JP3637160B2 - 木工用フライス盤及び側フライスカッタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、主として斗組(桝組)用ますの加工に用いる木工用フライス盤と、そのフライス盤に採用する曲面加工用の側フライスカッタに関する。
【0002】
【従来の技術】
神社、仏閣には、大斗(鬼斗)、巻斗、延び斗、捨て斗、ひら斗と言った各種のますが数多く使用されている。
【0003】
図13に、それ等のますを代表して大斗30を示す。この大斗30には、斗繰り31が施されている。その斗繰り31は、斗じり32側の周縁を凹形曲面(円弧や楕円の曲面)に縁取りしたものである。このほか、大斗30には、上面にわくひじきを組入れる十文字の溝33が設けられる。
【0004】
上記の斗繰り31は、大斗以外のますにも設けられる。また、柱を乗せる礎盤などにも類似の縁取りが施されるが、ここでは、ます以外のものに付される凹形曲面の縁取りも斗繰りと見なし、以下では表現を「斗繰り」に統一する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
斗繰りは、通常、宮大工が手作業で加工しているが、人手で違和感の無い曲面に仕上げるのには高度の技術を要する。また、手作業では加工能率が非常に悪い。
【0006】
数多く使用するますの加工に多くの時間と手間を費やすことが、神社、仏閣の建立に長い期間を要し、建築費も高くなる原因のひとつと言っても過言ではない。
【0007】
そこで、この発明は、斗繰りの高速機械加工を実現しようとするものである。この機械加工に当たっては、以下のことが問題となる。
即ち、斗繰りの形状、サイズに合致した刃形を持つフライスカッタを用いて既存の木工用フライス盤で刃形転写の加工を行う方法でも加工の機械化が図れるが、この方法では、工具費、工具の交換等が無視できないものになる。
【0008】
斗繰りのサイズは、ますの大きさによって変わるので、刃形転写の加工を行う場合には、斗繰りサイズに合った刃形の工具を多数用意する必要があり、工具費が膨大になる。また、ます1個当たりの加工費も、工具費分が上乗せされるため非常に高くなってしまう。さらに、加工ロットが変わる度に工具を交換する必要があるので、時間的なロスが生じて機械の稼働率が低下し、これも価格に影響する。
【0009】
この発明は、かかる不具合も併せて解消するために、同一工具を用いて1/4円の円弧の斗繰りの曲率変化に対応できるようにした木工用フライス盤と、そのフライス盤に採用する曲面加工用の側フライスカッタを提供することを第1の課題としている。
【0010】
また、斗繰りは形状も様々であり、各形状に合致した刃形の工具を多種揃える場合にも上記と同様の問題が生じるので、工具を交換せずに加工面の形状変化にも対応できるようにしたフライス盤を提供することを第2の課題としている。
【0011】
さらに、ますの上面にはひじきを嵌める一文字の溝や十文字の溝が加工されるので、斗繰り加工だけでなく、溝入れ加工も行えるフライス盤を提供することを第3の課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題の解決策として提供するこの発明のフライス盤と側フライスカッタを下記する。側フライスカッタは、斗繰り加工において重要な役割を果たす特徴あるカッタである。従って、そのカッタの構成を先に述べる。
【0013】
この発明の側フライスカッタは、中心に軸穴を有する本体の外周に、第1及び第2の切刃をカッタ周方向に交互配列にして具備させ、第1の切刃のすくい面は本体の一端面に対して鋭角に交わり、一方、第2の切刃のすくい面は本体の他端面に対して鋭角に交わる方向に各々傾け、さらに、第1及び第2の切刃は、カッタの回転方向前方から直視した刃形が半円になる円弧刃を本体の最周部に有し、その円弧刃に対して第1の切刃は本体の一端面側で、第2の切刃は本体の他端面側で各々、すくい面とその面に対して鋭角な面との交差稜で形成されるカッタ径方向の直線刃が連なった形状にしてある。
【0014】
また、この発明のフライス盤は、加工ヘッドと、そのヘッドの下方に設置される横送り機構を備えた加工テーブルと、前記加工ヘッド又は加工テーブルの昇降機構を有し、前記加工ヘッドが、
水平軸に対して45°の傾きをもつ前下りの傾斜アーム、可動ベース、この可動ベースを傾斜アームの先端に傾斜アームの軸心を中心にして回転可能に連結する第1のカッタ姿勢調整機構、可動ベースを回転した各位置に固定する第1ロック手段、可動ベースに軸受を取付けてその軸受で支持するスピンドル及び可動ベース上のモータでスピンドルを回転させる回転駆動機構を備えて構成され、前記スピンドルは加工テーブルの送り方向に向けて水平に配向され、このスピンドルの先端部に上述したこの発明の側フライスカッタを装着して曲率の異なる凹形円弧面の加工を行えるようにしてある。このフライス盤は、既述の要素を備えていると1/4円の円弧の斗繰りの曲率変化に対応できる。
【0015】
また、加工ヘッドに、更に水平アームと、この水平アームの先端に、前記傾斜アームを水平軸を中心にして回転可能に連結する第2のカッタ姿勢調整機構と、傾斜アームを回転した各位置に固定する第2のロック手段を付加した構成にすると、斗繰りの形状変化にも対応でき、サイズの異なる楕円の面等も加工可能となる。
【0016】
さらに、加工ヘッド又は加工テーブルの前後送り機構を付加すると溝加工も可能になる。
【0017】
なお、第2のカッタ姿勢調整機構は、水平アーム内の支軸で回転可能に支持し、傾斜アームに対しては固定するウォームホイルと、このウォームホイルに噛合させる操作ハンドル付きのウォームとから成る傾斜アームの回転駆動機構を備えるものが好ましい。
【0018】
【作用】
この発明のフライス盤は、スピンドルに装着したカッタの姿勢を変えて加工する斗繰り(円弧面)の曲率や形状を変化させる。その原理を図8乃至図11に基づいて解説する。
【0019】
図8は、側フライスカッタ1(図は模式化して表した)の原姿勢を表したものであって、フライス盤の側面視でカッタ1の端面が見えている。
【0020】
この原姿勢でカッタ1をワークWに切込ませてワークWを横送り(図は紙面に対して垂直方向に移動)すると、最大半径R(=カッタ半径)の曲面の斗繰り31を加工できる。
【0021】
次に、軸Oを中心にして可動ベース14を回転させると、カッタ1の外郭形状はフライス盤の側面視において楕円になる。その楕円は、図9に示すように、可動ベース14の回転角が大きくなるに従って段々と細長くなっていき、可動ベース14が原姿勢から90°回転したところでカッタ1は、図8に一点鎖線で示すように、真横から見た姿になる。カッタ1の円弧刃Qは、実質刃形、即ち、カッタの回転方向前方から直視した刃形が半円であるので、カッタ1が側面視の姿になった状態でワークWを横送りして加工を行うと最小半径rの曲面の斗繰り31ができる。
【0022】
ここで、最小半径rの加工では、円弧刃Qの実質刃形が転写されて斗繰り31がアール半径の一定した円弧の面になる。また、最大半径Rの加工では、切刃最外端の移動軌跡が円を画くことによって斗繰り31はアール半径の一定した曲面になる。
【0023】
Rとrの間の加工では、加工面に対する円弧刃Qの接触位置が変化する。図10はそれを解説したものである。
【0024】
ワークWに対する喰付き側では円弧刃Qの一端(a点)が加工面に接し、その接触点がカッタの回転で徐々に移動して切抜け側では円弧刃Qの他端側(b点)が加工面に接する。
【0026】
次に、図8において、水平軸Pを中心にして傾斜アーム12を回転させると、カッタ1のフライス盤側面視での外郭形状は、図11に示すように円から段々と細長い楕円になっていく。そして、傾斜アーム12が原姿勢から90°回転した位置でカッタ1が側面視の姿になる。このときの円の直径及び楕円の長軸長さは2・Rである。一方、軸Oを中心にカッタ1が原姿勢から90°回転している状態で、軸Pを中心にして傾斜アーム12を回転角90°の位置まで回転させると、カッタ1の外郭形状は、図12に示すように長軸2R、短軸Lの縦長の楕円に変化し、従って、2つの軸O、Pを中心としたカッタの姿勢調整を行えば、サイズだけでなく、形状の異なる斗繰りの加工も可能になる。
【0028】
斗繰りは、1/4円の形状よりも、面の片側が流れたもの(曲率が次第に小さくなるもの)の方が見た目が良いので、そのような形状にすることが多い。上述した機能を備えていれば、曲面の片端が流れて楕円になる斗繰り形状にも対応できる(図11の中央図参照)。
【0029】
なお、軸O或いはPを中心にしたカッタの姿勢調整には、刃先位置の上下変動が伴う。その上下変動量を吸収するために、加工ヘッド又は加工テーブルの昇降機構が必要である。
【0030】
また、図8の原姿勢でカッタ1をワークWに切込ませてカッタとワークを前後方向(軸Pの長手方向)に相対移動させる(そのために加工ヘッド又は加工テーブルの前後送り機構が必要)と溝入れ加工が行える。場合によっては、カッタの姿勢調整で刃先位置が前後にずれることがあり、そのずれを前後送りで吸収できる(前後送りがなければワークをずらす必要がある)ので、溝加工を目的としない場合にも、前後送り機構は有効なものである。
【0031】
このほか、第2のカッタ姿勢調整機構は、第1のカッタ姿勢調整機構による調整で加工ヘッドの先端側の重心がずれると傾斜アームの回転操作がし難くなるので、操作力を増幅して伝達でき、また、重心のずれによる傾斜アームの自然回転も阻止できるものが望ましい。ウォームギヤを使用した回転駆動機構を備えたものは、その要求に応えることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
図1に、この発明の側フライスカッタの実施形態を示す。この側フライスカッタ1は、中心に軸穴2を有する本体3の外周に偶数本の爪4を設けてその爪に切刃5及び6を付けている。
【0033】
爪4は、切刃5、6のラジアルレーキを正となすために、前向きに倒れる方向に傾けてある。この爪4は、カッタの周方向に整列させて一定ピッチで配置してある。
【0034】
また、図1(b)に示すように、切刃5のすくい面7は、本体3の一端面に対して鋭角に交わる方向に角度α傾け、一方、切刃6のすくい面8は、本体3の他端面に対して鋭角に交わる方向に角度α傾けてある。
【0035】
切刃5は、カッタの回転方向前方から直視した刃形が半円になる円弧刃Qの一端に直線刃Sを連ねた形状にしてある。
【0036】
切刃6は、直線刃Sを円弧刃Qの他端に連ねた点を除いて切刃5と同じ構成になっている。直線刃Sはすくい面とそれに鋭角に交わる面との交差稜で形成されており、この直線刃が付加されたことによって溝入れ加工も可能になっている。
【0037】
切刃5、6の円弧刃Qは、カッタを定位置で回転させたときに軌跡が互いに重なる大きさ、配置にしてある。
【0038】
なお、切刃5、6の円弧刃Qは、すくい面7、8に対して直角な方向から見ると、対称形状の楕円をなしている。その楕円について、ここではR10(mm)の円弧とR9.5(mm)の円弧がつながる大きさにしたが、この寸法は、すくい面7、8の傾き角αを考慮して自由に定めることができる。
【0039】
すくい面7、8の傾き角αも、ここでは切味を重視して20°に定めたが、この値に制限されない。
【0040】
また、切刃5、6は、本体3に超硬合金のブレードを鑞付けしてそのブレードに付したが、本体に一体に加工される切刃にしてもよい。
【0041】
このほか、カッタの直径は254mmとした。この寸法も加工に支障の無い範囲で自由に変更できる。
【0042】
図2乃至図5は、この発明のフライス盤の実施形態である。
【0043】
このフライス盤9は、図2、図3に示すように、加工ヘッド10、加工ヘッドの昇降機構20、昇降機構20と加工ヘッド10を支持する可動フレーム21、その可動フレームの前後送り機構22、加工テーブル23、可動フレーム21と加工テーブル23を支持する本体フレーム24、加工テーブル23の横送り機構25及び加工テーブル23上にワークWを固定するクランパ26によって構成されている。
【0044】
加工ヘッド10は(図6を同時参照)、昇降機構20のスライドテーブル20eに固定する水平アーム11と、水平軸Pに対して先端側(軸O)が45°の傾きをもつ傾斜アーム12と、この傾斜アームを水平アーム11の先端に水平軸Pを中心にして回転可能に連結する第2のカッタ姿勢調整機構13と、可動ベース14及びこのベースを傾斜アーム12の先端に軸Oを中心にして回転可能に連結する第1のカッタ姿勢調整機構15と、第1、第2のカッタ姿勢調整機構15、13にそれぞれ付属させるロックリング16と、可動ベース14上に設ける軸受17と、この軸受で支持するスピンドル18と、可動ベース上に設置したモータ19の回転をプーリ、ベルト(図示せず)で伝達してスピンドル18を回転させる回転駆動機構とを備えて構成されており、この加工ヘッドのスピンドル先端に図1の側フライスカッタ1が装着される。
【0045】
昇降機構20は、図4に示すように、モータ20a、そのモータ20aで回転させるボールねじ20b、スライドテーブル20e、そのテーブルのスライドガイド20c(図はレールとそれに案内されるスライダ)、スライドテーブル20eに固定してボールねじ20bに螺合させた可動プレート20dとで構成される周知の機構であり、これが加工ヘッド10の高さ位置を調整する。
【0046】
前後送り機構22も、図4に示すように、ボールねじを利用した一般的な機構である。この機構22は、モータ22aとボールねじ22bが回転しながら可動フレーム21と共に移動するが、基本的には昇降機構20と大差の無い機構であるので、詳細説明は省く。
【0047】
なお、昇降機構20、前後送り機構22は、シリンダで駆動するもの、ラックとモータ駆動のピニオンで駆動するものなどであってもよい。
【0048】
横送り機構25は、ハンドル25aをつけた軸25bに歯車25cを取付け、その歯車25cをテーブル下面のラック25dに噛合させてハンドル操作で加工テーブル23を横送りするようにしている。25eは、レールとスライダからなる加工テーブルのスライドガイドである。この手動方式の横送り機構25は、安価であるし、送りのかけ方も自由に変えられるが、動力駆動の横送り機構を採用することも勿論制限されない。
【0049】
次に、図5を参照してカッタ姿勢調整機構13、15について説明する。
【0050】
第2のカッタ姿勢調整機構13は、加工面の形状を楕円に変化させる機構である。この機構13は、一端がスライドテーブル20eに固定された支軸13a(これが図8の軸Pになる)、その支軸に回転可能に外嵌したウォームホイル13b、このウォームホイルに噛合させたウォーム13cの3者から成る回転駆動機構と、水平アーム11の先端に固定したフランジ13dと、傾斜アーム12の後端に固定してフランジ13dに密着させるフランジ13eを有している。
【0051】
ウォーム13cは、図2、図3及び図6、図7に示すハンドル13fを有しており、そのハンドル13fを回転させるとウォームホイル13bが回転する。そのウォームホイル13bにフランジ13eが連結されており、従って、ハンドル13fを操作すると傾斜アーム12が回転し、カッタ1による加工面の形状が楕円に変わる。
【0052】
次に、第1のカッタ姿勢調整機構15は、加工面の円弧半径を変化させるための機構であって、傾斜アーム12の先端にフランジ15aを固定し、このフランジ15aの中心に支軸15b(これが図8の軸Oになる)を貫通させ、その支軸15bでフランジ15cを回転可能に支持した構造にしてある。フランジ15cは可動ベース14に固定されており、従って、支軸15bを中心にして可動ベース14を回転させることができる。
【0053】
この第1のカッタ姿勢調整機構15も回転駆動機構を付随させることができるが、可動ベース14は手で簡単に回すことができるので、ここでは、構造の簡素化を重視して回転駆動機構の無い構成にした。
【0054】
ロックリング16は、支軸13a及び支軸15bの先端に各々螺合させてある。支軸13aに螺合したロックリング16を締め付けると、フランジ13eが押圧されて傾斜アーム12が回転調整済みの位置に固定される。また、支軸15bに螺合したロックリング16を締め付けると、フランジ15cが押圧されて可動ベース14が回転調整済みの位置に固定される。
【0055】
2つのロックリング16は、どちらもそのリングに取付けたレバー16aを操作して回転させる。レバー16aは、傾斜アーム12に設けた長孔に通して外部に引き出してあり、長孔の両端に規制される範囲で移動させることができる。
【0056】
図2、図3の27は、カッタ1を囲う安全カバーである。この安全カバー27にフレキシブルダクト(図示せず)をつけてそのダクトに吸塵機(これも図示せず)を接続し、安全カバー27を吸引フードにして切屑を吸引回収することも可能である。
【0057】
また、例示のフライス盤では、ひとつの斗繰りを加工し終えたら、クランパ26をアンクランプにしてワークWを90°回転させ、再クランプ後に次の斗繰りを加工する作業をひとつのますに対して3回繰り返すことになるので、作業の迅速化のために加工テーブル23上に割り出し機能のある回転テーブルを設置してその回転テーブル上にワークWをセットする構成も考えられる。加工テーブル23の位置を低くして回転テーブルの設置スペースを加工ヘッド10との間に確保すれば、そのような使い方も可能になる。
【0058】
以上の如く構成したこの発明のフライス盤は、軸O、Pを中心にしたカッタの姿勢調整を行って、カッタの加工形状を加工する斗繰りの大きさや形状に合致させる。図6は、軸Oを中心にして図2の位置からカッタ1を90°以下の角度で回転させた状態での円弧斗繰りの加工例、図7は、図6の位置から更に軸Pを中心にしてカッタ1を回転させた楕円形斗繰りの加工例を各々示している。なお、例示のフライス盤は、ワークWの端面に加工すべき曲線を画き、カッタ1をワークWの手前に置いて手で回転させながら刃先がワークに画いた曲線に沿って移動するかを確かめる方法で姿勢調整を行うようにしている。
【0059】
この姿勢調整の後、スピンドル18を回転させ、テーブル23に送りをかけて斗繰りを加工する。この加工は、斗繰りサイズが大きくてワークの取代が多ければ、事前の粗加工で最終取代を少なくして行うのがよい。斗繰りサイズが小さければ粗加工無しで一気に斗繰りを加工することが可能である。
【0060】
また、ますの溝入れ加工に際しては、この発明のカッタ1を用いると、ますに設ける溝の巾よりも加工溝巾が狭くなるので、ひとつの溝を何回かに分けて加工する。加工後の溝は溝底のコーナに小さなアール曲面が残されたものになるが、溝に嵌めるひじきの先端は通常面取りされるので、コーナに曲面が残っても特に問題にはならない。その曲面が残存することやひとつの溝を数回に分けて加工することが嫌われるなら、カッタを一般的な平刃形状でしかも巾の広いものに交換して溝加工を行えばよい。
【0061】
なお、例示のフライス盤は、約30cm長さの斗繰りをひとつ加工するのに10秒もかからず、加工の大巾な高速化が図れた。
【0062】
以上述べたように、この発明のフライス盤及びフライスカッタを用いると、カッタを取替えずに斗繰りの曲率の変化に対応することができ、工具費、機械の稼働率向上の面で非常に有利になる。加えて、高速加工により生産性の向上が図れ、加工コストを大幅に低減できる。また、加工したますの品質も一定し、高品質のますを安価に提供することが可能になる。
【0063】
また、第2のカッタ姿勢調整機構を付加したフライス盤は、斗繰りの曲率変化だけでなく、形状変化にも対応でき、どのような形状の斗繰りも加工可能となる。勿論、そのために加工コストの低減効果は更に高まる。
【0064】
さらに、第2のカッタ姿勢調整機構に傾斜アームの回転駆動機構を付随させたものは、姿勢調整をより楽に、正確に行うことが可能となる。
【0065】
このほか、加工ヘッドと加工テーブルを前後方向に相対移動させる前後送り機構を備えるものは溝加工が可能となるほか、刃先の前後方向への位置ずれを前後送りで吸収することも可能となり、より実用的で多機能のフライス盤になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)この発明の側フライスカッタの実施形態を示す斜視図
(b)同上のカッタの側面の一部を展開して示す図
(c)カッタの回転方向前方から直視した切刃5の刃形図
(d)カッタの回転方向前方から直視した切刃6の刃形図
【図2】この発明のフライス盤の実施形態を示す側面図
【図3】同上のフライス盤の正面図
【図4】昇降機構と前後送り機構の詳細を示す断面図
【図5】第1、第2の姿勢調整機構の詳細を示す断面図
【図6】円弧斗繰りの加工例を示す側面図
【図7】楕円形斗繰りの加工例を示す側面図
【図8】この発明のフライス盤の加工ヘッド部を模式化して示す図
【図9】軸Oを中心にした可動ベースの回転でカッタの外郭形状が変わっていく様子を簡略化して示す図
【図10】カッタが斜めになった状態での加工を解説するための図
【図11】軸Pを中心にした傾斜アームの回転でカッタの外郭形状が変わっていく様子を簡略化して示す図
【図12】カッタが原姿勢から軸O中心に90°回転し、その位置から軸Pを中心に回転したときに外郭形状が変わっていく様子を簡略化して示す図
【図13】(a)大斗の斜視図
(b)同上の大斗の側面図
Claims (5)
- 中心に軸穴を有する本体の外周に、第1及び第2の切刃をカッタ周方向に交互配列にして具備させ、第1の切刃のすくい面は本体の一端面に対して鋭角に交わり、一方、第2の切刃のすくい面は本体の他端面に対して鋭角に交わる方向に各々傾け、さらに、第1及び第2の切刃は、カッタの回転方向前方から直視した刃形が半円になる円弧刃を本体の最周部に有し、その円弧刃に対して第1の切刃は本体の一端面側で、第2の切刃は本体の他端面側で各々、すくい面とその面に対して鋭角な面との交差稜で形成されるカッタ径方向の直線刃が連なった形状にしてある木工用側フライスカッタ。
- 加工ヘッドと、そのヘッドの下方に設置される横送り機構を備えた加工テーブルと、前記加工ヘッド又は加工テーブルの昇降機構を有し、前記加工ヘッドが、
水平軸に対して45°の傾きをもつ前下りの傾斜アーム、可動ベース、この可動ベースを傾斜アームの先端に傾斜アームの軸心を中心にして回転可能に連結する第1のカッタ姿勢調整機構、可動ベースを回転した各位置に固定する第1ロック手段、可動ベースに軸受を取付けてその軸受で支持するスピンドル及び可動ベース上のモータでスピンドルを回転させる回転駆動機構を備えて構成され、前記スピンドルは加工テーブルの送り方向に向けて水平に配向され、このスピンドルの先端部に請求項1記載の側フライスカッタを装着して曲率の異なる凹形円弧面の加工を行えるようにしてある木工用フライス盤。 - 請求項2記載のフライス盤の加工ヘッドに、更に水平アームと、この水平アームの先端に、前記傾斜アームを水平軸を中心にして回転可能に連結する第2のカッタ姿勢調整機構と、傾斜アームを回転した各位置に固定する第2のロック手段を付加して構成される木工用フライス盤。
- 第2のカッタ姿勢調整機構が、水平アーム内の支軸で回転可能に支持し、傾斜アームに対しては固定するウォームホイルと、このウォームホイルに噛合させる操作ハンドル付きのウォームとから成る傾斜アームの回転駆動機構を備えていることを特徴とする請求項3記載の木工用フライス盤。
- 加工ヘッド又は加工テーブルの前後送り機構を付加してある請求項2又は3記載の木工用フライス盤。
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JP24466496A JP3637160B2 (ja) | 1996-09-17 | 1996-09-17 | 木工用フライス盤及び側フライスカッタ |
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JPH1086102A JPH1086102A (ja) | 1998-04-07 |
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Family Applications (1)
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- 1996-09-17 JP JP24466496A patent/JP3637160B2/ja not_active Expired - Lifetime
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