JP3637286B2 - 焼成ジルコニア基材用導体ペースト - Google Patents

焼成ジルコニア基材用導体ペースト Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼成ジルコニア基材に導体膜を形成するための導体ペーストに関する。
【0002】
【従来の技術】
ハイブリッドIC、マルチチップモジュール等を構築するのに用いられるセラミック配線基板その他のセラミック電子部品等に所定パターンの導体膜(配線、電極等)を形成する材料として導体ペーストが使用されている。この導体ペーストは、導体を形成する主成分たる金属粉末と必要に応じて添加される種々の添加剤(無機結合剤、ガラスフリット、フィラー等)とを所定の有機媒質(ビヒクル)に分散させることにより調製される導体形成材料である。
かかる導体ペーストは、スクリーン印刷等の一般的な手法により、あらかじめ焼成されたセラミック基材等に印刷・塗布される。次いで、当該塗布物(塗膜)を適当な温度で焼成する(焼き付ける)ことにより、当該セラミック基材等のセラミック電子部品上に所定パターンの導体膜が形成される。
このような導体ペーストとして典型的なものに、上記金属粉末として銀(Ag)を主体に構成されたものがある(以下「Agペースト」と略称する。)。Ag粉末は金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等と比較して安価に入手できるものであり、さらに電気的抵抗度も低い。このため、Agペーストは各種電子部品に導体膜を形成する用途に広く使用されている。
【0003】
他方、上記セラミック基材は、セラミック電子部品の用途等に応じて様々なものが用いられる。代表的な基材としては、アルミナ、ジルコニア、PZT(ジルコンチタン酸鉛)、チタン酸バリウム(BaTiO)等を焼成して得たセラミック基材(以下、「焼成セラミック基材」という。)が挙げられる。
そして、これらの基材に導体膜を形成するにあたっては、セラミック基材の種類(材質)や用途に応じて、種々の導体ペーストから好適なものを選択して使用している。例えばAgその他の貴金属を導体形成主成分(導電性粉末)とする導体ペースト(Agペースト等)は、その組成に応じて種々のタイプの焼成アルミナ基板等に使い分けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、焼成ジルコニア基材上に機械的強度の高い導体膜を形成し得る導体ペーストを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ペーストに配合する金属酸化物およびガラス質粉末(ガラスフリット)の組み合わせや組成、導電性粉末の粒径等の条件を検討することにより、焼成ジルコニア基材に対して実用上十分な性能を示す導体膜を形成し得る導体ペーストを見出して本発明を完成した。
【0007】
本発明によると、焼成ジルコニア基材に導体膜を形成するための導体ペーストであって、
貴金属または貴金属を主体とする合金からなる導電性粉末と、
酸化ビスマスを主体とする金属酸化物粉末と、
ホウケイ酸亜鉛ビスマス系ガラスを主体とするガラス質粉末と、
有機ビヒクルと、
を含有する焼成ジルコニア基材用導体ペーストが提供される。
本発明の導体ペーストは、上記ガラス質粉末と金属酸化物粉末とを配合した結果、焼成ジルコニア基材に導体膜を形成する用途において実用上十分な機械的強度(例えば、基材に対する接着強度)を有する導体膜を形成することができる。
【0008】
かかる構成のペーストとして好ましいものは、前記金属酸化物粉末が、酸化銅、酸化鉛、酸化マンガン及び酸化ニッケルから成る群から選択される一種又は二種以上の金属酸化物を含むものである。これら金属酸化物粉末を酸化ビスマスと組み合わせることによって、焼成ジルコニア基材に対する導体膜の接着強度をさらに高めることができる。また、前記金属酸化物粉末は、少なくとも酸化ビスマスおよび酸化銅を含むことが好ましく、少なくとも酸化ビスマス、酸化銅および酸化鉛を含むことがさらに好ましい。
【0009】
また、前記ホウケイ酸亜鉛ビスマス系ガラスは、以下の重量割合:
15〜40%;
ZnO 5〜25%;
Bi 15〜70%;
SiO 1〜10%;
酸化銅、酸化マンガン、酸化鉛、酸化ナトリウム、酸化カリウム,酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の酸化物 0〜10%;
の各酸化物を構成要素とするものであることが好ましい。
本構成の導体ペーストによると、焼成ジルコニア基材に形成された導体膜の機械的強度(例えば基材に対する接着強度)をより向上させることができる。
【0010】
そして、本発明の導体ペーストとして特に好ましいものは、前記導電性粉末が平均粒径0.1〜0.5μmの主粉末と平均粒径0.5〜1.0μmの副粉末とを混合して調製されたものであり、
その主粉末の含有率は導電性粉末全体の60wt%以上であり、副粉末の含有率は導電性粉末全体の40wt%以下であるものである。
本構成のペーストによると、高充填率すなわち緻密構造の導体膜を形成することができる。このため、機械的強度とともに電気的特性にも優れる導体膜を、焼成ジルコニア基材上に形成することができる。
【0011】
また、本発明によると、焼成ジルコニア基材に導体膜を形成するための導体ペースト調製用の粉末材料であって、
貴金属または貴金属を主体とする合金からなる導電性粉末と、
酸化ビスマスを主体とする金属酸化物粉末と、
ホウケイ酸亜鉛ビスマス系ガラスを主体とするガラス質粉末と、
を主成分とする焼成ジルコニア基材用導体ペースト調製用粉末材料が提供される。
このような粉末材料を用いることにより、本発明の焼成ジルコニア基材用導体ペーストを容易に調製することができる。
【0012】
さらに、上記目的の実現にかかる本発明の一側面として、導体膜が形成されたジルコニア基材を含むセラミック電子部品を製造する方法であって、
(a)貴金属または貴金属を主体とする合金からなる導電性粉末と、酸化ビスマスを主体とする金属酸化物粉末と、ホウケイ酸亜鉛ビスマス系ガラスを主体とするガラス質粉末と、有機ビヒクルと、を含有する導体ペーストを焼成ジルコニア基材に塗布する工程と、
(b)その塗布されたペースト主成分を焼成する工程とを包含するセラミック電子部品製造方法が提供される。
この製造方法では、上述した本発明の導体ペーストを使用する結果、焼成ジルコニア基材上に、実用上十分なレベルの機械的強度を有する導体膜を形成することができる。したがって、本製造方法によると、信頼性の高いジルコニア電子材料を有する電子部品を製造することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明における「導電性粉末」としては、コスト安や電気的抵抗の低さ等の観点から、銀または銀主体の合金(Ag−Pd合金等)からなる粉末が好ましい。ただし、銀以外の貴金属または銀以外の貴金属主体の合金からなる導電性粉末を用いることもできる。かかる貴金属もしくは貴金属を主体とする合金としては、Pd,Pt,Auおよびこれらの合金(Pt−Pd合金等)、ならびにこれら貴金属と他の金属との合金等が挙げられる。また、比較的微小な平均粒径(例えば2μm以下、好ましくは1μm以下)を有しかつ粒径10μm以上(特に好ましくは粒径5μm以上)の粒子を実質的に含まないような導電性粉末が好ましく用いられる。この導電性粉末の粒子形状は特に限定されず、麟片状、円錐状、棒状のもの等も使用できるが、充填性がよく緻密な導体膜を形成しやすい等の理由から、球状の粒子を用いることが好ましい。
【0014】
また、本発明の導体ペーストに用いられる上記導電性粉末として、以下の二つの平均粒径の粉末:
(1)平均粒径が0.5〜1.0μmの範囲にある粉末;
(2)平均粒径が0.1〜0.5μmの範囲にある粉末;
を所定の配合比で混合したものは、充填率の向上すなわち高密度導体膜を形成するという観点から好ましい。典型的には、上記(1)の粉末(主粉末)と上記(2)の粉末との混合比を60:40〜90:10とする。かかる粒度配合とすることで、高密度充填構造の導体膜を形成することができる。上記混合比が65:35〜75:25となる粒度配合が特に好ましい。また、かかる充填率の向上の観点からは、主粉末及び副粉末として使用する導電性粉末はそれぞれ粒度分布のシャープなものが好ましい。シャープな(狭い)粒度分布のものほど適正な粒度配合をより正確に行うことができるからである。特に限定するものではないが、全体の略70%又はそれ以上の粒子が平均粒径の60〜140%の粒径範囲(好ましくは当該平均粒径の80〜120%の粒径範囲)に属するようなシャープな粒度分布のものが望ましい。このように粒径が異なる導電性粉末を併用することにより、得られる導体膜がより緻密なものとなりやすく、ひいてはこの導体膜の焼成ジルコニア基材への接着強度を向上させることができる。
【0015】
本発明における「金属酸化物粉末」は、酸化ビスマス(Bi)を必須成分とし、好ましくは酸化銅(CuO,CuO)、酸化鉛(Pb)、酸化マンガン(MnO,MnO,Mn,Mn)および酸化ニッケル(NiO)からなる群から選択される一種または二種以上が添加される。ガラス質粉末として後述するホウケイ酸亜鉛ビスマス系ガラスを含むペースト組成において、かかる構成の金属酸化物粉末を用いることにより、焼成ジルコニア基材への接着強度を改善する効果が得られる。この効果をさらに高めるためには、少なくとも酸化ビスマスおよび酸化銅を含む金属酸化物粉末を用いることが好ましく、少なくとも酸化ビスマス、酸化銅および酸化鉛を含む金属酸化物粉末を用いることがさらに好ましい。
【0016】
なお、本発明の導体ペーストに使用される金属酸化物粉末として酸化ビスマス、酸化銅および酸化鉛を用いる場合、当該粉末の全体重量に占める酸化ビスマス、酸化銅および酸化鉛の各々好ましい含有量は、酸化ビスマス10〜95wt%(より好ましくは40〜85wt%)、酸化銅1〜85wt%(より好ましくは10〜50wt%)、酸化鉛1〜60wt%(より好ましくは5〜30wt%)の範囲である。また、他の酸化物を添加する場合においては、使用される金属酸化物粉末の全体重量に占める酸化ビスマス、酸化銅および酸化鉛の合計重量が50wt%以上であることが好ましく、より好ましくは75wt%、さらに好ましくは90wt%以上である。
この金属酸化物粉末の形状としては、平均粒径が2μm以下(より好ましくは1μm以下)の粉末が好ましい。また、前記導電性粉末の平均粒径よりも、この金属酸化物粉末の平均粒径が小さいことが好ましい。
【0017】
本発明においてガラス質粉末として用いられる「ホウケイ酸亜鉛ビスマス系ガラス」は、B、ZnO、BiおよびSiOを必須構成要素とする。上記必須成分以外に、各種アルカリ金属酸化物、各種アルカリ土類金属酸化物、酸化銅、酸化マンガン、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム等の酸化物、あるいは各種ハロゲン化物等を含有することができる。このうち、酸化銅(CuO,CuO)、酸化マンガン(MnO,MnO,Mn,Mn)、酸化鉛(PbO,Pb等)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO),酸化リチウム(LiO)からなる群から選択される少なくとも一種の酸化物を含有することが好ましい。このような副成分を含有することにより、ガラス軟化点の調整、ガラス安定性の向上、ガラス強度の向上等の効果を得ることが可能である。なお、このガラス質粉末の好適な軟化点は導体ペーストの焼成温度等によって異なるが、例えば導体ペーストの焼成温度が600〜900℃である場合には、ガラス質粉末の軟化点が350〜650℃(より好ましくは400〜600℃)の範囲にあることが好ましい。
【0018】
これらの必須成分および副成分の好ましい含有量は、重量割合で、Bが15〜40%(より好ましくは20〜30%)、ZnOが5〜25%(より好ましくは10〜20%)、Biが15〜70%(より好ましくは35〜60%)、SiOが1〜10%(より好ましくは2〜10%)、上記副成分(例えば、酸化銅、酸化マンガン、酸化鉛、酸化ナトリウム、酸化カリウム,酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の酸化物)が0〜10%の範囲である。
上記ガラス質粉末の平均粒径は2μm以下(より好ましくは1μm以下)であることが好ましい。また、前記導電性粉末の平均粒径よりも、このガラス質粉末の平均粒径が小さいことが好ましい。
【0019】
本発明における「導体ペースト調製用粉末材料」は、上記導電性粉末、上記金属酸化物粉末、および上記ガラス質粉末を主成分とする。この粉末材料は、本発明のいずれかの目的を達成しうる限りにおいて、該主成分以外の無機粉末および/または有機粉末(後述する無機添加剤および有機添加剤のうち粉末状のもの等)を副成分として含有することができる。導体ペースト調製用粉末材料の全体に占める上記主成分の割合は80wt%以上であることが好ましく、90wt%以上であることがより好ましく、95wt%以上であることがさらに好ましい。
【0020】
上記導体ペースト調製用粉末材料を分散させる「有機ビヒクル」としては、従来の導体ペーストに用いられているもの等を特に制限なく使用することができる。例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等をベースとする有機バインダー;ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤、ブチルカルビトール等のエーテル系溶剤、エチレングリコール及びジエチレングリコール誘導体、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、ターピネオール等の高沸点有機溶媒等を用いることができる。
【0021】
本発明の導体ペーストおよび粉末材料には、本発明の目的を達成しうる限りにおいて、種々の無機添加剤および/または有機添加剤を副成分として含ませることができる。この無機添加剤の例としては、ガラス質その他のセラミック粉末、その他種々のフィラー等が挙げられる。また、有機添加剤の例としては、焼成ジルコニア基材との密着性向上を目的としたシリコン系、チタネート系及びアルミニウム系等の各種カップリング剤等が挙げられる。さらに、本発明の導体ペーストに光硬化性(感光性)を付与したい場合には、種々の光重合性化合物及び光重合開始剤を適宜添加してもよい。
なお、上記の他にも本発明の導体ペーストには、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、重合禁止剤等を適宜添加することができる。これら添加剤は、従来の導体ペーストの調製に用いられ得るものであればよく、詳細な説明は省略する。
【0022】
次に、本発明の導体ペーストを調製する際の操作について説明する。本発明の導体ペーストは、従来の導体ペーストと同様、典型的には上記導体ペースト調製用粉末材料と上記有機ビヒクルを混和することによって容易に調製することができる。なお、導電性粉末、金属酸化物、ガラス質粉末等を別々に有機ビヒクルに添加してもよい。このとき、必要に応じて上述したような添加剤を添加・混合するとよい。例えば、三本ロールミルその他の混練機を用いて、上記粉末材料および各種添加剤を有機ビヒクルとともに所定の配合比で直接混合し、相互に練り合わせることにより、本発明の導体ペーストが調製され得る。
【0023】
特に限定するものではないが、好ましくは、導体ペースト調製用粉末材料(すなわち、導電性粉末、金属酸化物粉末およびガラス質粉末の合量)の含有率がペースト全体の60〜95wt%となるように各材料を混練するのがよく、70〜90wt%となるように混練するのが特に好ましい。この粉末材料を構成する導電性粉末、金属酸化物粉末およびガラス質粉末の含有率は、それぞれペースト全体の40〜90wt%(より好ましくは50〜85%)、0.1〜5wt%(より好ましくは0.5〜2.5wt%)および0.5〜10wt%(より好ましくは2〜5wt%)とすることが好ましい。
また、有機ビヒクルの使用量は、ペースト全体のほぼ1〜40wt%となる量が適当であり、1〜20wt%となる量が特に好ましい。
なお、各成分の含有率に係る上記数値範囲は厳密に解釈すべきでなく、本発明の目的を達成し得る限りかかる範囲からの若干の逸脱を許容するものである。
【0024】
次に、本発明の導体ペーストを用いた導体膜形成に係る好適例について説明する。本発明の導体ペーストは、セラミック製の基材(焼成ジルコニア基板等)上に配線、電極等の膜状導体を形成するのに従来用いられてきた導体ペーストと同様に取り扱うことができ、従来公知の方法を特に制限なく採用することができる。典型的には、スクリーン印刷法やディスペンサー塗布法等によって、所望する形状・厚みとなるようにして導体ペーストを焼成ジルコニア基材に塗りつける。次いで、好ましくは乾燥後、加熱器中で適当な加熱条件(例えば、最高焼成温度が概ね500〜1000℃、好ましくは600〜900℃)で所定時間加熱することによって、その塗りつけられたペースト成分を焼成(焼き付け)・硬化させる。この一連の処理を行うことによって、目的の導体膜(配線、電極等)が形成されたセラミック電子部品(例えばハイブリッドICやマルチチップモジュールの構築用セラミック配線基板)が得られる。さらに、当該セラミック電子部品を組み立て材料として用いつつ従来公知の構築方法を適用することによってさらに高度なセラミック電子部品(例えばハイブリッドICやマルチチップモジュール)を得ることができる。なお、かかる構築方法自体は、特に本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
【0025】
本発明の導体ペーストによると、焼成ジルコニア基板表面に実用上十分な性能を有する導体膜を形成することができる。例えば、以下の方法で測定された導体膜のジルコニア基板に対する接着強度が9.8N(1.0kgf)/2mm角以上、好ましくは19.6N(2.0kgf)/2mm角以上、より好ましくは29.4N(3.0kgf)/2mm角以上、さらに好ましくは39.2N(4.0kgf)/2mm角以上であるような導体膜を形成することができる。あるいは、この方法で測定されたジルコニア基板に対する接着強度が9.8N(1.0kgf)/2mm角以上、好ましくは19.6N(2.0kgf)/2mm角以上、より好ましくは29.4N(3.0kgf)/2mm角以上、さらに好ましくは39.2N(4.0kgf)/2mm角以上であるような導体膜を形成することができる。
[接着強度測定方法]
基板に焼き付き形成された導体膜に評価用リード線を半田付けし、このリード線を基板の面方向とは垂直方向に所定の力で引っ張る。この引張強度試験試験において接合面が破壊(分断)された時の負荷から導体膜2mm角当たりの引張強度を算出し、これを導体膜の接着強度(N/2mm角)とする。
【0026】
【実施例】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0027】
<実施例1:本発明の導体ペーストの調製(1)>
本実施例では、導電性粉末として、平均粒径0.5〜1.0μmのAg粉末70wt%(使用するAg粉末全体に対する重量割合。以下同じ。)および平均粒径0.1〜0.5μmのAg粉末30wt%を使用した。また、このAg粉末全体を100wt%として、金属酸化物粉末としてのBi、CuOおよびPbを、それぞれ1wt%(使用する導電性粉末全体に対する重量割合。以下同じ。)、0.5wt%および0.5wt%の割合で使用した。金属酸化物粉末全体に対する各金属酸化物粉末の重量割合は、それぞれBi50wt%、CuO25wt%およびPb25wt%である。なお、各金属酸化物粉末の平均粒径はいずれも5〜10μmである。また、ガラス質粉末としては、Bを20wt%(使用するガラス質粉末全体に対する重量割合。以下同じ。)、ZnOを15wt%、Biを58%、SiOを5%、そしてMnOを2wt%の割合で含有する、平均粒径2μmのホウケイ酸亜鉛ビスマス系ガラス粉末を使用した。有機ビヒクルとしては、エチルセルロースをターピネオールに溶解させたものを用いた。この有機ビヒクルにおけるエチルセルロースの濃度は20wt%である。
これらの材料を、Ag粉末:85重量部、金属酸化物粉末:1〜2重量部、ガラス質粉末:4重量部、有機ビヒクル10重量部の割合となるように秤量し、三本ロールミルを用いて混練することにより、実施例1の導体ペーストを調製した。
【0028】
<実施例2:本発明の導体ペーストの調製(2)>
導電性粉末として平均粒径0.5〜1.0μmのAg粉末のみを使用し、かつ金属酸化物粉末としてBi23のみを使用した(すなわち、金属酸化物粉末全体に対するBi23の重量割合は100%)点以外は、実施例1と同様にして実施例2の導体ペーストを調製した。
【0029】
<比較例1:従来のアルミナ基板用導体ペーストの調製>
導電性粉末として、粒径1.0〜5.0μmのAg粉末70wt%および粒径0.1〜0.5μmのAg粉末30wt%を使用した。また、金属酸化物粉末としてはBiのみを使用し、ガラス質粉末としては一般的なホウケイ酸鉛ガラスを使用した。有機ビヒクルとしては、エチルセルロースをターピネオールに溶解させたものを用いた。この有機ビヒクルにおけるエチルセルロースの濃度は20wt%である。
これらの材料を、Ag粉末:85重量部、金属酸化物粉末:1〜2重量部、ガラス質粉末:4重量部、有機ビヒクル10重量部の割合で用い、実施例1と同様に混練することにより、比較例1の導体ペーストを調製した。
【0030】
<実施例3:導体ペーストの焼成および評価>
以上、各実施例および比較例で得た導体ペーストの概略の組成を表1に示す。
次に、上記得られた各ペーストを用いて、アルミナ基板およびジルコニア基板の表面にそれぞれ導体膜を形成した。すなわち、一般的なスクリーン印刷法に基づき、焼成後に得られる導体膜の目標厚さを5〜20μmとして、各基板の表面に各導体ペーストを塗布した。次いで、遠赤外線乾燥機を用いて、塗布された導体ペーストに100℃で15分間の乾燥処理を施した。その後、電気炉中において800℃で1時間の焼成処理を行うことにより、アルミナ基板およびジルコニア基板上にそれぞれ導体膜を形成した。
【0031】
次に、得られた各導体膜の半田濡れ性および接着強度を以下のように試験・測定した。これら特性評価試験の結果は、使用ペーストごとに表1の各々対応する欄に示している。
【0032】
[半田濡れ性]
各基板上に形成された導体膜にロジンフラックスを塗布した後、当該基板を230±5℃の半田(Sn/Pb=60/40(重量比))に3秒間浸漬した。その後、当該半田で濡れている導体膜の面積比率により半田濡れ性を評価した。具体的には、導体膜の表面の90%以上が濡れたものは良好な半田濡れ性を示すものと判断し、表中において○で示した。
【0033】
[接着強度]
上記焼成処理により得られた導体膜に評価用リード線を半田付けし、このリード線を基板の面方向とは垂直方向に所定の力で引っ張る。この引張強度試験試験において接合面が破壊(分断)された時の負荷から導体膜2mm角当たりの引張強度を算出し、これを導体膜の接着強度(N/2mm角)とした。
【0034】
【表1】
Figure 0003637286
【0035】
表1から明らかなように、本実施例にかかる導体ペーストから形成された導体膜は、いずれも良好な半田濡れ性を備えるととともに、焼成アルミナ基板および焼成ジルコニア基板のいずれに対しても9.8N/2mm角(1.0kgf/2mm角)を超える十分なレベルの接着強度を示した。
これに対して、従来の焼成アルミナ基板用の導体ペースト(比較例1)を用いてジルコニア基板に形成された導体膜は、基板に対する接着強度が低かった。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の導体ペーストは、ジルコニア基板に導体膜を形成する用途において実用上十分な性能を有する導体膜を形成することができる。また、本発明の導体ペースト調製用粉末材料によると、この材料を所定の有機ビヒクルに分散させることにより上記適用範囲の拡大した導体ペーストを容易に調製することができる

Claims (2)

  1. 焼成ジルコニア基材に導体膜を形成するための導体ペーストであって、
    貴金属または貴金属を主体とする合金からなる導電性粉末と、
    酸化ビスマスを主体とする金属酸化物粉末と、
    ホウケイ酸亜鉛ビスマス系ガラスを主体とするガラス質粉末と、
    有機ビヒクルと、
    を含有する焼成ジルコニア基材用導体ペースト。
  2. 前記金属酸化物粉末は、酸化銅、酸化鉛、酸化マンガン及び酸化ニッケルから成る群から選択される一種又は二種以上の金属酸化物を含む請求項1に記載の導体ペースト。
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