JP3635865B2 - 産業車両用直流分巻電動機の制御装置 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は,産業車両を駆動する直流電動機の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
バッテリを電源として直流電動機によって駆動される産業車両は,力行時には電力効率を良好に維持しつつアクセルの操作量に対応する目標速度となるよう電動機を制御する。また,制動時には,電動機のエネルギーをできるだけバッテリに回生し,電力消費量ができるだけ少なくなるよう制御される。
【0003】
即ち,図11に示すように,力行時には,回転センサー91により電動機90の回転数を検出し,電機子回路駆動トランジスタ921及び界磁回路駆動トランジスタ931〜934(931,933の組又は932,934の組)を所定の電流方向にチョッパー制御し(回生トランジスタ922はオフ),電機子電流Iaおよび界磁電流Ifを調整してアクセル操作量aに対応する目標回転数となるよう制御する。同図において,符号991はバッテリ,符号992はアクセルの操作量を検出するアクセルセンサー,符号901は界磁コイル,符号94はチョッパー制御装置,符号925,935はトランジスタのドライブ回路,符号912,913は電機子電流および界磁電流の電流センサーである。
【0004】
また,ブレーキの操作時,ディレクションスイッチの切り換え時(スイッチバック時),アクセルペダルの開放時,アクセルの戻し操作時(所謂アクセル連動回生の条件成立時)には,電機子回路駆動トランジスタ921をオフすると共に回生トランジスタ922をチョッパー制御して電動機90の発電電力をバッテリ991に回生する。
【0005】
そして,特に上記アクセル連動回生制御時には,回転センサー91により電動機90の回転数を検出し,一定の制動トルクで制動しつつ回転数が新しいアクセルの操作量に対応する負荷トルク零時の値になったことを検知して,再び力行駆動制御に制御モードを切り換える(図12参照)。
なお,負荷トルクと回転数との関係を示す曲線(関数)は,アクセルの操作量により一義的に定められており(図6(a)参照),負荷トルクの値は電機子電流と界磁電流の値から算定することができる。
【0006】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記従来の電動機制御装置には,次のような問題点がある。
第一点は,上記のようにアクセルの操作に連動した回生を行うためには,電動機90の回転数が所定値になったことを検知するための回転センサー91が必要であり,また回転センサー91の入力回路として,バッファー回路や積算器等が制御装置94に必要である。そのため,構成が複雑となりコスト高となることである。
【0007】
第二点は,上記アクセル連動回生制御時において,回生制御から力行制御への移行時に生ずる加速度により,乗り心地(フィーリング)が悪化することである。即ち,図12に示す制動トルクTb=T0(一定)のs点から力行制御のx点に移行する場合に,実際には図示しない速度変化が生じ,搭乗者に軽い不快感を与えることになる。
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり,速度センサーを用いない簡素な構成で,かつ乗り心地の良好な回生制御を行うことのできる産業車両用の直流電動機制御装置を提供しようとするものである。
【0008】
【課題の解決手段】
本発明は,産業車両を駆動する直流分巻電動機の電機子電圧を検知する電圧検出手段と,上記直流電動機の電機子電流及び界磁電流を検知する電流検出手段と,アクセルの操作量またはディレクションスイッチのニュートラル状態を検知するアクセルセンサーと,電機子電流の方向が切り換え可能であると共に電機子の電圧,電流の大きさを調整することができる電機子調整手段と,界磁電流の方向及び大きさを調整することのできる界磁電流調整手段と,電機子電流の値と界磁電流の値とから現在の負荷トルクを算定し上記アクセルセンサーの検知信号と上記負荷トルクとに対応した所定の回転数となるよう上記電機子調整手段及び界磁電流調整手段を操作する制御手段とを有しており,上記制御手段は,アクセルが踏み込まれている力行時においては,上記負荷トルクとアクセル操作量a1とに対応する所定の回転数N1となるように,上記電機子電流を所定値以下に制限し且つ界磁電流と電機子電圧を調整し,一方,アクセルの操作量が相対的に大きい上記操作量a1から少ない操作量a2に戻し操作された場合には,新しいアクセル操作量a2に対応した負荷トルクと回転数N’との関係に移行する過程で上記直流電動機の電力を電源側に回生すると共に界磁電流を一定に保持しつつ制動トルクTbが所定のトルク変化カーブfに沿って変化するよう制御し,上記トルク変化カーブfの指令値は,回転数が第1の所定値N21以上の場合には一定値T1に設定され,回転数が上記所定値N21から第2の所定値N22の間では上記一定値T1から所定の変化率で漸減し,上記第2の所定値N22からアクセル操作量a2に対応した上記目標回転数N’に至るまでの間は,駆動トルク零に設定されていることを特徴とする産業車両用直流分巻電動機の制御装置にある。
【0009】
本発明において特に注目すべきことの第一点は,電機子電流の値と界磁電流の値とから現在の負荷トルクを算定すると共に界磁電流を一定に制御することにより電機子電圧から電動機の回転数を算定し,上記負荷トルクとアクセル操作量a1とに対応した所定の回転数に電機子電圧(電動機)を制御することである。即ち,速度センサーを用いることなくアクセルセンサーに対応した状態(負荷に対応する回転数)に電動機を制御することができる。
【0010】
例えば,力行時においては,界磁電流と電機子電圧を調整し,負荷トルクとアクセル操作量a1とに対応する所定の回転数となるように制御する。即ち,現在のアクセル操作量に対応する負荷トルクと回転数との関係式に基づいて,現在の負荷トルクから目標となる回転数を設定する。
【0011】
そして,上記負荷トルクと回転数に対応して,最も効率的となる界磁電流を算定する。電動機効率を良好にする上記界磁電流の値は,演算装置によって毎回算定してもよいが,負荷トルクと回転数から効率的な界磁電流の値を設定するマップを予め入力しこれによって迅速に決定するようにしてもよい。
そして,界磁電流を一定に設定した場合には,図6(b)に示すように回転数と電機子電圧との関係は一義的に定まるから,電圧検出手段を介して電機子電圧を検知することにより回転数を知ることができ,上記の目標回転数に対応した電機子電圧となるよう前記電機子調整手段を操作する。
【0012】
同様に,回生制御時においては,制動トルクを所定の値に制御しつつ速度の制御を行うから,界磁電流を一定に設定した場合には,図8に示すように回転数と電機子電圧との関係は界磁電流に対応して一義的に定まり,同様に電機子電圧を検知して回転数を知ることができる。そして,新たなアクセル操作量a2に対応した目標回転数の電機子電圧となるよう電機子調整手段を操作する。
その結果,本発明では,回転センサーが不要となり,代わって必要となる電圧検出手段は回転センサーよりも安価かつ簡素に構成することができるから,装置は簡素で安価となる。
【0013】
本発明において特に注目すべきことの第二点は,アクセルの操作量が戻し操作された場合には,新しいアクセル操作量a2に対応した上記負荷トルクと回転数N’の関係に移行する過程で上記直流電動機の電力を電源側に回生すると共に界磁電流を一定に保持しつつ制動トルクTbが所定のトルク変化カーブfに沿って変化するよう制御し,且つ上記トルク変化カーブfの指令値は,回転数が第1の所定値N21以上の場合には一定値T1に設定され,回転数が上記所定値N21から第2の所定値N22の間では上記一定値T1から所定の変化率で漸減し,上記第2の所定値N22からアクセル操作量a2に対応した上記目標回転数N2に至るまでの間は,駆動トルク零に設定されていることである。
【0014】
即ち,本発明では,回生制動時の制動トルクは図12示すように一定値Tbではなく,図7に示すように,回生前の速度N1から新たな力行速度N’(同図のN4)に移行する間に,速度に対応して変化させ,中間の所定値N21(同図のN2)から中間の所定値N22(同図のN3)(但しN1>N21>N22>N’)の間では一定値T1から所定の変化率で漸減させ,上記所定値N22(同図のN3)から目標回転数N’(同図のN4)に至るまでの間は,駆動トルク零に設定し,空走状態(慣性走行)で回転数N’(同図のN4)まで減速する。
【0015】
その結果,電動機の回転数(車両速度)は,図4の時間帯t1〜t4に示すように,急変することなく連続的に減速する。そのため,車両の搭乗者は,回生制動から力行制御への移行時においても,乗り心地(フィーリング)が悪化することがない。
上記のように,本発明によれば,速度センサーを用いない簡素な構成で,かつ乗り心地の良好な回生制御を行うことのできる産業車両用の直流電動機制御装置を得ることができる。
【0016】
なお,上記回生制動時における回転数N21から回転数N22の間における制動トルクの低減率は,請求項2記載のように一定値とすることが好ましい。速度の低減率を一定とし,図5の時間帯t2〜t3に示すように,直線的に変化させる方が制御が容易であり,制動トルクを直線的に変化させた場合における回転数の変化は,後述する実施形態例で示すように,滑らかなカーブを描くからである。
【0017】
そして,上記電機子調整手段は,例えば請求項3記載のように,直流電動機の電機子と並列に接続され回生時に作動する第2スイッチング素子と,上記電機子及び上記第2スイッチング素子と直列に接続され力行時に作動する第1スイッチング素子と,上記第1,第2スイッチング素子と並列に逆極性に配置された整流素子とにより構成することができる。そして,制御手段は,力行制御時においては,上記第2スイッチング素子をオフ状態とすると共に第1スイッチング素子をチョッパー制御し,回生制御時においては,上記第1スイッチング素子をオフ状態とすると共に第2スイッチング素子をチョッパー制御することにより上記の制御を実現することができる(図2,図3参照)。
【0018】
即ち,図2に示すように,第2スイッチング素子をオフ状態とすると共に第1スイッチング素子をチョッパー制御することにより,電源側から電力を電動機に供給し力行駆動することができる。そして,第1スイッチング素子のチョッパー制御量に対応して電動機は作動する。一方,図3に示すように,第1スイッチング素子をオフ状態とすると共に第2スイッチング素子をチョッパー制御し,第1スイッチング素子に並列に挿入したダイオードのルートを介して,電動機のエネルギーを電源側に回生することができる。そして,上記回生量電力は,第2スイッチング素子のチョッパー制御量を調整することにより制御することができる。
【0019】
一方,界磁電流調整手段は,例えば請求項4に記載のように,対向するブリッジ端子の橋絡部に直流電動機の界磁コイルを接続してなるスイッチング素子のブリッジ接続回路により構成することができる。そして,制御手段は,上記ブリッジ回路において互いに対向する辺の一対のスイッチング素子の二つの組のいずれか一方の組を回転方向に対応してチョッパー制御すると共に他方の組をオフ状態とすることにより界磁電流の大きさ及び方向を制御することができる(図2,図3参照)。即ち,チョッパー制御するスイッチング素子の対を選択することにより,界磁電流の極性(方向)が決まり,チョッパー制御量により電流の大きさを変化させることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
実施形態例
本例は,図1に示すように,産業車両を駆動する直流分巻電動機81の電機子電圧Vaを検知する電圧検出手段11と,直流電動機81の電機子電流Ia及び界磁電流Ifを検知する電流検出手段12,13と,アクセルの操作量またはディレクションスイッチのニュートラル状態を検知するアクセルセンサー14と,電機子電流Iaの方向が切り換え可能であると共に電機子の電圧Va,電流Iaの大きさを調整することができる電機子調整手段と,界磁電流Ifの方向及び大きさを調整することのできる界磁電流調整手段30と,電機子電流Iaの値と界磁電流Ifの値とから現在の負荷トルクTを算定しアクセルセンサー14の検知信号と負荷トルクTとに対応した所定の回転数となるよう上記電機子調整手段及び界磁電流調整手段30を操作する制御手段40とを有する産業車両用直流分巻電動機の制御装置1である。
【0021】
そして,制御手段40は,アクセルが踏み込まれている力行時においては,負荷トルクTとアクセル操作量a3とに対応する所定の回転数N1となるように,電機子電流Iaを所定値以下に制限し且つ界磁電流Ifと電機子電圧Vaを調整する。
また,制御手段40は,アクセルの操作量が相対的に大きい上記操作量a3から少ない操作量a1に戻し操作された場合には,図7に示すように新しいアクセル操作量a2に対応した負荷トルクTと回転数N4との関係に移行する過程で直流電動機81の電力を電源85側に回生すると共に界磁電流Ifを一定に保持しつつ制動トルクTbが所定のトルク変化カーブfに沿って変化するよう制御する。
【0022】
上記トルク変化カーブfの指令値は,図5,図7に示すように,回転数がアクセル操作前の回転数N1から第1の所定値N2以上の場合(時間t1〜t2)には一定値T1に設定され,回転数が上記所定値N2から第2の所定値N3の間では上記一定値T1から所定の変化率で制動トルクT2まで漸減し(時間t2〜t3),第2の所定値N3からアクセル操作量a2に対応した上記目標回転数N4に至るまでの間(時間t3〜t4)は,駆動トルク零(空走状態)に設定されている。
また,上記回生制動時における回転数N2から回転数N3の間(時間t2〜t3)における制動トルクTbの低減率は一定値である。
【0023】
そして,図1に示すように,前記電機子調整手段は,直流電動機81の電機子82と並列に接続され回生時に作動する第2スイッチング素子22と,電機子82及び第2スイッチング素子22と直列に接続され力行時に作動する第1スイッチング素子21と,第1,第2スイッチング素子21,22と並列に逆極性に配置された整流素子23,24とを備えている。そして,制御手段40は,力行制御時においては,図2に示すように第2スイッチング素子22をオフ状態とすると共に第1スイッチング素子21をチョッパー制御し,回生制御時においては,図3に示すように第1スイッチング素子21をオフ状態とすると共に第2スイッチング素子22をチョッパー制御する。
【0024】
また,界磁電流調整手段30は,対向するブリッジ端子301,302の橋絡部に直流電動機81の界磁コイル83を接続してなるスイッチング素子311〜314のブリッジ接続回路を備えており,制御手段40は,上記ブリッジ回路において互いに対向する辺の一対のスイッチング素子の二つの組(311,313)又は(312,314)のいずれか一方の組を回転方向に対応してチョッパー制御すると共に他方の組をオフ状態とすることにより,図2及び図3に示すように界磁電流Ifの大きさ及び方向を制御する。
図1において,符号25は制御手段40の指令に基づいて第1,第2スイッチング素子21,22を駆動するドライバー回路,符号33は制御手段40の指令に基づいて界磁用スイッチング素子311〜314を駆動するドライバー回路,符号321〜324は界磁用スイッチング素子の保護ダイオードである。
【0025】
以下それぞれについて説明を補足する。
始めにアクセルの操作量aiに対応して制御されるべき負荷トルクと回転数(車両速度)との関係は,図6(a)に示すような関係にある。即ち,例えば同図(a)の符号611〜613の曲線に示すように,低速時のトルク(即ち電機子電流)の大きさを制限し,その他の領域では負荷トルクに反比例的に回転数(速度)の値を制御する。
【0026】
そして,通常の力行制御時には,基本的に界磁電流と電機子電圧を操作することにより,上記曲線611〜613に従うように制御する。そして,アクセル操作量が減少して新たな関係に移行する過渡期(例えば曲線613から曲線611に移行する過渡期),所謂アクセル連動回生を行う時には制動トルクTbが所定のカーブf(図5,図7)に従って変化するよう減速制御を行う。その結果,詳細を後述するように搭乗者に不快感を与えることなく,次の力行制御へ移行することができる。
【0027】
始めに,力行運転時の制御方法について述べる。
この場合には,電機子電流を一定値以下に電流制限をかけながら,界磁電流と電機子電圧を制御するが,始めに現在の電機子電流Iaの値と界磁電流Ifの値から,現在の負荷トルクTを算定する。そして,上記負荷トルクの値Tに基づいて,始めに適正な界磁電流の指令値Ifoを,例えば上記(T,Ifo)の関係を決めるテーブル又は演算器等に基づいて決定する。
【0028】
一方,前記のようにアクセル操作量aiに対応するトルク速度曲線(図6(a)の曲線611〜613)から,上記負荷トルクTに対する電動機の回転数Nは決定される。例えば,アクセル操作量がa3で負荷トルクがT1である場合には,図6(a)曲線613とT1との交点から速度N1が求められる。
そして,このときの界磁電流一定の場合の電機子電圧Vaと回転数Nの関係は,界磁電流の値If1〜If3に対応して同図(b)の曲線621〜623のような関係となり,上記界磁電流の指令値Ifoに対応する電機子電圧−速度カーブ(同図では曲線622)と速度N1とから電機子電圧の指令値Vdが決定される。
【0029】
そして,上記指令値Ifo,Vdに基づいて,界磁電流と電機子電圧が上記値If0,Vdとなるように,図2に示すように,第1スイッチング素子21および界磁スイッチング素子(312と314)又は(311と313)をチョッパー制御する(界磁スイッチング素子(312と314)又は(311と313)の選定は正逆の回転方向によって決める)。なお,このとき,電機子電流の大きさは一定値以下となるように制限する。
上記のように,本例では,界磁電流Ifを一定に制御することにより電機子電圧Vaから電動機の回転数Nを算定し,速度センサーを用いることなくアクセルセンサーに対応した状態(負荷に対応する回転数)に電動機を制御することができる。
【0030】
次に,アクセル連動回生時の制御方法について述べる。
この場合は,図7に示すように,アクセル操作量aがa3からa1に減少し,トルク−速度曲線が同図の曲線613から611に変化するような場合である。そして,現在の負荷に対応する曲線613上の点Aから曲線611上の点Bに移行させる制御を実施する。
【0031】
そして,力行への移行前の回生制御時においては,図5に示すように制動トルクTbが所定の変化カーブfに沿って変化するよう制御を行いながら,図3に示すように電機子電流Iaの方向を反転させ電動機81のエネルギーを電源85に回生する。
なお,このようなトルク一定の回生制御時においては,界磁電流を一定とした場合の速度(回転数N)と電機子電圧Vaの関係は,前記界磁電流の値If1〜If3に対応して図9の曲線631〜633に示すように,ほぼ直線関係となる。
【0032】
図8は,電動機81の回転数Nと電機子電圧Vaの推移を矢印によって図示したものである。即ち,界磁電流Ifを一定値If1に保ち,始めにカーブ601に示すように,制動トルクTb=T1の線上を回転数N1からN2まで移行し,次にカーブ602に示すように,制動トルクTbをT1からT2まで変化させて,回転数をN2からN3まで移行させる。次いで,矢印603に示すように,制動トルク零状態に瞬時に切り換え,続いてカーブ604に示すように,制動トルク零のまま空走し,回転数をN3からN4に変化させる。
【0033】
図10は,上記回生制動時の制御の流れをフローチャートにより図示したものである。
始めに,ステップ611で,アクセル操作量aが減少したことを検知し,所謂アクセル連動回生モードに制御モードを切り換える。
そして,ステップ612において,新たなアクセル操作量a3に対応した所定の回転数N4にまだ低下していないことを確認して,ステップ613に進む。そして,ステップ613において,回転数が第1の所定値N3に低下していない場合には,ステップ614に進み,一定の制動トルクT1に制動トルクTbを設定し,ステップ616で回生制御を実施する。
【0034】
そして,ステップ616から再びステップ612に戻り,ステップ613において,回転数が第1の所定値N3に低下している場合には,ステップ615に進む。ステップ615では,現在の回転速度Nと目標とする最終回転数N4との偏差ΔNを算出し,制動トルクTbをTb=T1−K×ΔNに設定し,ステップ616で回生制御を実施する。
そして,ステップ612で所定の最終目標回転数N4に低下したことを確認して,ステップ617において,回生モードを終了する。
【0035】
上記のように,本例では,回生制動時の制動トルクは図12の符号991で示す従来装置のように一定値ではなく,図4に示すように,回生前の速度N1から新たな力行速度N4に移行する間に,速度に対応して変化させ,中間の所定値N2から中間の所定値N3(但しN1>N2>N3>N4)の間では一定値T1から所定の変化率で漸減させ,上記所定値N3から目標回転数N4に至るまでの間は,駆動トルク零に設定し,空走状態(慣性走行)で回転数N4まで減速する。
【0036】
その結果,電動機の回転数(車両速度)は,図4の時間t1〜t4に示すように,急変することなく連続的に減速する。そのため,車両の搭乗者は,回生制動から力行制御への移行時においても,乗り心地(フィーリング)が悪化することがない。
上記のように,本例によれば,速度センサーを用いない簡素な構成で,かつ乗り心地の良好な回生制御を行うことのできる産業車両用の直流電動機制御装置1を得ることができる。
【0037】
【発明の効果】
速度センサーを用いない簡素な構成で,かつ乗り心地の良好な回生制御を行うことのできる産業車両用の直流電動機制御装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例の電動機制御装置の接続図。
【図2】図1において力行制御時の電機子電流及び界磁電流の流れとスイッチング素子の動作状態を示す図。
【図3】図1において回生制御時の電機子電流及び界磁電流の流れとスイッチング素子の動作状態を示す図。
【図4】実施形態例の制御装置の回転数の推移を示す図。
【図5】実施形態例の制御装置の駆動,制動トルクの推移を示す図。
【図6】力行制御時においてアクセルの操作量を一定とした時のトルクと回転数の関係を示す図(a)と界磁電流と電機子電圧と回転数の関係を示す図(b)。
【図7】実施形態例の制御装置において,アクセル連動回生時の回生−力行移行時の回転数とトルクの推移を矢印で示した図。
【図8】実施形態例の制御装置において,アクセル連動回生時の回生−力行移行時の回転数と電機子電圧の推移を矢印で示した図。
【図9】トルク一定制御により回生制御を行いかつ界磁電流を一定とした時の電機子電圧と回転数の関係を示す図。
【図10】実施形態例のアクセル連動回生制御のフローチャート。
【図11】従来の電動機制御装置の接続図。
【図12】従来の電動機制御装置の回転数(a)と駆動,制動トルク(b)の推移を示す図。
【符号の説明】
11...電圧検出手段,
12,13...電流検出手段,
14...アクセルセンサー,
30...界磁電流調整手段,
40...制御手段,
Claims (4)
- 産業車両を駆動する直流分巻電動機の電機子電圧を検知する電圧検出手段と,上記直流電動機の電機子電流及び界磁電流を検知する電流検出手段と,アクセルの操作量またはディレクションスイッチのニュートラル状態を検知するアクセルセンサーと,電機子電流の方向が切り換え可能であると共に電機子の電圧,電流の大きさを調整することができる電機子調整手段と,界磁電流の方向及び大きさを調整することのできる界磁電流調整手段と,電機子電流の値と界磁電流の値とから現在の負荷トルクを算定し上記アクセルセンサーの検知信号と上記負荷トルクとに対応した所定の回転数となるよう上記電機子調整手段及び界磁電流調整手段を操作する制御手段とを有しており,
上記制御手段は,アクセルが踏み込まれている力行時においては,上記負荷トルクとアクセル操作量a1とに対応する所定の回転数N1となるように,上記電機子電流を所定値以下に制限し且つ界磁電流と電機子電圧を調整し,
一方,アクセルの操作量が相対的に大きい上記操作量a1から少ない操作量a2に戻し操作された場合には,新しいアクセル操作量a2に対応した負荷トルクと回転数N’との関係に移行する過程で上記直流電動機の電力を電源側に回生すると共に界磁電流を一定に保持しつつ制動トルクTbが所定のトルク変化カーブfに沿って変化するよう制御し,
上記トルク変化カーブfの制動トルクTbの指令値は,回転数が第1の所定値N21以上の場合には一定値T1に設定され,回転数が上記所定値N21から第2の所定値N22の間では上記一定値T1から所定の変化率で漸減し,上記第2の所定値N22からアクセル操作量a2に対応した上記目標回転数N’に至るまでの間は,駆動トルク零に設定されていることを特徴とする産業車両用直流分巻電動機の制御装置。 - 請求項1において,前記回生制動時における回転数N21から回転数N22の間における制動トルクTbの低減率は一定値であることを特徴とする産業車両用直流分巻電動機の制御装置。
- 請求項1又は請求項2において,前記電機子調整手段は,直流電動機の電機子と並列に接続され回生時に作動する第2スイッチング素子と,上記電機子及び上記第2スイッチング素子と直列に接続され力行時に作動する第1スイッチング素子と,上記第1,第2スイッチング素子と並列に逆極性に配置された整流素子とを備えており,
前記制御手段は,力行制御時においては,上記第2スイッチング素子をオフ状態とすると共に第1スイッチング素子をチョッパー制御し,回生制御時においては,上記第1スイッチング素子をオフ状態とすると共に第2スイッチング素子をチョッパー制御することを特徴とする産業車両用直流分巻電動機の制御装置。 - 請求項1から請求項3のいずれか1項において,前記界磁電流調整手段は,対向するブリッジ端子の橋絡部に直流電動機の界磁コイルを接続してなるスイッチング素子のブリッジ接続回路を備えており,前記制御手段は,上記ブリッジ回路において互いに対向する辺の一対のスイッチング素子の二つの組のいずれか一方の組を回転方向に対応してチョッパー制御すると共に他方の組をオフ状態とすることにより界磁電流の大きさ及び方向を制御することを特徴とする産業車両用直流分巻電動機の制御装置。
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