JP3626824B2 - 火災検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は火災検出に画像処理を用いた火災検出装置に関し、特に監視領域に監視対象である炎以外の光源が混在したり、ノイズが混入する場合等に用いて好適な火災検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、監視領域に監視カメラを設置し、その監視カメラで撮影された画像を処理して監視領域内に火災が発生しているか否かを検出する火災検出装置がある。
このような画像処理を利用して火災を検出する従来装置として、例えば特開平5−20559号公報に記載されているようなものがある。このような従来装置の主な原理は、撮影される画像から所定の明度を有する領域を抽出することで、火災時の炎を捕らえるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、画像の処理に際して、画像の走査方式がいわゆるインタレース方式の場合、1フレームの画像は時間の異なる2つのフィールドの画像で構成されるため、監視する監視領域に非常に動きの早い監視対象物が存在すると、図11に示すように上下に筋状に分布する縞模様のノイズが発生する。同図は火災時の炎を監視カメラで撮影したものを示すもので、この縞模様のノイズは、その画像の形状変化の激しい上方に現れる。つまり、炎は、特にその下部は形状や面積が変化しにくいが、その上部は形状や面積が絶えず変化する特徴を有しているので、その画像の動きの激しい上方に縞模様のノイズが現れることになる。
【0004】
また、例えばトンネル内に監視カメラを設置して火災の発生を監視している場合に、トンネル内を通過する後方の車両のヘッドライトの光が前を行く車両の後部に強く当たると、その曲面をなす後面ガラスがいわゆる鏡面反射を起こし、図12に示すような細い横長の光を放つ領域が発生する。この鏡面反射による光が監視カメラにより取り込まれると、その画像に一種の単一の筋状のノイズとして現れる。
一方、監視カメラで撮影した画像を処理して火災を検出する場合、上述の火災の特徴部分である上方に着目して検出する場合がある。
従って、火災判別の段階で、このような単一の筋状のノイズや縞模様のノイズ等を含む画像をそのまま使用して火災を検出しようとすると、正確な火災判別ができず、誤報を生じてしまうという問題点があった。
【0005】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、監視対象物の動きに左右されたり、また、鏡面反射の影響を受けることなく確実に火災を検出することができる火災検出装置を得ることを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係わる火災検出装置は、監視領域を撮影する撮影手段と、この撮影手段により撮影された画像を格納するための画像メモリとを備え、この画像メモリに格納された画像を処理することにより火災を検出する火災検出装置において、撮影手段により撮影された画像に対して膨張処理を施す画像膨張処理手段と、この画像膨張処理手段で施された画像に基づいて火災らしい領域があるか否かを検出する火災検出手段と、を備え、画膨張処理の膨張処理は、撮影された画像内で、上下二マスのマトリクスを水平走査して、上下のマスを比較して、それぞれの輝度値を大きい値の方に合わせて、同じ値にしていくものである
【0007】
また、この発明に係わる火災検出装置は、監視領域を撮影する撮影手段と、この撮影手段により撮影された画像を格納するための画像メモリとを備え、この画像メモリに格納された画像を処理することにより火災を検出する火災検出装置において、撮影手段により撮影された画像を微分してエッジを抽出し、微分画像を作成する微分画像作成手段と、撮影手段により撮影された画像から微分画像を減算して差分画像を得る減算手段と、撮影された画像と差分画像に基づいて火災らしい領域があるか否かを検出する火災検出手段と、を備え、撮影手段は、カラーカメラであり、微分画像作成手段は、RGB信号のうち、R成分フレームメモリに格納されたカラー成分信号のR成分のみに微分処理を行うものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態を図を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の第1の実施の形態を示す構成図である。
図において、1は撮影手段としての監視カメラ(カラーカメラ)であって、例えばCCDカメラなどが使用され、所定のサンプリング周期で監視領域を撮影するものである。この監視カメラ1は例えばNTSC方式に従ったR(赤)、G(緑)、B(青)のカラー成分信号でなるカラー画像信号を出力するものである。
また、監視カメラ1は例えば監視領域としてのトンネル内の監視区域全体を見渡せる位置に設置され、トンネル内で発生する火災を監視し、撮影した画像内に火災の領域があるか否かは後述する画像処理部で検出される。
【0013】
図2は、監視カメラ1により撮影された画像を示すもので、この図からもわかるように監視カメラ1は車両Cが走り去って行く方向を映すように、例えばトンネル内の側壁上部に設置されている。これは、車両Cのヘッドライトが監視カメラ1に入射するのを防止するためで、このように設置することで画像処理する際にヘッドランプが火災領域として捕らえられることがなくなる。
【0014】
2は監視カメラ1に接続されたアナログーデジタル変換器であって、監視カメラ1から得られたカラー画像、即ちRGB信号のそれぞれを画素単位で多階調、例えば255階調のデジタル信号に変換するものである。
3はアナログーデジタル変換器2に接続され、デジタル化された画像を記憶する画像メモリであって、R(赤)成分フレームメモリ31、G(緑)成分フレームメモリ32およびB(青)成分フレームメモリ33からなり、監視カメラ1で撮影された画像の1画面分を格納するものである。フレームメモリ31、32および33は、図1に示すように複数の画像を格納できるように複数個で構成され、一番古い画像を削除しながら、順次新しい画像を更新格納していく。
【0015】
41は画像メモリ3に接続された、画像処理部4の構成要素の1つである画像膨張処理手段であって、後述の理由から例えば画像メモリ3のフレームメモリ31、32および33の内R成分フレームメモリ31およびG成分フレームメモリ32に接続されて、これらの各フレームメモリに格納されたカラー成分信号のR成分とG成分に対して画像膨張処理を行う。
42は画像膨張処理手段41に接続された、同じく画像処理部4の構成要素の1つである最小値演算手段(最小値フィルタとも呼ばれる)であって、画像膨張処理手段41で画像膨張処理を受けたカラー成分信号のR成分とG成分を同一画素毎に比較して小さい値の成分(の輝度値)を出力する。
【0016】
43は最小値演算手段42に接続された、同じく画像処理部4の構成要素の1つである火災候補領域抽出手段であって、最小値演算手段42からの画像信号を所定値で二値化処理し、所定値を越える領域、つまり明るい領域を火災らしい領域(火災の可能性のある領域)として抽出する。即ち、火災らしい領域を“1”、画像のそれ以外の部分(所定値未満の部分)を“0”で表す。なお、以下の説明において、火災らしい領域を抽出領域と呼ぶ場合がある。この二値化処理で使用される所定値は、画像から所定の明るさを有する領域だけ抽出できるように設定された値であり、トンネルのように暗い環境下では例えば200位(255階調の場合)に設定される。
なお、図3は図2の画像を二値化処理した二値化画像で、後述の二値化メモリに格納されている。
後で詳しく説明するが、単純に所定値より大きいか否かで二値化処理をすると、所定の明るさを有する領域(例えば、炎、ナトリウム灯、テールランプ)は全て抽出されるが、最小値演算後に二値化処理を行うと、炎だけを抽出することができる。
【0017】
5は火災候補領域抽出手段43に接続され、この火災候補領域抽出手段43によって二値化された画像を格納するための二値化メモリであって、画像メモリ3と同様に複数個で構成され、実質的に画像メモリ3からの最新の画像を画像膨張処理手段41、最小値演算手段42および火災候補領域抽出手段43を介して順次複数個分格納する。
6および7は上述の火災候補領域抽出手段43等を含む画像処理部4にそれぞれ接続されたROMおよびRAMであって、画像処理部4における各種演算処理等は、ROM6に格納された後述のプログラム(図5参照)に基づいて行われ、その際、演算された値はRAM7に格納される。またROM6は二値化処理をする際の所定値や火災判別をする際に使う所定値などが記憶されている。
【0018】
44は二値化メモリ5に接続された対応判別手段であって、監視カメラ1により周期的に撮影された画像に火災らしい領域が連続してある場合、つまり二値化メモリ5に火災らしい領域が連続して格納される場合に、ある時間の前後にわたる火災らしい領域同士の対応関係、即ち同じ炎により抽出された領域なのかどうかを判別するので、この対応判別手段を設けることで、監視領域内に所定時間に亙って火災らしい領域が存在するかどうかを判別することが可能となる。
対応判別手段44による対応関係をとる方法はいくつか有り、例えば二値化メモリに格納された、撮影時間の連続する火災らしい領域同士を重ね合わせ、その重なり具合が所定値以上の場合に対応有りと判断する方法、または、撮影時間の連続する火災らしい領域A,Bの一方の領域Aの重心座標が他方の領域であるBに入っていれば対応有りと判断する方法等がある。これらは監視対象物が炎のように全体的な移動量の少ないものの場合に有効で、車両のランプ類が火災候補領域抽出手段により一次的に火災らしい領域として抽出されても、車両の移動量は大きいので、火災らしい領域同士の対応関係がとられることはない。
【0019】
45は二値化メモリ5および対応判別手段44に接続された外接矩形作成手段であって、二値化メモリ5に格納された火災らしい領域を外接する最小の矩形で囲み、矩形の対角(例えば左上、右下)の隅の画素の座標(フィレ値)から矩形の高さdyと矩形の幅dx(フィレ径)を演算して、それらの値をRAM7に格納する(図3参照)。
46は外接矩形作成手段45に接続された火災特徴量演算手段であって、外接矩形作成手段45により演算され、RAM7に格納された7個の{dx/dy}から、最大値と最小値を選び、次式に示す火災特徴量FCを演算する。
【0020】
FC=max(dx/dy)/min(dx/dy)・・・(1)
【0021】
また、47は火災特徴量演算手段46に接続された火災判別手段であって、火災特徴量演算手段46で演算された火災特徴量FCの値と所定値(1.2〜1.3)の大小関係を調べ、火災特徴量FCの値の方が大きい場合に火災であると判定し、出力端子8を介して図示しない表示部や音響部から火災の発生を警報する。
また、火災判別手段47は、二値化メモリ5に格納された火災らしい領域がある時間内にわたって存在し、対応判別手段44により連続して例えば7回程度、火災らしい領域の対応関係がとれた場合、つまりその領域が同じ炎(又は光源)によって抽出されているものと判断された場合、その火災らしい領域が本当の火災領域であるかどうかの判定も行うものである。
なお、上述の構成要素41〜47により画像処理部4を構成し、この画像処理部4としては、例えばMPU(マイクロプロセッサ)が用いられる。また、構成要素41〜47の内42〜47は火災検出手段を構成する。
【0022】
次に動作について説明する。
先ず、詳細な動作説明に入る前に、この発明における火災検出の原理を簡単に説明する。
今、監視カメラ1が撮影した画像には、例えば図2に示すように、所定の明るさを有する領域として3つの明度を有するもの、車両C、照明用のナトリウム灯N、火災時の炎Fが映し出されているものとする。なお、図2において、CTは車両のテールランプ(ポジションランプを含む)示す。
これら車両CのテールランプCT、ナトリウム灯N、炎Fに関してのこれら3つのカラー成分信号の一例を、下記の表1に255階調にて表す。
【0023】
(表1)
Figure 0003626824
【0024】
このように各光源をRGB成分で表すと、炎FはR成分、G成分の値(輝度値)が共に高く、テールランプやナトリウム灯などの人工光源は3つの成分のうち、R成分のみが大きい値をもつことがわかる。つまり、R成分とG成分が共に大きい領域(画素)を抽出することで、監視画像から人工光源を省いて火災の領域のみを抽出することが可能となる。
【0025】
この原理を踏まえて、詳細な動作について、図4および図5を参照しながら説明する。
監視カメラ1によって撮影された監視領域の画像は、カラー画像信号がアナログーデジタル変換器2によってデジタル化された後、画像メモリ3に取り込まれる(ステップS1)。つまり、RGB信号のそれぞれがA/D変換された後に、画像メモリ3のR成分フレームメモリ31、G成分フレームメモリ32、B成分フレームメモリ33に書き込まれる。
【0026】
次いで、ステップS2において、画像メモリ3のR成分フレームメモリ31およびG成分フレームメモリ32に格納されたカラー成分信号のR成分とG成分のみが読み出されてこれらR成分とG成分のカラー成分信号に対して画像膨張処理手段41において膨張処理が行われる。
ここで、この画像膨張処理手段41における膨張処理について、特に図4を参照して説明する。
同図において、図4(a)は図11の破線で示す枠内の縞模様のノイズを含む画像に対応した膨張処理前の各画素の輝度値の分布を示しており、また、図4(b)はその膨張処理後の各画素の輝度値の分布を示している。なお、図中空白の部分はその輝度値が所定値例えば200未満であることを表している。
【0027】
画像膨張処理手段41では画像の左上から右下へとラスター走査するが、そのとき上の行と隣接する下の行の対応する2つの画素同士の輝度値を順次比較し、両画素を大きい値の方に合わせて行く。つまり、膨張処理とは、撮影された画像内で、1×2列からなる上下二マスのマトリクスをラスター走査(水平走査)していき、上下のマスを比較して、それぞれの輝度値を大きい値の方に合わせて、同じ値にしていくものである。
例えば、図4(a)の1行1列の輝度値215と2行1列の輝度値212を比較すると、1行1列の輝度値が大きいので、図4(b)に示すように2行1列の輝度値を215とし、図4(a)の1行2列の輝度値221と2行2列の輝度値218を比較すると、1行2列の輝度値が大きいので、図4(b)に示すように2行2列の輝度値を221とし、以下同様にして2行づつ膨張処理を行い、図4(b)に示すような分布をなす輝度値を持つ画像が得られ、この画像から実質的に縞模様のノイズが除去されていることが分かる。
【0028】
さて、このようにして、膨張処理された画像膨張処理手段41からの画像は画素単位で、全ての画像領域にわたって、最小値演算手段42によって最小値演算がなされる(ステップS3)。
最小値演算手段42は、R成分フレームメモリ31とG成分フレームメモリ32から読み出され、画像膨張処理手段41で画像膨張処理されたカラー成分信号のR成分とG成分を同一画素毎に比較して小さい値の成分を出力する。
即ち、例えば車両Cの上記表1のカラー成分で表せられるテールランプCTの領域部分が画像処理される場合、テールランプCTの領域はRが160、Gが75なので小さい値をもつG成分即ち輝度値75を有するG成分が出力される。ナトリウム灯Nの領域に対しても同様に最小値演算が行われ、ナトリウム灯Nの領域はRが200、Gが85なので小さい値をもつG成分即ち輝度値85を有するG成分が出力される。
また、炎FもテールランプCTやナトリウム灯Nと同様にR成分とG成分では、G成分の方が小さいので(R成分が小さい場合もある)、最小値演算手段42からは小さい値をもつG成分即ち輝度値210を有するG成分が出力される。
【0029】
次いで、最小値演算手段42から出力された値を基に火災候補領域抽出手段43により二値化処理が行われる(ステップS4)。
ここで、二値化を行う閾値としての所定値が例えば180に設定されているとすると、最小値演算手段42から出力された値はテールランプCTの場合輝度値75のG成分であり、所定値180よりも小さいので、その領域は“0”(黒レベル)とされる。また、ナトリウム灯Nの場合も輝度値85のG成分であり、所定値180よりも小さいので、その領域は“0”となる。また、炎Fの場合輝度値210のG成分であり、所定値180よりも大きいので、その領域は“1”になる。
【0030】
なお、明るい領域ほど255階調で表せられる数値は大きくなるので、車両Cの本体部分などの光を発しない領域は、最小値演算手段42の結果がいかなる場合でも、火災候補領域抽出手段43における二値化処理の段階で全て“0”になる。
かくして、火災候補領域抽出手段43で二値化処理された画像は、次段の二値化メモリ5に格納される。
上記図3は二値化メモリ5に格納された画像処理(最小値演算、二値化処理)後の画像で、この図からも明らかなように、画像メモリ3に格納された画像(原画像)から、ナトリウム灯、テールランプTを除去して火災領域のみを抽出して表示させることが可能となる。
【0031】
次いで、ステップS5において、輝度値が所定値以上の領域、つまり抽出すべき領域があるか否かを判断し、ここで無い場合は新たな画像を取り込むためにステップS1に戻るが、抽出領域があるならば、外接矩形作成手段45がその抽出した領域の外接矩形を作成し、そしてフィレ径の比{dx/dy}を演算し(ステップS6)、その演算値をRAM7に格納しておく。
即ち、外接矩形作成手段45は、二値化メモリ5に格納された火災領域を外接する最小の矩形で囲み、矩形の対角(例えば左上、右下)の隅の画素の座標(フィレ値)から矩形の高さdyと矩形の幅dx(フィレ径)を演算して、その高さと幅の比{dx/dy}の値を求めてRAM7に格納する(図3参照)。
【0032】
また、ステップS7においてこの抽出された領域が前回サンプリングした(取り込んだ)画像における抽出領域と対応関係があるかを対応判別手段44により判別する。対応関係がない場合には新たに発生した領域と認識し、ラベリングを行い(抽出領域に番号をつける)、ステップS1に戻る。
また、対応判別手段44により対応関係がとれた場合には、ステップS8に進んで、所定回に亙って対応関係がとられたかどうかを判断する。例えばまだ2回しか対応関係がとられていなければ、ステップS1に戻り、所定回、例えば7回対応関係がとれた場合にはステップS9に進んで、火災特徴量演算手段46が、外接矩形作成手段45により演算され、RAM7に格納された7個の{dx/dy}から、最大値と最小値を選び、上記式(1)に基づく火災特徴量を演算する。
【0033】
ここで、この式(1)に基づく火災検出の原理について説明する。
二値化メモリに格納された火災らしい領域が本当の火災領域である場合、時間の経過に伴いその領域は形状が変化していくはずである。また、火災が進展しなくても、炎は激しい高さ方向の変化を持つ。このため、ある時間内に亙って何回か(dx/dy)の値を演算すると、それらの値は大きくばらつき、これらの最大値と最小値の比をとると、概ね1.4程度を越える。一方、火災らしい領域がヘッドライト等の光源である場合、車両が移動して撮影される位置がたとえ異なっても、形状は変化しないから(dx/dy)の値はある時間内に亙って、一定であり、式(1)のように最大値と最小値の比をとっても、その値は限りなく1に近く、所定値1.3を越すことはない。
【0034】
そして、ステップS9で演算された特徴量が所定値よりも大きいか否かを火災判別手段47により判別する(ステップS10)。即ち、火災判別手段47は、演算された火災特徴量の値と所定値(1.2〜1.3)の大小関係を調べ、火災特徴量の値の方が大きい場合に火災であると判定し、図示しない表示部や音響部から火災の発生を警報する(ステップS11)。また、ステップS10で火災特徴量の値が所定値以下の場合にはS1に戻る。
【0035】
このように本実施の形態では、画像の走査方式がインタレース方式の画像処理において、監視カメラが撮影した画像に対して画像膨張処理を施し、しかる後この画像膨張処理された画像に基づいて火災を判別するようにしているので、監視する監視領域に非常に動きの早い監視対象物が存在した場合に発生する縞模様のノイズを実質的に除去して正確な火災判別が可能になる。
【0036】
実施の形態2.
上記実施の形態1では撮影された画像に現れる縞模様のノイズに対する画像処理の場合であったが、本実施の形態では、撮影された画像に現れる曲面をなす鏡面反射による筋状のノイズに対する画像処理の場合である。
即ち、例えば図2に示す車両Cの後部に後続車両のヘッドライトの光が強く当たっている場合には、車両Cの曲面をなす後面ガラスが鏡面反射を起こし、細い横長の光を放つ領域(図12参照)が発生する。この領域は、最小値演算及び二値化処理を行っても、抽出される虞れがある。そこで原画像の微分画像(エッジ画像)を抽出する微分画像作成手段を設け、原画像からこの微分画像を差分処理するようにすれば、原画像のエッジを削ることができる。つまり、原画像の抽出領域は、回りが削られ、一回り小さい領域となるので、ある程度の幅(大きさ)を持つ領域のみが残り、幅の小さい領域は、全て削除されてしまう。よって曲面をなす後面ガラスの鏡面反射により発生した細長い形状の領域は、このような処理をすることで領域そのものをなくすことが可能となる。
【0037】
図6はこの発明の第2の実施の形態を示す構成図である。
図において、図1と対応する部分には同一符号を付し、その詳細説明を省略する。
4Aは上述の最小値演算手段42等を含む画像処理部、6Aは画像処理部4Aに接続されたROMであって、画像処理部4Aにおける各種演算処理等は、ROM6Aに格納された後述のプログラム(図10参照)に基づいて行われ、また、ROM6Aには二値化処理をする際の所定値や火災判別をする際に使う所定値などが記憶されている。
【0038】
48は画像メモリ3に接続された、画像処理部4Aの構成要素の1つである微分画像作成手段であって、後述の理由から画像メモリ3にはそのフレームメモリ31、32および33の内例えばR成分フレームメモリ31に接続されて、このフレームメモリに格納されたカラー成分信号のR成分に対して微分処理を行う。この微分画像作成手段48としては、色の濃淡の大きな境界部分のエッジを強く出せる(幅が大きい)例えばソベルオペレータを使用する。
【0039】
49は画像メモリ3と微分画像作成手段48に接続された、画像処理部4Aの構成要素の1つである減算手段であって、後述の理由から画像メモリ3にはそのフレームメモリ31、32および33の内例えばR成分フレームメモリ31に接続されて、そのRフレームメモリ31に格納されたカラー成分信号のR成分(原画像)から微分画像作成手段48で作成された微分画像を減算して差分画像を得る。
なお、上述の構成要素42〜49により画像処理部4Aを構成し、この画像処理部4Aとしては、例えばMPU(マイクロプロセッサ)が用いられる。その他の構成は図1と同様である。
【0040】
次に動作について説明する。
ここで、先ず、本実施の形態の基本原理、即ち、何故カラー成分信号のR成分についてのみ微分画像を作成し、これを原画像から減算して差分画像を生成するかについて、特に図7〜図9を参照して説明する。
先ず、図7に示すように炎の色の分布に着目すると、その内側部分は大体白色から黄色に近く、外側部分は大体赤色に近い。一般に、炎の内側部分の白色はR成分、G成分およびB成分が共に大きく、また、その黄色はR成分とG成分が共に大きく、B成分が小さい(表1参照)場合である。
そして、一般に微分処理(エッジ処理)の場合、濃淡画像から所定の濃淡レベルで分けられる明部と暗部の境界のみを抽出して、この境界線のみを明るくした画像を生成する。
【0041】
そこで、いま、監視対象物として炎の場合を考えると、実質的に図7の炎の外側の赤色部分に等価な大きさを有する図8(a)の左側部分に示すようなカラー成分信号のR成分(原画像)を微分すると、図8(b)の左側部分に示すような微分画像が得られる。そして、原画像より微分画像を減算すると図8(c)の左側部分に示すような差分画像が得られる。ここで、図8(a)の左側部分に示す原画像と図8(c)の左側部分に示す差分画像を対比してみると、この差分画像は原画像より一回り小さい大きさ(面積)の画像となっているが、これは火災の抽出の際に必要な炎の内側部分のR成分全体を実質的に含んでいるので問題ない。
言い換えると、実施の形態1で示したように火災候補領域抽出手段43はR成分とG成分が大きい領域を抽出するものなので、R成分だけが大きい炎の外側部分(図7の赤色の部分)は抽出できず、内側の部分(図7の白色〜黄色の部分)だけを抽出するものであるから、減算することで領域が一回り程小さくなっても問題ないのである。
【0042】
ところが、実質的に図7の炎の内側の白色から黄色部分に等価な大きさを有する図8(a)の右側部分に示すようなカラー成分信号のG成分(原画像)を微分すると、図8(b)の右側部分に示すような微分画像が得られる。そして、原画像より微分画像を減算すると図8(c)の右側部分に示すような差分画像が得られる。ここで、図8(a)の右側部分に示す原画像と図8(c)の右側部分に示す差分画像を対比してみると、この差分画像は原画像より一回り小さい大きさ(面積)の画像で、しかも、図8(c)の左側部分に示す差分画像より更に一回り小さい大きさ(図8(a)の左側部分に示す原画像より見ると実質的に二回り小さい大きさ)の画像となり、精度の高い火災判別を行うには問題がある。
従って、精度の高い火災判別を行うには、面積の大きな差分画像即ち原画像と略等価な火災判別情報を含む面積のカラー成分信号のR成分についてのみ微分処理することが好ましいことが分かる。
【0043】
この原理を踏まえて、詳細な動作について図10を参照しながら説明する。
監視カメラ1によって撮影された監視領域の画像は、カラー画像信号がアナログーデジタル変換器2によってデジタル化された後、画像メモリ3に取り込まれる(ステップS1)。つまり、RGB信号のそれぞれがA/D変換された後に、画像メモリ3のR成分フレームメモリ31、G成分フレームメモリ32、B成分フレームメモリ33に書き込まれる。
次いで、ステップS12において、画像メモリ3のR成分フレームメモリ31に格納されたカラー成分信号のR成分を読み出して微分画像作成手段48により微分処理を行い微分画像(図8(b)参照)を作成し、次段の減算手段49に供給する。そして、減算手段49は画像メモリ3のRフレームメモリ31に格納されたカラー成分信号のR成分(原画像)から微分画像作成手段48で作成された微分画像を減算し、差分画像(図8(c)参照)を生成する(ステップS13)。
【0044】
このようにして、減算手段49で得られた差分画像(R成分)は、画像メモリ3のG成分フレームメモリ32から読み出されたカラー成分信号のG成分と共に最小値演算手段42に供給され、ここで上述と同様に画素単位で、全ての画像領域にわたって、最小値演算がなされる(ステップS3)。
即ち、最小値演算手段42は、入力されたカラー成分信号のR成分とG成分を同一画素毎に比較して小さい値の成分を出力する。
以下、ステップS4〜S11に亙って火災判別の動作が行われるが、これについては、上述の実施の形態1の場合と同様であるのでここではその説明を省略する。
【0045】
さて、次に、撮影された画像に現れる曲面をなす鏡面反射による筋状のノイズに対する画像処理について説明する。
トンネル内を通過する後方の車両のヘッドライトの光が前を行く車両の後部に強く当たると、その曲面をなす後面ガラスがいわゆる鏡面反射を起こし、図12に示すように細い横長の光を放つ領域が発生する。この鏡面反射による光が監視カメラにより取り込まれると、その画像に、図9(a)に示すように、一種の単一の筋状のノイズとして現れる。この場合のノイズ状の画像は上述と同様に一種の原画像として一旦画像メモリ3のR成分フレームメモリ31、G成分フレームメモリ32、B成分フレームメモリ33に書き込まれる(ステップS1)。
【0046】
そして、画像メモリ3のR成分フレームメモリ31に格納されたカラー成分信号のR成分が読み出されて微分画像作成手段48により微分処理され、この結果、その出力側には図9(b)に示すような微分画像が得られる(ステップS12)。この微分画像は次段の減算手段49に供給され、ここで、画像メモリ3のRフレームメモリ31に格納されたカラー成分信号のR成分(原画像)から微分画像作成手段48で作成された微分画像が減算され、図9(c)に示すような差分画像が得られる(ステップS13)。つまり、いま、図9において、図面上白い部分を画像の暗い部分(論理的に“0”相当)、ハッチングの施されている部分を画像の明るい部分(論理的に“1”相当)とすると、減算により図9(a)に示す原画像に相当する部分P1と図9(b)に示す微分画像の部分P1とは実質的に相殺されて図9(c)に示すように暗い部分となり、また、微分画像の部分P2は255階調で表すと限りなく0に近い画像即ち暗い部分となり、この結果、実質的に鏡面反射によるノイズ状の画像が除去される。
【0047】
なお、図9(c)からも分かるように、画面の中央に小さな明るい部分P3が残るが、これは、本来微分処理は、濃淡画像から所定の濃淡レベルで分けられる明部と暗部の境界のみを抽出して、この境界線のみを明るくした画像を得る訳であるが、このP3の部分は微分処理の段階で、図9(b)からも分かるように、周りの画素と比べて殆ど濃淡レベルの差がないので、微分処理されずに残ったものである。もっとも、このP3の部分ぐらい小さい領域になれば、その後のノイズ処理で除去されるので問題ない。
【0048】
このように本実施の形態では、監視カメラが撮影した画像に対して微分処理を施し、この微分処理で得られた微分画像を元の原画像から減算して差分画像を生成し、この差分画像と原画像像に基づいて火災を判別するようにしているので、撮影された画像に現れる曲面をなす鏡面反射による筋状のノイズを実質的に除去して正確な火災判別が可能になる。
【0049】
実施の形態3.
なお、上述の各実施の形態では、監視カメラとしてカラーカメラを用いた場合について説明したが、モノクロカメラでもよい。また、監視領域として例えばトンネルに監視カメラを設置した場合を説明したが、その他の監視領域例えば球場、アトリウムといった大空間に監視カメラを設けるようにしてもよい。
また、上述の各実施の形態では、火災特徴量は、数回のデータにおける{dx/dy}の最大値と最小値の比から求めたが、所定時間内にわたる外接矩形の高さと幅の比の変化量から演算してもよい。つまり{dx/dy}の値を演算する度に、前回の{dx/dy}の値との差を絶対値で求めていき、所定回演算した時に、その差を加算した値が所定値よりも大きければ本当の火災領域であると判断するようにしてもよい。
なお、二値化メモリに格納された二値化画像を微分して得られた微分画像を、二値化画像から差分画像を生成し、その差分画像に基づいて火災判別するようにしてもよい。また、監視カメラとして、TVカメラやデジタルカメラ等を使用してもよい。
【0050】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、撮影された画像に対して膨張処理を施し、この膨張処理の施された画像に基づいて火災判別をしているので、監視領域に非常に動きの早い監視対象物が存在した場合に発生する縞模様のノイズを実質的に除去して正確な火災判別が可能になり、精度の高い火災検出が可能になるという効果がある。
【0051】
また、この発明によれば、撮影された画像を微分して得られた微分画像を元の画像(撮影された画像)から減算して差分画像を生成し、この差分画像と元の画像に基づいて火災判別をしているので、撮影された画像に現れる曲面をなす鏡面反射による筋状のノイズを実質的に除去して正確な火災判別が可能になり、精度の高い火災検出が可能になるという効果がある。
【0052】
また、この発明によれば、撮影手段としてカラーカメラを用い、撮影された画像からR成分とG成分の大きい領域を検出して火災判別をしているので、より確実に火災検出を行うことができるという効果がある。
【0053】
また、この発明によれば、微分画像作成手段は、RGB信号のうち、R成分フレームメモリに格納されたカラー成分信号のR成分のみに微分処理を行うので、精度の高い火災判別を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1を示す構成図である。
【図2】監視カメラにより映される画像(原画像)の一例を示す図である。
【図3】二値化メモリに格納された画像処理(抽出処理)後の画像の一例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1における画像膨張処理を説明するための図である。
【図5】この発明の実施の形態1の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2における炎に対する微分処理を説明するための図である。
【図8】この発明の実施の形態2における炎の画像に対する微分処理を説明するための図である。
【図9】この発明の実施の形態2における鏡面反射による光源の画像に対する微分処理を説明するための図である。
【図10】この発明の実施の形態2の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】炎の撮影画像に発生した縞模様のノイズを示す図である。
【図12】鏡面反射により発生した細い横長の光を放つ領域を示す図である。
【符号の説明】
1 監視カメラ、3 画像メモリ、5 二値化メモリ、6,6A ROM、7RAM、41 画像膨張処理手段、42 最小値演算手段、43 火災候補領域抽出手段、44 対応判別手段、45 外接矩形作成手段、46 火災特徴量演算手段、47 火災判別手段、48 微分画像作成手段、49 減算手段。

Claims (2)

  1. 監視領域を撮影する撮影手段と、該撮影手段により撮影された画像を格納するための画像メモリとを備え、該画像メモリに格納された画像を処理することにより火災を検出する火災検出装置において、
    前記撮影手段により撮影された画像に対して膨張処理を施す画像膨張処理手段と、
    該画像膨張処理手段で施された画像に基づいて火災らしい領域があるか否かを検出する火災検出手段と
    を備え、
    前記画膨張処理の膨張処理は、撮影された画像内で、上下二マスのマトリクスを水平走査して、上下のマスを比較して、それぞれの輝度値を大きい値の方に合わせて、同じ値にしていくものであることを特徴とする火災検出装置。
  2. 監視領域を撮影する撮影手段と、該撮影手段により撮影された画像を格納するための画像メモリとを備え、該画像メモリに格納された画像を処理することにより火災を検出する火災検出装置において、
    前記撮影手段により撮影された画像を微分してエッジを抽出し、微分画像を作成する微分画像作成手段と、
    前記撮影手段により撮影された画像から前記微分画像を減算して差分画像を得る減算手段と、
    前記撮影された画像と前記差分画像に基づいて火災らしい領域があるか否かを検出する火災検出手段と
    を備え、
    前記撮影手段は、カラーカメラであり、
    前記微分画像作成手段は、RGB信号のうち、R成分フレームメモリに格納されたカラー成分信号のR成分のみに微分処理を行うものであることを特徴とする火災検出装置。
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