JP3638562B2 - アンカーボルト固着用カプセル - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、あと施工アンカーに使用するアンカーボルト固着用カプセルに関し、更に詳しくは、孔に回転・打撃方式でアンカーボルトを固着するためのアンカーボルト固着用カプセルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、コンクリート基礎や壁、柱等に孔を穿孔しアンカーボルトを確実に固定するために、固化剤として、硬化性樹脂及び骨材や硬化剤をカプセルに挿入したアンカーボルト固着用カプセルが使用されている。
施工時、このボルト固着用カプセルを使用する場合、建造物である例えば柱に開けられた孔に前もって挿入する。
その後、後からアンカーボルトを孔に埋込み、カプセルを破壊させる。
すると、その中に充填されていた硬化性樹脂及び骨材や硬化剤が混ざり合い、結果的にアンカーボルトの周囲を充填するような形で固化するのである。
このために、施工後のアンカーボルトは、孔に固定されて脱落が防止されることになる。
【0003】
ところで、従来から、この種のアンカーボルト固着用カプセルとして種々のものが開発されている。
例えば、特開平11−117700号公報には、アンカーボルト固定用樹脂カプセルアンカーが提供されている。
このアンカーボルト固定用樹脂カプセルアンカーは、主剤や骨材を含むプラスチック容器の中に、硬化剤を含むガラス容器を入れて密閉したものである。
しかし、ガラス容器は、衝撃等により不用意にも壊れることがあるために危険である。
そのため、このガラス容器を使わずにプラスチックフイルム製の袋を使ったアンカーボルト固定用樹脂カプセルが開発されている。
【0004】
図10は、そのカプセルの例(第1従来例)を示した図である。
カプセルの上下端は、ぼぼ平行に溶着されて直線となっている。
このカプセルを孔に施工する場合を想定する。
カプセルを孔に挿入する場合、まず下端の部分(下溶着部)から孔の中に入れ込む。
この場合、下溶着部が一定の幅になっているため、孔の入り口に孔壁に引っ掛かり易い。
的確に挿入できたとしても、また下溶着部の両側(すなわち角)は孔壁に近い位置となるために、どうしても孔壁に接触し易い図10(B)。
【0005】
このように下端が真っ直ぐ溶着されていると、挿入がスムースにいかない問題がある。
【0006】
図11は、下端の溶着形態が上述のものと異なりカプセルの下端は孔に挿入し易くするために先細に形成されている例(第2従来例)である。
このカプセルを孔に施工する場合を想定する。
カプセルを孔に挿入する場合、まず、下端の先細の部分から、孔の中に入れ込む。
先細の部分は孔より小さいために入れ易いが、孔の中央への位置付けは難しく、たまたま中央からズレると、その肩部が孔壁に接触する 図11(B)。
【0007】
接触すると摩擦抵抗が発生して先細の先端の方が曲がって孔壁を押すように作用する。
このような状態になると、押し込んでも先端が孔奥に進まないため、カプセルが屈曲して(折れ曲がり現象)、尚更中に入らない。
無理やり強く押し込んでも、孔が詰まるようになる。
このように、一見、先細であると挿入し易いように考えられるが、現場で実際に施工すると、上記のような現象が生じてスムースに入らないのである。
以上のように、従来のカプセルは、必ずしも孔への挿入性が良好とは言えなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる技術背景をもとになされたもので、上記の従来技術の問題点を克服するためになされたものである。
すなわち、本発明は、施工時に孔にスムースに挿入することができるアンカーボルト固着用カプセルを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明者は、このような課題背景に対して、鋭意研究を重ねた結果、カプセルを溶着封止した状態で、孔の壁面に接触する比較的柔軟性の案内部を積極的に設けることにより、位置決めが的確に行われ、スムースに挿入することができる点を見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0010】
即ち、本発明は、(1)、硬化性樹脂を含む主剤と骨材とを収納したプラスチックフィルム袋体に、前記主剤を硬化させるための硬化剤を内包した長尺のプラスチック筒体を収納させたアンカーボルト固着用カプセルであって、前記プラスチックフィルム袋体の下端部はV字状の両辺から延出するエラ部を有するように溶着されているアンカーボルト固着用カプセルに存する。
【0011】
そして、(2)、両溶着辺のV字角が70〜120度であるアンカーボルト固着用カプセルに存する。
【0012】
そしてまた、(3)、プラスチックフィルム袋体は、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとの貼り合わせにより形成されているアンカーボルト固着用カプセルに存する。
【0013】
そしてまた、(4)、プラスチックフィルム袋体の長さ(L1)、底部の深さ(L1A)、及びプラスチック筒体の長さ(L2)の関係が、下記(1)の式で表されるアンカーボルト固着用カプセルに存する。
0.8×L1<L2<L1−L1A・・・(1)
【0014】
そしてまた、(5)、骨材は、角状の珪石であることを特徴とする請求項1記載のアンカーボルト固着用カプセルに存する。
【0015】
そしてまた、(6)、プラスチック筒体は、ストロー状の円筒体の両端を圧接溶着してなるものであるアンカーボルト固着用カプセルに存する。
【0016】
そしてまた、(7)、プラスチック筒体は、ポリプロピレンであるアンカーボルト固着用カプセルに存する。
【0017】
そしてまた、(8)、硬化性樹脂がラジカル硬化型樹脂であり、硬化剤が過酸化ベンゾイルであるアンカーボルト固着用カプセに存する。
【0018】
そしてまた、(9)、ラジカル硬化型樹脂を含む主剤と角状の珪石である骨材とを収納したポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとの貼り合わせにより形成されているプラスチックフィルム袋体に、前記主剤を硬化させるための過酸化ベンゾイルを有するポリプロピレンよりなる長尺のプラスチック筒体を収納させたアンカーボルト固着用カプセルであって、前記プラスチックフィルム袋体の下端部はV字状の両辺から延出するエラ部を有する状態に形成されており、プラスチック筒体は、ストロー状の円筒体の両端を圧接溶着してなるものであり、両溶着辺のV字角がV字角が70〜120度であるアンカーボルト固着用カプセルに存する。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
【第1の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態であるアンカーボルト固着用カプセルKを示す外観図である。
また、図2はプラスチックフィルム袋体Aの概略図(潰した状態)である。
また、図3は、硬化剤を含むプラスチック筒体Bの外観図である。
【0021】
〔プラスチックフィルム袋体A〕
まずプラスチックフィルム袋体Aは、縦溶着部3と上下端の溶着部である上溶着部2,下溶着部1により一枚のプラスチックフィルムが中空部を有する形状に形成されている。
フィルム材としては、運搬時の負荷にも耐え、ヒートシール可能で、しかも施工時に破砕され易いものが採用される。
【0022】
例えば、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィンのラミネートフィルム、ナイロン・ポリエチレンのラミネートフィルム、延伸ポリプロピレン・塩化ビニリデンラミネートフィルムなどが挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート・ポリエチレンのラミネートフィルムが好ましい。
【0023】
プラスチックフィルム袋体Aは、通常の粉体等が充填された袋体を製造する方法(例えば、食品工業において砂糖を充填した袋を製造する方法)の原理を使って作られる。
すなわち、簡単に述べると、まず一枚のヒートシール可能なフィルムを繰り出し、フオーマと呼ばれる整形筒の周囲に沿わせて下方に移動する。
この移動の際、フィルムは重ね合わせ部が、縦方向にシールされて筒状に形成される。
【0024】
次に、筒状となったフイルムの下端を溶着して下溶着部1を形成する。
この溶着の際、同時に水平方向の切断が行われ、前段階で充填工程を終えた下方に連なる筒状のフィルムは切り落とされる。
ついで、上端開口部から、後述する硬化剤等が充填されたプラスチック筒体Bや主剤、骨材等を、下端が溶着された筒状のフイルムに入れる。
最後に上端を溶着して上溶着部を形成し同時に切断する。
これで、プラスチックフィルム袋体Aに主剤、骨材、及びプラスチック筒体Bが挿入されたアンカーボルト固着用カプセルKが出来上がる。
【0025】
ところで、本発明は下溶着部1の溶着形状が特有の形を有するところに特徴がある。
図1に示すように、プラスチックフィルム袋体Aは、その内部が充填された状態(立体状態)では、プラスチックフィルムの下溶着部1が、略すり鉢状の中空底部を形成し、その底部から直径方向にエラ部12が垂下した形状である。
プラスチックフィルム袋体Aには、骨材M2や主剤M1が挿入される。
【0026】
ここで骨材M2とは、施工後にボルトを孔に固定するための充填物となるものであり、珪石、石灰石、マグネシアクリンカ等が挙げられる。
その形状は、小石状や砂状のものが好ましく、施工時、プラスチック筒体Bを破砕する観点から、球状のものではなく角状(角張った)のものが好ましく、特に、角状の珪石がより好ましい。
【0027】
主剤M1は、硬化反応により、コンクリート孔壁、骨材と硬化性樹脂の固化物、及びアンカーボルトを一体化してアンカーとして機能させるもので、硬化性樹脂の他、適宜、必要に応じて硬化促進剤、禁止剤等が含まれる。
また硬化性樹脂とは、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂等のラジカル硬化型樹脂が挙げられる。
【0028】
硬化促進剤としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシプロピルp−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチルp−トルイジン等の芳香族アニリン類、ナフテン酸コバルト等の金属石鹸類等が挙げられる。
【0029】
図2に示すように、前記プラスチックフィルム袋体Aの下溶着部1はV字状の両辺11,11から延出するエラ部12を有する。
ここで、このV字状の両溶着辺11,11のなす角度(すなわちV字角)が70〜120度であることが、孔への挿入性や、プラスチック筒体を保持する観点から好ましい。
この場合、溶着されている領域は、V字状の両辺から延出するエラ部12の部分である。
すなわち、プラスチックフィルム袋体Aの下端部は、中空部の底がV字状となるように溶着され同時に、その各辺から一定面積延出するように溶着されるのである。
このような溶着形状は、溶着金型の形を溶着部に対応する形とすることで容易に形状を設定できる。
【0030】
〔プラスチック筒体B〕
図3に示すように、プラスチック筒体Bは、ストロー状の筒体の上端部と下端部とが圧接溶着されて潰れた状態(接合状態)を呈している。
このプラスチック筒体Bを製造するには、上下の端部が開放されたストロー状の筒体を用意して、上下端部を溶着金型を使って圧接溶着することで簡単に製造が可能である。
その場合、下端部を溶着しておき、開放口から硬化剤M3を充填し、その後、上端部を溶着する。
【0031】
ここで、充填される硬化剤M3としては、硬化性樹脂の硬化を開始させるためのもので、過酸化ベンゾイル等のジアシルパーオキサイド類、キュメンパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物が挙げられるが、特に過酸化ベンゾイルが取り扱い性、ライフなどの観点から優れている。
【0032】
ここで、プラスチック筒体Bは、比較的、保形性が良いプラスチック材を使ったものが好ましい。
なぜならば、後述するように、保形性が良いとプラスチック筒体Bが折れ曲がり難いために、真っ直ぐな状態を保つことができ、プラスチックフィルム袋体AのV字状の底部に位置決めされ易いからである。
【0033】
ここでプラスチック筒体Bの材質は、主剤等と接触して変質しない材料から選択する必要があり、また施工時の破砕性に問題がないものがよく、この意味ではポリオレフィン類が適している。
ポリオレフィン類でも、ポリプロピレンは、保形性、耐薬品性、破砕性のバランスが特によい。
【0034】
プラスチックフィルム袋体Aの中で長尺なプラスチック筒体Bがプラスチックフィルム袋体AのV字状の底部に位置決めされ易いことで、まずプラスチック筒体Bが偏心した状態で位置決めされるようなことは極力、避けられ真ん中に保持され易いことがいえる。
そして、次のような、プラスチックフィルム袋体Aの長さL1と、プラスチック筒体Bの長さL2とが下記の式(1)の関係にある場合は、保持機能に加えて、施工の際、内包された硬化剤の均一な分散効果を得ることができる(この点は別に行った実験で確かめている)。
もっとも、下記の式(1)の関係になくても、V字状の両辺から延出するエラ部を有するように溶着されていることで、十分な保持効果が発揮できることはいうまでもない。
【0035】
0.8×L1<L2<L1−L1A・・・(1)
(下端の底部の深さ:L1A)
【0036】
このような高さ関係にあることで、プラスチックフィルム袋体Aの底部からプラスチック筒体Bが飛び出さない状態に、より確実に保持されるのである。
すなわち、運送等によりアンカーボルト固着用カプセルKに振動等が加わってもプラスチック筒体Bの下端がプラスチックフィルム袋体Aの底部で真ん中に位置するように作用するためにプラスチック筒体Bが自由に移動しない。
そのため、安定した保持状態が得られる。
このように、プラスチックフィルム袋体Aの真ん中にプラスチック筒体Bが位置するために、施工時、ボルトを打ち込んでアンカーボルト固着用カプセルKを破壊させた場合、硬化剤M3が左右に均等に広まり易い。
そのため一部のみ硬化剤が行き渡ったりすることはなく均等な硬化剤の分散が可能となるのである。
【0037】
〔施工例〕
図4は、アンカーボルト固着用カプセルKを孔Hに挿入するための施工例を示す。
アンカーボルト固着用カプセルKを孔Hに挿入する場合、まず下端の部分、すなわち下溶着部1の方から孔Hの中に入れ込む図4(A)。
先細の部分は上述したようにエラ部12を有するが、このエラ部12は角にもかかわらず、従来のように、骨材等が充填されていなく、溶着されて平板状であるため比較的柔軟性がある。
そのため、中央から外れて挿入しようとしても、エラ部に柔軟性があるために、従来の図10の如く引っ掛かって挿入の支障とすることはない。
しかも、エラ部12の誘導作用によって、的確に中心部を孔Hの真ん中に挿入することができる。
【0038】
そして、押し込む場合でも、エラ部12が案内となるために抵抗なく下方へ押し込むことができる 図4(B)。
しかも、バランスが崩れて一方の端が孔壁に強く接触しても強い摩擦力が発生することはなく挿入に支障はない。
【0039】
また、一旦、ある程度の孔の深さに挿入された後は、中空の底部の肩部が孔壁をスライドするようになり、さほど抵抗なくスムースに下方に挿入される。
そして挿入完了時点では、プラスチックフィルム袋体Aは孔Hの真ん中に位置する状態となる図4(C)。
【0040】
図5は、下溶着部1の形状の変形例を示す。
ここで 図5(A)は辺が上に湾曲した曲線形状に溶着されている。
また、図5(B)は辺が下に湾曲した曲線形状に溶着されている。
このような溶着形態は、溶着金型の設計により自由に変更可能である。
【0041】
【第2の実施の形態】
図6は、本発明の第2の実施の形態であるアンカーボルト固着用カプセルKを示す外観図である。
この実施の形態において、第1の実施の形態と異なるのは、プラスチックフィルム袋体Aの両方の上下端部にV字状の両辺から延出するエラ部12を有するように溶着されていることである。
【0042】
そのために、施工時、該カプセルを孔Hに挿入する際は、どちらの端から挿入してもよく、施工時の自由度が高くなる。
当然、下溶着部により、プラスチックフィルム袋体Aの中に収納されているプラスチック筒体Bの下端が真ん中に納まるように作用を受ける。
そして、プラスチックフィルム袋体Aの長さL1とプラスチック筒体Bの長さL2とが下記の式(2)の関係にある場合(図7参照)は、保持機能に加えて、施工の際、内包された硬化剤の均一な分散効果を得ることができる。
【0043】
0.8×L1<L2<L1(L1A+L1B)・・・ 式(2)
(下端の底部の深さ:L1A、上端の底部の深さ:L1B)
【0044】
以上、本発明を説明したが、本発明はその目的に沿う限り、実施の形態に限定されることなく種々の変形例が可能である。
例えば、溶着部に細かい多数の凹凸部を形成しておくと、補強効果が発揮できる。
このような凹凸部は、溶着金型の凹凸により簡単に溶着時に付与することが可能である。
プラスチック筒体Bにおける上下端の溶着部は、V状、U状等種々のものが採用可能である。
本発明においては、骨材等のプラスチックフィルム袋体Aへの充填物、硬化剤等のプラスチック筒体Bへの充填物、の量や種類は、種々アンカーボルト固着用カプセルKの適用場所によって異なることもある。
以下、実験を行って本発明と従来例との比較を行った。
【0045】
【実験】
〔実験例1〕(本願発明のアンカーボルト固着用カプセルK)
高さ250mm、直径100mmの円筒状のコンクリート片に18mmφ× 130mmの孔(モデル孔)をあけた。
なお孔の深さはアンカーボルト固着用カプセルの長さより深い場合も短い場合もある。
これに、図8(A)に示すようなアンカーボルト固着用カプセルK(本発明に相当)を使って、上記の孔Hに挿入した(なお、プラスチックフィルム袋体Aを潰した形でのみ示し以下同じ)。
【0046】
アンカーボルト固着用カプセルKにおける充填物、及び寸法は下記のとおりである。
〔プラスチックフィルム袋体A〕
寸法:外形、外径15.5mm、長さ150mm、厚さ85μ
充填材:硬化性樹脂 6.8g 硅石24g
〔プラスチック筒体B〕
寸法:直径4.3mm、全長125mm、厚さ0.15mm
充填材:硬化剤 0.86g
【0047】
その際、図9に示すように、荷重計Wでアンカーボルト固着用カプセルKを保持した状態で孔Hに挿入した。
挿入実験は5回行って、その時の荷重を計測した。
【0048】
〔実験例2〕(前述の従来例1に相当)
図8(B)に示すように、下端部の形状の異なる以外は実施例1と同じアンカーボルト固着用カプセルK(前述の従来例1に相当)を使って、実施例1と同様な実験を行った。
【0049】
〔実験例3〕(前述の従来例2に相当)
図8(C)に示すように、下端部の形状の異なる以外は実施例1と同じアンカーボルト固着用カプセルK(前述の従来例2に相当)を使って、実施例1と同様な実験を行った。
以上、実験結果を表1に示す。
【0050】
目視検査では、従来例では、折れ曲がり現象や中心ズレ現象が生じるのに対して本発明では、これらの現象は見られず、エラ部が孔壁に沿ってガイドする役割を果たしているのが明確に観察された。
この結果から、本発明のアンカーボルト固着用カプセルKは、従来例1及び従来例2に比べ、孔への挿入性が安定し且つ容易であることが分かった。
【0051】
【発明の効果】
アンカーボルト固着用カプセルKは、施工時に中心ズレや折れ曲がりが防止され、孔にスムースに挿入することができる。
孔に挿入した後も、硬化剤の分散が均一に行われ易い。
プラスチックフィルム袋体Aの長さと、底部の深さ、及びプラスチック筒体Bの長さの関係を式(1)の如く規定することで、プラスチック筒体Bが、更により安定して真ん中に位置することができる。
【0052】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施の形態であるアンカーボルト固着用カプセルKを示す外観図である。
【図2】図2は、プラスチックフィルム袋体Aの概略図(潰した状態)である。
【図3】図3は、硬化剤を含むプラスチック筒体Bの外観図である。
【図4】図4は、アンカーボルト固着用カプセルKを孔に挿入する場合における施工例を示す。
【図5】図5は、下溶着部の変形例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施の形態であるアンカーボルト固着用カプセルKを示す斜視図である。
【図7】図7は、第2の実施の形態におけるプラスチックフィルム袋体Aとプラスチック筒体Bとの関係を示す図である。
【図8】図8は、実験に使った各アンカーボルト固着用カプセルKを示した図である。
【図9】実験における、荷重計でアンカーボルト固着用カプセルKを保持した状態を示した図である。
【図10】図10は、従来のカプセルの例を示した図である。
【図11】図11は、従来の他のカプセルの例を示した図である。
【符号の説明】
1…下溶着部
11…辺
12…エラ部
2…上溶着部
3…縦溶着部
A…プラスチックフィルム袋体
B…プラスチック筒体
H…孔
K…アンカーボルト固着用カプセル
M1…主剤
M2…骨材
M3…硬化剤
W…荷重計
【発明の属する技術分野】
本発明は、あと施工アンカーに使用するアンカーボルト固着用カプセルに関し、更に詳しくは、孔に回転・打撃方式でアンカーボルトを固着するためのアンカーボルト固着用カプセルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、コンクリート基礎や壁、柱等に孔を穿孔しアンカーボルトを確実に固定するために、固化剤として、硬化性樹脂及び骨材や硬化剤をカプセルに挿入したアンカーボルト固着用カプセルが使用されている。
施工時、このボルト固着用カプセルを使用する場合、建造物である例えば柱に開けられた孔に前もって挿入する。
その後、後からアンカーボルトを孔に埋込み、カプセルを破壊させる。
すると、その中に充填されていた硬化性樹脂及び骨材や硬化剤が混ざり合い、結果的にアンカーボルトの周囲を充填するような形で固化するのである。
このために、施工後のアンカーボルトは、孔に固定されて脱落が防止されることになる。
【0003】
ところで、従来から、この種のアンカーボルト固着用カプセルとして種々のものが開発されている。
例えば、特開平11−117700号公報には、アンカーボルト固定用樹脂カプセルアンカーが提供されている。
このアンカーボルト固定用樹脂カプセルアンカーは、主剤や骨材を含むプラスチック容器の中に、硬化剤を含むガラス容器を入れて密閉したものである。
しかし、ガラス容器は、衝撃等により不用意にも壊れることがあるために危険である。
そのため、このガラス容器を使わずにプラスチックフイルム製の袋を使ったアンカーボルト固定用樹脂カプセルが開発されている。
【0004】
図10は、そのカプセルの例(第1従来例)を示した図である。
カプセルの上下端は、ぼぼ平行に溶着されて直線となっている。
このカプセルを孔に施工する場合を想定する。
カプセルを孔に挿入する場合、まず下端の部分(下溶着部)から孔の中に入れ込む。
この場合、下溶着部が一定の幅になっているため、孔の入り口に孔壁に引っ掛かり易い。
的確に挿入できたとしても、また下溶着部の両側(すなわち角)は孔壁に近い位置となるために、どうしても孔壁に接触し易い図10(B)。
【0005】
このように下端が真っ直ぐ溶着されていると、挿入がスムースにいかない問題がある。
【0006】
図11は、下端の溶着形態が上述のものと異なりカプセルの下端は孔に挿入し易くするために先細に形成されている例(第2従来例)である。
このカプセルを孔に施工する場合を想定する。
カプセルを孔に挿入する場合、まず、下端の先細の部分から、孔の中に入れ込む。
先細の部分は孔より小さいために入れ易いが、孔の中央への位置付けは難しく、たまたま中央からズレると、その肩部が孔壁に接触する 図11(B)。
【0007】
接触すると摩擦抵抗が発生して先細の先端の方が曲がって孔壁を押すように作用する。
このような状態になると、押し込んでも先端が孔奥に進まないため、カプセルが屈曲して(折れ曲がり現象)、尚更中に入らない。
無理やり強く押し込んでも、孔が詰まるようになる。
このように、一見、先細であると挿入し易いように考えられるが、現場で実際に施工すると、上記のような現象が生じてスムースに入らないのである。
以上のように、従来のカプセルは、必ずしも孔への挿入性が良好とは言えなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる技術背景をもとになされたもので、上記の従来技術の問題点を克服するためになされたものである。
すなわち、本発明は、施工時に孔にスムースに挿入することができるアンカーボルト固着用カプセルを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明者は、このような課題背景に対して、鋭意研究を重ねた結果、カプセルを溶着封止した状態で、孔の壁面に接触する比較的柔軟性の案内部を積極的に設けることにより、位置決めが的確に行われ、スムースに挿入することができる点を見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0010】
即ち、本発明は、(1)、硬化性樹脂を含む主剤と骨材とを収納したプラスチックフィルム袋体に、前記主剤を硬化させるための硬化剤を内包した長尺のプラスチック筒体を収納させたアンカーボルト固着用カプセルであって、前記プラスチックフィルム袋体の下端部はV字状の両辺から延出するエラ部を有するように溶着されているアンカーボルト固着用カプセルに存する。
【0011】
そして、(2)、両溶着辺のV字角が70〜120度であるアンカーボルト固着用カプセルに存する。
【0012】
そしてまた、(3)、プラスチックフィルム袋体は、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとの貼り合わせにより形成されているアンカーボルト固着用カプセルに存する。
【0013】
そしてまた、(4)、プラスチックフィルム袋体の長さ(L1)、底部の深さ(L1A)、及びプラスチック筒体の長さ(L2)の関係が、下記(1)の式で表されるアンカーボルト固着用カプセルに存する。
0.8×L1<L2<L1−L1A・・・(1)
【0014】
そしてまた、(5)、骨材は、角状の珪石であることを特徴とする請求項1記載のアンカーボルト固着用カプセルに存する。
【0015】
そしてまた、(6)、プラスチック筒体は、ストロー状の円筒体の両端を圧接溶着してなるものであるアンカーボルト固着用カプセルに存する。
【0016】
そしてまた、(7)、プラスチック筒体は、ポリプロピレンであるアンカーボルト固着用カプセルに存する。
【0017】
そしてまた、(8)、硬化性樹脂がラジカル硬化型樹脂であり、硬化剤が過酸化ベンゾイルであるアンカーボルト固着用カプセに存する。
【0018】
そしてまた、(9)、ラジカル硬化型樹脂を含む主剤と角状の珪石である骨材とを収納したポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとの貼り合わせにより形成されているプラスチックフィルム袋体に、前記主剤を硬化させるための過酸化ベンゾイルを有するポリプロピレンよりなる長尺のプラスチック筒体を収納させたアンカーボルト固着用カプセルであって、前記プラスチックフィルム袋体の下端部はV字状の両辺から延出するエラ部を有する状態に形成されており、プラスチック筒体は、ストロー状の円筒体の両端を圧接溶着してなるものであり、両溶着辺のV字角がV字角が70〜120度であるアンカーボルト固着用カプセルに存する。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
【第1の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態であるアンカーボルト固着用カプセルKを示す外観図である。
また、図2はプラスチックフィルム袋体Aの概略図(潰した状態)である。
また、図3は、硬化剤を含むプラスチック筒体Bの外観図である。
【0021】
〔プラスチックフィルム袋体A〕
まずプラスチックフィルム袋体Aは、縦溶着部3と上下端の溶着部である上溶着部2,下溶着部1により一枚のプラスチックフィルムが中空部を有する形状に形成されている。
フィルム材としては、運搬時の負荷にも耐え、ヒートシール可能で、しかも施工時に破砕され易いものが採用される。
【0022】
例えば、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィンのラミネートフィルム、ナイロン・ポリエチレンのラミネートフィルム、延伸ポリプロピレン・塩化ビニリデンラミネートフィルムなどが挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート・ポリエチレンのラミネートフィルムが好ましい。
【0023】
プラスチックフィルム袋体Aは、通常の粉体等が充填された袋体を製造する方法(例えば、食品工業において砂糖を充填した袋を製造する方法)の原理を使って作られる。
すなわち、簡単に述べると、まず一枚のヒートシール可能なフィルムを繰り出し、フオーマと呼ばれる整形筒の周囲に沿わせて下方に移動する。
この移動の際、フィルムは重ね合わせ部が、縦方向にシールされて筒状に形成される。
【0024】
次に、筒状となったフイルムの下端を溶着して下溶着部1を形成する。
この溶着の際、同時に水平方向の切断が行われ、前段階で充填工程を終えた下方に連なる筒状のフィルムは切り落とされる。
ついで、上端開口部から、後述する硬化剤等が充填されたプラスチック筒体Bや主剤、骨材等を、下端が溶着された筒状のフイルムに入れる。
最後に上端を溶着して上溶着部を形成し同時に切断する。
これで、プラスチックフィルム袋体Aに主剤、骨材、及びプラスチック筒体Bが挿入されたアンカーボルト固着用カプセルKが出来上がる。
【0025】
ところで、本発明は下溶着部1の溶着形状が特有の形を有するところに特徴がある。
図1に示すように、プラスチックフィルム袋体Aは、その内部が充填された状態(立体状態)では、プラスチックフィルムの下溶着部1が、略すり鉢状の中空底部を形成し、その底部から直径方向にエラ部12が垂下した形状である。
プラスチックフィルム袋体Aには、骨材M2や主剤M1が挿入される。
【0026】
ここで骨材M2とは、施工後にボルトを孔に固定するための充填物となるものであり、珪石、石灰石、マグネシアクリンカ等が挙げられる。
その形状は、小石状や砂状のものが好ましく、施工時、プラスチック筒体Bを破砕する観点から、球状のものではなく角状(角張った)のものが好ましく、特に、角状の珪石がより好ましい。
【0027】
主剤M1は、硬化反応により、コンクリート孔壁、骨材と硬化性樹脂の固化物、及びアンカーボルトを一体化してアンカーとして機能させるもので、硬化性樹脂の他、適宜、必要に応じて硬化促進剤、禁止剤等が含まれる。
また硬化性樹脂とは、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂等のラジカル硬化型樹脂が挙げられる。
【0028】
硬化促進剤としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシプロピルp−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチルp−トルイジン等の芳香族アニリン類、ナフテン酸コバルト等の金属石鹸類等が挙げられる。
【0029】
図2に示すように、前記プラスチックフィルム袋体Aの下溶着部1はV字状の両辺11,11から延出するエラ部12を有する。
ここで、このV字状の両溶着辺11,11のなす角度(すなわちV字角)が70〜120度であることが、孔への挿入性や、プラスチック筒体を保持する観点から好ましい。
この場合、溶着されている領域は、V字状の両辺から延出するエラ部12の部分である。
すなわち、プラスチックフィルム袋体Aの下端部は、中空部の底がV字状となるように溶着され同時に、その各辺から一定面積延出するように溶着されるのである。
このような溶着形状は、溶着金型の形を溶着部に対応する形とすることで容易に形状を設定できる。
【0030】
〔プラスチック筒体B〕
図3に示すように、プラスチック筒体Bは、ストロー状の筒体の上端部と下端部とが圧接溶着されて潰れた状態(接合状態)を呈している。
このプラスチック筒体Bを製造するには、上下の端部が開放されたストロー状の筒体を用意して、上下端部を溶着金型を使って圧接溶着することで簡単に製造が可能である。
その場合、下端部を溶着しておき、開放口から硬化剤M3を充填し、その後、上端部を溶着する。
【0031】
ここで、充填される硬化剤M3としては、硬化性樹脂の硬化を開始させるためのもので、過酸化ベンゾイル等のジアシルパーオキサイド類、キュメンパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物が挙げられるが、特に過酸化ベンゾイルが取り扱い性、ライフなどの観点から優れている。
【0032】
ここで、プラスチック筒体Bは、比較的、保形性が良いプラスチック材を使ったものが好ましい。
なぜならば、後述するように、保形性が良いとプラスチック筒体Bが折れ曲がり難いために、真っ直ぐな状態を保つことができ、プラスチックフィルム袋体AのV字状の底部に位置決めされ易いからである。
【0033】
ここでプラスチック筒体Bの材質は、主剤等と接触して変質しない材料から選択する必要があり、また施工時の破砕性に問題がないものがよく、この意味ではポリオレフィン類が適している。
ポリオレフィン類でも、ポリプロピレンは、保形性、耐薬品性、破砕性のバランスが特によい。
【0034】
プラスチックフィルム袋体Aの中で長尺なプラスチック筒体Bがプラスチックフィルム袋体AのV字状の底部に位置決めされ易いことで、まずプラスチック筒体Bが偏心した状態で位置決めされるようなことは極力、避けられ真ん中に保持され易いことがいえる。
そして、次のような、プラスチックフィルム袋体Aの長さL1と、プラスチック筒体Bの長さL2とが下記の式(1)の関係にある場合は、保持機能に加えて、施工の際、内包された硬化剤の均一な分散効果を得ることができる(この点は別に行った実験で確かめている)。
もっとも、下記の式(1)の関係になくても、V字状の両辺から延出するエラ部を有するように溶着されていることで、十分な保持効果が発揮できることはいうまでもない。
【0035】
0.8×L1<L2<L1−L1A・・・(1)
(下端の底部の深さ:L1A)
【0036】
このような高さ関係にあることで、プラスチックフィルム袋体Aの底部からプラスチック筒体Bが飛び出さない状態に、より確実に保持されるのである。
すなわち、運送等によりアンカーボルト固着用カプセルKに振動等が加わってもプラスチック筒体Bの下端がプラスチックフィルム袋体Aの底部で真ん中に位置するように作用するためにプラスチック筒体Bが自由に移動しない。
そのため、安定した保持状態が得られる。
このように、プラスチックフィルム袋体Aの真ん中にプラスチック筒体Bが位置するために、施工時、ボルトを打ち込んでアンカーボルト固着用カプセルKを破壊させた場合、硬化剤M3が左右に均等に広まり易い。
そのため一部のみ硬化剤が行き渡ったりすることはなく均等な硬化剤の分散が可能となるのである。
【0037】
〔施工例〕
図4は、アンカーボルト固着用カプセルKを孔Hに挿入するための施工例を示す。
アンカーボルト固着用カプセルKを孔Hに挿入する場合、まず下端の部分、すなわち下溶着部1の方から孔Hの中に入れ込む図4(A)。
先細の部分は上述したようにエラ部12を有するが、このエラ部12は角にもかかわらず、従来のように、骨材等が充填されていなく、溶着されて平板状であるため比較的柔軟性がある。
そのため、中央から外れて挿入しようとしても、エラ部に柔軟性があるために、従来の図10の如く引っ掛かって挿入の支障とすることはない。
しかも、エラ部12の誘導作用によって、的確に中心部を孔Hの真ん中に挿入することができる。
【0038】
そして、押し込む場合でも、エラ部12が案内となるために抵抗なく下方へ押し込むことができる 図4(B)。
しかも、バランスが崩れて一方の端が孔壁に強く接触しても強い摩擦力が発生することはなく挿入に支障はない。
【0039】
また、一旦、ある程度の孔の深さに挿入された後は、中空の底部の肩部が孔壁をスライドするようになり、さほど抵抗なくスムースに下方に挿入される。
そして挿入完了時点では、プラスチックフィルム袋体Aは孔Hの真ん中に位置する状態となる図4(C)。
【0040】
図5は、下溶着部1の形状の変形例を示す。
ここで 図5(A)は辺が上に湾曲した曲線形状に溶着されている。
また、図5(B)は辺が下に湾曲した曲線形状に溶着されている。
このような溶着形態は、溶着金型の設計により自由に変更可能である。
【0041】
【第2の実施の形態】
図6は、本発明の第2の実施の形態であるアンカーボルト固着用カプセルKを示す外観図である。
この実施の形態において、第1の実施の形態と異なるのは、プラスチックフィルム袋体Aの両方の上下端部にV字状の両辺から延出するエラ部12を有するように溶着されていることである。
【0042】
そのために、施工時、該カプセルを孔Hに挿入する際は、どちらの端から挿入してもよく、施工時の自由度が高くなる。
当然、下溶着部により、プラスチックフィルム袋体Aの中に収納されているプラスチック筒体Bの下端が真ん中に納まるように作用を受ける。
そして、プラスチックフィルム袋体Aの長さL1とプラスチック筒体Bの長さL2とが下記の式(2)の関係にある場合(図7参照)は、保持機能に加えて、施工の際、内包された硬化剤の均一な分散効果を得ることができる。
【0043】
0.8×L1<L2<L1(L1A+L1B)・・・ 式(2)
(下端の底部の深さ:L1A、上端の底部の深さ:L1B)
【0044】
以上、本発明を説明したが、本発明はその目的に沿う限り、実施の形態に限定されることなく種々の変形例が可能である。
例えば、溶着部に細かい多数の凹凸部を形成しておくと、補強効果が発揮できる。
このような凹凸部は、溶着金型の凹凸により簡単に溶着時に付与することが可能である。
プラスチック筒体Bにおける上下端の溶着部は、V状、U状等種々のものが採用可能である。
本発明においては、骨材等のプラスチックフィルム袋体Aへの充填物、硬化剤等のプラスチック筒体Bへの充填物、の量や種類は、種々アンカーボルト固着用カプセルKの適用場所によって異なることもある。
以下、実験を行って本発明と従来例との比較を行った。
【0045】
【実験】
〔実験例1〕(本願発明のアンカーボルト固着用カプセルK)
高さ250mm、直径100mmの円筒状のコンクリート片に18mmφ× 130mmの孔(モデル孔)をあけた。
なお孔の深さはアンカーボルト固着用カプセルの長さより深い場合も短い場合もある。
これに、図8(A)に示すようなアンカーボルト固着用カプセルK(本発明に相当)を使って、上記の孔Hに挿入した(なお、プラスチックフィルム袋体Aを潰した形でのみ示し以下同じ)。
【0046】
アンカーボルト固着用カプセルKにおける充填物、及び寸法は下記のとおりである。
〔プラスチックフィルム袋体A〕
寸法:外形、外径15.5mm、長さ150mm、厚さ85μ
充填材:硬化性樹脂 6.8g 硅石24g
〔プラスチック筒体B〕
寸法:直径4.3mm、全長125mm、厚さ0.15mm
充填材:硬化剤 0.86g
【0047】
その際、図9に示すように、荷重計Wでアンカーボルト固着用カプセルKを保持した状態で孔Hに挿入した。
挿入実験は5回行って、その時の荷重を計測した。
【0048】
〔実験例2〕(前述の従来例1に相当)
図8(B)に示すように、下端部の形状の異なる以外は実施例1と同じアンカーボルト固着用カプセルK(前述の従来例1に相当)を使って、実施例1と同様な実験を行った。
【0049】
〔実験例3〕(前述の従来例2に相当)
図8(C)に示すように、下端部の形状の異なる以外は実施例1と同じアンカーボルト固着用カプセルK(前述の従来例2に相当)を使って、実施例1と同様な実験を行った。
以上、実験結果を表1に示す。
【0050】
目視検査では、従来例では、折れ曲がり現象や中心ズレ現象が生じるのに対して本発明では、これらの現象は見られず、エラ部が孔壁に沿ってガイドする役割を果たしているのが明確に観察された。
この結果から、本発明のアンカーボルト固着用カプセルKは、従来例1及び従来例2に比べ、孔への挿入性が安定し且つ容易であることが分かった。
【0051】
【発明の効果】
アンカーボルト固着用カプセルKは、施工時に中心ズレや折れ曲がりが防止され、孔にスムースに挿入することができる。
孔に挿入した後も、硬化剤の分散が均一に行われ易い。
プラスチックフィルム袋体Aの長さと、底部の深さ、及びプラスチック筒体Bの長さの関係を式(1)の如く規定することで、プラスチック筒体Bが、更により安定して真ん中に位置することができる。
【0052】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施の形態であるアンカーボルト固着用カプセルKを示す外観図である。
【図2】図2は、プラスチックフィルム袋体Aの概略図(潰した状態)である。
【図3】図3は、硬化剤を含むプラスチック筒体Bの外観図である。
【図4】図4は、アンカーボルト固着用カプセルKを孔に挿入する場合における施工例を示す。
【図5】図5は、下溶着部の変形例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施の形態であるアンカーボルト固着用カプセルKを示す斜視図である。
【図7】図7は、第2の実施の形態におけるプラスチックフィルム袋体Aとプラスチック筒体Bとの関係を示す図である。
【図8】図8は、実験に使った各アンカーボルト固着用カプセルKを示した図である。
【図9】実験における、荷重計でアンカーボルト固着用カプセルKを保持した状態を示した図である。
【図10】図10は、従来のカプセルの例を示した図である。
【図11】図11は、従来の他のカプセルの例を示した図である。
【符号の説明】
1…下溶着部
11…辺
12…エラ部
2…上溶着部
3…縦溶着部
A…プラスチックフィルム袋体
B…プラスチック筒体
H…孔
K…アンカーボルト固着用カプセル
M1…主剤
M2…骨材
M3…硬化剤
W…荷重計
Claims (9)
- 硬化性樹脂を含む主剤と骨材とを収納したプラスチックフィルム袋体に、前記主剤を硬化させるための硬化剤を内包した長尺のプラスチック筒体を収納させたアンカーボルト固着用カプセルであって、前記プラスチックフィルム袋体の下端部はV字状の両辺から延出するエラ部を有するように溶着されていることを特徴とするアンカーボルト固着用カプセル。
- 両溶着辺のV字角が70〜120度であることを特徴とする請求項1記載のアンカーボルト固着用カプセル。
- プラスチックフィルム袋体は、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとの貼り合わせにより形成されていることを特徴とする請求項1記載のアンカーボルト固着用カプセル。
- プラスチックフィルム袋体の長さ(L1)、底部の深さ(L1A)、及びプラスチック筒体の長さ(L2)の関係が、下記(1)の式で表されることを特徴とする請求項1記載のアンカーボルト固着用カプセル。
0.8×L1<L2<L1−L1A・・・(1) - 骨材は、角状の珪石であることを特徴とする請求項1記載のアンカーボルト固着用カプセル。
- プラスチック筒体は、ストロー状の円筒体の両端を圧接溶着してなるものであることを特徴とする請求項1記載のアンカーボルト固着用カプセル。
- プラスチック筒体は、ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1記載のアンカーボルト固着用カプセル。
- 硬化性樹脂がラジカル硬化型樹脂であり、硬化剤が過酸化ベンゾイルであることを特徴とする請求項1記載のアンカーボルト固着用カプセル。
- ラジカル硬化型樹脂を含む主剤と角状の珪石である骨材とを収納したポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとの貼り合わせにより形成されているプラスチックフィルム袋体に、前記主剤を硬化させるための過酸化ベンゾイルを有するポリプロピレンよりなる長尺のプラスチック筒体を収納させたアンカーボルト固着用カプセルであって、前記プラスチックフィルム袋体の下端部はV字状の両辺から延出するエラ部を有する状態に形成されており、プラスチック筒体は、ストロー状の円筒体の両端を圧接溶着してなるものであり、両溶着辺のV字角がV字角が70〜120度であることを特徴とするアンカーボルト固着用カプセル。
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