JP3624898B2 - ニオブ粉、それを用いた焼結体及びそれを用いたコンデンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、単位質量当たりの容量が大きく、耐熱特性の良好なコンデンサを安定に製造することができるニオブ粉、それを用いた焼結体、その焼結体を用いたコンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器に使用されるコンデンサは、小型で大容量のものが望まれている。このようなコンデンサの中でもタンタルコンデンサは大きさの割には容量が大きく、しかも性能が良好なため、好んで使用されている。このタンタルコンデンサの陽極体として、一般的にタンタル粉の焼結体が使用されている。これらタンタルコンデンサの容量を上げるためには、焼結体質量を増大させるか、または、タンタル粉を微粉化して表面積を増加させた焼結体を用いる必要がある。
【0003】
焼結体質量を増加させる方法では、コンデンサの形状が必然的に増大して小型化の要求を満たさない。一方、タンタル粉を微粉化して比表面積を増加させる方法では、タンタル焼結体の細孔径が小さくなり、また焼結段階で閉鎖孔が多くなり、後工程における陰極剤の含浸が困難になる。これらの欠点を解決する手段の一つとして、タンタルより誘電率の大きい材料の焼結体を用いたコンデンサが考えられる。誘電率の大きい材料としてはニオブが知られている。一方ニオブとタンタルは、同属であるため、ニオブ中には、タンタルが不純物として存在する。
【0004】
特開平13−307963号公報において、ニオブ粉を精製し、タンタル含有量を700質量ppm以下にしたニオブ粉を得、これ用いて焼結体及びコンデンサを作製すると、CV値または容量が低下しないことが開示されている。しかしながら、製造工程中に精製工程を設けたのでは、ニオブ粉の製造時間が長くなり、また回収率の低下を招くことになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
単位質量当たりの容量が大きく耐熱特性の良好なコンデンサ、それを与える焼結体、及びそれを与えるニオブ粉を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、ニオブ粉の組成を、必ずしもニオブ粉の精製の必要のない特定の範囲に調整することにより前記課題を解決できることを見出した。
【0007】
即ち、本発明は、以下の発明に関する。
(1)MgとZr含有量が各々50〜400質量ppm、W含有量が20〜200質量ppm、Ta含有量が300〜3000質量ppm、酸素,窒素,水素,Mg,Zr,WおよびTa以外の元素の含有量が、50質量ppm以下であることを特徴とするニオブ粉。
(2)酸素含有量が、4000〜100000質量ppmである前項1に記載のニオブ粉。
(3)窒素含有量が、20〜200000質量ppmである前項1または2に記載のニオブ粉。
(4)水素含有量が、5〜200質量ppmである前項1乃至3に記載のニオブ粉。
(5)一次粉の平均粒径が、0.1〜5μmである前項1乃至4に記載のニオブ粉。
(6)一次粉を造粒した二次粉の平均粒径が、50〜300μmである前項5に記載のニオブ粉。
(7)BET比表面積が0.5m2/g以上40m2/g以下である前項1乃至6に記載のニオブ粉。
(8)CV値が、80000〜200000μFV/gである前項1乃至7に記載のニオブ粉。
【0008】
(9)前項1乃至8のいずれか1項に記載のニオブ粉を用いた焼結体。
(10)比表面積が、0.5m2/g〜7m2/gである前項9に記載の焼結体。
【0009】
(11)前項9乃至10のいずれか1項に記載のニオブ焼結体を一方の電極とし、その焼結体表面上に形成された誘電体と、前記誘電体上に設けられた他方の電極とから構成されたコンデンサ。
(12)誘電体の主成分が酸化ニオブである前項11に記載のコンデンサ。
(13)他方の電極が、電解液、有機半導体及び無機半導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料である前項11に記載のコンデンサ。
(14)他方の電極が、有機半導体であって、該有機半導体が、ベンゾピロリン4量体とクロラニルからなる有機半導体、テトラチオテトラセンを主成分とする有機半導体、テトラシアノキノジメタンを主成分とする有機半導体及び導電性高分子からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料である前項13に記載のコンデンサ。
(15)導電性高分子が、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン及びこれらの置換誘導体から選ばれる少なくとも1種である前項14に記載のコンデンサ。
(16)導電性高分子が、下記一般式(1)又は一般式(2)
【0010】
【化3】
【0011】
(式中、R1〜R4はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1乃至10の直鎖上もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルコキシ基あるいはアルキルエステル基、またはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、1級、2級もしくは3級アミノ基、CF3基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価基を表わす。R1とR2及びR3とR4の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、かかる基により置換を受けている炭素原子と共に少なくとも1つ以上の3〜7員環の飽和または不飽和炭化水素の環状構造を形成する二価鎖を形成してもよい。前記環状結合鎖には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノの結合を任意の位置に含んでもよい。Xは酸素、硫黄又は窒素原子を表し、R5はXが窒素原子の時のみ存在して、独立して水素又は炭素数1乃至10の直鎖上もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基を表す。)で示される繰り返し単位を含む重合体に、ドーパントをドープした導電性高分子である前項14に記載のコンデンサ。
(17)導電性高分子が、下記一般式(3)
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、R6及びR7は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、または該アルキル基が互いに任意の位置で結合して、2つの酸素元素を含む少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和炭化水素の環状構造を形成する置換基を表わす。また、前記環状構造には置換されていてもよいビニレン結合を有するもの、置換されていてもよいフェニレン構造のものが含まれる。)で示される繰り返し単位を含む導電性高分子である前項16に記載のコンデンサ。
(18)導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)にドーパントをドープした導電性高分子である前項14に記載のコンデンサ。
(19)他方の電極が、層状構造を少なくとも一部に有する材料からなる前項11に記載のコンデンサ。
(20)他方の電極が、有機スルホン酸アニオンをドーパントとして含んだ材料である前項11に記載のコンデンサ。
【0014】
(21)前項11乃至20のいずれか1項に記載のコンデンサを使用した電子回路。
(22)前項11乃至20のいずれか1項に記載のコンデンサを使用した電子機器。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のニオブ粉を得る一形態を説明する。
本発明のニオブ粉の製造には、一般に入手できるニオブ原料を用いることができる。たとえば、ハロゲン化ニオブのマグネシウムやナトリウムによる還元、フッ化ニオブ酸カリウムのナトリウム還元、フッ化ニオブ酸カリウムのニッケル陰極上への溶融塩(NaCl+KCl)電解、ニオブの五酸化物のアルカリ金属、アルカリ土類金属、カーボンまたは水素による還元、ニオブインゴットへの水素導入後の粉砕・脱水素等によって得ることができる。
【0016】
本発明のニオブ粉は、タンタル含有量が、300質量ppm〜3000質量ppm以下である(通常、700質量ppmより多く3000質量ppm以下であるが、300質量ppm〜700質量ppmであってもよい。)。
後述する特定の元素の含有量を特定範囲に管理することにより、特開平13−307963号公報に記載されたようにタンタル含有量をあえて700質量ppm以下にすることもなく、該ニオブ粉を用いた焼結体及びコンデンサのCV値または容量の低下はない。さらに好ましいことに、該ニオブ粉を用いたコンデンサの高温負荷試験は、良好な値を示す。
【0017】
本発明のニオブ粉には、MgとZrが各々50〜400質量ppm、Wが20〜200質量ppm、それぞれ含まれる。また、酸素、窒素、水素、Mg、Zr、WおよびTa以外の元素含有量は、各々50質量ppm以下である。これら元素の含有量が、これらの範囲外になると、前記したCV値、容量、高温負荷試験値の全てを良好に維持することが困難になる。
【0018】
本発明のMg、ZrおよびW元素を前記含有量含んだニオブ粉は、例えば各々の元素を含んだ化合物または、元素を前述したニオブ粉に混合することによって得ればよい。一般的に得られるニオブ粉には、MgとZrが各々400質量ppm以上、Wが200質量ppm以上、Taが3000質量ppm以上、または、酸素、窒素、水素、Mg、Zr、WおよびTa以外の元素が50質量ppm以上含まれることは希であり、本発明のニオブ粉を得るためには、Mg、ZrおよびWを添加すれば良く、必ずしもニオブ粉を精製する必要はない。そのため、収率よく、時間をかけずにニオブ粉の製造ができる。
ニオブ粉にこれら元素を添加する時期は、前記したニオブ粉を作製した後または作製する任意の段階に加えても良いが、あらかじめ予備実験により好ましい混合時期を決定しておくことが望ましい。また、前記したニオブ粉を得るための装置の少なくとも1つを、前記特定の元素を含んだ材質の装置としておき、ニオブ粉作製時に装置との磨耗によって、該元素がニオブ粉に所定量混合されるように設計しておいても良い。
【0019】
このようにして得たニオブ粉は、水素と炭素を、通常、各々5〜200質量ppm含有している。本発明のニオブ粉は、空気中室温で、自然酸化皮膜を形成する。この場合、含有酸素量は、ニオブ粉の粒径によっても異なるが、通常、4000〜100000質量ppmである。マグネシウム、カルシウム、水素などの還元剤により、ニオブの自然酸化皮膜を還元し、酸素含有量を下げることも可能である。例えば、酸素含有量が、8000質量ppmのニオブ粉や、80000質量ppmのニオブ粉を、還元して各々5000質量ppmのニオブ粉にすることができる。
【0020】
本発明では、前記ニオブ粉および/または後述する二次粉を一部窒化しておいて使用しても良い。ニオブ粉の一部を窒化するには、例えばニオブ粉を窒素ガス雰囲気中で窒素化することによって得られる。この場合、窒素量は、20〜200000質量ppmにするのが好ましい。さらに作製したコンデンサの漏れ電流値を良好にするには、100〜30000質量ppmが特に好ましい。ここで窒化量とは、ニオブ粉に吸着したものではなく、化学的に結合した窒素量である。
【0021】
ニオブ粉の窒化方法としては、液体窒化、イオン窒化、ガス窒化などのうちいずれかあるいはそれらの組み合わせた方法で実施することができる。窒素ガス雰囲気によるガス窒化処理は、装置が簡便で操作が容易なため好ましい。たとえば窒素ガス雰囲気によるガス窒化方法は、前記ニオブ粉を窒素雰囲気中に放置することによって達成される。窒化する雰囲気温度は、2000℃以下、放置時間は、数時間以内で目的とする窒化量のニオブ粉が得られる。より高温で処理することにより処理時間を短くすることができる。前記ニオブ粉の窒化量は、被窒化物の窒化温度と窒化時間を予備実験等で確認した条件で管理することができる。
【0022】
本発明の粉体の平均粒径は、0.1μm以上で5μm未満、好ましくは0.2μm以上で2μm未満である。平均粒径が5μm以上であると、作製した焼結体自身のCV値が小さく、容量の大きなコンデンサを作製することが困難であるため好ましくない。0.1μm未満であると、他方の電極材料を含浸することが難しく、かえって容量を下げるため好ましくない。該平均粒径範囲にある本発明の粉体の比表面積は、0.5m2/g以上で40m2/g以下である。本発明のコンデンサ用粉体は、該粉体を所定の大きさに造粒して二次粉として使用しても良い。
【0023】
造粒方法として、従来公知の方法が採用できる。例えば、粉体を500℃〜2000℃の高温真空下に放置した後、湿式または乾式解砕する方法、アクリル樹脂やポリビニルアルコール等の適当なバインダーと粉体を混合した後解砕する方法、アクリル樹脂や樟脳等の適当な化合物と混合した後高温真空下に放置し、その後湿式または乾式解砕する方法等があげられる。造粒と解砕の程度によって造粒粉の粒径は、任意に変更可能であるが、通常、平均粒径で50μm〜300μmのものが使用される。造粒・解砕後に分級して用いても良い。また、造粒後に造粒前の粉体を適量混合して用いても良い。このようにして作製した造粒粉のBET比表面積は、通常、0.4〜20m2/gになる。
【0024】
また本発明のニオブ粉は、後述するように該ニオブ粉から焼結体を作製した後0.1%燐酸水溶液中80℃で所定電圧で300分間化成した場合、CV値は、80000〜200000μFV/g(硫酸30%水溶液中室温で120Hz1.5Vバイアス30秒値)を示す。
【0025】
本発明の焼結体は、前述した粉体を焼結して製造することができる。焼結体の製造方法の1例を以下に示す。なお、焼結体の製造方法は、この例に限定されるものではない。例えば、粉体を所定の形状に加圧成型した後、10−1〜10−4Paで、数分〜数時間、500〜2000℃で加熱して得られる。本発明の焼結体の比表面積は、通常、0.5m2/g〜7m2/gになる。
【0026】
また、適当な形状・長さの、ニオブやタンタル等の弁作用金属からなるリードワイヤーを用意し、前述した粉体の加圧成型時に該リードワイヤーの一部が成型体の内部に挿入されるように一体成型して、該リードワイヤーを前記焼結体の引き出しリードとなるようにすることもできる。
【0027】
前述した焼結体を一方の電極とし他方の電極(対電極)の間に介在した誘電体とからコンデンサを製造することができる。コンデンサの誘電体として酸化ニオブおよび酸化タンタルを主成分とする誘電体があげられる。例えば、酸化ニオブを主成分とする誘電体は、一方の電極であるニオブ焼結体を電解液中で化成することによって得られる。ニオブ電極を電解液中で化成するには、通常プロトン酸水溶液、例えば、0.1%酢酸水溶液または硫酸水溶液を用いて行われる。ニオブ電極を電解液中で化成して酸化ニオブを主成分とする誘電体を得る場合。本発明のコンデンサは、電解コンデンサとなり、ニオブ側が陽極となる。
【0028】
一方、本発明のコンデンサの他方の電極として、有機半導体および無機半導体から選ばれる少なくとも1種の化合物があげられる。有機半導体の具体例としては、ベンゾピロリン4量体とクロラニルからなる有機半導体、テトラチオテトラセンを主成分とする有機半導体、テトラシアノキノジメタンを主成分とする有機半導体、下記一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位を含む高分子にドーパントをドープした電導性高分子を主成分とした有機半導体があげられる。
【0029】
【化5】
【0030】
式(1)および(2)において,R1〜R4は水素、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、これらは互いに同一であっても相違してもよく、Xは酸素、イオウまたは窒素原子を表し、R5はXが窒素原子のときのみ存在して水素または炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1とR2およびR3とR4は互いに結合して環状になっていても良い。
【0031】
さらに、本発明においては、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む電導性高分子は、好ましくは下記一般式(3)で示される構造単位を繰り返し単位として含む電導性高分子が挙げられる。
【0032】
【化6】
【0033】
式中、R6及びR7は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、または該アルキル基が互いに任意の位置で結合して、2つの酸素元素を含む少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和炭化水素の環状構造を形成する置換基を表わす。また、前記環状構造には置換されていてもよいビニレン結合を有するもの、置換されていてもよいフェニレン構造のものが含まれる。このような化学構造を含む電導性高分子は、荷電されており、ドーパントがドープされる。ドーパントには公知のドーパントが制限なく使用できる。
【0034】
式(1)乃至(3)で表される繰り返し単位を含む高分子としては、例えば、ポリアニリン、ポリオキシフェニレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリメチルピロール、およびこれらの置換誘導体や共重合体などが挙げられる。中でもポリピロール、ポリチオフェン及びこれらの置換誘導体(例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)等)が好ましい。
【0035】
無機半導体の具体例としては。二酸化鉛または二酸化マンガンを主成分とする無機半導体、四三酸化鉄からなる無機半導体などがあげられる。このような半導体は、単独でも、または、2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0036】
上記有機半導体および無機半導体として、電導度10−2〜103S/cmの範囲のものを使用すると、作製したコンデンサのインピーダンス値がより小さくなり、高周波での容量をさらに一層大きくすることができる。
【0037】
さらに他方の電極が固体の場合には、その上に外部引き出しリード(例えば、リードフレーム)との電気的接触をよくするために、導電体層を設けてもよい。導電体層としては、例えば、導電ペーストの固化、メッキ、金属蒸着、耐熱性の導電樹脂フイルムの形成等により形成することができる。導電ペーストとしては、銀ペースト、銅ペースト、アルミペースト、カーボンペースト、ニッケルペースト等が好ましいが、これらは1種を用いても2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合、混合してもよく、または別々の層として重ねてもよい。導電ペーストを適用した後、空気中に放置するか、または加熱して固化せしめる。メッキとしては、ニッケルメッキ、銅メッキ、銀メッキ、アルミメッキ等があげられる。また蒸着金属としては、アルミニウム、ニッケル、銅、銀等があげられる。
【0038】
具体的には、例えば他方の電極上にカーボンペースト、銀ペーストを順次積層しエポキシ樹脂のような材料で封止してコンデンサが構成される。このコンデンサは、前記焼結体と一体に焼結成型された、または後で溶接されたニオブまたはタンタルリードを有していてもよい。
【0039】
以上のような構成の本発明のコンデンサは、例えば、樹脂モールド、樹脂ケース、金属性の外装ケース、樹脂のディッピング、ラミネートフイルムによる外装などの外装により各種用途のコンデンサ製品とすることができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の具体例についてさらに詳細に説明する。
本発明の粉体の窒化量は、LEKO社製の窒素・酸素分析計を用いて求めた。焼結体のCV値は、0.1%燐酸水溶液中で20V印加、80℃、300分化成した後に、30%硫酸中で測定した容量と、化成電圧20Vとの積から求めた。またニオブ粉中の酸素、窒素、以外の元素の含有量は、Si及びPが、ICP−AES、C及びSが、高周波燃焼/IR、これ以外の元素は、ICP−AESから求めた。コンデンサの高温負荷試験値は、作製したコンデンサを、85℃4Vで1000時間放置したときの容量が、初期値の±20%を超える個数で表現した。この個数が小さいほど高温負荷試験値は良好となる。また、CV値、および該ニオブ粉を用いたコンデンサの高温負荷試験値を求めるための試料数は、各例とも30個とした。
【0041】
実施例1〜5、比較例1〜3
Ta含有量1200質量ppmのニオブインゴットを水素化後湿式粉砕して、平均粒径0.78μm、比表面積4.6m2/gのニオブ粉を得た。マグネシウム、酸化ジルコニウム、タングステン酸アンモニウムを、Mg、Zr、Wの各含有量が表1に記載の量となるように添加した。ついでこの粉体を、1200℃で真空加熱した後取り出し、解砕後分級し平均粒径90μm、比表面積1.5m2/gの造粒粉(二次粉とも言う)を得た。これを400℃で3時間窒素気流中に放置することにより一部窒化したニオブ粉を得た。このニオブ粉の各元素の含有量は、窒素2500質量ppm、酸素32000質量ppm、水素100質量ppm、酸素、窒素、水素、Mg、Zr、WおよびTa以外の元素の含有量は、40質量ppm以下であった。この造粒粉を1.8×3.5×4.0mmの大きさに成型(直径0.3mmのニオブワイヤーを共に成型しリードとした)した後、1300℃で7×10−5Paの減圧下で焼結し比表面積0.8m2/gの焼結体を得た。(この焼結体のCV値を表1に示した。)この焼結体を0.1%リン酸水溶液中、80℃20Vで300分化成した。次いで、焼結体内部の細孔および表面煮に、酸化剤を過硫酸アンモニウム、ドーパントをアンソラキノンスルフォン酸ナトリウムとし、ドーパントの存在下、ピロールと酸化剤との反応を繰り返すことによりポリピロールを析出させ、他方の電極を形成した。さらにカーボンペースト、銀ペーストを順に積層した後、エポキシ樹脂で封止してコンデンサを作製した。各実施例及び比較例の測定値を表1に記載した。
【0042】
実施例6〜14、比較例4〜12
タンタル含有量が各々表1に記載したニオブインゴットを使用し、他方の電極のを、二酸化鉛が98質量%、焼結体細孔中で酢酸鉛水溶液と過硫酸アンモニウム水溶液の反応を繰り返し、二酸化鉛と硫酸鉛の混合物の他方の電極を形成した。これら以外は実施例1〜3、比較例1、3と同様にしてコンデンサを作製した。なお、比較例10,11、12のMg、Zr、Wの添加量は、各々、実施例1,2,3と同様の含有量を目標として添加した。
【0043】
実施例15〜19、比較例13〜15
実施例1〜5、比較例1〜3と同様に行った。ただし、ニオブ粉を、五塩化タンタルが0.5%混入している五塩化ニオブをマグネシウム還元することにより作製した。また、窒化は450℃で3時間窒素気流中放置して行った。
得られたニオブ粉は、平均粒径0.53〜0.78μm、比表面積7.1m2/gであった。得られた造粒粉は、平均粒径120μm、比表面積1.7m2/gであった。また、窒素量8500質量ppm、酸素量9000質量ppm、水素量140質量ppm、酸素、窒素、水素、Mg、Zr、WおよびTa以外の元素の含有量は、40質量ppm以下であった。焼結体の比表面積は1.3m2/gであった。これを用いて実施例1〜5、比較例1〜3と同様にしてコンデンサを作製した。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例1〜5と比較例1〜3、実施例6〜8と比較例4および5、実施例9〜11と比較例6および7、実施例12〜14と比較例8および9、実施例15〜19と比較例13〜15、ならびに比較例10〜12を各々比較することにより前記したように特定の金属の含有量を特定量にコントロールしたニオブ粉から作製した焼結体およびコンデンサは、CV値、容量および高温負荷試験値すなわち耐熱性が良好であることがわかる。
【0046】
【発明の効果】
収率よく時間をかけずに製造ができるコンデンサ用ニオブ粉が提供され、この粉体をコンデンサに用いることにより、単位質量当たりの容量が大きく、耐熱特性の良好なコンデンサを製造することができる。
Claims (22)
- MgとZr含有量が各々50〜400質量ppm、W含有量が20〜200質量ppm、Ta含有量が300〜3000質量ppm、酸素,窒素,水素,Mg,Zr,WおよびTa以外の元素の含有量が、50質量ppm以下であることを特徴とするコンデンサ用ニオブ粉。
- 酸素含有量が、4000〜100000質量ppmである請求項1に記載のコンデンサ用ニオブ粉。
- 窒素含有量が、20〜200000質量ppmである請求項1または2に記載のコンデンサ用ニオブ粉。
- 水素含有量が、5〜200質量ppmである請求項1乃至3に記載のコンデンサ用ニオブ粉。
- 一次粉の平均粒径が、0.1〜5μmである請求項1乃至4に記載のコンデンサ用ニオブ粉。
- 一次粉を造粒した二次粉の平均粒径が、50〜300μmである請求項5に記載のコンデンサ用ニオブ粉。
- BET比表面積が0.5m2/g以上40m2/g以下である請求項1乃至6に記載のコンデンサ用ニオブ粉。
- CV値が、80000〜200000μFV/gである請求項1乃至7に記載のコンデンサ用ニオブ粉。
- 請求項1乃至8のいずれか1項に記載のコンデンサ用ニオブ粉を用いた焼結体。
- 比表面積が、0.5m2/g〜7m2/gである請求項9に記載の焼結体。
- 請求項9乃至10のいずれか1項に記載のニオブ焼結体を一方の電極とし、その焼結体表面上に形成された誘電体と、前記誘電体上に設けられた他方の電極とから構成されたコンデンサ。
- 誘電体の主成分が酸化ニオブである請求項11に記載のコンデンサ。
- 他方の電極が、電解液、有機半導体及び無機半導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料である請求項11に記載のコンデンサ。
- 他方の電極が、有機半導体であって、該有機半導体が、ベンゾピロリン4量体とクロラニルからなる有機半導体、テトラチオテトラセンを主成分とする有機半導体、テトラシアノキノジメタンを主成分とする有機半導体及び導電性高分子からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料である請求項13に記載のコンデンサ。
- 導電性高分子が、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン及びこれらの置換誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項14に記載のコンデンサ。
- 導電性高分子が、下記一般式(1)又は一般式(2)
- 導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)にドーパントをドープした導電性高分子である請求項14に記載のコンデンサ。
- 他方の電極が、層状構造を少なくとも一部に有する材料からなる請求項11に記載のコンデンサ。
- 他方の電極が、有機スルホン酸アニオンをドーパントとして含んだ材料である請求項11に記載のコンデンサ。
- 請求項11乃至20のいずれか1項に記載のコンデンサを使用した電子回路。
- 請求項11乃至20のいずれか1項に記載のコンデンサを使用した電子機器。
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