JP3629300B2 - 転動・摺動部品、ならびに、カムフォロワ用ローラ - Google Patents

転動・摺動部品、ならびに、カムフォロワ用ローラ Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、転動・摺動部品、ならびに、カムフォロワ用ローラに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年では、ロッカアーム等のカムフォロワのローラおよび各種のすべり軸受などのような転動・摺動部品を、いわゆるセラミックスで形成することが種々試みられている。
【0003】
このようなセラミックスからなる転動・摺動部品としては、一般的に、高密度かつ高強度な高品位なものとなるように製作される。そのためには、不純物濃度を低くするとともに気孔率を小さくすることが重要となる。
【0004】
ここで、本願出願人が現在実施しているセラミックス製の転動・摺動部品の製造方法を簡単に説明する。
【0005】
まず、平均粒径0.2μmのα型の窒化けい素の粉末(高グレード品例えば株式会社宇部興産の品種番号E−10)に対してイットリア(Y),アルミナ(Al),窒化アルミ(AlN),チタニア(TiO)などの焼結助剤を10重量%以下添加する。これにバインダーを混入して金型に充填した状態で単軸圧縮することにより成形する。この成形品を最終形状に近い状態に加工するとともにバインダーなどの有機物を除去してから、いわゆるHP(ホット・プレス)、HIP(ホット・アイソスタティック・プレス)と称する手法により焼結する。この焼結体の転動面や摺動面に対して超仕上げ加工を施す。HP、HIPでは、焼結時に1000気圧もの高い圧力をかける。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したような従来例では、原料コストや製造コストが高くつくことが原因で、製品価格が非常に高くなる。
【0007】
したがって、前述の高品位セラミックスでカムフォロワのローラやすべり軸受などを形成することができるけれども、それではコストが見合わないので実施できない。
【0008】
このように従来では、高品位のセラミックスを形成しようとするあまり、価格が高価になっており、そのために、使用対象が制限されることになっていた。
【0009】
したがって、本発明は、安価なセラミックス製の転動・摺動部品、ならびにカムフォロワ用ローラを提供することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の転動・摺動部品は、平均粒径0.2〜1μmの窒化けい素の粉末に9〜20重量%の焼結助剤を添加した材料を1〜10気圧下で焼結したセラミックスにおいて、該セラミックスの表面には潤滑剤の貯留用のポアが開口している。
また、本発明の転動・摺動部品は、平均粒径0.2〜1μmの窒化けい素の粉末に9〜20重量%の焼結助剤を添加した材料を1〜10気圧下で焼結したセラミックスと、転動・摺動面に固体潤滑剤の潤滑膜を形成した部品とから構成され、該セラミックスの表面には固体潤滑剤貯留用のポアが開口している。
また、前記ポアの大きさが1〜15μmまたは20〜30μmであることが好ましい。
また、前記セラミックスの転動面もしくは摺動面に超仕上げ加工が施されていることが好ましい。
【0013】
本発明のカムフォロワ用ローラは、平均粒径0.2〜1μmの窒化けい素の粉末に9〜20重量%の焼結助剤を添加した材料を1〜10気圧下で焼結したセラミックスからなり、外周面に超仕上げ加工が施され、表面には潤滑剤貯留用のポアが開口している。
【0014】
本発明の転がり軸受は、平均粒径0.2〜1μmの窒化けい素の粉末に対して少なくともY,Alなどの焼結助剤が5〜20重量%添加された材料を、1〜10気圧の圧力下で焼結した焼結体からなる転動体を有する。
【0015】
【作用】
本発明の転動・摺動部品、カムフォロワ用ローラならびに転がり軸受は、窒化けい素の粉末の焼結時に従来例で引用したHP、HIPなどのように1000気圧もの高い圧力をかけずに1〜10気圧の比較的低い圧力をかけるだけと簡易に済ませることにより、形成されている。その密度や強度については、従来の高品位セラミックスに比べると若干低くなるものの、実用上十分な強度を有する。なお、焼結助剤の量が5重量%未満の場合には、焼結不良となり、また20重量%を超えると母材の窒化けい素の量が相対的に少なくなり、十分な強度が得られない。さらには、9〜14重量%の範囲のものが、焼結性と強度上から好適に用いられる。焼結圧としては1〜10気圧程度であれば、比較的安価な圧力容器で達成されるので、従来のように大掛かりで高価な装置が必要でなくなる。
【0016】
このように、本発明では、製造コストを削減することにより、従来の高品位セラミックスよりも製品価格を低く抑えるようにしている。
【0017】
また、焼結体には、表面に開口するポアが存在するから、それが潤滑剤を貯留するようになる。これにより、潤滑性の長期継続が期待できるようになる。なお、潤滑剤として固体潤滑剤を用いる場合には、前記ポアが固体潤滑剤の摩耗粉をトラップするから、発塵要素が低減される。しかも、焼結後に焼結体の転動面や摺動面となる外周面に超仕上げ加工を施すと、表面に開口するポアがより多くなるので、潤滑剤貯留量が増すようになる。
【0018】
さらに、本発明では、従来の高品位セラミックスのような高品質な原料(窒化けい素の粉末の平均粒径の細かいもの)を用いたり、あるいは比較的低品質な原料(窒化けい素の粉末の平均粒径の粗いもの)を用いることができる。低品質な原料は、高品質な原料に比べて安価(約半値)であるから、製品価格の一層の低減に貢献できる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の詳細を図1ないし図15に示す実施例に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1実施例にかかり、転動・摺動部品としてのローラを有するロッカアームの側面図である。図例のロッカアーム1は、プレス製フレーム2にローラ3を軸4を介して回転自在に取り付けた構造である。なお、ローラ3と軸4との間にニードルローラ軸受を介在してもよい。
【0021】
フレーム2は、ほぼ平行に対向配置される一対の壁部5,5の長手方向一端側下端および長手方向他端側下端をそれぞれ架橋状に連接したものであり、長手方向一端側の連接部には半球状のピボット係合部6が上向きに突出するように設けられ、長手方向他端側の連接部は長手方向に沿って湾曲成形されてバルブ係合部7とされている。ピボット係合部6には、ローラ3側へ潤滑油を噴出させる油穴(符号省略)が設けられている。このフレーム2の材料としては、例えばJIS規格SCM415、420などのクロムモリブデン鋼、JIS規格SCr420やSAE規格5120などの肌焼鋼、あるいはJIS規格SPC系の冷間圧延鋼板などが好適に用いられる。
【0022】
ローラ3は、一対の壁部5,5の孔8,8間に架け渡される軸4を介して回転自在に支持されて、フレーム2の貫通孔9内に配置されている。このローラ3は、下記詳述する窒化けい素を主体とする焼結体からなる。
【0023】
このロッカアーム1は、クランク軸に連動するカムCの回転に伴って、ローラ3が押され、ラッシュアジャスタのピボットPが係合するピボット係合部6を支点として上下に揺動し、バルブ係合部7に係合するバルブステムVを図示しないバルブガイドに沿って上下に昇降させる。
【0024】
図2は、本発明の第2実施例にかかり、転動・摺動部品としてのローラを有するバルブリフター用カムフォロワの上半分の縦断面図である。図例のカムフォロワ10は、フレームのヨーク11,12と、ヨーク11,12の貫通孔13,14に挿通される例えばJIS規格SUJ−2製の軸15と、軸15の外周に配置されるローラ16とを備えている。ローラ16は下記詳述する窒化けい素を主体とする焼結体で形成される。軸15の外周面とローラ16の内周面との間には、軸15の膨張時にもローラ16が適正に回転できるように適宜の隙間、いわゆるオイルクリアランスが設けられている。
【0025】
そして、常温でのオイルクリアランスと金属製軸(4,15)の摩耗量との関係を試験により調べたので、下記表1に示す。試験では、ローラの内径を8.3mmで一定とし、軸の外径を可変してオイルクリアランスを変えるようにしている。結果は、表1に示すように、ローラの内径と軸の外径とで決まるオイルクリアランスが20μm、40μmで、摩耗量が少ないことが確認された。そして、オイルクリアランス100μmでは、軸のとも回りが発生することから、過大なオイルクリアランスだと回転トルクの増加につながることがわかった。ちなみに、試験では、100℃の昇温に対してオイルクリアランス減少量は約8μmになる。要するに、オイルクリアランスとしては、油膜の形成や冷却、振動吸収などの面で重要であり、荷重条件によっても異なるが、使用温度条件で軸の外径の約0.1%が妥当と考えられる。
【0026】
【表1】
Figure 0003629300
【0027】
次に、上述したロッカアーム1のローラ3やカムフォロワ10のローラ16に関する製造方法を具体的に説明する。
【0028】
▲1▼ 原料としては比較的低品質なものを用いる。原料である平均粒径0.5〜1μmのα型の窒化けい素の粉末(例えば電気化学工業株式会社の品種番号SN−9FW)に対してイットリア(Y),アルミナ(Al),窒化アルミ(AlN),チタニア(TiO)などの焼結助剤を5〜20重量%添加し、これを適当な混合機(ボールミル)でもって有機溶剤または水を用いて均一に混合する(調合工程)。
【0029】
▲2▼ 混合されたスラリーにバインダーを混入して、一定粒径の球状粒子を製造する(乾燥造粒工程)。
【0030】
▲3▼ 造粒粉末を単純形状の金型に充填した状態で単軸圧縮する(成形工程)。なお、ここで成形品を所望形状とする金型を用いれば、下記▲4▼の一次加工工程を省略することができる。
【0031】
▲4▼ この成形品をローラ3,16に応じて最終形状に近い状態に加工する(一次加工工程)。
【0032】
▲5▼ 加工したものを脱脂炉内で徐々に加熱し、脱脂対象品からバインダーなどの有機物を分解あるいは揮発させて除去する(脱脂工程)。
【0033】
▲6▼ 脱脂したものを1〜10気圧の圧力下で焼結する(焼結工程)。焼結温度や焼結時間は、1800℃、2〜4時間である。なお、焼結によって、成形品が所定の割合で収縮するものの、この収縮量は、比重を計れば容易に把握でき、ベースとする素材や助剤の混合比によって適宜調整できる。
【0034】
▲7▼ この焼結体の転動面や摺動面に対して超仕上げ加工を施し、最終製品の寸法、表面状態とする(二次加工工程)。この超仕上げ加工では、表面粗さをRで約0.1〜0.8μmにまでできるが、その代わりに研削仕上げ加工を施した場合では、Rで約1.5μmが限界である。ここで、超仕上げ加工(R約0.5μm)した場合と、研削仕上げ(R約1.5μm)した場合とで、ロッカアーム1の実動試験を行った。結果としては、研削仕上げ加工では、10時間と短時間のうちに金属製の軸が焼き付いて金属製カムの段摩耗が発生したが、超仕上げ加工では、300時間について金属製の軸にわずかな摩耗がみられただけで金属製カムとのあたりは良好に保たれた。
【0035】
▲8▼ 最終製品の表面のクラックやピンホールなどの発生の有無を蛍光浸透探傷で検査する。
【0036】
このような製造方法により得られるものを低品位セラミックスと称する。この低品位セラミックスと、従来例の製造方法により得られる高品位セラミックスとの物性を調べたので、下記表2に示す。
【0037】
【表2】
Figure 0003629300
【0038】
密度は、アルキメデス方法により測定している。硬度、破壊靭性値は、ビッカース硬度計を用いて測定しており、硬度は図3に示すビッカース圧痕の対角線の長さから算出し、破壊靭性値KICは、IF(Indention Fracture)法により下記する新原の式を用いて算出する。曲げ強度は、直接材料の強度を測定するもので、JIS R 1601規格の3点曲げ強度試験方法を用いている。
【0039】
新原の式=0.0114E0.40.6−0.7(C/a−1)−0.5
但し、Pは荷重(Kgf)、dは圧痕の対角線長(mm)、Eはヤング率(Kgf/mm )、Cは圧痕の中心点から亀裂の長さ(mm)、aは圧痕の対角線長の1/2(mm)である。
【0040】
また、ロッカアーム1のローラ3については、ローラ3を支持する軸4の摩耗試験をしているので、その結果を図4に示す。軸4は、JIS規格SUJ−2とされている。
【0041】
試験は、ガソリンエンジンを用いており、試験条件として、カムシャフト回転数は2500(rpm)、潤滑油はモータオイル(10W−30)、油温は60(℃)である。図4のグラフにおける比較例Aは、軸受鋼(JIS規格SUJ−2)製のローラを用いたロッカアームであり、比較例Bは、軸受鋼(JIS規格SUJ−2)製のローラおよびローラと軸との間に銅合金製のブッシュを介在したロッカアームである。なお、比較例A,Bともに、2つの試料を用いており、本実施例では、2〜6つの試料を用いている。本実施例および比較例Aともに、オイルクリアランスは常温で20μmにし、ローラの表面粗さは超仕上げによりR約0.5μmとしている。
【0042】
結果としては、図4のグラフに示すように、300時間での軸4の摩耗量が、本実施例の場合では、1.2〜1.9μmとなるのに対して、比較例A,Bの場合では、2.3〜3.0μmとなり、本実施例のほうが摩耗量が少なくなる。ちなみに、摩耗量は本実施例の方が比較例Aに比べて約40%も低減できる。しかも、本実施例の場合、300時間での摩耗量が最大ピークとなり、それ以降1000時間までの間では摩耗量もほぼ飽和する。結果として、本実施例は、耐摩耗性、耐久性において優れていることが判る。
【0043】
ところで、上記製造方法の▲1▼の工程において、従来の高品質な原料を用いてもよい。この高品質な原料とは、例えば平均粒径0.2μmのα型の窒化けい素の粉末(高グレード品例えば株式会社宇部興産の品種番号E−10)に対してイットリア(Y),アルミナ(Al),窒化アルミ(AlN),チタニア(TiO)などの焼結助剤を10重量%以下添加したものである。この高品質な原料を用いて上記▲2▼〜▲8▼のような処理を施したものを、中品位セラミックスと称する。
【0044】
そして、低品位、中品位セラミックスは、従来例で説明した製造方法で製造される高品位セラミックスに比べて密度が若干低下するため、その内部や表面にポアが点在するようになる。低品位セラミックスの場合、ポアの大きさが約20〜30μmに、また、中品位セラミックスの場合、低品位セラミックスに比べてポアの大きさが約1〜15μmと小さくなり、その点在量が少なくなる。
【0045】
しかし、このような低品位セラミックスや中品位セラミックスでも、上述した評価により実用上あまり問題ないことがわかる。その上、低品位セラミックスや中品位セラミックスの場合、高品位セラミックスに比べて次のような点で優位であると言える。要するに、表面に開口するポアが、潤滑油などの溜まりとなるなど安定して良好な潤滑性を発揮できるようになる。これについて、上記製造方法の▲7▼のように超仕上げ加工を施していれば、焼結体の表面により多くのポアが開口するようになるので、より潤滑油貯溜量が増すことになる。
【0046】
なお、本発明は上記実施例のみに限定されない。例えば、転動・摺動部品としてのローラの他、各種のすべり軸受、転がり軸受などとすることができる。
【0047】
前述の転がり軸受としての玉軸受に本発明を適用する場合の例を図5に示す。図中、20は内輪、21は外輪、22は玉、23は波形保持器である。内・外輪20,21は、JIS規格SUS440C、波形保持器23は、JIS規格SUS304、玉22は、上述した低品位セラミックスまたは中品位セラミックスとされる。そして、内・外輪20,21の軌道溝および波形保持器23の表面には、金、銀、鉛、MoS、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイトなどの固体潤滑剤のいずれかからなる潤滑膜24が形成される。なお、パーフルオロポリエーテル(PFPF)などの潤滑油膜を用いることもできる。
【0048】
このような玉軸受を構成するにあたり、玉22について下記試験により評価する。試験は、玉のスラスト試験、ラジアル試験を行った。
【0049】
スラスト試験では、図6に示すようなスラスト軸受において、玉を中品位セラミックスとし、玉サイズを3/8インチ、1/4インチの2種類とし、油浴潤滑とし、軸の回転数を1200rpmとし、面圧を3/8インチのものは291kgf/mm(2.85GPa)、1/4インチのものは319kgf/mm(3.13GPa)とした。いずれのサイズの玉も、1000時間で打ち切ったが剥離などの異常はなかった。
【0050】
ラジアル試験では、図7に示すようなラジアル試験機を用いる。試験軸受は、呼び番号#6206のラジアル玉軸受とし、油浴潤滑とし、回転数を6000rpmとし、面圧を335kgf/mm(3.28GPa)とした。400時間で打ち切ったが玉に剥離などの異常がなかった。
【0051】
このように、玉などの転動体を低品位、中品位セラミックスとし、固体潤滑剤からなる潤滑膜を用いる場合には、セラミックスからなる転動体に対する潤滑膜の摩耗粉の移着性が良好となり、高品位セラミックスを用いる場合に比べて発塵要素が低減するものと考えられる。このことについて、下記するような試験を行ったので、説明する。
【0052】
前述の固体潤滑剤の移着性について、下記試験により調査しているので、説明する。この試験では、固体潤滑剤をコーティングした金属製(JIS規格SUS630)の平板試料を水平に置き、この平板試料の上面(潤滑膜形成面)に、超仕上げを施したセラミックス製の円柱試料の外周面を垂直方向に押し付けた状態で、水平方向に滑らせることにより、円柱試料に対する固体潤滑剤の移着状況を調べる。この垂直荷重は10Kgf、滑り距離を30mm、摺動回数を1回としている。
【0053】
円柱試料は、▲1▼低品位セラミックス(表面粗さR約0.5μm)、▲2▼中品位セラミックス(表面粗さR約0.2μm)、▲3▼高品位セラミックス(表面粗さR約0.2μm)、▲4▼高品位セラミックス(表面粗さR約0.5μm)の4つを用意している。これらの円柱試料は、いずれも直径φ40mm、長さ15mmとし、平板試料に形成する潤滑膜は、金、MoSとしている。金は、イオンプレーティングにて膜厚1μmとし、MoSは、樹脂バインダーを用いて、膜厚10μmとしている。
【0054】
試験結果を、図8ないし図11に添付する顕微鏡写真に示す。このうち、図8(a)〜(c)は、前述の▲1▼に関するもの、図9(a)〜(c)は前述の▲2▼に関するもの、図10(a)〜(c)は前述の▲3▼に関するもの、図11(a)〜(c)は前述の▲4▼に関するものである。また、図8ないし図11の各(a)は試験前の円柱試料表面の状態を表し、図8ないし図11の各(b)は金をコーティング膜とした場合での試験後の円柱試料表面の状態を表し、図8ないし図11の各(c)はMoSをコーティング膜とした場合での試験後の円柱試料表面の状態を表している。
【0055】
これらの写真結果から、低品位、中品位セラミックスだと、表面に開口するポアに対して潤滑剤が入り込むことがわかり、高品位セラミックスだと、表面に開口するポアがほとんどないかもしくはかなり小さいので、潤滑剤が入り込まないことが分かる。結果的には、高品位セラミックスに比べて低品位、中品位セラミックスは、移着性が良好となっている。
【0056】
なお、前述と同様の試験を球体試料により行ったが、図12および図13に添付する顕微鏡写真に示すように、前述と同様の結果が得られた。図12(a)、(b)は中品位セラミックスの球体試料に関するもの、図13(a)、(b)は高品位セラミックスの球体試料に関するものであり、図12および図13の各(a)は試験前の球体試料表面の状態を表し、図12および図13の各(b)は試験後の球体試料表面の状態を表している。球体試料は、直径3/8インチで、表面粗さはいずれもRaで0.01μmである。平板試料に対するコーティング膜は樹脂バインダーを用いたMoSとし、膜厚10μmとしている。垂直荷重は5Kgf、滑り距離を20mm、摺動回数を5回往復とする。
【0057】
このことをふまえ、図5に示す玉軸受の初期発塵試験、回転トルク寿命試験を行ったので、説明する。
【0058】
初期発塵試験では、図14に示すような発塵試験装置を用いる。試験軸受は、呼び番号#608のラジアル玉軸受とし、各軸受構成要素の素材を前述したとおりとし、保持器に樹脂バインダーにPTFEを混合した潤滑膜をコーティングしている。回転数を200rpmとし、面圧を180kgf/mm(1.76GPa)とした。発塵試験装置の雰囲気は、10−3Pa以下、室温とし、計測粒子径を0.38μm以上、計測タイミングを10分間隔とし、試験時間を20時間としている。玉は、実施例として中品位セラミックスに、比較例として高品位セラミックスにしている。結果は、比率で言うと、比較例:実施例=1:0.8になり、実施例のほうが優れている。そもそも、回転初期では、コーティング膜からの摩耗粉や剥離粉が発塵成分となる。これらの発塵成分は、中品位セラミックスの場合、表面に開口するポアにトラップされるので、前述の結果が得られたものと考えられる。
【0059】
回転トルク寿命試験では、図15に示すような回転トルク寿命試験機を用いる。試験軸受は、呼び番号#608のラジアル玉軸受とし、各軸受構成要素の素材を前述したとおりとし、保持器に樹脂バインダーにPTFEを混合した潤滑膜をコーティングしている。回転数を200rpmとし、面圧を180kgf/mm(1.76GPa)とした。試験での寿命判定は、回転トルクが0.1N・mになった時点とする(初期トルクの3倍)。玉は、実施例として中品位セラミックスに、比較例として高品位セラミックスにしている。結果は、比率で言うと、比較例:実施例=1:1.3になり、実施例のほうが優れている。これは、中品位セラミックスの場合、表面に開口するポアに回転初期においてトラップされた潤滑膜の発塵成分が継続的に潤滑作用を発揮するからと考えられる。
【0060】
このような試験より、転がり軸受の転動体を中品位セラミックスとしても、優れた特性を発揮することがわかった。但し、その場合、最大接触応力を所要以下(安全を考慮して250kgf/mm以下)に規制するのが好ましい。低品位セラミックスについても、前述の評価試験を行っていないが、前述の物性評価によりほぼ同様になるものと考えられる。
【0061】
【発明の効果】
本発明では、製造コストを削減するように工夫しているから、従来の高品位セラミックスよりも安価にでき、しかも、密度や強度については、従来の高品位セラミックスに比べると若干低くなるものの、実用上十分な強度を有している。しかも、原料についても低品質のものを用いれば、さらに原料コストを低減できるから、製品価格の一層の低減に貢献できる。
【0062】
このように、本発明では、比較的安価なセラミックス製の転動・摺動部品を提供できるようになり、セラミックス部品の使用対象を拡大できるようになる。
【0063】
また、焼結体には表面に開口するポアが存在するので、これが潤滑剤などの溜まりとなるなど安定して良好な潤滑性を発揮できるようになる。特に、焼結体の転動面や摺動面に超仕上げを施せば、表面に開口するポアがより多くなるので、潤滑剤貯溜量が増すようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転動・摺動部品としてのローラを用いたロッカアームの側面図
【図2】本発明の転動・摺動部品としてのローラを用いたカムフォロワの縦断面図
【図3】本発明の実施例での硬度、破壊靭性値測定に関する圧痕を示す模式図
【図4】本発明の実施例での摩耗試験結果を示すグラフ
【図5】本発明の玉軸受の上半分の縦断面図
【図6】図5の玉軸受の玉の寿命試験の様子を示す図
【図7】図5の玉軸受の玉の寿命試験に用いるラジアル試験機を示す図
【図8】低品位セラミックスの円柱試料に関する潤滑剤移着試験の前後の顕微鏡写真
【図9】中品位セラミックスの円柱試料に関する潤滑剤移着試験の前後の顕微鏡写真
【図10】高品位セラミックスの円柱試料に関する潤滑剤移着試験の前後の顕微鏡写真
【図11】他の高品位セラミックスの円柱試料に関する潤滑剤移着試験の前後の顕微鏡写真
【図12】中品位セラミックスの球体試料に関する潤滑剤移着試験の前後の顕微鏡写真
【図13】高品位セラミックスの球体試料に関する潤滑剤移着試験の前後の顕微鏡写真
【図14】図5の玉軸受の初期発塵寿命試験に用いる発塵試験装置を示す図
【図15】図5の玉軸受の回転トルク寿命試験に用いる回転トルク試験機を示す図
【符号の説明】
1 ロッカアーム
3 ロッカアームのローラ
10 カムフォロワ
16 カムフォロワのローラ

Claims (5)

  1. 平均粒径0.2〜1μmの窒化けい素の粉末に9〜20重量%の焼結助剤を添加した材料を1〜10気圧下で焼結したセラミックスにおいて、該セラミックスの表面には潤滑剤の貯留用のポアが開口していることを特徴とする転動・摺動部品。
  2. 平均粒径0.2〜1μmの窒化けい素の粉末に9〜20重量%の焼結助剤を添加した材料を1〜10気圧下で焼結したセラミックスと、転動・摺動面に固体潤滑剤の潤滑膜を形成した部品とから構成され、該セラミックスの表面には固体潤滑剤貯留用のポアが開口していることを特徴とする転動・摺動部品。
  3. 請求項1または2に記載の転動・摺動部品において、
    前記ポアの大きさが1〜15μmまたは20〜30μmであることを特徴とする転動・摺動部品。
  4. 請求項1または2に記載の転動・摺動部品において、
    前記セラミックスの転動面もしくは摺動面に超仕上げ加工が施されていることを特徴とする転動・摺動部品。
  5. 平均粒径0.2〜1μmの窒化けい素の粉末に9〜20重量%の焼結助剤を添加した材料を1〜10気圧下で焼結したセラミックスからなり、外周面に超仕上げ加工が施され、表面には潤滑剤貯留用のポアが開口していることを特徴とするカムフォロワ用ローラ。
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