JP3635143B2 - 耐候安定化されたガラス長繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物を使用した車輌外装部品 - Google Patents
耐候安定化されたガラス長繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物を使用した車輌外装部品 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色、強度等の耐候性、その他の諸特性に優れ、屋外での長期使用に好適な車輌用ステップ、ルーフラックレッグおよびバッテリートレイに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維強化ポリオレフィン、特にポリプロピレン樹脂は、機械的強度、耐熱性、成形性に優れているため、各種工業部品に広く使われている。特に、連続した繊維を引抜きながら樹脂を含浸する、いわゆる引抜き法によって得られる長繊維強化ポリオレフィン樹脂は、ガラス繊維のチョップドストランドと樹脂を押出機あるいは成形機で混練して得られる短繊維強化ポリオレフィン樹脂にくらべて、衝撃強度、クリープ特性、振動疲労特性に優れた長所がある。さらに、引抜き法で製造された長繊維強化ポリオレフィン樹脂は、ガラス繊維が同一方向に配列されているため、きわめて高密度にガラス繊維を充填させることができる特徴がある。
このようなガラス長繊維強化ポリオレフィン樹脂の特性を利用して、自動車部品、電気製品の部品などを溶融成形して製造することが行われているが、長期間屋外で使用されると、使用時の熱、酸素および光の作用により劣化し、その機械的特性が著しく低下する場合がある。
【0003】
一般にポリオレフィン樹脂は、汎用のプラスチックとして安価であり、しかも広く用いられているためプラスチックの材質を統一すればリサイクル性の向上が期待されている。ところがポリオレフィン樹脂は、使用時の熱、酸素、および光の作用により劣化し実用に耐えなくなる欠点を有している。この点を改良するために従来より様々な努力がなされ、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の耐候剤を添加する技術が開示されている。
【0004】
特開昭60−124642号公報には、ポリオレフィン100重量部に、特定のヒンダードアミン化合物、特定の高分子量フェノール系化合物および特定の亜リン酸エステル系化合物をそれぞれ0.1〜1重量部配合してなる安定化されたポリオレフィン組成物が記載される。
特開昭62−4733号公報には、ポリオレフィン100重量部および無機フィラー1〜100重量部からなる組成物に、(1) ベンゾトリアゾール系またはベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.01〜0.5重量部、(2) ヒンダードアミン系またはフェニルベンゾエード系光安定剤0.01〜1重量部および(3) 有機リン系化合物0.01〜1重量部を含有する組成物が開示されている。
特開平3−265638号公報には、特定のヒンダードピペリジンを含有する安定化されたポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
特開平6−212032号公報には、結晶性ポリオレフィン及び/又はオレフィン系エラストマーを含有するポリオレフィン樹脂100重量部に対して(a) ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.05〜0.20重量部と、(b) リン系酸化防止剤0.05〜0.20重量部と、(c) 紫外線吸収剤0.10〜0.50重量部と(d) N−O−R型又はN−CO−R型のヒンダードアミン系光安定剤0.10〜0.50重量部とを含有する組成物が開示されている。
【0005】
一方、大型乗用車等の乗降に使用するステップとしては、従来、踏み面と自動車本体に取り付けるためのカバーとが別個に成形されており、カバーには、ボルト穴が数箇所あり、所定のボルト穴をボルト締めすることにより、自動車本体に取り付けるとともに、他のボルト穴には踏み面がボルト締めで固定される。カバーは、一般的には樹脂組成物が多く、例えばスタンパブルシートから形成されている。また、踏み面は、アルミや亜鉛のダイカスト、あるいは樹脂組成物からできている。ダイカスト製の場合は、これにボルト穴があり、これによりカバーと結合させている。樹脂製の場合は、スタンパブルシートの場合、カバーと一体で成形し、コストダウンが図られている。
また、自動車等のルーフに設けられるルーフラックレッグとしては、ガラス繊維入りのナイロンやダイカスト等の金属等により形成されている。バッテリーを室外に取り付けられる場合、バッテリーを収納するバッテリートレイについては、金属あるいは、スタンパブルシートにより形成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のポリオレフィン樹脂では、耐候性の程度が不充分であり、自動車等の車輌の外装部品であるステップ、ルーフラックレッグおよびバッテリトレイとして当然に要求される長期間の使用や過酷な条件に耐えることができない。例えば、紫外線を多量に含んだ直射日光に暴露される条件で10年以上、色の変化を含めた外観上の変化がなく、しかも諸特性が保持されるといった耐候性が充分でなかった。そのため添加剤の量を増やそうとするとポリオレフィン樹脂の特性が損なわれるという問題があった。
【0007】
一方、上記の従来のステップでは、ダイカスト等の金属製の場合は部品点数が増え、組立を行う労力が必要となるためコスト的に割高になるという欠点があり、スタンパブルシートの場合は、外観上問題があり、金型コストが高く、また、成型時サイクルタイムが長いという欠点がある。
また、従来のガラス繊維入りのナイロン製、あるいはダイカスト等の金属製のルーフラックレッグでは、複雑形状を一体成形(射出成形)することができず、また、比重も高く、コスト高になってしまうという欠点がある。また、金属製ああるいは、ポリプロピレン製の従来のバッテリートレイにおいても、上記同様の欠点が生じる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、従来技術における問題点を解決し、耐候性に優れているので外装部品として当然に要求される色等の外観上の変化が極めて少なく、強度等の諸特性が保持される。また、衝撃強度が高いので壊れにくく、しかも衝撃モードがヒビが入るが、割れにくいので長期使用に対して信頼性の高い車輌用ステップ、ルーフラックレッグおよびバッテリートレイを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、一体成形することができ、しかも短繊維強化エンジニアリングプラスチックが従来品の場合、それに比較して低比重であるためコスト低減と軽量化が図れ、また成形収縮率が短繊維強化エンジニアリングプラスチックに近いので、それ用の金型を修正し、使用することができるので設備コストを最小限にすることができ、さらに汎用プラスチックがベース樹脂なのでリサイクル性を向上することができる車輌用ステップ、ルーフラックレッグおよびバッテリートレイを提供しようとする。
【0009】
すなわち、本発明の第1の態様は、車輌の乗降の際に足を掛ける踏み面と、前記踏み面を自動車本体に取り付けるためのカバーとから構成されるステップであって、
前記ステップは、少なくともその主要部が、
(A)ポリオレフィン樹脂中で、樹脂強化用連続ガラス繊維束を引抜きながら、該ガラス繊維束に該樹脂を含浸し、切断して得られる繊維方向の長さ2〜100mmのペレットであって、該ガラス繊維が実質的にペレットと同一長さで平行に整列し、ガラス繊維含有率が15〜75wt%のガラス長繊維強化ポリオレフィン樹脂ペレット、
(B)ポリオレフィン樹脂、
(C)酸化防止剤、
(D)光安定剤、および
(E)紫外線吸収剤を含有するガラス長繊維強化ポリオレフィン組成物から形成されることを特徴とする車輌用ステップを提供する。
また、前記ガラス長繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物に、さらに、好ましくは、カーボンブラックと硫化亜鉛との両方またはいずれか一方を含有し、この場合、前記酸化防止剤、前記光安定剤、前記紫外線吸収剤、必要により硫黄系化合物、およびカーボンブラックと硫化亜鉛との両方またはいずれか一方の総重量が、ポリオレフィン樹脂の100重量部に対して1.0〜8.0重量部含有することが必要である。
【0010】
また、本発明の第2の態様は、車輌のルーフに取り付けられるルーフラックレッグであって、
前記ルーフラックレッグは、少なくともその主要部が、
(A)ポリオレフィン樹脂中で、樹脂強化用連続ガラス繊維束を引抜きながら、該ガラス繊維束に該樹脂を含浸し、切断して得られる繊維方向の長さ2〜100mmのペレットであって、該ガラス繊維が実質的にペレットと同一長さで平行に整列し、ガラス繊維含有率が15〜75wt%のガラス長繊維強化ポリオレフィン樹脂ペレット、
(B)ポリオレフィン樹脂、
(C)酸化防止剤、
(D)光安定剤、および
(E)紫外線吸収剤を含有するガラス長繊維強化ポリオレフィン組成物から形成されることを特徴とする車輌用ルーフラックレッグ
また、前記ガラス長繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物に、さらに、好ましくは、カーボンブラックと硫化亜鉛との両方またはいずれか一方を含有し、この場合、前記酸化防止剤、前記光安定剤、前記紫外線吸収剤、必要により硫黄系化合物、およびカーボンブラックと硫化亜鉛との両方またはいずれか一方の総重量が、ポリオレフィン樹脂の100重量部に対して1.0〜8.0重量部含有することが必要である。
【0011】
また、本発明の第3の態様は、車輌のバッテリーを収納するバッテリートレイであって、
前記バッテリートレイは、少なくともその主要部が、
(A)ポリオレフィン樹脂中で、樹脂強化用連続ガラス繊維束を引抜きながら、該ガラス繊維束に該樹脂を含浸し、切断して得られる繊維方向の長さ2〜100mmのペレットであって、該ガラス繊維が実質的にペレットと同一長さで平行に整列し、ガラス繊維含有率が15〜75wt%のガラス長繊維強化ポリオレフィン樹脂ペレット、
(B)ポリオレフィン樹脂、
(C)酸化防止剤、
(D)光安定剤、および
(E)紫外線吸収剤を含有するガラス長繊維強化ポリオレフィン組成物から形成されることを特徴とする車輌用バッテリートレイ
また、前記ガラス長繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物に、さらに、好ましくは、カーボンブラックと硫化亜鉛との両方またはいずれか一方を含有し、この場合、前記酸化防止剤、前記光安定剤、前記紫外線吸収剤、必要により硫黄系化合物、およびカーボンブラックと硫化亜鉛との両方またはいずれか一方の総重量が、ポリオレフィン樹脂の100重量部に対して1.0〜8.0重量部含有することが必要である。
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
ステップとは、大型乗用車やトラック等のキャビン(室内)が高い所に位置している場合、このような車の乗降の際に使用する、車輌に取り付けられる踏み台をいう。通常、トラック等ではドアの外部下方(屋外)に取り付けられており、外気にさらされるために耐候性が必要とされる。
本発明のステップは、基本的には、車輌の乗降の際に足を掛けるための平板状の踏み面と、この踏み面を自動車本体に固定するとともに、足を踏み面に踏み入れるための空間を確保し、この汚れやすい部分の自動車外板を腐食から防止するするカバーとから構成され、少なくともその主要部が所定のガラス長繊維強化ポリオレフィン組成物から形成されていればよい。形状は特に限定されるものではないが、踏み面は、足を掛ける部分であるので、滑りにくいように凹凸形状が施されているが好ましく、例えば、波形状の凹凸や格子状の凹凸等の種々の模様形状が挙げられる。一方、車体へ固定されるための取付け部を有し、カバーは、基本的には、踏み面の側面を取り囲むような形状の板状部材であり、踏み面と結合することで少なくともその一面が開放した筐体を構成するものであればよい。本発明のステップの形状を図1(a),(b)に示す。図1(a)は、一体成形により作製したステップの斜視図を、図1(b)は、一体成形された本発明のステップの荷重応力値のシュミレーション解析に用いたモデルを示している。ステップは、人が昇降するため、200kgfの静的荷重で破壊しないこと、また200kgf以下の荷重の場合でも、160kgfの荷重を繰り返し5万回掛けても、破壊しないことが求められる。また、たわみ量についても、200kgfの静的荷重で最大たわみ量が4mm以下であることが求められる。
【0013】
また、踏み面とカバーとを別個に成形する場合は、踏み面とカバーとのそれぞれに、相互に対応したボルト穴が数箇所設けられ、ボルトにより踏み面がカバーに結合される。さらに、カバーには別のボルト穴が数箇所設けられ、ボルトにより車輌本体に結合される。また、このようなボルト穴を有していなくても、かしめ等で機械的に固定されたり、接着剤により車輌本体に接着すればよく、この場合は、部品数低減が図れる点で好ましい。
また、本発明におけるガラス長繊維強化ポリオレフィン組成物は一体成形が可能であるので、一体成形により作製すれば、部品数低減と労力削減により大幅なコストダウンを実現することができるので、特に好ましい。
【0014】
ルーフラックレッグは、自動車の屋根に荷物を固定し移送する際に、複数本のレール(ルーフラック)上、あるいはこのレールを利用して、荷物を固定させるが、このレールを車体に固定させる支柱部をいう。本発明のルーフラックレッグの形状は、円柱状、板状等の任意の形状の組であって、少なくともその主要部が所定のガラス長繊維強化ポリオレフィン組成物から形成されていればよく、形状は特に限定されるものではない。ルーフラックレッグは、荷物の重量が加わるため、耐候性とともに、高い機械的強度が必要とされる。
【0015】
バッテリートレイは、車輌のバッテリーを収納するバッテリートレイであって、通常、自動車の外部に設置されるものをいう。本発明のバッテリートレイは、少なくともその一面が開放した筐体であり、設置されるバッテリーの底部の形状にあわせて任意の形の平板状であってもよいが、バッテリーの取り外しが容易な程度に側面を有していてもよい。少なくともその主要部が所定のガラス長繊維強化ポリオレフィン組成物から形成されていればよく、また、形状は特に限定されるものではない。バッテリートレイは、バッテリーの重量が常に加わるため、耐候性とともに、高い機械的強度が必要とされる。
【0016】
このような本発明のステップ、ルーフラックレッグおよびバッテリートレイは、以下で説明するガラス長繊維樹脂組成物から形成されるために、耐候性に優れているので、日光を直接受けて長期に使用されても、その外観色調の変化が少ないので意匠性が損なわれない。
また、長期間かなりな重量が加わり、さらに長期間外気にさらされても機械的強度等の特性の劣化が少ないので、長期間重量が加わるステップ、ルーフラックレッグやバッテリートレイの耐用年数を長くすることができる。
【0017】
次に、このような本発明のステップ、ルーフラックレッグおよびバッテリートレイを形成するガラス長繊維樹脂組成物について説明する。
(A)本発明に用いるガラス繊維強化ポリオレフィン樹脂ペレット(A)は、少なくともポリオレフィン樹脂中で、樹脂強化用連続ガラス繊維束を引抜きながら該繊維束に該樹脂を含浸させ、切断して得られる繊維方向の長さ2〜100、好ましくは3〜50mmのペレットであって、該ガラス繊維が実質的にペレットと同一長さで平行に整列し、ガラス繊維含有率が15〜75wt、好ましくは30〜70wt%のガラス長繊維強化ポリオレフィン樹脂ペレットである。
【0018】
本発明に用いる連続したガラス繊維は、E−ガラス、S−ガラス、C−ガラス、AR−ガラス、T−ガラス、D−ガラスおよびR−ガラス等であり、通常は、複数のガラスフィラメントを集めた束を、コイル状に巻きとった、いわゆるガラスロービングの形態をしている。ガラス繊維径は、3〜40μmのものが適している。3μm未満では、同一ガラス含有量にする場合、相対的にガラス繊維数が増すため樹脂の含浸が困難となり、40μmを越えると成形品の表面外観が著しく悪化する。最適なガラス繊維径は9〜20μmである。
【0019】
本発明に用いるガラス繊維は、カップリング剤を含む表面処理剤で表面処理されていてもよい。
カップリング剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、アミドシラン、アジドシラン、アクリルシランのようなシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびこれらの混合物が利用できる。これらのうち、アミノシランとエポキシシランがよく、特にアミノシランカップリング剤が好ましい。
【0020】
本発明に用いるポリオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン、ブテン、4−メチルペンテン等の単独重合体並びに共重合体、さらには酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、無水マレイン酸等の極性モノマーとのランダム、ブロックまたはグラフト共重合体も含まれる。また、これらの重合体にエチレン−α−オレフィン系共重合体ゴム、イソプレンゴム、イソブチレンゴム等の合成ゴムを半重量%未満添加した組成物も含まれる。
具体的には、高圧法エチレン単独重合体、同エチレン−プロピレン共重合体、低圧法エチレン単独重合体、同エチレン−プロピレン共重合体、同エチレン−1−ブテン共重合体、同エチレン−1−ヘキセン共重合体、中圧法エチレン共重合体、高圧法エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンのランダムまたはブロック共重合体などがある。なかでも、結晶性プロピレン系重合体、特にポリプロピレンがより著しい効果を有する。
【0021】
ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体のほか、プロピレンを主体としてエチレン成分を含む共重合体、例えばプロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレンとエチレン−プロピレンゴムとのブロック共重合体などであってもよい。これらのなかでも後者、特にエチレン成分を含むブロック共重合体が好ましく用いられる。エチレン成分を含む共重合体を用いる場合、エチレン成分は、共重合体の重量を基準として通常20重量%以下の範囲で含まれる。本発明で対象とするポリプロピレン樹脂は、このようなポリプロピレンにさらにα−オレフィン系共重合体ゴムを含有してもよい。
ここでいうα−オレフィン系共重合体ゴムとは、2種以上のα−オレフィンを共重合させて得られるゴム状高分子であり、共重合成分となるα−オレフィンは、例えば炭素数2〜12のものである。α−オレフィン系共重合体ゴムのなかでも好ましいものは、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体ゴムである。エチレンの共重合相手となるα−オレフィンは、例えば炭素数3〜12のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、およびそれらの混合物などが例示されるが、なかでもプロピレンまたは1−ブテンが好ましい。
【0022】
引抜き法により製造されるガラス長繊維強化ポリオレフィンは、数千〜数万本のフィラメントからなるガラス繊維を引抜きながらポリオレフィン樹脂を完全に含浸させ、親水性であるガラス繊維と、非極性であるポリオレフィン樹脂とのぬれ性を改善する方法は、米国特許4479998号、4549920号、および4559262号公報に記載され、本発明の成分(A)はこれらの方法で製造されたものであってもよい。
また、例えば、特開平5−17631号公報には溶融樹脂の含浸を容易にするために、ASTM D−1238(荷重:2.16kg、温度:230℃)の方法で測定したメルトフローレート30g/10分以上の低粘度ポリプロピレンを用いる方法、特公平3−25340号公報にはきわめて低分子量の樹脂を含浸させる方法、および特開平3−181528号公報にはぬれ性を改善するため、ガラス繊維を表面処理するとともに、変性ポリプロピレン樹脂を使う方法があり、本発明の成分(A)はこれらの方法で製造されてもよい。
【0023】
本発明に用いるガラス長繊維強化ポリオレフィン樹脂ペレット(A)は、強化用連続ガラス繊維を引抜きながら、ポリオレフィン樹脂をガラス繊維に含浸した後、繊維を引抜く方向と直角方向に切断することにより得られる。樹脂を含浸する方法はいかなる方法を用いても良い。例えば、ポリオレフィン樹脂のエマルジョンをガラス繊維に含浸し被覆付着後、乾燥させる方法、ポリオレフィン樹脂の粉末懸濁液をガラス繊維に付着させ、乾燥後加熱溶融含浸させる方法、ガラス繊維を帯電させて、ポリオレフィン樹脂粉末を付着させた後、加熱溶融含浸させる方法、溶媒に溶かしたポリオレフィン樹脂をガラス繊維に含浸後、溶媒を除去する方法、ポリオレフィンの連続繊維とガラスの連続繊維の混合繊維を加熱し、溶融したポリオレフィン樹脂を含浸させる方法または加熱溶融したポリオレフィン樹脂を、バー、ロール、ダイス上でガラス繊維を開繊させながら含浸させる方法等のいずれでもよい。これらの方法のうち、装置およびプロセスの簡便さから、加熱溶融したポリオレフィン樹脂を、バー、ロール、ダイス上でガラス繊維を開繊させながら含浸する方法が最も好ましい。
【0024】
こうして得られた切断後のペレット中には、ガラス繊維がペレットと同一長さで平行に整列した状態で存在する。該ペレットには、ガラス繊維が15〜75重量%含有され、またペレット長さは、繊維方向に2〜100mmである。ガラス繊維含有率が15重量%未満では、マスターバッチとしての利点が生かせないため、経済的に不利になる上、希釈後の成形品の製品適用範囲が狭くなることから、工業的価値が減ずる。75重量%を越えると、樹脂の含浸が十分に行えず、製造が極めて困難となる。この好ましいガラス繊維含有率は、15〜75重量%である。ペレット長さは、2mm未満であると成形品中のガラス繊維長が短かくなり、強度、特に衝撃強度が低下する。100mmを越えると長繊維強化の特長である高強度、高衝撃、耐クリープ性、耐振動疲労性がさらに改善されることはなく、かえって射出成形、押出し成形時のホッパー内でのつまりや、ポリオレフィン樹脂との混合品で偏析が起こるので好ましくない。好ましいペレット長さは3〜50mmである。ペレット形状は、長さが2〜100mmであればどのような形状でも良く、例えば切断面が円形、だ円形、四角形でもよい。また、切断面の長手方向の長さは、アスペクト比(ペレット長さと切断面長さの比)が1〜10、より好ましくは2〜5になるのが好ましい。
【0025】
(B)本発明のポリオレフィン樹脂(B)は、樹脂強化用ガラス繊維を含まないものをいい、ガラス長繊維強化ポリオレフィン樹脂のペレット(A)と混合する希釈用ポリオレフィン樹脂(B)であり、構成単位としてオレフィンを70重量%以上含むものをいい、例示すると、成分(A)で説明したポリオレフィンの他にプロピレンホモポリマー、プロピレンと共重合可能なビニル基含有モノマー30重量%未満とプロピレン70重量%以上からなる共重合体およびこれらの混合物がある。共重合体の例としては、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−EPDM共重合体があげられる。
【0026】
特に耐衝撃性が要求される場合は、エチレン−プロピレン共重合体やプロピレン−EPDM共重合体は溶融粘度が高く、ガラス繊維への含浸が困難なため、これらの樹脂のガラス長繊維強化溶融成形品の製造が難しい。従って本発明の低粘度範囲のポリオレフィン樹脂ペレット(A)とこれら高衝撃共重合体用のポリプロピレン樹脂(B)との混合物を用いるとこれらの樹脂のガラス長繊維強化成形品を製造するための有効な手段である。
【0027】
本発明に用いるガラス長繊維強化ポリオレフィン樹脂ペレット(A)と希釈用のポリオレフィン樹脂(B)の混合比率は、マスターバッチペレット(A)/ポリオレフィン樹脂(B)=10/90〜90/10(重量比)である。マスターバッチの混合比率が5重量%未満であると、希釈後の成形品中のガラス繊維含有率が低過ぎるため長繊維強化成形品の、高強度、高衝撃性の特長を十分に発揮できない。ステップについては、剛性と強度が必要なため、より好ましくは、ガラス含有量が35%以上が良い。
【0028】
希釈用ポリオレフィン樹脂(B)の形状は、特に限定はないが、粉末状、ペレット状が好ましい。さらに好ましくは、マスターバッチペレット(A)の大きさ、形状に近いものが好ましい。両ペレットのサイズが極端に異なると、溶融成形時に、ホッパー内で分離する欠点がある。好ましいポリオレフィン樹脂(B)の形状は、2〜5mmの粒状または直径が1〜5mmで長さ1〜10mmの円筒状である。
【0029】
本発明に用いる酸化防止剤は、好ましくは、フェノール系化合物またはリン系化合物であり、フェノール系化合物として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル〕メタン等が挙げられ、中でもヒンダードフェノール系化合物が好ましく、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−sec−ブチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2−t−ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2−t−ブチル−4−メチル−6−(2’−アクリロイルオキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス(1’,1’−ジメチル−2’−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ビス〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート等が挙げられる。これらのうちでは、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンなどが好ましい。
【0030】
リン系化合物としては、アルキルホスファイト、アルキルアリルホスファイト、アリルホスファイト、アルキルホスフォナイト、アリルホスフォナイト等のリン系安定剤を挙げることができ、具体的にはジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタンなどを例示することができる。
【0031】
上記ヒンダードフェノール系化合物とリン系化合物の配合量は、樹脂成分の合計100重量部に対して、0.2〜2.5重量部、好ましくは0.3〜2.0重量部である。ヒンダードフェノール系化合物とリン酸化合物の重量比は、1/10〜10/1の範囲がよく、好ましくは1/5〜5/1の範囲がよい。
【0032】
本発明に用いる光安定剤は、アミン系化合物またはフェニルベンゾエート系光安定剤が挙げられ、なかでもヒンダードアミン系またはフェニルベンゾエート系光安定剤の例としては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セパケート、コハク酸とN−(2−ヒドロキシプロピル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとの縮合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2−ジブロモエタンとの重縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)フマレート、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、4−オクチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。これらの添加量は樹脂成分の合計100重量部に対して、0.2〜3.0重量部である。これ未満では効果が発揮されず、上限を超えると不経済であるほかにブリード等の問題を起こす。特に好ましい配合量は0.3〜2.0重量部である。
【0033】
本発明に用いる紫外線吸収剤としては、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系のもの等が挙げられる。これらの中では、ベンゾトリアゾール系、およびベンゾエート系のものが好ましい。ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、例えば2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。ベンゾエート系の紫外線吸収剤としては、例えば2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどを挙げることができる。
【0034】
上記紫外線吸収剤の配合量は、樹脂成分の合計100重量部に対して、0.05〜3.0重量部、好ましくは0.1〜2.0重量部である。紫外線吸収剤の配合量が0.05重量部未満では、耐候性が十分でなく、また0.3重量部を超えてもそれに見合う効果の向上が得られない。
【0035】
本発明に必要により用いる硫黄系化合物は、好ましくは含硫黄エステル系化合物であり、ペンタエリスリトールテトラ(β−アルキルチオプロピオン酸エステル)、ジラウリル、チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)が好ましい。
【0036】
本発明の車輌用ステップ、ルーフラックレッグおよびバッテリートレイは、塗装によらないで、黒色またはグレイに着色することができ、本発明を適用する自動車等の車輌の色彩に合わせて、美観が良好となるような色を選択すればよい。黒色に着色する場合は、カーボンブラックを添加することによって行うことができ、塗装により行うよりも耐候性に優れる点で好ましい。配合量は樹脂成分の合計100重量部に対して、0.2〜2.5重量部、好ましくは0.3〜2.0重量部である。カーボンブラックの配合量がこの範囲であると、耐候性に効果がある。
【0037】
なお、本発明の組成物にカーボンブラックを用いる場合は、(C)酸化防止剤、(D)光安定剤、(E)紫外線吸収剤および場合により含有される硫黄系化合物の合計含有量は、カーボンブラックの量と合計して、樹脂成分の合計100重量部に対して、好ましくは1.0〜8.0重量部、さらに好ましくは1.2〜6.0重量部とする。この理由はカーボンブラックが、光を吸収するため、耐候性が向上するからである。
【0038】
また、グレイに着色する場合は、白色顔料として硫化亜鉛を用いたカーボンブラック/硫化亜鉛から得られたグレイ用顔料を用いると、衝撃強度の低下が小さくてすむので好ましい。白色顔料として一般的な酸化チタンを用いることもできるが、ガラス繊維に傷をつけ、耐衝撃性が低下するので好ましくない。
【0039】
本発明の車輌用ステップ、ルーフラックレッグおよびバッテリートレイの製造方法は、(A)ガラス長繊維強化ポリオレフィン樹脂ペレット、(B)ポリオレフィン樹脂、(C)酸化防止剤、(D)光安定剤、(E)紫外線吸収剤およびその他の必要な添加剤をすべて同時に混練して製造してもよい。
好ましくは成分(C),(D),(E)はポリプロピレンや高密度ポリエチレン等のオレフィン樹脂をベースとしたマスターペレット中に混練しておき、これを任意のタイミングで本発明の組成物の製造時に加える。
成分(C),(D),(E)を含有するマスターペレットは、予め成分(A)と混練してから成分(B)と混練してもよいし、成分(A)と成分(B)を混練する際に加えてもよい。
【0040】
本発明に用いる組成物には、さらに着色のための染料・顔料、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸のアミド、ワックス類等の滑剤などを添加することができる。
【0041】
本発明の車輌用ステップ、ルーフラックレッグおよびバッテリートレイは、通常の射出成形機、インジェクション−プレス成形機、単軸押出機、2軸押出機、加熱プレス成形機、押出成形、中空押出成形等によって行う。ルーフラックレッグについては、中空射出成形法である、ガスアシスト成形あるいはガスインジェクション成形により軽量化が図れる。
【0042】
本発明の組成物を溶融成形して得られた成形品中の残存繊維長は、平均長(メディアン長さ)が0.8〜10、好ましくは1.0〜8.0mmである。
0.8mm未満では長繊維強化成形品の特徴である高強度、高弾性率、優れたクリープ特性および振動疲労特性を十分に発揮することができない。
また10mmを越えると前記長繊維強化成形品の特長がさらに改善されることもなく、かえって表面外観が悪くなり好ましくない。
【0043】
残存平均ガラス繊維長0.8〜10、好ましくは1.0〜8.0mmを維持するためには、本発明の溶融成形用混合物は比較的緩い溶融成形条件、すなわち混練力を弱くし、溶融樹脂に加わる剪断力を小さくする必要がある。
例えば深溝のスクリューを使用し、スクリューの背圧を0〜3kg/cm2 とできるだけ小さくするか、スクリュー回転数を小さくするなどの工夫が必要である。本発明の組成物は、このように混練力が弱くても、ガラス繊維は十分に分散する。
【0044】
以上、車輌用ステップ、ルーフラックレッグおよびバッテリートレイについて具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当業界で公知および使用されているいかなる設計の物であってもよい。
【0045】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を挙げて具体的に説明する。
本発明はこれらの具体例に限定されない。
【0046】
[実施例1〜4]
VertonR MFX700-10 (50%ガラス長繊維含有ポリプロピレン樹脂:川崎製鉄(株)製)50重量部とMIが50のポリプロピレンペレット(直径3mmの粒状)48重量部とカーボンブラックを30重量%含有の低密度ポリエチレン2重量部、表1(実施例)に記載の添加成分をポリオレフィン樹脂総量に対して、表1に示すような添加量となるようにポリプロピレン樹脂ペレットに混合し、射出成形温度240℃、金型温度60℃の条件で射出成形し、ASTM準拠の1号試験片を得た。
得られた成形品の曲げ強度(ASTM)と曲げ弾性率(ASTM)を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
[実施例5〜10]
VertonR MFX700-10 (50%ガラス長繊維含有ポリプロピレン樹脂:川崎製鉄(株)製)50重量部とMIが45のポリプロピレンペレット(直径3mmの粒状)と、カーボンブラックを30重量%含有の低密度ポリエチレン、ポリプロピレンの総量に対し、表2に示すような添加量となるように添加剤をポリプロピレン樹脂ペレットに混合し、射出成形温度240℃、金型温度60℃の条件で射出成形し、ASTM準拠の1号試験を得た。
表2で得られた実施例5〜10の成形品は、下記の耐候性促進試験2000時間の時点で、ガラスの浮きは観察されず、曲げ強度も促進試験を開始する前のそれぞれの試験片と比べて2000HR経過時において85%以上を保持していた。
【0048】
測定は初期曲げ強度と曲げ弾性率を測定し、ASTM G−53に準拠して紫外線蛍光ランプによる促進耐候性試験を500時間、1000時間、1500時間それぞれ行った結果を示す。照射条件は8時間、ブラックパネル温度が70℃で2.7w/m2 の紫外線を照射し、次に4時間、ブラックパネル温度が50℃のスチーム条件下に暗黒保持するサイクルを1サイクルとして繰り返した。保持率は促進耐候性試験後の強度を初期強度で除し%表示した。GF浮きは、板材の表面を200倍にした際にガラス繊維の浮きが認められるか否かで判断した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
なお、表1の組成物で用いた成分は以下のものである。
【0053】
【0054】
[実施例11〜16]
VertonR MFX700-13 (65%ガラス長繊維含有ポリプロピレン樹脂:川崎製鉄(株))と230℃、2.16kgでのメルトフローインデックス(MI値)が40のエチレンゴムが2%のブロックポリプロピレンとカーボンブラック30重量%含有の低密度ポリエチレン、ポリオレフィン類の総量に対し、表4に示すような添加量となるように添加剤をブロックポリプロピレンに混合し、射出成形温度240℃、金型温度60℃の条件で、ASTM準拠の1号試験片を得た。
表4で得られた実施例11〜15の成形品は、上記の耐候促進試験2000時間の時点でガラスの浮きは、観察されず、曲げ強度も促進試験を開始する前のそれぞれの試験片に比べて2000時間経過において85%以上を保持していた。
【0055】
【表4】
【0056】
[実施例17]
さらに、実施例1と同様の材料を用いて、実施例1と同様にしてポリプロピレンペレットを混合し、この混合物から、本発明の図2、図3に示すルーフラックレッグおよびバッテリートレイを作製し、以下の基本的な特性について試験および評価を行った。
【0057】
(熱変形性)
製品を実車取付状態に取付け、雰囲気温度85±2℃×5時間暴露した。その後、クラッキング、変色、変形、収縮、光沢の変化、ベタつき、硬度の変化、ふくれ、取付部のガタ、緩み等について商品性を損なう程度の欠陥の有無を評価した。
【0058】
(耐サーモサイクル性)
製品を実車取付状態に取付け、以下の▲1▼〜▲8▼を1サイクルとして、5サイクル繰り返した。
▲1▼−30±2℃×7.5 時間
▲2▼ 室温 ×0.5 時間以上
▲3▼ 80±2℃×15.5時間
▲4▼ 室温 ×0.5 時間以上
▲5▼−30±2℃×7.5 時間
▲6▼ 室温 ×0.5 時間以上
▲7▼ 49±1℃、相対湿度98%以上×15.5時間
▲8▼ 室温 ×0.5 時間以上
その後、クラッキング、変色、変形、収縮、光沢の変化、ベタつき、硬度の変化、ふくれ、表面剥離、取付部のガタ、緩み等について商品性を損なう程度の欠陥の有無を評価した。
なお、変形および収縮の評価は、前述の熱変形性の試験と同様の基準により、評価を行った。
【0059】
(耐候性)
ASTM G−53に準拠して耐候性の試験および評価を行った。
【0060】
(耐衝撃性)
製品を実車取付状態に取付け、室温および−30±2℃で、0.5kg、直径50mmの鋼球を300mmの高さから垂直に自由落下させた。その後、商品性を損なうクラッキング、変形、取付部のガタ、緩み、白化等について商品性を損なう程度の欠陥の有無を評価した。
【0061】
(結果)
上記試験の結果、熱変形性、耐サーモサイクル性、耐候性、耐衝撃性のいずれにおいても、商品性を損なう程度の欠陥は生じなかった。
【0062】
[実施例18]
実施例11と同様の材料を用いて、実施例11と同様にしてポリプロピレンペレットを混合し、この混合物から、本発明の図1に示すステップを作製し、実施例17と同様にして、基本的な評価を行ったが、いずれにおいても問題はなかった。
さらに、ステップについては、以下の試験を追加した。
【0063】
(静荷重の負荷)
ステップの踏み面に250kgf荷重を掛けて、破壊しなかった。
【0064】
(最大タワミ量測定)
ステップの踏み面に200kgfの荷重をかけたところ、最大のタワミ量が4mm以下であった。
【0065】
(繰り返し荷重試験)
160kgfの荷重を繰り返し5万回掛けたのちでもステップは、破壊しなかった。
【0066】
【発明の効果】
本発明のステップ、ルーフラックレッグおよびバッテリートレイは、塗装によらないで着色することができ、かつ、耐候性に優れることから、色等の外観上の変化を極めて少なくすることができ、美観を長期間維持することができる。
また、強度、弾性等の諸特性に優れるとともに、上記耐候性より、その強度および弾性を長期間維持し、耐用年数を長くすることができる。
【0067】
さらに、一体成形が可能なので部品点数の低減と、労力削減とを図ることができ、成形時の巾方向の収縮率が従来品と同程度で小さいことから、従来の成形用金型をそのまま使用することができ、しかも、従来の短繊維強化エンジニアリングプラスチック成形品に比して低比重であるため、大幅な低コスト化を実現することができる。また、汎用プラスチックがベース樹脂なのでリサイクル性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る一体成形したステップの形状を説明する図である。(a)は斜視図を、(b)は荷重応力値のシュミレーション解析に用いたモデルを示す図である。
【図2】 本発明に係るルーフラックレッグの一例を示す図である。
【図3】 本発明に係るバッテリートレイの一例を示す図である。
Claims (6)
- 車輌の乗降の際に足を掛ける踏み面と、前記踏み面を自動車本体に取り付けるためのカバーとから構成されるステップ、車輌のルーフに取り付けられるルーフラックレッグおよび車輌のバッテリーを収納するバッテリートレイからなる群より選ばれるより1つの車輌外装部品であって、少なくともその主要部が、
(A)ポリオレフィン樹脂中で、樹脂強化用連続ガラス繊維束を引抜きながら、該ガラス繊維束に該樹脂を含浸し、切断して得られる繊維方向の長さ2〜100mmのペレットであって、該ガラス繊維が実質的にペレットと同一長さで平行に整列し、ガラス繊維含有率が15〜75wt%のガラス長繊維強化ポリオレフィン樹脂ペレット、(B)ポリオレフィン樹脂、(C)前記樹脂成分の合計100重量部に対して0 . 2〜2 . 5重量部の酸化防止剤としての重量比1/10〜10/1のヒンダードフェノール系化合物およびリン系化合物、(D)前記樹脂成分の合計100重量部に対し0 . 2〜3 . 0重量部のヒンダードアミン系またはフェニルベンゾエート系光安定剤、および(E)前記樹脂成分の合計100重量部に対し0 . 05〜3 . 0重量部の紫外線吸収剤を含有するガラス長繊維強化ポリオレフィン組成物から形成され、成形品中の残存繊維長が0 . 8〜10mmである車輌外装部品。 - 前記ガラス長繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物に、さらに、カーボンブラックと硫化亜鉛との両方またはいずれか一方を含有し、前記酸化防止剤、前記光安定剤、前記紫外線吸収剤、必要により硫黄系化合物、およびカーボンブラックと硫化亜鉛との両方またはいずれか一方の総重量が、ポリオレフィン樹脂の100重量部に対して1.0〜8.0重量部である請求項1に記載の車輌外装部品。
- 前記(D)光安定剤を前記樹脂成分の合計100重量部に対し0 . 65〜2 . 5重量部の量で含む請求項1または2に記載の車輌外装部品。
- 前記樹脂成分の合計100重量部に対する(C)酸化防止剤の量が0 . 65〜1 . 3重量部であり、(D)光安定剤の量が0 . 65〜2 . 5重量部であり、かつ(E)紫外線吸収剤の量が0 . 15〜0 . 3重量部である請求項1ないし3のいずれかに記載の車輌外装部品。
- ASTM G−53に準拠して紫外線蛍光ランプによる2000時間の促進耐候性試験後にも、成形品表面の200倍観察によりガラス繊維の浮きが認められない請求項1ないし4のいずれかに記載の車輌外装部品。
- 前記車輌外装部品の主要部が、ステップの踏み面である請求項1ないし5のいずれかに記載の車輌外装部品。
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