JP3630571B2 - 二枚貝の脱殻方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、殻付の生の二枚貝(牡蠣等)から剥き身を取り出す脱殻方法に係る。特に、本発明は、作業者による手作業を不要にした脱殻方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
牡蠣等の食用の二枚貝から貝の身(剥き身)を取り出す作業として、従来は、作業者が鉤型の刃物等を使用して行っていた。例えば牡蠣の身を取り出す作業は、刃物により貝の外殻外縁の一部を傷付け、そこから貝の中に刃物を差し入れて開殻する。その開殻後、この刃物により外殻から身を取り出す(以下、これを脱殻という)ようにしている。
【0003】
ところが、この作業は熟練を要するため、未熟な作業者の作業では、単位時間当たりの剥き身の取り出し数が少なく効率が悪いばかりでなく、剥き身に外殻の破片が混入したり、刃物によって剥き身を傷付けたりして商品価値を低下させてしまう。また、近年、作業者の高齢化に伴い作業者が不足して生産量の減少を招いている。更には、人手により1個づつ取り出し作業を行うため、たとえ熟練者であっても単位時間当たりに取り出せる剥き身の数には限界がある。
【0004】
この点に鑑み、上記の手作業を不要にして二枚貝の開殻を可能にするものとして、特開平4−356156号公報に開示されている加工貝の製造方法がある。この製造方法は、殻付の生の貝に、常温の下で数千kgf/cmの高圧を作用させるものである。これにより、容易に開殻できる加工貝を製造することができる。
【0005】
この公報に開示される開殻のメカニズムは以下のとおりであると推測する。本来、二枚貝の各外殻を繋いでいる蝶番部分は外殻を開こうとしている。これに対し、各外殻の内面同士を連結している閉殻筋(一般に貝柱と呼ばれている)が収縮し蝶番の力にうち勝った力で外殻同士を引き寄せている。つまり、この閉殻筋と外殻との接合部分を何らかの方法で外せば貝は開殻するのである。上記公報では、貝を高圧の環境下におくことで、固体部分である外殻と軟体部分である閉殻筋との収縮状態に位相差を生じさせ、これにより、閉殻筋と外殻との接合部分を外している。また、貝に作用する高圧により閉殻筋のタンパク質が変性し、これも閉殻筋と外殻との接合部分を外すことに寄与している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記公報の方法を実現するためには、貝を数千kgf/cmといった非常に高い圧力の環境下におく必要があることから高い耐圧性を有する圧力容器が必要である。このため、1回の加圧動作で大量の貝を加工しようとする際には、大型でしかも高い耐圧性を有する圧力容器が必要になる。つまり、容器の材質として強度の高いものを選択し、且つ容器の壁厚寸法を大きく設定しておく必要がある。その結果、圧力容器の製造コストが高くなってしまい実用性に欠ける。
【0007】
また、非常に高い圧力の環境下に貝を晒すため、貝の身のタンパク質が圧力の影響を受けて変性し、剥き身の食感や風味が損なわれてしまう可能性がある。この圧力の悪影響は上記公報にも開示されていることである。
【0008】
また、二枚貝を高温度に加熱すれば開殻することは一般に知られている。しかし、大気圧中で開殻させるには例えば60℃程度まで加熱する必要がある。これでは、貝の身のタンパク質に不可逆的な熱変性が生じてしまう(このタンパク質の熱変性に関しては、「理化学大辞典」白井俊明他編 岩崎学術出版社(1967年) の581頁に開示されている。この文献では、タンパク質は60℃に熱すると凝固するという記載がある)。この熱変性のメカニズムは、タンパク質を高温度に加熱すると、タンパク質分子間の側鎖の熱運動が起こり、存在している分子間の結合が切れて、この分子間に新たな結合状態が生じるといったものである。このような熱変性が生じた場合、剥き身の食感や風味が大きく損なわれてしまう。つまり、剥き身が煮えた状態になってしまう。このため、貝を高温度に加熱するのみで開殻させるといった手法は、生食用の剥き身を生産するものとしては到底使用できない。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、殻付の生の二枚貝の脱殻に関し、作業者による手作業を不要にしながらも、剥き身の食感や風味を損うことなく、しかも実用性の高い脱殻方法を得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
−発明の概要−
上記目的を達成するために、本発明は、殻付の生の二枚貝に対し熱及び圧力の両方を作用させることで脱殻にまで至らせるようにしている。その際、この熱及び圧力としては、特に、貝の身のタンパク質に不可逆的な変性を生じさせない範囲とし、且つできるだけ圧力を低く抑えることで圧力容器に求められる耐圧性を低く設定できるようにしている。
【0011】
−解決手段−
具体的に、本発明が講じた第1の解決手段は、殻付の生の二枚貝から生食用の剥き身を取り出すための二枚貝の脱殻方法であって、殻付の生の二枚貝を密閉容器内に入れ、この密閉容器内を30℃以上で50℃未満の温度まで加熱し、且つ密閉容器内を1000kgf/cm2未満であって上記温度において貝の閉殻筋と外殻との接合部分が外れる圧力に加圧することによって、上記二枚貝を開殻させ且つ生食用の剥き身を脱殻にまで至らせるようにしている。
【0012】
この特定事項により、貝はタンパク質が不可逆的な熱変性を生じない範囲で加熱される。このように、貝が加熱されていることにより、貝に作用させる圧力が比較的低くても貝の閉殻筋と外殻との接合部分が容易に外れて開殻及び脱殻する。
【0014】
一般に、タンパク質は40℃を超えると緩やかな熱変性を開始する(このことは、「生物事典」江原有信、市村俊英編 旺文社(1991年) の231頁に開示されている)。この熱変性は50℃程度までは可逆的なものである。つまり、この状態から温度を下げると、タンパク質は略元の状態に戻る。従って、貝の身は本来の食感や風味を保つことになる。この温度域に貝を加熱し、この貝に圧力を作用させることで開殻及び脱殻させるのである。この圧力としては、圧力によるタンパク質の変性が生じず、また、圧力容器に要求される耐圧性も比較的低くできる1000kgf/cm2未満に設定される。言い換えると、上記の温度域に貝を加熱した場合、この貝に作用させる圧力が1000kgf/cm2未満であっても閉殻筋と外殻との接合部分を外すことができ、開殻及び脱殻が可能となるのである。
【0015】
本発明の発明者らは、二枚貝の開殻及び脱殻に関し、貝に作用させる温度及び圧力について種々の実験を重ねた。そして、貝の身のタンパク質に熱変性が生じない温度域またはこのタンパク質の熱変性が可逆的なものである温度域である30℃以上で50℃未満の温度域に貝を加熱した状態では、この貝に作用させる圧力が1000kgf/cm2未満であっても十分に開殻及び脱殻させることができることを確認し、本発明に至ったのである。そして、より具体的には、脱殻対象である二枚貝を牡蠣とした場合、密閉容器内を約43℃まで加熱し且つ圧力を約800kgf/cm2に設定した状態を約5分間継続することによって、牡蠣を開殻させ且つ生食用の剥き身を脱殻にまで至らせることが可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、二枚貝として牡蠣、帆立貝、浅蜊を対象とし、これら貝を開殻及び脱殻させる場合を例に掲げる。
【0017】
本形態では、牡蠣、帆立貝、浅蜊を開殻及び脱殻させるための温度条件及び圧力条件について以下に述べる実験装置を使用して実験を行った。
【0018】
−実験装置の説明−
図1は実験装置1の模式図である。この実験装置1は、耐圧容器2を備えている。この耐圧容器2は、例えば外径が450mmの円筒状の密閉容器であって、壁厚寸法は100mmに設定されている。この耐圧容器2内には清水または海水が貯留されている。この耐圧容器2内にはヒータ3が配置されている。このヒータ3は、耐圧容器2内の水温を50℃まで上昇させることができると共に、図示しない操作パネルの操作により、この水温を任意の温度に調整することができるようになっている。
【0019】
また、耐圧容器2には加圧ポンプ4が接続されている。上記操作パネルを操作することで、この加圧ポンプ4により耐圧容器2内を500kgf/cm〜4000kgf/cmの範囲で任意の圧力に調整することができるようになっている。更に、この耐圧容器2には温度センサ5及び圧力センサ6が取り付けられている。温度センサ5は耐圧容器2内の温度を検出して表示する。圧力センサ6は耐圧容器2内の圧力を検出して表示する。
【0020】
−実験動作の説明−
次に、上述した実験装置1を使用した実験動作について説明する。本形態では第1〜第4の実験を行っている。
【0021】
第1の実験は、二枚貝として牡蠣を対象とし、耐圧容器2内の温度条件及び圧力条件に応じた牡蠣の開殻率及び脱殻率を計測したものである。具体的には、耐圧容器2内に100個の牡蠣を置き、耐圧容器2内の水温を10℃、20℃、30℃、40℃、50℃とした場合のそれぞれに対し、耐圧容器1内の圧力を500、600、700、750、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000kgf/cmとした際の牡蠣の開殻率及び脱殻率を計測することにより行った。
【0022】
第2の実験も二枚貝として牡蠣を対象とし、耐圧容器2内の温度条件及び圧力条件だけでなく、その温度及び圧力の環境下に牡蠣を置いておく作用時間をも考慮したものである。具体的には、耐圧容器2内の温度を40℃付近で変化させた場合のそれぞれに対し、耐圧容器2内の圧力を大気圧から1000kgf/cmの間で変化させ、且つ作用時間を変化させた際の牡蠣の開殻状態及び脱殻状態を、実験条件1〜実験条件10まで各条件を変更して検査することにより行った。
【0023】
第3の実験は、二枚貝として帆立貝を対象とし、耐圧容器2内の温度条件及び圧力条件に応じた帆立貝の開殻率を計測したものである。具体的には、耐圧容器2内に10個の帆立貝を置き、耐圧容器2内の水温を30℃、43℃、45℃とした場合のそれぞれに対し、耐圧容器1内の圧力を500、600、700、900、1000kgf/cmとした際の帆立貝の開殻率を計測することにより行った。
【0024】
第4の実験は、二枚貝として浅蜊を対象とし、耐圧容器2内の温度条件及び圧力条件に応じた浅蜊の開殻率を計測したものである。実験条件としては、上記第3の実験の場合と同様である。
【0025】
これら実験の作業手順としては、先ず、複数個の生の二枚貝を洗浄した後、これら二枚貝を耐圧容器2内に投入する。この状態で、ヒータ3により耐圧容器2内を所定温度(実験条件温度)まで加熱する。その後、加圧ポンプ4を駆動して耐圧容器2内の圧力を所定圧力(実験条件圧力)まで上昇させる。この加熱及び加圧した状態を所定時間だけ保持する。第1、第3及び第4の実験では、この時間を一定(例えば5分間)に設定する。第2の実験では、この時間を実験条件に応じて変更する。その後、耐圧容器2を開放し、第1及び第2の実験では開殻している牡蠣の個数及び脱殻している牡蠣の個数を検査する。更に、第2の実験では、その脱殻の状態を検査する。一方、第3及び第4の実験では開殻している二枚貝の個数を検査する。このような実験作業を実験条件を変更しながら複数回行う。
【0026】
尚、本発明に係る脱殻方法を実際に使用して開殻及び脱殻し剥き身を出荷する作業としては、収穫した貝を洗浄し、これら貝を耐圧容器内に入れて予備加熱を行う。その後、耐圧容器内を所定温度まで加熱すると同時に所定圧力まで加圧する。この状態を所定時間維持した後、耐圧容器から貝を取り出して剥き身を回収し、この剥き身を洗浄する。しかる後、これら剥き身を箱詰めし、冷蔵庫(または冷蔵車)で冷蔵しながら出荷するのである。つまり、上記実験作業は、本発明に係る脱殻方法を実際に使用する場合と略同様の手順により行われる。
【0027】
(第1実験の結果)
第1実験の結果を以下の表1に示す。
【0028】
【表1】
Figure 0003630571
【0029】
この表1における「開殻率」は、100個の牡蠣のうち開殻したもの(脱殻まで至ったものを含む)の個数を示している。また、「開殻のみ」は、上記開殻した牡蠣のうち脱殻まで至らず開殻のみに止まったものの割合を示している。「脱殻」は、上記開殻した牡蠣のうち脱殻まで至ったものの割合を示している。また、「水温」、「圧力」、「開殻率」の関係をグラフ化したのが図2である。
【0030】
この表1及び図2に示すように、水温が10℃の場合には耐圧容器2内の圧力が1500kgf/cm程度まで上昇しなければ開殻が開始せず、この温度で90%以上の開殻率を得るためには3500kgf/cm程度の非常に高い圧力を作用させねばならなかった。また、水温が20℃の場合には耐圧容器2内の圧力が1000kgf/cm程度まで上昇しなければ開殻が開始せず、この温度で90%以上の開殻率を得るためには3000kgf/cm程度の非常に高い圧力を作用させねばならなかった。つまり、これら温度域では、従来と同様の非常に高い圧力を作用させねば開殻できないことが判る。
【0031】
これに対し、水温が30℃の場合には耐圧容器2内の圧力が700kgf/cm程度であっても開殻が開始し、また、水温が40℃の場合には耐圧容器2内の圧力が600kgf/cm程度であっても開殻が開始し、更に、水温が50℃の場合には耐圧容器2内の圧力が500kgf/cm以下であっても開殻が開始した。
【0032】
この実験結果により、水温が20℃以下の場合には全く開殻しなかった圧力域であっても、水温を30℃以上に設定することで開殻率が急激に上昇することが判る。言い換えると、水温を30℃以上に設定すれば、牡蠣に作用させる圧力の開殻に寄与する影響力(閉殻筋と外殻との接合部分を外すのに寄与する影響力)が著しく向上することが判る。
【0033】
特に、水温が30℃の場合には耐圧容器2内の圧力が800kgf/cmであっても95%の牡蠣が開殻し、その全てが脱殻まで至っている。また、水温が40℃の場合には耐圧容器2内の圧力が700kgf/cmであっても97%の牡蠣が開殻し、その全てが脱殻まで至っている。更に、水温が50℃の場合には耐圧容器2内の圧力が600kgf/cmであっても97%の牡蠣が開殻し、その殆どが脱殻まで至っている。
【0034】
本実験の結果から、水温を30℃以上に設定すれば、水温を20℃以下に設定した場合に比べて、耐圧容器2内の圧力を1/4程度またはそれ以下に設定しても殆どの牡蠣を開殻させ、また脱殻まで至らせることができることが判る。但し、水温を50℃とした場合、牡蠣の身に含まれているタンパク質が不可逆的な熱変性を生じる可能性があるため、この温度域で開殻を行わせることはあまり好ましくない。実際には、水温が30℃〜45℃の範囲で開殻率が95%以上となる圧力域を使用することが好ましい。例えば、水温が30℃の場合には耐圧容器2内の圧力を800kgf/cmに設定し、また、水温が40℃の場合には耐圧容器2内の圧力を700kgf/cmに設定し、更に、水温が45℃の場合には耐圧容器2内の圧力を650kgf/cm程度に設定するのである。これらの場合には、殆どの牡蠣が開殻だけでなく脱殻まで至るので、耐圧容器2から取り出した牡蠣に対して脱殻作業を行う必要は殆どない。また、殆どの牡蠣を脱殻まで至らせる必要が無く、開殻のみを行わせればよい場合には、もう少し低い温度及び低い圧力を牡蠣に作用させれば済むのである。尚、この開殻のみを行わせた場合であっても、既に、牡蠣の閉殻筋と外殻との接合部分は外れ易い状態になっているので、脱殻作業は極めて容易に行える。
【0035】
(第2実験の結果)
第2実験の結果を以下の表2に示す。
【0036】
【表2】
Figure 0003630571
【0037】
実験条件1の結果が示すように、耐圧容器2内の温度を43℃とし、作用時間を6分に設定しても、耐圧容器2内の圧力が大気圧である場合には牡蠣を開殻させることはできない。それに対し、実験条件2の結果が示すように、耐圧容器2内の温度を実験条件1よりも低い40℃とし、作用時間を実験条件1よりも短い2分に設定した場合であっても、耐圧容器2内の圧力を500kgf/cmに設定すれば牡蠣は開殻する。この両条件の実験結果を比較することにより、所定の圧力を作用させれば、温度が低く且つ作用時間が短くても開殻を行うことができることが確認できる。
【0038】
また、条件1〜条件10の各実験結果を比較することにより、温度を高く設定するほど、また、圧力を高く設定するほど、更には作用時間を長く設定するほど、開殻に留まらず脱殻まで至らせることができることが判る。特に、実験条件3及び4と実験条件6〜8とを比較した場合、実験条件3及び4では、部分的な脱殻しか行えなかったのに対し、実験条件6〜8では、実験条件3及び4に比べて温度が低く作用時間を短いにもかかわらず、圧力を僅かに高く設定することで脱殻まで至らせることができることが確認できる。
【0039】
本実験の結果から、耐圧容器2内の温度及び圧力だけでなく作用時間をも考慮することにより開殻動作及び脱殻動作を効率的に行うことができることが判る。例えば、実験条件6〜8を比較することにより、耐圧容器2内の圧力を800kgf/cm2とし、温度を43℃とする場合には、作用時間を4分に設定することで、必要最小限の作用時間で牡蠣を脱殻まで至らせることができることが判る。このように、温度及び圧力を適切に設定しておけば、作用時間が短くても開殻及び脱殻を行わせることができ、単位時間当たりに処理できる貝の個数を増大できるのである。
【0040】
(第3実験の結果)
第3実験の結果を以下の表3に示す。
【0041】
【表3】
Figure 0003630571
【0042】
この表3に示すように、水温が30℃の場合には耐圧容器2内の圧力が900kgf/cmであっても70%の帆立貝が開殻している。また、水温が43℃の場合には耐圧容器2内の圧力が700kgf/cmであっても70%の帆立貝が開殻し、同様に、水温が45℃の場合には耐圧容器2内の圧力が700kgf/cmであっても80%の帆立貝が開殻している。
【0043】
本実験の結果から、牡蠣に限らず帆立貝においても水温を30℃以上に設定すれば、耐圧容器2内の圧力を1000kgf/cm未満に設定しても殆どを開殻させることができることが判る。
【0044】
(第4実験の結果)
第4実験の結果を以下の表4に示す。
【0045】
【表4】
Figure 0003630571
【0046】
この表4に示すように、水温が30℃の場合には耐圧容器2内の圧力が900kgf/cmであっても70%の浅蜊が開殻している。また、水温が43℃の場合及び45℃の場合には耐圧容器2内の圧力が700kgf/cmであっても90%の浅蜊が開殻している。
【0047】
本実験の結果から、上述した牡蠣及び帆立貝に限らず浅蜊においても水温を30℃以上に設定すれば、耐圧容器2内の圧力を1000kgf/cm未満に設定しても殆どを開殻させることができることが判る。
【0048】
これら第3及び第4の実験結果から、帆立貝及び浅蜊に関しては、水温を43℃に設定し、耐圧容器2内の圧力を700kgf/cm〜900kgf/cm程度に設定すれば、その殆どを開殻させることができることが判る。
【0049】
−他の実施形態−
上述した実施形態では、二枚貝として牡蠣、帆立貝、浅蜊を対象とし、これらの貝を開殻や脱殻させる場合を例に掲げて説明した。本発明は、蛤等のその他の二枚貝にも適用することが可能である。
【0050】
また、本発明の発明者らは、貝を収容した容器内の水に苦汁を混入し、そのマグネシウムイオンの影響により閉殻筋を弛緩させて開殻させることを既に見出している。従って、このマグネシウムイオンによる閉殻筋の弛緩効果を利用すべく、上記耐圧容器2内に苦汁を混入しておけば、更に効率良く開殻及び脱殻させることができると推測される。
【0051】
更に、上述した実験では、耐圧容器2内を加熱した後に加圧していた。これに限らず、耐圧容器2内を加圧した後に加熱を行ったり、この加熱と加圧とを同時に行ったりすることで、更に効率良く開殻させることができる可能性がある。
【0052】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、以下のような効果が発揮される。
【0053】
請求項1記載の発明では、殻付の生の二枚貝に対して熱及び圧力の両方を作用させ、その相乗効果により脱殻させるようにしている。この作用させる熱としては、貝の身のタンパク質に熱変性が生じない温度域またはこのタンパク質の熱変性が可逆的なものである温度域となるようにしている。また、作用させる圧力としては、上記温度で貝の閉殻筋と外殻との接合部分を外すことができる必要最低限に設定すればよい。従来は、数千kgf/cm2といった非常に高い圧力を貝に作用させていた。このため、高い耐圧性を有する圧力容器が必要であり、圧力容器の製造コストが高かった。また、非常に高い圧力の環境下に貝を晒すため、貝の身のタンパク質が圧力の影響を受けて変性し、剥き身の食感や風味が損なわれてしまう可能性があった。本発明によれば、貝を剥き身の食感や風味が損なわれない程度まで加熱し、この貝に圧力を作用させて脱殻させている。このため、比較的低い圧力であっても脱殻まで至らせることができる。従って、圧力容器に要求される耐圧性も比較的低くでき、この圧力容器の製造コストを低減できる。その結果、二枚貝の脱殻方法を実用化する際の装置の実用性の向上を図ることができる。また、圧力の悪影響によるタンパク質の変性が殆ど無いので、剥き身の食感や風味を良好に保つことができる。
【0054】
更に、剥き身のタンパク質に不可逆的な熱変性が生じないようにしているので、これによっても、剥き身の食感や風味を良好に保つことができる。
【0055】
つまり、本発明によれば、作業者による手作業を不要にしながら、剥き身の食感や風味を損うことなく、しかも実用性の高い脱殻方法を得ることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る実験装置の模式図である。
【図2】第1の実験の結果をグラフ化した図である。
【符号の説明】
2 耐圧容器

Claims (2)

  1. 殻付の生の二枚貝から生食用の剥き身を取り出すための二枚貝の脱殻方法であって、
    上記殻付の生の二枚貝を密閉容器内に入れ、この密閉容器内を30℃以上で50℃未満の温度まで加熱し、且つ密閉容器内を1000 kgf/cm 2 未満であって上記温度において貝の閉殻筋と外殻との接合部分が外れる圧力に加圧することによって、上記二枚貝を開殻させ且つ生食用の剥き身を脱殻にまで至らせることを特徴とする二枚貝の脱殻方法。
  2. 請求項1記載の二枚貝の脱殻方法において、
    脱殻対象である二枚貝は牡蠣であって、密閉容器内を約43℃まで加熱し且つ圧力を約800 kgf/cm 2 に設定した状態を約5分間継続することによって、牡蠣を開殻させ且つ生食用の剥き身を脱殻にまで至らせることを特徴とする二枚貝の脱殻方法。
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