JP3622888B2 - 耐摩耗性自動車用ガラスランチャンネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性の優れた自動車用ガラスランチャンネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の自動車用ガラスランチャンネルは、図1に示すように、基材として熱硬化性または熱可塑性エラストマーを使用し、かつガラス摺接部にウレタン系塗料を塗布するか、もしくはナイロン製などの植毛を施したものである。
【0003】
また近年においては、コスト低減や有機溶剤の使用制限、機能性向上などを目的として無塗装および無植毛化が進んでいる。そしてガラスの摺接する部分には従来の塗装や植毛に代わり、表面処理材として滑材の配合された樹脂組成物が使用されており(図2参照)、滑材としてはシリコーンオイルやシリコーンポリマーのほか、有機系・無機系の各種滑材が使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、無塗装・無植毛の自動車用ガラスランチャンネルのガラス摺接部分に、表面処理材としてシリコーンオイルやシリコーンポリマーを配合した樹脂を使用することによってガラスとの滑り性を大きく向上させることが出来るが、これらのシリコーン分は樹脂表面にブリードアウトし易く、ガラスが数回ないし数十回上下すると樹脂表面のシリコーン分はガラス表面に移行して取られ、その結果ガラス摩耗後の動摩擦係数が上昇し(図3参照)、ドアガラスの昇降不良の問題を引き起こす恐れがあった。
【0005】
本発明の目的は、シリコーンオイルやシリコーンポリマーなどのシリコーン分の樹脂表面へのブリードアウトを抑制することができる摺動性能の耐久性に優れた自動車用ガラスランチャンネルを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討の結果、樹脂中に上記シリコーン分とともにシリコーンパウダーを混在させることにより上記目的を達成することが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明の自動車用ガラスランチャンネルは、基材が熱硬化性又は熱可塑性エラストマーからなり、そのガラス摺接部に、熱可塑性樹脂中にシリコーンオイルおよび/またはシリコーンポリマー1〜40重量%とシリコーンパウダー0.1〜10重量%とを混在させた滑材入り表面処理剤を膜状に被覆成形してなるものである。
【0010】
【作用】
本発明の作用を、自動車用ガラスランチャンネルを例にとって図3および図4を参照しながら説明する。図5に示すようにシリコーンパウダーを混在させていない表面処理層においてはシリコーンオイル・シリコーンポリマーが該処理層の表面にブリードアウトするが、図4に示すようにシリコーンパウダーを混在させた場合にはシリコーンオイル・シリコーンポリマーの該処理層表面へのブリードアウトが抑制され、該処理層の内部にシリコーン分を留めておくことが可能になり、その結果ガラス摩耗後の動摩擦係数の上昇を抑制することが出来るのである(図3参照)。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、熱可塑性樹脂としてはオレフィン系熱可塑性樹脂、すなわちエチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレンなどのオレフィンあるいはジオレフィンなどの重合または共重合体、あるいはこれらの単量体と塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリル酸エチルなどビニル単量体との共重合体などを使用することが好ましい。
【0012】
シリコーンオイルおよび/またはシリコーンポリマーとしては、重量平均分子量が103 〜106 の範囲で、かつ粘度が0.65〜10万cStの範囲のものを使用することが好ましい。重量平均分子量が103 未満のもの、あるいは粘度が0.6cSt未満のものではブリードアウトを防止することが困難であり、または重量平均分子量が106 を超えるもの、あるいは粘度が10万cStを超えるものでは要求される摺動性を満足することができない。
【0013】
このような条件を満足する好ましいシリコーンオイルおよび/またはシリコーンポリマーの具体例として、たとえばシリコーンコンセントレートBY27−001(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、シリコーンポリマー 50重量%入りポリプロピレン)をあげることができる。
【0014】
次に本発明において使用されるシリコーンパウダーについて詳しく説明する。本発明においてシリコーンパウダーを使用する目的ないし理由は、上記作用の項で説明したように、自動車用ガラスランチャンネルの表面処理中のシリコーンオイルまたはシリコーンポリマーをシリコーンパウダーに吸着させて表面へのブリードアウトを抑制するとともにシリコーン濃度を均一化させることにある。このためシリコーンパウダーは少なくとも−30℃〜100℃の温度範囲(製品の使用温度範囲)において固体状であることが必要である(液体状の場合はこのもの自体もブリードアウトしてしまう)。
【0015】
このような条件を満足する好ましいシリコーンパウダーの代表例として、(1)三次元架橋した網目構造をもつシリコーン樹脂パウダーおよび(2)シリコーンゴムパウダーの2種類をあげることができる。これらのパウダーは融点を有していないため、押出成形によって加熱した後もその形状を保持し、樹脂層中でもその粒径を保ったまま存在することができる(図4参照)。
【0016】
このような条件を満足する好ましいシリコーンゴムパウダーの具体例として、たとえばトレフィルE−500(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、シリコーンゴムパウダー)をあげることができる。
【0017】
また通常、このような自動車用ガラスランチャンネルは基材の所要箇所に滑材入り表面処理剤が膜状に被覆成形されてなるものであるから、シリコーンパウダーの粒子径は該表面処理剤の膜厚より小さいことが必要である。その理由は膜厚より大きな粒径のパウダーを混入すると表面肌の悪化を招く恐れがあるからである。例えば被覆成形された表面処理剤の膜厚が100μmである場合、シリコーンパウダーの粒子径は100μm未満であることが必要であり、好ましくは粒子径が1〜50μmのシリコーンパウダーを使用する。
【0018】
【実施例】
本発明の耐摩耗性熱可塑性樹脂組成物の具体的な配合例(実施例)を比較例とともに以下に示す。なお配合割合は重量%である。
【0019】
図3はシリコーンゴムパウダー配合品(実施例)およびシリコーンゴムパウダー無配合品(比較例)についてのガラス摩耗回数と動摩擦係数との関係を示すグラフである。図に示したガラス摩耗後の動摩擦係数の変化から、比較例の配合品ではガラス摩耗後の動摩擦係数が急激に上昇しているのに対し、実施例の配合品ではガラス摩耗後の動摩擦係数の上昇が抑制されていることがわかる。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、熱可塑性樹脂中にシリコーンオイルやシリコーンポリマーなどのシリコーン分とともにシリコーンパウダーを混在させることにより該シリコーン分の樹脂表面へのブリードアウトが抑制された摺動性能の耐久性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られ、この樹脂組成物を用いることにより摺動性能の耐久性に優れた自動車用ガラスランチャンネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の塗装・植毛処理ガラスランチャンネルの概略を示す説明図である。
【図2】従来の無塗装・無植毛処理ガラスランチャンネルの概略を示す説明図である。
【図3】シリコーンゴムパウダー配合品(実施例)およびシリコーンゴムパウダー無配合品(比較例)についてのガラス摩耗回数と動摩擦係数との関係を示すグラフである。
【図4】シリコーン分のブリードアウト抑制の作用機構を説明するための概念図である。
【図5】シリコーン分のブリードアウト抑制の作用機構を説明するための概念図である。
Claims (3)
- 基材が熱硬化性または熱可塑性エラストマーからなり、そのガラス摺接部に滑材入り表面処理材を膜状に被膜成形してなる自動車用ガラスランチャンネルにおいて、滑材入り表面処理材が熱可塑性樹脂中にシリコーンオイルおよび/またはシリコーンポリマー1〜40重量%とシリコーンパウダー0.1〜10重量%とを混在させた耐耗性熱可塑性樹脂組成物であることを特徴とする自動車用ガラスランチャンネル。
- シリコーンオイルおよび/またはシリコーンポリマーの重量平均分子量が103〜106で、かつ粘度が0.65〜10万cStであることを特徴とする請求項1記載の自動車用ガラスランチャンネル。
- シリコーンパウダーが三次元架橋した網目構造を持つシリコーン樹脂パウダーおよび/またはシリコーンゴムパウダーであることを特徴とする請求項または2項記載の自動車用ガラスランチャンネル。
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