JP3638772B2 - 光重合性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光重合性組成物および光重合性樹脂積層体に関し、更に詳しくは印刷回路板作成に適したアルカリ現像可能な光重合性組成物および光重合性樹脂積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、印刷回路作成用のレジストとして支持層と光重合性層から成る、いわゆるドライフィルムレジスト(以下DFRと略称)が用いられている。DFRは、一般に支持フィルム上に光重合性組成物を積層し、多くの場合、さらに該組成物上に保護用のフィルムを積層することにより調製される。ここで用いられる光重合性層としては、現在、現像液として弱アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型が一般的である。
【0003】
DFRを用いてプリント回路板を作成するには、まず保護フィルムを剥離した後、銅張積層板等の永久回路作成用基板上にラミネーター等を用いDFRを積層し、配線パターンマスクフィルム等を通し露光を行う。次に必要に応じて支持フィルムを剥離し、現像液により未露光部分の光重合性組成物を溶解、もしくは分散除去し、基板上に硬化レジスト画像を形成させる。
【0004】
このようにして形成されたレジスト画像をマスクとして基板の金属表面をエッチング、またはめっきによる処理を行い、次いでレジスト画像を現像液よりも強いアルカリ水溶液を用いて剥離して、プリント配線板等を形成する。特に最近は工程の簡便さから貫通孔(スルーホール)を硬化膜で覆い、その後エッチングするいわゆるテンティング法が多用されている。エッチングには塩化第二銅、塩化第二鉄、銅アンモニア錯体溶液などが用いられる。DFRは三層構造のロール状態で保存されるため、保存時に端面から光重合性層がはみだす、いわゆるエッジフューズという現象が起こることがあり、取り扱い上好ましくない。また、DFRにおける未露光の光重合性層が硬いと、それを基板上にラミネートした時に密着性が悪く、凹凸の有る基板表面においては、光重合性層が凹凸を埋めることができず空間を生じることがある。このような空間が生じると、エッチング液が基板に浸透するため、断線、欠け等の不良が生じる。また、剥離工程において剥離片形状が大きく、砕けないと搬送ロールに絡み付くといったトラブルが生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したようなエッジフューズを改良するためには、光重合性層における結合剤の配合割合を相対的に増加させれば良いが、そうすると光重合性層の基板への追従性が低下し硬化膜の柔軟性が低下する。また、光重合性層の基板への追従性を良くするには、光重合性層における結合剤の配合割合を相対的に減少させれば良いが、そうするとエッジフューズの悪化、剥離時間が増加するという問題点が生じる。また、光重合性層における結合剤の分子量が大きい場合は剥離片形状が大きく、搬送ロールに絡み付くと言った問題が生じる。従ってこれら特性を同時に満足する光重合性組成物が望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、請求項で示される線状重合体とポリエチレングリコールまたはポリオキシエチレンメチルエ−テル体を含む光重合性組成物をDFRに用いた場合、エッジフューズ性と光重合性層の基板への追従性が良好となり、剥離片形状が細片になる等の特性が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本願は以下の発明を提供する。
(1)(a)カルボキシル基含有量が酸当量で100〜600であり、かつ、重量平均分子量が2万〜50万の線状重合体Aからなるバインダー用樹脂、20〜90重量%、(b)光重合可能な不飽和化合物、5〜60重量%、(c)光重合開始剤、0.01〜30重量%、及び(d)下記一般式(I)で示される化合物1〜20重量%を含有してなり、(b)光重合可能な不飽和化合物として、エチレングリコール鎖を有する化合物と下記一般式(II)のモノマーを含有することを特徴とする光重合性組成物。
【0008】
R1 −O−(CH2 CH2 O)n1 −R2 (I)
(R1 、R2 はHまたはCH3 であり、n1 は3〜25の整数を表す)
【化1】
(ここでn 2 、n 3 、n 4 は3〜20の整数、R 3 、R 4 は水素またはメチル基を表す)
なお、ここで用いられる線状重合体Aの重量平均分子量としては、好ましくは15万〜30万であり、さらに好ましくは18万〜25万である。
(2)バインダー用樹脂(a)が、カルボキシル基含有量が酸当量で100〜600であり、かつ、重量平均分子量が2万〜50万の線状重合体A、及びカルボキシル基含有量が酸当量で100〜600であり、かつ、重量平均分子量が3万〜9万のフェニル基を有するビニル化合物を共重合成分の一つとする線状重合体Bを重量比率、A/Bが90/10〜10/90となるように混合したものであることを特徴とする上記(1)記載の光重合性組成物。
【0009】
なお、ここで用いられる線状重合体Aの重量平均分子量としては、好ましくは15万〜30万であり、さらに好ましくは18万〜25万である。
(3)支持体上に上記(1)または(2)記載の光重合性組成物からなる層を設けた光重合性樹脂積層体。
本発明に用いられる一般式(I)の化合物において、n1が3未満ではDFRとした場合、エッジフューズ性が悪く、またn1が25を越えると光重合性組成物とするためにメチルエチルケトン等の溶剤を用いて溶解調合する際に、溶解性が悪くなるので好ましくない。本発明に用いるバインダー用樹脂(a)を構成する線状重合体Aに含まれるカルボキシル基の量は酸当量で100〜600である必要があり、好ましくは300〜400である。また、線状重合体Aの分子量は2万〜50万である必要がある。線状重合体Aの分子量が50万を超えると現像性が低下し、2万未満ではテンティング膜強度、エッジフューズ性が悪化する。本発明の効果をさらに良く発揮するためには、線状重合体Aの分子量は、好ましくは15万〜30万であり、さらに好ましくは18万〜25万である。
【0010】
ここで酸当量とはその中に1当量のカルボキシル基を有するポリマーの重量を言う。なお、酸当量の測定は電位差滴定法により行われる。また分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量(ポリスチレン換算)として求められる。
また、線状共重合体中のカルボキシル基はDFRにアルカリ水溶液に対する現像性や剥離性を与えるために必要である。酸当量が100未満では、現像耐性が低下し解像性、密着性に悪影響を及ぼし、600を超えると現像性や剥離性が低下する。
【0011】
線状共重合体Aは下記の2種類の単量体の中より各々一種またはそれ以上の単量体を共重合させることにより得られる。第一の単量体は分子中に重合性不飽和基を一個有するカルボン酸または酸無水物である。例えば(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル等である。第二の単量体は非酸性で、分子中に重合性不飽和基を一個有し、光重合性層の現像性、エッチング及びめっき工程での耐性、硬化膜の可とう性等の種々の特性を保持するように選ばれる。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2ーエチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類がある。また、フェニル基を有するビニル化合物(例えばスチレン)も用いることができる。
【0012】
線状共重合体Aは単独で用いても追従性、密着性は良好であるが、線状共重合体Bと併用することにより、より迅速な現像処理が可能となり剥離片形状もさらに細片となる。また、併用する場合のA/B(重量比)は90/10〜10/90である。
本発明に用いる線状共重合体Bに含まれるカルボキシル基の量は酸当量で100〜600である必要があり、好ましくは300〜400である。また、線状共重合体Bの分子量は3万〜9万である必要がある。線状共重合体Bの分子量が9万を超えると現像性が低下し、3万未満ではテンティング膜強度、エッジフューズ性が悪化する。
【0013】
ここで酸当量とはその中に1当量のカルボキシル基を有するポリマーの重量を言う。なお、酸当量の測定は電位差滴定法により行われる。また分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量(ポリスチレン換算)として求められる。
また、線状共重合体中のカルボキシル基はDFRにアルカリ水溶液に対する現像性や剥離性を与えるために必要である。酸当量が100未満では、現像耐性が低下し解像性、密着性に悪影響を及ぼし、600を超えると現像性や剥離性が低下する。
【0014】
線状共重合体BはAと同様、上記単量体から選ばれた単量体を共重合することにより得られるが、フェニル基を有するビニル化合物を必須成分とする。ビニル化合物としてはスチレンが好ましい。
本発明の光重合性組成物に含有されるバインダー用樹脂(a)の量は20〜90重量%の範囲であり、好ましくは30〜70重量%である。バインダー用樹脂(a)の量が20重量%未満であるか、または90重量%を超えると、露光によって形成される硬化画像が十分にレジストとしての特性、例えばテンティング、エッチング、各種めっき工程において十分な耐性を有しない。
【0015】
本発明の光重合性組成物を構成する光重合可能な不飽和化合物(b)としては、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート等の単官能モノマーや、好ましくは、少なくとも二つの末端エチレン基を持つ光重合性モノマーが用いられる。この例としては、1、6ーヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1、4ーシクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、またポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2ージ(pーヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、2、2ービス(4ーメタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、及びウレタン基を含有する多官能(メタ)アクリレート等がある。
【0016】
好ましい例としては、剥離片形状を細片とするために親水性基であるエチレングリコール鎖を有する化合物または下記一般式(II)で表されるものが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、その他の多官能、または単官能モノマーと併用しても良い。また、エチレングリコール鎖を有する化合物と下記一般式(II)のモノマーを併用する系も望ましく、これらのモノマーを使用する事により、追従性が良好で剥離片形状がより細片となる。
【0017】
【化2】
【0018】
(ここでn2、n3、n4は3〜20の整数、R3、R4は水素またはメチル基を表す)
一般式(II)で表される化合物において、n2、n3、n4が3よりも小さいと当該化合物の沸点が低下して、レジストの臭気が強くなり、使用が著しく困難になる。また、n2、n3、n4が20を越えると単位重量あたりの光活性部位の濃度が低くなるため、実用的感度が得られない。一般式(II)で表される化合物はプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを反応させ得られた生成物を適当な酸触媒の存在下でアクリル酸またはメタクリル酸によりエステル化する方法により合成することができる。
【0019】
これらの不飽和化合物(b)の使用量は、5〜60重量%の範囲から選ばれるが、この量が5重量%未満では、感度の点で十分ではなく、この量が60重量%を越えるとDFRに用いた場合に保存時の光重合性層のはみ出しが著しくなるため好ましくない。
本発明に用いられる光重合開始剤(c)としては、各種の活性光線、例えば紫外線などにより活性化され重合を開始する公知の開始剤が挙げられる。
【0020】
このような光重合開始剤としては例えば、2ーエチルアントラキノン、オクタエチルアントラキノン、1、2ーベンズアントラキノン、2、3ーベンズアントラキノン、2ーフェニルアントラキノン、2、3ージフェニルアントラキノン、1ークロロアントラキノン、2ークロロアントラキノン、2ーメチルアントラキノン、1、4ーナフトキノン、9、10ーフェナントラキノン、2ーメチル1、4ーナフトキノン、2、3ージメチルアントラキノン、3ークロロー2ーメチルアントラキノンなどのキノン類、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン[4、4’ービス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、4、4’ービス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどの芳香族ケトン類、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾインなどのベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、2ー(οークロロフェニル)ー4、5ージフェニルイミダゾリル二量体等のビイミダゾール化合物、チオキサントン類とアルキルアミノ安息香酸の組み合わせ、例えばエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチル、2ークロルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチル、イソプロピルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせ、また、2ー(οークロロフェニル)ー4、5ージフェニルイミダゾリル二量体とミヒラーズケトンとの組み合わせ、9ーフェニルアクリジン等のアクリジン類、1ーフェニルー1、2ープロパンジオンー2ーοーベンゾイルオキシム、1ーフェニルー1、2ープロパンジオンー2ー(οーエトキシカルボニル)オキシム等のオキシムエステル類等がある。これらの開始剤の好ましい例としては、ジエチルチオキサントン、クロルチオキサントン等のチオキサントン類、ジメチルアミノ安息香酸エチル等のジアルキルアミノ安息香酸エステル類、ベンゾフェノン、4、4’ービス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4、4’ービス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2ー(οークロロフェニル)ー4、5ージフェニルイミダゾリル二量体、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0021】
本発明の光重合性組成物に含有される光重合開始剤の量は、0.01重量〜30重量%であり、好ましくは、0.05重量〜10重量%である。光重合開始剤が30重量%を超えると光重合性組成物の活性吸収率が高くなり、光重合積層体として用いた場合、光重合層の底の部分の重合による硬化が不十分になる。
また、光重合開始剤の量が0.01重量%未満では十分な感度がでなくなる。
【0022】
さらに、本発明の光重合性組成物の熱安定性、保存安定性を向上させるために、光重合性組成物にラジカル重合禁止剤を含有させることは好ましいことである。このようなラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tertーブチルカテコール、塩化第一銅、2、6ージ−tertーブチルーpークレゾール、2、2’ーメチレンビス(4ーエチルー6ーtertーブチルフェノール)、2、2’ーメチレンビス(4ーメチルー6ーtertーブチルフェノール)、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、ジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。
【0023】
本発明の光重合性組成物は、染料、顔料等の着色物質を含有させることもできる。このような着色物質としては、例えば、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、カルコキシドグリーンS,パラマジエンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン、ベイシックブルー20、ダイヤモンドグリーン等が挙げられる。
【0024】
また光照射により発色する発色系染料を本発明の光重合性組成物に含有させることもできる。発色系染料としては、ロイコ染料またはフルオラン染料と、ハロゲン化合物の組み合わせがある。ロイコ染料としては、例えば、トリス(4ージメチルアミノー2ーメチルフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、トリス(4ージメチルアミノー2ーメチルフェニル)メタン[ロイコマラカイトグリーン]等が挙げられる。一方ハロゲン化合物としては臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンザル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルフォン、4臭化炭素、トリス(2、3ージブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1、1、1ートリクロロー2、2ービス(p−クロロフェニル)エタン、ヘキサクロロエタン、トリアジン化合物、等が挙げられる。
【0025】
トリアジン化合物としては、2、4、6ートリス(トリクロロメチル)ーs−トリアジン、2ー(4ーメトキシフェニル)ー4、6ービス(トリクロロメチル)ーs−トリアジンが挙げられる。
また、このような発色系染料の中でもトリブロモメチルフェニルスルフォンとロイコ染料との組み合わせや、トリアジン化合物とロイコ染料との組み合わせが有用である。また本発明の光重合性組成物に必要に応じて可塑剤等の添加剤を含有させることもできる。そのような添加剤としては、例えば、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類が挙げられる。DFR用の光重合性樹脂積層体とする場合には、上記光重合性樹脂組成物を支持層上に塗工する。支持層としては、活性光を透過する透明なものが望ましい。活性光を透過する支持層としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合体フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース誘導体フィルム、等が挙げられる。これらのフィルムは必要に応じ延伸されたものも使用可能である。厚みは薄い方が画像形成性、経済性の面で有利であるが、強度を維持する必要から10〜30μmのものが一般的である。
【0026】
支持体層と積層した光重合性層の反対側の表面に、必要に応じて保護層を積層する。支持層よりも保護層の方が光重合性層との密着力が充分小さく容易に剥離できることがこの保護層としての重要な特性である。このような保護層としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。光重合性層の厚みは用途において異なるが、印刷回路板作製用には5〜100μm、好ましくは、5〜90μmであり、光重合性層が薄いほど解像力は向上する。また、光重合性層が厚いほど膜強度が向上する。この光重合性樹脂積層体を用いた印刷回路板の作成工程は公知の技術により行われるが、以下に簡単に述べる。
【0027】
保護層がある場合は、まず保護層を剥離した後、光重合性層を印刷回路板用基板の金属表面に加熱圧着し積層する。この時の加熱温度は一般的に40〜160℃である。次に必要ならば支持層を剥離しマスクフィルムを通して活性光により画像露光する。次に光重合性層上に支持フィルムがある場合には必要に応じてこれを除き、続いてアルカリ水溶液を用いて光重合性層の未露光部を現像除去する。アルカリ水溶液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を用いる。これらのアルカリ水溶液は光重合性層の特性に合わせて選択されるが、一般的に0.5〜3%の炭酸ナトリウム水溶液が用いられる。次に現像により露出した金属面に既知のエッチング法、またはめっき法のいずれかの方法を行うことにより、金属の画像パターンを形成する。その後、一般的に現像で用いたアルカリ水溶液よりも更に強いアルカリ性の水溶液により硬化レジスト画像を剥離する。剥離用のアルカリ水溶液についても特に制限はないが、1%〜5%の水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの水溶液が一般的に用いられる。また、現像液や剥離液に少量の水溶性有機溶媒を加える事も可能である。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的実施形態について、実施例で説明する。
【0029】
【参考例1】
表1に示された組成(参考例1の欄)の化合物を均一に溶解した。次にこの混合溶液を厚さ20μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにバーコーターを用いて均一に塗布し、95℃の乾燥機中で4分間乾燥した。この時の光重合性層の厚さは40μmであった。光重合性層のポリエチレンテレフタレートフィルムを積層していない表面上に25μmのポリエチレンフィルムを張り合わせ積層フィルムを得た。一方、35μm圧延銅箔を積層した銅張積層板表面を湿式バフロール研磨(スリーエム社製、商品名スコッチブライト#600、2連)し、この積層フィルムのポリエチレンフィルムを剥しながら光重合性層をホットロールラミネーターにより105℃でラミネートした。この積層体にマスクフィルムを通して、超高圧水銀ランプ(オーク製作所HMW−201KB)により50mJ/ cm2 で光重合性層を露光した。続いてポリエチレンテレフタレート支持フィルムを剥離した後、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液を約60秒間スプレーし、未露光部分を溶解除去したところ良好な硬化画像を得た。
【0030】
また、本発明の光重合性組成物を用いた積層体について以下の評価を行った。
(1)エッジフューズ試験
23℃、50%でロール状で保管し端面からの光重合性層のしみ出し有無により以下のランク付けにより評価した。
○;6ヶ月以上端面からのしみ出し無しで保存可能。
【0031】
△;1ヶ月以上6ヶ月未満端面からのしみ出し無しで保存可能。
×;1ヶ月未満端面からのしみ出し無しで保存可能。
(2)剥離性試験
35μm圧延銅箔を積層した銅張り積層板にドライフィルムレジストのポリエチレンフィルムを剥がしながら光重合性層をホットロールラミネーターにより、105℃でラミネートした。この積層体に超高圧水銀ランプ((株)オーク製作所HMW−201KB)により50mJ/cm2 で光重合性層を露光した。続いてポリエチレンテレフタレート支持フィルムを剥離した後、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液を約60秒間スプレーした。得られた積層板を5cm角に裁断し、50℃の3%苛性ソーダ水溶液に浸せきし、積層板から剥がれる硬化膜の形状(剥離片形状)を以下のようにランク付けした。
【0032】
LL;硬化膜が積層板から剥がれる時、亀裂がなくシート状で剥離される。
L ;硬化膜が積層板から剥がれる時、亀裂が生じて剥離された後、10mm〜20mm角程度の形状となる。
M ;硬化膜が積層板から剥がれる時、亀裂が生じて剥離された後、5mm〜10mm角程度の細片となる。
【0033】
S ;硬化膜が積層板から剥がれる時、亀裂が多数生じて剥離された後、5mm角以下の微細片となる。
(3)追従性評価試験
35μm圧延銅箔を積層した銅張り積層板に、あらかじめ市販のドライフィルムレジストを使って、ラミネートー露光ー現像ーエッチングーレジスト剥離を行い、ライン幅が100、110、120、130、140、150μmの線状の溝を作った。溝の深さは約10μmであった。
【0034】
こうして作製した溝付き基板を用い、上記と同様の方法で上記積層体をラミネートした。この積層体にマスクフィルムを通して、基板の溝に垂直になるようなラインパターン(ライン幅;125μm)を使用して、露光、現像により画像パターンを得た。さらに、50℃の塩化第二銅溶液を70秒間スプレーし、レジストの無い部分の銅をエッチングした。最後に50℃の3%水酸化ナトリウム水溶液を約80秒間スプレーして硬化レジストを剥離した。こうして作られた銅ライン上で、あらかじめ溝のあった部分が断線していない箇所を数え、その数をxとした。反対にエッチングされて断線している箇所を数え、その数をyとし、次の計算式により断線率(%)を計算し、以下の方法によりランク付けした。
【0035】
断線率(%)=100y/(x+y)
○;断線率が30%未満
△;断線率が30%以上50%未満
×;断線率が50%以上
【0036】
【参考例2、実施例1〜4、比較例1〜3】
参考例1と同様の方法により、表1記載の組成の光重合性樹脂積層体を得、エッジフューズ試験、剥離性試験、追従性試験を行った。結果を表1に示す。
<記号説明>
P−1:メタクリル酸メチル70重量%、メタクリル酸23重量%、アクリル酸ブチル7重量%の三元共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分濃度30%、重量平均分子量12万)
P−2:メタクリル酸メチル70重量%、メタクリル酸23重量%、アクリル酸ブチル7重量%の三元共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分濃度24%、重量平均分子量20万)
P−3:メタクリル酸メチル47重量%、メタクリル酸23重量%、スチレン30重量%の三元共重合体のメチルチルケトン溶液(固形分濃度32%、重量平均分子量4.5万)
M−1:トリメチロールプロパントリアクリレート
M−2:平均8モルのプロピレンオキサイドを付加したポリプロピレングリコールにエチレンオキサイドをさらに両端にそれぞれ平均3モル付加したグリコールのジメタクリレート
M−3:ナノプロピレングリコールジアクリレート
M−4:ナノエチレングリコールジアクリレート
M−5:フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート
A−1:ベンゾフェノン
A−2:4、4’ービス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン
A−3:2ー(οークロロフェニル)ー4、5ージフェニルイミダゾリル二量体B−1:マラカイトグリーン
B−2:ロイコクリスタルバイオレット
B−3:トリブロモメチルフェニルスルフォン
C−1:ポリエチレングリコール(平均分子量400)
C−2:ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(平均分子量550)
C−3:ポリプロピレングリコール(平均分子量2000)
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】
本発明の光重合性樹脂組成物を用いたDFRは、特に保存時のエッジフューズ性が小さく、基板へのラミネート時における追従性が良好で、剥離片形状が細片となり搬送ロールに絡み付くことなく良好な剥離性を有しておりアルカリ現像型回路板作製用DFRとして有用である。
Claims (3)
- (a)カルボキシル基含有量が酸当量で100〜600であり、かつ、重量平均分子量が2万〜50万の線状重合体Aからなるバインダー用樹脂、20〜90重量%、(b)光重合可能な不飽和化合物、5〜60重量%、(c)光重合開始剤、0.01〜30重量%、及び(d)下記一般式(I)で示される化合物1〜20重量%を含有してなり、(b)光重合可能な不飽和化合物として、エチレングリコール鎖を有する化合物と下記一般式(II)のモノマーを含有することを特徴とする光重合性組成物。
R1 −O−(CH2 CH2 O)n1 −R2 (I)
(R1 、R2 はHまたはCH3 であり、n1 は3〜25の整数を表す)
- バインダー用樹脂(a)が、カルボキシル基含有量が酸当量で100〜600であり、かつ、重量平均分子量が2万〜50万の線状重合体A、及びカルボキシル基含有量が酸当量で100〜600であり、かつ、重量平均分子量が3万〜9万のフェニル基を有するビニル化合物を共重合成分の一つとする線状重合体Bを重量比率、A/Bが90/10〜10/90となるように混合したものであることを特徴とする請求項1記載の光重合性組成物。
- 支持体上に請求項1または2記載の光重合性組成物からなる層を設けた光重合性樹脂積層体。
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