JP3637837B2 - 回転電機の制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、2個のロータを備えた複合型の回転電機およびそれを用いた駆動システムに関し、特に一方のロータをジェネレータとして動作させ、他方のロータをモータとして動作させる際に好適な構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
複合型の回転電機としては、特開平11−275826号公報に記載された装置(本願出願人の先願発明)ものがある。この回転電機は、中空円筒状のステータの内側と外側に所定のギャップをおいて中空円筒状の外側ロータと内側ロータとが配置された構造になっている。そして外側ロータ軸と内側ロータ軸は同一軸上に並ぶように配置され、外側ロータと内側ロータは同軸上でそれぞれ独立に回転出来るようになっている(後記図7で詳細後述)。そして上記ステータに設けたコイルに流す複合電流を前記ロータの数と同数の回転磁場が発生するように制御することにより、2個のロータを独立に制御することが出来る。前記公報においては2個のロータの極対数比が1対1極対数比、3対1極対数比、2対1極対数比の場合における回転電機として成立できる旨が記載されている。なお、極対数比とは一方のロータと他方のロータの磁極対(NとSで1対)の数の比を示す。例えば、1対1極対数比とは一方のロータの磁極対(NS)の数と他方のロータの磁極対の数とが同じ(NS1組とNS1組やNS2組とNS2組)の場合、3対1極対数比とは一方のロータがNS3組または6組で他方ロータがNS1組または2組(極対数比は何れも3:1)のような場合を示す。
上記のごとき回転電機においては、一方のロータをジェネレータとして、他方のロータをモータとして運転する場合、いわゆるハイブリッドシステムとして動作させる場合に、発電電力とモータ駆動電力との差の分の電流を共通のコイルに流すだけでよいので、効率を大幅に向上させることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のごとき回転電機において、1対1極対数比の構成では、磁気カップリング効果が有るので、両方のロータを同速度(回転角速度ω1=ω2)で回転させる場合には、ステータのコイルに電流を流さないで直結状態で駆動することも出来る(磁気カップリングモード:詳細後述)という利点がある。また、ロータが逆転(二つのロータが相互に逆方向に回る)する逆転モード(詳細後述)もある。しかし、磁気カップリングのために、一方のロータを回転させると他方のロータも回転するので意図しない場合に内燃機関や車両が動き出すおそれがあり、また、逆転モードのために内燃機関や車両の駆動軸が逆転するおそれもあるので、いわゆるハイブリット用モータとして構成しにくいという問題があった。
【0004】
本発明は上記のごとき問題を解決するためになされたものであり、磁気カップリングで直結状態で駆動できるモードと、各ロータを独立に回転制御できるモードとを切り換えて制御する機能を持った回転電機の制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明においては特許請求の範囲に記載するように構成している。すなわち、請求項1に記載の発明においては、2個のロータは磁極を形成する永久磁石を1対1極対数比とし、かつ、何れか一方のロータには2n個(n=1,2,3,…)の励磁コイルを備えた回転電機を用い、制御装置は、永久磁石による磁極と励磁コイルによる磁極とが異極で隣合うように励磁することによって前記回転電機を(n+1)対1極対数比で動作させるモードと、永久磁石による磁極と励磁コイルによる磁極とが同極で隣合うように励磁するか、若しくは励磁コイルに電流を流さないことによって回転電機を1対1極対数比で動作させるモードとを切り換えて制御するように構成している。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、前記2つのモードを2個のロータの回転速度の相互関係に応じて切り換えるものであり、請求項3および請求項4においては、それらの詳細な構成を示している。また、請求項5においては、1対1極対数比モードと(n+1)対1極対数比モードとの切り換え時の制御を記載し、請求項6においては、1対1極対数比モードの場合には、励磁コイルの励磁電流を目標伝達トルクに応じて制御するように構成している。
【0007】
【発明の効果】
請求項1においては、一方のロータに設けた励磁コイルの電流をオンオフするかまたは電流の方向を切り換えることにより、1対1極対数比モードと(n+1)対1極対数比モードとに切り換えて動作させることが出来る。そして(n+1)対1極対数比モードの場合には二つのロータを独立して制御することが出来、かつ、磁気カップリングモードや逆転モードはない。また、1対1極対数比モードの場合には磁気カップリングモードがあるので、例えば一方のロータを駆動装置で駆動して他方のロータを同速で回転させる場合にはステータコイルに電流を流さなくてもよい。したがって、例えば一方のロータ軸を内燃機関に接続し、他方のロータ軸を車軸に接続し、車両の動作状態に応じて両者を適宜切り換え動作させれば、良好な特性のみを利用出来る、という効果が得られる。
【0008】
また、請求項2〜4においては、2つのロータの回転速度に応じて1対1極対数比モードと(n+1)対1極対数比モードとを切り換えることにより、それぞれのモードの特性に適応した動作を行わせる。すなわち、起動時や同期運転からの切り換え時には、制御性が良く、かつ起動トルクの大きな(n+1)対1極対数比モードを用い、磁気カップリング効果を有効に利用できる状態では1対1極対数比モードにすることができる。
【0009】
また、請求項5においては、2つのモードの切り換えを円滑に行うことができ、請求項6においては、伝達トルクに応じて励磁電流を変えることにより、効率を向上させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、本発明を適用する回転電機の例として、本出願人が以前に出願した特開平11−275826号公報記載の回転電機の構造、およびその駆動回路について説明する。
【0011】
図14は、上記公報記載の回転電機の構造を示す図であり、(a)は回転電機全体の概略断面図、(b)はロータとステータ部分の断面図〔(a)のA−A’断面図、ただし軸や外枠部分は除き、ロータとステータのみを示す〕である。なお、図14は外側ロータの磁極数が4、内側ロータの磁極数が2で、その比である磁極数比が2:1の場合を示している。なお、ロータに設けた磁極の対(NとSで1対)の数である極対数で示せば、外側ロータは極対数が2、内側ロータは極対数が1であり、両者の比である極対数比はやはり2:1となる。
【0012】
図14において、中空円筒状のステータ2の外側と内側に所定のギャップをおいて中空円筒状の外側ロータ3と内側ロータ4が配置され、3層構造になっている。また、内側ロータ軸9と外側ロータ軸10とは同一の軸上に並ぶように設けられ、内側ロータ4と外側ロータ3は同軸上でそれぞれ独立に回転出来るようになっている。なお、軸受等は図示を省略している。
【0013】
内側ロータ4は半周をS極、もう半周をN極とした一対の永久磁石で形成され、これに対して、外側ロータ3は内側ロータ4の一極当たり2倍の極数を持つように永久磁石が配置される。つまり、外側ロータ3のS極、N極は各2個であり、90度毎にS極とN極が入れ替わるように構成されている。
このように各ロータ3、4の磁極を配置すると、内側ロータ4の磁石は外側ロータ3の磁石により回転力を与えられることがなく、この逆に外側ロータ3の磁石が内側ロータ4の磁石により回転力を与えられることもない。
【0014】
たとえば、内側ロータ4の磁石が外側ロータ3に及ぼす影響を考えてみる。簡単のため内側ロータ4は固定して考える。まず、内側ロータ4のS極とこれに対峙する外側ロータ3の上側磁石SNとの関係において、図示の状態で仮に内側ロータ4のS極が出す磁力を受けて、外側ロータの上側磁石SNが時計方向に回転しようとしたとすると、内側ロータ4のN極とこれに対峙する外側ロータ3の下側磁石SNとの関係においては、内側ロータ4のN極により外側ロータ3の下側磁石SNが反時計方向に回転しようとする。つまり、内側ロータ4のS極が外側ロータ3の上側磁石に及ぼす磁力と内側ロータ4のN極が外側ロータ3の下側磁石に及ぼす磁力とがちょうど相殺することになり、外側ロータ3は内側ロータ4と関係なく、ステータ2との関係だけで制御可能となるわけである。このことは、後述するようにステータコイルに発生する回転磁場とロータとの間でも同じである。
【0015】
ステータ2のコイルは、外側ロータ3の1磁極当たり3個のコイル6で構成され、合計12個(=3×4)のコイル6が同一の円周上に等分に配置されている。丸で囲んだ数字はそれぞれコイルの巻線を示し、例えば1と1とが1つのコイルを形成し、それぞれ電流の方向が逆なことを示している。すなわち、1は紙面方向へ電流の流れる巻線であり、1はその逆方向に電流の流れる巻線である。この場合の巻線方法は集中巻である。
【0016】
また、7はコイルが巻回されるコアで、コイル6と同数のコア7が円周上に等分に所定の間隔(ギャップ)8をおいて配列されている。なお、後述するように、12個のコイルは番号で区別しており、この場合に6番目のコイルという意味でコイル6が出てくる。上記のコイル6という表現と紛らわしいが、意味するところは異なっている。
【0017】
これら12個のコイルには次のような複合電流I1〜I12を流す。まず内側ロータ4に対する回転磁場を発生させる電流(三相交流)を流すため、[1,2]=[7,8]、[3,4]=[9,10]、[5,6]=[11,12]の3組のコイルに120度ずつ位相のずれた電流Id、If、Ieを設定する。
ここで、番号の下に付けたアンダーラインは反対方向に電流を流すことを意味させている。たとえば、1組のコイル[1,2]=[7,8]に電流Idを流すとは、コイル1からコイル7に向けてIdの半分の電流を、かつコイル2からコイル8に向けてIdのもう半分の電流を流すことに相当する。1と2、7と8が円周上でそれぞれ近い位置にあるので、この電流供給により、内側ロータ4の磁極と同数(2極)の回転磁場を生じさせることが可能となる。
【0018】
次に、外側ロータ3に対する回転磁場を発生させる電流(三相交流)を流すため、[1]=[4]=[7]=[10]、[2]=[5]=[8]=[11]、[3]=[6]=[9]=[12]の3組のコイルに120度ずつ位相がずれた電流Ia、Ic、Ibを設定する。たとえば、1組のコイル[1]=[4]=[7]=[10]に電流Iaを流すとは、コイル1からコイル4にIaの電流をかつコイル7からコイル10に向けてもIaの電流を流すことに相当する。コイル1と7、コイル4と10がそれぞれ円周上の180度ずつ離れた位置にあるため、この電流供給により、外側ロータ3の磁極と同数(4極)の回転磁場を生じさせることができる。この結果、12個のコイルには次の各複合電流I1〜I12を流せばよいことになる。
I1=(1/2)Id+Ia
I2=(1/2)Id+Ic
I3=(1/2)If+Ib
I4=(1/2)If+Ia
I5=(1/2)Ie+Ic
I6=(1/2)Ie+Ib
I7=(1/2)Id+Ia
I8=(1/2)Id+Ic
I9=(1/2)If+Ib
I10=(1/2)If+Ia
I11=(1/2)Ie+Ic
I12=(1/2)Ie+Ib
ただし、電流記号の下につけたアンダーラインは逆向きの電流であることを表している。
【0019】
さらに図15を参照して複合電流の設定を説明すると、図15は、図14との比較のため、ステータ2の内周側と外周側に各ロータに対して別々の回転磁場を発生させる専用のコイルを配置したものである。つまり、内周側コイルd、f、eの配列が内側ロータに対する回転磁場を、また外周側コイルa、c、bの配列が外側ロータに対する回転磁場を発生する。この場合に、2つの専用コイルを共通化して、図14に示した共通のコイルに再構成するには、内周側コイルのうち、コイルdに流す電流の半分ずつをコイルdの近くにあるコイルaとcに負担させ、同様にして、コイルfに流す電流の半分ずつをコイルfの近くにあるコイルbとaに、またコイルeに流す電流の半分ずつをコイルeの近くにあるコイルcとbに負担させればよいわけである。上記複合電流I1〜I12の式はこのような考え方を数式に表したものある。なお、電流設定の方法はこれに限られるものでなく、前記特開平11−275826号公報に記載のように、他の電流設定方法でもかまわない。
【0020】
このように電流設定を行うと、共通のコイルでありながら、内側ロータ4に対する回転磁場と外側ロータ3に対する回転磁場との2つの磁場が同時に発生するが、内側ロータ4の磁石は外側ロータ3に対する回転磁場により回転力を与えられることがなく、また外側ロータ3の磁石が内側ロータ4に対する回転磁場により回転力を与えられることもない。この点は前記特開平11−275826号公報に記載のように、理論解析で証明されている。
【0021】
上記Id、If、Ieの電流設定は内側ロータ4の回転に同期して、また上記Ia、Ic、Ibの電流設定は外側ロータ3の回転に同期してそれぞれ行う。トルクの方向に対して位相の進み遅れを設定するが、これは同期モータに対する場合と同じである。
【0022】
図16は上記回転電機を制御するための回路のブロック図である。上記複合電流I1〜I12をステータコイルに供給するため、バッテリなどの電源11からの直流電流を交流電流に変換するインバータ12を備える。瞬時電流の全ての和は0になるためこのインバータ12は、図17に詳細を示したように、通常の3相ブリッジ型インバータを12相にしたものと同じで、24(=12×2)個のトランジスタTr1〜Tr24とこのトランジスタと同数のダイオードから構成される。インバータ12の各ゲート(トランジスタのベース)に与えるON、OFF信号はPWM信号である。
【0023】
各ロータ3、4を同期回転させるため、各ロータ3、4の位相を検出する回転角センサ13、14が設けられ、これらセンサ13、14からの信号が入力される制御回路15では、外側ロータ3、内側ロータ4に対する必要トルク(正負あり)のデータ(必要トルク指令)に基づいてPWM信号を発生させる。
【0024】
このように、前記特開平11−275826号公報に記載の回転電機においては、2つのロータ3、4と1つのステータ2を三層構造かつ同一の軸上に構成すると共に、ステータ2に共通のコイル6を形成し、この共通のコイル6にロータの数と同数の回転磁場が発生するように複合電流を流すようにしたことから、ロータの一方をモータとして、残りをジェネレータとして運転する場合に、モータ駆動電力と発電電力の差の分の電流を共通のコイルに流すだけでよいので、効率を大幅に向上させることができる。
【0025】
また、2つのロータに対してインバータが1つでよくなり、さらにロータの一方をモータとして、残りをジェネレータとして運転する場合には、上記のように、モータ駆動電力と発電電力の差の分の電流を共通のコイルに流すだけでよくなることから、インバータの電力スイッチングトランジスタのキャパシタンスを減らすことができ、これによってスイッチング効率が向上し、より全体効率が向上する。
【0026】
これまでの説明は、極対数比が2:1の場合について主に説明したが、極対数比が1:1の場合、すなわち、外側ロータと内側ロータの極対数が同数の場合には、特殊な動作特性が生じる。以下説明する。
前記特開平11−275826号公報の(8)式および(9)式は下記のようになる。
f1=-μIm1{Im2・sin((ω2-ω1)t-α)-(3/2)n・Ic・sin(β)} …(8)
f2= μIm2{Im1・sin((ω1-ω2)t-α)-(3/2)n・Ic・sin((ω1-ω2)t-α-β)
} …(9)
ただし、f1:外側ロータの駆動力
f2:内側ロータの駆動力
Im1:外側ロータの磁石の等価直流電流
Im2:内側ロータの磁石の等価直流電流
Ic:ステータコイルの電流
ω1:外側ロータの回転角速度
ω2:内側ロータの回転角速度
α:2つのロータの磁極の位相角
β:電流の位相差
μ:透磁率
n:コイル定数
上記(8)式、(9)式において、まず、ステータコイルに回転磁界を発生する電流Icを流した場合に、両ロータの駆動力f1とf2を考察する。
【0027】
ステータコイルの電流Ic・sinβによる駆動力f1、f2は外側ロータと内側ロータとの位相角αによって変化するので、以下、α=0の場合とα=πの場合とに分けて説明する。なお、α=0とは図2(a)に示すように、二つのロータの磁極が同極(N−NとS−S)で対面している状態であり、α=πとは図2(b)に示すように、二つのロータの磁極が異極(N−S)で対面している状態である。
【0028】
式を簡単にするために、ω1=ω2とすれば、(8)式、(9)式から、
f1=-μIm1{Im2・sin(-α)-(3/2)n・Ic・sin(β)} …(数1)式
f2= μIm2{Im1・sin(-α)-(3/2)n・Ic・sin(-α-β)} …(数2)式
α=0の場合
(数1)式、(数2)式においてα=0とすれば、下記(数3)式、(数4)式のようになる。
f1=-μIm1{-(3/2)n・Ic・sin(β)} =μIm1・(3/2)n・Ic・sin(β)…(数3)式
f2= μIm2{-(3/2)n・Ic・sin(-β)}=μIm2・(3/2)n・Ic・sin(β)…(数4)式
よってμIm1=μIm2とすれば、f1=f2となる。
上記のように、α=0の場合にはf1=f2となるので、二つのロータは同じ方向に駆動力を受け、同じ方向に回転する。
【0029】
α=πの場合
(数1)式、(数2)式においてα=πとすれば、下記(数5)式、(数6)式のようになる。
f1=μIm1・(3/2)n・Ic・sinβ …(数5)式
f2=μIm2・(3/2)n・Ic・sin(-π-β)=-μIm2・(3/2)n・Ic・sinβ …(数6)式
よってμIm1=μIm2とすれば、f1=−f2となる。
上記のようにα=πの場合には、f1=−f2となるので、二つのロータは逆方向に駆動力を受け、相互に逆方向に回転する。これが逆転モードである。
【0030】
上記のようにステータコイルに電流を流して駆動する場合には、位相角αの値に応じて、正転モードと逆転モードとがある。
【0031】
次に、ステータコイルに電流を流さない場合、すなわちIc=0の場合について説明する。Ic=0の場合は前記(8)式、(9)式から下記(数7)式、(数8)式のようになる。
f1=-μIm1{Im2・sin((ω2-ω1)t-α)} …(数7)式
f2= μIm2{Im1・sin((ω1-ω2)t-α)} …(数8)式
(数7)式、(数8)式において、ω1=ω2とすれば、
f1=-μIm1{Im2・sin(-α)} …(数9)式
f2= μIm2{Im1・sin(-α)} …(数10)式
となり、常にf1=−f2となる。これは一見、逆方向に回転するように見えるが、実際には二つのロータ間に位相角αを与えた場合にα=0の位置に戻ろうする力を示す。つまり一方のロータに外部から機械的な力を加えると、αが0からずれて、これを修正する力f1が発生し、同様に他方のロータにも修正方向である反対側の力f2が働くということである。したがって一方のロータを外部から機械的に回転させると他方のロータもα=0を保つように同じ方向に回転することになる。これが磁気カップリングであり、ステータコイルに電流を流さない状態で、例えば外側ロータを内燃機関で駆動すれば、同方向に内側ロータを回転させることが出来る。
【0032】
上記のように1対1極対数比の場合には、位相角α=0でステータコイルに電流を流さない状態で一方のロータを外部から機械的に駆動すれば、磁気カップリングモードとなり、ステータのコイルに電流を流さないで、他方のロータを直結状態(同速度)で駆動することが出来る。また、2つのロータの磁石の位相角α=πの場合は逆転モードとなり、外側ロータと内側ロータとが逆方向に回転することになる。
【0033】
上記のような複合型の回転電機をハイブリッド車両に搭載し、一方のロータを内燃機関で駆動して発電し、その電力をステータコイルに流して他方のロータを回転させ、それで車両を駆動するシステムにおいて、内燃機関の始動時に、上記の内燃機関に結合されたロータをスタータモータとして始動を行うように構成した場合に、車両も内燃機関も停止している状態で、車両に結合されたロータを回転して車両を駆動すると、内燃機関に結合されたロータも回転してしまうおそれがある。逆に、内燃機関の始動時に内燃機関に結合された方のロータが回転すると、他方の車輪に結合されたロータも回転し、車両が動いてしまうおそれがある等の望ましくない特性がある。本発明は電流を流さないで駆動出来るという磁気カップリングの有利な特性を活かし、かつ、望ましくない特性は押さえるように改良したものである。
【0034】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に用いる1対1極対数比の回転電機のロータとステータ部分の断面図であり、(a)は本発明の構成、(b)は基本構成を示す。なお、回転電機全体の概略断面図は前記図14(a)と同様である。
【0035】
図1(b)に示すように、1対1極対数比の回転電機の最も基本的な構造は、外側ロータ21の磁石がNSの1極対で、内側ロータ23も磁石がNSの1極対である。そして両ロータの中間にステータ22が設けられている。ステータ22に太字で示した1〜6の番号はステータコイルを示し、1〜6のように下線を付したものは電流が逆に流れるコイルを示す。また、各ロータの磁石は、ロータの表面に張られているSPM型モータを示したが、リラクタンストルクの出し得るIPM型でも同様である。また、コイルは分布巻きで表示してある。
また、図1では1対1極対数比の基本的な構成である外側ロータと内側ロータが共に1極対(NS1極のみ)の場合を例示しているが、2極対と2極対、3極対と3極対のように、極対数比が1対1であればよい。
【0036】
本発明においては、図1(a)に示すように、外側ロータ21にA、B、C、D(図面では丸で囲んだ符号で表示)の4個の励磁コイルを設けている。コイルは集中巻きでも分布巻きでも作用は同じである。この各励磁コイルに励磁電流を流して、本来の磁石による磁極とNSが交互になるように、つまり永久磁石による磁極と励磁コイルによる磁極とが異極で隣合うように、コイルAをS極、コイルBをN極、コイルCをS極、コイルDをN極に励磁すれば、コイルによる極対数は2になる。したがって外側ロータ21は磁石の1極対と合わせて3極対になる。すなわち、この回転電機は3対1極対数比になる。一般的には励磁コイルの数を2nとすれば、極対数比は(n+1)対1になる。なお、図1の例では外側ロータ21に励磁コイルを設けた例を示したが、内側ロータ23に設けてもよい。また、上記と逆に、永久磁石による磁極と励磁コイルによる磁極とが同極で隣合うように、コイルAをN極、コイルBをS極、コイルCをN極、コイルDをS極に励磁すれば、外側ロータ21の上半分が全て一繋がりのN極、下半分が全て一繋がりのS極になるので、この場合には極対数比は1対1のままである。
【0037】
上記のように、図1(a)の構造によれば、ロータに設けた励磁コイルを励磁しない場合や磁極が繋がるように励磁した場合は図1(b)に示した1対1極対数比の回転電機として動作し、磁極が分割して磁極数が増加するように励磁コイルを励磁すれば3対1極対数比の回転電機として動作する。この3対1極対数比の回転電機の場合は、前記図14等で詳述した2対1極対数比の場合と同様に、外側ロータと内側ロータとを独立して制御することが出来、かつ、磁気カップリングモードや逆転モードはない。
【0038】
図2は、1対1極対数比の回転電機の場合に、外側ロータ21と内側ロータ23との回転の位相角αを示す図であり、図2(a)はα=0、すなわち二つのロータの磁極が同極(N−NとS−S)で対面している状態であり、図2(b)はα=π、すなわち、二つのロータの磁極が異極(N−S)で対面している状態である。
【0039】
以下、励磁コイルに流す電流と磁極の関係について詳細に説明する。
【0040】
図3は、ステータコイルと励磁コイルの位置について符号0〜11を付した図であり、A、B、C、Dは各励磁コイル(図1では丸で囲んだ符号に相当)、NとSは永久磁石の磁極である。なお、図3においては、外側ロータ21の磁極NとSの範囲が2〜4および8〜10の範囲に正確に一致しているが、これは磁気回路トルク設計のチューニングの範囲であって、これより広い範囲でも狭い範囲でも可能である。
【0041】
図4は、永久磁石および励磁コイルによる磁界強度を示す図である。図4において、位置0〜11は図3に示した位置に相当し、(A)、(B)、(C)、(D)および(N)、(S)は対応する励磁コイルまたは永久磁石の位置を示す。また、実線で示したM1とM2は永久磁石による磁界強度で、M1は内側ロータ23の磁極、M2は外側ロータ21の磁極によるものを示す。また、破線で示したM3は励磁コイルによる磁界強度を示す。
【0042】
図4に示した例は、永久磁石による磁極と励磁コイルによる磁極とが異極で隣合うように、コイルAをS極、コイルBをN極、コイルCをS極、コイルDをN極に励磁し、外側ロータ21を3極対にした場合を示す。つまり外側ロータ21に関しては、位置0〜2の範囲では励磁コイル(A)による磁界M3があり、位置2〜4の範囲では永久磁石Nによる磁界M2があり、両者の強さは同じ(方向は逆)である。このように永久磁石の磁界強度と磁束コイルによる磁界強度とが同じで、完全な3極対として動作する場合を完全3極対と名付ける。したがって図4のように励磁コイルを励磁すれば、この回転電機は完全3対1磁極対数比として動作する。
【0043】
図5は、励磁コイルに流す電流を変化させた場合における磁界強度を示す図である。図5において、破線で示したM3、M4、M5、M6は励磁電流の大きさと方向による変化を示し、M3>M4>M5である。また、M6は励磁電流の方向を反対にして永久磁石による磁極と励磁コイルによる磁極とが同極で隣合うように、コイルAをN極、コイルBをS極、コイルCをN極、コイルDをS極に励磁したものである。この場合には外側ロータ21の上半分が全て一繋がりのN極、下半分が全て一繋がりのS極になるので、極対数は1であり、回転電機は1対1磁極対数比で動作する。なお、一点鎖線で示したM7はM6とM2の包絡線であり、これが内側ロータ23の1極対の磁界強度にほぼ相当(図4のM1、方向は逆)する。また、励磁コイルに全く電流を流さず、永久磁石のみ(図4のM1とM2のみ)による磁気カップリング効果だけで1対1磁極対数比として動作することもできる。
【0044】
上記のように1対1磁極対数比モードの場合には、励磁コイルの励磁電流を0にする場合と、励磁電流を流しながら1対1磁極対数比にする場合とがある。前者の場合には消費電力を大幅に減少させることができるが、目標伝達トルクが磁気カップリングの力よりも大きくなると、同期回転ができなくなる。そのような場合には、図5のM6に示したような励磁電流を流して伝達トルクを大きくする。つまり、励磁電流の値を目標伝達トルクの値に応じて制御すれば良い。また、3対1磁極対数比モードで動作する場合も、上記と同様に、励磁電流の値を目標伝達トルクの値に応じて制御すれば良い。つまり、図5のM3、M4、M5のように伝達トルクが大きくなるにつれて電流値を大きくすれば良い。
【0045】
図6は、目標伝達トルクTと励磁電流の値を示す図であり、(a)は1対1磁極対数比モード、(b)は3対1磁極対数比モードの場合を示す。なお、図6では1対1磁極対数比モード時の電流の方向(図5のM6)を正方向で示しているので、(b)の3対1磁極対数比モード時の電流の方向(図5のM3、M4、M5)が負方向になっている。
【0046】
上記のように、各励磁コイルに流す励磁電流を制御することにより、1対1磁極対数比モードと3対1磁極対数比モードとを任意に切り換えて動作させることができる。
以下、2つのモードを2個のロータの回転速度に応じて切り換える方法について説明する。
図7は、2つのモードと2個のロータの回転速度との関係を示す図である。まず、図7(a)は、内側ロータと外側ロータの回転速度が同じ場合、すなわち、両者が同期して回転する場合にのみ1対1磁極対数比モードとし、その他の場合は全て3対1磁極対数比モードとするものである。これは内側ロータと外側ロータが同期して回転する場合には、前記のごとき磁気カップリング効果があるので、それを有効に活用して消費電力を減少させ、また、2つのロータを異なった回転速度で独立に動作させる場合には、前記のように制御性の良い3対1磁極対数比で動作させるものである。
【0047】
次に、図7(b)は、2つのロータの何れか一方の回転速度が0を含む所定値a以下の範囲、および前記2つのロータの回転速度の差が同速度を含まない同速度から所定範囲内の場合には3対1極対数比モードとし、それ以外の範囲(図中のハッチングを付した領域)、および前記2つのロータの回転速度が同速度の場合には1対1極対数比モードで動作させるものである。すなわち、回転速度が所定値a以下の範囲とは、起動時(回転速度=0)および低回転時であり、このような場合には、逆転モードや磁気カップリング効果がなく、制御性の良い3対1極対数比で動作させる方が良い。また、1対1磁極対数比と3対1磁極対数比とでは、理論的には起動トルクは同じであるが、前記図4の特性からも判るように、本発明のように励磁コイルで磁極を発生する構成の回転電機では、完全3対1磁極対数比の方が、1対1磁極対数比よりも磁界強度の合計面積が大きくなるので、実際的には起動トルクが大きくなり、その点でも有利である。また、2つのロータが同速度で同期運転している領域(線上)の両側では、同期運転から独立制御への移行領域なので、制御性の良い3対1磁極対数比モードで動作させる。そして起動範囲でもなく、上記の移行領域でもない範囲(図中のハッチングを付した領域)では1対1磁極対数比で動作させる。ただし、この場合には磁気カップリングで動作させるものではないので、1対1磁極対数比にしても特別の効果はなく、勿論、3対1磁極対数比モードで動作させてもよい。なお、前記特開平11−275826号公報(16)式、(17)式に示されるように、ステータコイル電流に変調を加えれば、それぞれのロータの回転からトルク変動を解消することができ、ω1≠ω2の状態に於いても1対1次極対数比のモードで運転することが出来る。
【0048】
次に、1対1磁極対数比モードと3対1磁極対数比モードとの切り換え制御について説明する。
図8は、切り換え時の励磁電流値の変化を示す図である。図8において、切換信号は“0”が1対1磁極対数比モード、“1”が3対1磁極対数比モードである。励磁電流値がK11(1対1磁極対数比モード)で回転中に、切換信号が“0”から“1”に変化した場合には、その時点から所定時間t1をかけて順次励磁電流値をK31(3対1磁極対数比モード)まで変化させる。例えば、図5のM6のピーク値をK11とすれば、その値を順次M6→0→M5→M4→M3(K31に相当)と変化させる。逆に、3対1磁極対数比モードから1対1磁極対数比モードに切り換える場合も、同様に、励磁電流値を順次変化させれば良い。このようなランプ制御を行えば、1対1磁極対数比モードと3対1磁極対数比モードとの切り換えを円滑に行うことができる。
【0049】
図9は上記の制御手順を示すフローチャートである。1対1磁極対数比モードと3対1磁極対数比モードを切り換えて動作する場合の励磁コイルの電流If(図9の最終ステップの式)は下記(数11)式で示される。
【0050】
If=K・sin〔3(n/12)×2π〕 …(数11)
ただし、n=0,1,4,5,6,7,10,11(0番コイルは位置0と1との間に存在するコイルとする)。
【0051】
次に、図10は、制御回路の構成を示すブロック図である。
【0052】
図10において、回転速度検出部40は前記図16の回転角センサ14の信号に基づいて内側ロータ23の回転速度N1を算出する。同様に、回転速度検出部41は前記図16の回転角センサ13の信号に基づいて外側ロータ21の回転速度N2を算出する。目標トルク演算部42は、外部から与えられるトルク指令信号(前記図16の外トルク指令、内トルク指令)に基づいて目標トルクを演算する。励磁パターン制御部43は上記の各信号に基づき、かつ、前記図7〜図9で説明したような制御内容に基づいて、3対1磁極対数比モードと1対1磁極対数比モードとの何れで動作させるか、或いは切り換え制御中かの判断を行う。また、励磁電流・ステータ電流制御部44は、上記の制御モードの判断および目標トルクなどに応じて励磁電流とステータコイルに流す電流値を演算し、それに応じてインバータを制御し、励磁コイルとステータコイルに電流を流す。なお、励磁電流・ステータ電流制御部44は、前記図16の制御回路15に励磁電流の制御部を追加したものに相当する。また、本発明では、前記図16のインバータ12の他に、励磁コイルに流す電流を制御するインバータも必要である。
【0053】
次に、図11は、本発明の装置をいわゆるハイブリッドシステムに適用した場合を示すブロック図である。なお、回転電機の部分は前記図14(a)の断面図の上半分のみを示している。図11において、外側ロータ21の各励磁コイル(図示省略)はスリップリング24を介して励磁電流が与えられるように構成されている。また、外側ロータ21の軸25は内燃機関(図示省略)の出力軸に連結されている。また、内側ロータ23の軸26は車両の駆動軸27に連結されている。
【0054】
図12は、前記の外側ロータ21に設けた励磁コイルA、B、C、Dの電流を制御する回路図であり、(a)は磁極の極性を切換えられる回路、(b)は(a)において磁極の向きとモードとの関係を示す図表、(c)は単純に励磁電流をオン・オフする回路である。
図12(a)の回路は、トランジスタT1とT2およびT3とT4がそれぞれ直列に結線されたスイッチング回路を用い、4個の励磁コイルA、C、B、Dを直列にした回路の両端を上記スイッチング回路の中点(T1とT2の接続点およびT3とT4の接続点)に接続したものであり、励磁コイルA、Cと、励磁コイルB、Dとは、同じ向きの電流が流れた場合に相互に逆方向の磁極となるように接続している。なお、31と32はスリップリングである。
【0055】
この回路において、トランジスタT1とT4をオン、トランジスタT2とT3をオフにすれば、励磁コイルA、C側(図の左側)から電流が流れ、このとき各励磁コイルの極性はA:S、B:N、C:S、D:Nとなり、図12(b)に示すように3対1極対数比モードになる。逆に、トランジスタT1とT4をオフ、トランジスタT2とT3をオンにすれば、励磁コイルB、D側(図の右側)から電流が流れ、このとき各励磁コイルの極性はA:N、B:S、C:N、D:Sとなり、図12(b)に示すように1対1極対数比モードになる。このように励磁電流を流しながら1対1極対数比にする構成では、励磁コイルの電流の大きさによって磁気カップリングの強さを変えることが出来る。また、上記の回路では、4個の励磁コイルを用いながら2個のスリップリングだけで良いので、構成が簡略になり、安価に実現出来る。なお、全ての励磁コイルを直列または並列に接続すれば励磁コイルの数が幾つであってもスリップリングは2個で済むので、構成が簡略になる。また、トランジスタT1とT3をオフにすれば、全ての励磁コイルの電流が0になり、いわゆるカップリング効果のみで駆動することもできる。
【0056】
また、図12(c)の回路においては、トランジスタT5がオンになれば、励磁コイルA、C、B、Dに電流が流れて、励磁コイルの極性はA:S、B:N、C:S、D:Nとなり、3対1極対数比モードになる。また、トランジスタT5がオフになれば、励磁電流がなくなり、磁石だけの基本的な1対1極対数比になる。この回路は磁気カップリングの強さを変えることは出来ないが、構成がさらに簡単になり、かつ、1対1極対数比の場合に励磁コイルに電流を流さないので効率が向上する。
【0057】
図11に示したハイブリッドシステムの構成では、外側ロータ21に設けた励磁コイルの電流をオンオフするかまたは電流の方向を切り換えことにより、1対1極対数比と3対1極対数比とに切り換えて動作させることが出来る。そして3対1極対数比の場合には外側ロータ21と内側ロータ23とを独立して制御することが出来、かつ、磁気カップリングモードや逆転モードはない。また、1対1極対数比の場合には磁気カップリングモードがあるので、外側ロータ21を内燃機関で駆動して内側ロータ23を同速で回転させる場合にはステータコイルに電流を流さなくてもよい。したがって、車両の動作状態に応じて1対1極対数比と3対1極対数比とに切り換えて動作させれば、両者の良い点のみを用いることが出来る。
【0058】
例えば、内燃機関の始動時においては、励磁コイルを3対1極対数モードになるように励磁し、3対1極対数比の回転電機にする。これにより、磁気カップリングモードや逆転モードがなくなるので、車両や内燃機関の停止時に内側ロータ23を回転させて車両を駆動しても内燃機関が駆動されるおそれがなく、また、外側ロータ21をスタータモータとして用いて内燃機関を始動しても、車輪に連結されている内側ロータ23が回転するおそれがない。
【0059】
また、車両の走行中は、外側ロータ21を内燃機関で駆動してジェネレータとして動作させ、それで発電した電力で内側ロータ23駆動することにより、内側ロータ23の回転速度やトルクを任意に制御することが出来る。例えばステータコイルに流す電流を制御することにより、低速大トルクにも高速低トルクにもできる。損失を0と仮定すれば、出力=回転数×トルクが一定になるように制御することも出来る。
【0060】
また、走行中に磁気カップリングモードにしたい場合には、ω1=ω2となる時に励磁コイルの電流をオフにするか若しくは前記図12(a)で説明したように電流の方向を切り換えれば、1対1極対数比の回転電機になり、磁気カップリングモードに入る。この状態では外側ロータ21を内燃機関で駆動すればステータコイルに電流を流さなくても内側ロータ23を同速度で駆動することが出来る。また、励磁コイルの電流を流しながら1対1極対数比にした場合には、励磁コイルの電流の大きさによって磁気カップリングの強さを変えることが出来る。したがって伝達トルクの大きさに応じて上記の電流を制御すれば、伝達トルクが変化しても磁気カップリングモード(同速回転)を継続することが出来る。また、3対1極対数比から1対1極対数比に極対数比を切り換える際には前記のように励磁コイルに印加する電圧を反転すればよいが、その際に伝達トルクに応じて励磁コイルに印加する反転電圧を決定するように構成してもよい。
【0061】
また、少なくとも一つのロータを停止状態から回転させる際には、3対1極対数比となるように励磁コイルを励磁すれば、1対1極対数比の構成における逆転モードがないので、逆回転になるおそれがなく、かつ、他方のロータが意図しないのに動きだすおそれもない。また、一方のロータが停止状態であり、他方のロータが回転状態の場合にも、3対1極対数比となるように励磁コイルを励磁すれば、1対1極対数比の構成における磁気カップリング効果がないので、停止中のロータが意図しない場合に回転するおそれがない。
【0062】
上記の内容をまとめると図13に示すようになる。すなわち、始動時と独立回転時は3対1極対数比にし、カップリング時および独立回転時には1対1極対数比にする。独立回転は3対1極対数比と1対1極対数比の何れでも可能であるから適宜選択する。詳細内容は前記図7ですでに説明しているとおりである。
【0063】
なお、これまでの説明は、内側ロータとステータと外側ロータとが三層構造になっている回転電機を用いる場合について説明したが、二つのロータを直列方向に設けて2軸の回転電機とすることも出来る。例えば本出願人の先願(特願平11−273303号:未公開)の図11のような構成でもよい。つまり、磁気回路とステータコイルを共有する2個のロータを備え、ステータコイルに流す複合電流を前記ロータの数と同数の回転磁場が発生するように制御する回転電機であれば、本発明を適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に用いる1対1極対数比の回転電機のロータとステータ部分の断面図であり、(a)は本発明の構成、(b)は基本構成を示す図。
【図2】1対1極対数比の回転電機の場合に、外側ロータ21と内側ロータ23との回転の位相角αを示す図。
【図3】ステータコイルと励磁コイルの位置について符号0〜11を付した図。
【図4】永久磁石および励磁コイルによる磁界強度を示す図。
【図5】励磁コイルに流す電流を変化させた場合における磁界強度を示す図。
【図6】目標伝達トルクTと励磁電流の値を示す図であり、(a)は1対1磁極対数比モード、(b)は3対1磁極対数比モードの場合。
【図7】2つのモードと2個のロータの回転速度との関係を示す図。
【図8】切り換え時の励磁電流値の変化を示す図。
【図9】切り換え時の制御手順を示すフローチャート。
【図10】制御回路の構成を示すブロック図。
【図11】本発明の装置をいわゆるハイブリッドシステムに適用した場合を示すブロック図。
【図12】外側ロータ21に設けた励磁コイルA、B、C、Dの電流を制御する回路図であり、(a)は磁極の極性を切換えられる回路、(b)は(a)において磁極の向きとモードとの関係を示す図表、(c)は単純に励磁電流をオン・オフする回路。
【図13】3対1磁極対数比と1対1磁極対数比とにおける動作可能なモードを示す図表。
【図14】本発明を適用する回転電機の一例の構造を示す図であり、(a)は回転電機全体の概略断面図、(b)はロータとステータ部分の断面図。
【図15】ステータ2の内周側と外周側に専用コイルを配置した回転電機本体の概略断面図。
【図16】回転電機を制御するための回路のブロック図。
【図17】インバータの一例の回路図。
【符号の説明】
21…外側ロータ 22…ステータ
23…内側ロータ 24…スリップリング
25…外側ロータ21の軸 26…内側ロータ23の軸
27…車両の駆動軸 29…制動装置
31、32…スリップリング 40、41…回転速度検出部
42…目標トルク演算部 43…励磁パターン制御部
44…励磁電流・ステータ電流制御部
T1、T2、T3、T4、T5…トランジスタ
A、B、C、D(図面では丸で囲んだ符号で表示)…外側ロータ21に設けた励磁コイル
【発明の属する技術分野】
この発明は、2個のロータを備えた複合型の回転電機およびそれを用いた駆動システムに関し、特に一方のロータをジェネレータとして動作させ、他方のロータをモータとして動作させる際に好適な構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
複合型の回転電機としては、特開平11−275826号公報に記載された装置(本願出願人の先願発明)ものがある。この回転電機は、中空円筒状のステータの内側と外側に所定のギャップをおいて中空円筒状の外側ロータと内側ロータとが配置された構造になっている。そして外側ロータ軸と内側ロータ軸は同一軸上に並ぶように配置され、外側ロータと内側ロータは同軸上でそれぞれ独立に回転出来るようになっている(後記図7で詳細後述)。そして上記ステータに設けたコイルに流す複合電流を前記ロータの数と同数の回転磁場が発生するように制御することにより、2個のロータを独立に制御することが出来る。前記公報においては2個のロータの極対数比が1対1極対数比、3対1極対数比、2対1極対数比の場合における回転電機として成立できる旨が記載されている。なお、極対数比とは一方のロータと他方のロータの磁極対(NとSで1対)の数の比を示す。例えば、1対1極対数比とは一方のロータの磁極対(NS)の数と他方のロータの磁極対の数とが同じ(NS1組とNS1組やNS2組とNS2組)の場合、3対1極対数比とは一方のロータがNS3組または6組で他方ロータがNS1組または2組(極対数比は何れも3:1)のような場合を示す。
上記のごとき回転電機においては、一方のロータをジェネレータとして、他方のロータをモータとして運転する場合、いわゆるハイブリッドシステムとして動作させる場合に、発電電力とモータ駆動電力との差の分の電流を共通のコイルに流すだけでよいので、効率を大幅に向上させることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のごとき回転電機において、1対1極対数比の構成では、磁気カップリング効果が有るので、両方のロータを同速度(回転角速度ω1=ω2)で回転させる場合には、ステータのコイルに電流を流さないで直結状態で駆動することも出来る(磁気カップリングモード:詳細後述)という利点がある。また、ロータが逆転(二つのロータが相互に逆方向に回る)する逆転モード(詳細後述)もある。しかし、磁気カップリングのために、一方のロータを回転させると他方のロータも回転するので意図しない場合に内燃機関や車両が動き出すおそれがあり、また、逆転モードのために内燃機関や車両の駆動軸が逆転するおそれもあるので、いわゆるハイブリット用モータとして構成しにくいという問題があった。
【0004】
本発明は上記のごとき問題を解決するためになされたものであり、磁気カップリングで直結状態で駆動できるモードと、各ロータを独立に回転制御できるモードとを切り換えて制御する機能を持った回転電機の制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明においては特許請求の範囲に記載するように構成している。すなわち、請求項1に記載の発明においては、2個のロータは磁極を形成する永久磁石を1対1極対数比とし、かつ、何れか一方のロータには2n個(n=1,2,3,…)の励磁コイルを備えた回転電機を用い、制御装置は、永久磁石による磁極と励磁コイルによる磁極とが異極で隣合うように励磁することによって前記回転電機を(n+1)対1極対数比で動作させるモードと、永久磁石による磁極と励磁コイルによる磁極とが同極で隣合うように励磁するか、若しくは励磁コイルに電流を流さないことによって回転電機を1対1極対数比で動作させるモードとを切り換えて制御するように構成している。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、前記2つのモードを2個のロータの回転速度の相互関係に応じて切り換えるものであり、請求項3および請求項4においては、それらの詳細な構成を示している。また、請求項5においては、1対1極対数比モードと(n+1)対1極対数比モードとの切り換え時の制御を記載し、請求項6においては、1対1極対数比モードの場合には、励磁コイルの励磁電流を目標伝達トルクに応じて制御するように構成している。
【0007】
【発明の効果】
請求項1においては、一方のロータに設けた励磁コイルの電流をオンオフするかまたは電流の方向を切り換えることにより、1対1極対数比モードと(n+1)対1極対数比モードとに切り換えて動作させることが出来る。そして(n+1)対1極対数比モードの場合には二つのロータを独立して制御することが出来、かつ、磁気カップリングモードや逆転モードはない。また、1対1極対数比モードの場合には磁気カップリングモードがあるので、例えば一方のロータを駆動装置で駆動して他方のロータを同速で回転させる場合にはステータコイルに電流を流さなくてもよい。したがって、例えば一方のロータ軸を内燃機関に接続し、他方のロータ軸を車軸に接続し、車両の動作状態に応じて両者を適宜切り換え動作させれば、良好な特性のみを利用出来る、という効果が得られる。
【0008】
また、請求項2〜4においては、2つのロータの回転速度に応じて1対1極対数比モードと(n+1)対1極対数比モードとを切り換えることにより、それぞれのモードの特性に適応した動作を行わせる。すなわち、起動時や同期運転からの切り換え時には、制御性が良く、かつ起動トルクの大きな(n+1)対1極対数比モードを用い、磁気カップリング効果を有効に利用できる状態では1対1極対数比モードにすることができる。
【0009】
また、請求項5においては、2つのモードの切り換えを円滑に行うことができ、請求項6においては、伝達トルクに応じて励磁電流を変えることにより、効率を向上させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、本発明を適用する回転電機の例として、本出願人が以前に出願した特開平11−275826号公報記載の回転電機の構造、およびその駆動回路について説明する。
【0011】
図14は、上記公報記載の回転電機の構造を示す図であり、(a)は回転電機全体の概略断面図、(b)はロータとステータ部分の断面図〔(a)のA−A’断面図、ただし軸や外枠部分は除き、ロータとステータのみを示す〕である。なお、図14は外側ロータの磁極数が4、内側ロータの磁極数が2で、その比である磁極数比が2:1の場合を示している。なお、ロータに設けた磁極の対(NとSで1対)の数である極対数で示せば、外側ロータは極対数が2、内側ロータは極対数が1であり、両者の比である極対数比はやはり2:1となる。
【0012】
図14において、中空円筒状のステータ2の外側と内側に所定のギャップをおいて中空円筒状の外側ロータ3と内側ロータ4が配置され、3層構造になっている。また、内側ロータ軸9と外側ロータ軸10とは同一の軸上に並ぶように設けられ、内側ロータ4と外側ロータ3は同軸上でそれぞれ独立に回転出来るようになっている。なお、軸受等は図示を省略している。
【0013】
内側ロータ4は半周をS極、もう半周をN極とした一対の永久磁石で形成され、これに対して、外側ロータ3は内側ロータ4の一極当たり2倍の極数を持つように永久磁石が配置される。つまり、外側ロータ3のS極、N極は各2個であり、90度毎にS極とN極が入れ替わるように構成されている。
このように各ロータ3、4の磁極を配置すると、内側ロータ4の磁石は外側ロータ3の磁石により回転力を与えられることがなく、この逆に外側ロータ3の磁石が内側ロータ4の磁石により回転力を与えられることもない。
【0014】
たとえば、内側ロータ4の磁石が外側ロータ3に及ぼす影響を考えてみる。簡単のため内側ロータ4は固定して考える。まず、内側ロータ4のS極とこれに対峙する外側ロータ3の上側磁石SNとの関係において、図示の状態で仮に内側ロータ4のS極が出す磁力を受けて、外側ロータの上側磁石SNが時計方向に回転しようとしたとすると、内側ロータ4のN極とこれに対峙する外側ロータ3の下側磁石SNとの関係においては、内側ロータ4のN極により外側ロータ3の下側磁石SNが反時計方向に回転しようとする。つまり、内側ロータ4のS極が外側ロータ3の上側磁石に及ぼす磁力と内側ロータ4のN極が外側ロータ3の下側磁石に及ぼす磁力とがちょうど相殺することになり、外側ロータ3は内側ロータ4と関係なく、ステータ2との関係だけで制御可能となるわけである。このことは、後述するようにステータコイルに発生する回転磁場とロータとの間でも同じである。
【0015】
ステータ2のコイルは、外側ロータ3の1磁極当たり3個のコイル6で構成され、合計12個(=3×4)のコイル6が同一の円周上に等分に配置されている。丸で囲んだ数字はそれぞれコイルの巻線を示し、例えば1と1とが1つのコイルを形成し、それぞれ電流の方向が逆なことを示している。すなわち、1は紙面方向へ電流の流れる巻線であり、1はその逆方向に電流の流れる巻線である。この場合の巻線方法は集中巻である。
【0016】
また、7はコイルが巻回されるコアで、コイル6と同数のコア7が円周上に等分に所定の間隔(ギャップ)8をおいて配列されている。なお、後述するように、12個のコイルは番号で区別しており、この場合に6番目のコイルという意味でコイル6が出てくる。上記のコイル6という表現と紛らわしいが、意味するところは異なっている。
【0017】
これら12個のコイルには次のような複合電流I1〜I12を流す。まず内側ロータ4に対する回転磁場を発生させる電流(三相交流)を流すため、[1,2]=[7,8]、[3,4]=[9,10]、[5,6]=[11,12]の3組のコイルに120度ずつ位相のずれた電流Id、If、Ieを設定する。
ここで、番号の下に付けたアンダーラインは反対方向に電流を流すことを意味させている。たとえば、1組のコイル[1,2]=[7,8]に電流Idを流すとは、コイル1からコイル7に向けてIdの半分の電流を、かつコイル2からコイル8に向けてIdのもう半分の電流を流すことに相当する。1と2、7と8が円周上でそれぞれ近い位置にあるので、この電流供給により、内側ロータ4の磁極と同数(2極)の回転磁場を生じさせることが可能となる。
【0018】
次に、外側ロータ3に対する回転磁場を発生させる電流(三相交流)を流すため、[1]=[4]=[7]=[10]、[2]=[5]=[8]=[11]、[3]=[6]=[9]=[12]の3組のコイルに120度ずつ位相がずれた電流Ia、Ic、Ibを設定する。たとえば、1組のコイル[1]=[4]=[7]=[10]に電流Iaを流すとは、コイル1からコイル4にIaの電流をかつコイル7からコイル10に向けてもIaの電流を流すことに相当する。コイル1と7、コイル4と10がそれぞれ円周上の180度ずつ離れた位置にあるため、この電流供給により、外側ロータ3の磁極と同数(4極)の回転磁場を生じさせることができる。この結果、12個のコイルには次の各複合電流I1〜I12を流せばよいことになる。
I1=(1/2)Id+Ia
I2=(1/2)Id+Ic
I3=(1/2)If+Ib
I4=(1/2)If+Ia
I5=(1/2)Ie+Ic
I6=(1/2)Ie+Ib
I7=(1/2)Id+Ia
I8=(1/2)Id+Ic
I9=(1/2)If+Ib
I10=(1/2)If+Ia
I11=(1/2)Ie+Ic
I12=(1/2)Ie+Ib
ただし、電流記号の下につけたアンダーラインは逆向きの電流であることを表している。
【0019】
さらに図15を参照して複合電流の設定を説明すると、図15は、図14との比較のため、ステータ2の内周側と外周側に各ロータに対して別々の回転磁場を発生させる専用のコイルを配置したものである。つまり、内周側コイルd、f、eの配列が内側ロータに対する回転磁場を、また外周側コイルa、c、bの配列が外側ロータに対する回転磁場を発生する。この場合に、2つの専用コイルを共通化して、図14に示した共通のコイルに再構成するには、内周側コイルのうち、コイルdに流す電流の半分ずつをコイルdの近くにあるコイルaとcに負担させ、同様にして、コイルfに流す電流の半分ずつをコイルfの近くにあるコイルbとaに、またコイルeに流す電流の半分ずつをコイルeの近くにあるコイルcとbに負担させればよいわけである。上記複合電流I1〜I12の式はこのような考え方を数式に表したものある。なお、電流設定の方法はこれに限られるものでなく、前記特開平11−275826号公報に記載のように、他の電流設定方法でもかまわない。
【0020】
このように電流設定を行うと、共通のコイルでありながら、内側ロータ4に対する回転磁場と外側ロータ3に対する回転磁場との2つの磁場が同時に発生するが、内側ロータ4の磁石は外側ロータ3に対する回転磁場により回転力を与えられることがなく、また外側ロータ3の磁石が内側ロータ4に対する回転磁場により回転力を与えられることもない。この点は前記特開平11−275826号公報に記載のように、理論解析で証明されている。
【0021】
上記Id、If、Ieの電流設定は内側ロータ4の回転に同期して、また上記Ia、Ic、Ibの電流設定は外側ロータ3の回転に同期してそれぞれ行う。トルクの方向に対して位相の進み遅れを設定するが、これは同期モータに対する場合と同じである。
【0022】
図16は上記回転電機を制御するための回路のブロック図である。上記複合電流I1〜I12をステータコイルに供給するため、バッテリなどの電源11からの直流電流を交流電流に変換するインバータ12を備える。瞬時電流の全ての和は0になるためこのインバータ12は、図17に詳細を示したように、通常の3相ブリッジ型インバータを12相にしたものと同じで、24(=12×2)個のトランジスタTr1〜Tr24とこのトランジスタと同数のダイオードから構成される。インバータ12の各ゲート(トランジスタのベース)に与えるON、OFF信号はPWM信号である。
【0023】
各ロータ3、4を同期回転させるため、各ロータ3、4の位相を検出する回転角センサ13、14が設けられ、これらセンサ13、14からの信号が入力される制御回路15では、外側ロータ3、内側ロータ4に対する必要トルク(正負あり)のデータ(必要トルク指令)に基づいてPWM信号を発生させる。
【0024】
このように、前記特開平11−275826号公報に記載の回転電機においては、2つのロータ3、4と1つのステータ2を三層構造かつ同一の軸上に構成すると共に、ステータ2に共通のコイル6を形成し、この共通のコイル6にロータの数と同数の回転磁場が発生するように複合電流を流すようにしたことから、ロータの一方をモータとして、残りをジェネレータとして運転する場合に、モータ駆動電力と発電電力の差の分の電流を共通のコイルに流すだけでよいので、効率を大幅に向上させることができる。
【0025】
また、2つのロータに対してインバータが1つでよくなり、さらにロータの一方をモータとして、残りをジェネレータとして運転する場合には、上記のように、モータ駆動電力と発電電力の差の分の電流を共通のコイルに流すだけでよくなることから、インバータの電力スイッチングトランジスタのキャパシタンスを減らすことができ、これによってスイッチング効率が向上し、より全体効率が向上する。
【0026】
これまでの説明は、極対数比が2:1の場合について主に説明したが、極対数比が1:1の場合、すなわち、外側ロータと内側ロータの極対数が同数の場合には、特殊な動作特性が生じる。以下説明する。
前記特開平11−275826号公報の(8)式および(9)式は下記のようになる。
f1=-μIm1{Im2・sin((ω2-ω1)t-α)-(3/2)n・Ic・sin(β)} …(8)
f2= μIm2{Im1・sin((ω1-ω2)t-α)-(3/2)n・Ic・sin((ω1-ω2)t-α-β)
} …(9)
ただし、f1:外側ロータの駆動力
f2:内側ロータの駆動力
Im1:外側ロータの磁石の等価直流電流
Im2:内側ロータの磁石の等価直流電流
Ic:ステータコイルの電流
ω1:外側ロータの回転角速度
ω2:内側ロータの回転角速度
α:2つのロータの磁極の位相角
β:電流の位相差
μ:透磁率
n:コイル定数
上記(8)式、(9)式において、まず、ステータコイルに回転磁界を発生する電流Icを流した場合に、両ロータの駆動力f1とf2を考察する。
【0027】
ステータコイルの電流Ic・sinβによる駆動力f1、f2は外側ロータと内側ロータとの位相角αによって変化するので、以下、α=0の場合とα=πの場合とに分けて説明する。なお、α=0とは図2(a)に示すように、二つのロータの磁極が同極(N−NとS−S)で対面している状態であり、α=πとは図2(b)に示すように、二つのロータの磁極が異極(N−S)で対面している状態である。
【0028】
式を簡単にするために、ω1=ω2とすれば、(8)式、(9)式から、
f1=-μIm1{Im2・sin(-α)-(3/2)n・Ic・sin(β)} …(数1)式
f2= μIm2{Im1・sin(-α)-(3/2)n・Ic・sin(-α-β)} …(数2)式
α=0の場合
(数1)式、(数2)式においてα=0とすれば、下記(数3)式、(数4)式のようになる。
f1=-μIm1{-(3/2)n・Ic・sin(β)} =μIm1・(3/2)n・Ic・sin(β)…(数3)式
f2= μIm2{-(3/2)n・Ic・sin(-β)}=μIm2・(3/2)n・Ic・sin(β)…(数4)式
よってμIm1=μIm2とすれば、f1=f2となる。
上記のように、α=0の場合にはf1=f2となるので、二つのロータは同じ方向に駆動力を受け、同じ方向に回転する。
【0029】
α=πの場合
(数1)式、(数2)式においてα=πとすれば、下記(数5)式、(数6)式のようになる。
f1=μIm1・(3/2)n・Ic・sinβ …(数5)式
f2=μIm2・(3/2)n・Ic・sin(-π-β)=-μIm2・(3/2)n・Ic・sinβ …(数6)式
よってμIm1=μIm2とすれば、f1=−f2となる。
上記のようにα=πの場合には、f1=−f2となるので、二つのロータは逆方向に駆動力を受け、相互に逆方向に回転する。これが逆転モードである。
【0030】
上記のようにステータコイルに電流を流して駆動する場合には、位相角αの値に応じて、正転モードと逆転モードとがある。
【0031】
次に、ステータコイルに電流を流さない場合、すなわちIc=0の場合について説明する。Ic=0の場合は前記(8)式、(9)式から下記(数7)式、(数8)式のようになる。
f1=-μIm1{Im2・sin((ω2-ω1)t-α)} …(数7)式
f2= μIm2{Im1・sin((ω1-ω2)t-α)} …(数8)式
(数7)式、(数8)式において、ω1=ω2とすれば、
f1=-μIm1{Im2・sin(-α)} …(数9)式
f2= μIm2{Im1・sin(-α)} …(数10)式
となり、常にf1=−f2となる。これは一見、逆方向に回転するように見えるが、実際には二つのロータ間に位相角αを与えた場合にα=0の位置に戻ろうする力を示す。つまり一方のロータに外部から機械的な力を加えると、αが0からずれて、これを修正する力f1が発生し、同様に他方のロータにも修正方向である反対側の力f2が働くということである。したがって一方のロータを外部から機械的に回転させると他方のロータもα=0を保つように同じ方向に回転することになる。これが磁気カップリングであり、ステータコイルに電流を流さない状態で、例えば外側ロータを内燃機関で駆動すれば、同方向に内側ロータを回転させることが出来る。
【0032】
上記のように1対1極対数比の場合には、位相角α=0でステータコイルに電流を流さない状態で一方のロータを外部から機械的に駆動すれば、磁気カップリングモードとなり、ステータのコイルに電流を流さないで、他方のロータを直結状態(同速度)で駆動することが出来る。また、2つのロータの磁石の位相角α=πの場合は逆転モードとなり、外側ロータと内側ロータとが逆方向に回転することになる。
【0033】
上記のような複合型の回転電機をハイブリッド車両に搭載し、一方のロータを内燃機関で駆動して発電し、その電力をステータコイルに流して他方のロータを回転させ、それで車両を駆動するシステムにおいて、内燃機関の始動時に、上記の内燃機関に結合されたロータをスタータモータとして始動を行うように構成した場合に、車両も内燃機関も停止している状態で、車両に結合されたロータを回転して車両を駆動すると、内燃機関に結合されたロータも回転してしまうおそれがある。逆に、内燃機関の始動時に内燃機関に結合された方のロータが回転すると、他方の車輪に結合されたロータも回転し、車両が動いてしまうおそれがある等の望ましくない特性がある。本発明は電流を流さないで駆動出来るという磁気カップリングの有利な特性を活かし、かつ、望ましくない特性は押さえるように改良したものである。
【0034】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に用いる1対1極対数比の回転電機のロータとステータ部分の断面図であり、(a)は本発明の構成、(b)は基本構成を示す。なお、回転電機全体の概略断面図は前記図14(a)と同様である。
【0035】
図1(b)に示すように、1対1極対数比の回転電機の最も基本的な構造は、外側ロータ21の磁石がNSの1極対で、内側ロータ23も磁石がNSの1極対である。そして両ロータの中間にステータ22が設けられている。ステータ22に太字で示した1〜6の番号はステータコイルを示し、1〜6のように下線を付したものは電流が逆に流れるコイルを示す。また、各ロータの磁石は、ロータの表面に張られているSPM型モータを示したが、リラクタンストルクの出し得るIPM型でも同様である。また、コイルは分布巻きで表示してある。
また、図1では1対1極対数比の基本的な構成である外側ロータと内側ロータが共に1極対(NS1極のみ)の場合を例示しているが、2極対と2極対、3極対と3極対のように、極対数比が1対1であればよい。
【0036】
本発明においては、図1(a)に示すように、外側ロータ21にA、B、C、D(図面では丸で囲んだ符号で表示)の4個の励磁コイルを設けている。コイルは集中巻きでも分布巻きでも作用は同じである。この各励磁コイルに励磁電流を流して、本来の磁石による磁極とNSが交互になるように、つまり永久磁石による磁極と励磁コイルによる磁極とが異極で隣合うように、コイルAをS極、コイルBをN極、コイルCをS極、コイルDをN極に励磁すれば、コイルによる極対数は2になる。したがって外側ロータ21は磁石の1極対と合わせて3極対になる。すなわち、この回転電機は3対1極対数比になる。一般的には励磁コイルの数を2nとすれば、極対数比は(n+1)対1になる。なお、図1の例では外側ロータ21に励磁コイルを設けた例を示したが、内側ロータ23に設けてもよい。また、上記と逆に、永久磁石による磁極と励磁コイルによる磁極とが同極で隣合うように、コイルAをN極、コイルBをS極、コイルCをN極、コイルDをS極に励磁すれば、外側ロータ21の上半分が全て一繋がりのN極、下半分が全て一繋がりのS極になるので、この場合には極対数比は1対1のままである。
【0037】
上記のように、図1(a)の構造によれば、ロータに設けた励磁コイルを励磁しない場合や磁極が繋がるように励磁した場合は図1(b)に示した1対1極対数比の回転電機として動作し、磁極が分割して磁極数が増加するように励磁コイルを励磁すれば3対1極対数比の回転電機として動作する。この3対1極対数比の回転電機の場合は、前記図14等で詳述した2対1極対数比の場合と同様に、外側ロータと内側ロータとを独立して制御することが出来、かつ、磁気カップリングモードや逆転モードはない。
【0038】
図2は、1対1極対数比の回転電機の場合に、外側ロータ21と内側ロータ23との回転の位相角αを示す図であり、図2(a)はα=0、すなわち二つのロータの磁極が同極(N−NとS−S)で対面している状態であり、図2(b)はα=π、すなわち、二つのロータの磁極が異極(N−S)で対面している状態である。
【0039】
以下、励磁コイルに流す電流と磁極の関係について詳細に説明する。
【0040】
図3は、ステータコイルと励磁コイルの位置について符号0〜11を付した図であり、A、B、C、Dは各励磁コイル(図1では丸で囲んだ符号に相当)、NとSは永久磁石の磁極である。なお、図3においては、外側ロータ21の磁極NとSの範囲が2〜4および8〜10の範囲に正確に一致しているが、これは磁気回路トルク設計のチューニングの範囲であって、これより広い範囲でも狭い範囲でも可能である。
【0041】
図4は、永久磁石および励磁コイルによる磁界強度を示す図である。図4において、位置0〜11は図3に示した位置に相当し、(A)、(B)、(C)、(D)および(N)、(S)は対応する励磁コイルまたは永久磁石の位置を示す。また、実線で示したM1とM2は永久磁石による磁界強度で、M1は内側ロータ23の磁極、M2は外側ロータ21の磁極によるものを示す。また、破線で示したM3は励磁コイルによる磁界強度を示す。
【0042】
図4に示した例は、永久磁石による磁極と励磁コイルによる磁極とが異極で隣合うように、コイルAをS極、コイルBをN極、コイルCをS極、コイルDをN極に励磁し、外側ロータ21を3極対にした場合を示す。つまり外側ロータ21に関しては、位置0〜2の範囲では励磁コイル(A)による磁界M3があり、位置2〜4の範囲では永久磁石Nによる磁界M2があり、両者の強さは同じ(方向は逆)である。このように永久磁石の磁界強度と磁束コイルによる磁界強度とが同じで、完全な3極対として動作する場合を完全3極対と名付ける。したがって図4のように励磁コイルを励磁すれば、この回転電機は完全3対1磁極対数比として動作する。
【0043】
図5は、励磁コイルに流す電流を変化させた場合における磁界強度を示す図である。図5において、破線で示したM3、M4、M5、M6は励磁電流の大きさと方向による変化を示し、M3>M4>M5である。また、M6は励磁電流の方向を反対にして永久磁石による磁極と励磁コイルによる磁極とが同極で隣合うように、コイルAをN極、コイルBをS極、コイルCをN極、コイルDをS極に励磁したものである。この場合には外側ロータ21の上半分が全て一繋がりのN極、下半分が全て一繋がりのS極になるので、極対数は1であり、回転電機は1対1磁極対数比で動作する。なお、一点鎖線で示したM7はM6とM2の包絡線であり、これが内側ロータ23の1極対の磁界強度にほぼ相当(図4のM1、方向は逆)する。また、励磁コイルに全く電流を流さず、永久磁石のみ(図4のM1とM2のみ)による磁気カップリング効果だけで1対1磁極対数比として動作することもできる。
【0044】
上記のように1対1磁極対数比モードの場合には、励磁コイルの励磁電流を0にする場合と、励磁電流を流しながら1対1磁極対数比にする場合とがある。前者の場合には消費電力を大幅に減少させることができるが、目標伝達トルクが磁気カップリングの力よりも大きくなると、同期回転ができなくなる。そのような場合には、図5のM6に示したような励磁電流を流して伝達トルクを大きくする。つまり、励磁電流の値を目標伝達トルクの値に応じて制御すれば良い。また、3対1磁極対数比モードで動作する場合も、上記と同様に、励磁電流の値を目標伝達トルクの値に応じて制御すれば良い。つまり、図5のM3、M4、M5のように伝達トルクが大きくなるにつれて電流値を大きくすれば良い。
【0045】
図6は、目標伝達トルクTと励磁電流の値を示す図であり、(a)は1対1磁極対数比モード、(b)は3対1磁極対数比モードの場合を示す。なお、図6では1対1磁極対数比モード時の電流の方向(図5のM6)を正方向で示しているので、(b)の3対1磁極対数比モード時の電流の方向(図5のM3、M4、M5)が負方向になっている。
【0046】
上記のように、各励磁コイルに流す励磁電流を制御することにより、1対1磁極対数比モードと3対1磁極対数比モードとを任意に切り換えて動作させることができる。
以下、2つのモードを2個のロータの回転速度に応じて切り換える方法について説明する。
図7は、2つのモードと2個のロータの回転速度との関係を示す図である。まず、図7(a)は、内側ロータと外側ロータの回転速度が同じ場合、すなわち、両者が同期して回転する場合にのみ1対1磁極対数比モードとし、その他の場合は全て3対1磁極対数比モードとするものである。これは内側ロータと外側ロータが同期して回転する場合には、前記のごとき磁気カップリング効果があるので、それを有効に活用して消費電力を減少させ、また、2つのロータを異なった回転速度で独立に動作させる場合には、前記のように制御性の良い3対1磁極対数比で動作させるものである。
【0047】
次に、図7(b)は、2つのロータの何れか一方の回転速度が0を含む所定値a以下の範囲、および前記2つのロータの回転速度の差が同速度を含まない同速度から所定範囲内の場合には3対1極対数比モードとし、それ以外の範囲(図中のハッチングを付した領域)、および前記2つのロータの回転速度が同速度の場合には1対1極対数比モードで動作させるものである。すなわち、回転速度が所定値a以下の範囲とは、起動時(回転速度=0)および低回転時であり、このような場合には、逆転モードや磁気カップリング効果がなく、制御性の良い3対1極対数比で動作させる方が良い。また、1対1磁極対数比と3対1磁極対数比とでは、理論的には起動トルクは同じであるが、前記図4の特性からも判るように、本発明のように励磁コイルで磁極を発生する構成の回転電機では、完全3対1磁極対数比の方が、1対1磁極対数比よりも磁界強度の合計面積が大きくなるので、実際的には起動トルクが大きくなり、その点でも有利である。また、2つのロータが同速度で同期運転している領域(線上)の両側では、同期運転から独立制御への移行領域なので、制御性の良い3対1磁極対数比モードで動作させる。そして起動範囲でもなく、上記の移行領域でもない範囲(図中のハッチングを付した領域)では1対1磁極対数比で動作させる。ただし、この場合には磁気カップリングで動作させるものではないので、1対1磁極対数比にしても特別の効果はなく、勿論、3対1磁極対数比モードで動作させてもよい。なお、前記特開平11−275826号公報(16)式、(17)式に示されるように、ステータコイル電流に変調を加えれば、それぞれのロータの回転からトルク変動を解消することができ、ω1≠ω2の状態に於いても1対1次極対数比のモードで運転することが出来る。
【0048】
次に、1対1磁極対数比モードと3対1磁極対数比モードとの切り換え制御について説明する。
図8は、切り換え時の励磁電流値の変化を示す図である。図8において、切換信号は“0”が1対1磁極対数比モード、“1”が3対1磁極対数比モードである。励磁電流値がK11(1対1磁極対数比モード)で回転中に、切換信号が“0”から“1”に変化した場合には、その時点から所定時間t1をかけて順次励磁電流値をK31(3対1磁極対数比モード)まで変化させる。例えば、図5のM6のピーク値をK11とすれば、その値を順次M6→0→M5→M4→M3(K31に相当)と変化させる。逆に、3対1磁極対数比モードから1対1磁極対数比モードに切り換える場合も、同様に、励磁電流値を順次変化させれば良い。このようなランプ制御を行えば、1対1磁極対数比モードと3対1磁極対数比モードとの切り換えを円滑に行うことができる。
【0049】
図9は上記の制御手順を示すフローチャートである。1対1磁極対数比モードと3対1磁極対数比モードを切り換えて動作する場合の励磁コイルの電流If(図9の最終ステップの式)は下記(数11)式で示される。
【0050】
If=K・sin〔3(n/12)×2π〕 …(数11)
ただし、n=0,1,4,5,6,7,10,11(0番コイルは位置0と1との間に存在するコイルとする)。
【0051】
次に、図10は、制御回路の構成を示すブロック図である。
【0052】
図10において、回転速度検出部40は前記図16の回転角センサ14の信号に基づいて内側ロータ23の回転速度N1を算出する。同様に、回転速度検出部41は前記図16の回転角センサ13の信号に基づいて外側ロータ21の回転速度N2を算出する。目標トルク演算部42は、外部から与えられるトルク指令信号(前記図16の外トルク指令、内トルク指令)に基づいて目標トルクを演算する。励磁パターン制御部43は上記の各信号に基づき、かつ、前記図7〜図9で説明したような制御内容に基づいて、3対1磁極対数比モードと1対1磁極対数比モードとの何れで動作させるか、或いは切り換え制御中かの判断を行う。また、励磁電流・ステータ電流制御部44は、上記の制御モードの判断および目標トルクなどに応じて励磁電流とステータコイルに流す電流値を演算し、それに応じてインバータを制御し、励磁コイルとステータコイルに電流を流す。なお、励磁電流・ステータ電流制御部44は、前記図16の制御回路15に励磁電流の制御部を追加したものに相当する。また、本発明では、前記図16のインバータ12の他に、励磁コイルに流す電流を制御するインバータも必要である。
【0053】
次に、図11は、本発明の装置をいわゆるハイブリッドシステムに適用した場合を示すブロック図である。なお、回転電機の部分は前記図14(a)の断面図の上半分のみを示している。図11において、外側ロータ21の各励磁コイル(図示省略)はスリップリング24を介して励磁電流が与えられるように構成されている。また、外側ロータ21の軸25は内燃機関(図示省略)の出力軸に連結されている。また、内側ロータ23の軸26は車両の駆動軸27に連結されている。
【0054】
図12は、前記の外側ロータ21に設けた励磁コイルA、B、C、Dの電流を制御する回路図であり、(a)は磁極の極性を切換えられる回路、(b)は(a)において磁極の向きとモードとの関係を示す図表、(c)は単純に励磁電流をオン・オフする回路である。
図12(a)の回路は、トランジスタT1とT2およびT3とT4がそれぞれ直列に結線されたスイッチング回路を用い、4個の励磁コイルA、C、B、Dを直列にした回路の両端を上記スイッチング回路の中点(T1とT2の接続点およびT3とT4の接続点)に接続したものであり、励磁コイルA、Cと、励磁コイルB、Dとは、同じ向きの電流が流れた場合に相互に逆方向の磁極となるように接続している。なお、31と32はスリップリングである。
【0055】
この回路において、トランジスタT1とT4をオン、トランジスタT2とT3をオフにすれば、励磁コイルA、C側(図の左側)から電流が流れ、このとき各励磁コイルの極性はA:S、B:N、C:S、D:Nとなり、図12(b)に示すように3対1極対数比モードになる。逆に、トランジスタT1とT4をオフ、トランジスタT2とT3をオンにすれば、励磁コイルB、D側(図の右側)から電流が流れ、このとき各励磁コイルの極性はA:N、B:S、C:N、D:Sとなり、図12(b)に示すように1対1極対数比モードになる。このように励磁電流を流しながら1対1極対数比にする構成では、励磁コイルの電流の大きさによって磁気カップリングの強さを変えることが出来る。また、上記の回路では、4個の励磁コイルを用いながら2個のスリップリングだけで良いので、構成が簡略になり、安価に実現出来る。なお、全ての励磁コイルを直列または並列に接続すれば励磁コイルの数が幾つであってもスリップリングは2個で済むので、構成が簡略になる。また、トランジスタT1とT3をオフにすれば、全ての励磁コイルの電流が0になり、いわゆるカップリング効果のみで駆動することもできる。
【0056】
また、図12(c)の回路においては、トランジスタT5がオンになれば、励磁コイルA、C、B、Dに電流が流れて、励磁コイルの極性はA:S、B:N、C:S、D:Nとなり、3対1極対数比モードになる。また、トランジスタT5がオフになれば、励磁電流がなくなり、磁石だけの基本的な1対1極対数比になる。この回路は磁気カップリングの強さを変えることは出来ないが、構成がさらに簡単になり、かつ、1対1極対数比の場合に励磁コイルに電流を流さないので効率が向上する。
【0057】
図11に示したハイブリッドシステムの構成では、外側ロータ21に設けた励磁コイルの電流をオンオフするかまたは電流の方向を切り換えことにより、1対1極対数比と3対1極対数比とに切り換えて動作させることが出来る。そして3対1極対数比の場合には外側ロータ21と内側ロータ23とを独立して制御することが出来、かつ、磁気カップリングモードや逆転モードはない。また、1対1極対数比の場合には磁気カップリングモードがあるので、外側ロータ21を内燃機関で駆動して内側ロータ23を同速で回転させる場合にはステータコイルに電流を流さなくてもよい。したがって、車両の動作状態に応じて1対1極対数比と3対1極対数比とに切り換えて動作させれば、両者の良い点のみを用いることが出来る。
【0058】
例えば、内燃機関の始動時においては、励磁コイルを3対1極対数モードになるように励磁し、3対1極対数比の回転電機にする。これにより、磁気カップリングモードや逆転モードがなくなるので、車両や内燃機関の停止時に内側ロータ23を回転させて車両を駆動しても内燃機関が駆動されるおそれがなく、また、外側ロータ21をスタータモータとして用いて内燃機関を始動しても、車輪に連結されている内側ロータ23が回転するおそれがない。
【0059】
また、車両の走行中は、外側ロータ21を内燃機関で駆動してジェネレータとして動作させ、それで発電した電力で内側ロータ23駆動することにより、内側ロータ23の回転速度やトルクを任意に制御することが出来る。例えばステータコイルに流す電流を制御することにより、低速大トルクにも高速低トルクにもできる。損失を0と仮定すれば、出力=回転数×トルクが一定になるように制御することも出来る。
【0060】
また、走行中に磁気カップリングモードにしたい場合には、ω1=ω2となる時に励磁コイルの電流をオフにするか若しくは前記図12(a)で説明したように電流の方向を切り換えれば、1対1極対数比の回転電機になり、磁気カップリングモードに入る。この状態では外側ロータ21を内燃機関で駆動すればステータコイルに電流を流さなくても内側ロータ23を同速度で駆動することが出来る。また、励磁コイルの電流を流しながら1対1極対数比にした場合には、励磁コイルの電流の大きさによって磁気カップリングの強さを変えることが出来る。したがって伝達トルクの大きさに応じて上記の電流を制御すれば、伝達トルクが変化しても磁気カップリングモード(同速回転)を継続することが出来る。また、3対1極対数比から1対1極対数比に極対数比を切り換える際には前記のように励磁コイルに印加する電圧を反転すればよいが、その際に伝達トルクに応じて励磁コイルに印加する反転電圧を決定するように構成してもよい。
【0061】
また、少なくとも一つのロータを停止状態から回転させる際には、3対1極対数比となるように励磁コイルを励磁すれば、1対1極対数比の構成における逆転モードがないので、逆回転になるおそれがなく、かつ、他方のロータが意図しないのに動きだすおそれもない。また、一方のロータが停止状態であり、他方のロータが回転状態の場合にも、3対1極対数比となるように励磁コイルを励磁すれば、1対1極対数比の構成における磁気カップリング効果がないので、停止中のロータが意図しない場合に回転するおそれがない。
【0062】
上記の内容をまとめると図13に示すようになる。すなわち、始動時と独立回転時は3対1極対数比にし、カップリング時および独立回転時には1対1極対数比にする。独立回転は3対1極対数比と1対1極対数比の何れでも可能であるから適宜選択する。詳細内容は前記図7ですでに説明しているとおりである。
【0063】
なお、これまでの説明は、内側ロータとステータと外側ロータとが三層構造になっている回転電機を用いる場合について説明したが、二つのロータを直列方向に設けて2軸の回転電機とすることも出来る。例えば本出願人の先願(特願平11−273303号:未公開)の図11のような構成でもよい。つまり、磁気回路とステータコイルを共有する2個のロータを備え、ステータコイルに流す複合電流を前記ロータの数と同数の回転磁場が発生するように制御する回転電機であれば、本発明を適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に用いる1対1極対数比の回転電機のロータとステータ部分の断面図であり、(a)は本発明の構成、(b)は基本構成を示す図。
【図2】1対1極対数比の回転電機の場合に、外側ロータ21と内側ロータ23との回転の位相角αを示す図。
【図3】ステータコイルと励磁コイルの位置について符号0〜11を付した図。
【図4】永久磁石および励磁コイルによる磁界強度を示す図。
【図5】励磁コイルに流す電流を変化させた場合における磁界強度を示す図。
【図6】目標伝達トルクTと励磁電流の値を示す図であり、(a)は1対1磁極対数比モード、(b)は3対1磁極対数比モードの場合。
【図7】2つのモードと2個のロータの回転速度との関係を示す図。
【図8】切り換え時の励磁電流値の変化を示す図。
【図9】切り換え時の制御手順を示すフローチャート。
【図10】制御回路の構成を示すブロック図。
【図11】本発明の装置をいわゆるハイブリッドシステムに適用した場合を示すブロック図。
【図12】外側ロータ21に設けた励磁コイルA、B、C、Dの電流を制御する回路図であり、(a)は磁極の極性を切換えられる回路、(b)は(a)において磁極の向きとモードとの関係を示す図表、(c)は単純に励磁電流をオン・オフする回路。
【図13】3対1磁極対数比と1対1磁極対数比とにおける動作可能なモードを示す図表。
【図14】本発明を適用する回転電機の一例の構造を示す図であり、(a)は回転電機全体の概略断面図、(b)はロータとステータ部分の断面図。
【図15】ステータ2の内周側と外周側に専用コイルを配置した回転電機本体の概略断面図。
【図16】回転電機を制御するための回路のブロック図。
【図17】インバータの一例の回路図。
【符号の説明】
21…外側ロータ 22…ステータ
23…内側ロータ 24…スリップリング
25…外側ロータ21の軸 26…内側ロータ23の軸
27…車両の駆動軸 29…制動装置
31、32…スリップリング 40、41…回転速度検出部
42…目標トルク演算部 43…励磁パターン制御部
44…励磁電流・ステータ電流制御部
T1、T2、T3、T4、T5…トランジスタ
A、B、C、D(図面では丸で囲んだ符号で表示)…外側ロータ21に設けた励磁コイル
Claims (6)
- 磁気回路とステータコイルを共有する2個のロータを備え、前記ステータコイルに各ロータに対応する電流を加え合わせた複合電流を流し、前記ロータの数と同数の回転磁場が発生するように制御する回転電機であって、
前記2個のロータの磁極を形成する永久磁石を1対1極対数比とし、かつ、何れか一方のロータには2n個(n=1,2,3,…)の励磁コイルを備えた回転電機を用い、
制御装置は、前記永久磁石による磁極と前記励磁コイルによる磁極とが異極で隣合うように励磁することによって前記回転電機を(n+1)対1極対数比で動作させるモードと、前記永久磁石による磁極と前記励磁コイルによる磁極とが同極で隣合うように励磁するか、若しくは励磁コイルに電流を流さないことによって前記回転電機を1対1極対数比で動作させるモードとを切り換えて制御するように構成したことを特徴とする回転電機の制御装置。 - 前記2つのモードを、前記2個のロータの回転速度の相互関係に応じて切り換えることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の制御装置。
- 前記2つのロータの回転速度が同速度の場合には1対1極対数比モードとし、回転速度が異なる場合は(n+1)対1極対数比モードとすることを特徴とする請求項2に記載の回転電機の制御装置。
- 前記2つのロータの何れか一方の回転速度が0を含む所定値a以下の範囲、および前記2つのロータの回転速度の差が同速度を含まない同速度から所定範囲内の場合には(n+1)対1極対数比モードとし、それ以外の範囲、および前記2つのロータの回転速度が同速度の場合には1対1極対数比モードとすることを特徴とする請求項2に記載の回転電機の制御装置。
- 前記1対1極対数比モードと、前記(n+1)対1極対数比モードとの切り換え時には、励磁電流を所定時間で順次変化させるランプ制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の回転電機の制御装置。
- 前記1対1極対数比モードの場合には、前記励磁コイルの励磁電流を目標伝達トルクに応じて制御することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の回転電機の制御装置。
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