JP3626785B2 - 射出成形機の射出圧力制御装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、射出成形機の射出圧力制御装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
所望する射出成形金型内部の圧力の変化を目標値として予め制御装置に設定しておき、射出成形金型内に圧力センサを設け射出工程の各時点における実圧力を該圧力センサで検出して射出圧力のフィードバック制御を行うようにした射出成形機は既に知られている。しかし、射出成形金型内に圧力センサを設けた構成においては、射出開始後、樹脂が射出成形金型に充填されるまでの間は圧力センサで樹脂圧を検出できず圧力のフィードバック制御を行うことができない。
【0003】
また、射出成形機のシリンダの先端内部、つまり、射出開始前の段階で初めから樹脂が充填されている位置に圧力センサを設け、射出開始直後から射出圧力のフィードバック制御を行えるようにした射出成形機も提案されている。しかし、このような構成では、射出工程後半の保圧段階で樹脂の固化が始まってしまうと射出成形金型内の樹脂圧力がシリンダ内に正確に伝えられなくなり、保圧圧力のフィードバック制御に支障をきたす場合がある。無論、スクリューの基部にロードセル等の圧力センサを取付けて圧力のフィードバック制御を行う場合も、これと同様の問題が生じる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の欠点を解消し、射出開始直後から射出の保圧工程が完了するまでの間、圧力のフィードバック制御による射出圧力制御を継続して安定的に行うことのできる射出成形機の射出圧力制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、スクリューに作用する樹脂反力またはシリンダ内圧力を検出する第1の圧力センサと射出成形金型内部の圧力を検出する第2の圧力センサと、射出速度現在値を検出する速度検出手段と、射出工程における前記第1の圧力センサによる検出値を所定周期毎にサンプリングして第1の圧力の目標値として予め記憶する手段と、前記第2の圧力センサによる検出値を所定周期毎にサンプリングして第2の圧力の目標値として予め記憶する手段と、前記射出速度現在値を所定周期毎にサンプリングし予め記憶する手段とを有し、樹脂が第2の圧力センサに到達するまでの間は前記第1の圧力の目標値と第1の圧力センサの検出値及び前記記憶された射出速度と前記速度検出手段の検出値とに基づいて射出圧力及び速度のフィードバック制御を行う一方、樹脂が第2の圧力センサに到達してからは前記第2の圧力の目標値と第2の圧力センサの検出値及び前記記憶された射出速度と前記速度検出手段の検出値とに基づいて射出圧力及び速度のフィードバック制御を行うようにしたことを特徴とする構成により前記目的を達成した。
【0006】
又、樹脂が第2の圧力センサに到達した時期は、前記第2の圧力センサで検出する検出値が所定値以上になったとき、若しくは、記憶されている前記第2の圧力の目標値が所定値以上になったときとした。
【0007】
さらに、前記記憶された第1の圧力の目標値または前記第2の圧力の目標値を更に修正、編集する手段を設け、目標値を編集できるようにした。
【0008】
【作用】
スクリューに作用する樹脂反力またはシリンダ内圧力の変化、および、射出成形金型内部の圧力の変化を予め目標値として制御装置に個別に設定しておく。この際、良品成形時の射出条件をそのまま反映させるのであれば、目標値となる樹脂反力やシリンダ内圧力および射出成形金型内部の圧力として良品成形時のサンプリングデータをそのまま用いるようにする。
【0009】
制御装置は、樹脂が第2の圧力センサに到達するまでの間は前記設定した樹脂反力またはシリンダ内圧力と第1の圧力センサによって検出される現在圧力及び前記記憶された射出速度と前記速度検出手段の検出値に基いて射出圧力及び速度のフィードバック制御を行い、また、樹脂が第2の圧力センサに到達してからは、前記設定した射出成形金型内部の圧力と第2の圧力センサによって検出される現在圧力及び前記記憶された射出速度と前記速度検出手段の検出値とに基いて射出圧力及び速度のフィードバック制御を行う。
【0010】
樹脂が第2の圧力センサに到達したか否は、射出工程におけるサンプリング周期毎に第2の圧力センサの検出値または予め制御装置に設定した射出成形金型内部の圧力を読込み、その値が所定値以上になっているか否かによって判定する。
【0011】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は本発明を適用した一実施例の電動式射出成形機の要部を示すブロック図である。シリンダ2,スクリュー3,ロードセル8,動力伝達機構4,射出用サーボモータ5の構成は従来の電動式射出成形機と全く同様で、射出用サーボモータ5およびモータ5の回転運動を直線運動に変換する動力伝達機構4によってスクリュー3が射出軸方向に駆動されるようになっている。ロードセル8は動力伝達機構4の出力軸とスクリュー3との間に設けられた圧力センサであり、本実施例における第1の圧力センサを構成している。第1の圧力センサとしてはスクリュー3に作用する樹脂反力を検出するロードセル8の他、シリンダ2の先端内部に取り付ける圧力センサ、つまり、シリンダ内圧力を検出する圧力センサを以て代替することも可能である。スクリュー3に作用する樹脂反力を検出するロードセル8とシリンダ2の先端内部に取り付ける圧力センサとでは、厳密にいってその検出対象が異なるが、いずれも射出開始直後から樹脂圧力の検出が可能である点では同一であり、共に本発明における第1の圧力センサとして利用することができる。
【0012】
また、射出成形金型1内の適宜位置には金型内部の樹脂圧力を検出するための第2の圧力センサ7が設けられている。第2の圧力センサ7を設ける位置としては、スプルー近傍のコールドスラグウェル(一般にZピンのある位置),ランナー部,製品部,その他の湯溜り等が考える。射出成形金型の設計および製造はユーザーサイドの問題であり、その射出成形金型を用いて射出成形作業を行う際にどのような圧力制御を行うべきか等により、第2の圧力センサ7を設ける位置は、ユーザー各自が任意に決定するようにする。
【0013】
なお、ガスの圧縮による高熱の発生によって金型内の樹脂に焼けが発生するのを防止する必要上、射出成形金型1にはガスベント等を設けるのが普通で、また、格別のガスベントを設けないまでも、パーティングラインやコアの合せ目等からガスの排出を可能とする必要がある。この結果、射出が開始されても、樹脂が射出成形金型1に完全に充填されるか、または、少なくとも第2の圧力センサ7の配設位置に樹脂が到達するまでの間は、該第2の圧力センサ7によって圧力が検出されることはない。
【0014】
第2の圧力センサ7をスプルー近傍のコールドスラグウェル,ランナー部等に設けた場合、つまり、第2の圧力センサ7を樹脂の充填過程の経路上に設けた場合では、樹脂が射出成形金型1に完全に充填される前から第2の圧力センサ7による圧力のフィードバック制御が開始される。このとき第2の圧力センサ7によって検出されるのは、少なくとも初めのうちは、射出成形金型1の内圧というよりは、流動する樹脂のサージ圧または第2の圧力センサ7の位置を通過した樹脂の粘性抵抗の総和である。従って、第2の圧力センサ7をスプルー近傍のコールドスラグウェル,ランナー部等に設けた場合、第2の圧力センサ7が流動する樹脂のサージ圧や樹脂の粘性抵抗の総和を検出するという点に限ってみれば、第2の圧力センサ7はロードセル8(第1の圧力センサ)と同様の機能を有することになるが、第2の圧力センサ7は射出成形金型1の内部、つまり、射出開始時点において樹脂が存在していない位置に設けられたものであり、しかも、樹脂の充填完了後には樹脂の固化による圧力検出の悪化を受けずに射出成形金型1の内部圧力を精密に検出することができるものであって、射出開始時点から機能する半面、樹脂の充填完了後には圧力の伝播経路の長さや該経路の複雑さによる圧力降下等の影響を受けて射出成形金型1の内部圧力を精密に検出することが困難となるロードセル8(第1の圧力センサ)とでは、全く、その性格が異なる。
【0015】
また、第2の圧力センサ7を製品部等に設けた場合、つまり、一般的にいって樹脂が最後に充填される位置に第2の圧力センサ7を設けた場合では、ほぼ完全に樹脂が射出成形金型1に充填されてから、要するに、実質的な保圧工程に移行してから第2の圧力センサ7による圧力のフィードバック制御が開始されることになる。このとき第2の圧力センサ7によって検出されるのは、初めから、射出成形金型1の各部にほぼ等しく作用する樹脂の内圧である。
【0016】
射出成形金型1の設計および製造の段階では、これらの点を考慮し、圧力制御の目的を明確にして、第2の圧力センサ7の配備位置を決める必要がある。
【0017】
射出成形機を駆動制御する制御装置10は、数値制御用のマイクロプロセッサであるCNC用CPU25、プログラマブルマシンコントローラ用のマイクロプロセッサであるPMC用CPU18、サーボ制御用のマイクロプロセッサであるサーボCPU20と、A/D変換器16を介してロードセル8および第2の圧力センサ7から射出圧力および金型内圧を検出してサンプリング処理を行うための圧力モニタ用CPU17とを有し、バス22を介して相互の入出力を選択することにより各マイクロプロセッサ間での情報伝達が行えるようになっている。
【0018】
PMC用CPU18には射出成形機のシーケンス動作を制御するシーケンスプログラム等を記憶したROM13および演算データの一時記憶等に用いられるRAM14が接続され、CNC用CPU25には、射出成形機を全体的に制御する制御プログラム等を記憶したROM27および演算データの一時記憶等に用いられるRAM28が接続されている。
【0019】
また、サーボCPU20および圧力モニタ用CPU17の各々には、サーボ制御専用の制御プログラムを格納したROM21やデータの一時記憶に用いられるRAM19、および、射出圧力や金型内圧のサンプリング処理等に関する制御プログラムを格納したROM11やデータの一時記憶に用いられるRAM12が接続されている。更に、サーボCPU20には、該CPU20からの指令に基いて型締め用,射出用,スクリュー回転用,エジェクタ用等の各軸のサーボモータを駆動するサーボアンプが接続され、各軸のサーボモータに取付けられたパルスコーダからの出力がサーボCPU20に帰還されるようになっている。そして、各軸の現在位置およびその移動速度等がパルスコーダからのフィードバックパルスに基いてサーボCPU20により算出される。図1においては射出軸用のサーボアンプ15と射出用サーボモータ5および該モータ5のパルスコーダ6についてのみ示しているが、型締め用,エジェクタ用等の各軸の構成は皆これと同様である。但し、スクリュー回転用のものに関しては現在位置を検出する必要はなく、速度のみを検出すればよい。
【0020】
インターフェイス23は射出成形機本体の各部に配備したリミットスイッチや操作盤からの信号を受信したり射出成形機の周辺機器等に各種の指令を伝達したりするための入出力インターフェイスである。
【0021】
ディスプレイ付手動データ入力装置29はCRT表示回路26を介してバス22に接続され、グラフ画面の表示や機能メニューの選択および各種データの入力操作等が行えるようになっており、数値データ入力用のテンキーおよび各種のファンクションキー等が設けられている。
【0022】
不揮発性メモリ24は射出成形作業に関する成形条件と各種設定値,パラメータ,マクロ変数等を記憶する成形データ保存用のメモリである。また、本実施例においては、これらのデータに加え、更に、スクリュー3に作用する樹脂反力の変化と射出成形金型1内部の圧力の変化の設定値が、所定のデータ形式(図6参照)で設定記憶されるようになっている。
【0023】
以上の構成により、PMC用CPU18が射出成形機全体のシーケンス動作を制御し、CNC用CPU25がROM27の制御プログラムや不揮発性メモリ24の成形条件等に基いて各軸のサーボモータに対して移動指令、若しくは速度指令を出力し、サーボCPU20は各軸に対して指令された移動指令若しくは速度指令とパルスコーダ等の検出器で検出された位置および速度のフィードバック信号に基いて、位置ループ制御,速度ループ制御さらには電流ループ制御等のサーボ制御を行い、いわゆるディジタルサーボ処理を実行する。
【0024】
無論、射出工程においては、スクリュー位置を基準として射出/保圧切替位置を設定することにより射出速度の優先制御を行った後射出圧力の制御に切替えて行う射出速度/圧力切替制御モードを実行することも可能であり、条件出し等の射出成形作業の段階では、該射出速度/圧力切替制御モードにより射出段数および保圧段数を複数設定して各段毎に射出速度や射出圧力(保圧圧力)を様々に変化させ、従来と同様にして、使用対象となる射出成形金型1に見合った最適の成形条件を求めるようにしている。また、射出速度の優先制御を行いながらロードセル8の出力を検知して、その値が所定値に達したときに射出速度の優先制御を打ち切って予め決めておいた圧力で射出圧力(保圧圧力)の制御を開始するようにした射出制御方法も本出願人らによって提案されているが、このような方法を利用して条件出し等の射出成形作業を行うことも可能である。
【0025】
図3は、射出速度/圧力切替制御モードにおけるスクリュー3に作用する樹脂反力の変化と射出成形金型1内部の圧力の変化とを制御装置10に設定記憶するための「目標値設定処理」の概略を示すフローチャートである。この処理は、射出成形機の稼働中、圧力モニタ用CPU17によりサーボ用CPU20における速度ループの処理と同期して所定周期毎に繰り返し実行されている。
【0026】
「目標値設定処理」を開始した圧力モニタ用CPU17は、まず、「基準登録モード」の機能メニューが選択されているか否かを判別し(ステップa1)、この機能メニューが選択されている場合に限り、ステップa2以降の処理を継続して行う。従って、実質的な「目標値設定処理」が実施されるのは「基準登録モード」の機能メニューが選択されている場合のみである。「目標値設定処理」は、良品成形時の射出工程における樹脂反力の変化および金型内部圧力の変化をサンプリングし、これを圧力制御の目標値として不揮発性メモリ24に設定するためのものであるから、オペレータは、条件出しのための射出成形作業を完了させてから「基準登録モード」の機能メニューを選択する必要がある。なお、「基準登録モード」の選択は、連続成形作業中にオペレータがディスプレイ付手動データ入力装置29のファンクションキー9を操作して行うようになっている。また、圧力モニタ用CPU17によるサンプリング処理が行われる間、ディスプレイ付手動データ入力装置29の表示画面には、通常のモニタ表示の場合と同様にしてサンプリングデータを示す線図が表示されるようになっている。図7の例ではサンプリング処理終了時点におけるディスプレイ付手動データ入力装置29の表示状態を示しており、V,IP,MPの各線図は夫々射出速度,樹脂反力,射出成形金型1の内部圧力のサンプリングデータに対応する線図である。従来のモニタ表示では射出成形金型1の内部圧力MPの線図は表示されず(そもそも第2の圧力センサ7がない)、この点で本実施例のモニタ表示と従来のモニタ表示とでは差異があるが、内部圧力MPの表示自体に関しては技術的に格別の困難性はないので(樹脂反力IPの表示と同様である)、この新規事項に関しては詳細な説明はしない。
【0027】
「基準登録モード」の機能メニューが選択されている場合、つまり、ステップa1の判別結果が真となった場合、圧力モニタ用CPU17は、次いで、サンプリング実行フラグF′がセットされているか否かを判別する(ステップa2)。「基準登録モード」の機能メニューを選択した直後の段階ではサンプリング実行フラグF′が未設定の状態にあるので、圧力モニタ用CPU17は、更に、射出開始検出フラグF″がセットされているか否かを判別する(ステップa3)。「基準登録モード」の機能メニューを選択した直後の段階では射出開始検出フラグF″も未設定の状態にあり、圧力モニタ用CPU17は、更に、PMC用CPU18のRAM14にアクセスし、射出実行フラグFがセットされているか否かを判別する(ステップa4)。射出実行フラグFは、全体のシーケンス制御を司るPMC用CPU18により射出工程の開始指令が出力された時にセットされるフラグであるから、この時点においても、射出実行フラグFがセットされている場合とセットされていない場合とがある。つまり、オペレータが「基準登録モード」の機能メニューを選択した時点で既に或る成形サイクルの射出工程が開始されていれば射出実行フラグFがセットされており、また、オペレータが「基準登録モード」の機能メニューを選択した時点で射出工程の処理が行われていなければ、射出実行フラグFがセットされていないことになる。なお、ここでいう射出工程とは、射出速度/圧力切替制御モードにおけるスクリュー位置を基準として射出/保圧切替位置を設定することにより射出速度の優先制御と射出圧力の優先制御との切替えを行うようにした従来と同様の射出工程、または、射出速度の優先制御を行いながらロードセル8の出力を検知して、その値が所定値に達したときに射出速度の優先制御を打ち切って予め決めておいた圧力で射出圧力(保圧圧力)の優先制御を開始するようにした従来と同様の射出工程等(要するに条件出し完了後に良品成形時のサンプリングデータを抽出するために行われる射出制御に過ぎない)のことであって、本発明の要旨に沿って行われる圧力のフィードバック制御を含むものではない。
【0028】
既に射出実行フラグFがセットされている場合、この時点でサンプリングデータの抽出を開始してしまうと射出開始直後からこの時点までのデータが抽出されないことになるので、圧力モニタ用CPU17は、この時点でサンプリングデータの抽出を開始することはせず、この成形サイクルにおけるサンプリング処理の実施を見送って当該処理周期の処理を終わらせ、次の成形サイクルにおける射出工程の開始を待機することになる。また、射出実行フラグFがセットされていなければ、オペレータが「基準登録モード」の機能メニューを選択した時点で射出工程の処理が行われていなかったことを意味するので、当然、射出工程におけるサンプリング処理を行うことはできず、圧力モニタ用CPU17は、射出開始検出フラグF″をセットして(ステップa5)、次の成形サイクルにおける射出工程の開始を待機することになる。つまり、このようにして射出開始検出フラグF″のセットが完了した後、以降の処理周期において射出実行フラグFのセットが検出されれば、射出実行フラグFがOFFからONに変化する瞬間、要するに、射出工程の立上りを検出できるのである。
【0029】
結果的に、オペレータが「基準登録モード」の機能メニューを選択した時点で既に射出工程が開始されていた場合では、この射出工程が完了するまでの間ステップa1〜ステップa4の判別処理のみが繰り返し実行され、更に、この射出工程が完了してステップa5の処理で射出開始検出フラグF″がセットされた後は、次の射出工程の処理が開始されるまでの間、ステップa1〜ステップa3およびステップa6の判別処理のみが繰り返し実行されることになる。また、オペレータが「基準登録モード」の機能メニューを選択した時点で射出工程の処理が行われていなかった場合には、既に述べた通り、ステップa5の処理によりその時点で射出開始検出フラグF″をセットし、以下、前記と同様にしてステップa1〜ステップa3およびステップa6の判別処理のみを繰り返し実行することになる。なお、ステップa6の処理の内容は実質的にステップa4の処理と同一である。
【0030】
そして、圧力モニタ用CPU17がステップa1〜ステップa3およびステップa6の判別処理を繰り返し実行する間に次の射出工程が開始されると、PMC用CPU18によって射出実行フラグFがセットされ、圧力モニタ用CPU17はステップa6の判別処理でこれを検出する。つまり、前述した射出工程の立上りの検出である。そこで、圧力モニタ用CPU17は、射出開始検出フラグF″をリセットしてサンプリング実行フラグF′をセットし、サンプリングデータの記憶領域を決めるアドレス指標iを零に初期化して(ステップa7)、射出速度現在値VR ,樹脂反力現在値IPR ,射出成形金型1の内部圧力の現在値MPR のサンプリング処理を開始することになる。なお、各サンプリングデータを記憶するためにRAM12内に設けられたテーブルの一例を図6に示すので参照されたい。
【0031】
サンプリング処理を開始した圧力モニタ用CPU17は、まず、アドレス指標iの値を1インクリメントし(ステップa8)、ロードセル8および第2の圧力センサ7からの圧力データと、サーボCPU20で算出された該時点における射出速度のデータとを読み込み、その各々をアドレス指標iの値に対応させ、RAM12内のテーブルの記憶領域Vi,IPi,MPiに記憶する(ステップa9)。次いで、圧力モニタ用CPU17は、射出実行フラグFがリセットされているか否か、即ち、或る成形サイクルの一射出工程が完了しているか否かを判別するが(ステップa10)、完了していなければ、この処理周期における「目標値設定処理」をこのまま終了する。なお、射出実行フラグFのリセット操作は、そのセット時の操作と同様、PMC用CPU18によって行われるものであって、圧力モニタ用CPU17の動作とは直接の関係はない。
【0032】
以降の処理周期では、前述したステップa7の処理によって既にサンプリング実行フラグF′がセットされているので、ステップa1およびステップa2の判別処理とステップa8〜ステップa10の処理のみが繰り返し実行され、順次インクリメントされるアドレス指標iの値に基いて、各サンプリング周期毎の射出速度現在値VR ,樹脂反力現在値IPR ,金型内部圧力現在値MPR の各値が前記RAM12内のテーブルの記憶領域Vi,IPi,MPiに次々と記憶されてゆくことになる。
【0033】
そして、PMC用CPU18によって射出実行フラグFがリセットされ、当該一射出工程の射出および保圧制御が終了したことがステップa10の判別処理によって検出されると、圧力モニタ用CPU17は「基準登録モード」の機能メニューの選択を解除してサンプリング実行フラグF′をリセットし、アドレス指標iの最終値、即ち、サンプリングデータの総数をレジスタnに移しかえた後、アドレス指標iの値を初期化して、サンプリングデータの総数nの値と前記テーブルの記憶内容の全てを不揮発性メモリ24に転送して記憶させ、RAM12内のデータを消去する(ステップa11)。因みに、この一射出工程(保圧を含む)の所要時間は、「基準登録モード」の処理周期(速度ループの処理周期)にnを乗じた時間に等しい。「基準登録モード」の機能メニューの選択が解除されてもディスプレイ付手動データ入力装置29の表示画面における線図の表示は消されないが、この表示は、改めて別の機能メニューが選択された時点で自動的に消去される。
【0034】
以上、一実施例として、良品成形時の射出工程で得られた樹脂反力,金型内部圧力の各サンプリングデータIP1〜IPn,MP1〜MPnの各値を樹脂反力の変化および射出成形金型1の内部圧力の変化としてそのまま制御装置10に設定記憶するようにしたものについて述べたが、更に、これらのデータに修正や編集等の作業を加え、該修正後または編集後のデータを改めて制御装置10の不揮発性メモリ24に記憶させるようにしてもよい。修正や編集等の作業方法としては、不揮発性メモリ24に転送されたテーブルのデータに対してテンキー等による直接の数値入力操作で書き替えを行う方法や、図7に示されるような線図をディスプレイ付手動データ入力装置29に表示させてグラフィックカーソルを用いた操作で線図の形状を変え、これを改めて数値化して前記テーブルの対応位置にデータとして自動的に書き込ませる等の方法があるが、いずれもデータの編集方法それ自体は従来技術に属するものでり、詳細な説明は省略する。
【0035】
この実施例においては良品成形時の射出工程で得られた樹脂反力のサンプリングデータIP1〜IPnおよび金型内部圧力のサンプリングデータMP1〜MPnと共に射出速度のサンプリングデータV1〜Vnが不揮発性メモリ24に記憶されるようになっているが、V1〜Vnは、本実施例における圧力のフィードバック制御と共に速度のフィードバック制御が重畳して行われるために必要となる指令データである。従って、速度のフィードバック制御を行わず、圧力のフィードバック制御のみを実施するような場合では、射出速度のサンプリングデータV1〜Vnの記憶は必要ではない。
【0036】
図2は、本実施例における射出圧力フィードバック制御モードにおいて実行する射出速度のフィードバック制御と、圧力のフィードバック制御を重畳した射出制御の概略を示す機能ブロック図である。ViはCNC用CPU25からサーボCPU20に与えられる所定周期毎の速度指令、つまり、前述のようにして抽出された射出速度のサンプリングデータVi(但しi=1〜n)の値である。また、ΔViはCNC用CPU25からサーボCPU20に与えられる所定周期毎の圧力偏差補正指令であり、前述のようにして抽出された樹脂反力のサンプリングデータIPi(但しi=1〜n)の値からその時点における樹脂反力の現在値IPR を減じた偏差に所定のゲインを乗じた値A、または、金型内部圧力のサンプリングデータMPi(但しi=1〜n)の値からその時点における金型内部圧力の現在値MPR を減じた偏差に所定のゲインを乗じた値Bのいずれかである。結果的に、樹脂が第2の圧力センサ7の配設位置に到達するまでの間は、樹脂反力のサンプリングデータIPiとロードセル8(第1の圧力センサ)により検出される樹脂反力の現在値IPR との偏差に基きΔVi=Aとして圧力のフィードバック制御が行われ、また、樹脂が第2の圧力センサ7の配設位置に到達してからは、金型内部圧力のサンプリングデータMPiと第2の圧力センサ7により検出される金型内部圧力の現在値MPR との偏差に基きΔVi=Bとして圧力のフィードバック制御が行われることになる。なお、ここでいう所定周期とは前述のサンプリング周期、つまり、ディジタルサーボ制御における速度ループの処理周期と同一である。
【0037】
CNC用CPU25は前述の速度指令Viと前述の圧力偏差補正指令ΔViを加算してサーボCPU20へ速度指令として出力する。サーボCPU20はこの速度指令Vi+ΔViと射出用サーボモータ5のパルスコーダ6からの速度帰還信号とに基いて速度ループ処理を行いトルク指令(電流指令)を求め、さらに従来と同様に電流ループ処理を行ってサーボアンプ15を介して射出用サーボモータ5を駆動し、速度のフィードバック制御と共に、ロードセル8で検出される樹脂反力の現在値IPR や第2の圧力センサ7で検出される金型内部圧力の現在値MPR が良品成形時における樹脂反力のサンプリングデータIPiや良品成形時における金型内部圧力のサンプリングデータMPiに一致するように圧力のフィードバック制御を重畳して行う。この方法によれば、基準となる速度指令Viが常に存在するので、第2の圧力センサ7の配設位置に樹脂が到達してΔVi=AからΔVi=Bへと圧力偏差補正指令の切替えを行う際にも不用意な変動が生じにくいという利点がある。また、既に述べた通り、圧力のフィードバック制御のみを実施することも可能であり、その場合は、基本となる速度指令Viは用いず、圧力偏差補正指令ΔViをトルク指令値として直に電流ループへと入力するようにする。
【0038】
図2に示した機能を実現するために、サーボCPU20が実行する速度ループ処理への速度指令(Vi+ΔVi)を求める処理を図4に示す。この処理は、射出圧力フィードバック制御モード時におけるCNC用CPU25により射出用サーボモータ5に関する速度ループの処理周期毎に繰り返し実行される処理である。
【0039】
CNC用CPU25は、まず、射出実行フラグFがセットされているか否かを判別する(ステップb1)。フラグFがセットされていない場合は、この時点では射出工程の処理が行われていないことを意味するので、ステップb2以降の処理は非実行とされ、当該周期の処理はこれで終了する。
【0040】
また、射出工程であれば、CNC用CPU25は、不揮発性メモリ24に記憶されているサンプリングデータ(図6と同様の構成)を検索するためのアドレス指標iの値を1インクリメント(ステップb2)し、当該処理周期に対応するサンプリングデータの読込みに備える。アドレス指標iの初期値は初期設定で零にセットされているから、射出実行フラグFがセットされた直後、即ち、射出工程の開始直後に実施される処理では、ステップb2の処理でiの値が1に設定されことになる。
【0041】
次いで、CNC用CPU25は、圧力制御切替えフラグMFがセットされているか否かを判別する(ステップb3)。このフラグMFは第2の圧力センサ7が樹脂の到達を検出した時点で該CPU25によってセットされるフラグである。従って、このフラグがセットされていなければ樹脂反力のサンプリングデータIPiと樹脂反力の現在値IPR とに基いて圧力のフィードバック制御を行う必要があり、また、圧力制御切替えフラグMFがセットされていれば金型内部圧力のサンプリングデータMPiと金型内部圧力の現在値MPR とに基いて圧力のフィードバック制御を行う必要があることを意味する。
【0042】
そこで、圧力制御切替えフラグMFがセットされていなければ、CNC用CPU25は、金型内部圧力の現在値MPR と樹脂反力の現在値IPR とを圧力モニタ用CPU17を介して読込み(ステップb4)、金型内部圧力の現在値MPR が零(設定値以下)であるか否か、即ち、第2の圧力センサ7の配設位置に樹脂が到達しているか否かを判別する(ステップb5)。
【0043】
金型内部圧力の現在値MPR が零であって第2の圧力センサ7の配設位置まで樹脂が到達していなければ、CNC用CPU25はアドレス指標iの値に基いて不揮発性メモリ24のサンプリングデータからこの時点での目標値となる樹脂反力のサンプリングデータIPiを読込み、樹脂反力の現在値IPR と樹脂反力のサンプリングデータIPiとの偏差を求め、この偏差に所定のゲインを乗じて圧力偏差補正指令ΔViを求める(ステップb6)。これが図2に示したブロック100に対応する処理である。そして、CNC用CPU25は、更に、不揮発性メモリ24のサンプリングデータからアドレス指標iに対応する射出速度のサンプリングデータViを読込み、基準となる速度指令ViにΔViを加算した値を速度指令としてサーボCPU20(の速度ループ)に出力する(ステップb7)。これが図2に示したブロック103に対応する処理である。
【0044】
次いで、CNC用CPU25は、アドレス指標iの値がサンプリングデータの総数nに達しているか否か、即ち、保圧を含む射出工程の処理を終了させても良いか否を判別し(ステップb8)、達していなければこの周期の処理を終了する。
【0045】
以下、金型内部圧力の現在値MPR として零が検出され続ける限り、CNC用CPU25は前記と同様にしてステップb1〜ステップb8の処理を所定周期毎に繰り返し実行し、その時点での目標値となる樹脂反力のサンプリングデータIPiと樹脂反力の現在値IPR の偏差に基く圧力偏差補正指令ΔViに、その時点における目標となる速度指令Viを加算して、サーボCPU20に速度指令(Vi+ΔVi)として出力する。サーボCPU20では、該速度指令(Vi+ΔVi)とパルスコーダ6で検出される現在速度に基いて従来と同様に速度ループ処理を行いトルク指令を求め、さらに、従来と同様に電流ループ処理を行って射出用サーボモータ5を駆動制御し、スクリュー3による射出動作を行わせる。これにより、射出速度のフィードバック制御と射出圧力のフィードバック制御が重畳に行われることとなる。
【0046】
一方、第2の圧力センサ7の配設位置に樹脂が到達して第2の圧力センサ7がその圧力を検出するとステップb5の判別結果が偽となり、CNC用CPU25は圧力制御切替えフラグMFをセットして(ステップb9)、金型内部圧力のサンプリングデータMPiと金型内部圧力の現在値MPR とに基く圧力のフィードバック制御を開始することになる。これが図2に示したブロック102に対応する切替えの処理である。
【0047】
金型内部圧力のサンプリングデータMPiと金型内部圧力の現在値MPR とに基く圧力のフィードバック制御においては、アドレス指標iの値に基いてCNC用CPU25が不揮発性メモリ24から金型内部圧力のサンプリングデータMPiを読込み、金型内部圧力の現在値MPR とその時点での目標値となる金型内部圧力のサンプリングデータMPiとの偏差を求め、この偏差に所定のゲインを乗じて圧力偏差補正指令ΔViを求める処理が行われる(ステップb11)。これが図2に示したブロック101に対応する処理である。アドレス指標iの値に対応する射出速度のサンプリングデータViにΔViを加算して速度指令として出力する点は前記と同様である(ステップb7)。
【0048】
圧力制御切替えフラグMFがセットされる結果、以下の処理周期ではステップb1〜ステップb3,ステップb10(ステップb4に代わるMPR の読込み処理)〜ステップb11およびステップb7〜ステップb8の処理が所定周期毎に繰り返し実行され、金型内部圧力の現在値MPR とその時点での目標値である金型内部圧力のサンプリングデータMPiとに基く圧力のフィードバック制御と速度のフィードバック制御を重畳して行いながら射出用サーボモータ5の駆動制御が行われることになる。
【0049】
そして、最終的に、ステップb10の判別処理でアドレス指標iの値がサンプリングデータの総数nに達したことが確認されると、CNC用CPU25は、圧力制御切替えフラグMFをリセットしてアドレス指標iを零に初期化し(ステップb12)、PMC用CPU18に射出完了指令を出力して(ステップb13)、その周期の処理を終了する。
【0050】
これを受けたPMC用CPU18が射出実行フラグFをリセットする結果、新たな成形サイクルの射出工程が開始されて射出実行フラグFが再びセットされるまでの間、前述した圧力のフィードバック制御は実質的な休止状態に入る。そして、再び次の成形サイクルの射出工程が開始されると、初期化されたアドレス指標iの値を初期値として(データを読み出すアドレスの初期値は1である)、前記と同様の処理が繰り返し実行されることになる。
【0051】
以上に述べた通り、射出開始直後から樹脂が第2の圧力センサ7の配設位置に到達するまでの間は、良品成形時等の樹脂反力を目標値としロードセル8を圧力センサとした樹脂反力のフィードバック制御が行われ、更に、樹脂が第2の圧力センサ7の配設位置に到達してから射出工程の保圧が完了するまでの間は、良品成形時等の金型内圧力を目標値とし金型内に設けられた第2の圧力検出センサ7を圧力センサとした金型内圧力のフィードバック制御が行われるようになっているので、保圧を含む射出の全工程に亘って圧力の制御を確実に行うことができる。
【0052】
無論、シリンダの先端内部にのみ圧力センサを設けた従来の射出成形機においても射出の全工程に亘って圧力制御を行うことは可能であるが、樹脂の充填が完了して実質的な保圧状態に入ると金型の内部やシリンダの先端部で樹脂の固化が始まり金型内部の樹脂圧がシリンダ先端内部の圧力センサに適確に伝達されなくなるので、金型内部の樹脂圧を正確に検出して圧力のフィードバック制御を行うことは不可能である。また、樹脂の固化状態等はシリンダや金型の温度等によっても相当に変動するので、シリンダの先端内部にのみ圧力センサを設けた構成では、圧力の降下分を見込んでフィードバック制御のゲイン調整を行うといったことも不可能である。これに対し、本実施例のものでは樹脂反力を検出するロードセル8(無論、従来のようなシリンダ先端内部の圧力センサをロードセル8に代えて用いてもよい)と金型内部の樹脂圧を検出する第2の圧力センサ7とを独立して設け、その各々に対して目標値を設定して樹脂の充填状態に応じた圧力のフィードバック制御を行うようにしているので、金型の内部やシリンダの先端部での樹脂圧力の降下や、その温度変化によって生じる変動等には殆ど影響されない精密な圧力制御を行うことができる。
【0053】
また、良品成形時に検出された実射出速度を速度指令とし、更に、これに圧力偏差補正指令を重畳することにより速度のフィードバック制御と圧力のフィードバック制御を重畳して行うようにしているので、樹脂反力を基準とした圧力制御から金型内圧力を基準とした圧力制御への切替えに際しても不用意な変動を生じることなく、これを安定して行うことができる。
【0054】
以上、射出成形金型1の内部圧力の現在値MPR を実際に検出することによって樹脂が第2の圧力センサ7の配設位置に到達しているか否かを判定して圧力制御を切り替えるようにした実施例について説明したが、不揮発性メモリ24に記憶されたサンプリングデータを参照することによってこれを判定することも可能である。
【0055】
サンプリングデータを参照して圧力センサ7への樹脂の到達を判定するようにした実施例の処理を図5に示す。なお、図5に示すステップc1〜ステップc3,ステップc6〜ステップc8,ステップc10〜ステップc13の各処理は既に図4で説明したステップb1〜ステップb3,ステップb6〜ステップb8,ステップb10〜ステップb13の各処理と全く同一であるので説明は省略する。
【0056】
図5に示す実施例が図4で説明した実施例と相違するのは、まず、図4の実施例では射出成形金型1の内部圧力の現在値MPR を実際に読込んでその値が零であるか否かを判別することにより第2の圧力センサ7に樹脂が到達しているか否かを判定しているのに対し(図4:ステップb4〜ステップb5)、図5の実施例では、不揮発性メモリ24に記憶した射出成形金型1の内部圧力のサンプリングデータから1周期先の射出成形金型1の内部圧力のサンプリングデータMPi+1 を読込み、その値が零であるか否かによって、次の速度ループの処理周期で第2の圧力センサ7に樹脂が到達するか否かを予測している点である(図5:ステップc5)。
【0057】
ここで、サンプリングデータMPi+1 が零であれば、当然、その1周期手前である当該処理周期における射出成形金型1の内部圧力のサンプリングデータMPiの値も零である。従って、この時点では樹脂が第2の圧力センサ7に到達していないことを意味し、当該処理周期においては樹脂反力のサンプリングデータIPiと樹脂反力の現在値IPR とに基いて圧力のフィードバック制御を行うための処理が適用される(図5:ステップc6)。
【0058】
また、サンプリングデータMPi+1 が零でなくても、圧力制御切替えフラグMFがセットされていない限りは、その1周期手前の当該処理周期における射出成形金型1の内部圧力のサンプリングデータMPiの値は零であるから(後述の理由による)、当該処理周期においては樹脂反力のサンプリングデータIPiと樹脂反力の現在値IPR とに基いて圧力のフィードバック制御を行うための処理を適用する必要がある。但し、この場合、次の処理周期で第2の圧力センサ7に樹脂が到達することは明らかであるから、圧力制御切替えフラグMFをこの時点でセットしておき(図5:ステップc9)、前記と同様にして樹脂反力のサンプリングデータIPiと樹脂反力の現在値IPR とに基いて圧力のフィードバック制御を行う(図5:ステップc6)。つまり、良品成形時のサンプリング時においても第2の圧力センサ7は樹脂が始めて到達するまでは常に零を検出し、また、一旦樹脂が到達してしまってからは常に零以上の値を検出し続けるので、図5のステップc5に示すようにしてサンプリング完了後の圧力のフィードバック制御時においてサンプリング周期を基準に常に1周期先の内部圧力のサンプリングデータMPi+1 を先読みしてゆき、零以上の値を有するサンプリングデータMPi+1 が検出された最初の処理周期、つまり、i番目の処理周期でフラグMFをセットし、当該処理周期で樹脂反力のサンプリングデータIPiと樹脂反力の現在値IPR とに基く最後の圧力のフィードバック制御を行って、i+1番目である次の処理周期から金型内部圧力の現在値MPR とその時点での目標値である金型内部圧力のサンプリングデータMPi+1 とに基く圧力のフィードバック制御を開始すればよいのである。図4におけるステップb9実行後の分岐先と図5におけるステップc9実行後の分岐先とが異なるのは、このような理由によるものである。
【0059】
その他については図4に示した実施例と全く同様であり、作用効果の点でも、ほぼこれと同じである。
【0060】
【発明の効果】
本発明による射出圧力制御装置は、スクリューに作用する樹脂反力またはシリンダ内圧力を検出する第1の圧力センサと射出成形金型内部の圧力を検出する第2の圧力センサとを設け、スクリューに作用する樹脂反力またはシリンダ内圧力の変化と射出成形金型内部の圧力の変化とを制御装置に個別に設定しておき、樹脂が第2の圧力センサに到達するまでの間は設定した樹脂反力またはシリンダ内圧力と第1の圧力センサによって検出される現在圧力及び設定された射出速度と速度検出手段の検出値とに基いて射出圧力及び速度のフィードバック制御を行う一方、樹脂が第2の圧力センサに到達してからは設定した射出成形金型内部の圧力と第2の圧力センサによって検出される現在圧力及び設定された射出速度と速度検出手段の検出値とに基いて射出圧力及び速度のフィードバック制御を行い金型内部の圧力の制御を行うようにしたので、射出開始直後から射出の保圧工程が完了するまでの間、圧力のフィードバック制御による射出圧力制御を継続して安定的に行うことができる。
【0061】
また、目標値となる樹脂反力やシリンダ内圧力および射出成形金型内部の圧力として良品成形時のサンプリングデータを用い、しかも、樹脂が第2の圧力センサに到達したか否は、射出工程におけるサンプリング周期毎に第2の圧力センサの検出値または予め制御装置に設定した射出成形金型内部の圧力を読込み、その値が所定値以上になるっているか否かによって判定するようにしたので、良品成形時と同じ状態の圧力変化を正確に再現することができる。
【0062】
更に、樹脂反力を検出する第1の圧力センサと射出成形金型内部の樹脂圧を検出する第2の圧力センサとを独立して設け、その各々に対して目標値を設定して樹脂の充填状態に応じた圧力のフィードバック制御を行うようにしているので、金型の内部やシリンダの先端部での樹脂経路の狭小化や樹脂の固化状態の変化等で差を生じる射出成形金型内部の検出樹脂圧力とシリンダ内の検出樹脂圧力の相違による影響を受けることなく、射出成形金型内部の樹脂に対して精密な圧力制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の射出圧力制御装置を適用した一実施例の電動式射出成形機の要部を示すブロック図である。
【図2】同実施例における圧力のフィードバック制御の概略を示す機能ブロック図である。
【図3】同実施例の射出成形機の制御装置による目標値設定処理の概略を示すフローチャートである。
【図4】同実施例の射出成形機の制御装置により圧力制御を実施するための速度ループ処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】圧力制御を実施するための速度ループ処理の他の例を示すフローチャートである。
【図6】サンプリングデータを記憶するテーブルの一例を概念的に示す図である。
【図7】目標値設定処理におけるモニタ表示画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
F 射出実行フラグ
F′ サンプリング実行フラグ
F″ 射出開始検出フラグ
MF 圧力制御切替えフラグ
i アドレス指標
VR 射出速度の現在値
IPR 樹脂反力の現在値
MPR 射出成形金型の内部圧力の現在値
Vi 射出速度のサンプリングデータ(基準となる速度指令)
IPi 樹脂反力のサンプリングデータ(樹脂反力の目標値)
MPi 射出成形金型の内部圧力のサンプリングデータ(内部圧力の目標値)
n サンプリングデータの総数
ΔVi 圧力偏差補正指令
A 樹脂反力に基く圧力偏差補正指令
B 金型内部圧力に基く圧力偏差補正指令
1 射出成形金型
2 シリンダ
3 スクリュー
4 動力伝達機構
5 射出用サーボモータ
6 パルスコーダ
7 第2の圧力センサ
8 ロードセル(第1の圧力センサ)
9 ファンクションキー
10 制御装置
16 A/D変換器
17 圧力モニタ用CPU
24 不揮発性メモリ
25 CNC用CPU
29 ディスプレイ付手動データ入力装置
Claims (4)
- スクリューに作用する樹脂反力またはシリンダ内圧力を検出する第1の圧力センサと射出成形金型内部の圧力を検出する第2の圧力センサと、射出速度現在値を検出する速度検出手段と、射出工程における前記第1の圧力センサによる検出値を所定周期毎にサンプリングして第1の圧力の目標値として予め記憶する手段と、前記第2の圧力センサによる検出値を所定周期毎にサンプリングして第2の圧力の目標値として予め記憶する手段と、前記射出速度現在値を所定周期毎にサンプリングし予め記憶する手段とを有し、樹脂が第2の圧力センサに到達するまでの間は前記第1の圧力の目標値と第1の圧力センサの検出値及び前記記憶された射出速度と前記速度検出手段の検出値とに基づいて射出圧力及び速度のフィードバック制御を行う一方、樹脂が第2の圧力センサに到達してからは前記第2の圧力の目標値と第2の圧力センサの検出値及び前記記憶された射出速度と前記速度検出手段の検出値とに基づいて射出圧力及び速度のフィードバック制御を行うようにしたことを特徴とする射出成形機の射出圧力制御装置。
- 樹脂が第2の圧力センサに到達した時期は、前記第2の圧力センサで検出する検出値が所定値以上になったときとした請求項1記載の射出成形機の射出圧力制御装置。
- 樹脂が第2の圧力センサに到達した時期は、記憶されている前記第2の圧力の目標値が所定値以上になったときとした請求項1記載の射出成形機の射出圧力制御装置。
- 前記記憶された第1の圧力の目標値または前記第2の圧力の目標値を更に修正、編集する手段を有する請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の射出成形機の射出圧力制御装置。
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