JP3637678B2 - 液晶ポリエステル樹脂組成物およびフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、射出成形や押出成形などにより、成形品などに利用できる液晶ポリエステル樹脂組成物および該組成物を成膜してなるガスバリア性フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートのような結晶性ポリエステルと異なり、分子が剛直なため溶融状態でも絡み合いを起こさず、液晶状態を有するポリドメインを形成し、低剪断により分子鎖が流れ方向に著しく配向する挙動を示し、一般に溶融型液晶(サーモトロピック液晶)ポリマーと呼ばれている。この特異的な挙動のため、溶融流動性が極めて優れ、0.2〜0.5mm程度の薄肉成形品を容易に得ることができ、しかもこの成形品は高強度、高剛性を示すという長所を有している。しかし、異方性が極めて大きいという欠点がある。さらに制振性能も充分ではなく、成形加工温度も高いため用途が限られていた。また、液晶ポリエステルは一般に高価であることも問題であった。
【0003】
液晶ポリエステルの優れた耐熱性、機械的性質を保持し、制振性能、成形品の異方性が改良され、かつ安価な液晶ポリエステル樹脂組成物は強く市場から要望されていた。
【0004】
特開昭56−115357号公報には、溶融加工可能な重合体と異方性溶融体形成性重合体とを含む樹脂組成物が開示され、溶融加工可能な重合体に異方性溶融体形成性重合体を加えることにより、溶融加工可能な重合体の加工性を改良できることが記載されている。例えば、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン混合物に液晶ポリエステルを加えた例などが挙げられている。
【0005】
また特開平2−97555号公報にハンダ耐熱性を向上させる目的で液晶ポリエステルに各種のポリアリーレンオキサイドを配合した樹脂組成物が記載されている。
しかしながら、一般に成形温度の高い液晶ポリエステルに、それより成形温度の低いポリフェニレンエーテルなどの非晶性高分子を配合してなる組成物は、組成物の溶融加工性は向上しても、高温での成形加工の際の配合樹脂の熱分解のために成形品の外観不良が生じるという問題があった。また、該組成物の耐熱性、機械的性質、耐衝撃性などが不充分であるという問題点があった。
【0006】
また、特開昭57─40551号公報、特開平2─102257号公報などに液晶ポリエステルと芳香族ポリカーボネートからなる組成物が開示されているが、それらは耐熱性や機械的性質などが充分なものではなかった。
米国特許第5216073号明細書には液晶ポリマーにエポキシ化ゴムを配合して成るブレンドについて開示されているが、それらの耐熱性、機械的性質も充分なものではなかった。
【0007】
また、特開昭58−201850号公報、特開平1−121357号公報、特開平1−193351号公報、EP67272/A2号公報などに液晶性高分子に熱可塑性樹脂を配合してなる組成物が記載されているが、いずれも十分な物性を発現するには至っていない。
【0008】
一方、フィルム原料という観点からは、液晶ポリエステルは、一般的に溶融型液晶(サーモトロピック液晶)ポリマーと呼ばれ、強い分子間相互作用によって溶融状態で分子が配向することを特徴とするポリエステルであり、その強い分子間相互作用、分子配向のために、液晶ポリエステルについてよく知られる高強度、高弾性率、高耐熱性といった性能に加えて、ガスバリア性等の機能を持ったフィルム材料としての工業化が期待されてきた。
【0009】
しかし、液晶ポリエステルはポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートのような芳香族ポリエステルと異なって分子が剛直なために溶融状態でも絡み合いを起こさず、分子鎖が流れ方向に著しく配向するので、わずかなせん断によっても溶融粘度が急に低下する挙動を示したり、温度上昇によって急激に溶融粘度が低下し、溶融時のメルトテンションが極端に低いといった挙動を示す。そのため、溶融状態で形状を保つのが非常に難しく、さらに、分子が配向していることで縦横の性能バランスが取りにくくて極端な場合には分子配向方向に裂けてしまうことから、フィルム成形、ブロー成形などの分野での実用性に乏しいという大きな問題があった。そのため、液晶ポリエステルの機能を生かした液晶ポリエステルからなるフィルムは充分実用化されるには至っていなかった。
【0010】
このような液晶ポリエステルに関して、特開昭52−109578号公報や特開昭58−317187号公報には、一軸に配向した液晶ポリエステルフィルムを、強度の異方性を打ち消す方向に張り合わせた積層体が開示されているが、生産性が悪く、さらにフィルム剥離の問題がある。
【0011】
米国特許第4975312号明細書、WO9015706号公報などにはリングダイを回転させる方法で液晶ポリエステルの異方性を打ち消す工夫が、また特開昭63−95930号公、特開昭63−242513号公報には、Tダイ法における特殊な工夫が提案されている。しかしこれらはいずれも非常に特殊な成形法によって分子配向による異方性を緩和する方法を示したものあり、コスト高で薄膜化に限界があり、実用性に乏しいという欠点がある。
【0012】
また、特開昭62−187033号公報、特開昭64−69323号公報、特開平2−178016号公報、特開平2−253919号公報、特開平2−253920号公報、特開平2−253949号公報、特開平2−253950号公報には液晶ポリエステルと熱可塑性樹脂との多層(積層)シート、多層(積層)フィルムが提案されているが、層間に接着層が介在することにより剥がれが生じたり、液晶ポリエステルの本来持つガスバリア性、耐熱性などの性能の低下や薄いフィルムの製造が困難であるという問題がある。
【0013】
一方、液晶高分子の異方性が緩和され、しかも高強度の液晶ポリエステルフィルムを得るためにインフレーション成膜が試みられている。
インフレーション成膜とは、押出機内で溶融混練された樹脂を、環状のスリットをもつダイを用いて筒状溶融体を押出し、その中へ一定量の空気を送入し、膨張させ、フィルムの円周を冷却させながら筒状のフィルムを作る方法をいう。
【0014】
その例として例えば、特開昭63−173620号公報、特開平3−288623号公報、特開平4−4126号公報、特開平4−50233号公報または特開平4−49026号公報などには、液晶ポリエステルをインフレーション成膜する方法が記載されているが、いずれも特殊な成膜装置を使用したインフレーション成膜であったり、構造が限定された液晶ポリエステルを対象とするものであったり、または極めて限定された条件下でのインフレーション成膜であり、汎用性のある成膜方法ではなかった。
【0015】
一方、特開昭61−73731号公報には、液晶ポリエステルにフェニレンビスオキサゾリンを反応させ、液晶ポリエステルに柔軟性を付与する方法が記載されている。
特開平4−85325号公報には、液晶ポリエステルとビスオキサゾリン系化合物との反応物を溶融押出ししてフィルムを得る製法に関して開示されている。
特開平5−140422号公報には、液晶ポリエステル、異方性溶融相を形成しない熱可塑性樹脂にビスオキサゾリン化合物を配合してなる組成物が開示されている。
しかし、これらのオキサゾリン化合物を配合した系は、液晶ポリエステルとの溶融押出しの際にオキサゾリン化合物が蒸散して物性が不安定となったり、また機械的性質が不十分であったり、成膜加工性が必ずしも良好でなく、市場の要求を満足させるには至らなかった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高強度で、異方性が少なく、優れたガスバリア性を有し、しかも安価で成膜も容易な液晶ポリエステル樹脂組成物および該組成物よりなるフィルムを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような問題を解決すべく鋭意検討を続け本発明に到達した。即ち本発明は、(A)液晶ポリエステルおよび(B)オキサゾニル基含有重合体からなり、成分(A)と成分(B)の比率が、成分(A)が99.9〜0.1重量%、成分(B)が0.1〜99.9重量%である液晶ポリエステル樹脂組成物、並びに、Tダイから溶融押出しされた該液晶ポリエステル樹脂組成物を一軸延伸あるいは二軸延伸して得られるフィルム、および該液晶ポリエステル樹脂組成物をインフレーション成形して得られるフィルムに係るものである。
次に、本発明を詳細に説明する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明における液晶ポリエステル樹脂組成物の成分(A)の液晶ポリエステルは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルである。
具体的には、
【0019】
(1)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸との組み合わせからなるもの、
(2)異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸の組み合わせからなるもの、
(3)芳香族ジカルボン酸と核置換芳香族ジオールとの組み合わせからなるもの、
(4)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるもの
【0020】
などが挙げられ、400℃以下の温度で異方性溶融体を形成するものである。なお、これらの芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシカルボン酸の代わりに、それらのエステル形成性誘導体が使用されることもある。該液晶ポリエステルの繰返し構造単位としては下記のものを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位:
【化8】
【0022】
【化9】
【0023】
芳香族ジオールに由来する繰返し構造単位:
【化10】
【0024】
【化11】
【0025】
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し構造単位:
【化12】
【0026】
耐熱性、機械的特性、加工性のバランスから特に好ましい液晶ポリエステルは
【化13】
なる繰り返し構造単位を、好ましくは30モル%以上、含むものであり、具体的には繰り返し構造単位の組み合わせが下記(I)〜(VI)のものである。
【0027】
【化14】
【0028】
【化15】
【0029】
【化16】
【0030】
【化17】
【0031】
【化18】
【0032】
【化19】
【0033】
該液晶ポリエステル(I)〜(VI)の製法等については、例えば特公昭47−47870号公報、特公昭63−3888号公報、特公昭63−3891号公報、特公昭56−18016号公報、特公平2−51523号公報などに記載されている。これらの中で好ましくは(I)、(II)、(IV)の組合せであり、さらに好ましくは(I)、(II)の組み合せである。
【0034】
本発明における液晶ポリエステル樹脂組成物において、高い耐熱性が要求される分野には成分(A)の液晶ポリエステルが、下記の繰り返し単位(a’)が30〜80モル%、繰り返し単位(b’)が0〜10モル%、繰り返し単位(c’)が10〜25モル%、繰り返し単位(d’)が10〜35モル%からなる液晶ポリエステルが好ましく使用される。
【0035】
【化20】
(式中、Arは2価の芳香族基である。)
【0036】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物における成分(B)はオキサゾニル基含有重合体である。オキサゾニル基含有重合体は、例えば、オキサゾニル基含有不飽和単量体とビニルモノマーとの共重合、あるいはオキサゾニル基含有不飽和単量体と、液晶ポリエステルおよび液晶ポリエステル樹脂組成物を除く熱可塑性樹脂とのグラフト共重合により得ることができる。
【0037】
オキサゾニル基含有不飽和単量体の例としては、下記一般式で表される化合物を例示できる。
【0038】
【化21】
式中、R1 〜R4 は各々水素原子または炭素原子数1〜20のアルキル基を表わし、R1 〜R4 は同一でも異なっていてもよい。R1 〜R4 は各々水素原子が好ましい。
【0039】
また式中、Xは共重合可能な二重結合を有する基である。具体例としては、下記の構造などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化22】
(式中、R5 はそれぞれの場合に、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数1〜6のアルコキシル基である。)
【0040】
これらの中では、
【化23】
で表される構造が好ましい。また、R5 は水素原子、メチル基であるものがさらに好ましい。
【0041】
該オキサゾニル基含有不飽和単量体と共重合させるビニルモノマーとしては、脂肪族ビニルモノマー、芳香族ビニルモノマー、シアン化ビニル系モノマーなどが用いられる。
【0042】
芳香族ビニルモノマーの具体例としては、スチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−メトキシスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−ジビニルベンゼン、p−(クロロメトキシ)−スチレン、α−メチルスチレン、o−メチル−α−メチルスチレン、m−メチル−α−メチルスチレン,p−メチル−α−メチルスチレン、p−メトキシ−α−メチルスチレンなどが挙げられる。シアン化ビニル系モノマーの具体例としては、例えばアクリロニトリル等が好ましく用いられる。これらは単独または2種以上混合して用いることができ、例えばオキサゾニル基含有不飽和単量体と芳香族ビニルモノマーを共重合させたり、オキサゾニル基含有不飽和単量体と芳香族ビニルモノマーおよびシアン化ビニル系モノマーを共重合させて用いることができる。これらのモノマーの中でもスチレンおよび/またはアクリロニトリルが好ましく用いられる。また、必要に応じて少量のα,β−不飽和カルボン酸エステルを共重合させることもできる。
【0043】
オキサゾニル基含有不飽和単量体とグラフト共重合させる熱可塑性樹脂は、液晶ポリエステルおよび液晶ポリエステル樹脂組成物以外であれば、特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−メチルメタクリレート−アクリロニトリル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、AES樹脂、ポリ塩化ビニル、あるいはポリカーポネート、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのエンジニアリングプラスチックを挙げることができる。
中でもポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体が好ましい。
【0044】
本発明の成分(B)のオキサゾニル基含有共重合体の製法は特に限定するものではなく、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合など一般に知られている方法が用いられる。
【0045】
オキサゾニル基含有不飽和単量体とビニルモノマーとの共重合においては、共重合体成分モノマーの一部または全部を分割仕込み、あるいは連続仕込みしながら重合してもよい。
また、オキサゾニル基含有不飽和単量体を熱可塑性樹脂にグラフト共重合させる際、押出機を使用して樹脂を溶融混練しながらグラフト共重合させることもできる。
【0046】
本発明に使用する液晶ポリエステル樹脂組成物における成分(A)と成分(B)の比率は、成分(A)が99.9〜0.1重量%、好ましくは99.9〜55.0重量%、成分(B)が0.1〜99.9重量%、好ましくは0.1〜45.0重量%である。
成分(A)が0.1重量%未満であると該組成物の耐熱性が低下して好ましくない。また成分(A)が99.9重量%を超えると該組成物の成膜性の改良効果が充分でない場合があり、価格的にも高価なものとなり好ましくない。
【0047】
本発明における液晶ポリエステル樹脂組成物を製造する方法に特に制限はなく、周知の方法を用いることができる。たとえば、溶液状態で各成分を混合し、溶剤を蒸発させるか、溶剤中に沈殿させる方法が挙げられる。工業的見地からみると溶融状態で各成分を混練する方法が好ましい。溶融混練には一般に使用されている一軸または二軸の押出機、各種のニーダー等の混練装置を用いることができる。特に二軸の高混練機が好ましい。
溶融混練に際しては、混練装置のシリンダー設定温度は200〜360℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは230〜350℃である。
【0048】
混練に際しては、各成分は予めタンブラーもしくはヘンシェルミキサーのような装置で各成分を均一に混合してもよいし、必要な場合には混合を省き、混練装置にそれぞれ別個に定量供給する方法も用いることができる。
【0049】
本発明に使用する液晶ポリエステル樹脂組成物においては、所望により無機充填剤が用いられる。このような無機充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ、石膏、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウム繊維等が例示される。
【0050】
本発明に使用する液晶ポリエステル樹脂組成物に、必要に応じて、さらに、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、無機または有機系着色剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂などの離型改良剤などの各種の添加剤を製造工程中あるいはその後の加工工程において添加することができる。
【0051】
通常、上記の方法で得られた液晶ポリエステル樹脂組成物を押出機で溶融混練し、口金(ダイ)を通して押出した溶融樹脂を引き取ることによって、液晶ポリエステル樹脂組成物フィルムを得ることができるが、予め混練の過程を経ず、成形時に各成分をドライブレンドして溶融加工操作中に混練して樹脂組成物とし、直接成形加工品を得ることもできる。口金(ダイ)は通常T型ダイ(以下、Tダイということがある)あるいは環状スリットのダイを用いることができる。
【0052】
Tダイを用いたフィルム成形の場合、押出機によって溶融混練された液晶ポリエステル樹脂組成物は、通常下向きのTダイを通過して、シート状の溶融体となり、次に圧着ロールを通して長手方向に引取り装置で、巻き取られる。
【0053】
このような成膜時における押出機の設定条件は、組成物の組成物に応じて適宜選ばれるが、押出機のシリンダーの設定温度は200〜360℃の範囲が好ましく、230〜350℃の範囲がさらに好ましい。この範囲外であると、組成物の熱分解が生じたり、成膜が困難となる場合があり好ましくない。
【0054】
Tダイのスリット間隙は0.2〜1.5mmが好ましい。本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物フィルムの厚みは1〜1000μmの範囲で制御可能であるが、5〜100μmのものが実用上多く用いられ好ましい。本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物フィルムのドラフト比は通常1.1〜45の範囲のものであり、好ましくは10〜40、さらに好ましくは15〜35である。また、Tダイから押出された該樹脂組成物の二軸延伸フィルムも得ることができる。
【0055】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物フィルムの製造における二軸延伸の方法に特に制限はないが、具体的には押出機のTダイから押し出した本発明の組成物の溶融物をMD方向(長手方向)に一軸延伸し、それからTD方向(横手方向)に延伸する逐次延伸、Tダイから押出したシートをMD、TD方向同時に延伸する同時延伸、さらにはTダイから押出した未延伸シートを二軸延伸機、テンター等により逐次、または、同時延伸するなどの二軸延伸の方法も挙げられる。
【0056】
どの方法による場合でも、成膜温度は本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物の流動開始温度マイナス60℃以上、流動開始温度プラス60℃以下の温度範囲が好ましいが、流動開始温度以上、流動開始温度プラス30℃以下の温度範囲で成膜加工されることがさらに好ましい。
【0057】
また、Tダイのスリット間隔は0.2mm〜1.5mmが好ましい。延伸倍率は、成形法により適当な値が決められるが、たとえば、二軸延伸機で延伸する場合、延伸倍率を(延伸後の長さ/元の長さ)で定義すると、MD延伸方向、TD方向のそれぞれの方向の延伸比は1.2〜20、好ましくは1.5〜5.0が用いられる。延伸倍率が1.2より小さいと延伸効果が小さく、20より大きいとフィルムの平滑性が不十分な場合がある。
【0058】
環状スリットのダイを使用するインフレーション成膜の場合、得られた液晶ポリエステル樹脂組成物は、環状スリットのダイを備えた溶融混練押出機に供給され、シリンダー設定温度200〜360℃、好ましくは230〜350℃で溶融混練を行って押出機の環状スリットから筒状フィルムは上方または下方へ溶融樹脂が押し出される。環状スリット間隔は通常0.1〜5mm、好ましくは0.2〜2mm、環状スリットの直径は通常20〜1000mm、好ましくは25〜600mmである。
【0059】
溶融押出された筒状の溶融樹脂フィルムに、長手方向(MD)にドラフトをかけると共に、この筒状フィルムの内側から空気または不活性ガス、例えば窒素ガス等を吹き込むにより長手方向と直角な横手方向(TD)にフィルムを膨張延伸させることができる。
本発明における液晶ポリエステル樹脂組成物のインフーション成形(成膜)において、好ましいブロー比は、1.5〜15、さらに好ましくは2.5〜15である。好ましいMD延伸倍率は1.5〜40であり、さらに好ましくは2.5〜30である。
インフレーション成膜時の設定条件が上記の範囲外であると厚さが均一でしわのない高強度の液晶ポリエステル樹脂組成物フィルムを得るのが困難となり好ましくない。
膨張させたフィルムは、その円周を空冷、あるいは水冷させたのち、ニップロールを通過させて引き取る。
【0060】
インフレーション成膜に際しては液晶ポリエステル樹脂組成物の組成に応じて、筒状の溶融体フィルムが均一な厚みで表面平滑な状態に膨張するような条件を選択することができる。
【0061】
本発明により得られる液晶ポリエステル樹脂組成物フィルムの膜厚は特に制限されないが、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは1〜200μmである。
【0062】
液晶ポリエステル樹脂組成物フィルムと液晶ポリエステルおよび液晶ポリエステル樹脂組成物を除く熱可塑性樹脂フィルムとを、積層したフィルムも本発明に含まれる。
ここでいう液晶ポリエステルおよび液晶ポリエステル樹脂組成物を除く熱可塑性樹脂は、特に限定するものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレンの如きポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートの如きポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルサルホン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂などが好ましく用いられる。これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリエチレンテレフタレートがさらに好ましい。熱可塑性樹脂としては1種、または2種以上のものを混合してフィルム化することができる。本発明における熱可塑性樹脂は、分子鎖に官能基を導入し、変性した熱可塑性樹脂も含まれる。
【0063】
該積層フィルムの製造方法は特に限定するものではないが、Tダイあるいは環状ダイを使用し、各構成成分の溶融体樹脂を、ダイ内部で重ね合わせる方法、あるいは各溶融体樹脂をダイの手前で重ね合わせたのちダイから押し出す方法などを挙げることができ、目的に応じて製造方法を選択することができる。
【0064】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、これらは単なる例示であり、本発明はこれらに限定されることはない。
(1)成分(A)の液晶ポリエステル
(i)p−アセトキシ安息香酸10.8kg(60モル)、テレフタル酸2.49kg(15モル)、イソフタル酸0.83kg(5モル)および4,4’−ジアセトキシジフェニル5.45kg(20.2モル)を櫛型撹拌翼をもつ重合槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら昇温し330℃で1時間重合させた。この間に副生する酢酸を除去しながら、強力な撹拌下で重合させた。その後、系を徐々に冷却し、200℃で得られたポリマーを系外へ取出した。この得られたポリマーを細川ミクロン(株)製のハンマーミルで粉砕し、2.5mm以下の粒子とした。これを更にロータリーキルン中で窒素ガス雰囲気下に280℃で3時間処理することによって、流動温度が324℃の粒子状の下記の繰り返し構造単位からなる全芳香族ポリエステルを得た。
ここで、流動温度とは、島津社製高化式フローテスターCFT−500型を用いて、4℃/分の昇温速度で加熱された樹脂を、荷重100kgf/cm2 のもとで、内径1mm、長さ10mmのノズルから押し出すときに、溶融粘度が48000ポイズを示す温度のことをいう。
以下該液晶ポリエステルをA−1と略記する。このポリマーは加圧下で340℃以上で光学異方性を示した。液晶ポリエステルA−1の繰り返し構造単位は、次の通りである。
【0065】
【化24】
【0066】
(ii)p−ヒドロキシ安息香酸16.6kg(12.1モル)と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸8.4kg(4.5モル)および無水酢酸18.6kg(18.2モル)を櫛型撹拌翼付きの重合槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら昇温し、320℃で1時間、そしてさらに2.0torrの減圧下に320℃で1時間重合させた。この間に、副生する酢酸を系外へ留出し続けた。その後、系を除々に冷却し、180℃で得られたポリマーを系外へ取出した。
この得られたポリマーを前記の(i)と同様に粉砕したあと、ロータリーキルン中で窒素ガス雰囲気下に240℃で5時間処理することによって、流動温度が270℃の粒子状の下記の繰り返し単位からなる全芳香族ポリエステルを得た。以下該液晶ポリエステルをA−2と略記する。このポリマーは加圧下で280℃以上で光学異方性を示した。
液晶ポリエステルA−2の繰り返し構造単位の比率は次の通りである。
【0067】
【化25】
【0068】
(iii)ポリエチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸を主原料とするユニチカ(株)製、液晶ポリエステル ロッドラン LC−3000を略称A−3として用いた。
【0069】
(2)成分(B)のオキサゾニル基含有重合体
略称:B−1 オキサゾリン成分5重量%含有ポリスチレン
(株)日本触媒製、商品名 RPS−1005
数平均分子量=70000
【0070】
略称:B−2 オキサゾリン成分1重量%含有ポリスチレン
(株)日本触媒製、商品名 RPS−1001
数平均分子量=70000
【0071】
略称:B−3 ビニルオキサゾリン/スチレン/アクリロニトリル
=5/70/25(重量比)よりなる共重合体
(株)日本触媒製、商品名 RAS−1005
数平均分子量=50000
【0072】
(3)射出成形品の物性の測定方法
ウェルド部強度、非ウェルド部強度:本発明の組成物から図1で示す試験片を成形した。この試験片は厚み3mm、外寸64mm、内寸38mmであった。これから図1に示すウェルドラインを含む斜線部(64×13mm)を切り出し、スパン間距離40mm、曲げ速度2mm/分で曲げ強度を測定した。また、同一の形状の試験片から非ウェルド部(64×13mm)を切り出し、同様にして曲げ強度を測定した。
【0073】
(4)フィルム物性の測定方法
得られた液晶ポリエステル樹脂組成物フィルムに関し、以下の要領で物性測定を行った。
【0074】
引張り強度:ASTM D882に準じてMD方向、TD方向の引張り強度を測定した。
【0075】
酸素ガス透過率:JIS K7126 A法(差圧法)に従って、温度20℃で酸素ガスを用いて測定した。単位はcc/m2 ・24hr・1atmである。
水蒸気透過率:JIS Z0208 (カップ法)に従って、温度40℃、相対湿度90%の条件で測定した。単位はg/m2 ・24hr・1atmである。
なお、酸素ガス透過率、水蒸気透過率は膜厚みを25μmに換算して求めた。
【0076】
実施例1〜3、比較例1〜5
(a)射出成形
表1の組成で各成分をヘンシェルミキサーで混合したのち、日本製鋼(株)製、TEX−30型二軸押出機を用いて、表2の条件で溶融混練し、樹脂組成物のペレットを得た。射出成形試験片は、日精樹脂工業(株)製、PS40E5ASE型射出成形機を用いて、表2の条件で射出成形して作製し、ウェルド強度測定に供した。結果は表1に示すとおりである。
【0077】
(b)フィルム成形
表1の組成で得られた組成物のペレットを円筒ダイを備えた30mmφの単軸押出機を用い、表2に記載のシリンダー設定温度、回転数50rpmで溶融混練し、直径50mm、リップ間隔1.5mm、表2に記載のダイ設定温度の円筒ダイから上方へ溶融樹脂を押出し、この筒状フィルムの中空部へ乾燥空気を圧入して筒状フィルムを膨張させ、次に冷却させたのちニップロールに通して引取速度15m/minで引取り、表1記載の厚さの液晶ポリエステル樹脂組成物フィルムを得た。
該液晶ポリエステル樹脂組成物フィルムの引取方向(MD方向)、引取方向に垂直方向(TD方向)の延伸倍率は、圧入する乾燥空気量、フィルム引取速度により制御した。この際、MD方向の延伸比及びTD方向のブロー比の値を表2に示す。得られた液晶ポリエステル樹脂組成物フィルムの物性値を表1に示す。
【0078】
実施例4および比較例6、7
(a)射出成形
実施例1と同様にして表3の条件で溶融混練及び射出成形を行い、評価した。結果は表1に示すとおりである。
【0079】
(b)フィルム成形
混練して得られた組成物ペレットを20mmφの一軸押出機(田辺プラスティックス機械(株)製)に試料を供給し、シリンダー設定温度285℃、ダイス設定温度285℃、スクリュー回転数20rpm、幅100mm、スリット間隔0.8mmとしたTダイより押し出してキャストロールで引き取り、未延伸フィルムを作った。そのフィルムについて、二軸延伸試験装置(東洋精機製)によって、延伸温度を流動開始温度+20℃にし、延伸倍率(MD×TD)を1.9×1.9として同時二軸延伸し、その試料について表1に示す厚さのフィルムを得、物性測定を行った。評価結果を表1に記した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【発明の効果】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物フィルムは、成形加工性、機械的性質などに優れ、しかも安価で異方性、成膜加工性も改良され、ガスバリア性も非常に良好である。このような特性を生かして、成形品、容器、チューブ、ミート、繊維、コーティング材、電子材料包装フィルムなどに幅広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ウェルド部強度、非ウェルド部強度測定用の試験片の形状を示す図。
【符号の説明】
1.ウェルドライン。
2.切り出し部。
3.ゲート。
Claims (13)
- 成分(A)と成分(B)の比率が、成分(A)99.9〜55.0重量%、成分(B)が0.1〜45.0重量%である請求項1記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
- オキサゾニル基含有重合体が、オキサゾニル基含有不飽和単量体と、芳香族ビニルモノマーもしくは芳香族ビニルモノマーとシアン化ビニル系モノマーの混合物との共重合で得られる共重合体、またはオキサゾニル基含有不飽和単量体と、液晶ポリエステルおよび液晶ポリエステル樹脂組成物を除く熱可塑性樹脂とのグラフト共重合により得られるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
- 液晶ポリエステル(A)が、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを反応させて得られるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
- 液晶ポリエステル(A)が、異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸の組合せを反応させて得られるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
- Tダイから溶融押出しされた請求項1〜11のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物を一軸延伸あるいは二軸延伸して得られるフィルム。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物をインフレーション成形して得られるフィルム。
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