JP3637765B2 - 濾過体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は活性汚泥を濾過するための濾過体に係り、特に、活性汚泥濾過装置に浸漬配置され、活性汚泥を効率的に分離して生物処理水を得るための活性汚泥用濾過体に関する。
【0002】
【従来の技術及び先行技術】
生物反応により水中の有機物を分解処理する活性汚泥などの生物処理装置では、生物汚泥を固液分離するために沈殿池等の沈降分離手段を用いることがあるが、生物反応槽の後段に沈殿池を設けた従来の生物処理装置では、次のような問題がある。
【0003】
(1) 比重差により汚泥を沈降分離する沈殿処理では汚泥の分離性能に限界があり、流入負荷の変動時やバルキング発生時等に処理水質が悪化する。このため、高度な処理水質が要求される場合には沈殿池の後段に更に急速濾過機やストレーナー等の設備が必要である。
(2) 最終沈殿池で分離した生物汚泥を生物反応槽に返送する操作も必要とされる。
(3) 汚泥返送操作や汚泥濃度管理を行っても、最終沈殿池でスカムが発生したり、汚泥が浮上したりする等のトラブルが発生し、水質が悪化する場合が多い。
(4) 沈殿池は、大きな設置スペースを必要とする。
【0004】
上記の沈降分離の代りに、生物汚泥を限外濾過膜や精密濾過膜により膜分離する場合もある。この膜分離処理によれば、沈殿池のような大きなスペースを必要とすることなく、SSが高度に除去された高水質処理水を得ることができる。
【0005】
しかしながら、限外濾過膜や精密濾過膜による膜分離処理では、消費動力が大きい上に、膜で阻止した物質(この膜汚染物質は、高分子状の微生物代謝産物などが主体となっている。)により膜が汚染され、膜孔の閉塞で濾過性能が低下するため、定期的な薬品洗浄が必須であり、また、膜素材が高価であるという欠点がある。
【0006】
このような膜分離処理における問題を解決するものとして、濾布を備える濾過体を生物反応槽に浸漬配置し、この濾過体の濾布を通過した濾過水を処理水として取り出すことで、生物汚泥を固液分離することが考えられている。
【0007】
この濾過体による濾過は、実際には、濾過の進行により濾過体の濾布表面に形成された活性汚泥粒子の付着物層(ダイナミック濾過層。以下、単に「濾過層」と称する場合がある。)によって行われている。即ち、濾過体の濾布は、実質的には活性汚泥粒子を通過させる、金属や高分子繊維の不織布よりなる厚み2mm以下のものであるが、濾過の駆動圧が小さい条件下において、濾布の表面に活性汚泥粒子の付着物層が形成され、この付着物層により活性汚泥粒子の通過を阻止することができるようになる。
【0008】
本出願人らは、このような濾過体で濾過を継続して行うことにより、濾布を通過してきた活性汚泥粒子や濁質が濾過体内に徐々に沈積し、濾過性能が低下してくるという問題を解決し、活性汚泥を長期に亘り安定かつ効率的に分離することができる活性汚泥用濾過体として、活性汚泥を濾過するための濾過体であって、支持体と、該支持体の外面に沿って設けられた不織布と、該不織布を透過してきた濾過水の流通路と、該濾過水流通路からの濾過水の取出と該流通路への洗浄水の供給とを行う流路とを備えてなるものを提案した(特願平9−177199号。以下「先願」という。)。
【0009】
先願の濾過体では、不織布を透過してきた濾過水の流通路とこの流通路から濾過水を取り出すための流路が確保されているため、濾過水を安定に取り出すことができる。また、濾過を継続することにより、濾過体内に濁質や活性汚泥粒子が蓄積して濾過性能が低下してきた場合には、洗浄水の流路及び濾過水流通路を経て洗浄水を供給して濾過体内を洗浄することによりこれを排除し、濾過性能を回復させることができる。
【0010】
この濾過体においては、特に、支持体の不織布と対面する部分が空洞又は凹部となっており、不織布はこの空洞又は凹部を塞ぐように設けられた通水性支持部材に支持されていることが好ましく(以下、このような構造の濾過体を「中抜型濾過体」と称す場合がある。)、このような構成とすることにより、濾過水流通路側に侵入した活性汚泥粒子や濁質が支持体と不織布との間に滞留して安定濾過を阻害することが防止される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記先願の中抜型濾過体は、濾過性能の長期持続性に優れ、また、構造が簡易で安価に製造できるという利点がある反面、濾過水が清澄になるまでの時間が長く、また、清澄な濾過水が得られるようになった後も濾過水の濁度にムラがあり、清澄な濾過水を安定して得ることができないという不具合があった。
【0012】
本発明は上記先願の問題点を解決し、濾過水が清澄になるまでの時間が短く、早期に濾過水の採水を行うことができ、かつ、清澄な濾過水を安定に得ることができる濾過体を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の濾過体は、不織布よりなる濾布表面に活性汚泥粒子によるダイナミック濾過層を形成させて活性汚泥を濾過するための濾過体であって、支持体と、目開きが5mm以下の網状体と、前記支持体の外面に沿って、該網状体を介して設けられた前記不織布とを備え、該支持体の不織布と対面する部分が空洞又は凹部となっており、この空洞又は凹部を塞ぐように網状体を介して不織布が取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
濾過体で使用される不織布は薄く、目開きが大きいため、濾過の抵抗が殆ど無い。このため、濾過体の不織布面での濾過流束は不織布面のどこでも均一というわけでは無く、一次側(原水(被濾過水)側)の条件等でダイナミック濾過層の形成の程度に差ができる場合がある。このダイナミック濾過層の形成の程度の差のために、不織布面の場所によって濾過流束に差ができてしまう。そして、高濾過流束の部分では、ダイナミック濾過層が形成され難いので、濾過水と共に濁質が濾過体の二次側(濾過水側)へ流入し、これが濾過水質の安定性を阻害し、水質の悪化を招くと共に、濾過体の二次側に蓄積して長期的には濾過体の閉塞を起こし、濾過流束を低下させる。
【0015】
この不織布面での濾過流束の不均一を防止するためには、不織布の二次側に若干の抵抗をつけるのが簡便かつ有効である。
【0016】
本発明では、この抵抗体としての機能を付与するために、不織布の支持材として目開き5mm以下の目の細かい網状体を設ける。
【0017】
この網状体の好適な目開きは、5mm以下の範囲において、汚泥性状や膜面流束等の条件によっても異なるが、濾過流束の安定化の面では細かい程良い。しかし、過度に細かいと、濾過水中の濁質で目詰りし易く、また、網状体と一体化された不織布の場合、網状体による不織布の有効濾過面積の低下等で濾過効率が悪くなるため、0.4〜1.7mm程度の範囲とするのが好ましい。
【0018】
なお、活性汚泥の分離での濾過流束は、MF膜やUF膜を用いる膜濾過において1m3/m2/day以下であり、一方、不織布を用いるダイナミック濾過法では1〜2m3/m2/dayと高濾過流束とするが、その不織布面での濾過速度は2m3/m2/dayでも0.14cm/minと遅いため、網状体の目開きを小さくすることによる抵抗が問題となることはない。
【0019】
本発明において、不織布は網状体に、接着、溶着又はキャスティングにより一体化されていることが好ましく、このように不織布と網状体を一体化することで、不織布が網状体により補強され、十分な強度を得ることができるという利点が得られる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の濾過体の実施の形態について説明する。
【0021】
図1〜3は本発明の濾過体の実施の形態を示す図であって、各々、(a)図は一部切欠正面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う模式的な断面図である。
【0022】
図1の濾過体1は、支持体2の両面にネットスペーサ(網状体)3を介して不織布4を取り付け、取付枠5で固定したものである。この支持体2は、その不織布4に対面する部分が空洞部2Bとなる枠状部材からなり、この空洞部2Bを塞ぐようにネットスペーサ3を介して不織布4が取り付けられ、取付枠5で固定されている。また、支持体2の上部の端面側から支持体2の空洞部2Bに連通する洗浄水流入管22Aが2本設けられ、支持体2の底部の端面側から支持体2の空洞部2Bに連通する濾過水取出管22Bが2本設けられている。
【0023】
支持体2としては、濾過部材としての不織布を支持し、活性汚泥濾過装置内に浸漬配置された際の水圧に耐え得る十分な剛性を有するものであれば良く、特に制限はないが、例えば鉄、ステンレス等の金属、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリエステル等の合成樹脂、或いは、酸化アルミニウム等のセラミックスなどで構成された板状体又は枠状体が好適である。
【0024】
不織布4としては、ポリエステル、ポリプロピレン等の高分子又は銅、ステンレス等の金属材料よりなるものであって、分離粒径30μm以上、好ましくは30〜1000μmの目開きを有し、厚さが2mm以下、特に0.1〜1mmのものが不織布の目詰りを防止して安定な濾過を行う上で好ましい。
【0025】
ネットスペーサ3としては、その目開きが5mm以下、好ましくは0.4〜1.7mmのものであれば良く、種々のものを用いることができる。
【0026】
このような目開きの細かいネットスペーサ3で不織布4を裏打ちすることにより、不織布4面の濾過流束が均一化され、ダイナミック濾過層が不織布4面に均等に形成されるようになり、清澄な濾過水を安定して得ることができるようになる。
【0027】
本発明において、このネットスペーサ3と不織布4とは接合されて一体化されていることが好ましく、このようにネットスペーサ3と不織布4とを一体化することで、不織布4の強度を高めることができる。
【0028】
なお、不織布とスペーサとの接合は、両者の全体を接合するのが濾過性能及び強度等の面より望ましいが、格子状や端末部のみ等の部分的な接合でもかまわない。
【0029】
この場合、接合方法としては、接着剤や熱、圧力、機械的な方法が挙げられ、例えば、接着剤としてはポリアミド系、ポリエステル系等がある。
【0030】
また、複数の接合方法を組み合わせ、例えば、接着剤で不織布とスペーサを接着し、熱(例えば100〜200℃)をかけながらローラー間を圧力をかけながら通すことにより接合する方法等もある。
【0031】
なお、図1に示す濾過体1の如く、支持体2に空洞部2Bを設ける場合、支持体が大型になると、金網状のスペーサ3のみでは不織布4の平面性を保持できない場合がある。この場合には、図2に示す如く、ネットスペーサ3の下に目幅が広く且つ剛性のある例えば金網状スペーサ7を設け、不織布4及びネットスペーサ3を支持するようにするのが好ましい。また、図3に示す如く、濾過や濾過水流路を阻害しない程度の支持体や支持棒8を用いて不織布4及びネットスペーサ3を支持するようにしても良い。なお、図2,3に示す濾過体1B,1Cでは、支持体2の不織布取付面側に段部2C又は凹部2Dを凹設し、この段部2C又は凹部2Dに支持用の金網状スペーサ7や支持板又は支持棒8を嵌め込んで取り付けている。その他の符号は図1と同一部分を示している。
【0032】
このような濾過体1,1B,1Cでは、不織布4を通過した濾過水は、支持体2の空洞部2B及び取出管22Bを経て取り出される。
【0033】
このとき、濾過体に使用される不織布4は活性汚泥粒子より目開きが大きいものであるので、微量の濁質や活性汚泥粒子は濾過水中に混入する。これらの濁質、活性汚泥粒子は下方に沈降する傾向が強い。従って、これが濾過体内で沈積するのを防止して濾過水と共に排出するために、濾過水取出管は濾過体の下部に設けるのが好ましい。
【0034】
このように濾過水取出管を濾過体の下部に設け、濾過体内での濁質や微生物粒子の沈積を防止して濾過を行っていても、濾過を継続することにより、濾過体内のうち濾過水の流れの悪い部分に少しずつ濁質や活性汚泥粒子が蓄積され、濾過性能が悪くなる。このため、これらを濾過体内から排除するために、洗浄水を供給して濾過体内を洗浄する。
【0035】
図1〜3に示す濾過体1,1B,1Cでは、洗浄水を流入管22Aより供給し、取出管22Bより排出することで濾過体1,1B,1C内の濁質等を洗い出す。この濾過体1,1B,1Cでは、状況に応じて、上記とは逆に、取出管22Bから洗浄水を供給して流入管22Aから排出する洗浄を取り入れても良い。この洗浄の間に、洗浄水の大部分は、不織布4を通過し、濾過体1,1B,1C内に蓄積された濁質等を不織布4を通して活性汚泥濾過装置の反応液側へ排出する。
【0036】
この洗浄水としては、処理水である濾過水を用いても良く、別途清浄な水を導入して用いても良い。
【0037】
本発明の濾過体は、図1〜3に示すような構成の濾過体を複数連設して濾過ユニットとして用いても良い。
【0038】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0039】
実施例1〜4,比較例1
図4に示す如く、図1に示す構成の濾過体1を12個連結してユニット化したものを濾過用水槽10に浸漬した濾過装置を用いて、A下水処理場の曝気層内液の濾過を行った。濾過体1のユニットは濾過用水槽10の一側部に浸漬配置され、この濾過用水槽10の他側部には曝気管11が設けられている。また、濾過体1のユニットの下方には空気洗浄用の散気管12が設けられている。13は原水(曝気槽内液)の導入管、14は濾過水の取出管、15はオーバーフロー管(曝気槽への返送管)である。濾過用水槽の容量は43m3で、濾過用水槽内のMLSSは1500〜2500mg/Lであった。
【0040】
また、濾過体ユニットの各濾過体の各部の仕様は次の通りであり、この濾過体ユニットの濾過有効面積は濾過体1枚当り約3.6m2であった。
【0041】
濾過運転に当っては、不織布表面のケーキ層の生成を防止するために3時間に1回の頻度で濾過体下部より曝気(空気洗浄)した。その曝気時間は、約3分間/回とし、その間は濾過水の取り出しを停止した。また、濾過水の取り出しは、濾過体の下部より行い、濾過水引抜き高さは、濾過流束2m3/m2/dayになるような高さに調節して固定した。このときの水槽液位との水位差は、配管の長さによって多少異なり、約200〜250mmであった。
【0042】
空気洗浄後の濾過水濁度の経時変化を図5(a),(b)に示す。
【0043】
図5(a),(b)より明らかなように、ネットスペーサの目開きが広い場合(比較例1)の濾過水の濁度は、空気洗浄後で高く、安定するまでに10〜30分を要し不織布面に安定したダイナミック濾過層が形成し難い。しかも、安定後の濾過水濁度も、ネットスペーサの目開きが細かい場合(実施例1〜4)に比較し高いものである。
【0044】
これに対して、ネットスペーサの目開きを細かくするに従い(実施例1〜4)、濾過水濁度は空気洗浄直後から良好なものが得られており、かつ、安定後の濁度も極めて低く、清澄なものが得られている。
【0045】
このように、ネットスペーサの目開きを細かくすることにより、空気洗浄直後より、速やかに不織布面に安定したダイナミック濾過層を形成させることができ、これにより清澄な濾過水を早期にかつ安定して得ることが可能となる。
【0046】
【発明の効果】
以下詳述した通り、本発明の濾過体によれば、活性汚泥の濾過に当り、濾過水が清澄になるまでの時間が短く、早期に濾過水の採水を行うことができ、かつ、清澄な濾過水を安定に得ることができる。このため、このような濾過体を活性汚泥濾過装置に浸漬して用いることにより、生物処理の固液分離を、沈殿池や膜分離手段を必要とすることなく、低動力で安定かつ確実に行うことができ、処理効率の向上と省エネルギー及び省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の活性汚泥用濾過体の実施の形態の一例を示す図であって、(a)図は一部切欠正面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。
【図2】 本発明の活性汚泥用濾過体の実施の形態の別の例を示す図であって、(a)図は一部切欠正面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。
【図3】 本発明の活性汚泥用濾過体の実施の形態の異なる例を示す図であって、(a)図は一部切欠正面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。
【図4】 実施例で用いた活性汚泥濾過装置を示す断面図である。
【図5】 図5(a)は実施例1〜4及び比較例1における濾過水の濁度の経時変化を示すグラフであり、図5(b)は図5(a)のスケールを拡大して示すものである。
【符号の説明】
1,1B,1C 濾過体
2 支持体
3 ネットスペーサ
4 不織布
5 取付枠
6 ハニカムスペーサ
7 金網状スペーサ
8 支持板又は支持棒
10 濾過用水槽
11 曝気管
12 散気管
Claims (4)
- 不織布よりなる濾布表面に活性汚泥粒子によるダイナミック濾過層を形成させて活性汚泥を濾過するための濾過体であって、
支持体と、
目開きが5mm以下の網状体と、
前記支持体の外面に沿って、該網状体を介して設けられた前記不織布とを備え、
該支持体の不織布と対面する部分が空洞又は凹部となっており、この空洞又は凹部を塞ぐように網状体を介して不織布が取り付けられていることを特徴とする濾過体。 - 請求項1において、該網状体の目開きが0.4〜1.7mmであることを特徴とする濾過体。
- 請求項1又は2において、該不織布は該網状体に接合されて一体化されていることを特徴とする濾過体。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、該不織布は活性汚泥粒子より目開きが大きいものであることを特徴とする濾過体。
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