JP3636260B2 - 光学樹脂用組成物及び光学樹脂 - Google Patents

光学樹脂用組成物及び光学樹脂 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高屈折率、高アッベ数であり、透明性、耐熱性等に優れた樹脂を与えることのできる新規な光学樹脂用組成物、該組成物を重合硬化させて得られる光学樹脂、及び光学レンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂製の光学材料は、ガラス製の光学材料に比較して比重が約半分であり、軽量にできることや、耐衝撃性に優れていることから、その需要は増大している。光学レンズ、特に、眼鏡レンズ用の材料としては、眼鏡全体の重量が軽くできることや、安全性等から、レンズの大部分が樹脂製となってきている。
しかしながら、従来から広く用いられている、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂は、屈折率が1.5前後と低く、レンズの中心厚や、コバ厚が厚くなってしまい、より屈折率の高い光学樹脂が望まれている。
この解決のために、樹脂中に、屈折率を高める効果のある臭素等のハロゲン原子や硫黄原子を導入する方法の検討が行われ、含ハロゲン(メタ)アクリレート樹脂や、含硫ウレタン樹脂(特開昭63−46213)、ポリエン−ポリチオール樹脂(特開平1−197528等)等の高屈折率光学樹脂が提案されている。
【0003】
上記の含ハロゲン(メタ)アクリレート樹脂は、樹脂の比重が高い、耐候性が悪い等の問題を有する。
また、含硫ウレタン樹脂は、高屈折率で耐衝撃性が良好である等、バランスに優れた樹脂であるものの、重合がウレタン反応という縮合反応であるために、ポットライフが短いことや、光学的な均一性を保ちながら硬化させるためには、例えば、24時間というような長い重合時間を必要とする。
さらにまた、ポリエン−ポリチオール樹脂は、チオール基の不飽和基への付加反応を用いて、ポリエン化合物とポリチオール化合物とをラジカル付加して得られ、UV硬化等で、短時間で硬化させることも可能であるが、屈折率を高くするためにポリチオール化合物の含量を大きくすると、耐熱性が大幅に低下してしまうため、目的とする用途には用いることができないことや、付加反応が進み易いことからポットライフが短い等の問題を有する。
【0004】
本発明者らは、高屈折率光学樹脂として、チオ(メタ)アクリレート化合物、及び、樹脂を提案してきた(特開昭63−188660、特公平7−37437等)。該樹脂は、屈折率が高く、耐熱性、耐擦傷性にも優れた樹脂であるが、更に高屈折率、高アッベ数を有する重合性化合物、及び、樹脂が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高屈折率、高アッベ数であり、透明性、耐熱性等に優れた樹脂を与えることのできる新規な光学樹脂用組成物、該組成物を重合硬化させて得られる光学樹脂、及び光学レンズを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、低粘度であり、重合も容易である高屈折率光学樹脂を与える組成物として、ある種のチオ(メタ)アクリレート化合物が好適に用いられること、また、該組成物を重合して得られる樹脂が光学レンズに好適に用いられることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、▲1▼1分子中に平均1.5〜3.5個の(メタ)アクリロイル基を有する一般式(1)(化3)で表される重合性化合物の混合物を含有してなる光学樹脂用組成物に関するものである。
【0007】
【化3】
Figure 0003636260
〔式中、R1 は下記の基(化4)を表し、R2 は炭素数4以下のアルキル基またはベンジル基を表し、R3 は水素原子またはメチル基を表し、nは0〜3の整数を表す〕
【0008】
【化4】
Figure 0003636260
【0009】
また、本発明は、▲2▼R2 がメチル基で、R3 が水素原子である前記▲1▼の光学樹脂用組成物、
▲3▼一般式(1)で表される重合性化合物の混合物と共重合可能な重合性化合物を含有する前記▲1▼または▲2▼の光学樹脂用組成物、
▲4▼前記▲1▼〜▲3▼のいずれか光学樹脂用組成物を硬化してなる光学樹脂、
▲5▼前記▲4▼の光学樹脂からなる光学レンズ、に関するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の光学樹脂用組成物は、1分子中に平均1.5〜3.5個の(メタ)アクリロイル基を有する一般式(1)で表される重合性化合物の混合物を含有してなる光学樹脂用組成物である。
一般式(1)で表される重合性化合物の混合物は、硫黄原子の含有率が高く、高屈折率を与える、下記式(2)(化5)で表されるポリチオール化合物から得られる。すなわち、式(2)で表されるポリチオール化合物のチオール基の一部を、アルキルスルフィド化、または、ベンジルスルフィド化し、残りのチオール基をチオ(メタ)アクリレート化することにより得られる。
一般式(1)で表される重合性化合物の混合物は、式(2)のチオール基を、アルキルスルフィド化、または、ベンジルスルフィド化することなしに得られるチオ(メタ)アクリレート化合物に比較して、低粘度であり、また、重合も容易である。
【0011】
【化5】
Figure 0003636260
このポリチオール化合物は、特開平7−252207号公報に記載の方法、すなわち、エピハロヒドリンと2−メルカプトエタノールとを反応させ、得られたジオール体をさらに硫化ナトリウムと反応させテトラオール体を得、次いで、このテトラオール体を塩酸中、チオ尿素と反応させ、アンモニア水で加水分解する方法により容易に製造される。
【0012】
このポリチオール化合物のチオール基の一部を、アルキルスルフィド化、または、ベンジルスルフィド化する反応には、公知のスルフィド化反応を用いることができる。例えば、▲1▼塩基の存在下でハロゲン化アルキル化合物またはハロゲン化ベンジル化合物と、ポリチオール化合物とを反応させる方法、
▲2▼塩基の存在下でジアルキル硫酸とポリチオール化合物とを反応させる方法、
▲3▼ジアゾメタンとポリチオール化合物とを反応させる方法、等が挙げられる。
チオール基の一部のスルフィド化には、得られる重合性化合物の屈折率を高めるために、炭素数4以下のアルキル残基、または、ベンジル残基が好適である。さらには、メチル基がより好適に用いられる。
【0013】
式(2)で表されるポリチオール化合物のチオール基に対する、上記のスルフィド化の割合は、得られた重合性化合物またはその混合物を含有する組成物が、目的とする光学物性、耐熱性等を有する範囲で決められる。
混合物の場合、その割合は、1分子中に、平均して、スルフィド結合が0.5〜2.5個が好ましく、より好ましくは0.7〜2.2個、さらに好ましくは1.0〜2.0個である。
なお、混合物中には、重合性を全く有しないスルフィド結合が1分子中に4個の化合物が存在しないことは当然のことである。
【0014】
次いで、残りのチオール基をチオ(メタ)アクリレートに誘導して、目的とする重合性化合物を得る。この反応には、一般的な(メタ)アクリル酸ハライドとチオール基との反応(特開昭64−26613、同64−31759、同63−188660等)を用いることができる。副反応の少なさから、β−ハロプロピオン酸チオエステルに誘導した後に、脱ハロゲン化水素反応を行うことにより、チオ(メタ)アクリレート化合物を得る方法(特開平2−172968、特開平2−172969、特開平4−29967等に記載の方法)がより好適に用いられる。さらには、上記β−ハロプロピオン酸チオエステルに誘導する際に、β−ハロプロピオン酸ハライドと、チオール化合物とを、塩基の不存在下で反応を行うことがより好ましい。
本発明において、一般式(1)で表される重合性化合物の混合物は、1分子中に平均1.5〜3.5個の(メタ)アクリロイル基を有する混合物であり、屈折率の高さ、重合のし易さ、合成上の原料入手の容易さ等から、チオアクリレート化合物がより好ましい。
【0015】
本発明の光学樹脂用組成物は、一般式(1)で表される重合性化合物の混合物を混合してなる組成物であり、さらには、これらと共重合可能な他の重合性の化合物を混合してなる組成物である。
共重合可能な他の重合性の化合物としては、本発明の重合性化合物と、共重合するものであれば特に限定されないが、共重合性などから(メタ)アクリレート化合物、ビニルフェニル化合物が好ましい。
【0016】
(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、
ブトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、
【0017】
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、
2−(2−フェノキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−[2−(2−フェノキシエトキシ)エトキシ]エチル(メタ)アクリレート、4−フェノキシブチル(メタ)アクリレート、
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチエレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、
2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロキシプロピロキシフェニル〕プロパン、ビス〔4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル〕メタン、ビス〔4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル〕メタン、
【0018】
1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、スピログリコールジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリメチロルプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート類、1,1,3,3,5,5−ヘキサ〔(メタ)アクリロキシ〕シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ〔(メタ)アクリロキシエチルオキシ〕シクロトリホスファゼン等が挙げられる。
ビニルフェニル化合物としては、スチレン、メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン等が挙げられる。
共重合させる他の重合性の化合物の割合は、光学物性や機械的物性を損なわない範囲で決められ、化学的な構造などにより一義的には決められないが、60重量%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の光学樹脂は、上記の光学樹脂用組成物を重合硬化して得られるものである。
硬化方法としては、例えば、公知のラジカル重合を用いた注型重合等が用いられる。具体的には、本発明の光学樹脂用組成物に、例えば、ラジカル重合開始剤、光増感剤等のラジカル発生剤を添加し、よく混合した後、濾過し、さらに減圧下で十分に脱泡した後に、モールド中に注入してラジカル重合を行う。
モールドは、例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニール等からなるガスケットを介した鏡面研磨した二枚の鋳型により構成される。ここで、鋳型としては、ガラスとガラス、ガラスとプラスチック板、ガラスと金属板等の組合せの鋳型がある。また、ガスケットとしては、上記した軟質熱可塑性樹脂を用いる他、2枚の鋳型をポリエステル粘着テープ等で固定しても良い。また、鋳型に離型処理などを行なってもよい。
【0020】
ラジカル重合としては、熱による熱重合、紫外線による光重合、ガンマー線による重合等を採用しうるが、熱重合では数時間から数十時間を要するのに対して、光重合は数秒から数分で硬化可能であることや、必要とする装置の規模等から紫外線による光重合がより好適に用いられる。
熱重合におけるラジカル発生剤、即ち、ラジカル重合開始剤は特に限定されず、公知の過酸化ベンゾイル、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどの過酸化物およびアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が用いられる。これらの1種または2種以上の混合物は、組成物100重量部に対し、0.005〜5重量部、好ましくは0.01〜3重量部の割合で用いられる。
熱重合法によって硬化する場合の重合温度、重合時間は、使用するラジカル重合開始剤、硬化物の大きさ等により決められる。
【0021】
紫外線による光重合におけるラジカル発生剤、即ち、増感剤は、特に限定されず、公知の4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2(O−エトキシカルボニル)オキシム、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアンスラキノン、4’,4”−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が用いられる。これらの1種または2種以上の混合物は、組成物100重量部に対し、0.005〜5重量部、好ましくは0.01〜3重量部の割合で用いられる。さらに上記増感剤に前述のラジカル重合開始剤を併用することもできる。
【0022】
紫外線による光重合によって硬化する場合の紫外線強度、照射時間は、使用する増感剤、硬化物の大きさ等により決められる。
また、ガンマー線による重合ではラジカル重合開始剤等は特に必要とはしない。硬化終了後、冷却した後に鋳型を離型させて樹脂を取り出す。取り出した樹脂は必要に応じて、内部の応力を取り除く為のアニール処理を行ってもよい。
【0023】
本発明の光学レンズは、本発明の光学樹脂用組成物を前記と同様の方法で重合硬化させて得られるものである。なお、本発明のレンズは、レンズ用モールドを用いて注型重合して製造してもよく、また、重合硬化させて得られた塊状の光学樹脂を研削する方法で製造してもよい。注型重合する場合には、硬化後、必要に応じて、アニール処理を行ってもよい。
また、本発明の光学レンズでは、必要に応じ、反射防止、高硬度付与あるいはファション性付与等の改良を行うため、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理、調光処理等の物理的あるいは化学的処理を施してもよい。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳述するが、これによりなんら制限されるものではない。なお、実施例に示す部はすべて重量部である。
実施例、比較例において、組成物、樹脂およびレンズの物性評価は以下に記載する方法により行った。
(1)透明性:目視により観察し、色、濁り、歪みの無いものを良好とした。
(2)屈折率、アッベ数:アッベ屈折計により測定した。
(3)耐熱性:針入法によるTMAを測定した。80℃以下に変形点があるものを×、80℃以上であるものを○とした。
【0025】
実施例1
攪拌機、温度計、滴下ロート、気体の導入管および排出管を取り付けた反応器に、前記式(2)で表されるポリチオール化合物36.68部(0.100モル)を仕込み、メタノール100mlを加え、窒素雰囲気下、5〜10℃で攪拌しながら、水酸化カリウム10.80部(0.192モル)をメタノール100mlに溶解した溶液を30分かけて滴下した。続いて、攪拌しながら、ヨウ化メチル24.84部(0.175モル)をメタノール50mlに溶解した溶液を45分かけて滴下した。滴下終了後、室温にて2時間攪拌し反応させた。
反応終了後、3%塩酸150mlとトルエン150mlを加え、抽出を行い、さらに有機層を、希塩酸、水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
トルエン溶媒を減圧下に留去することで、無色透明液体状の生成物37.82部を得た。
続いて、撹拌機、温度計、滴下ロート、気体の導入管および排出管を取り付けた反応器に、β−クロロプロピオン酸クロライド26.66部(0.210モル)を仕込み、窒素ガスを緩やかに流通させ、攪拌しながら50℃に加温した。ここに、上記の生成物34.78部を、内温50℃に保ちつつ、徐々に滴下した。この際に発生した塩酸ガスは、反応器外の水酸化ナトリウム水溶液のトラップに吸収した。撹拌しながら、50℃にて、さらに5時間反応を進めた。
室温まで冷却し、トルエン200mlを加えた後、冷却しながら3%水酸化ナトリウム水溶液100mlを滴下した。室温で1時間撹拌した後、有機層を分液し、希水酸化ナトリウム水溶液と水で洗浄した。
有機層を、撹拌機、温度計、滴下ロートを取り付けた反応器に仕込み、撹拌しながら、トリエチルアミン21.25部(0.210モル)を、内温を20℃に保ちながら滴下した。滴下終了後、20℃にて4時間撹拌し反応を進めた後、反応混合物を水にあけ分液した後、有機層を希塩酸、希水酸化ナトリウム水溶液、水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。
トルエンを減圧にて留去し、無色透明液体41.56部を得た。
下記に示す 1H−NMRの積分値、及び、元素分析値から、1分子中に、平均してアクリロイル基を2.25個有する下記式(化6)で表される混合物(MFSA−1)であることを確認した。
【0026】
【化6】
Figure 0003636260
Figure 0003636260
【0027】
実施例2
攪拌機、温度計、滴下ロート、気体の導入管および排出管を取り付けた反応器に、前記式(2)で表されるポリチオール化合物36.68部(0.100モル)を仕込み、メタノール100mlを加え、窒素雰囲気下、5〜10℃で攪拌しながら、水酸化カリウム10.80部(0.192モル)をメタノール100mlに溶解した溶液を30分かけて滴下した。続いて、攪拌しながら、ベンジルブロマイド29.93部(0.175モル)をメタノール50mlに溶解した溶液を45分かけて滴下した。滴下終了後、室温にて2時間攪拌し反応させた。
反応終了後、3%塩酸150mlとトルエン150mlを加え、抽出を行い、さらに有機層を、希塩酸、水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
トルエン溶媒を減圧下に留去することで、無色透明液体状の生成物50.70部を得た。
続いて、撹拌機、温度計、滴下ロート、気体の導入管および排出管を取り付けた反応器に、β−クロロプロピオン酸クロライド26.66部(0.210モル)を仕込み、窒素ガスを緩やかに流通させ、攪拌しながら50℃に加温した。ここに、上記の生成物46.62部を、内温50℃に保ちつつ、徐々に滴下した。この際に発生した塩酸ガスは、反応器外の水酸化ナトリウム水溶液のトラップに吸収した。撹拌しながら、50℃にて、さらに5時間反応を進めた。
室温まで冷却し、トルエン200mlを加えた後、冷却しながら3%水酸化ナトリウム水溶液100mlを滴下した。室温で1時間撹拌した後、有機層を分液し、希水酸化ナトリウム水溶液と水で洗浄した。
有機層を、撹拌機、温度計、滴下ロートを取り付けた反応器に仕込み、撹拌しながら、トリエチルアミン21.25部(0.210モル)を、内温を20℃に保ちながら滴下した。滴下終了後、20℃にて4時間撹拌し反応を進めた後、反応混合物を水にあけ分液した後、有機層を希塩酸、希水酸化ナトリウム水溶液、水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。
トルエンを減圧にて留去し、無色透明液体50.36部を得た。
下記に示す 1H−NMRの積分値、及び、元素分析値から、1分子中に、平均してアクリロイル基を2.25個有する下記式(化7)で表される混合物(BFSA−1)であることを確認した。
【0028】
【化7】
Figure 0003636260
Figure 0003636260
【0029】
合成例1
撹拌機、温度計、滴下ロート、気体の導入管および排出管を取り付けた反応器に、β−クロロプロピオン酸クロライド53.33部(0.420モル)を仕込み、窒素ガスを緩やかに流通させ、攪拌しながら50℃に加温した。ここに、式(2)で表されるポリチオール化合物36.68部(0.100モル)を、内温50℃に保ちつつ、徐々に滴下した。この際に発生した塩酸ガスは、反応器外の水酸化ナトリウム水溶液のトラップに吸収した。撹拌しながら、50℃にて、さらに5時間反応を進めた。
室温まで冷却し、トルエン100mlを加えた後、冷却しながら3%水酸化ナトリウム水溶液100mlを滴下した。室温で1時間撹拌した後、有機層を分液し、希水酸化ナトリウム水溶液と水で洗浄した。
有機層を、撹拌機、温度計、滴下ロートを取り付けた反応器に仕込み、撹拌しながら、トリエチルアミン40.48部(0.400モル)を、内温を20℃に保ちながら滴下した。滴下終了後、20℃にて4時間撹拌し反応を進めた後、反応混合物を水にあけ分液した後、有機層を希塩酸、希水酸化ナトリウム水溶液、水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。
トルエンを減圧下に留去し、無色透明液体として、下記式(化8)で表されるテトラアクリレート化合物(FSA)40.81部(0.070モル)を得た。
【0030】
【化8】
Figure 0003636260
【0031】
実施例3
実施例1で得られた混合物50.00部に対して、光増感剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド0.02部を添加してよく混合した。これを十分に脱泡した後、2枚のガラス型とポリエステル製粘着テープとで構成された、外径70mm、中心厚1.5mm、コバ厚8mmの凹レンズモールドに注入し、80w/cmのメタルハライドランプの光を、30cmの距離から15秒照射し、硬化させた。室温まで放冷した後、粘着テープを剥離し、ガラス型からレンズを離型して、無色透明の凹レンズを得た。
このレンズの物性測定の結果を(表1)に示した。
【0032】
実施例4
実施例2で得られた混合物50.00部に対して、光増感剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド0.02部を添加してよく混合した。これを十分に脱泡した後、2枚のガラス型とポリエステル製粘着テープとで構成された、外径70mm、中心厚1.5mm、コバ厚8mmの凹レンズモールドに注入し、80w/cmのメタルハライドランプの光を、30cmの距離から15秒照射し、硬化させた。室温まで放冷した後、粘着テープを剥離し、ガラス型からレンズを離型して、無色透明の凹レンズを得た。
このレンズの物性測定の結果を(表1)に示した。
【0033】
実施例5
実施例1で得られた混合物25.00部に、ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)メタン15.00部、エチレングリコールジメタクリレート10.00部をよく混合し、ここに光増感剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド0.02部を加えて、混合、脱泡し、光学樹脂用組成物を得た。
この組成物を、実施例3と同様にして硬化させ、無色透明の凹レンズを得た。
このレンズの物性測定の結果を(表1)に示した。
【0034】
実施例6
実施例1で得られた混合物32.50部に、テトラエチレングリコールジメタクリレート17.50部をよく混合し、ここに光増感剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド0.02部を加えて、混合、脱泡し、光学樹脂用組成物を得た。
この組成物を、実施例3と同様にして硬化させ、無色透明の凹レンズを得た。
このレンズの物性測定の結果を(表1)に示した。
【0035】
実施例7
実施例2で得られた混合物25.00部に、ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)メタン15.00部、エチレングリコールジメタクリレート10.00部をよく混合し、ここに光増感剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド0.02部を加えて、混合、脱泡し、光学樹脂用組成物を得た。
この組成物を、実施例4と同様にして硬化させ、無色透明の凹レンズを得た。
このレンズの物性測定の結果を(表1)に示した。
【0036】
実施例8
実施例2で得られた混合物35.00部に、テトラエチレングリコールジメタクリレート15.00部をよく混合し、ここに光増感剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド0.02部を加えて、混合、脱泡し、光学樹脂用組成物を得た。
この組成物を、実施例4と同様にして硬化させ、無色透明の凹レンズを得た。
このレンズの物性測定の結果を(表1)に示した。
【0037】
比較例1
合成例1で得られたテトラアクリレート化合物50.00部に、光増感剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド0.02部を加えて、混合、脱泡し、光学樹脂用組成物を得た。
この組成物を、実施例3と同様のモールドに注入したが、実施例3の組成物に比較して粘度が高く、注入が困難であった。次いで、実施例3と同様にメタルハライドランプの光を照射したが、重合が暴走し、白化してしまった。
そこで、この組成物を、実施例3と同様のモールドに注入した後、氷水中で冷却しながら、50cmの距離から1分照射した後、オーブン中で30℃から130℃まで1時間かけて昇温し、更に130℃で1時間加熱し、硬化させた。室温まで放冷した後、粘着テープを剥離し、ガラス型からレンズを離型して、無色透明の凹レンズを得た。
このレンズの物性測定の結果を(表1)に示した。
【0038】
【表1】
Figure 0003636260
(表1)から明らかなように、チオール基の一部をスルフィド化して得られた実施例1の混合物を用いて得られるレンズの方が、合成例1で得られたテトラチオアクリレート体を用いて得られる比較例1のレンズに比較して、屈折率、アッベ数ともに高いことが判る。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、高屈折率、高アッベ数であり、透明性、耐熱性に優れた光学樹脂を製造できる新規な光学樹脂用組成物を提供する。この光学樹脂用組成物は、光学レンズ、光学レンズ用として有用な高屈折率光学樹脂を提供する組成物として極めて有用である。

Claims (5)

  1. 1分子中に平均1.5〜3.5個の(メタ)アクリロイル基を有する一般式(1)(化1)で表される重合性化合物の混合物を含有してなる光学樹脂用組成物。
    Figure 0003636260
    〔式中、R1 は下記の基(化2)を表し、R2 は炭素数4以下のアルキル基またはベンジル基を表し、R3 は水素原子またはメチル基を表し、nは0〜3の整数を表す〕
    Figure 0003636260
  2. 2 がメチル基で、R3 が水素原子である請求項1記載の光学樹脂用組成物。
  3. 一般式(1)で表される重合性化合物の混合物と共重合可能な重合性化合物を含有する請求項1または2に記載の光学樹脂用組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の光学樹脂用組成物を硬化してなる光学樹脂。
  5. 請求項4記載の光学樹脂からなる光学レンズ。
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