JP3625088B2 - 半導体発光素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体発光素子に関し、特にAlGaInP系半導体材料を用いた半導体発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
AlGaInP系材料は、窒化物を除くIII−V族化合物半導体材料中で最大の直接遷移型バンドギャップを有し、0.5〜0.6μm帯の発光素子材科として注目されている。特に、GaAsを基板材料として用い、これに格子整合するAlGaInPからなる発光部を持つpn接合型発光ダイオード(LED)は、従来のGaPやGaAsP等の間接遷移型の材料を用いたものに比べ、赤色から緑色にまたがる波長領域での高輝度の発光が可能である。
【0003】
また、高輝度のLEDを実現するには、発光効率を高めることはもとより、素子内部での光吸収や、発光部と電極の相対位置関係等を考慮して、外部への有効な光取り出しを実現することが重要である。
【0004】
図14は、従来のAlGaInP発光部を有するLED(特開平4−229665号公報参照)の構造を示す断面図である。
【0005】
図において、201はpn接合発光ダイオード(LED)で、そのn−GaAs基板211上には、AlGaInP活性層213をn−AlGaInP下クラッド層212及びp−AlGaInP上クラッド層214により挟持してなる積層構造210が設けられており、この積層構造210は、ダブルヘテロ接合部を有し、該活性層213で発生した光が出射する発光部となっている。
【0006】
また該上クラッド層214の表面の中央部には、p−GaAsコンタクト層219が形成され、該コンタクト層219上には、AuZnからなるp型電極201bが設けられており、またn−GaAs基板211の裏面全面には、AuGeからなるn型電極201aが形成されている。
【0007】
また、このLED201では、上記活性層213のp型電極201b直下部分及びその周辺部分が発光領域240となっており、この部分に矢印Aで示すように動作電流が流れ込むようになっている。
【0008】
ところが、図14に示すような構造のLED201では、p−AlGaInP上クラッド層214の抵抗率が大きいため、該クラッド層中での電流の広がりはあまりない。このため、活性層213における発光領域240は、コンタクト層219および電極201bのほぼ直下部分のみとなる。つまりこのLED201では、素子外部に出射しようとする発光光が上記p型電極201bにより遮られることとなり、素子上面方向への光取り出し効率は非常に低いものとなっていた。
【0009】
このような問題点に対し、発光部210における電流分布を改善するために、発光部と光取り出し側の電極との間に電流を拡散させるための層を設けた素子構造が提案されている。
【0010】
例えば特開平4−229665号公報には、この素子構造を採用したLEDが開示されており、以下このLEDについて説明する。
【0011】
図15は該LEDを説明するための断面図であり、図において、202はpn接合発光ダイオード(LED)で、上記LED201と同様、そのn−GaAs基板221上には、AlGaInP活性層223をn−AlGaInP下クラッド層222及びp−AlGaInP上クラッド層224により挟持してなる積層構造210が設けられており、この積層構造220は、ダブルヘテロ接合部を有し、該活性層223で発生した光が出射する発光部となっている。
【0012】
そしてこのLED202では、上記発光部を構成する上クラッド層224の表面は、p−GaInPからなる中間バンドギャップ層(以下保護膜ともいう。)225により覆われており、該保護膜225の中央部分に、n−AlGaInPからなる電流阻止層226が配置されている。また上記保護膜225及び該電流阻止層226上には、p−AlGaAsからなる電流拡散層227が形成されており、該電流拡散層227の表面上に、該電流阻止層226に対向するようp−GaAsからなるコンタクト層229が配置され、このコンタクト層229上にはp型電極(AuZn)202bが設けられている。また、n−GaAs基板201の裏面全面には、AuGeからなるn型電極202aが形成されている。
【0013】
次にこのLED202の製造方法について説明する。
【0014】
まず、n−GaAs基板221上にn−AlGaInP下クラッド層222、AlGaInP活性層223、p−AlGaInP上クラッド層224、p−GaInP中間バンドギャップ層225、及びn−AlGaInP電流阻止層226を順次成長する。
【0015】
次に、n−AlGaInP電流阻止層226を選択エッチングによって例えば円形に加工する。次に、上記中間バンドギャップ層225及び電流阻止層226上にp−AlGaAs電流拡散層227およびp−GaAsコンタクト層229を順次成長する。
【0016】
そして、p−GaAsコンタクト層229上にはAuZnからなるp型電極202b、またn−GaAs基板151側にはAuGeからなるn−型電極202aを形成する。
【0017】
ここで、p型電極202bはレジストなどを用いたリフトオフ法またはエッチング法によりn−AlGaInP電流阻止層226の直上にのみ残るようパターニングされ、また、このP型電極以外の部分のp−GaAsコンタクト層229は、選択エッチングにより除去されている。
【0018】
このLED202では、p型電極202bから電流拡散層227へ注入された電流は、該電流拡散層227にて層方向に拡散され、さらに電流阻止層226によりその外側に広げられて、p−クラッド層224に注入される。したがって、活性層の、p型電極直下以外の広い範囲にまで発光領域を広げることができ、光の導出効率を向上させることができる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の半導体発光素子においては、電流拡散層には、GaAs基板との格子整合という観点から、Alを含むAlGaAsを用いていたため次のような問題点があった。
【0020】
第1の問題点として、(AlGa1−x1−yInP活性層のAl組成xが0.3である黄色発光素子(発光波長585〜590nm)の場合、AlGa1−xAs電流拡散層は、そのバンドギャップが活性層のバンドギャップ(2.2eV)よりも大きくなっており、活性層からの発光に対し透明となるにはAlGa1−xAsのAl組成xは0.7(バンドギャップでは2.38eV)以上に設定しなければならなかった。
【0021】
また、Alは化合物の中でも反応性が大きく、大気中の酸素などと結合しやすく、AlGa1−xAs電流拡散層中のAlの酸化が非常に大きな問題であった。AlGa1−xAs電流拡散層中のAlの酸素との結合による酸化により、電流拡散層の結晶性が低下し、深い準位の形成による光の吸収などが発生し、素子の特性に悪影響を与えていた。
【0022】
また、発光素子は屋外での表示などの用途も多く、特に屋外のような高温高湿の条件下での動作では、上記電流拡散層中のAlの存在に起因して輝度の低下や、信頼性の低下が顕著となるという問題がある。
【0023】
第2の問題点としては、(AlGa1−x1−yInP活性層のAl組成xが0.5である緑色発光素子(発光波長555nm)の場合、AlGa1−xAs電流拡散層で活性層からの光を吸収しないようにするには、Al組成xをさらに増加しなければならないが、Al組成が高くなってくると、その増加によってもバンドギャップはそれほど増加せず、Al組成の増加により、発光光の電流拡散層での吸収を低減することは困難なものとなっていた。
【0024】
第3の問題点は、Al組成xが0.7以上のAlGa1−xAs層では、Alと結合した酸素の影響により、Zn,Be,Mgなどのp型ドーパントのイオン化率が低いため、所望のキャリア濃度に設定するためには多量のp型ドーパントの供給を必要とする。このため、格子位置以外に多くのp型ドーパントが存在し、成長中にこれらのドーパントがクラッド層および活性層に拡散し、素子の特性の低下を招いていた。
【0025】
本発明は、上記のような従来の問題点を解決するためになされたもので、発光部における電流分布を改善するとともに、電流拡散層における光吸収や酸化を改善し、光の導出効率を向上した高輝度の半導体発光素子を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
そこで、本件発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、上記電流拡散層が、活性層からは少なくとも上クラッド層の厚さに相当する距離離れている点に着目し、電流拡散層の構成材料として基板材料(GaAs)と格子整合させるためAlGaAsを用いるという常識的な考えから離れて、その構成材料としてGaAsと格子整合しないものを用いることができることを見い出した。
【0027】
つまり、電流拡散層として、活性層のバンドギャップより大きくAlを含まない化合物半導体を用いることにより、上記課題を解決できることを見いだした。
【0028】
この発明(請求項1)に係る半導体発光素子は、第1導電型の化合物半導体基板と、該化合物半導体基板上に、少なくとも第1導電型のクラッド層、InGaAlPによって構成された活性層及び第2導電型のクラッド層を順次形成してなる発光部と、該発光部の所定領域上に配置された第1導電型のIn 1−y Ga P層(0≦y≦1)である電流阻止層と、該発光部及び第1導電型の電流阻止層上に形成された第2導電型の電流拡散層と、該電流拡散層上に該電流阻止層と対向するよう配置された光取り出し側電極とを備えている。
【0029】
上記電流阻止層は、該光取り出し側電極と発光部との間で電流の流れをブロックするものであり、該電流拡散層は、該光取り出し側電極と発光部との間で電流経路の断面積が、該発光部側に近づくほど広がるよう電流を拡散するものである。
【0030】
そして、上記電流拡散層は、該発光部を構成する半導体材料よりもバンドギャップの大きいAlを含まないGaP層によって構成されている。そのことにより、上記目的が達成される。
【0031】
この発明に(請求項2)に係る半導体発光素子は、第1導電型の化合物半導体基板と、該化合物半導体基板上に、少なくとも第1導電型のクラッド層、InGaAlPによって構成された活性層及び第2導電型のクラッド層を順次形成してなる発光部と、該発光部上に形成された第2導電型のInGaP層である第1の電流拡散層と、該第1の電流拡散層上に、該発光部の所定領域に対向するよう配置された第1導電型のIn 1−y Ga P層(0≦y≦1)である電流阻止層と、該第1の電流拡散層及び電流阻止層上に形成された第2導電型のである第2の電流拡散層と、該第2の電流拡散層上に該電流阻止層と対向するよう配置された光取り出し側の電極とを備えている。
【0032】
該電流阻止層は、該光取り出し側電極と発光部との間で電流の流れをブロックするものであり、該第1及び第2の電流拡散層はそれぞれ、該光取り出し側電極と発光部との間で電流経路の断面積が、該発光部側に近づくほど広がるよう電流を拡散するものである。
【0033】
そして、該電流拡散層は、該発光部を構成する半導体材料よりもバンドギャップの大きいAlを含まないGaP層によって構成されている。そのことにより上記目的が達成される。
【0034】
なお、参考例としての半導体発光素子は、第1導電型の化合物半導体基板と、該化合物半導体基板上に、少なくとも第1導電型のクラッド層、活性層及び第2導電型のクラッド層を順次形成してなる発光部と、該発光部の所定領域上に配置された第2導電型の電流阻止層と、該発光部及び該電流拡散層上に形成された第2導電型の電流拡散層と、該電流拡散層上に該電流阻止層と対向するよう配置された光取り出し側の電極とを備えている。
【0035】
上記電流阻止層は、該光取り出し側電極と発光部との間で電流の流れをブロックするものであり、該電流阻止層と該発光部との間には、該発光部と電流拡散層の間のヘテロバリアよりも大きなへテロバリアが形成されている。
【0036】
上記電流拡散層は、該光取り出し側電極と発光部との間で電流経路の断面積が、該発光部側に近づくほど広がるよう電流を拡散するものであり、該発光部を構成する半導体材料よりもバンドギャップの大きいAlを含まない化合物半導体から構成されている。そのことにより上記目的が達成される。
【0037】
また、参考例としての半導体発光素子は、第1導電型の化合物半導体基板と、該化合物半導体基板上に、少なくとも第1導電型のクラッド層、活性層及び第2導電型のクラッド層を順次形成してなる発光部と、該発光部上に形成された第2導電型の第1の電流拡散層と、該第1の電流拡散層上に、該発光部の所定の領域に対向するよう配置された第2導電型の電流阻止層と、該第1の電流拡散層及び電流阻止層上に形成された第2導電型の第2の電流拡散層と、該第2の電流拡散層上に該電流阻止層と対向するよう形成された光取り出し側の電極とを備えている。
【0038】
上記電流阻止層は、該光取り出し側電極と発光部との間で電流の流れをブロックするものであり、該電流阻止層と該発光部との間には、該発光部と電流拡散層の間のヘテロバリアよりも大きなへテロバリアが形成されている。
【0039】
上記第1及び第2の電流拡散層は、該光取り出し側電極と発光部との間で電流経路の断面積が、該発光部側に近づくほど広がるよう電流を拡散するものであり、該両電流拡散層は、該発光部を構成する半導体材料よりもバンドギャップの大きいAlを含まない化合物半導体から構成されている。そのことにより上記目的が達成される。
【0040】
さらに、参考例としての半導体発光素子は、第1導電型の化合物半導体基板と、該化合物半導体基板上に、少なくとも第1導電型のクラッド層、活性層及び第2導電型のクラッド層を順次形成してなる発光部と、該発光部の所定領域上に配置された電流阻止層と、該発光部及び電流阻止層上に形成された第2導電型の電流拡散層と、該電流拡散層上に該電流阻止層と対向するよう配置された光取り出し側の電極とを備えている。
【0041】
上記電流阻止層は、該光取り出し側電極と発光部との間で電流の流れをブロックするよう、該電流拡散層を構成する化合物半導体に比べてその抵抗を高くしたものである。
【0042】
上記電流拡散層は、該光取り出し側電極と発光部との間で電流経路の断面積が、該発光部側に近づくほど広がるよう電流を拡散するものであり、該発光部を構成する半導体材料よりもバンドギャップの大きいAlを含まない化合物半導体から構成されている。そのことにより上記目的が達成される。
【0043】
さらに、参考例としての半導体発光素子は、第1導電型の化合物半導体基板と、該化合物半導体基板上に、少なくとも第1導電型のクラッド層、活性層及び第2導電型のクラッド層を順次形成してなる発光部と、該発光部上に形成された第2導電型の第1の電流拡散層と、該第1の電流拡散層上に、該発光部の所定の領域に対向するよう配置された電流阻止層と、該第1の電流拡散層及び電流阻止層上に形成された第2導電型の第2の電流拡散層と、該第2の電流拡散層上に該電流阻止層と対向するよう形成された光取り出し側の電極とを備えている。
【0044】
上記電流阻止層は、該光取り出し側電極と発光部との間で電流の流れをブロックするよう、該電流拡散層を構成する化合物半導体に比べてその抵抗を高くしたものである。
【0045】
上記第1及び第2の電流拡散層はそれぞれ、該光取り出し側電極と発光部との間で電流経路の断面積が、該発光部側に近づくほど広がるよう電流を拡散するものであり、該両電流拡散層は、該発光部を構成する半導体材料よりもバンドギャップの大きいAlを含まない化合物半導体から構成されている。そのことにより上記目的が達成される。
【0046】
ここで、上記請求項1ないし6の半導体発光素子において、活性層は、(AlGa1−x1−yInP層(0≦x≦1,0≦y≦1)から構成されていることが好ましい。
【0047】
なお、参考例として、前記電流拡散層をGaP層から構成してもよい
【0048】
また、参考例として、前記電流拡散層を(ZnMg1−x)S1−ySe(0≦x≦1,0≦y≦1)層あるいはZnTe層から構成してもよい。
【0049】
さらに、参考例として、前記電流拡散層をGa1−yInN(0≦y≦1)層から構成してもよい。
【0050】
また、本発明では、前記電流素子層は、保護層上に設けられており、該保護層は、前記電流阻止層を構成する半導体材料に対するエッチング選択性を有するGaP層によって構成されていることが好ましい。
【0051】
また、参考例として、前記電流阻止層を、AlGa1−xAs(0≦x≦1)層あるいは(AlGa1−x1−yInP(0<x≦1,0<y≦1)層から構成し、前記保護層を、Ga1−yInP(0≦y≦1)層から構成してもよい。
【0052】
また、参考例として、前記電流拡散層を、前記発光部を構成する半導体材料よりバンドギャップの大きいAl組成が0.3以下の化合物半導体から構成してもよい。
【0053】
また、参考例として、前記電流拡散層を(AlGa1−x1−yInP(0<x≦0.3,0≦y≦1)層から構成してもよい。
【0054】
また、参考例として、前記電流拡散層を(AlGa1−x1−yInN(0<x≦0.3,0≦y≦1)層から構成してもよい。
【0055】
以下、本発明の作用について説明する。
【0056】
この発明(請求項1)においては、光取り出し側電極と発光部との間で、電流経路の断面積が該発光部側に近づくほど広がるよう電流を拡散する電流拡散層を備えているから、活性層の、電極直下以外の広域での発光が実現でき、光の導出効率を向上させ、半導体発光素子の高輝度化を図ることができる。
【0057】
また、電流拡散層を発光部よりもバンドギャップの大きい化合物半導体で構成しているため、活性層からの光が電流拡散層で吸収されることなく、より光の導出効率を向上させて、半導体発光素子のさらなる高輝度化を図ることができる。
また、上記電流拡散層がAlを含まないものとなっているため、電流拡散層が、GaAs基板と格子整合するAlGaAsからなる従来の発光素子に比べて、素子特性や信頼性の向上を図ることができる。
【0058】
つまり、従来の、電流拡散層にAlGaAs層を用いたLEDでは、Alは化合物の中でも反応性が大きく、大気中の酸素などと結合しやすく、AlGa1−xAs電流拡散層中のAlの酸化により、電流拡散層の結晶性が低下し、深い準位の形成による光の吸収など、素子の特性に悪影響を与えていた。また、発光素子は屋外での表示などの用途も多く、このような高温高湿の条件下での動作では輝度の低下や信頼性の低下が顕著なものとなる。
【0059】
これに対し、本発明では電流拡散層にはAlが含まれていないため、該電流拡散層の構成元素と酸素との反応がなく、酸素による素子の特性低下や信頼性の低下といった問題点を大幅に改善することができる。
【0060】
さらに、電流拡散層が活性層からは少なくとも上クラッド層の層厚に相当する距離離れていることから、電流拡散層を構成する化合物半導体が基板材料と格子整合していなくても、その活性層への影響はほとんどない。また活性層を薄く形成することにより、電流拡散層の構成材料と基板材料との格子不整合の活性層への影響をより小さいものとできる。
【0061】
この発明(請求項2)おいては、請求項1の構成に加えて、第2導電型の電流拡散層を2層にし、これらの間に第1導電型の電流阻止層を設けているため、電極側の電流拡散層で電極直下の電流阻止層の周辺部まで広がった電流が、発光部側の電流拡散層でさらに広がることになり、活性層における発光領域をより広げることもできる。
【0062】
なお、参考例として、電流阻止層を電流拡散層と同じ導電型の半導体層を用い、ヘテロバリアの違いを利用して電流を広げるようにすることにより、発光部上の各半導体層の形成を、全て同じ導電型の半導体層の結晶成長により行うことができ、製造工程を簡略化できるとともに、逆導電型の不純物の再拡散による悪影響を防ぐことが可能となる。
【0063】
さらに、本発明では、電流拡散層を2層にし、これらの間にヘテロバリアを利用した電流阻止層を設けることにより、電極側の電流拡散層で電極直下の電流阻止層の周辺部まで広がった電流が、発光部側の電流拡散層でさらに広がることになり、活性層における発光領域をより広げることができる。
【0064】
また、参考例として、高抵抗の電流阻止層により、より広域へ電流を広げることにより、活性層の、電極に対向する部分以外の広域での発光が実現でき、光の導出効率を向上させた高輝度の半導体発光素子が得られる。また、電流阻止層の導電型およびキャリア濃度を制御する必要がないため、製造工程を簡略化できるとともに、不純物の再拡散による悪影響を防ぐことが可能となる。
【0065】
さらに、参考例として、第2導電型の電流拡散層を2層にし、これらの間に高抵抗の電流阻止層を設けることにより、電極側の電流拡散層で電極直下の電流阻止層の周辺部まで広がった電流が、発光部側の電流拡散層でさらに広がることになり、活性層における発光領域をより広げることもできる。
【0066】
また、参考例として、電流拡散層をGaP層で構成することにより、GaP層は従来例のAlGaAsと違ってAlを含まないため、電流拡散層の構成元素と酸素との結合による酸化がなく、結晶性の低下や深い準位の形成による光の吸収などの素子特性の低下や高温高湿条件下での輝度の低下が大幅に改善され、大幅に信頼性を向上することができる。
【0067】
また、GaP層は従来例で用いたAlGaAsよりもバンドギャップが大きく、発光部からの発光の吸収を低減できるため、より光の導出効率を向上させ高輝度の半導体発光索子が得られる。加えて、GaP層は金属材料とのオーミック接触が可能であり、その表面上に直接電極を設けることができるため、従来例に設定されたコンタクト層が不要となって工程も少なくでき、大幅なコストの低減が実現できる。
【0068】
また、参考例として、電流拡散層を(ZnMg1−x)S1−ySe(0≦x≦1,0≦y≦1)層あるいはZnTe層で構成することにより、GaP層と同じく(ZnMg1−x)S1−ySe層は、従来のLEDのAlGaAs電流拡散層と違ってAlを含まない。このため、電流拡散層の構成元素の酸素との結合による酸化がなく、結晶性の低下や深い準位の形成による光の吸収などの素子特性の低下や高温高湿条件下での輝度の低下が大幅に改善され、大幅に信頼性を向上することができる。
【0069】
また、(ZnMg1−x)Sl−ySe層あるいはZnTe層では、GaP層よりもバンドギャップを大きくすることが可能であるため、発光部からの発光の吸収をさらに低減でき、さらに光の導出効率を向上させ高輝度の半導体発光素子が得られる。加えて、(ZnMg1−x)S1−ySe(0≦x≦1,0≦y≦1)あるいはZnTe層はGaAs基板および発光部との格子整合が可能なため、発光部への格子不整合による悪影響を及ぼさない。
【0070】
また、上記ZnMgSSe層あるいはZnTe層は成長温度が600°Cと低く、電流拡散層の形成処理の際に発光部での再拡散を抑えることができる。
【0071】
また、電流拡散層をGa1−yInN(0≦y≦1)層で構成することにより、Ga1−yInN(0≦y≦1)層はGaP層より、バンドギャップを大きくすることが可能であることから、発光部からの発光の吸収をさらに低減でき、より光の導出効率を向上させ高輝度の半導体発光素子が得られる。但し、Ga1−yInN層は、基板材料として用いられるGaAsとは格子整合せず、その成長温度も1000°Cと上記ZnMgSSe層の成長温度(600°C)より高い。
【0072】
また、本発明では、電流阻止層と発光部との間に保護層を設け、該保護層を、電流阻止層を構成する半導体材料に対するエッチング選択性を有するGaPから構成することにより、再成長前、つまり電流拡散層の成長前の(AlGa1−x1−yInPクラッド層の露出による酸化を防ぐとともに、電流阻止層のエッチング時に選択エッチングが可能となり、製造工程を大幅に簡略化できる。
【0073】
また、参考例として、前記電流阻止層を、AlGa1−xAs(0≦x≦1)層あるいは(AlGa1−x1−yInP(0<x≦1,0<y≦1)層から構成し、前記保護層を、Ga1−yInP(0≦y≦1)層から構成することにより、電流阻止層をエッチングするためのエッチャントとして、HPO等のリン酸系の溶液、硫酸と過酸化水素水との混合液(硫酸:H:HOを所定の比率に設定したもの)、あるいは王水(塩酸と硝酸の混合液)等を用いることにより、保護層と電流阻止層との間でエッチング速度に差が生じ、電流阻止層の選択エッチングを簡単に行うことができる。
【0074】
また、参考例として、電流拡散層を発光部よりもバンドギャップの大きいAl組成が0.3以下の化合物半導体で構成することにより、電流拡散層の酸化が比較的発生しにくく、信頼性の低下が起こりにくい。
【0075】
また、参考例として、電流拡散層を発光部よりもバンドギャップの大きいAl組成が0.3以下のAlGaInP層で構成することにより、上記と同様、電流拡散層が酸化されにくく、信頼性の低下が防げる。
【0076】
また、AlGaInP層はAl組成が0.3以下であっても従来例で用いたAlGaAsよりもバンドギャップを大きく設定することが可能であり、発光部からの発光の吸収を低減でき、このため光の導出効率を向上させた高輝度の半導体発光素子が得られる。加えて、AlGaInP層はGaAs基板および発光部と格子整合が可能なため、発光部への格子不整合による悪影響がない。
【0077】
また、参考例として、電流拡散層を、発光部よりもバンドギャップの大きいAl組成が0.3以下のAlGaInN層で構成することにより、電流拡散層を、その構成元素のAl組成が0.3以下であってもGaPよりもバンドギャップを大きいものとすることが可能であり、電流拡散層の酸化による悪影響を受けにくく、発光部からの発光の吸収をさらに低減でき、より光の導出効率を向上させて、より高輝度の半導体発光素子が得られる。
【0078】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による半導体発光素子を説明するための図であり、図1(a)〜図1(d)はそれぞれ該半導体発光素子の製造プロセスをその工程順に示す図である。
【0079】
図において、1001は本実施の形態1の半導体発光素子である発光ダイオードで、該発光ダイオード1001を構成するn型GaAs基板1上には、その表面上にn型下クラッド層2,活性層3,及びp型上クラッド層4を順次結晶成長してなる発光部3aが配置されており、該発光部3aはダブルヘテロ接合部を有し、該活性層3で発生した光が出射するようになっている。
【0080】
該発光部3aのp型上クラッド層4の表面は、p型保護層5により覆われており、該保護層5の表面の所定領域上にはn型GaP電流阻止層6が配置されている。また、この保護層5及び電流阻止層6上にはp型GaP電流拡散層7が形成されており、該電流拡散層7の表面には、上記電流阻止層6と対向するよう、AuZnからなるp型電極11が配置されている。該p型電極は、厳密には下側のAuZn層と上側のAu層の2層構造となっている。
【0081】
ここで、上記下クラッド層2,活性層3,及び上クラッド層4はそれぞれ、(AlGa1−x1−yInP(0≦x≦1,0≦y≦1)からなる。この下クラッド層2及び上クラッド層4では、例えばその組成比x,yがx=1.0,y=0.50、その層厚はともに1.0μmとなっており、下クラッド層2のドーパントSiのキャリア濃度、及び上クラッド層4のドーパントZnのキャリア濃度はともに、5×1017cm−3となっている。また、上記活性層3では、その組成比x,yはx=0.30,y=0.50、その層厚は0.50μmとなっている。
【0082】
さらに、上記保護層5は、例えば組成比y=0のp型Ga1−yInP(0≦y≦1)からなり、その層厚は0.1μm、そのドーパントZnのキャリア濃度は5×1018cm−3となっている。また、上記n型GaP電流阻止層6は、その層厚が0.3μm、そのドーパントSiのキャリア濃度は2×1018cm−3となっている。また、上記p型GaP電流拡散層7は、その層厚が5μm、そのドーパントZnのキャリア濃度は5×1018cm−3となっている。また、上記n型GaAs基板21の裏面にはAuGeからなるn型電極10が形成されている。
【0083】
次に製造方法について説明する。
【0084】
初めに、n型GaAs基板1上に、n型Al0.5In0.5Pをn型下クラッド層2として、Siキャリア濃度が5×1017cm−3となるよう厚さ1.0μm程度に成長する。続いて、(Al0.3Ga0.70.5In0.5Pを活性層3として0.50μm程度の厚さに形成し、さらにその上にp型Al0.5In0.5Pをp型上クラッド層4として、Znキャリア濃度が5×1017cm−3となるよう厚さ1μm程度に成長する。
【0085】
引き続き、該上クラッド層4上にp型GaPを保護層5として、Znキャリア濃度が5×1018cm−3となるよう厚さ0.1μm程度に成長し、さらにその上にn型GaPを電流阻止層6として、Siキャリア濃度が2×1018cm−3となるよう0.3μmの厚さに順次成長する(図1(a))。
【0086】
次に、n型GaP電流阻止層6上に所定のパターンを有するレジスト膜12を形成し、n型GaP電流阻止層6を、これが円形の平面パターンを持つよう選択的にエッチングする(図1(b))。
【0087】
このエッチング後、レジスト膜12を除去し(図1(c))、p型GaPを電流拡散層7として、Znキャリア濃度が5×1018cm−3となるよう5μm程度の厚さに成長する。その後、上記電流拡散層7上にAuZnからなるp型電極11を、基板裏面側にAuGeからなるn型電極10を形成する。
【0088】
次に、図1(d)に示すようにp型電極11を、上記電流阻止層6に対向して位置するよう、該電流阻止層6の平面パターンと同様円形に加工して、発光ダイオード1001を完成する。
【0089】
なお、ここでは、上記各半導体層の成長はMOCVD法より行ったが、半導体の成長方法は、MBE法やMOMBE法などどのような成長法でもよい。
【0090】
この実施の形態1では、電流拡散層7にAlを含まないGaP層を用いているため、従来例に対し、以下のような4つの改善効果があった。
【0091】
第1の効果として、GaP電流拡散層7にはAlが含まれていないため、Alの酸化による結晶性が低下がなく、素子の信頼性が大幅に改善された。
【0092】
第2の効果として、(AlGa1−x1−yInP活性層のAl組成xが0.5である緑色発光素子(発光波長555nm)の場合でも、GaP層はバンドギャップが活性層に比べて大きく、活性層からの発光に対し吸収が少なく、光の導出効率の増加により高輝度の半導体発光素子が得られた。
【0093】
第3の効果として、GaP層は、Al組成xが0.7以上のAlGa1−xAs層よりも、Zn,BeやMgなどのp型ドーパントのイオン化率が大きいため、格子位置以外に存在するp型ドーパントが減少し、成長中のこれらのドーパントの拡散が低減でき、素子の特性が大幅に改善された。
【0094】
第4の効果として、GaP層は直接電極を設けることができるため、従来のAlGaAs電流拡散層を用いたLEDで必要であったコンタクト層が不要となり、コンタクト層の成長工程とエッチング工程をなくして、電極の形成工程を簡略化でき、大幅なコストの低減が実現できた。
【0095】
本実施の形態1による半導体発光素子に順方向に電圧を印加し電流を流したところ、ピーク波長585nmで光度が5cdを越える発光が得られた。ちなみに従来のLEDでは、同一条件で発光の光度は1cdを越える程度であった。
【0096】
また、活性層の組成を(AlGa1−x1−yInP(x=0.50、y=0.50)としたところ、ピーク波長555nmでGaP層の光吸収低減効果により3cdを越える純緑色発光が得られた。ちなみに、従来のLEDでは、同一条件で、発光の光度が1cdを越える程度であった。
【0097】
(参考例1)
図2は参考例1による発光ダイオード(半導体発光素子)の断面構造を示す図である。図において、図1と同一符号は実施の形態1の発光ダイオード1001と同一のものを示し、1002は本参考例1の発光ダイオードで、上記実施の形態1の発光ダイオード1001とは、電流素子層26として、AlGaInP層を用いている点のみ異なっており、その他の構成は、該実施の形態1のものと同一である。
【0098】
そして、電流阻止層26は、n型(AlGa1−x1−yInP(0≦x≦1,0≦y≦1)から構成されており、ここでは、その組成比x,yはx=0.70,y=0.50、そのドーパントSiのキャリア濃度は2×1018cm−3、その層厚は0.3μmとなっている。
【0099】
このような構成の参考例1の発光ダイオード1002では、電流阻止層26に(AlGa1−x1−yInP(0≦x≦1,0≦y≦1)層を用いているので、上記実施の形態1の効果に加えて、以下の効果がある。
【0100】
つまり、上記電流阻止層26を構成するAlGaInPと、保護層25を構成するp型GaPとでは、エッチャントとして、HPO等のリン酸系の溶液、硫酸と過酸化水素水との混合液(硫酸:H:HOを所定の比率に設定したもの)、王水(塩酸と硝酸の混合液)等を用いることにより、若干エッチング速度に差が生じるため、選択エッチングが可能となり、製造工程が簡略化されるという効果がある。なお、上記エッチャントとしてのリン酸は、低温では、AlGaInPのエッチング速度がGaPのエッチング速度より速くなり、高温では、GaPのエッチング速度がAlGaInPのエッチング速度より速くなるという特性を有している。
【0101】
参考例2
図3は参考例2による発光ダイオード(半導体発光素子)の断面構造を示す図である。図において、図1と同一符号は実施の形態1の発光ダイオード1001と同一のものを示している。
【0102】
1003は参考例2の発光ダイオードで、このダイオード1003では、電流阻止層36として、AlGaAs層を用いており、また発光部33aは、活性層33として、厚さ0.5μmの(Al0.5Ga0.50.5In0.5P層を有している。その他の構成は、該実施の形態1のものと同一である。
【0103】
つまり、上記電流阻止層36は、n型AlGa1−xAs(0≦x≦1)から構成されており、ここでは、その組成比xはx=0.70、そのドーパントSiのキャリア濃度は2×1018cm−3、その層厚は0.3μmとなっている。
【0104】
このような構成の発光ダイオード1003では、電流阻止層36にAlGa1−xAs(0≦x≦1)層を用いているので、上記実施の形態1の効果に加えて、以下の効果がある。
【0105】
つまり、上記電流阻止層36を構成するAlGaAsと、保護層35を構成するp型GaPとでは、エッチャントとして、HPO等のリン酸系の溶液、硫酸と過酸化水素水との混合液(硫酸:H:HOを所定の比率に設定したもの)を用いることにより、エッチング速度に差が生じる。これは実施の形態2のAlGaInPとGaPとの間のエッチング速度の差よりも大きく、確実な選択エッチングが可能となり、製造工程がさらに簡略化されコストを低減できる効果がある。
【0106】
(参考例3)
図4は参考例3による発光ダイオード(半導体発光素子)の断面構造を示す図である。図において、図1と同一符号は実施の形態1の発光ダイオードと同一のものを示している。
【0107】
1004は参考例3の発光ダイオードで、この発光ダイオード1004では、保護層45にp型GaInP層を用いており、電流阻止層46としてn型AlGaInP層を用いている。その他の構成は実施の形態1の発光ダイオード1001と同一である。
【0108】
つまり、保護層45は、p型Ga1−yInP(0≦y≦1)から構成されており、ここでは、その組成比yはy=0.50、そのドーパントZnのキャリア濃度は5×1018cm−3、その層厚は0.1μmとなっている。
【0109】
また電流阻止層46は、厚さ0.3μmの(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pからなり、そのドーパントSiのキャリア濃度は2×1018cm−3となっている。このような構成の実施の形態4の発光ダイオード1004では、保護層45にp型Ga1−yInP(0≦y≦1)層を用いているので、上記実施の形態1の効果に加えて、以下の効果がある。
【0110】
上記保護層45を構成するGaInP層と、実施の形態1〜3で電流阻止層に用いた(AlGa1−x1−yInP層やAlGa1−xAsとの間では、エッチャントとして上記実施の形態2及び3で示したものを用いると、エッチング速度に差が生じる。この場合のエッチング速度の差は、実施の形態2,3の場合よりも大きく、保護層に対する電流阻止層の確実な選択エッチングが可能となり、製造工程がさらに簡略化され、コストを低減できる。
【0111】
なお、この参考例3では、保護層としてGaPを用いた実施の形態1とは異なり、本参考例3のGaInP層はその組成により活性層43の発光に対して吸収層となってしまう可能性があるが、十分に薄くすると吸収効果は小さくなるので、本参考例3では、その厚さを100オングストローム程度とした。
【0112】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2による発光ダイオード(半導体発光素子)の断面構造を示す図である。図において、図1と同一符号は実施の形態1の発光ダイオード1001と同一のものを示す。
【0113】
1005は本実施の形態2の発光ダイオードで、この発光ダイオード1005では、電流拡散層を2層構造とし、その間に電流阻止層を設けている。また、保護層55としてp型GaInP層を用い、電流阻止層56としてn型AlGaInP層を用いている。その他の構成は、該実施の形態1のものと同一である。
【0114】
すなわち、該発光部3a上には第1のp型GaP電流拡散層57が形成されており、その表面は、p型保護層55により覆われており、該保護層55の表面の所定領域上にはn型AlGaInP電流阻止層56が配置されている。また、この保護層55及び電流阻止層56上には第2のp型GaP電流拡散層58が形成されており、該電流拡散層58の表面には、上記電流阻止層56と対向するよう、AuZnからなるp型電極11が配置されている。
【0115】
ここで、上記第1及び第2の電流拡散層57,58の層厚はそれぞれ2,5μmとなっており、そのドーパントZnのキャリア濃度は5×1018cm−3である。また、保護層55は、p型Ga0.5In0.5Pからなり、その層厚は0.1μm、そのドーパントZnのキャリア濃度は5×1018cm−3となっている。また、電流阻止層56は、n型(AlGa1−x1−yInP(0≦x≦1,0≦y≦1)から構成されており、ここでは、その組成比xはx=0.70、y=0.50,そのドーパントSiのキャリア濃度は2×1018cm−3、その層厚は0.3μmとなっている。
【0116】
本実施の形態2による半導体発光素子に順方向に電圧を印加し電流を流したところ、ピーク波長585nmで光度が6cdを越える発光が得られた。
【0117】
また、活性層の組成を(AlGa1−x1−yInP(x=0.50,y=0.50)としたところ、ピーク波長555nmで4cdを越える純緑色発光が得られた。
【0118】
このような構成の発光ダイオードでは、電流拡散層を2層構造とし、その間に電流阻止層を設けたので、上記実施の形態1の効果に加えて、第2の電流拡散層で電極直下の電流阻止層の周辺部まで広がった電流が、第1の電流拡散層でさらに広がることになり、発光領域をさらに広げることができる効果がある。
【0119】
(参考例4)
図6は参考例4による発光ダイオード(半導体発光素子)の断面構造を示す図である。図において、図1と同一符号は実施の形態1の発光ダイオード1001と同一のものを示し、1006は本参考例4の発光ダイオードで、この発光ダイオード1006では、電流阻止層66と上クラッド層4との間に形成されるヘテロバリアの大きさと、電流拡散層7と上クラッド層4との間に形成されるヘテロバリアの大きさの違いにより、該電流阻止層66にて電流を阻止する構造としている。またここでは、上記上クラッド層4の表面を被覆する保護層は設けていない。その他の構成は、該実施の形態1のものと同一である。
【0120】
すなわち、発光部3aのp型上クラッド層4の表面の所定領域上にはp型GaAs電流阻止層66及びp型AlGaInP電流阻止層68が配置されている。また、上記上クラッド層4及び電流阻止層68上にはp型GaP電流拡散層7が形成されており、該電流拡散層7の表面には、上記電流阻止層66,68と対向するよう、AuZnからなるp型電極11が配置されている。
【0121】
ここでは、上記p型GaAs電流阻止層66は、ドーパントZnのキャリア濃度が1×1017cm−3、その層厚が0.3μmとなっている。また上記p型AlGaInP電流阻止層68は、(AlGa1−x1−yInP層からなり、その組成比x,yがx=0.7,y=0.5、そのドーパントZnのキャリア濃度が1×1017cm−3、その層厚が0.3μmとなっている。
【0122】
このような構成の本参考例の半導体発光素子では、電流阻止層66を構成するp型GaAs層と、上クラッド層4を構成するAlGaInP層との界面部分には、価電子帯側に大きなバンド不連続(ヘテロバリア)が生じており、このへテロ不連続は、上クラッド層4の、電流阻止層がない領域でのAlGaInP層と、電流拡散層を構成するGaP層とのヘテロ不連続よりも大きい。
【0123】
本発光ダイオードでは、このようなバンド不連続構造を利用して、発光に供する電流を、発生層のより広域に広げることができ、これにより広域での発光が実現でき、光の導出効率を向上させた高輝度の半導体発光素子が得られる。
【0124】
また、この参考例では、GaAs電流阻止層66とAlGaInP電流阻止層68がともにp型に設定できるため、発光部上の各半導体層を全て同じ導電型の半導体結晶の成長により形成でき、製造工程を簡略化できるとともに、p型上クラッド層4への逆導電型の不純物の拡散による素子特性への影響を防ぐことが可能となる。
【0125】
また、この参考例では、ヘテロバリアを利用した電流阻止層を、p型GaAs電流阻止層66上にさらにAlGaInP電流阻止層68を形成した2層構造としているため、電流阻止層の配置部分での電流のブロック効果が1層構造の電流阻止層と比べて大きくなる。
【0126】
(参考例5)
図7は参考例5による発光ダイオード(半導体発光素子)の断面構造を示す図である。図において、図1と同一符号は実施の形態1の発光ダイオード1001と同一のものを示している。
【0127】
1007は参考例5の発光ダイオードで、この発光ダイオード1007では、発光部3aを構成する上クラッド層4上にAlGaP保護層75を形成し、該保護層表面の電極11に対応する領域にAlGaAs電流阻止層76を設け、保護層75と電流阻止層76と間に、該保護層75と電流拡散層7との間のヘテロバリアよりも大きなヘテロバリアを形成されている。その他の構成は実施の形態1のものと同一である。
【0128】
つまり、上記保護層75は、p型AlGa1−xP(0≦x≦1)からなり、組成比xは0.5、層厚は0.1μm、そのドーパントZnのキャリア濃度は、5×1018cm−3となっている。また上記電流阻止層76は、p型AlGa1−xAs(0≦x≦1)からなり、その組成比xは0.7、そのドーパントZnのキャリア濃度は1×1017cm−3、その層厚は0.3μmとなっている。
【0129】
このように参考例5では、発光部3a上の電流阻止層76が存在する領域では、電流阻止層76を構成するAlGa1−xAsと、保護層75を構成するAlGa1−xPとを、これらの間にヘテロ接合が形成されるようにした場合、価電子帯側に大きなバンド不連続(ヘテロバリア)が生じる。このヘテロ不連続は組成により、発光部3a上の電流阻止層がない領域での、電流拡散層7を構成するGaP層と保護層75を構成するAlGa1−xP層との間のヘテロ不連続よりも大きくすることができる。本発光ダイオードでは、このようなヘテロ接合面でのバンド不連続の大きさの違いを利用して、活性層に供給される電流を、その広い範囲に広げることができ、広域での発光が実現でき、光の導出効率を向上させた高輝度の半導体発光素子が得られる。
【0130】
また、本参考例5では、電流阻止層76がp型に設定できるため、発光部上には全て同じ導電型の半導体層を結晶成長すればよく、製造工程を簡略化できるとともに、p型上クラッド層への逆導電型の不純物の再拡散による悪影響を防ぐことが可能となる。
【0131】
(参考例6)
図8は参考例6による発光ダイオード(半導体発光素子)の断面構造を示す図である。図において、図6と同一符号は図6に示す発光ダイオード1006と同一のものを示す。
【0132】
1008は本参考例6の発光ダイオードで、この発光ダイオード1008では、電流拡散層を2層構造とし、その間に電流阻止層を設けている。その他の構成は、図6の発光ダイオード1006と同一である。
【0133】
すなわち、発光部3aを構成するp型上クラッド層4上には、第1のGaP電流拡散層87aが形成されており、該電流拡散層87aの表面の所定領域上にはp型GaAs電流阻止層66及びp型(Al0.7Ga0.30.5In0.5P電流阻止層68が配置されている。また、上記第1の電流拡散層87a及び該p型AlGaInP電流阻止層88上には、第2のp型GaP電流拡散層87bが形成されており、該電流拡散層87の表面には、上記電流阻止層66,68と対向するよう、AuZnからなるp型電極11が配置されている。
【0134】
ここで、上記第1の電流拡散層87a及び第2の電流拡散層87bの層厚はそれぞれ2.5μmとなっており、そのドーパントZnのキャリア濃度はそれぞれ5×1018cm−3となっている。
【0135】
この参考例6では、図6の構成に加えて、電流拡散層を2層構造とし、その間に電流阻止層66,68を設けたので、第2の電流拡散層87bで電極直下の電流阻止層66,68の周辺部まで広がった電流が、第1の電流拡散層87aでさらに広がることになり、発光領域をより広げることができる効果がある。
【0136】
(参考例7)
図9は参考例7による発光ダイオード(半導体発光素子)の断面構造を示す図である。図において、図1と同一符号は実施の形態1の発光ダイオード1001と同一のものを示している。
【0137】
1009は参考例7の発光ダイオードで、電流素子層96を高抵抗としており、また、保護層95として、GaInP層を用いている。その他の構成は実施の形態1の発光ダイオード1001と同一である。
【0138】
つまり、保護層95はp型Ga1−yInP層から構成されており、その組成比yはy=0.5、そのドーパントZnのキャリア濃度は5×1018cm−3、その層厚は0.1μmとなっている。
【0139】
また、p型電流阻止層96は、(AlGa1−x1−yInP層(0≦x≦1,0≦y≦1)層から構成されており、その組成比x,yは、x=0,y=0となっている。
【0140】
ここで、電流阻止層96を高抵抗とする方法としては、不純物をドープしない方法や深い準位を形成しやすい不純物をドープする方法もあるが、成長条件との組み合わせにより適した方法を用いることができる。本実施の形態9では不純物をドープせずに成長温度を600℃とすることで電流阻止層96を高抵抗とすることができた。
【0141】
本参考例7では、上記電流拡散層96を利用して、電流阻止層の外側へ電流を広げることができるため、活性層の、電極の配置部分に対応する領域以外の広域での発光が実現でき、光の導出効率を向上させた高輝度の半導体発光素子が得られる。
【0142】
また、この参考例では、電流阻止層96の導電型やキャリア濃度の制御が不要であるため、成長プロセスの簡略化が実現できる。
【0143】
(参考例8)
図10は参考例8による発光ダイオード(半導体発光素子)の断面構造を示す図である。図において、図9と同一符号は図9の発光ダイオード1009と同一のものを示す。
【0144】
1010は本参考例8の発光ダイオードで、この発光ダイオード1010では、電流拡散層を2層構造とし、その間に電流阻止層を設けている。その他の構成は、図9の発光ダイオード1009と同一である。
【0145】
すなわち、発光部3aを構成するp型上クラッド層4上には、第1のGaP電流拡散層107aが形成されており、電流拡散層107aの表面はp型保護層95により覆われている。該保護層95の表面の所定領域上には、高抵抗GaP電流阻止層96が配置されている。また、上記保護層95及び電流阻止層96上には、第2のp型GaP電流拡散層107bが形成されており、該電流拡散層107bの表面には、上記電流阻止層96と対向するよう、AuZnからなるp型電極111が配置されている。
【0146】
ここで、上記第1の電流拡散層107a及び第2の電流拡散層107bの層厚はそれぞれ2.5μmとなっており、そのドーパントZnのキャリア濃度はそれぞれ5×1018cm−3となっている。
【0147】
この参考例8では、高抵抗の電流阻止層96により、該電流阻止層96の外側に電流を広げる効果は図9の発光ダイオードと同じである。そして、図9に示す発光ダイオードの効果に加えて、電流拡散層を2層構造とし、その間に電流阻止層96を設けているため、第2の電流拡散層107bで電極直下の電流阻止層の周辺部まで広がった電流が、第1の電流拡散層107aでさらに広がることになり、活性層における発光領域をより広げることができる効果がある。
【0148】
(参考例9)
図11は参考例9による発光ダイオード(半導体発光素子)の断面構造を示す図である。図において、図1と同一符号は実施の形態1の発光ダイオード1001と同一のものを示す。
【0149】
1011は本参考例9の発光ダイオードで、この発光ダイオード1011では、電流拡散層117として、ZnMgSSe層を用いており、該電流拡散層117上にはp型ZnTeコンタクト層119を介して、AuZnからなるp型電極11が設けられている。その他の構成は実施の形態1に示すものと同一である。
【0150】
つまり、電流拡散層117は、(ZnMg1−x)S1−ySe(0≦x≦1,0≦y≦1)層から構成されており、その組成比x,yはx=0.85、y=0.85、ドーパントZnのキャリア濃度は1×1018cm−3、層厚は5μmとなっている。
【0151】
また、上記p型ZnTeコンタクト層119は、そのドーパントN(窒素)のキャリア濃度は1×1018cm−3、層厚は0.5μmとなっている。
【0152】
参考例による半導体発光素子に順方向に電圧を印加し電流を流したところ、ピーク波長585nmで光度が7cdを越える発光が得られた。
【0153】
また、活性層の組成を(AlGa1−x1−yInP(x=0.50、y=0.50)としたところ、ピーク波長555nmで5cdを越える純緑色発光が得られた。
【0154】
本参考例9では、電流拡散層117として、(ZnMg1−x)S1−ySe(0≦x≦1,0≦y≦1)層を用いたので、GaP層と同様にAlを含まないため、電流拡散層の酸化がない。また組成により実施の形態1のGaP電流拡散層よりもバンドギャップを大きくでき、このため、電流拡散層での、活性層からの発光の吸収をさらに少なくでき、光の導出効率の増加により高輝度の半導体発光素子が得られた。
【0155】
加えて、(ZnMg1−x)S1−ySe(0≦x≦1,0≦y≦1)はGaAs基板および発光部との格子整合が可能なため、発光部への格子不整合による悪影響を及ぼさない。
【0156】
また、上記ZnMgSSe層は成長温度が600°Cと低く、電流拡散層の形成処理の際に発光部での再拡散を抑えることができる。
【0157】
なお、この参考例9では、電流拡散層としてZnMgSSe層を用いたものを示したが、該電流拡散層としては、ZnTe層を用いてもよく、この場合も上記参考例9と同様の効果が得られる。
【0158】
(参考例10)
図12は参考例10による発光ダイオード(半導体発光素子)の断面構造を示す図である。図において、図1と同一符号は実施の形態1の発光ダイオード1001と同一のものを示す。
【0159】
1012は本参考例9の発光ダイオードで、上記実施の形態1の発光ダイオード1001とは、電流拡散層127をn型GaN層から構成している点で異なり、その他の層の構成は実施の形態1と同一である。
【0160】
上記電流拡散層127は、p型Ga1−yInN層(0≦y≦1)からなり、例えばその組成yはy=0であり、そのドーパントZnのキャリア濃度は1×1018cm−3、その層厚は5μmである。
【0161】
本参考例による半導体発光素子に順方向に電圧を印加し電流を流したところ、ピーク波長585nmで光度が7cdを越える発光が得られた。
【0162】
また、活性層の組成を(AlGa1−x1−yInP(x=0.50、y=0.50)としたところ、ピーク波長555nmで5cdを越える純緑色発光が得られた。
【0163】
この参考例10では、電流拡散層127にGa1−yInN層(0≦y≦1)層を用いたので、組成により実施の形態1のGaP層よりもバンドギャップを大きくでき、このため、活性層からの発光の電流拡散層での吸収を少なくでき、光の導出効率の増加により高輝度の半導体発光素子が得られた。
【0164】
また、電流拡散層に、(AlGa1−x1−yInN層(0<x≦0.3,0≦y≦1)層を用いても、Al組成が0.3以下ならば酸化はほとんどなく、また、バンドギャップを大きくできるため、活性層からの発光に対しさらに吸収が少なくでき、光の導出効率の増加により高輝度の半導体発光素子が得られた。
【0165】
加えて、GaN電流拡散層ではコンタクト層が不要なため、コンタクト層の成長工程やエッチング工程をなくして、電極の形成プロセスを簡略化できる。
【0166】
(参考例11)
図13は参考例11による発光ダイオード(半導体発光素子)の断面構造を示す図である。図において、図1と同一符号は実施の形態1の発光ダイオード1001と同一のものを示す。
【0167】
1013は本参考例11の発光ダイオードで、この発光ダイオード1013では、電流拡散層137に、発光部3aを構成する化合物半導体材料よりもバンドギャップの大きいAl組成が0.3以下の(AlGa1−x1−yInP層(0<x≦0.3,0≦y≦1)層を用いている。また、該電流拡散層137上には、p型GaAsコンタクト層139を介して、AuZnからなるp型電極11が配置されている。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0168】
上記電流拡散層137は、p型(AlGa1−x1−yInP層(0<x≦0.3,0≦y≦1)から構成されており、その組成比x,yはx=0.1、y=0.1、ドーパントZnのキャリア濃度は5×1018cm−3、その層厚は5μmとなっている。また、上記p型GaAsコンタクト層139は、そのドーパントZnのキャリア濃度は5×1018cm−3、その層厚は0.5μmとなっている。
【0169】
この参考例11では、電流拡散層137に(AlGa1−x1−yInP層(0<x≦0.3,0≦y≦1)層を用いたので、組成により実施の形態1のGaP電流拡散層よりもバンドギャップを大きくでき、このため、活性層からの発光の電流拡散層での吸収をさらに少なくでき、光の導出効率の増加により高輝度の半導体発光索子が得られた。
【0170】
また、上記電流拡散層では、Al組成が0.3以下ならば酸化はほとんどなく、信頼性の高い高輝度の半導体発光素子が得られた。
【0171】
なお、本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では活性層のAl組成として0.3あるいは0.5を用いたが、Al組成を変化させることによって赤色から緑色域に渡る可視光領域の発光を得ることができる。したがって、Al組成は変化させても本発明の効果があるのは言うまでもない。これは他のクラッド層、電流阻止層、電流拡散層についても同様である。
【0172】
また、電流拡散層を構成する化合物半導体材料は、活性層よりもバンドギャップが大きく、Alを含まない化合物半導体、あるいはAl組成が0.3以下の化合物半導体であれば、他の材料でもよい。
【0173】
また、電流阻止層はバンドギャップが活性層よりも大きいことが望ましいが、これに制限されることなく、他の材料でもよい。
【0174】
また、上記各実施の形態では基板はn型としたが、基板をp型とし、発光ダイオードを構成する各半導体層を上記各実施の形態とは逆の導電型としてもよい。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、種種変形して実施することができる。
【0175】
【発明の効果】
以上のように本発明(請求項1)に係る半導体発光素子によれば、活性層の、電極直下以外の広域での発光を実現することができ、光の導出効率を向上させ高輝度の半導体発光素子が得られる。
【0176】
また、電流拡散層を発光部よりもバンドギャップの大きい化合物半導体で構成しているため、活性層からの光が電流拡散層で吸収されることなく、半導体発光素子のさらなる高輝度化を図ることができる。
【0177】
また、電流拡散層には構成元素としてAlを含まないため、電流拡散層の酸化がなく、従来のAlGaAs電流拡散層を用いた素子に比べて信頼性の向上を図ることができる。
【0178】
本発明(請求項2)によれば、請求項1の半導体発光索子の構成に加えて、第2導電型の電流拡散層を2層にし、これらの間に第1導電型の電流阻止層を設けているので、電極側の電流拡散層で電極直下の電流阻止層の周辺部まで広がった電流が、発光部側の電流拡散層でさらに広がることになり、発光領域をより広げることができる効果もある。
【0179】
また、電流阻止層として、電流拡散層と同じ導電型の半導体層を用い、ヘテロバリアの違いを利用して電流を阻止する構成とすることにより、発光部上の各半導体層を、全て同じ導電型の半導体結晶の成長により形成することができ、これにより製造工程を簡略化できるとともに、既に成長した半導体層への逆導電型の不純物の再拡散による悪影響を防ぐことが可能となる。
【0180】
さらに、第2導電型の電流拡散層を2層にし、これらの間にヘテロバリアの違いを利用して電流を阻止する電流阻止層を設けることにより、電極側の電流拡散層で電極直下の電流阻止層の周辺部まで広がった電流が、発光部側の電流拡散層でさらに広がることになり、発光領域をより広げることができる効果もある。
【0181】
また、電流阻止層を高抵抗層から構成することにより、電流阻止層の導電型およびキャリア濃度を制御する必要がなく、このため製造工程を簡略化できるとともに、既に成長された半導体層に、該電流阻止層の導電型を決定するための不純物が再拡散することによる悪影響を防ぐことが可能となる。
【0182】
さらに、第2導電型の電流拡散層を2層にし、これらの間に高抵抗の電流阻止層を設けることにより、電極側の電流拡散層で電極直下の電流阻止層の周辺部まで広がった電流が、発光部側の電流拡散層でさらに広がることになり、発光領域をより広げることができる効果もある。
【0183】
さらに、電流拡散層をGaP層で構成しているので、該電流拡散層がAlを含まないものとなることから、電流拡散層の酸化による信頼性の低下がなく、大幅に信頼性を改善することができる。また、GaP層は従来例のLEDで電流拡散層として用いているAlGaAsよりもバンドギャップが大きく、発光部からの発光の吸収を低減できるため、より光の導出効率を向上させ高輝度の半導体発光素子が得られる。加えて、GaP層は直接電極を設けることができるため、従来例に設定されたコンタクト層が不要となって工程も少なくでき、大幅なコストの低減が実現できる。
【0184】
また、電流拡散層を(ZnMg1−x)S1−ySe(0≦x≦1,0≦y≦1)層あるいはZnTe層で構成しているので、該電流拡散層が上記請求項7と同様Alを含まないものとなるため、酸化による信頼性の低下がなく、大幅に信頼性を改善することができる。また、(ZnMg1−x)S1−ySe層あるいはZnTe層はGaP層よりもバンドギャップを大きくすることが可能であるため、発光部からの発光の吸収をさらに低減でき、これにより高輝度の半導体発光素子が得られる。加えて、(ZnMg1−x)S1−ySe層あるいはZnTe層はGaAs基板および発光部と格子整合が可能なため、発光部への格子不整合による悪影響を回避できる。
【0185】
さらに、電流拡散層をGa1−yInN(0≦y≦1)層で構成することにより、電流拡散層がAlを含まないものとなるため、電流拡散層の酸化による信頼性の低下がなく、大幅に信頼性を改善することができる。また、Ga1−yInN層はGaP層よりもバンドギャップを大きくすることが可能であるため、発光部からの発光の吸収をさらに低減でき、高輝度の半導体発光素子が得られる。
【0186】
また、電流阻止層と発光部との間に、Ga1−yInP保護層(0≦y≦1)を設けることにより、再成長前の(AlGa1−x1−yInPクラッド層の露出による酸化を防ぐとともに、電流阻止層のエッチング時に選択エッチングが可能となり、製造工程を大幅に簡略化できる。
【0187】
さらに、前記電流阻止層を、AlGa1−xAs(0≦x≦1)層あるいは(AlGa1−x1−yInP(0<x≦1,0<y≦1)層から構成し、前記保護層を、Ga1−yInP(0≦y≦1)層から構成することにより、電流阻止層をエッチングするためのエッチャントとして、HPO等のリン酸系の溶液、硫酸と過酸化水素水との混合液(硫酸:H:HOを所定の比率に設定したもの)、あるいは王水(塩酸と硝酸の混合液)等を用いることにより、保護層と電流阻止層との間でエッチング速度に差が生じ、電流阻止層の選択エッチングを簡単に行うことができる。
【0188】
また、流拡散層を発光部よりもバンドギャップの大きいAl組成が0.3以下の化合物半導体で構成することにより、Alを含んだ電流拡散層は比較的その酸化が発生しにくいものとなり、素子の信頼性の低下が起こりにくいという効果がある。
【0189】
また、電流拡散層を発光部よりもバンドギャップの大きいAl組成が0.3以下のAlGaInP層で構成することにより、電流拡散層は酸化されにくいものとなり、信頼性の低下が防げる。
【0190】
また、AlGaInP層はAl組成が0.3以下であっても従来のLEDで電流拡散層として用いたAlGaAsよりもバンドギャップを大きく設定することが可能であり、発光部からの発光の吸収を低減でき、これにより光の導出効率を向上させて、高輝度の半導体発光素子を得ることができる。加えて、AlGaInP層はGaAs基板および発光部と格子整合が可能なため、発光部への格子不整合による悪影響がないという効果がある。
【0191】
さらに、電流拡散層を発光部よりもバンドギャップの大きいAl組成が0.3以下のAlGaInN層により構成することにより、電流拡散層を構成する化合物半導体のAl組成が0.3以下であっても、GaPよりもバンドギャップを大きくすることが可能であり、電流拡散層の酸化抑制に加えて、電流拡散層での発光部からの発光の吸収をさらに低減でき、より光の導出効率を向上させた高輝度の半導体発光素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1による半導体発光素子を説明するための図であり、図1(a)〜図1(d)は、上記半導体発光素子の製造プロセスをその工程順に示している。
【図2】参考例1による半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図3】参考例2による半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図4】参考例3による半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2による半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図6】参考例4による半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図7】参考例5による半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図8】参考例6による半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図9】参考例7による半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図10】参考例8による半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図11】参考例9による半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図12】参考例10による半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図13】参考例11による半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図14】従来例の半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図15】従来例の電流阻止層を用いた半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 n−GaAs基板
2 n−下クラッド層
3,33 活性層
3a,33a 発光部
4 p−上クラッド層
5,45,75,95 保護層
6,26,36,46,56,66,68,76,96 電流阻止層
7,57,58,87a,87b,107a,107b,117,127,137 電流拡散層
10 n型電極
11 p型電極
139 p型コンタクト層
1001〜1013 半導体発光素子

Claims (2)

  1. 第1導電型の化合物半導体基板と、
    該化合物半導体基板上に、少なくとも第1導電型のクラッド層、InGaAlPによって構成された活性層及び第2導電型のクラッド層を順次形成してなる発光部と、
    該発光部の所定領域上に配置された第1導電型のIn1−yGaP層(0≦y≦1)である電流阻止層と、
    該発光部及び第1導電型の電流阻止層上に形成された第2導電型の電流拡散層と、
    該電流拡散層上に該電流阻止層と対向するよう配置された光取り出し側電極とを備え、
    該電流阻止層は、該光取り出し側電極と発光部との間で電流の流れをブロックするものであり、
    該電流拡散層は、該光取り出し側電極と発光部との間で電流経路の断面積が、該発光部側に近づくほど広がるよう電流を拡散するものであり、該発光部を構成する半導体材料よりもバンドギャップの大きいAlを含まないGaP層によって構成されている半導体発光素子。
  2. 第1導電型の化合物半導体基板と、
    該化合物半導体基板上に、少なくとも第1導電型のクラッド層、InGaAlPによって構成された活性層及び第2導電型のクラッド層を順次形成してなる発光部と、
    該発光部上に形成された第2導電型のGaP層である第1の電流拡散層と、
    該第1の電流拡散層上に、該発光部の所定領域に対向するよう配置された第1導電型のIn1−yGaP層(0≦y≦1)である電流阻止層と、
    該第1の電流拡散層及び電流阻止層上に形成された第2導電型の第2の電流拡散層と、
    該第2の電流拡散層上に該電流阻止層と対向するよう配置された光取り出し側電極とを備え、
    該電流阻止層は、該光取り出し側電極と発光部との間で電流の流れをブロックするものであり、
    該第1及び第2の電流拡散層はそれぞれ、該光取り出し側電極と発光部との間で電流経路の断面積が、該発光部側に近づくほど広がるよう電流を拡散するものであり、該両電流拡散層は、該発光部を構成する半導体材料よりもバンドギャップの大きいAlを含まないGaP層によって構成されている半導体発光素子。
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