JP3626281B2 - ペン型入力装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はペン型入力装置、特に筆跡検出の精度向上に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
人間の感性に適する入力装置として、ペン型入力装置が多数考案されている。一般にペン入力装置は、タブレット等のように情報機器側が筆記部の描いた軌跡(筆跡)を検出するものと、ペン型入力装置側に変換検出素子を設けて筆跡を抽出するものの2種類に大別される。そのうち後者のペン入力装置は、情報機器がない状況でもメモ内容を保持または伝送することができるという特徴がある。後者のペン入力装置としては、例えば特開平2−148213号公報に掲載された手書き文字入力装置、特開平5−278390号公報に掲載された記憶ペン、特開平6−67799号公報に掲載されたペン型のコンピュータ入力装置及び特開平7−110738号公報に掲載された手書き入力ペン装置等がある。
【0003】
特開平2−148213号公報に掲載された手書き文字入力装置は2つの加速度センサを用いて筆記部の筆跡を求めることにより通常の筆記具で紙に文字を書くような感覚で簡単に文字等を手書き入力できるようにしている。特開平5−278390号公報に掲載された記憶ペンはボ−ルペン芯で紙などに筆記すると共に、その筆跡を光学センサと応力センサの出力より筆跡検出回路で検出している。特開平6−67799号公報に掲載されたペン型のコンピュータ入力装置は加速度センサ、圧電振動ジャイロを用い、ペンの移動方向、移動量を検出している。特開平7−110738号公報に掲載された手書き入力ペン装置は筆記面上の基準点と表示面上の基準点を対応させることにより、筆記面と表示面が異なる場合の検出座標の精度低下を防止している。これらの装置はペン軸に対して垂直な方向の加速度を検出する加速度センサを互いに垂直になるように設置し、筆記部の描く筆跡を力学的に抽出しようというものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、加速度センサはオフセット値及び筆記部と筆記面との摩擦等によるノイズの影響を受けやすいため、例えば特開平2−148213号公報に掲載された手書き文字入力装置、特開平5−278390号公報に掲載された記憶ペン及び特開平7−110738号公報に掲載された手書き入力ペン装置のように加速度センサからの信号のみで筆跡を正確に抽出するのは困難である。例えば円形の図形を描いた場合、加速度センサが検出した加速度を用いて筆跡を抽出すると、実際の筆跡は図16(a)のように始点と終点付近が交わっているのに対し、抽出した筆跡は図16(b)のように交わりが無い場合がある等の誤差が生じる。
【0005】
また、特開平6−67799号公報に掲載されたペン型のコンピュータ入力装置のように、加速度センサ以外に圧電振動ジャイロを設置し、筆記部の回転を検出して筆跡抽出を補正すると座標変換にかかる計算量が大きくなるうえ、加速度センサのノイズ等の影響により、完全に筆跡抽出結果を補正することが困難であり、上記誤差を解消することができなかった。
【0006】
さらに、実際の筆跡のうち、「はね」及び「曲がり角」のように変化が滑らかでない箇所が存在すると、加速度センサ等の素子出力から正確な筆跡を抽出しにくくなる。
【0007】
この発明はかかる短所を解消するためになされたものであり、実際の入力図形と検出した図形とが異なる場合の両者の違いを少なくすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るペン型入力装置は、筆記部と筆記運動検出部と筆跡算出部と基準点検出部と筆跡補正部を有し、筆記部は被筆記面に接触し筆記し、筆記運動検出部は筆記部の運動成分を検出し、筆記算出部は筆記運動検出部が検出した筆記部の運動成分を基に筆記部の移動方向及び移動距離を検出して筆記部の筆跡を算出し、基準点検出部は被筆記面を調べて筆跡の曲率が急激に変化したか否か及び既に筆記した筆跡と筆記部が接触したか否かを検出し、筆跡補正部は筆跡算出部が算出した筆記部の筆跡を基準点検出部が検出した筆跡が急激に変化した点及び筆記部の筆跡の接触した点を補正基準点として補正して、コーナーが有る軌跡を正確に入力する。
【0009】
さらに、上記基準点検出部は被筆記面上の筆記部との接触位置近傍の画像を読み込み、読み込んだ画像を基に筆跡の曲率が急激に変化したか否か及び既に筆記した筆跡と筆記部が接触したか否かを検出して、簡単な構成で補正基準点を検出する。
【0010】
さらに、上記基準点検出部は筆記運動検出部が検出した筆記部の運動成分を基に筆跡の曲率が急激に変化したか否かを検出して、簡単な構成でコーナーを検出する。
【0011】
さらに、上記基準点検出部はペン軸をZ軸とした場合のZ軸方向の筆記部の変位を調べ、筆記面の凹凸を検出して既に筆記した筆跡と筆記部が接触したか否かを検出して、紙等の柔らかい被筆記面上に図形を描く場合に確実に筆跡の接触点を検出する。
【0012】
また、上記基準点検出部は筆記部に加わる圧力の変化を調べ、調べた圧力の変化を基に筆記面の凹凸を検出して既に筆記した筆跡と筆記部が接触したか否かを検出して、紙等の柔らかい被筆記面上に図形を描く場合に確実に筆跡の接触点を検出する。
【0013】
さらに、上記基準点検出部が既に筆記した筆跡と筆記部が接触したことを検出すると既に筆記した筆跡と筆記部との接触パターンを検出する接触パターン検出部を有し、筆跡補正部は筆跡算出部が算出した筆記部の筆跡を基準点検出部が検出した筆記部の筆跡の接触した点に関する情報及び接触パターン検出部が検出した接触パターンに関する情報を基に補正して、補正の精度を高める。
【0014】
さらに、上記基準点検出部が補正基準点を検出するとその補正基準点を中心として筆跡部の軌跡がなす角度を検出する角度検出部を有し、筆記補正部は筆跡算出部が算出した筆記部の筆跡を基準点検出部が検出した補正基準点に関する情報及び筆跡部の軌跡がなす角度に関する情報を基に補正して、筆跡の補正の精度を高める。
【0015】
【発明の実施の形態】
この発明のペン型入力装置は、例えば紙等に図形を筆記して、筆記した図形等をホスト装置等の外部装置に入力するものである。
【0016】
ペン型入力装置は、例えば筆記部と筆記運動検出部と筆跡算出部と記憶部と基準点検出部と筆跡補正部を有する。筆記部は、例えば鉛筆の芯又はボールペンの芯等を先端部に備え、紙などの被筆記面に図形等を描く。筆記運動検出部は、例えばペン軸をZ軸とした場合のZ軸と直交するX軸方向及びY軸方向の筆記部の加速度を検出する加速度センサを備え、筆記部の運動成分を検出する。筆記算出部は筆記運動検出部が検出した筆記部の運動成分を基に筆記部の移動方向及び移動距離を検出して筆記部の筆跡を算出する。例えば、筆記運動検出部が上記X軸方向及びY軸方向の加速度を検出したとすると、筆記算出部は筆記運動検出部が検出した加速度を2回積分して筆記部の移動方向及び移動距離を算出し、記憶部に記憶する。
【0017】
基準点検出部は、例えば筆記運動検出部が検出した加速度が急激に変化した点を検出して、被筆記面上の軌跡が急激に変化した点を検出する。これは、例えば筆記部がコーナーに差し掛かり別方向に切り返す場合、筆記部の動きが一瞬止まることを検出して、被筆記面上の軌跡が急激に変化した点を検出するものである。筆跡補正部は筆跡算出部が算出した筆記部の筆跡を基準点検出部が検出した筆跡が急激に変化する点の情報を基に補正する。これにより、実際の入力図形と検出した図形とが異なる場合にその違いを少なくすることができる。
【0018】
また、基準点検出部は、例えば受光部と基準点判断部を備えるようにしても良い。受光部は被筆記面と筆記部が接触している位置近傍からの反射光を入力して電気信号に変換する。基準点判断部は受光部が変換した電気信号を基に被筆記面上の軌跡が急激に変化したか否か及び筆跡が互いに接触したか否かを検出する。このように、実際の筆跡を読み取ることにより、コーナーの検出を正確に行うことができる。ここで、被筆記面上の軌跡が急激に変化した点及び筆跡が互いに接触した点の情報を基に筆跡補正部が筆跡を補正するので、それらの点を補正基準点という。
【0019】
また、例えば柔らかい被筆記面に図形を描く場合において、基準点検出部は、例えば変位センサと接触判断部を備えるようにしても良い。変位センサは、ペン軸をZ軸とした場合のZ軸方向の筆記部の変位を検出する。接触判断部は変位センサが検出した筆記部のZ軸方向の変位を基に筆記面の凹凸を検出して既に筆記した筆跡と筆記部が交わったか否かを検出する。これは柔らかい被筆記面に図形を描くと、被筆記面が凹むので、この凹みを検出して筆記した筆跡と筆記部が交わったか否かを検出するものである。ここで、変位センサとしては、例えば加速度センサを用いても良い。
【0020】
また、例えば柔らかい被筆記面に図形を描く場合において、基準点検出部は、例えば圧力センサと接触判断部を備えるようにしても良い。圧力センサは筆記部に加わる圧力の変化を検出する。接触判断部は圧力センサが検出した圧力の変化を基に被筆記面の凹みを検出して既に筆記した筆跡と筆記部が交わったか否かを検出する。これは、被筆記面が筆記により凹んでいると、筆記部の軌跡が交差する場合に筆記部に加わる圧力が変化することを利用するものである。
【0021】
さらに、基準点検出部は補正基準点及びその補正基準点を中心とした筆跡の変化の角度を検出するようにしても良い。ここで、角度の検出には、例えば予め定めたパターンと比較することにより行う。筆記補正部は筆跡算出部が算出した筆記部の筆跡を基準点検出部が検出した補正基準点及びその補正基準点を中心とした筆跡の変化の角度に関する情報を基に補正して、さらに正確に筆跡を補正することができる。
【0022】
【実施例】
図1はこの発明の一実施例のペン型入力装置1の構成図である。図に示すように、ペン型入力装置1は筆記部2、加速度センサ3a,3b,3c、基準点検出部4、演算部5、記憶部6及び電源部7を有する。筆記部2は、例えば鉛筆又はボールペン等の芯を備え、被筆記面に対して実際に筆記する。加速度センサ3a,3b,3cはペン軸8をZ軸とした場合X軸方向,Y軸方向及びZ軸方向の筆記部2の加速度を検出する。基準点検出部4は、例えば加速度センサ3a,3b,3cが検出した加速度が急激に変化した点を検出して、被筆記面上の軌跡が急激に変化した部分を検出する。以後、このように筆跡が急激に変化した角部分をコーナーという。これは、筆記部2がコーナーに差し掛かり別方向に切り返す場合、筆記部2の動きが一瞬止まることを検出して、被筆記面上の軌跡が急激に変化した点を検出するものである。例えば、図2(a)に示すような線を描いた場合は、筆記部2の加速度は図2(b)に示すようにコーナーAにおいて一定値になる。基準点検出部4はこの加速度が一定になる部分Aを基にコーナーを検出する。
【0023】
演算部5は、例えば図3に示すようにA/D変換器51a〜51c、筆跡算出部52、及び筆跡補正部53を備える。A/D変換器51a〜51cはそれぞれ加速度センサ3a,3b,3cからのアナログ信号をデジタル信号に変換する。筆跡算出部52は加速度センサ3a,3b,3cが検出した加速度を2回積分して筆記部2の移動方向及び移動距離を検出して筆記部2の描く筆跡を検出し、記憶部6に記憶する。筆跡補正部53は筆跡算出部52が算出した筆記部2の筆跡を基準点検出部4が検出した筆跡が急激に変化した点の情報を基に補正する。例えば、筆跡算出部52が算出した筆記部2の筆跡では筆記部2の軌跡にコーナーがないが、基準点検出部4がコーナーを検出した場合は、筆跡補正部53は筆跡算出部52が算出した筆記部2の筆跡を基準点検出部4が検出した点でコーナーを持つように補正する。ここで、筆跡の補正方法としては、例えばスプライン近似等の方法がある。
【0024】
上記構成のペン型入力装置1で紙の上に筆記する場合の動作について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0025】
筆記の開始の信号を入力すると(ステップS1)、ペン型入力装置1のサンプリング信号発生部(不図示)は、例えばサンプリングレート2kHzのサンプリング信号を出力する。加速度センサ3a,3b,3cはサンプリング信号発生部からの一定時間間隔のサンプリング信号を基にそれぞれX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の加速度を検出する(ステップS2)。筆跡算出部52は加速度センサ3a,3b,3cが検出した加速度を2回積分して筆記部2の移動方向及び移動距離を検出し、筆記部2の移動方向及び移動距離から筆記部2の描く筆跡を検出し、記憶部6に記憶する(ステップS3)。
【0026】
基準点検出部4は、加速度センサ3a,3b,3cが検出した加速度が急激に変化したか否かを検出して、コーナーの有無を検出する(ステップS4)。
【0027】
基準点検出部4がコーナーを検出すると、筆跡補正部53は筆跡算出部52が算出した筆記部2の筆跡を基準点検出部4が検出した点でコーナーを形成するように補正する(ステップS5)。例えば図5(a)に示すように点(hw(j))にコーナーを備える図を描いた場合に、筆跡算出部52が、図5(b)に示すようにコーナーを持たないn点からなる筆跡(hw(1),...,hw(n))を検出した場合を考える。この場合、基準点検出部4はj番目の点(1<j<n)で筆跡が急激に変化したことを検出するので、筆跡補正部53は、例えば図5(a)に示すように点(hw(j))でコーナーを形成するように補正処理を記憶部6に記憶した筆記部2の軌跡に対して施す。ペン型入力装置1は上記処理(ステップS2〜S5)を筆記が終了するまで繰り返し、軌跡が急激に変化する点がある場合にその点を基に検出した軌跡を補正するので、実際に入力した図形と検出した図形とが異なる場合にその違いを少なくすることができる。
【0028】
ここで、基準点検出部4は被筆記面上を調べて筆跡が急激に変化した点及びその筆跡が変化した角度を検出するようにしても良い。筆記補正部53は筆跡算出部52が算出した筆記部2の筆跡を基準点検出部4が検出した筆跡が急激に変化した点に関する情報及びその変化した角度に関する情報を基に補正して、さらに正確に変化が滑らかでない箇所を補正することができる。
【0029】
さらに、例えば図6に示すように基準点検出部4aは受光部41と基準点判断部42を備えるようにしても良い。受光部41は、例えばCCDセンサを備え、被筆記面と筆記部2が接触している位置近傍からの反射光を入力して電気信号に変換する。基準点判断部42は受光部41が変換した電気信号を基に被筆記面上の軌跡が急激に変化した点を検出する。このように、実際のコーナーを読み取ることにより、検出誤差を少なくしコーナーの検出を正確に行うことができる。
【0030】
また、図7に示すように基準点検出部4bは光照射部43と受光部41と基準点判断部42を備えても良い。光照射部43は筆記部2と被筆記面との接触位置近傍に光を照射する。基準点判断部42は受光部41が変換した電気信号を基に既に筆記した筆跡と筆記部2が接触したか否かを検出する。ここで、筆記部2は、鉛筆の芯又はボールペンの芯等で、紙等の上に実際に図形等を筆記するので、既に筆記した筆跡部分は筆記していない部分に比べて色が濃くなり反射光量が少なくなる。基準点検出部4bはこの反射光量の減少を検出して既に筆記した筆跡と筆記部2が交わったか否かを検出し、交わったことを検出した場合は「1」を出力し、交わっていないことを検出した場合は「0」を出力する。
【0031】
演算部5aはA/D変換器51a〜51c、筆跡算出部52、及び筆跡補正部53aを備える。A/D変換器51a〜51cはそれぞれ加速度センサ3a,3b,3cからのアナログ信号をデジタル信号に変換する。筆跡算出部52は加速度センサ3a,3b,3cが検出した加速度を2回積分して筆記部2の移動方向及び移動距離を検出して筆記部2の描く筆跡を検出し、記憶部6に記憶する。筆跡補正部53aは筆跡算出部52が算出した筆記部2の筆跡を記憶部6から読み出し、基準点検出部4bが検出した筆跡の接合点の有無の情報を基に補正する。例えば、筆跡算出部52が算出した筆記部2の筆跡では筆記部2の軌跡に交差する点がないが、基準点検出部4bが交差する点があることを検出した場合は、筆跡補正部53aは筆跡算出部52が算出した筆記部2の筆跡を基準点検出部4bが検出した交差する点で交差するように補正する。
【0032】
上記構成のペン型入力装置1で紙の上に筆記する場合の動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0033】
筆記の開始の信号を入力すると(ステップS11)、ペン型入力装置1bのサンプリング信号発生部(不図示)は、例えばサンプリングレート2kHzのサンプリング信号を出力する。加速度センサ3a,3b,3cはサンプリング信号発生部からの一定時間間隔のサンプリング信号を基にそれぞれX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の加速度を検出する(ステップS12)。筆跡算出部52は加速度センサ3a,3b,3cが検出した加速度を2回積分して筆記部2の移動方向及び移動距離を検出して筆記部2の描く筆跡を検出し、記憶部6に記憶する(ステップS13)。
【0034】
一方、受光部41は、サンプリング信号発生部からの一定時間間隔のサンプリング信号を基に筆記部2と被筆記面との接触位置近傍からの反射光を受光し、電気信号に変換する。基準点判断部42は今回受光部41が変換した電気信号を前回受光部41が変換した電気信号と比較し、その差を基に既に筆記した筆跡と筆記部2が接触したか否かを検出する(ステップS14)。
【0035】
基準点検出部4bの基準点判断部42が筆跡が交差したことを検出すると、筆跡補正部53aは筆跡算出部52が算出した筆記部2の筆跡を基準点検出部4bが検出した交差する点で交差するように補正する(ステップS15)。例えば図9(a)に示すように点Bで交わる図を描いた場合に、筆跡算出部52が、図9(b)に示すように交わりを持たないn点からなる筆跡(hw(1),...,hw(n))を検出した場合を考える。この場合、基準点検出部4bはj番目の点(1<j<n)で筆跡が交差したことを検出するので、筆跡補正部53aは、例えば図9(c)に示すように交差を検出した点(hw(j))と筆跡の始点(hw(1))を一致させるという補正処理を記憶部6に記憶した筆記部2の軌跡に対して施す。ここで、基準点検出部4bはj番目の点(1<j<n)で筆跡が交差したことを検出するが、hw(j)とどの点が交わるか分からないので、筆跡補正部53aは、基準点検出部4bが交差を検出した点(hw(j))と筆跡の始点(hw(1))を一致させるという補正処理を記憶部6に記憶した筆記部2の軌跡に対して施す。
【0036】
また、図9(a)に示すように点Bで交わる図を描いた場合に、筆跡算出部52が、図9(d)に示すように実際に交わる点(hw(j))よりも手前の点(hw(i))で交わり持つ筆跡を算出する場合もある。この場合、基準点検出部4bはi番目の点(1<i<n)で筆跡が交差していないことを検出するので、筆跡補正部53aは、記憶部6に記憶した筆記部2の軌跡に対して筆跡抽出結果をシフトさせて点(hw(j))で軌跡を交差させる補正処理を施す。ペン型入力装置1bは上記処理(ステップS12〜S15)を筆記が終了するまで繰り返し、軌跡が交差する点がある場合にその点を基に検出した軌跡を補正するので、実際に入力した図形と検出した図形とが異なる場合にその違いを少なくすることができる。
【0037】
また、被筆記面の筆跡を反射光を用いて検出する代わりに、図10に示すようにペン型入力装置1cを構成してを被筆記面上の凹凸を検出して被筆記面の筆跡を検出する用にしても良い。基準点検出部4cは、変位センサ45と基準点判断部42を備える。変位センサ45は筆記部2の上下動を検出する。接触判断部42は変位センサ45が検出した筆記部2の上下動を基に既に筆記した筆跡と筆記部2が接触したか否かを検出する。ここで、筆記部2は、鉛筆の芯又はボールペンの芯等で、紙等の上に実際に図形等を筆記するので、既に筆記した筆跡部分は筆記していない部分に比べて凹んでいる。基準点検出部4cはこの凹みを検出して既に筆記した筆跡と筆記部が交わったか否かを検出することができる。
【0038】
また、被筆記面の凹凸を筆記部2の上下動により検出する代わりに、図11及び図12に示すようにペン型入力装置1dを構成して筆記部2に加わる圧力を検出しても良い。基準点検出部4dは、圧力センサ46と基準点判断部42を備える。圧力センサ46は、例えば筆記部2の先端部で筆記部2に加わる圧力を検出する。基準点判断部42は、例えば圧力センサ46が検出した筆記部2に加わる圧力の変化を基に既に筆記した筆跡と筆記部2が接触したか否かを検出する。ここで、筆記部2は、鉛筆の芯又はボールペンの芯等で、紙等の上に実際に図形等を筆記するので、既に筆記した筆跡部分は筆記していない部分に比べて凹んでいる。基準点検出部4dはこの凹みを筆記部2が通過する場合の圧力の変化を検出して既に筆記した筆跡と筆記部が交わったか否かを検出することができる。
【0039】
また、上記実施例においては、被筆記面からの反射光、被筆記面の凹凸又は被筆記面からの圧力変化を用いて筆跡の交差等を検出したが、その他の方法、例えば筆記部2に磁気インクを用いた場合は磁気の変化を検出して筆跡の交差等を検出する等を用いても良い。
【0040】
また、図13に示すようにペン型入力装置1eは加速度センサ3a,3b,3c、基準点検出部4b、パターン記憶部541、演算部5b及び記憶部6を有しても良い。
【0041】
パターン検出部541は、例えば図14に示すような接触パターンを記憶する。演算部5bはA/D変換器51a,51b,51c、筆跡算出部52、接触パターン検出部54及び筆跡補正部53bを有する。接触パターン検出部54は基準点検出部4bが既に筆記した筆跡と筆記部2が接触したことを検出すると、パターン記憶部541に記憶した接触パターンを基に既に筆記した筆跡と筆記部2の接触パターンを検出する。ここで、接触パターン検出には、例えばテンプレートマッチング等の方法を用いる。
【0042】
筆跡補正部53bは筆跡算出部52が算出した筆記部2の筆跡を基準点検出部4bが検出した筆記部2の筆跡の交差に関する情報及び接触パターン検出部54が検出した接触パターンに関する情報を基に補正する。例えば、接触パターンを検出しないと、実際にはX型の接触をした筆跡をT型の接触をした筆跡に補正する場合が有りえるが、接触パターンを検出することにより、さらに正確に補正をすることができる。
【0043】
また、接触パターン検出部54は基準点検出部4bが被筆記面を既に筆記した筆跡と筆記部2が接触したことを検出すると既に筆記した筆跡と筆記部2が描いている線との交わる角度を検出しても良い。接触パターン検出部54は既に筆記した筆跡と筆記部2が描いている線とがなす角を、例えば図15に示すように1〜16にラベル付けした16方向のどれに最も近いかを検出し交差角度を求める。筆跡補正部53bは筆跡算出部52が算出した筆記部2の筆跡を基準点検出部4bが検出した筆記部2の筆跡の交差に関する情報及び接触パターン検出部54が検出した交差角度に関する情報を基に補正する。これにより、筆記部2が筆記した各線が交差する角を正確に再現でき、正確に補正することができる。
【0044】
さらに、接触パターン検出部54は基準点検出部4bが既に筆記した筆跡と筆記部2が接触したことを検出すると、パターン記憶部541に記憶した接触パターンを基に既に筆記した筆跡と筆記部2の接触パターン及び既に筆記した筆跡と筆記部2が描いている線との交わる角度を検出しても良い。これにより、筆跡補正部53bはさらに正確に筆跡を補正することができる。
【0045】
また、上記実施例では筆記運動検出部として加速度センサ3a,3b,3cを用いて筆記部2の運動成分を検出したが、加速度センサ3a,3b,3cを用いる代わりに歪ゲージ等を用いても良い。
【0046】
【発明の効果】
この発明は以上説明したように、被筆記面の筆記部近傍を調べて筆跡の曲率が急激に変化した点及び既に筆記した筆跡と筆記部が接触した点を検出し、検出した筆跡の曲率が急激に変化した点及び既に筆記した筆跡と筆記部が接触した点の情報を基に筆跡を補正するので、変化が滑らかでない箇所を正確に入力して入力精度を向上することができる。
【0047】
さらに、被筆記面上の筆記部との接触位置近傍の画像を読み込み、読み込んだ画像を基に補正基準点を検出するので、正確に補正基準点を検出できる。
【0048】
さらに、筆記部の運動成分を基に筆跡が急激に変化した点を検出するので、簡単な構成で筆跡が急激に変化した点を検出できる。
【0049】
また、ペン軸をZ軸とした場合のZ軸方向の筆記部の変位を基に既に筆記した筆跡と筆記部が接触したか否かを検出し、筆記部の筆跡補正するので、紙等の柔らかい被筆記面上に図形を描く場合の筆跡検出の精度を向上することができる。
【0050】
また、筆記部に加わる圧力の変化から既に筆記した筆跡と筆記部が接触したか否かを検出し、筆記部の筆跡を補正するので、紙等の柔らかい被筆記面上に図形を描く場合の筆跡検出の精度を簡単な構成で向上することができる。
【0051】
さらに、既に筆記した筆跡と筆記部が接触したことを検出すると既に筆記した筆跡と筆記部との接触パターンを検出し、筆記部の筆跡を検出した筆記部の筆跡の接触した点に関する情報及び接触パターンに関する情報を基に補正するので、補正の精度を高めることができる。
【0052】
さらに、補正基準点を検出するとその補正基準点を中心として軌跡が変化する角度を検出し、筆記部の筆跡を補正基準点に関する情報及びその補正基準点を中心として軌跡が変化する角度に関する情報を基に補正するので、補正の精度をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例を示す構成図である。
【図2】コーナーと加速度の関係を表わす説明図である。
【図3】演算部の構成図である。
【図4】筆記入力動作を示すフローチャートである。
【図5】実際の軌跡と算出した軌跡の違いの説明図である。
【図6】被筆記面からコーナーを読み出すペン型入力装置の構成図である。
【図7】基準点検出部を備えるペン型入力装置の構成図である。
【図8】接合点を基に筆跡を補正する動作を示すフローチャートである。
【図9】筆記形状の補正方法を示す説明図である。
【図10】筆記部の上下動を基に筆記形状を補正するペン型入力装置の構成図である。
【図11】筆記部の圧力変化を基に筆記形状を補正するペン型入力装置の構成図である。
【図12】筆記部の圧力変化を基に筆記形状を補正する演算部の構成図である。
【図13】パターン検出を行うペン型入力装置の構成図である。
【図14】パターン記憶部に記憶したパターン情報の構成図である。
【図15】角度パターンの構成図である。
【図16】従来の筆跡検出例を表わす説明図である。
【符号の説明】
1 ペン型入力装置
2 筆記部
3 加速度センサ
4 基準点検出部
41 受光部
42 基準点判断部
43 光照射部
45 変位センサ
46 圧力センサ
5 演算部
52 筆跡算出部
53 筆跡補正部
54 接触パターン検出部
6 記憶部

Claims (7)

  1. 筆記部と筆記運動検出部と筆跡算出部と基準点検出部と筆跡補正部を有し、筆記部は被筆記面に接触し筆記し、筆記運動検出部は筆記部の運動成分を検出し、筆記算出部は筆記運動検出部が検出した筆記部の運動成分を基に筆記部の移動方向及び移動距離を検出して筆記部の筆跡を算出し、基準点検出部は被筆記面を調べて筆跡の曲率が急激に変化したか否か及び既に筆記した筆跡と筆記部が接触したか否かを検出し、筆跡補正部は筆跡算出部が算出した筆記部の筆跡を基準点検出部が検出した筆跡が急激に変化した点及び筆記部の筆跡の接触した点を補正基準点として補正することを特徴とするペン型入力装置。
  2. 上記基準点検出部は被筆記面上の筆記部との接触位置近傍の画像を読み込み、読み込んだ画像を基に筆跡の曲率が急激に変化したか否か及び既に筆記した筆跡と筆記部が接触したか否かを検出する請求項1記載のペン型入力装置。
  3. 上記基準点検出部は筆記運動検出部が検出した筆記部の運動成分を基に筆跡の曲率が急激に変化したか否かを検出する請求項1記載のペン型入力装置。
  4. 上記基準点検出部はペン軸をZ軸とした場合のZ軸方向の筆記部の変位を調べ、筆記面の凹凸を検出して既に筆記した筆跡と筆記部が接触したか否かを検出する請求項1記載のペン型入力装置。
  5. 上記基準点検出部は筆記部に加わる圧力の変化を調べ、調べた圧力の変化を基に筆記面の凹凸を検出して既に筆記した筆跡と筆記部が接触したか否かを検出する請求項1記載のペン型入力装置。
  6. 上記基準点検出部が既に筆記した筆跡と筆記部が接触したことを検出すると既に筆記した筆跡と筆記部との接触パターンを検出する接触パターン検出部を有し、筆跡補正部は筆跡算出部が算出した筆記部の筆跡を基準点検出部が検出した筆記部の筆跡の接触した点に関する情報及び接触パターン検出部が検出した接触パターンに関する情報を基に補正する請求項1記載のペン型入力装置。
  7. 上記基準点検出部が補正基準点を検出するとその補正基準点を中心として筆跡部の軌跡がなす角度を検出する角度検出部を有し、筆記補正部は筆跡算出部が算出した筆記部の筆跡を基準点検出部が検出した補正基準点に関する情報及び筆跡部の軌跡がなす角度に関する情報を基に補正する請求項1記載のペン型入力装置。
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