JP3633966B2 - マーカー付きトルクレンチ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、例えばトルクレンチ、特にねじ締め完了と同時に締結されたねじにマーキングを行なうためのマーカーを備えたマーカー付きトルクレンチに関するものである。
【0002】
【先行例】
例えば多数本のねじ締めを必要とする機器等において、上記多数本のねじを締結する締結作業時に締結が完了したねじと、未締結のねじとの区別を明らかにするため、例えばトルクレンチ等によるねじ締め作業時において、ねじの締結が完了すると同時に、その締結完了のねじ頭にマーキングを施し、そのマークの付着によって、締結が完了されているねじであることを認識させることができるようにしたマーカー付きトルクレンチを既に開発している。
【0003】
この先行例であるマーカー付きトルクレンチ構造は、特願平5−91471号で開示され、図1乃至図4に示す如きものである。つまり31は、トルクレンチ本体であって、このトルクレンチ本体31は、従来と同様に、トグル機構32を内装したチューブ33と、このチューブ33の先端部に取付けた支軸34に軸支されるヘッド35と、チューブ33の尾端部に取付けられている柄36を有している。
【0004】
このトルクレンチ本体31には、前記トグル機構32の動作でマーカーを連動せしめるためのマーカー駆動機構37が設けられているが、このマーカー駆動機構37は、図4に示すように、チューブ33の外側に固定されている支軸ピン38に軸支されているL字形のリンク39を有し、このリンク39の一端は、螺着されている調整ねじ40を介してヘッド35の側面に当接され、またリンク39の他端は、レバー41に球体42を介して当接されている。
【0005】
レバー41の一端は、チューブ33に軸支され、他端は、マーカー機構43のマーカーヘッド44に係合されている。45はマーカー駆動機構37のカバーを示す。
【0006】
以下にマーカー機構43の構造を図3について述べる。46は、前記ヘッド35内に設けられているラチエット47を有するラチエット筒であって、このラチエット筒46の下端に形成されている6角軸部48に、筒状アダプタ49の上端が結合ねじ50によって結合保持されている。筒状アダプタ49の下端部にはソケット51がその軸方向に摺動自在に嵌合されているが、この摺動範囲は、筒状アダプタ49の母線方向に長い透孔52と、この透孔52内に遊嵌されかつソケット51に植設されているガイドピン53によって規制されるものである。
【0007】
前記マーカーヘッド44には、前記ラチエット筒46筒状アダプタ49の内部に挿通されるマーカーロッド54の上端を保持し、そのマーカーロッド54の下端には、例えばスポンジに着色インクを含浸せしめたマーカー55を保持するマーカーケース56が、連結ピン57及びOリング58を介して保持されている。
【0008】
なお59はマーカーロッド54の上下動を許すスプリング、60はレバー41の復元用スプリング、61はソケット51の上端と、筒状アダプタ49に設けた止め輪62との間に介在されて、ソケット51を常に押し下げているスプリングである。
【0009】
63は被締付ねじであるナット、64はそのボルトである。
【0010】
そこで上記マーカー機構43を設けているトルクレンチ本体31により、ナット63のねじ締めを行なうとき、図2に示すように、ソケット51をナット63に嵌合し、しかる後トルクレンチ本体31の柄36を往復動作させることでラチエット筒46、筒状アダプタ49を介してソケット51が回転し、ナット63の締付けがなされ、その締付けトルクが所定値に達すればトルクレンチ本体1内のトグル32が動作する。
【0011】
このトグル32が動作することでヘッド35は、支軸34を支点として図1において反時計方向に動作するため、このヘッド35の動作でリンク39が支持ピン38を支点として図4において時計方向に回動する。リンク39の動作により、一端部がレバー支点65に支持されているレバー41は、その他端部が図2において鎖線で示すように押し下げられるため、このレバー41の先端に係合されているマーカーヘッド44が押し下げられる。このマーカーヘッド44が押し下げられることで、マーカーロッド54がスプリング60の弾圧力に抗して押し下げられて、マーカーロッド54の下端に取付けられているマーカー55がボルト64の先端に押し当てられてねじ締めが完了されたことを印すマーキングがなされるものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
このようにマーカーを具備せしめたトルクレンチにあっては、トルクレンチにおけるトグルの動作に伴なってマーカー55がボルト64の先端に当接されて締付完了のマーキングがなされることを特長としているが、この先行例で示されているマーカー55は、フエルト(スポンジ)状の印面にインクを含浸せしめたものであった。
【0013】
従ってこのマーカー55におけるフエルト状印面ではインクの保液量が少なく、またその使用インクを速乾性インクとすることによって印面内での乾きが早いために回数の多い連続マーキングが不可能であって、印面内へのインク補充を頻繁に行なわなければならないという不便があった。またインク補充を頻繁に行なうことでねじの締付作業性も低下するという不具合もあった。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明はかかる従来のマーカーによる欠点を解消するためになされたもので、トルクレンチ本体と、前記トルクレンチ本体に対して回動可能に取り付けられたヘッドと、前記ヘッドに対して一端部側が取り外し可能に装着されると共に、他端部側にソケットが軸方向に沿って移動可能、且つ軸周りに回動不能に取り付けられた筒形状のアダプタと、所定のトルク値に達すると、マーカーロッドがその長さ方向の一方に移動し、該マーカーロッドの先端部に取り外し可能に装着されると共に前記アダプタ内から他端に向けて移動し、前記ソケットに嵌合するねじ部材に当接してマーキングを施すマーカーと、を有するマーカー付きトルクレンチにおいて、前記マーカーは、有底に形成されていて、前記マーカーロッドの先端部が嵌め込まれる嵌合孔を底部側に有し、筒内部に該嵌合孔が連通するマーカーケースと、前記マーカーケースの前記筒内部の底部側に収納されるインク貯蔵体と、前記マーカーケースの開口部側に収納され、一端面が前記貯蔵体に接触すると共に他端面が印面をなす給液体と、を有し、前記マーカーを前記マーカーロッドの先端部に取り外し可能に装着する機構は、該マーカーロッドの先端部を中空形状に形成し、この中空形状の先端部の周壁部をフック部が貫通する弾性係止杆と、前記マーカーケースの前記嵌合孔に連通して径方向に形成され、該係止杆のフック部が係止される係止孔と、前記嵌合孔に通じ、該嵌合孔の軸方向に延びるスリットと、該スリットに嵌入する前記マーカーロッドの先端部に設けられた係止ピンと、を有することを特徴とするマーカー付きトルクレンチとするものである。
【0015】
【実施例】
以下に本発明を図面に示す実施例に基いて詳細に説明する。
【0016】
図5乃至図16において、1は樹脂製である筒状のマーカーケースであって、このマーカーケース1は、例えばトルクレンチに設けられている前記マーカーロッド54の先端(下端)が嵌合される嵌合孔2と、その嵌合孔2に通じ、図に示すように、嵌合孔2の軸方向に延びるスリット3及び径方向に形成された係止孔4と、貯蔵体収納部5及び吸液体収納部6を有している。またそのマーカーケース1の吸液体収納部6側開口縁は薄肉辺縁に形成されると共に、その周縁部4個所に切り欠き8を設けて、そのマーカーケース1の成形直後、その薄肉辺縁7を内側に折り曲げることで内側に折り曲げられた鍔部7に形成されている。
【0017】
9はフエルト状である貯蔵体、10は下面に印面11を有する気泡性ゴムの吸液体であって、その貯蔵体9は、上記マーカーケース1の吸液体収納部6側開口部より貯蔵体収納部5内に押し込められ、さらに吸液体10は、上記マーカーケースの吸液体収納部内に鍔部7を通り越えて押し込められて図15で示されるマーカー12が構成される。
【0018】
なおマーカーケース1内に収納された吸液体10は、そのマーカーケース辺縁に形成されている鍔部7によって係止されてマーカーケースからの脱落が阻止されている。
【0019】
13は上記マーカー12を使用しない保管、保存時にそのマーカーに被着するインク蒸発防止用のキャップで示す。
【0020】
以上が本実施例のマーカー構造であるが、このマーカー12を取付け使用するトルクレンチのマーカーロッド54には、図16に示すように、回転防止用の係止ピン14と、抜け止め防止用の弾性係止杆15が具備されている。
【0021】
次に上記マーカーの使用について説明すると、図15に示すマーカー12にはその嵌合孔2を利用して、例えばスポイド等により速乾性のインクを貯蔵体9へ含浸せしめる。貯蔵体9にインクが含浸されることで吸液体10にはインクが吸収される。
【0022】
このマーカー12をマーカーロッド54に取付けるには、そのロッド54に設けられている係止ピン14をスリット3内へ嵌入させ、また弾性係止杆15の先端鈎部を係止孔4内へ係止させることで、そのマーカー12は、マーカーロッド54に対して回動又は抜けることなく係止される。このときマーカーロッド54の先端外周囲に設けられているシーリング16がマーカー12の嵌合孔2内に気密に圧接されてインクの蒸発が抑制されている。
【0023】
従ってこの状態でマーキング使用することができるが、この実施例のマーカーにおいては貯蔵体を有していることから多量のインクを保存させることができ、これによって長期に亘るマーキング作業あるいは連続的に多数個のねじのマーキングを確実に行なうことができ、マーキングの信頼性と作業性が高められるという特長がある。
【0024】
またこのマーカー12は、トルクレンチ等のマーカーロッドの先端から離すときは、弾性係止杆15の鈎部先端を押圧して係止孔4との係止を解けば、そのマーカー12をマーカーロッドより取り外すことが容易にできる。従ってこのマーカーは各種印面又は各色インクを保持する多数のマーカーを予め用意して、それらを選択使用かることができるのでマーキングの実用性に優れるものである。
【0025】
またマーカーロッドに取付けたままのマーカー又はマーカーロッドから取り外したマーカーの不使用時には、そのマーカーにキャップ13を被着せしめておくことでインクの蒸発を防止することができる。
【0026】
さらに本実施例のマーカーは3部材の組合せで構成されるものであって、その構造が簡単であることから組立作業性、経済性の点でも有利である。
【0027】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、インク貯蔵体へのインクの供給は、マーカーケースをマーカーロッドへ取り付ける嵌合孔を利用して多量のインクを保存させることができる。またインクをインク貯蔵体に大量に貯蔵できるので、長期に亘るマーキング作業あるいは連続的に多数個のねじのマーキングを確実に行なうことができ、マーキングの信頼性と作業性が高められるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】先行例であるマーカーを具備せしめたトルクレンチの平面図。
【図2】先行例であるマーカーを具備せしめたトルクレンチの側面図。
【図3】先行例であるマーカーを具備せしめたトルクレンチのマーカー取付部の拡大断面図。
【図4】図1におけるA−A線拡大断面図。
【図5】本発明実施例のマーカーの構造説明図。
【図6】本発明実施例のマーカーケースのみの断面図。
【図7】本発明実施例のマーカーケースのみの平面図。
【図8】本発明実施例のマーカーケースのみの底面図。
【図9】本発明実施例のマーカーケースのみの側面図。
【図10】本発明実施例の貯蔵体のみの断面図。
【図11】本発明実施例の貯蔵体のみの平面図。
【図12】本発明実施例の吸液体のみの側面図。
【図13】本発明実施例の吸液体のみの底面図。
【図14】本発明実施例のキャップのみの断面図。
【図15】本発明実施例のマーカー組立時の説明図。
【図16】本発明実施例のマーカーをトルクレンチのマーカーロッドに取付けた状態の説明図。
【符号の説明】
1…マーカーケース 2…嵌合孔
3…スリット 4…係止孔
5…貯蔵体収納部 6…吸液体収納部
7…薄肉辺縁(鍔部) 8…切り欠き
9…貯蔵体 10…吸液体
11…印面 12…マーカー
13…キャップ 14…係止ピン
15…弾性係止杆 16…シールリング
Claims (1)
- トルクレンチ本体と、
前記トルクレンチ本体に対して回動可能に取り付けられたヘッドと、
前記ヘッドに対して一端部側が取り外し可能に装着されると共に、他端部側にソケットが軸方向に沿って移動可能、且つ軸周りに回動不能に取り付けられた筒形状のアダプタと、
所定のトルク値に達すると、マーカーロッドがその長さ方向の一方に移動し、該マーカーロッドの先端部に取り外し可能に装着されると共に前記アダプタ内から他端に向けて移動し、前記ソケットに嵌合するねじ部材に当接してマーキングを施すマーカーと、
を有するマーカー付きトルクレンチにおいて、
前記マーカーは、有底に形成されていて、前記マーカーロッドの先端部が嵌め込まれる嵌合孔を底部側に有し、筒内部に該嵌合孔が連通するマーカーケースと、前記マーカーケースの前記筒内部の底部側に収納されるインク貯蔵体と、前記マーカーケースの開口部側に収納され、一端面が前記貯蔵体に接触すると共に他端面が印面をなす給液体と、を有し、
前記マーカーを前記マーカーロッドの先端部に取り外し可能に装着する機構は、該マーカーロッドの先端部を中空形状に形成し、この中空形状の先端部の周壁部をフック部が貫通する弾性係止杆と、前記マーカーケースの前記嵌合孔に連通して径方向に形成され、該係止杆のフック部が係止される係止孔と、前記嵌合孔に通じ、該嵌合孔の軸方向に延びるスリットと、該スリットに嵌入する前記マーカーロッドの先端部に設けられた係止ピンと、を有することを特徴とするマーカー付きトルクレンチ。
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