JP3627403B2 - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents

ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関する。詳しくは、優れた半田耐熱性を有すると共に、難燃性、成形性、機械的強度、耐薬品性などの特性に優れるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関するものであり、特に表面実装部品に好適に使用することが出来る。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンスルフィド樹脂は耐熱性、難燃性、耐薬品性などに優れたエンジニアリングプラスチックであり、射出成形、押出成形等により各種部品への成形が可能で、これらの特徴を活かして電気・電子機器部材、自動車機器部材、精密機械部材に応用されている。特に、ポリフェニレンスルフィド樹脂は、射出成形における成形流動特性に優れ、収縮率も小さいため、薄肉成形、精密成形に適している。
【0003】
しかしながら、最近の高機能化、軽量化、低コスト化等の社会的ニーズを反映して、これらの分野における成形部品は、従来以上の、薄肉化、小型化、複数化が求められる傾向にある。
【0004】
従って、材料としてのポリフェニレンスルフィド樹脂は、成形に際し薄肉部における十分な流動性と、金型のパーティング面へ樹脂の流出する現象、いわゆるバリの発生が極めて少ないことが必要である。ポリフェニレンスルフィド樹脂により、薄肉成形を行うには、比較的低分子量で溶融粘度の低いポリマーを用いるか、射出成形温度を通常の条件より高く設定し、ポリマーの溶融粘度を下げて成形することが一般に行われている。
【0005】
しかしながら、これらの方法では、溶融粘度の低下に伴い、発生するバリの量も多くなるという欠点を有している。さらに、成形品の機械的性質や寸法精度が低下するなどの問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、ポリフェニレンスルフィド樹脂の優れた特性を維持しながら、成形性、特に高流動性と優れたバリ特性の共存した材料の配合方法について鋭意検討した。
【0007】
従来、ポリフェニレンスルフィド樹脂の成形性を改善する方法として、特開昭55−135160号公報に示されるポリフェニレンスルフィド樹脂にナイロン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、又はポリフェニレンオキサイド樹脂を配合してなる組成物や、特開平3−64358号公報に示されるポリアリーレンチオエーテル樹脂にナイロン46樹脂を配合してなる組成物などが提案されている。しかしながら、これらの組成物において高い流動性と、優れたバリ特性を同時に満足させるためには、ポリフェニレンスルフィド樹脂の優れた特性の一つである耐熱性が犠牲になることが判明した。特に、表面実装部品にポリフェニレンスルフィド樹脂にナイロンを配合して成る組成物を使用した場合、ナイロン樹脂の吸水が多いため、リフロー槽を用いた半田付けの際に、ナイロン樹脂中の水分が気化し、製品表面に膨れ(ブリスター)が発生し、半田耐熱性が著しく低下するなどの問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記の問題点を踏まえ、ポリフェニレンスルフィド樹脂の優れた耐熱性、機械的性質、寸法安定性などを維持しながら、優れた成形加工性と半田耐熱性を併せ持つポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供することである。
【0009】
【課題を解決する手段】
上記のような現状に鑑み、本発明者らは従来のポリフェニレンスルフィドとポリアミド樹脂からなる組成物の問題点を解決するために、溶融粘度が10〜50000ポイズであるポリフェニレンスルフィド樹脂とポリアミド樹脂からなる組成物に、平均粒径が4μm以下であり、1μm以下の粒子を80重量%未満含有するタルク、シリカ、カオリンの群から選ばれた少なくとも1種類の微細粒子を配合することによりポリフェニレンスルフィド樹脂とポリアミド樹脂とからなる組成物の半田耐熱性が著しく向上することを見いだし、優れた成形加工性と半田耐熱性を併せ持つきわめて実用性の高いポリフェニレンスルフィド樹脂を提供しうることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、(a)溶融粘度が10〜50000ポイズであるポリフェニレンスルフィド樹脂70〜95重量%、(b)結晶性ポリアミド樹脂を30〜5重量%、(c)成分aと成分bの合計100重量部に対して平均粒径が4μm以下であり、1μm以下の粒子を80重量%未満含有するタルク、シリカ、カオリンの群から選ばれた少なくとも1種類の微細粒子を0.1〜5重量部、(d)補強材として繊維状充填剤を25〜100重量部の割合よりなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物である。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明に使用されるポリフェニレンスルフィド樹脂は、その構成単位として、
【0013】
【化1】
Figure 0003627403
【0014】
を70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含有しているものが好ましい。
【0015】
また、構成単位として30モル%未満、好ましくは10モル%未満であれば、m−フェニレンスルフィド単位、
【0016】
【化2】
Figure 0003627403
【0017】
o−フェニレンスルフィド単位、
【0018】
【化3】
Figure 0003627403
【0019】
フェニレンスルフィドスルホン単位、
【0020】
【化4】
Figure 0003627403
【0021】
フェニレンスルフィドケトン単位、
【0022】
【化5】
Figure 0003627403
【0023】
フェニレンスルフィドエーテル単位、
【0024】
【化6】
Figure 0003627403
【0025】
ジフェニレンスルフィド単位、
【0026】
【化7】
Figure 0003627403
【0027】
種々の官能基を有するフェニレンスルフィド単位、
【0028】
【化8】
Figure 0003627403
【0029】
(ただし、式中Rは、アルキル基、フェニル基、ニトロ基、カルボキシル基、ニトリル基、アミノ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、またはスルホン酸基等である。)
等の共重合単位を含有していてもさしつかえない。
【0030】
さらに、本発明に使用されるポリフェニレンスルフィド樹脂は、直鎖状のものであっても、酸素雰囲気下での加熱処理、または過酸化物等を添加しての加熱処理により硬化させ、重合度を上げたものであっても、また、非酸化性の不活性ガス中で加熱処理を施したものであってもかまわないし、さらにこれらの構造の混合物であってもかまわない。又、上記のポリフェニレンスルフィド樹脂は、脱イオン処理(酸洗浄や熱水処理等)を行うことによってイオンを低減させたものであってもよい。
【0031】
本発明に使用されるポリフェニレンスルフィド樹脂の溶融粘度は、測定温度315℃、荷重10kgの条件下、直径1mm、長さ2mmのダイスを用いて高化式フローテスターで測定した溶融粘度が10〜50000ポイズ、好ましくは100〜10000ポイズ、さらに好ましくは250〜6000ポイズのものが好適に使用できる。溶融粘度が50000ポイズを越えると射出成形時の成形性が悪化し好ましくなく、また10ポイズ未満では機械的強度が低下し好ましくない。
【0032】
本発明に使用されるポリフェニレンスルフィド樹脂の配合量は70〜95重量%である。この範囲であれば、優れた耐熱性および成形性を有する。配合量が70重量%未満では耐熱性および吸水性が低下するため好ましくない。一方、95重量%を越えると成形性の改良効果が乏しく好ましくない。
【0033】
本発明で使用する結晶性ポリアミド樹脂は、主鎖にアミド結合(−NH−CO−)を持つ重合体であり、これらのうち通常はポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセパカミド(ナイロン610)など公知のものが使用できる。
【0034】
結晶性ポリアミド樹脂の重合方法は、通常公知の方法を採用できる。具体的には、ε−カプロラクタム、6−アミノカプロン酸、ω−ラウロラクタムなどの開環重合、11−アミノウンデカン酸の重縮合、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸、セパシン酸、ドデカジオン酸などのジカルボン酸との重縮合、ジアミノブタンとアジピン酸との重縮合などにより得られる。
【0035】
これらの結晶性ポリアミド樹脂のうち、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46は融点が220℃以上であるため、本発明が課題とする優れた成形加工性と半田耐熱性を併せ持つポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得るためには、さらに好適に用いられる。
【0036】
また、結晶性ポリアミド樹脂の重合度は特に制限はなく、相対粘度(ポリマー1gを98%濃硫酸100mlに溶解して、25℃で測定)が1.0〜5.0の範囲にある結晶性ポリアミド樹脂を目的に応じて任意に選択できる。
【0037】
本組成物に対する結晶性ポリアミド樹脂の配合量は、5〜30重量%が好ましい。結晶性ポリアミド樹脂の配合量が5重量%未満では、流動性の改良効果が乏しく、30重量%を越える場合は組成物の耐熱性が著しく悪化する。
【0038】
本発明で用いられる微細粒子は、平均粒径が4μm以下であり、1μm以下の粒子を80重量%未満含有するタルク、シリカ、カオリンである。これら微細粒子を配合することにより組成物の半田耐熱性を著しく向上させることが可能となった。
【0039】
本発明で用いられる微細粒子は、平均粒径が4μm以下であり、1μm以下の粒子を80重量%未満含有することが重要である。平均粒径が4μmを越えると半田耐熱性を向上させるために微細粒子を多量に加える必要があり、物性の低下を招くため好ましくない。さらに好適に用いられる微細粒子の粒径は2μm以下である。また平均粒径が4μm以下であっても、1μm以下の粒子が上記値を超えて多いと、分散不良を起こし十分な半田耐熱性を得ることが出来ず好ましくない。
【0040】
これら微細粒子の前記ポリフェニレンスルフィド/結晶性ポリアミド樹脂組成物に対する添加量は、ポリフェニレンスルフィド/結晶性ポリアミド樹脂組成物100重量部に対して0.1〜5重量部であり、好ましくは0.2〜3重量部である。
【0041】
添加量が0.1重量部未満の場合には、微細粒子を添加した効果が十分ではなく、一方、5重量部を越える場合には、半田耐熱性の向上は認められるが、成形性の低下が起こるため好ましくない。添加量がこの範囲で有れば、本組成物を表面実装部品に使用した場合、リフロー槽を用いて半田付けを行っても、製品表面に膨れ(ブリスター)が発生せず、半田耐熱性に優れる組成物が得られる。
【0042】
また本発明で用いられる微細粒子は、2種類以上を併用しても何ら問題はない。
【0043】
本発明で使用できる繊維状充填剤としては、たとえばガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウィスカーなどが挙げることができる。これらの中ではガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては直径3〜20μの繊維径を有するロービング、チョップドストランド、ミルドファイバーなどが使用される。ガラス繊維は、通常樹脂との密着性を向上させるために、バインダーで処理が施されるが、バインダーとしては、ウレタン系、エポキシ系またはウレタン−エポキシ併用系やシラン系のカップリング剤等が挙げられる。
【0044】
本発明で使用される繊維状充填剤の配合量はポリフェニレンスルフィド樹脂と結晶性ポリアミド樹脂からなる組成物100重量部に対し、25〜100重量部、好ましくは30〜70重量部である。添加量が25重量部未満の場合、成形品の機械的強度・耐熱性が十分でない場合があり好もしくない。一方、100重量部を越える場合、流動性の低下、靭性の低下が著しく十分な特性が得られない。
【0045】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂等の1種以上を混合して使用できる。また、本発明の目的を逸脱しない範囲で、炭酸カルシウム、マイカ、硫酸カルシウム、クレー、ガラスビーズ、ガラスパウダー等の無機充填剤、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、酸化亜鉛等のウィスカーの1種以上を混合して使用できる。
【0046】
さらに、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で少量の熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、離型剤、滑剤、染料、顔料等の着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、イオントラップ剤等を必要に応じて添加しても良い。
【0047】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、上記した各成分を用いて種々の方法で製造することが出来る。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、ブラベンダー等による加熱溶融混練方法が挙げられるが、中でも二軸押出機を用いた溶融混練方法が最も好ましい。この際の混練温度は特に限定されるものではないが、通常280〜400℃の中から任意に選ぶことが出来る。
【0048】
この様にして得られる本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、従来より公知の方法により各種コネクター部品、各種スイッチ部品、薄肉成形品、等種々の形状に成形することができ、射出成形、等の加工方法が可能である。具体的な用途分野としては自動車、電気、電子、機械等の工業材料分野で耐熱性、寸法安定性、成形加工性等に優れた成形素材として広範囲に使用することが出来る。
【0049】
【実施例】
本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0050】
なお、以下の参考例中で製造したポリフェニレンスルフィドの溶融粘度の測定は、高化式フローテスター(ダイス;φ=1.0mm,L=2mm)により、300℃、10kg荷重で測定した。
【0051】
また実施例中の流動長とバリ長さは以下の測定法によって得られた値である。
【0052】
図1に示すように、A;10μmのクリアランスを持つバーフロー(10×0.5mmt)金型を使用し、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を射出成形機(住友重機,SYCAP S−165/75)を用いて、射出圧力1200kg/cmにて成形したときに、樹脂が充填した距離を流動長、Aのクリアランス部分に発生したバリを万能投影機を用いて測定してバリ長とした。
【0053】
参考例1
<ポリフェニレンスルフィド>
15 lオートクレーブに、N−メチル−2−ピロリドンを5 l仕込み、120℃に昇温した後、NaS・2.8HO 1866gを仕込み、約2時間かけて攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、水を407g留出させた。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロルベンゼン 2150gを加えて、225℃に昇温し、3時間重合させた後、250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合した。
【0054】
重合終了後、残りのスラリーは、大量の水中に投入して重合体を析出させ、濾別、純水による洗浄を行った後、一晩加熱真空乾燥を行うことにより重合体を単離した。得られたポリフェニレンスルフィドの溶融粘度(高化式フローテスターで測定)は280ポイズであった。この様にして得られた重合体を、さらに空気雰囲気下235℃で処理し、溶融粘度1540ポイズのポリフェニレンスルフィドを得た。この重合体をPPSとする。
【0055】
<ナイロン66>
結晶性ポリアミド樹脂として、ナイロン66であるUBEナイロン2020H(宇部興産製)を用いた。このポリマーをPA66とする。
【0056】
実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例3
参考例1で得たPPS,PA66及び微細粒子としてタルク(ミクロンエースP−4;日本タルク製,平均粒径1.5μm,1μm以下の粒度25重量%,タルク−Iと略す),シリカ(Nipsil E220A;日本シリカ工業製,平均粒径1.0μm,1μm以下の粒度50重量%,シリカと略す),カオリン (ASP−600;土屋カオリン工業製,平均粒径0.6μm,1μ以下の粒度65重量%,カオリン−Iと略す)から選んだ1種類を表1に示す配合比で、あらかじめタンブラーを用いて均一に混合した。その後、スクリュー径37mmφの二軸押出機を用い、表1に示す配合量でガラス繊維(直径13μm,長さ3mmのチョップドストランド)をサイドフィーダーから供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化した。
【0057】
得られたペレットを120℃で10時間乾燥した後、図1に示した金型を取り付けた射出成形機(住友重機,SYCAP S−165/75)を用いて、シリンダー温度310℃,射出圧1200kg/cm,金型温度135℃の条件で各10ショット射出成形した。得られた成形品の流動長とバリ長を測定した。その結果を表1に示した。
【0058】
また、同じ射出成形機を用いて、シリンダー温度310℃、金型温度135℃、射出圧力500〜1200kg/cm、射出速度中速でカードエッジ型コネクタを成形した。得られたコネクタは、25℃の純水に24時間浸漬処理をした後、耐ハンダ性(耐ブリスター性)を評価するため、ハンダリフロー装置(千住金属工業製,SMIC SF−2506HB)を用いて、ピーク温度260℃、コンベアスピード300mm/minに設定して、リフロー装置通過後のコネクタに発生する膨れ (ブリスター)を目視で観察した。その結果を表1に示した。
【0059】
表1から明らかなように、本願発明組成物は流動性に優れ、バリの発生が少なく、耐ハンダ性(耐ブリスター性)に優れていることが判る。
【0060】
【表1】
Figure 0003627403
【0061】
比較例4
微細粒子として平均粒径が4μm以上であるタルク(SIMGON;日本タルク製,平均粒径9.0μm,1μm以下の粒度7.4重量%,タルク−IIと略す)を用いたことを除いて実施例と同様に溶融混練した後、流動長、バリ長、耐ブリスター性について評価した。その結果を表1に示した。この様に平均粒径の大きなタルクでは、ハンダリフロー装置を用いた耐ブリスター性試験では成形体に膨れ(ブリスター)が発生して耐ハンダ性に優れた組成物を得ることが出来ない。
【0062】
比較例5
微細粒子として平均粒径が4μm以下、1μm以下の粒度が80重量%以上であるカオリン(ASP−072;土屋カオリン工業製,平均粒径0.3μm,1μm以下の粒度90重量%,カオリン−IIと略す)を用いたことを除いて実施例と同様に溶融混練した後、流動長、バリ長、耐ブリスター性について評価した。その結果を表1に示した。この様に平均粒径が4μm以下であっても、1μm以下の粒度が80重量%以上であるカオリンではハンダリフロー装置を用いた耐ブリスター性試験では成形体に膨れ(ブリスター)が発生して耐ハンダ性に優れた組成物を得ることが出来ない。
【0063】
比較例6〜比較例9
微細粒子としてアルミナ(AL−45−A;昭和軽金属(株),平均粒径1.0μm,1μm以下の粒度50重量%,アルミナと略す)、酸化チタン(UF02;タイオキサイドジャパン製,平均粒径0.02μm,1μm以下の粒度100重量%,酸化チタンと略す)、炭酸カルシウム(ナノックス25;丸尾カルシウム製,平均粒径1.3μm,1μm以下の粒度37重量%,炭酸カルシウムと略す)、マイカ(A−11;山口雲母工業所,平均粒径2.8μm,1μm以下の粒度14%,マイカと略す)を用いたことを除いて実施例と同様に溶融混練した後、流動長、バリ長、耐ブリスター性について評価した。その結果を表2に示した。この様に平均粒径が4μm以下でも請求範囲以外の無機充填剤を使用したのでは、ハンダリフロー装置を用いた耐ブリスター性試験では成形体に膨れ(ブリスター)が発生して耐ハンダ性に優れた組成物を得ることが出来ない。
【0064】
【表2】
Figure 0003627403
【0065】
【発明の効果】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、耐熱性、寸法安定性、成形加工性等に優れた樹脂組成物を与えるため、高流動性と低バリ性を要求される電気・電子部品に好適で、特に半田耐熱性に優れることにより表面実装部品に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の組成物の流動長とバリ長を測定するために用いたバーフロー金型

Claims (2)

  1. (a)溶融粘度が10〜50000ポイズであるポリフェニレンスルフィド70〜95重量%、(b)結晶性ポリアミド樹脂を30〜5重量%、(c)成分aと成分bの合計100重量部に対して平均粒径が4μm以下であり、1μm以下の粒子を80重量%未満含有するタルク、シリカ、カオリンの群から選ばれた少なくとも1種類の微細粒子を0.1〜5重量部、(d)補強材として繊維状充填剤を25〜100重量部の割合よりなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  2. 結晶性ポリアミド樹脂がポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66の群から選ばれた少なくとも一種類であることを特徴とする請求項1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
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