしたものを陰極箔として、これらの間に表１のようにセパレータ（厚さ５０μｍ、１層からなる）の仕様を変えて、挟んで巻回してコンデンサ素子を作った。これにエチレングリコール系の電解液を含浸させた後、有底のアルミニウムケースに入れ、引出しリードをゴム製の封口体の貫通孔を通して外部に出しながら、開口部を封口体で密封することにより、直径８ｍｍ、高さ２０ｍｍ、定格５０Ｖ１００μＦの音響用電解コンデンサ（実施例１〜８、比較例１〜１４）を作成した。
【００２０】
セパレータの材質としてはクラフトパルプ繊維またはマニラ麻繊維を用いた。フッ素雲母粒子として合成フッ素雲母粒子（コープ・ケミカル株式会社製「ソマシフ」粒径１ｎｍ〜１０μｍ）を水に分散しセパレータに塗布した。フッ素雲母の含有量はセパレータに対する重量比である。
【００２１】
【表１】

【００２２】
実施例１〜８および比較例１〜１４のアルミニウム電解コンデンサをオ−ディオ機器の電源平滑用コンデンサとして用いて、音楽の再生音を６名で試聴して、その音質を帯域、質感、解像度、音像および音場に分けて１０点満点で評価した。その結果を表２に示す。なお比較例９〜１４のアルミニウム電解コンデンサでは、電解液の保持率が悪く、コンデンサ特性が悪すぎて製品化できなかった。
【００２３】
なお、帯域とは周波数特性であり高得点のものほど再現できる音の周波数帯が広いことを意味している。また質感とは音のＳＮ比で、音の伸びの再現性を意味している。さらに解像度とは音の分解能であり例えば重なった旋律をそれぞれ把握できる度合いを意味している。また音像とは音の美しさであり、音の透明感や輪郭を意味し、音場とは音の厚み、すなわち音の収束感を意味している。
【００２４】
【表２】

【００２５】
表２の結果から、本発明の音響用電解コンデンサ（実施例１〜８）は比較例１〜８の音響用電解コンデンサに比べて格段に音質が優れていることがわかる。
【００２６】
【発明の効果】
本発明のフッ素雲母粒子を含有させたセパレータを用いると、音圧の変化や振動に対してセパレータの抵抗の変化が少なく高品質の音質を再現することができる電解コンデンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】電解コンデンサの等価回路。
【符号の説明】
Ｒｅ セパレータの抵抗
Ｒｆ 皮膜抵抗
Ｄ 皮膜の極性
Ｌ インダクタンス分
Ｃ＋ 陽極酸化皮膜の靜電容量
Ｃ− 陰極の自然酸化皮膜の靜電容量

Claims (6)

1. フッ素雲母粒子を含有させたことを特徴とする音響用電解コンデンサ用のセパレータ。
2. フッ素雲母粒子の粒子径が１ｎｍ〜１０μｍである請求項１に記載の音響用電解コンデンサ用のセパレータ。
3. フッ素雲母粒子の含有率がセパレータに対して重量比で０．０５〜５０％である請求項１に記載の音響用電解コンデンサ用のセパレータ。
4. 繊維を抄製してなるセパレータを陽極箔と陰極箔との間に挟んで巻回して電解液を含浸させてなるコンデンサ素子を、金属製のケース内に収納し密封してなる音響用電解コンデンサにおいて、セパレータがフッ素雲母粒子を含有してなることを特徴とする音響用電解コンデンサ。
5. フッ素雲母粒子の粒子径が１ｎｍ〜１０μｍである請求項４に記載の音響用電解コンデンサ。
6. フッ素雲母粒子の含有率がセパレータに対して重量比で０．０５〜５０％である請求項４に記載の音響用電解コンデンサ。

Images