JP3624494B2 - トーンホイール付転がり軸受ユニット - Google Patents

トーンホイール付転がり軸受ユニット Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明に係るトーンホイール付転がり軸受ユニットは、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出する為の回転速度検出装置を構成する為に利用する。
【0002】
【従来の技術】
アンチロックブレーキシステム(ABS)或はトラクションコントロールシステム(TCS)を制御する為には、車輪の回転速度を検出する必要がある。従って、車輪を懸架装置に対して回転自在に支持すると共にこの車輪の回転速度を検出する為に、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットが必要になる。この様な回転速度検出装置付転がり軸受ユニットとして従来から、例えば米国特許第4948277号明細書に記載されている様な構造のものが知られている。
【0003】
図7は、この明細書に記載された回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを示している。それぞれが固定輪である1対の内輪1、1は、懸架装置への組み込み状態では、回転しない車軸(図示せず)に外嵌される。それぞれが固定周面である、上記各内輪1、1の外周面には、それぞれが固定軌道面である内輪軌道2、2を、それぞれ形成している。又、使用時に回転する回転輪であるハブ3の内周面(回転周面)には、それぞれが回転軌道面である複列の外輪軌道4、4を形成している。そして、これら各外輪軌道4、4と上記各内輪軌道2、2との間に、それぞれ転動体である複数個の玉5、5を設け、上記車軸の周囲にハブ3を、回転自在に支持する。車輪のホイール(図示せず)は、このハブ3の外周面に設けられたフランジに固定される。
【0004】
更に、上記ハブ3の内端(内とは自動車への組み付け状態で幅方向中央寄りとなる側を言い、図1、2、5、6、7で右。反対に車両の幅方向外寄りとなる側を外と言う。)開口部には、シールリング6を構成する芯金7を内嵌固定している。即ち、この芯金7の外周縁部に形成した円筒部8を上記ハブ3の開口部に、締まりばめにより内嵌している。そして、この芯金7の内側面に、ゴム等の弾性材製のシール材9を結合支持し、更にこのシール材9の内側面にトーンホイール10を結合支持している。このトーンホイール10は永久磁石により構成され、円周方向に亙ってS極とN極とを交互に配置した円環状に造られている。
【0005】
一方、上記1対の内輪1、1のうち、内側の内輪の内端部には、金属板を絞り成形して成る保持環11を外嵌固定している。上記シールリング6を構成するシール材9に設けられた複数のシールリップ12、12の先端縁は、この保持環11の内外両周面及び外側面に摺接させて、上記玉5、5設置部分に塵芥や雨水が進入するのを防止している。又、上記保持環11の一部にはセンサ13を支持固定し、このセンサ13の検出部を、上記トーンホイール10の内側面に対向させている。
【0006】
上述した様な回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの場合、ハブ3に固定された車輪を、内輪1、1を外嵌支持した車軸に対し、回転自在に支持できる。又、車輪と共にハブ3が回転すると、このハブ3に固定したトーンホイール10の側面と対向したセンサ13の出力が変化する。このセンサ13の出力が変化する周波数は、車輪の回転速度に比例する。従って、センサ13の出力信号を図示しない制御器に入力すれば、上記車輪の回転速度を求め、ABSやTCSを適切に制御できる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述の様な従来構造の場合、製造の段取りを簡略化できず、コスト削減が難しい。この理由は次の通りである。即ち、図7に示す様に、芯金7と、シール材9と、永久磁石であるトーンホイール10とを一体に結合するには、これら芯金7及びトーンホイール10をシール材9成形用の金型のキャビティ内にセットした状態で、このシール材9を射出成形する。上記トーンホイール10を着磁する作業は、この射出成形後に行なう必要がある。この理由は、成形前に着磁すると、このトーンホイール10が自身の磁力によって上記金型に吸着し、このトーンホイール10の単体、或はこのトーンホイール10と結合された状態で成形されたシール材9の取り扱いが面倒になる為である。
【0008】
従って、図7に示す様な構造を実現する為には、上記トーンホイール10を着磁する作業を、上記シール材9の射出成形後に行なわなければならない。この為には、シール材9を射出成形するシール材メーカーに着磁用の設備を備えるか、或は上記トーンホイール10と結合された状態で成形されたシール材9をシール材メーカーから磁石メーカーに送り、この磁石メーカーで上記トーンホイール10に着磁しなければならない。前者の場合には、本来シールメーカーに必要としない着磁設備を備える必要が生じる為、設備費が嵩み、コスト上昇の原因となる。又、後者の場合には、磁石メーカーで造った未着磁のトーンホイールをシールメーカーに送り、再び磁石メーカーに送り返す必要がある為、搬送費が嵩み、やはりコスト上昇の原因となる。
【0009】
本発明はこの様な事情に鑑みて発明したもので、予め磁石メーカーで着磁したトーンホイールを芯材及びシール材から成るシールリングと結合可能にする事により、上記設備費や搬送費の増大に伴うコスト上昇を抑えるものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のトーンホイール付転がり軸受ユニットは、従来から知られているトーンホイール付転がり軸受ユニットと同様に、内周面に外輪軌道を有し使用時に回転しない外輪と、外周面に内輪軌道を有し使用時に回転する内輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に設けられた複数の転動体と、全体を円環状に形成され、上記内輪に支持された芯金と、この芯金の側面に支持された、円周方向に亙ってS極とN極とを交互に配置した円環状の多極磁石であるトーンホイールとを備える。
【0011】
特に、本発明のトーンホイール付転がり軸受ユニットに於いては、上記芯金は磁性材製で、円輪部と、この円輪部の内周縁から外方に向け折れ曲がった嵌合筒部と、この円輪部の外周縁から内方に向け折れ曲がった保持筒部とを備える。そして、このうちの嵌合筒部を上記内輪に対し外嵌する事によりこの内輪に対し固定されている。又、上記トーンホイールは軸方向両側面が着磁されており、このトーンホイールは自身の磁力により上記芯金の円輪部に吸着してこの芯金に支持されると共に、このトーンホイールの外周縁は上記保持筒部の内周面に当接若しくは近接対向している。且つ、この保持筒部に直径方向内方に突出するかしめ部を形成して、このかしめ部の最大内接円の直径を上記トーンホイールの外径よりも小さくすると共に、このトーンホイールの外周縁部の厚さ寸法を中央部の厚さ寸法よりも小さくして、このトーンホイールの外周縁部と上記かしめ部とを係合させている。
【0012】
【作用】
上述の様に構成される本発明のトーンホイール付転がり軸受ユニットにより、車輪を回転自在に支持すると共に、センサとの組み合わせにより内輪に固定された車輪の回転速度を検出する際の作用自体は、従来から知られている回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを構成するトーンホイール付転がり軸受ユニットと同様である。
【0013】
特に、本発明のトーンホイール付転がり軸受ユニットの場合、トーンホイールは自身の磁力により上記芯金に支持される為、予め磁石メーカーで着磁したトーンホイールを、シールリングを構成する芯金と結合できる。従って、設備費や搬送費の増大に伴うコスト上昇を抑える事ができる。
【0014】
【実施例】
図1〜3は、請求項1に対応する、本発明の第一実施例を示している。前述した従来構造の場合とは逆に、回転周面である外周面に回転軌道面である内輪軌道2、2を形成した、それぞれが回転輪である内輪1、1は、使用時に回転する車軸に外嵌自在される。これら各内輪1、1の周囲には、使用時に回転しない固定輪である外輪14を、上記各内輪1、1と同心に配置している。そして、固定周面であるこの外輪14の内周面に形成した、固定軌道面である外輪軌道4、4と上記各内輪軌道2、2との間に、転動体である複数個の玉5、5を設けて、上記外輪14の内側に各内輪1、1を、回転自在に支持している。
【0015】
上記外輪14の内端部と内方の内輪1の内端部外周面との間には組み合わせシール15を設けて、上記外輪14の内周面と上記内輪1の外周面との間に存在する空間の内端開口部を塞いでいる。又、上記外輪14の外端部と外方の内輪1の外端部外周面との間には別の組み合わせシール16を設けて、上記外輪14の内周面と上記内輪1の外周面との間に存在する空間の外端開口部を塞いでいる。
【0016】
上記2組の組み合わせシール15、16のうち、内方に設けられた組み合わせシール15は、上記内方の内輪1の内端部外周面に外嵌固定されたシールリング17と、上記外輪14の内端部内周面に内嵌固定されたシールリング18とから成る。これら両シールリング17、18のうち、一方のシールリング17は、特許請求の範囲に記載した芯金に相当する、鋼板等の磁性金属板製の芯金19と、ゴム、エラストマー等の弾性材製のシール材20と、ゴム中に強磁性粉末を混入して全体を円輪状に形成した、ゴム磁石製のトーンホイール21とから構成される。
【0017】
このトーンホイール21は、円周方向に亙ってS極とN極とを交互に配置している。又、このトーンホイール21は、軸方向(図1〜2の左右方向、図3の表裏方向)に亙って着磁されている。従ってこのトーンホイール21は、軸方向両側面(内外両側面)が何れも着磁されている。又、このトーンホイール21の内側面外周縁部には段部22を形成して、この外周縁部の厚さ寸法をそれ以外の部分よりも小さくしている。
【0018】
又、上記芯金19は、円輪部23と、この円輪部23の内周縁から外方に向け直角に折れ曲がった嵌合筒部24と、上記円輪部23の外周縁から内方に向け直角に折れ曲がった保持筒部25とを備える。この保持筒部25の内径は、上記トーンホイール21の外径と同じか、この外径よりも僅かに大きい。又、上記保持筒部25の円周方向複数個所(好ましくは円周方向等間隔に位置する3個所以上)には、直径方向内方に突出するかしめ部26を形成している。そして、これら複数のかしめ部26の最大内接円の直径を、上記トーンホイール21の外径よりも小さくしている。
【0019】
上記トーンホイール21は、この様な芯金19を構成する円輪部23の内側面に、自身の磁力と、上記段部22とかしめ部26との係合とにより、結合支持している。即ち、上記トーンホイール21を弾性変形させつつ、このトーンホイール21の外周縁部を上記各かしめ部26の内側を通過させて、このトーンホイール21の外側面と上記円輪部23とを密着させている。この状態でこれらトーンホイール21と芯金19とは、これら両部材21、19同士の間に作用する磁気吸着力により、不離に結合される。又、上記トーンホイール21の外周縁と上記保持筒部25の内周面との係合に基づき、このトーンホイール21が前記内輪1に、同心に保持される。
【0020】
一方、上記円輪部23の外側面外径側半部には、複数のシールリップ27、27を有するシール材20の基部を、焼き付け、接着等により結合固定している。又、前記組み合わせシール15を構成する1対のシールリング17、18のうち、他方のシールリング18を構成し、前記外輪14の内端部内周面に内嵌固定された芯金28の内周縁部には、シール材29の基端部を、やはり焼き付け、接着等により結合固定している。そして、上記各シールリップ27、27の先端縁を上記他方のシールリング18を構成する芯金28の内側面及び内周面に、上記シール材29の内周縁を上記芯金19を構成する嵌合筒部24の外周面に、それぞれ摺接させている。
【0021】
上述の様に構成される本発明のトーンホイール付転がり軸受ユニットは、懸架装置を構成する保持ケース30の内側に車輪を回転する為の車軸を回転自在に支持すると共に、上記保持ケース30に支持されたセンサ13との組み合わせにより、回転輪である内輪1、1或は上記車輪の回転速度を検出する。特に、本発明のトーンホイール付転がり軸受ユニットの場合、トーンホイール21は自身の磁力により上記芯金19に支持される為、予め磁石メーカーで着磁したトーンホイール21を、シールメーカーにより造られた、芯材19及びシール材20から成るシールリング17と結合できる。従って、設備費や搬送費の増大に伴うコスト上昇を抑える事ができる。
【0022】
尚、図示の実施例では、上記トーンホイール21と共に回転速度検出装置を構成するセンサ13を、転がり軸受ユニット外である保持ケース30に設置している。但し、このセンサ13を固定輪である外輪14に支持する事もできる。
【0023】
次に、図4〜5は、請求項1、2に対応する、本発明の第二実施例を示している。本実施例の場合は、トーンホイール21を、プラスチック磁石、フェライト磁石、希土類磁石等、可撓性を持たない永久磁石により構成し、しかも段部22と複数のかしめ部26との係合により、芯金19とトーンホイール21との分離防止の確実化を図っている。この為に本実施例の場合には、上記トーンホイール21の外周縁部で段部22に対応する部分の円周方向複数個所に上記かしめ部26と同数の切り欠き31を、このかしめ部26と等ピッチで形成している。各切り欠き31は、各かしめ部26を通過させられるだけの大きさを有する。
【0024】
上記芯金19とトーンホイール21とを結合する際には、図4に示す様に、上記かしめ部26と切り欠き31とを整合させた状態で、上記トーンホイール21の外周縁部を上記かしめ部26を通過させ、このトーンホイール21の外側面と上記芯金19を構成する円輪部23の内側面とを当接させる。次いで、上記芯金19に対してトーンホイール21を少し(上記かしめ部26及び切り欠き31のピッチより少ない分)だけ回転させて、これらかしめ部26と切り欠き31とをずらせる。芯金19とトーンホイール21とは、これら両部材19、21同士の間に作用する磁気吸着力に基づき、外力を加えない限り相対回転する事はない。この結果、前記第一実施例を示す図2〜3と同様に、上記円輪部23とトーンホイール21との間に作用する磁気吸着力に加えて、複数のかしめ部26とトーンホイール21の外側面との係合に基づき、上記両部材19、21の分離防止が図られる。その他の構成及び作用は、前述した第一実施例と同様である。
【0025】
次に、図6は、請求項1に対応する、本発明の第三実施例を示している。本実施例の場合には、組み合わせシール15を構成する1対のシールリング17、18のうち、トーンホイール21を固定しないシールリング18にのみ、複数のシールリップ32、32を有するシール材29を固着している。トーンホイール21を結合固定したシールリング17の芯金19は、上記各シールリップ32、32の先端縁を摺接させるのみで、自身にはシール材を装着していない。尚、説明の便宜上本明細書では、この様に自身はシール材を持たないが、他のシールリングとの組み合わせで組み合わせシールを構成する環状部材も、シールリングと称する。上記芯金19を構成する円輪部23の内側面には、前述した第一実施例、或は上述した第二実施例と同様の構造により、上記トーンホイール21を結合支持している。シール材29をシールリング18側にのみ設けた点以外は、前述した第一実施例、或は上述した第二実施例と同様である。
【0026】
【発明の効果】
本発明のトーンホイール付転がり軸受ユニットは、以上に述べた通り構成され作用する為、余分な設備投資、或は余分な搬送経費を不要として、製品コストの低廉化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例を示す断面図。
【図2】図1のA部拡大図。
【図3】図2の右方から見た図。
【図4】本発明の第二実施例を示す、図3と同様の図。
【図5】第二実施例に使用するトーンホイールの断面図。
【図6】本発明の第三実施例を示す、図2と同様の図。
【図7】従来構造の1例を示す断面図。
【符号の説明】
1 内輪
2 内輪軌道
3 ハブ
4 外輪軌道
5 玉
6 シールリング
7 芯金
8 円筒部
9 シール材
10 トーンホイール
11 保持環
12 シールリップ
13 センサ
14 外輪
15、16 組み合わせシール
17、18 シールリング
19 芯金
20 シール材
21 トーンホイール
22 段部
23 円輪部
24 嵌合筒部
25 保持筒部
26 かしめ部
27 シールリップ
28 芯金
29 シール材
30 保持ケース
31 切り欠き
32 シールリップ

Claims (2)

  1. 内周面に外輪軌道を有し使用時に回転しない外輪と、外周面に内輪軌道を有し使用時に回転する内輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に設けられた複数の転動体と、全体を円環状に形成され、上記内輪に支持された芯金と、この芯金の側面に支持された、円周方向に亙ってS極とN極とを交互に配置した円環状の多極磁石であるトーンホイールとを備えたトーンホイール付転がり軸受ユニットに於いて、上記芯金は磁性材製で、円輪部と、この円輪部の内周縁から外方に向け折れ曲がった嵌合筒部と、この円輪部の外周縁から内方に向け折れ曲がった保持筒部とを備え、このうちの嵌合筒部を上記内輪に対し外嵌する事によりこの内輪に対し固定されており、上記トーンホイールは軸方向両側面が着磁されており、このトーンホイールは自身の磁力により上記芯金の円輪部に吸着してこの芯金に支持されると共に、このトーンホイールの外周縁は上記保持筒部の内周面に当接若しくは近接対向しており、且つ、この保持筒部に直径方向内方に突出するかしめ部を形成して、このかしめ部の最大内接円の直径を上記トーンホイールの外径よりも小さくすると共に、このトーンホイールの外周縁部の厚さ寸法を中央部の厚さ寸法よりも小さくして、このトーンホイールの外周縁部と上記かしめ部とを係合させている事を特徴とするトーンホイール付転がり軸受ユニット。
  2. トーンホイールが可撓性を持たない永久磁石である、請求項1に記載したトーンホイール付転がり軸受ユニット。
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