JP3638807B2 - タバコ煙粒子計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気環境中のタバコ煙粒子の量を測定するタバコ煙粒子計測装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
平成8年2月に労働省から「職場における喫煙対策のためのガイドライン」が通達され、そのガイドライン中には、職場の空気環境を定期的に測定することが要望されている。職場の空気環境における浮遊粉塵粒子の中で最も多いのはタバコ煙粒子であり、このタバコ煙粒子を測定する専用の測定器としては、労働環境衛生に使用される相対濃度計が知られている。
【0003】
この専用の相対濃度計としては分光濾紙塵埃計があり、この装置は濾紙に室内粉塵を捕集した後で、波長の異なる2種類の光線を照射し、それぞれの透過光量を測定して、その差によりタバコ煙粒子の濃度を測定する。
【0004】
また、本発明者らは質量濃度の測定ができる高性能な粉塵粒子検出装置を特開平8−159949号公報に提案しており、この装置は室内塵の質量濃度を計測するものであり、空気清浄器等の運転の制御等に利用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上述の従来例の分光濾紙塵埃計は、形状が大きくかつ重量があるために、位置を変えて多点測定を行うことが難しく、更に室内粉塵を濾紙に捕集し、その部分に光線を照射して検出するために捕集時間が長く掛かり、かつ濾紙の交換等が必要となり連続測定に向かないという問題点がある。
【0006】
また、特開平8−159949号公報の粉塵粒子検出装置は、室内塵を測定することを目的としているために、検出する粒子の種類が多岐に渡り、検出粒子の粒径範囲が広く、その結果として被検粒子の粒径に対する検出感度に差が生じ、大きな粒径の粒子に対して小さな粒径の粒子の検出感度が低いという問題点がある。従って、0.3μm程度のタバコ煙粒子を効率良く検出するための専用装置としては必ずしも最適とは云えない。
【0007】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、多点測定や連続測定に適した小型で軽量な構造を有し、効率良くタバコ煙粒子を検出することができるタバコ煙粒子計測装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係るタバコ煙粒子計測装置は、タバコ煙に該当する寸法の粒子を中心に通過させる直管部を有するノズルと、該ノズルを介して被検粒子を含む検出空気流と該検出空気流に平行なバイパス空気流とを生成する空気移送手段と、前記検出空気流内を通過する被検粒子からの散乱光を受光する受光素子と、楕円形状に整形した光ビームを発する光源と、前記検出空気流と前記バイパス空気流とを結ぶ前記受光素子の光軸と直交する方向から、前記光源の楕円形状の光ビームがその楕円の長軸方向が前記検出空気流の方向に対して略直角となるように前記検出空気流の層流部分に集光する光学系とを備え、前記受光素子を前記バイパス空気流の反対側から前記検出空気流に対して近接させて配置し、前記受光素子の出力により主として前記タバコ煙に該当する寸法の粒子を検出することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は実施例のタバコ煙粒子検出装置の側面図を示し、装置筐体1の内部には仕切板2が設けられており、仕切板2の上側には粒子検出部3が配置され、下側には制御部4が配置されている。筐体1の上面には外空気取入部5が設けられ、外空気取入部5と粒子検出部3の間には、例えば直径1mmの検出空気流Aを生成し直管部から成るノズル6が設けられている。また、粒子検出部3の内部には検出光学系が収納され、ノズル6の下方方向には小型ファン7が取り付けられている。更に、筐体1の両側面の仕切板2の近傍には空気排出部8が設けられている。
【0010】
図2は粒子検出光学系の構成図を示し、レーザーダイオードから成る光源10の光軸O1上に、集光用の非球面レンズ11が配置されている。非球面レンズ11によるレーザー光の集光点Cには、ノズル6からの被検粒子を含む検出空気流Aが紙面と直交する方向に通過し、検出空気流Aの中心に集光点Cが略一致するようにされている。そして、検出空気流Aと直交する面つまり紙面上において、レーザー光の光軸O1に対して略直角方向の光軸O2上に、フォトダイオードから成る受光素子12が近接して配置されている。
【0011】
また、検出空気流Aの一様性を確保するために、検出空気流Aを挟んで受光素子12と反対側の位置に、バイパス空気流Bが設けられており、これら検出空気流A及びバイパス空気流Bは、小型ファン7により吸引されて生成されるようになっている。特に、直管部を有するノズル6から流出する検出空気流Aは、ノズル6の近くにおいては比較的層流状態となっており、安定した検出を行うために集光点Cはこの層流部分に設けられている。ここで、ノズル6、光源10、非球面レンズ11、受光素子12の相対位置は、測定結果に対して極めて敏感に影響を及ぼすので、これらの光学系は一体として、アルミダイキャストや合成樹脂等から成るケースホルダ内に収納固定されて、粒子検出部3が構成されている。
【0012】
また、光源10におけるレーザー光の発光点Tと非球面レンズ11の主点H間の距離をS1、主点Hと集光点C間の距離をS2、非球面レンズ11の焦点距離をfとすると、S2=S1・f/(S1―f)の関係がある。本実施例においては、非球面レンズ11の焦点距離をf=4.49mm、レンズ11の外径をφ=6.38mm、距離S1=7.754mmと距離S2=11.097mmの比をS2/S1=1.431、集光点Cと受光素子12の間の距離をd=1.5mmと設定している。
【0013】
図3はブロック回路構成図を示し、受光素子12の出力は増幅器20、波形整形回路21、パルス計数積算回路22、マイクロコンピュータを有する制御回路23に順次に接続されている。更に、制御回路23には、電池も使用できる電源回路24、操作スイッチ25の出力が接続され、制御回路23の出力は、小型ファン7、発光素子12、タイマ回路26、記憶部27、LCD等を使ってCPMモードとmg/m3 モードの2種類の表示を行う表示部28、RS−232C等の外部出力部29にそれぞれ接続されている。
【0014】
このような構成により、操作スイッチ25のスタート/ストップスイッチを押すと電源回路24がオンして、制御回路23は粒子検出部3に電源を供給する。小型ファン7が回転して、被検粒子であるタバコ煙粒子等を含む空気が、外空気取入部5から装置筐体1内に流入し、図1の矢印に示すように、粒子検出部3内においてノズル6を通って、検出空気流A及びバイパス空気流Bを生成する。
【0015】
光源10から出射したレーザー光は光軸O1を通り、非球面レンズ11により検出空気流Aの集光点Cに集光する。検出空気流Aを流れる被検粒子が、このレーザー光のビーム径内を通過すると、個々の被検粒子により散乱光が発生し、光軸O2方向への散乱光が受光素子12に受光され、電気信号に変換される。この電気信号は増幅器20、波形整形回路21を通って、被検粒子の数を計数するパルス計数積算回路22に送られる。
【0016】
制御回路23は粒子検出部3に電源を供給した数秒後に、タイマ回路26にスタート支持を送り、同時にパルス計数積算回路22により積算を開始する。そして、指定時間が経過した後に、タイマ回路26の指示によりパルス計数積算回路22の積算を停止する。パルス計数積算回路22で積算された結果は、制御回路23を通して記憶部27に記憶され、LCD等の表示部28に表示される。測定時間は例えば0.1分間と1分間の2モードを有し、1分間の測定を10回連続して行った後に、自動的に測定を停止する。また、0.1分間の測定の場合には、RS−232C等の外部出力部29を介して、パーソナルコンピュータ等の外部機器へ送信し、データ処理を行うことが可能である。
【0017】
本実施例のタバコ煙粒子計測装置は、測定対象粒子をタバコ煙含有室内塵の粒子に限定し、粒径による差異が少ない粒子検出装置とするために、大きな粒径の粒子の検出感度を下げることによって、相対的に小さな粒径の粒子の検出感度を上げて、有効にタバコ煙粒子を検出するようにしている。粒子検出装置が粒子を検出するのは、光ビームと受光素子12の配置により決まる検出領域を被検粒子が通過した場合であり、この領域を被検粒子が通過しなければ検出がされることはない。粒径の大きい粒子を有効に検出するためには大きい検出領域の方が有利であるが、小さい検出領域では粒径の小さい粒子の方が相対的に有利である。従って、検出空気流A上の検出領域を小さくし、この通過経路を従来よりも細くすることにより、相対的に粒径の大きな粒子の検出領域を狭めて、粒径の小さな粒子の検出感度を向上させることができる。
【0018】
また、粒径の小さな粒子の検出感度を上げるには、被検粒子からの散乱光を効率良く受光する必要がある。このための方法として、受光部に集光レンズを使用する方法があるが、集光レンズを利用すると、集光レンズのマウントや焦点距離のために受光部が大きくなり、全体として小型化ができなくなる。
【0019】
散乱光強度は発光点からの距離が遠くなればなる程、減衰により低くなるので、受光素子12を発光点に近付けることにより散乱光の減衰を少なくし、効率良く受光するようにすることが好ましい。このとき、光軸O1に対する受光素子12の受光角度αを90〜180度として受光素子12を光ビームの焦光点Cに近接配置すると、光ビームが直接受光素子12に入射してハレーションを起こし易く、光ビームに対して受光角度αが例えば90度となるように配置することによってハレーションを生じ難くし、光ビームが直接受光素子12に入射することを回避して、効率の良い受光と装置の小型化を達成することができる。
【0020】
また、被検粒子が光ビームを通過する際には、粒径の大きな粒子は光ビームの端部を掠めても計測されるが、粒径の小さな粒子は計測され難い。従って、光ビームの端部を部分横断する粒子を少なくし、殆どの粒子が光ビームの中央部を貫通するようにする。光源10のレーザーダイオードは楕円偏向特性を有する光ビームを発し、この楕円光ビームは接合面に対し垂直方向と水平方向でビームの広がりが異なる。図4(a) は光源10の楕円光ビームLの長軸方向が、被検粒子を含む検出空気流Aの方向と平行な場合を示し、図4(b) は光源10の楕円光ビームLの長軸方向が、被検粒子を含む検出空気流Aの方向と直交する場合を示している。
【0021】
小さい粒径の粒子は相対的に散乱光濃度が小さいために、楕円光ビームLの光軸に沿って光ビームを貫通する粒子Pに対し、楕円光ビームLの端部を部分的に横断する粒子P’は計数され難い。従って、図4(a) の場合に比べて図4(b) の場合の方が光ビームLを貫通する粒子Pの割合が大きい。一方、大きい粒径の粒子の場合は散乱光強度が大きいために、光ビームLを部分的に横断する粒子でも十分計数されるので、大きな粒子では図4(a) の場合と図4(b) の場合で、計数される数量の差はあまりない。従って、図4(b) のように検出空気流Aに対して楕円光ビームLを光軸方向を直角となるように照射することにより、得られる0.3μm程度の粒径の小さいタバコ煙粒子の相対的な割合を大きくして、効率良く検出することができることになる。
【0022】
従来の粉塵粒子検出装置と本実施例のタバコ煙粒子検出装置を、粒径0.3μmの粒子に対する感度を1としたときの粒径0.6μmの粒子に対する相対感度で比較した実験によれば、従来の粉塵粒子検出装置の場合が21であるのに対して、楕円偏向光ビームの断面の光軸方向を検出空気流Aに略直角方向となるように光源10を配置した場合には8である。これに加えて検出空気流Aの通過経路を細くすると3.8となり、更に受光素子12を光ビームに略直角方向に近接配置して形成した本実施例のタバコ煙粒子検出装置で測定すると0.9となり、粒径0.3μm程度のタバコ煙粒子を最も有効に検出することができる。
【0023】
図5は従来の粉塵粒子検出装置と本実施例のタバコ煙粒子検出装置による検出粒径別感度の測定結果のグラフ図を示す。粉塵粒子検出装置の場合は、粒径が0.6μmの大きな粒子の感度が上がっているが、本実施例のタバコ煙粒子検出装置においては、検出粒径別の感度が一定となっており、0.3μm程度のタバコ煙粒子を有効に検出可能であることが分かる。
【0024】
このようにして、本実施例はタバコ煙粒子の径を中心とした浮遊粒子群に反応し、浮遊粒子群の質量濃度に対応した値を表示する携帯に便利な小型軽量の装置を実現することができる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るタバコ煙粒子計測装置は、直管部を有するノズルを通して、外部からの空気を流出して検出空気流を生成すると共に、バイパス空気流を生成し、検出空気流の略中心に光源からの楕円形状に整形した光ビームを集光し、バイパス空気流の反対側に配置した受光素子により検出空気中の被検粒子から散乱光を検出することにより、たばこ煙に該当する大きさの比較的粒径の小さい粒子を効果的に検出することができ、多点測定や連続測定を簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のタバコ煙粒子検出装置の側面図である。
【図2】検出光学系の構成図である。
【図3】ブロック回路構成図である。
【図4】光ビームの楕円偏向特性の説明図である。
【図5】検出粒径と検出感度の関係のグラフ図である。
【符号の説明】
1 装置筐体
3 粒子検出部
6 ノズル
7 小型ファン
10 光源
11 非球面レンズ
12 受光素子
22 パルス計数積算回路
23 コントロール部
28 表示部
A 検出空気流
B バイパス空気流
Claims (6)
- タバコ煙に該当する寸法の粒子を中心に通過させる直管部を有するノズルと、該ノズルを介して被検粒子を含む検出空気流と該検出空気流に平行なバイパス空気流とを生成する空気移送手段と、前記検出空気流内を通過する被検粒子からの散乱光を受光する受光素子と、楕円形状に整形した光ビームを発する光源と、前記検出空気流と前記バイパス空気流とを結ぶ前記受光素子の光軸と直交する方向から、前記光源の楕円形状の光ビームがその楕円の長軸方向が前記検出空気流の方向に対して略直角となるように前記検出空気流の層流部分に集光する光学系とを備え、前記受光素子を前記バイパス空気流の反対側から前記検出空気流に対して近接させて配置し、前記受光素子の出力により主として前記タバコ煙に該当する寸法の粒子を検出することを特徴とするタバコ煙粒子計測装置。
- 前記光源はレーザーダイオードとした請求項1に記載のタバコ煙粒子計測装置。
- 前記受光素子はフォトダイオードとした請求項1に記載のタバコ煙粒子計測装置。
- 前記光源と前記光学系と前記受光素子と前記空気移送手段とをユニットケースに一体的に固定した請求項1に記載の粒子検出装置。
- 前記空気移送手段は専用の小型ファンとした請求項1に記載の粒子検出装置。
- 前記受光素子の出力を基に前記検出空気流内を通過する前記被検粒子を計数した計数値を表示する表示手段を設けた請求項1に記載の粒子検出装置。
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