JP3901135B2 - 導体ペースト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック基板等に膜状導体を形成する用途に用いられる導体ペーストに関する。
【0002】
【従来の技術】
ハイブリッドIC、マルチチップモジュール等を構築するのに用いられるセラミック配線基板その他のセラミック電子部品に所定パターンの膜状導体(配線、電極等)を形成する材料として導体ペーストが使用されている。この導体ペーストは、導体を形成する主成分たる金属粉末と必要に応じて添加される種々の添加剤(無機結合剤、ガラスフリット、フィラー等)とを所定の有機媒質(ビヒクル)に分散させることにより調製される導体形成材料である。
かかる導体ペーストは、スクリーン印刷等の一般的な手法によりセラミック基板等に印刷・塗布される。次いで、当該塗布物(塗膜)を適当な温度で焼成する(焼き付ける)ことにより、当該セラミック基板等のセラミック電子部品上に所定パターンの膜状導体が形成される。
このような導体ペーストとして典型的なものに、金属粉末として銀(Ag)を主体に構成されたものがある(以下「Agペースト」と略称する。)。Ag粉末は金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等と比較して安価に入手できるものであり、さらに電気的抵抗度も低い。このため、Agペーストは各種電子部品に膜状導体を形成する用途に広く使用されている。
【0003】
ところで、上記用途のAgペーストには、従来、次のような問題点があった。すなわち、金属粉末がAgのみから成るAgペーストを使用して形成された膜状導体は、いわゆる半田耐熱性が低かった。このため、膜状導体に種々の素子を半田付けする際の高熱によって所謂「半田くわれ(典型的には膜状導体に含まれるAgの半田への溶解)」が生じる場合があった。そのような半田耐熱性が低いこと、即ち顕著な半田くわれの発生は、膜状導体から成る回路と素子の接合性を劣化させ、延いては断線その他の導通不良の原因ともなるため好ましくない。
従って、かかる半田くわれを防止するため、換言すれば半田耐熱性を向上させるため、従来、Agから成る導体の表面に更にニッケル(Ni)や銅(Cu)のめっき皮膜を形成する場合があった。膜状導体の表面にNiめっき皮膜等が形成されるとそれがバリアーの働きをしてAgベース導体の半田くわれを防止することができるからである。
しかし、このような金属めっき処理を別途行うことは、セラミック基板(例えば積層セラミックコンデンサ)等のセラミック電子部品の製造工程をより煩雑化するため、好ましくない。また、かかるめっき処理工程の追加は、当該電子部品の生産コスト高の要因ともなり得る。
【0004】
また、半田くわれを軽減・防止する他の手段として、Agのみから成るAgペーストに代えてAgとパラジウム(Pd)との混成金属粉末又はAgと白金(Pt)との混成金属粉末を主体とする導体ペーストが用いられている。かかるペーストを用いて形成されたAgとPd又はPtとから成る膜状導体によると、半田くわれの発生を軽減・抑止することができる。
しかし、AgとPd又はPtとから成る膜状導体は、Agのみから成る導体に比べて所謂「半田濡れ(半田の付着具合)」が劣るという問題点がある。また、PdやPtはAgと比べて高価であり、セラミック電子部品の生産コスト高の要因ともなる。
従って、そのような高価な貴金属を多量に用いたり或いはNiめっき等を別途施したりすることなく、半田耐熱性の向上した膜状導体を形成し得るAgベースの導体ペーストがセラミックコンデンサ等の電子部品製造分野において望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、セラミック基板等のセラミック電子部品を形成するためのAgペーストに関する上記従来の課題を解決すべく創出されたものであり、その目的とするところは、実用上充分なレベルの半田濡れ性及び半田耐熱性をともに実現したAgベースの導体ペースト及びその製造方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、そのような導体ペーストを用いてセラミック電子部品を製造する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の一つの導体ペーストは焼成された膜状導体を積層型セラミック電子部品の側面に形成するための側面導体膜形成用導体ペーストである。該導体ペーストは、金属粉末を主成分とし、その金属粉末は表面が有機系金属化合物でコーティングされた平均粒径が0.5μm未満のAg又はAg主体の合金から成る微粒子(粒子群)から実質的に構成されたものである。そして、その有機系金属化合物は、ジルコニウム(Zr)を構成金属元素とする有機酸金属塩、金属アルコキシド又はキレート化合物である。また、上記金属粉末重量の0.01〜1.0wt%に相当する量の酸化銅粉末と上記金属粉末重量の0.02〜2.0wt%に相当する量の酸化ビスマス粉末とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明者は、上記した類の有機系金属化合物(即ちZrを含有する有機化合物のことであり特に炭素−金属結合の有無を問わない。以下同じ。)でAg又はAg主体の合金から成る微粒子(粉体)をコーティングすることによって、そのAgベースの微粒子から成る焼成物(膜状導体)の半田耐熱性を著しく向上させ得ること、更に積層型セラミック電子部品の側面に緻密で低抵抗性の側面導体膜(端子電極等)を形成し得ることを見出し、本発明の一つとして側面導体膜形成用導体ペーストを創出した。
上記構成の導体ペーストによると、従来のAgペーストと比較して半田耐熱性が向上した膜状導体を形成することができる。すなわち、本発明のペーストによると、従来のAgペーストに劣らない半田濡れ性を具備すると共に、顕著な半田くわれが生じない実用上充分なレベルの半田耐熱性を備えた膜状導体をセラミック基材に形成する(焼き付ける)ことができる。
【0008】
本発明の導体膜形成用ペーストとして好ましいものでは、上記有機系金属化合物のコーティング量(含有量)は、その金属の酸化物換算(即ち当該有機系金属化合物を焼成した際に得られる金属酸化物(例えばZrO2)に換算した場合の重量)で、ペースト中に含まれる上記微粒子全量の0.025〜0.5wt%に相当する量であることを特徴とする。
本構成の導体ペーストによると、Agのみから成る膜状導体と同等の低抵抗率(即ち充分な導電性)を維持しつつ実用上充分なレベルの半田濡れ性及び半田耐熱性を共に実現することができる。
【0009】
また、本発明のペーストとして好ましい他のものでは、上記微粒子(微粒子群即ち粉体)の平均粒径が2.0μm以下であることを特徴とする。
本構成の導体ペーストによると、実用性に優れる半田濡れ性及び半田耐熱性を具備すると共に、抵抗増大や断線等の要因ともなり得る顕著なポアの発生が少なく、さらに、セラミック基材との接着強度に優れる緻密構造のAgベース膜状導体を形成することができる。例えば、積層セラミックコンデンサの幅広面(表面)に緻密な膜状導体(以下「表面導体膜」という。)を形成することができる。
あるいは、本発明の側面導体膜形成用導体ペーストとして好ましいものでは、上記微粒子の平均粒径が0.5μm未満(典型的には0.3〜0.5μm)である。かかる構成のペーストによると、積層型セラミック電子部品の側面(表面導体膜形成面に隣接するいずれかの面をいう。以下同じ。)に、低抵抗性のいわゆる端子電極等の膜状導体(以下「側面導体膜」という。)を形成することができる。
【0010】
【0011】
なお、本明細書において「セラミック電子部品」とは、セラミック製の基材(ベース)を有する電子部品一般をいう。従って、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール類およびそれらを構成するセラミック配線基板、或いは積層セラミックコンデンサ等は、本明細書において定義される「セラミック電子部品」に包含される典型例である。
【0012】
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の導体ペーストは、上述の金属粉末を主成分とすることで特徴付けられる電子部品形成用ペーストであり、上記目的を達成し得る限りにおいて他の副成分の内容や組成に特に制限はない。
本発明に係る金属粉末は、Ag若しくはAg主体の合金(例えばAg−Au合金、Ag−Pd合金)から実質的に構成されている微粒子群(以下「Agベース微粒子」と略称する。)と、その表面をコーティングする有機系金属化合物とから実質的に構成される粉末である。かかるAgベース微粒子としては、導電性付与の観点から、Ag単体または比抵抗値が概ね1×103Ω・cm以下(好ましくは1.8〜5.0×10−6Ω・cm、例えば1.9〜3.0×10−6Ω・cm)の合金から成るものが適当である。また、特に限定するものではないが、緻密構造の側面導体膜(焼成膜)を形成するという観点からは平均粒径が0.5μm未満(典型的には0.3〜0.5μm)のAgベース微粒子が好ましい。また、そのような比較的微小な平均粒径を有し且つ粒径10μm以上(特に好ましくは粒径5μm以上)の粒子を実質的に含まないような粒度分布の比較的狭いAgベース微粒子が特に好ましい。
【0014】
なお、特に限定するものではないが、表面導体膜形成用ペーストと側面導体膜形成用ペーストとを区別して製造する場合、側面導体膜形成用ペーストに含まれるAgベース微粒子は、表面導体膜形成用ペーストに含まれるAgベース微粒子よりも粒径が小さいほうが好ましい。例えば、小型電子製品に搭載される多層セラミック回路基板(例えば携帯電話機に備えられる低温焼結型チップアンテナモジュール)の側面導体膜を形成するための導体ペーストに含ませるAgベース微粒子としては、平均粒径0.5μm未満(典型的には0.3〜0.5μm)のものが好ましい。このような粒径のAgベース微粒子を含むペーストを用いると、通常の表面導体・側面導体よりも抵抗が低く、緻密な表面導体・側面導体を形成することができる。また、表面導体膜よりも緻密で低抵抗性の側面導体膜(端子電極等)を形成することもできる。他方、上記チップアンテナモジュール等の表面導体膜及び/又は内部導体膜(いくつかのセラミックシートを積層した際に、内部に埋設される膜状導体をいう。以下同じ。)を形成するための導体ペーストに含ませるAgベース微粒子としては、平均粒径が0.5μm以上(典型的には0.5〜2.0μm)のものが好ましい。このような粒径のAgベース微粒子を含む導体ペーストを用いると、過大な焼成収縮の発生を抑えた表面導体膜及び/又は内部導体膜を形成することができる。
なお、Agベース微粒子自体は、従来公知の製造方法によって製造されたものでよく、特別な製造手段を要求するものではない。例えば、周知の還元析出法、気相反応法、ガス還元法等によって製造されたAgベース微粒子を使用することができる。
【0015】
次に、本発明の側面導体膜形成用導体ペーストに含有されるAgベース微粒子の表面をコーティングする有機系金属化合物について説明する。Agベース微粒子のコーティングに使用する有機系金属化合物としては、最終的(焼成後)にAgベース微粒子の表面に本発明の目的の実現に適う金属(金属酸化物又はその還元物を含む)の被膜(即ち当該表面を被覆する付着物)を形成し得るものであれば特に制限はないが、好ましくはZrを構成金属元素とする有機酸金属塩、金属アルコキシド又はキレート化合物が用いられる。
例えば、好適な金属アルコキシドとしては、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムブトキシド等のジルコニウムアルコキシドが挙げられる。
【0016】
また、本発明の側面導体膜形成用導体ペーストに含まれるAgベース微粒子のコーティングに使用する有機系金属化合物として他の好適なものは、Zrを構成金属元素とする有機酸金属塩である。
また、本発明者は、本発明とは解決すべき課題や目的が異なる高温焼成対応貴金属粉末(即ち高温で焼成処理した貴金属粉末:特開平8−7644号公報参照)を製造する際に好ましく使用されるある種の有機酸金属塩が、本発明に係る有機系金属化合物として好適であることを見出した。すなわち、本発明の側面導体膜形成用導体ペーストに含まれるAgベース微粒子コーティングに使用する有機系金属化合物として好適な有機酸金属塩は、上記列挙した元素を主構成金属元素とするカルボン酸塩である。例えば、Zrと各種脂肪酸(例えばナフテン酸、オクチル酸、エチルヘキサン酸)、アビエチン酸、ナフトエ酸等の有機酸との化合物が挙げられる。特に好適な有機酸金属塩は、Zrとカルボン酸(特に脂肪酸)との化合物である。
このような組成の有機酸金属塩によってコーティングされたAgベース微粒子の焼成物は、特に高い半田耐熱性や接着強度を実現する。
【0017】
次に、Agベース微粒子表面への有機系金属化合物のコーティング方法すなわち所定の有機系金属化合物でコーティングされた金属粉末の製造方法について説明する。
本発明の実施に用いられる金属粉末は、その主体たるAgベース微粒子表面に満遍なくほぼ均等に有機系金属化合物がコーティングされればよく、そのコーティング方法に特に制限はない。従って、従来知られている金属粒子への有機物コーティング方法をそのまま適用することができる。例えば、トルエン、キシレン、各種アルコール等の適当な有機溶剤に所望の有機系金属化合物を溶解若しくは分散する。次いで、得られた溶液若しくは分散液(ゾル)にAgベース微粒子を添加し、分散・懸濁する。この懸濁液を所定時間静置又は撹拌することによって、当該懸濁液中のAgベース微粒子の表面を目的の有機系金属化合物でコーティングすることができる。
【0018】
【0019】
特に限定しないが、側面導体膜形成用ペーストとしては、コーティング量が酸化物換算でAgベース微粒子の0.01〜1.0wt%に相当する量であることが好ましく、特に焼成後のコーティング物質がジルコニアである場合、即ちZrを構成元素とする有機酸金属塩、金属アルコキシド、キレート化合物等の有機系金属化合物でAgベース微粒子をコーティングする場合、そのコーティング量が酸化物換算でAgベース微粒子の0.025〜1.0wt%に相当する量(例えば0.025〜0.5wt%)であることが特に好ましい。
【0020】
次に、本発明の導体ペーストに含ませ得る副成分として好適なものについて説明する。
本発明の導体ペーストの副成分として、上記金属粉末を分散させておく有機媒質(ビヒクル)が挙げられる。本発明の実施にあたっては、かかる有機ビヒクルは金属粉末を分散させておくものであればよく、従来の導体ペーストに用いられているものを特に制限なく使用することができる。例えば、エチルセルロース等のセルロース系高分子、エチレングリコール及びジエチレングリコール誘導体、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、ブチルカルビトール、ターピネオール等の高沸点有機溶媒が挙げられる。
【0021】
また、本発明の導体ペーストには、当該ペースト本来の導電性(低抵抗率)、半田濡れ性、半田耐熱性、接着強度等を著しく損なわない限りにおいて種々の無機添加剤を副成分として含ませることができる。例えば、かかる無機添加剤としては、ガラス粉末、無機酸化物、その他種々のフィラー等が挙げられる。特に若干量のガラス粉末及び/又は無機酸化物の添加が好適である。
すなわち、ガラス粉末は、セラミック基材上に付着したペースト成分を安定的に焼き付き・固着させること(即ち接着強度の向上)に寄与する無機成分(無機結合材)となり得る。特に酸化物ガラスが好ましい。酸化物ガラス粉末は、セラミック基材上に付着したペースト成分を安定的に焼き付き・固着させること(即ち接着強度の向上)に寄与する無機成分(無機結合材)となり得る。後述する焼成温度との関係から、軟化点が概ね800℃以下のものが好ましい。そのようなガラス粉末として、鉛系、亜鉛系及びホウケイ酸系ガラスが挙げられ、典型的には、PbO−SiO2−B2O3系ガラス、PbO−SiO2−B2O3−Al2O3系ガラス、ZnO−SiO2系ガラス、ZnO−B2O3−SiO2系ガラス、Bi2O3−SiO2系ガラス及びBi2O3−B2O3−SiO2系ガラスから成る群から選択される一種又は二種以上のガラス粉末を使用するのが適当である。また、使用するガラス粉末としては、その比表面積が概ね0.5〜50m2/gであるものが好ましく、平均粒径が2μm以下(特に1μm程度又はそれ以下)のものが特に好適である。
【0022】
また、無機酸化物は、セラミック基材と膜状導体との間の接着強度の向上に寄与し得る。さらに、本発明の導体ペーストから形成された膜状導電体の焼成時に過大な焼成収縮応力が生じるのを防止し、製造しようとするセラミック電子部品の精度や機械的強度を実用上高レベルに維持することに寄与する無機成分となり得る。そのような金属酸化物として、酸化銅、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化マグネシウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化タングステン等が挙げられる。これらのうち、酸化銅、酸化鉛、酸化ビスマスが、特に好適な酸化物である。なかでも酸化ビスマスは、Ag系金属粉末の焼結を促進するとともに、Agとセラミック基材(アルミナ等)との濡れ性を向上させ得るため、特に好適な無機酸化物である。また、酸化銅は基板との密着性を向上させ得る。
また、使用する金属酸化物としては、ペーストの充填率や分散性を適切化するという観点から、平均粒径が5μm以下(典型的には1〜5μm、特に好ましくは1μm以下)の粉末が好ましい。また、比表面積については、少なくとも0.5m2/gである粉体が好ましく、1.0m2/g以上(典型的には1.0〜2.0m2/g、特に好ましくは2.0〜100m2/g)である粉体が特に好ましい。
【0023】
また、本発明の導体ペーストには、当該ペースト本来の導電性(低抵抗率)、半田濡れ性、半田耐熱性、接着強度等を著しく損なわない限りにおいて種々の有機添加剤を副成分として含ませることができる。例えば、かかる有機添加剤としては、各種の有機バインダー、セラミック基材との密着性向上を目的としたシリコン系、チタネート系及びアルミニウム系等の各種カップリング剤等が挙げられる。
有機バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、セルロース系高分子、ポリビニルアルコール等をベースとするものが挙げられる。本発明の導体ペーストに良好な粘性及び塗膜(基材に対する付着膜)形成能を付与し得るものが好適である。また、本発明の導体ペーストに光硬化性(感光性)を付与したい場合には、種々の光重合性化合物及び光重合開始剤を適宜添加してもよい。
【0024】
なお、上記の他にも本発明の導体ペーストには、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、重合禁止剤等を適宜添加することができる。これら添加剤は、従来の導体ペーストの調製に用いられ得るものであればよく、詳細な説明は省略する。
【0025】
次に、本発明に係る導体ペーストの調製について説明する。本発明の導体ペーストは従来の導体ペーストと同様、典型的には金属粉末と有機媒質(ビヒクル)を混和することによって容易に調製することができる。このとき、必要に応じて上述したような添加剤を添加・混合するとよい。例えば、三本ロールミルその他の混練機を用いて、金属粉末及び各種添加剤を有機ビヒクルとともに所定の配合比で直接混合し、相互に練り合わせる。
【0026】
特に限定するものではないが、好ましくは、主成分たる金属粉末の含有率がペースト全体の60〜95wt%となるように各材料を混練するのがよい。なお、側面導体膜形成用ペーストではかかる含有率が65〜75wt%となるように混練するのが特に好ましい。ペースト調製に用いられる有機ビヒクルの添加量は、ペースト全体のほぼ1〜40wt%となる量が適当であり、1〜20wt%となる量が特に好ましい。
また、無機添加剤として上述のガラス粉末を加える場合には、金属粉末重量の0.5wt%以下(より好ましくは0.25wt%以下)程度の量を添加するのが好ましい。かかる低率の添加量によると、本発明の導体ペーストの良好な導電率や半田濡れ性を実質的に損なうことなく、本発明のペーストから得られる焼成物(膜状導体)のセラミック基材に対する接着強度の向上を実現することができる。
他方、無機添加剤として上述の無機酸化物を加える場合には、金属粉末重量の5.0wt%以下程度の量を添加するのが好ましい。かかる低率の添加量によると、本発明の導体ペーストの良好な導電率や半田濡れ性を実質的に損なうことなく、本発明のペーストから得られる焼成物(膜状導体)のセラミック基材に対する接着強度の向上及び焼成収縮の抑制を実現することができる。
【0027】
接着強度の向上は、特に側面導体膜(端子電極等)について問題となる性質である。従って、セラミック基材としてアルミナ等の酸化物セラミックス製のものを使用し、表面導体膜形成用ペーストと側面導体膜形成用ペーストとを用いてセラミック電子部品を製造する場合には、側面導体膜形成用ペーストに副成分として無機酸化物粉末を比較的高率に含有させるとよい。一方、表面導体膜形成用ペーストには、かかる無機酸化物粉末を必ずしも含有させる必要はなく、接着強度向上の観点から無機酸化物粉末を含有させる場合であっても、その含有率は、側面導体膜形成用ペーストの無機酸化物粉末含有率よりも低くてよい。
【0028】
次に、本発明の導体ペーストを用いた膜状導体形成に係る好適例について説明する。本発明の導体ペーストは、セラミック製の基材(基板)上に配線、電極等の膜状導体を形成するのに従来用いられてきた導体ペーストと同様に取り扱うことができ、従来公知の方法を特に制限なく採用することができる。典型的には、スクリーン印刷法やディスペンサー塗布法等によって、所望する形状・厚みとなるようにして導体ペーストをセラミック基材(基板)に塗りつける。次いで、好ましくは乾燥後、加熱器中で適当な加熱条件(典型的には最高焼成温度が概ね500〜960℃、好ましくはAgの融点を超えない温度域、例えば700〜960℃特には800〜900℃)で所定時間加熱することによって、その塗りつけられたペースト成分を焼成(焼き付け)・硬化させる。この一連の処理を行うことによって、目的の膜状導体(配線、電極等)が形成されたセラミック電子部品(例えばハイブリッドICやマルチチップモジュールの構築用セラミック配線基板)が得られる。而して、当該セラミック電子部品を組み立て材料として用いつつ従来公知の構築方法を適用することによってさらに高度なセラミック電子部品(例えばハイブリッドICやマルチチップモジュール)を得ることができる。なお、かかる構築方法自体は、特に本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
なお、用途限定を意図するものではないが、上述のとおり、本発明の導体ペーストによると従来のものよりも半田耐熱性や接着強度に優れる膜状導体を形成することができる。このため、本発明の導体ペーストは、膜厚が10〜30μm程度の導体の形成のみならず、10μm以下の比較的薄い膜厚の導体を形成する用途にも好適である。
【0029】
【実施例】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を参考例と共に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0030】
<参考例1:導体ペーストの調製(1)>
本参考例では、金属粉末のベースとして、一般的な湿式法により調製された平均粒径が0.8〜1.0μmの範囲にある略球状のAg粉末を使用した。但し、後述する表中において0.8≫1.0と示すように、粒径約0.8μmの粒子が粒径約1.0μmの粒子よりも富む粒度分布である。一方、有機系金属化合物として、アルミニウムアルコキシド(ここではアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート)を用いた。
而して、適当な有機溶剤(ここではメタノール)に上記アルミニウムアルコキシドを添加し、濃度5〜100g/lのコーティング用溶液を調製した。次いで、かかる溶液中に上記Ag粉末を適当量懸濁させ、適宜撹拌しつつ1〜3時間懸濁状態を維持した。その後、Ag粉末を回収し、60〜110℃で通風乾燥した。
以上の処理によって、酸化アルミニウム(Al2O3)換算でAg粉末の略0.0125wt%となる量の上記アルミニウムアルコキシドによって表面がほぼ均等にコーティングされたAg粉末(以下「AlコーティングAg粉末」という。)を得た。
【0031】
次に、上記得られたAlコーティングAg粉末を使用して導体ペーストを調製した。すなわち、最終的なペースト濃度(重量比)がAlコーティングAg粉末87wt%および残部が溶剤(ここではターピネオール)となるように使用材料を秤量し、三本ロールミルを用いて混練した。これにより、本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0032】
<参考例2:導体ペーストの調製(2)>
上記コーティング溶液のアルミニウムアルコキシド濃度及び必要に応じてAg粉末の懸濁時間を適宜調節することによって、酸化アルミニウム(Al2O3)換算でAg粉末の略0.025wt%となる量の上記アルミニウムアルコキシドで表面が略均等にコーティングされたAg粉末を得た。次いで、かかるAlコーティングAg粉末を用いて参考例1と同様の処理を行い、本参考例に係る導体ペーストを調製した。すなわち、本参考例に係る導体ペーストと参考例1に係る導体ペーストとは、アルミニウムアルコキシドのコーティング量のみが異なる。
【0033】
<参考例3:導体ペーストの調製(3)>
上記コーティング溶液のアルミニウムアルコキシド濃度及び必要に応じてAg粉末の懸濁時間を適宜調節することによって、酸化アルミニウム(Al2O3)換算でAg粉末の略0.05wt%となる量の上記アルミニウムアルコキシドで表面が略均等にコーティングされたAg粉末を得た。次いで、かかるAlコーティングAg粉末を用いて参考例1と同様の処理を行い、本参考例に係る導体ペーストを調製した。すなわち、本参考例に係る導体ペーストと参考例1及び参考例2に係る導体ペーストとは、アルミニウムアルコキシドのコーティング量のみが異なる。
【0034】
<参考例4:導体ペーストの調製(4)>
本参考例では、金属粉末のベースとして、平均粒径が0.8〜1.0μmの範囲にある略球状のAg粉末を使用した。但し、後述する表中において0.8≪1.0と示すように、粒径約1.0μmの粒子が粒径約0.8μmの粒子よりも富む粒度分布のものを使用した。かかるAg粉末以外は参考例1と同様の材料・処理を適用して本参考例に係る導体ペーストを調製した。すなわち、本参考例に係る導体ペーストと参考例1に係る導体ペーストとは、Al粉末(粒度分布)のみが異なる。
【0035】
<参考例5:導体ペーストの調製(5)>
上記コーティング溶液のアルミニウムアルコキシド濃度及び必要に応じてAg粉末の懸濁時間を適宜調節することによって、酸化アルミニウム(Al2O3)換算でAg粉末の略0.025wt%となる量の上記アルミニウムアルコキシドで表面が略均等にコーティングされたAg粉末を得た以外は、参考例4と同様の材料・処理を採用して本参考例に係る導体ペーストを調製した。すなわち、本参考例に係る導体ペーストと参考例4に係る導体ペーストとは、アルミニウムアルコキシドのコーティング量のみが異なる。
【0036】
<参考例6:導体ペーストの調製(6)>
上記コーティング溶液のアルミニウムアルコキシド濃度及び必要に応じてAg粉末の懸濁時間を適宜調節することによって、酸化アルミニウム(Al2O3)換算でAg粉末の略0.05wt%となる量の上記アルミニウムアルコキシドで表面が略均等にコーティングされたAg粉末を得た以外は、参考例4と同様の材料・処理を採用して本参考例に係る導体ペーストを調製した。すなわち、本参考例に係る導体ペーストと参考例4及び参考例5に係る導体ペーストとは、アルミニウムアルコキシドのコーティング量のみが異なる。
【0037】
<参考例7:導体ペーストの調製(7)>
本参考例では、金属粉末のベースとして、参考例4〜6で使用したAg粉末を使用した。一方、有機系金属化合物として、ジルコニウムアルコキシド(ここではジルコニウムブトキシド)を用いた。
而して、適当な有機溶剤(ここではメタノール)に上記ジルコニウムアルコキシドを添加し、濃度5〜100g/lのコーティング用溶液を調製した。次いで、かかる溶液中に上記Ag粉末を適当量懸濁させ、適宜撹拌しつつ1〜3時間懸濁状態を維持した。その後、Ag粉末を回収し、60〜100℃で通風乾燥した。
以上の処理によって、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算でAg粉末の略0.1wt%となる量の上記ジルコニウムアルコキシドで表面がほぼ均等にコーティングされたAg粉末(以下「ZrコーティングAg粉末」という。)を得た。
【0038】
次に、上記得られたZrコーティングAg粉末を使用して導体ペーストを調製した。すなわち、最終的なペースト濃度(重量比)がZrコーティングAg粉末87wt%および残部が溶剤(ここではターピネオール)となるように使用材料を秤量し、三本ロールミルを用いて混練した。これにより、本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0039】
<参考例8:導体ペーストの調製(8)>
本参考例において、無機添加剤として亜鉛系ガラス(ZnO−B2O3−SiO2系ガラス、平均粒径:1〜2μm、軟化点:780℃)を含有する導体ペーストを調製した。
すなわち、参考例3で得たAlコーティングAg粉末(コーティング量:0.050wt%(Al2O3換算))および亜鉛系ガラス粉末(比表面積1〜2m2/gのガラスフリット)を使用するとともに、最終的なペースト濃度(重量比)がAlコーティングAg粉末87wt%および残部が溶剤(ターピネオール)となるようにこれら材料を秤量し、さらに対Ag粉末重量比で0.5wt%となる量の亜鉛系ガラス粉末を加え、三本ロールミルを用いて混練した。これにより、本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0040】
<参考例9:導体ペーストの調製(9)>
本参考例において、無機添加剤として鉛系ガラス(PbO−SiO2−B2O3系ガラス、平均粒径:1〜2μm、軟化点:700℃)を含有するペーストを調製した。
すなわち、参考例3で得たAlコーティングAg粉末および鉛系ガラス粉末(比表面積1〜2m2/gのガラスフリット)を使用するとともに、最終的なペースト濃度(重量比)がAlコーティングAg粉末87wt%および残部が溶剤(ターピネオール)となるようにこれら材料を秤量し、さらに対Ag粉末重量比で0.25wt%となる量の鉛系ガラス粉末を加え、三本ロールミルを用いて混練した。これにより、本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0041】
<参考例10:導体ペーストの調製(10)>
鉛系ガラス粉末の添加量を対Ag粉末重量比で0.5wt%とした以外は、参考例9と同様の処理を行って本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0042】
<参考例11:導体ペーストの調製(11)>
鉛系ガラス粉末の添加量を対Ag粉末重量比で1.0wt%とした以外は、参考例9と同様の処理を行って本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0043】
<参考例12:導体ペーストの調製(12)>
本参考例において、無機添加剤としてホウケイ酸系ガラス(Bi2O3−B2O3−SiO2系ガラス、平均粒径:1〜2μm、軟化点:725℃)を含有するペーストを調製した。
すなわち、参考例3で得たAlコーティングAg粉末およびホウケイ酸系ガラス粉末(比表面積1〜2m2/gのガラスフリット)を使用するとともに、最終的なペースト濃度(重量比)がAlコーティングAg粉末87wt%および残部が溶剤(ターピネオール)となるようにこれら材料を秤量し、さらに対Ag粉末重量比で0.5wt%となる量のホウケイ酸系ガラス粉末を加え、三本ロールミルを用いて混練した。これにより、本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0044】
<参考例13:導体ペーストの調製(13)>
本参考例において、無機添加剤として酸化銅(Cu2O)粉末を含有するペーストを調製した。すなわち、参考例3で得たAlコーティングAg粉末および酸化銅粉末(平均粒径:1〜5μm、比表面積:0.5〜1.5m2/g)を使用するとともに、最終的なペースト濃度(重量比)がAlコーティングAg粉末87wt%および残部が溶剤(ターピネオール)となるようにこれら材料を秤量し、さらに対Ag粉末重量比で0.25wt%となる量の酸化銅粉末を加え、三本ロールミルを用いて混練した。これにより、本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0045】
<参考例14:導体ペーストの調製(14)>
酸化銅粉末の添加量を対Ag粉末重量比で0.5wt%とした以外は、参考例13と同様の処理を行って本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0046】
<参考例15:導体ペーストの調製(15)>
酸化銅粉末の添加量を対Ag粉末重量比で1.0wt%とした以外は、参考例13と同様の処理を行って本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0047】
<参考例16:導体ペーストの調製(16)>
本参考例において、無機添加剤として酸化鉛(Pb3O4)粉末を含有するペーストを調製した。すなわち、参考例3で得たAlコーティングAg粉末および酸化鉛粉末(平均粒径:1〜5μm、比表面積:0.5〜1.5m2/g)を使用するとともに、最終的なペースト濃度(重量比)がAlコーティングAg粉末87wt%および残部が溶剤(ターピネオール)となるようにこれら材料を秤量し、さらに対Ag粉末重量比で0.25wt%となる量の酸化鉛粉末を加え、三本ロールミルを用いて混練した。これにより、本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0048】
<参考例17:導体ペーストの調製(17)>
酸化鉛粉末の添加量を対Ag粉末重量比で0.5wt%とした以外は、参考例16と同様の処理を行って本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0049】
<参考例18:導体ペーストの調製(18)>
酸化鉛粉末の添加量を対Ag粉末重量比で1.0wt%とした以外は、参考例16と同様の処理を行って本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0050】
<参考例19:導体ペーストの調製(19)>
本参考例において、無機添加剤として酸化ビスマス(Bi2O3)粉末を含有するペーストを調製した。すなわち、参考例3で得たAlコーティングAg粉末および酸化ビスマス粉末(平均粒径:1〜10μm、比表面積:0.5〜2.0m2/g)を使用するとともに、最終的なペースト濃度(重量比)がAlコーティングAg粉末87wt%および残部が溶剤(ターピネオール)となるようにこれら材料を秤量し、さらに対Ag粉末重量比で0.25wt%となる量の酸化ビスマス粉末を加え、三本ロールミルを用いて混練した。これにより、本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0051】
<参考例20:導体ペーストの調製(20)>
酸化ビスマス粉末の添加量を対Ag粉末重量比で0.5wt%とした以外は、参考例19と同様の処理を行って本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0052】
<参考例21:導体ペーストの調製(21)>
酸化ビスマス粉末の添加量を対Ag粉末重量比で1.0wt%とした以外は、参考例19と同様の処理を行って本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0053】
<参考例22:導体ペーストの調製(22)>
本参考例において、無機添加剤として上述の酸化ビスマス粉末及び鉛系ガラス粉末を含有するペーストを調製した。すなわち、参考例3で得たAlコーティングAg粉末、上記酸化ビスマス粉末及び上記鉛系ガラスを使用するとともに、最終的なペースト濃度(重量比)がAlコーティングAg粉末87wt%および残部が溶剤(ターピネオール)となるようにこれら材料を秤量し、さらに対Ag粉末重量比で0.5wt%となる量の酸化ビスマス粉末及び0.25wt%となる量の鉛系ガラス粉末を加え、三本ロールミルを用いて混練した。これにより、本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0054】
<参考例23:導体ペーストの調製(23)>
本参考例では、金属粉末のベースとして、平均粒径が0.3〜0.5μmの範囲にある微細なAg粉末を使用した。そして、参考例3と同様の処理を行い、酸化アルミニウム(Al2O3)換算でAg粉末の略0.05wt%となる量の上記アルミニウムアルコキシドで表面が略均等にコーティングされたAg粉末を得た。
而して、当該AlコーティングAg粉末を用いる以外は、上記参考例20と同様の処理を行い、無機添加剤として酸化ビスマス粉末(対Ag粉末重量比で0.5wt%)を含有する本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0055】
<参考例24:導体ペーストの調製(24)>
本参考例では、金属粉末のベースとして、平均粒径が0.3〜0.5μmの範囲にある微細なAg粉末を使用した(なお参考例23とはAg粉末の製造元が異なる)。そして、参考例3と同様の処理を行い、酸化アルミニウム(Al2O3)換算でAg粉末の略0.05wt%となる量の上記アルミニウムアルコキシドで表面が略均等にコーティングされたAg粉末を得た。
而して、当該AlコーティングAg粉末を用いる以外は、上記参考例20と同様の処理を行い、無機添加剤として酸化ビスマス粉末(対Ag粉末重量比で0.5wt%)を含有する本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0056】
<参考例25:導体ペーストの調製(25)>
本参考例では、金属粉末のベースとして、平均粒径が0.5〜0.7μmの範囲にあるAg粉末を使用した。そして、参考例3と同様の処理を行い、酸化アルミニウム(Al2O3)換算でAg粉末の略0.05wt%となる量の上記アルミニウムアルコキシドで表面が略均等にコーティングされたAg粉末を得た。
而して、当該AlコーティングAg粉末を用いる以外は、上記参考例20と同様の処理を行い、無機添加剤として酸化ビスマス粉末(対Ag粉末重量比で0.5wt%)を含有する本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0057】
<参考例26:導体ペーストの調製(26)>
本参考例において、無機添加剤として上述の酸化ビスマス粉末及び酸化銅粉末を含有するペーストを調製した。すなわち、参考例3で得たAlコーティングAg粉末、上記酸化ビスマス粉末及び上記酸化銅粉末を使用するとともに、最終的なペースト濃度(重量比)がAlコーティングAg粉末87wt%および残部が溶剤(ターピネオール)となるようにこれら材料を秤量し、さらに対Ag粉末重量比で0.5wt%となる量の酸化ビスマス粉末及び0.5wt%となる量の酸化銅粉末を加え、三本ロールミルを用いて混練した。これにより、本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0058】
<参考例27:導体ペーストの調製(27)>
酸化銅粉末の添加量を対Ag粉末重量比で0.25wt%とした以外は、参考例26と同様の処理を行って本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0059】
<参考例28:導体ペーストの調製(28)>
酸化銅粉末の添加量を対Ag粉末重量比で0.125wt%とした以外は、参考例26と同様の処理を行って本参考例に係る導体ペーストを調製した。
【0060】
<比較例1:従来の導体ペーストの調製(1)>
本比較例では、金属粉末のベースとして、平均粒径が2.0〜3.0μmの範囲にあるAg粉末を使用した。有機系金属化合物によるコーティングは行っていない。すなわち、かかる非コーティングAg粉末をそのまま用いて最終的なペースト濃度(重量比)が当該Ag粉末87wt%および残部が溶剤(ターピネオール)となるようにこれら材料を秤量し、三本ロールミルを用いて混練した。これにより、本比較例に係る導体ペーストを調製した。
【0061】
<比較例2:従来の導体ペーストの調製(2)>
本比較例では、金属粉末のベースとして、平均粒径が約1.0μmの範囲にあるAg粉末を使用した。有機系金属化合物によるコーティングは行っていない。
而して、かかる非コーティングAg粉末を使用する以外は、参考例26と同様の処理を行い、無機添加剤として酸化ビスマス粉末及び酸化銅粉末(それぞれ対Ag粉末重量比で0.5wt%)を含有する本比較例に係る導体ペーストを調製した。
なお、上述の各参考例および比較例の導体ペーストにおけるAg粉末の平均粒径、有機系金属化合物(即ちアルミニウムアルコキシド又はジルコニウムアルコキシド)のコーティング量、無機添加剤の種類及びその添加量を、以下の表1〜表10に欄を設けて示している。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
【表9】
【0071】
【表10】
【0072】
<参考例29:膜状導体の形成及びその評価(1)>
次に、各参考例及び比較例に係る導体ペーストを用いて、セラミック基材(ここでは厚みが約0.8mmのアルミナ製基板)の表面に膜状導体を形成した。すなわち、一般的なスクリーン印刷法に基づいてセラミック基板の表面に導体ペーストを塗布し、所定の膜厚(10〜30μm:各表中の「塗膜厚み」欄参照。)の塗膜を形成した。
続いて、遠赤外線乾燥機を用いて100℃で15分間の乾燥処理を施した。この乾燥処理により、上記塗膜から溶剤が揮発していき、セラミック基板上に未焼成の膜状導体が形成された。
【0073】
次に、この膜状導体をセラミック基板ごと焼成した。すなわち、電気炉中で700,750,800,850または900℃のいずれか(使用したペースト毎に異なる。各表中の「焼成温度」欄を参照。)で1時間の焼成処理を行った。この焼成処理によって、所定の膜厚(各表中の「焼成膜厚み」欄を参照。)の膜状導体をセラミック基板上に焼き付けた。以下、単に膜状導体というときは当該焼成後のものを指す。
【0074】
次に、得られた各膜状導体の特性評価として、抵抗値、シート抵抗値、半田濡れ性、半田耐熱性および引っ張り強度を以下のように試験・測定した。これら特性評価試験の結果は、使用ペーストごとに表1〜10の各々対応する欄に示している。なお、表中のn.d.は未測定であることを示している。
【0075】
<抵抗値の測定>
参考例1〜7に係る導体ペーストを使用して得られた膜状導体のそれぞれについて以下のようにして抵抗値(Ω)を測定した。すなわち、デジタルマルチメーターを用いて一般的な2端子法に基づいて膜状導体の抵抗値(Ω)を測定した。
【0076】
<シート抵抗値の測定>
参考例1〜25及び比較例1、2に係る導体ペーストを使用して得られた膜状導体のそれぞれについて以下のようにしてシート抵抗値(mΩ/□)を測定した。すなわち、シート抵抗値(mΩ/□)は上記測定抵抗値(Ω)に基づいて次式より算出した。
シート抵抗値(mΩ/□)=測定抵抗値(Ω)×(導体幅(mm)/導体長さ(mm))×(導体厚み(μm)/換算厚み(μm));ここで換算厚みは焼成物10μm若しくは印刷物25μm。
【0077】
<半田濡れ性>
各参考例及び比較例に係る導体ペーストを使用して得られた膜状導体のそれぞれについて以下のようにして半田濡れ性を調べた。すなわち、各セラミック基板の膜状導体部分にロジンフラックスを塗布した後、当該基板を230±5℃の半田(Sn/Pb=60/40(重量比))に3秒間浸漬した。その後、当該半田で濡れている膜状導体部分の面積比率で半田濡れ性を評価した。具体的には、膜状導体の表面の90%以上が濡れたものは良好な半田濡れ性を示すものと判断し、表中において◎で示した。他方、半田濡れ部分が膜状導体表面全体の80%以下のものについては、半田濡れ性が劣るものと判断し、表中において×で示した。
【0078】
<半田耐熱性>
各参考例及び比較例2に係る導体ペーストを使用して得られた膜状導体のそれぞれについて以下のようにして半田耐熱性を調べた。すなわち、各セラミック基板の膜状導体部分にロジンフラックスを塗布した後、当該基板を所定温度の半田(Sn/Pb=60/40(重量比))に所定時間浸漬した。ここでは、かかる半田温度条件及び浸漬時間を230±5℃×30秒、260±5℃×10秒、および260±5℃×20秒の3通りとした(適用条件は使用したペースト毎に異なる。各表中の「半田耐熱性」欄を参照。)。
而して、浸漬後に「半田くわれ」されなかった部分、即ち浸漬前と比較して浸漬後にセラミック基板上に残存している膜状導体の面積比率で半田耐熱性を評価した。具体的には、膜状導体の略90%以上が残存しているものは優れた半田耐熱性を示すものと判断し、表中において◎で示した。また、膜状導体の略80%以上90%未満が残存しているものは良好な半田耐熱性を示すものと判断し、表中において○で示した。他方、膜状導体の残存している部分が浸漬前の略80%未満のものは半田耐熱性が比較的劣っているものと判断し、表中において×で示した。
【0079】
<引っ張り強度>
各参考例及び比較例2に係る導体ペーストを使用して得られた膜状導体のそれぞれについて、セラミック基板に対する接着強度の指標として引っ張り強度(kg)を以下のようにして測定した。すなわち、セラミック基板に焼き付き形成された膜状導体に評価用リード線(スズめっき銅線)を半田付けした。その後、そのリード線を基板の面方向とは垂直方向に所定の力で引っ張り、その接合面が破壊(分断)された時の負荷(kg)を接着強度(引っ張り強度)とした。なお、ここでは、上記焼成処理直後のセラミック基板、焼成後さらに150℃で48時間、100時間又は200時間のエージングを施した後のセラミック基板について上記引っ張り強度試験を行った(条件は使用したペースト毎に異なる。各表中の「引っ張り強度」欄を参照。)。
【0080】
表1〜10に示した上記各特性評価試験の結果から明らかなように、本参考例に係る導体ペーストから形成された膜状導体(厚み:10〜22μm)は、何れも導体として問題のない抵抗値及び/又はシート抵抗値を示した。これらの結果は、導電性即ち電気的特性の観点からみて本発明の導体ペーストが膜状導体形成用途に好適に用い得ることを示すものである。
また、半田濡れ性については、比較的多量に鉛系ガラス粉末又はホウケイ酸系ガラス粉末を添加したもの(参考例10,11,12)については若干劣っていた(概ね50%〜70%)ものの、それら以外のものは、半田濡れ性の上記指標値が90%以上(表中の◎)を示した。このことは、半田濡れ性の観点からみて、本発明の導体ペーストが膜状導体形成用途に好適であることを示すものである。また、ガラス粉末を添加する場合は、亜鉛系ガラス粉末が比較的好ましい(参考例8)。
【0081】
半田耐熱性に関する評価試験から明らかなように、各参考例に係る導体ペーストから形成された膜状導体は、従来のAg/Pd粉末を含む導体ペーストから形成された膜状導体やNiめっきされた膜状導体と同等かそれ以上の半田耐熱性を示した。特に、無機添加剤を添加せずに調製したペースト(参考例1〜7)であっても、高い半田耐熱性を有していることが確認された(参考例1〜7)。このことは、本発明によると、金属(Ag)粉末に対して0.01wt%(酸化物換算)程度のごく僅かな量の有機系金属化合物(ここでは金属アルコキシド)でAgベース微粒子をコーティングすることにより、高価なPdを使用したり煩雑なNiめっき処理を行うことなく実用レベルでの高い半田耐熱性を実現できることを示すものである。
【0082】
また、引っ張り強度に関する評価試験から明らかなように、本発明の導体ペーストから形成された膜状導体は、Agベース微粒子の焼成物である結果、特に添加剤を必要とすることなく実用レベルの接着強度を保持することが認められた(参考例1〜7)。また、無機添加剤を添加した各参考例のペーストを用いた結果から、適当量のガラスフリット及び/又は無機酸化物粉末を添加することにより、所望する半田耐熱性や半田濡れ性を維持しつつ接着強度を向上させ得ることが確認された(例えば参考例3と参考例13〜15参照)。特に、適当量の無機酸化物の添加が有効である。かかる添加によって、高い半田濡れ性及び半田耐熱性の維持と接着強度の向上とを共に実現させることができる(参考例13〜28参照)。さらに焼成収縮の低減にも寄与する。なお、添加する無機酸化物は1種類でもよいが、2種類又はそれ以上組み合わせて添加することが好ましいことが示された(参考例26〜28参照)。
【0083】
各参考例で使用したAg粉末の平均粒径(0.2〜1.0μm)は、本発明の導体ペーストを調製するのに適当なものであった(参考例20,23,24,25参照)。また、各参考例に係る導体ペーストを使用した場合の膜状導体焼成温度は、比較的高いレベルの接着強度保持の観点から800℃以上が好ましく、850〜900℃程度の焼成温度が特に好適であることが示された。
【0084】
<参考例30:膜状導体の形成及びその評価(2)>
次に、本参考例に係る導体ペーストによると、上記比較例で形成したものよりも薄い膜状導体(10μm以下)を好適に形成し得ることを確認するため、参考例17,20,22及び比較例2の計4種類の導体ペーストを用いて比較的厚い膜状導体と比較的薄い膜状導体とを形成し、上記参考例29と同様の特性評価を行った。
すなわち、参考例29と同様、スクリーン印刷法に基づいてセラミック基板の表面に各導体ペーストを塗布し、ペーストごとに薄い塗膜と厚い塗膜を形成した。その後、参考例29と同様の焼成処理を行い、比較的厚い膜状導体(膜厚:12〜15μm)と、比較的薄い膜状導体(膜厚:6〜8μm)を形成した。
次いで得られた各膜状導体の特性評価として、シート抵抗値、半田濡れ性、半田耐熱性および引っ張り強度を上記参考例と同様にして試験・測定した。結果を以下の表11及び表12に示す。
【0085】
【表11】
【0086】
【表12】
【0087】
表11及び12に示した結果から明らかなように、これら参考例に係る導体ペーストによると、比較的厚い膜状導電膜と実質的に同等の導電性、半田濡れ性および半田耐熱性を具備する10μm以下の薄い膜状導電膜を形成することができる。このことは、本発明の導体ペーストによると、電気的特性及び/又は機械的特性に優れた薄膜回路基板や薄膜ハイブリッドIC等のセラミック電子部品を好適に製造し得ることを示すものである。
【0088】
【0089】
【0090】
<実施例1及び2、参考例31〜33:側面導体膜形成用Agペースト>
表13に参考例31〜33ならびに実施例1及び2として示す計5種類の組成の側面導体膜形成用Agペーストを調製した。
すなわち、Agベース微粒子として一般的な湿式法により調製された平均粒径が0.3〜0.5μm(参考例32を除く)又は0.6〜0.8μm(参考例32のみ)の範囲にある略球状のAg粉末を使用した。また、コーティング材料として参考例31〜33ではアルミニウムアルコキシド(アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート)を用い、実施例1と実施例2ではジルコニウムアルコキシド(ジルコニウムブトキシド)を用いた。而して、適当な有機溶剤(ここではメタノール)に上記金属アルコキシドを添加し、濃度5〜100g/lのコーティング用溶液を調製した。次いで、かかる溶液中に上記Ag粉末を適当量懸濁させ、適宜撹拌しつつ1〜3時間懸濁状態を維持した。その後、Ag粉末を回収し、60〜110℃で通風乾燥した。
以上の処理によって、酸化物(Al2O3又はZrO2)換算でAg粉末の略0.0125〜0.1wt%(参考例31〜33)、0.025〜0.5wt%(実施例1)又は0.05〜1wt%(実施例2)となる量のアルミニウムアルコキシド又はジルコニウムアルコキシドによって表面がほぼ均等にコーティングされたAg粉末(以下「コーティングAg粉末」という。)を得た。なお、かかるコーティング量の調整は、上記コーティング溶液の金属アルコキシド濃度及び必要に応じてAg粉末の懸濁時間を適宜調節することによって容易に行うことができる。
【0091】
側面導体形成用Agペーストの調製には、無機酸化物粉末として平均粒径:1〜5μm、比表面積:0.5〜1.5m2/gの酸化銅(Cu2O又はCuO)粉末及び平均粒径:1〜10μm、比表面積:0.5〜2.0m2/gの酸化ビスマス(Bi2O3)粉末を使用した。
而して、最終的な濃度(重量比)が65〜75wt%となる量のコーティングAg粉末と、コーティングAg粉末量の0.01〜1.0wt%(参考例31〜33)又は0.02〜2.0wt%(実施例1〜2)に相当する量の酸化ビスマス粉末と、コーティングAg粉末量の0.005〜0.5wt%(参考例31〜33)又は0.01〜1.0wt%(実施例1〜2)に相当する量の酸化銅粉末と、コーティングAg粉末量の1.5〜10wt%に相当する量の有機バインダー(エチルセルロース)と、残部が溶剤(参考例31〜32についてはBC(ブチルカルビトール)即ちジエチレングリコールモノブチルエーテルとターピネオールの混合溶媒、参考例33ならびに実施例1及び2についてはBCとエステル(具体的にはトリメチルペンタジオールモノイソブチレート)の混合溶媒)となるように各材料を秤量し、三本ロールミルを用いて混練した。これにより、表13に示す計5種類のAgペーストを得た。
【0092】
【表13】
【0093】
<参考例36〜47:表面導体膜形成用Agペースト>
表14〜表16に参考例36〜47として示す計12種類の組成の表面導体膜形成用Agペーストを調製した。なお、参考例31〜33ならびに実施例1及び2で使用したものと同タイプのAg粉末、金属アルコキシドを使用した。
すなわち、金属アルコキシド濃度が5〜100g/lのコーティング用溶液を調製し、側面導体膜形成用Agペースト製造時と同様の処理を行って、酸化物(Al2O3又はZrO2)換算でAg粉末の0.025wt%〜0.4wt%のアルミニウムアルコキシド又はジルコニウムアルコキシドによって表面がほぼ均等にコーティングされたコーティングAg粉末を得た。
次いで、側面導体膜形成用Agペースト製造時と同様の処理を行って、最終的なペースト濃度(重量比)が83〜86wt%となる量のコーティングAg粉末と表14〜16に記載の副成分(無機酸化物、有機バインダー、溶剤等)を適宜用いて計12種類のAgペーストを得た。表14〜16の記載から明らかなように、これら表面導体膜形成用Agペーストは、表13の側面導体膜形成用AgペーストよりもAg粉末含有率が高いことを一つの特徴とする。また、参考例36〜44に係るAgペーストは無機酸化物粉末(酸化ビスマス及び酸化銅)を含んでいないことをもう一つの特徴とする。他方、参考例45〜47に係るAgペーストはこれら無機酸化物粉末を比較的高率に含んでいる。なお、各ペーストを製造するのに使用した有機バインダー(エチルセルロース)の含有率(対Ag比%)及び溶剤の種類は、表14〜表16に示したとおりである。また、参考例40及び参考例42に係るペーストの調製にあたっては分散剤(ここではアミン系のものを使用した)を微量配合した。
【0094】
【表14】
【0095】
【表15】
【0096】
【表16】
【0097】
<Agペーストの性能評価>
一般的な回転粘度計(ブルックフィールド社製:型式DV3)及びローター(ブルックフィールド社製:型式SC4−14)を用いてこれらAgペーストの粘度(Pa・s)と粘度比を測定した。結果を表13〜表16の該当欄に示す。なお、表中の1T、10T、50T及び100Tはそれぞれ1rpm、10rpm、50rpm及び100rpmであるときの粘度を示している。
表13から明らかなように、側面導体膜形成用Agペーストは、低粘度である。特に酸化ビスマスの含有量が多いもの(実施例1〜2)の粘度は低く抑えられている。従って、これら実施例に係る側面導体膜形成用Agペーストは、微細なチップ形状のセラミック基材に対しても精細なスクリーン印刷等を好ましく行うことができる。
他方、表14〜16から明らかなように、表面導体膜形成用Agペーストは、側面導体膜形成用Agペーストよりも粘度が高く、基材表面に塗布(印刷)する或いはスルーホールに充填するのに適している。また、Ag粉末含有率が高いため、導体膜の導通抵抗を低く抑えることができる。
【0098】
各Agペーストを用いてそれぞれ形成した導体膜について、乾燥密度(g/cm3)を以下のようにして測定した。すなわち、予め重量を測定しておいたアルミナ基板上に、30mm×20mm角の大きさで導体膜を印刷した。次いで、100〜120℃で10分程度の乾燥処理を施した。かかる印刷処理及び乾燥処理を繰返し、印刷膜を3〜5層重ねて形成した。次いで、この印刷基板の重量を測定し、その測定値(印刷基板重量)からアルミナ基板重量を差し引き、印刷層の重量(乾燥ペースト重量)を算出した。同時に、表面粗さ計等を使用して印刷層の膜厚を測定し、それに基づいて当該印刷層の体積を算出した。乾燥密度は、(印刷層の重量)/(印刷層の体積)より導き出した。
得られた結果を表13〜16の該当欄に示す。各Agペーストは、いずれも良好な乾燥密度の導体膜(即ち導通抵抗の低い導体膜)を形成することができる。
【0099】
また、各Agペーストを用いて導体膜を形成する場合の収縮率(%)を調べた。すなわち、各Agペーストを一般的なスクリーン印刷法に基づいて厚み:約1mmのアルミナ製セラミックシートの表面に塗布し(膜厚:10〜30μm)、最高温度950℃の条件で焼成処理した。常温時(焼成前)と比較したときの700℃及び900℃におけるセラミックシート上での収縮の変化即ち体積減少度合(−%)をTMAを指標として調べた。
得られた結果を表13〜16の該当欄に示す。いずれのAgペーストも比較的低い収縮率(0〜−21%)を示した。特に、参考例36〜41のAgペーストの700℃における収縮率は0〜−10%以内である。このことは、セラミック基材との同時焼成において、当該セラミック基材(アルミナ等)とその表面及び/又は内面に形成された導体膜との間に収縮率差がほとんど生じないことを示している。従って、これらAgペーストを表面導体膜形成用途に使用することによって、或いは積層タイプのセラミック配線基板を製造する場合にはさらに内面導体膜形成用途として使用することによって、同時焼成時におけるセラミック基材との過大な焼成収縮率差の発生を防止し、結果、セラミック基材と導体膜との接着特性に優れ、構造欠陥のないセラミック電子部品を製造することができる。
【0100】
また、これらAgペーストの耐熱性を調べた。すなわち、アルミナ製のセラミック基板上に参考例31のAgペーストを塗布し、950℃で1時間の焼成処理を行った。比較対象として、表面が有機系金属化合物や金属酸化物によってコーティングされていない従来の一般的なAg単体粉末を主成分とする導体ペースト(以下「従来のAgペースト」という。)を塗布したセラミック基板を同条件で焼成処理した。かかる焼成処理後のセラミック基板表面の写真を図1として示す。これら写真から明らかなように、従来のAgペーストを塗布したものは、導体膜の剥離及び蒸発が顕著であった(図1の(A)参照)。一方、本発明に係るAgペーストを塗布したものは、顕著な剥離、蒸発及び発泡が認められず、良好な導体膜(焼結体)が形成・維持された(図1の(B)参照)。このことから、本発明に係るAgペーストは、Agベース微粒子を主成分とする導体ペーストであるにもかかわらず、比較的高温での焼成に対応し得ることが確認された。
【0101】
<セラミック配線基板の製造>
次に、表面導体膜形成用Agペーストを用いて、セラミック基材(ここでは厚みが約2.0mmのアルミナ製基板)の表面に所定のパターン(図2参照)の導体膜を形成した。すなわち、一般的なスクリーン印刷法に基づいてセラミック基板の表面に参考例31のAgペーストを塗布し、膜厚が10〜30μmの塗膜を形成した。続いて、遠赤外線乾燥機を用いて100℃で15分間の乾燥処理を施した。この乾燥処理により、上記塗膜から溶剤が揮発していき、セラミック基板上に未焼成の導体膜が形成された。
次に、この導体膜をセラミック基板ごと焼成した。すなわち、電気炉中で700℃、1時間の焼成処理を行った。この焼成処理によって、上記所定のパターンの導体膜が焼き付けられたセラミック配線基板が得られた(図2の実施例と記載されている(但し上記実施例1及び2とは関係がない)欄の写真参照)。
なお、比較対象として、従来のAgペースト(比較例A)、AgとPdが80/20である合金粉末を主成分とする従来の導体ペースト(比較例B)、ならびにAgとPtが99.5/0.5である合金粉末を主成分とする従来の導体ペーストを使用して、同様の処理を行い、同形状の導体膜が焼き付けられたセラミック配線基板をそれぞれ作製した。
【0102】
半田耐熱性は以下のように試験・測定した。すなわち、セラミック基板の導体膜形成部分にロジンフラックスを塗布した後、当該基板を所定温度の半田(Sn/Pb=60/40(重量比))に所定時間浸漬した。ここでは、かかる半田温度条件及び浸漬時間を230±5℃×30秒、260±5℃×20秒の2通りとした。かかる浸漬後のセラミック基板表面の写真を図2として示す。これら表面写真から明らかなように、参考例31の導体膜は、いずれの条件でもいわゆる「半田くわれ」が実質的に生じなかった。また、Ag/Pd合金から形成された比較例Bの導体膜についても殆ど「半田くわれ」は生じていない。他方、表面がコーティングされていない従来のAg単体から形成された比較例Aの導体膜は著しい「半田くわれ」が生じており、浸漬前と比較して導体膜の30%以上が失われた。
このように、本発明によると、Ag単体を主成分とする導体ペーストから成る導体膜であるにもかかわらず、Niメッキ、半田メッキ等のメッキ処理を施すことなくAg/Pd合金から成る導体膜と同等又はそれ以上の半田耐熱性を実現することができる。
【0103】
<試験例1>
本発明に関連する試験例1として、有機金属塩のコーティング量及び/又は焼成温度と焼成収縮率との関係について考察した。
すなわち、各参考例のAgペーストを調製するのと同様にして、平均粒径0.8〜1.0μmのAg粉末を含有率85wt%となるように溶剤(BC)に分散して成るAgペースト(無機酸化物粉末を含まない)であって、上述のアルミニウムアルコキシドのコーティング量が酸化物(Al2O3)換算でAg粉末の0〜0.5wt%となる計6種類のAgペーストを調製した。
それらペーストを、上記<Agペーストの性能評価>の項で説明したのと同様の方法で、アルミナ製セラミックシートの表面に塗布し、400℃〜900℃の温度条件で焼成処理を行い、収縮率(%)を求めた。その結果を図3に示す。上記コーティング量の範囲では、コーティング量が増加する程、収縮率が減少した。特にコーティング量が0.1%以上のものは、800℃以上(例えば900℃)の温度条件での焼成処理によっても低い収縮率を維持し得ることが確認された。
【0104】
<試験例2>
本発明に関連する試験例2として、無機酸化物粉末の種類及び添加量と接着強度(引っ張り強度)との関係について考察した。
すなわち、各参考例のAgペーストを調製するのと同様にして、平均粒径0.8〜1.0μmのAg粉末であって酸化物(Al2O3)換算でAg粉末の0.1wt%となる量で上述のアルミニウムアルコキシドでコーティングされたAg粉末を含有率85wt%となるように溶剤(BC)に分散してAgペーストを調製した。この試験例では、酸化ビスマス、酸化銅、又は酸化物ガラス(Bi2O3−B2O3−SiO2系ガラス)をAg粉末の0.25wt%、0.5wt%又は1wt%相当量含む、計9種類のAgペーストを調製した。
それらペーストを用いて、上述したものと同様のセラミック配線基板を作製し、上記引っ張り強度試験を行った。その結果を図4に示す。グラフから明らかなように、各Agペーストから形成された導体膜はいずれも高い接着強度を有することが確認された。
【0105】
以上の実施例において、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0106】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の導体ペーストによれば、Pd等の高価な貴金属を多量に用いたり或いはNiめっき処理等を別途行うことなく、実用上充分な半田耐熱性、半田濡れ性、接着強度、導電性を有する膜状導体を形成することができる。このため、本発明の導体ペーストを用いると、安価且つ比較的簡便な処理によって、電気的信頼性及び機械的強度の高い導体層(膜状導体)が形成されたセラミック配線基板その他のセラミック電子部品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (A)は従来のAgペーストを塗布したセラミック基板表面の高温焼成処理後の状態を示す写真であり、(B)は本発明に係るAgペーストを塗布したセラミック基板表面の高温焼成処理後の状態を示す写真である。
【図2】 導体膜の形成された参考例31及び比較例A,Bに係るセラミック配線基板を溶融状態の半田に浸漬した後の当該セラミック基板表面(導体膜)の状態を示す写真である。
【図3】 一試験例における、有機金属塩のコーティング量及び/又は焼成温度と焼成収縮率との関係を示すグラフである。
【図4】 一試験例における、無機酸化物粉末の種類及び添加量と接着強度(引っ張り強度)との関係を示すグラフである。
Claims (3)
- 金属粉末を主成分とする導体ペーストであって、
その金属粉末は、表面が有機系金属化合物でコーティングされた平均粒径が0.5μm未満のAg又はAg主体の合金から成る微粒子から実質的に構成されたものであり、
その有機系金属化合物は、Zrを構成金属元素とする有機酸金属塩、金属アルコキシド又はキレート化合物であり、
前記金属粉末重量の0.01〜1.0wt%に相当する量の酸化銅粉末と前記金属粉末重量の0.02〜2.0wt%に相当する量の酸化ビスマス粉末とを含むことを特徴とする、焼成された膜状導体を積層型セラミック電子部品の側面に形成するための側面導体膜形成用導体ペースト。 - 前記酸化銅粉末及び酸化ビスマス粉末の比表面積は、少なくとも0.5m2/gである、請求項1に記載の側面導体膜形成用導体ペースト。
- 前記有機系金属化合物のコーティング量は、Zrの酸化物換算でペースト中に含まれる前記微粒子全量の0.025〜0.5wt%に相当する量である、請求項1又は2に記載の側面導体膜形成用導体ペースト。
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