JP3622520B2 - ポリカーボネート樹脂及びそれを用いた光学情報記録媒体用基板、並びに光学情報記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネート樹脂(以下、「PC樹脂」ということがある。)に関し、特に光ディスク等の光学情報記録媒体用の基板に好適に用いられるポリカーボネート樹脂に関するものである。さらに本発明は、上記ポリカーボネート樹脂を用いた光学情報記録媒体用基板、及びそれを用いた光学情報記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
非接触で記録、再生可能な光記録方式は、従来の磁気記録方式に比較し傷や汚れに対して強い特徴を有し、記憶容量の大容量化に大きく貢献している。
この方式の記録媒体は、ポリカーボネート樹脂等透明基板上に情報記録層を形成することによって構成されている。PC樹脂は、溶融成形時の耐熱性に優れ成形後の寸法変化が少ないこと及び機械的特性が優れていることから、前記した情報記録媒体の基板材料として好適な材料である。光記録媒体には、複屈折や機械特性等の基板そのものの特性が問題となるのは勿論、基板を製造する際に生じるピットずれや離型ムラ等に成形欠陥が少ないことも要求される。また、PC樹脂を基板とする場合、その使途上、透明基板に残る複屈折を極端に嫌う為に、より高温で成形するのが常である。その時、生成した低分子揮発物によるスタンパーやレプリカへの付着によるビットエラーが重要な問題を引き起こしており、この揮発量低減は重要な命題となっている。
【0003】
これまで、このような用途に適したPC樹脂に関して、その中に含まれる低分子量体を論じた文献も多い。例えば、重合法の改善から低分子化合物を低減する方法が、特公平6−23243号公報、特開平6−336522号公報、特開平3−109420号公報等に記載されている。また、生成ポリマーから低分子量体を除去する手法として、特開昭63−278929号公報、特開昭64−6020号公報、特開平4−306227号公報等に低分子量成分をアセトン抽出する手法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の公知文献を始め従来の技術では、低分子量体をPC樹脂自体から如何にして削減するかを論じたもので、低分子化合物の内どの種の低分子揮発物がどの様な機構で揮発するのか考察した訳ではなく、この点に関して十分再考の余地があることは紛れもない事実であった。特に、低分子量成分の削減のために必要なアセトン抽出等の手段は、その効果こそ比較的満足できるものであるが、その分アセトン抽出等の煩雑な工程が必要となり、工業的には問題が多かった。例えばアセトン抽出を行う場合には、抽出工程だけでなく、アセトンを分離する工程やアセトンを回収する工程も必要となるため、工業的には極めて煩雑なプロセスとなってしまう。
【0005】
本発明者らは、光記録媒体の基板として好適なPC樹脂について鋭意検討した結果、PC樹脂中の特定の化合物の存在が重要であること、また、その化合物の存在の有無というよりもむしろ存在形態が重要であることを見いだした。言い換えると、上記特定の低分子化合物の溶融PC樹脂への溶解性(相溶性)と共に、PC樹脂中の上記特定の低分子化合物の分解反応を抑制すること(即ち熱的に安定なPC樹脂を得ること)も重要であることを見いだした。即ち、PC樹脂の製造時に副生する低分子化合物を熱的に安定なものにすることにより一定量の低分子化合物が含有されているにもかかわらず、揮発してくる割合を少なくすることができることを知得し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の第1の要旨は、芳香族ジオール類とカーボネート形成性化合物とをモノフェノール類を分子量調節剤として重合させて得られるポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂中の下記一般式(1)で表される低分子化合物の含有量が、0.2〜2重量%であり、該ポリカーボネート樹脂を350℃、1mmHgの真空下で20分間加熱した時、揮発してくる上記低分子化合物の割合がポリカーボネート樹脂中に含有されている該低分子化合物の0.2重量%以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂、
【0007】
【化2】
(但し、R1 は芳香族ジオール類残基、R2 はモノフェノール類残基を表す。)に存する。
【0008】
また本発明の第2の要旨は、芳香族ジオール類とカーボネート形成性化合物とをモノフェノール類を分子量調節剤として重合させて得られるポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表される低分子化合物の含有量が、0.2〜2重量%であり、該ポリカーボネート樹脂を400℃、1mmHgの真空下で30分間加熱した時、揮発してくる上記低分子化合物の割合がポリカーボネート樹脂中に含有されている該低分子化合物の2重量%以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂、に存する。
【0009】
さらに本発明の第3の要旨は、芳香族ジオール類とカーボネート形成性化合物とをモノフェノール類を分子量調節剤として重合させて得られるポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表される低分子化合物の含有量が、0.2〜2重量%であり、かつ、10g/ショットのディスクをシリンダー温度350℃にて5000ショット射出成形した後のスタンパーに付着した上記低分子化合物の量が、成形に使用された全樹脂量の1ppb以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂、に存する。
【0010】
さらに本発明の第4の要旨は、芳香族ジオール類とカーボネート形成性化合物とをモノフェノール類を分子量調節剤として重合させて得られるポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表される低分子化合物の含有量が、0.2〜2重量%であり、かつ、10g/ショットのディスクをシリンダー温度380℃にて5000ショット射出成形した後のスタンパーに付着した上記低分子化合物の量が、成形に使用された全樹脂量の4ppb以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂、に存する。
【0011】
本発明のさらに他の要旨は、前記ポリカーボネート樹脂からなる光学情報記録媒体用基板、及び、その基板上に光学記録層が設けられてなる光学情報記録媒体、に存する。
本発明の技術的要点は、上記一般式(1)で表される低分子化合物の揮発量の割合を特定割合以下とすることにある。従来技術においては、この一般式(1)で表される特定の低分子化合物の存在の認識がなかったばかりでなく、一般的な低分子量体の絶対量を論じるに止まっており、揮発量の割合こそが重要であるとの認識は全くなかった。例えば、アセトン抽出によって低分子成分を除去した場合、上記一般式(1)で表される低分子化合物の絶対量は減少するものの、揮発する割合は下がらないのである。
【0012】
上記観点から問題を見つめ直すと、低分子量物の揮発現象には勿論、低分子化合物の含有量の多い少ないが関係しているのも事実であるが、それ以上に驚くべきことに、低分子化合物の溶融ポリカーボネート樹脂への溶解性(相溶性)及び低分子化合物の分解反応性(即ちPC樹脂の熱的な安定性)が、低分子化合物が揮発したり、しなかったりする現象を支配していることが判明した。
【0013】
即ち、PC樹脂の製造時に副生する低分子化合物を熱的に安定なものにすることにより、PC樹脂中に一定量の低分子化合物が含有されているにもかかわらず、揮発してくる割合を少なくすることができることを知得して本発明に到達したのである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、前記一般式(1)で表される化合物は、芳香族ジオール類の水酸基末端がカーボネート形成性化合物を介してモノフェノール類と反応して生成した化合物として位置づけられ、例えば芳香族ジオール類としてビスフェノールAを使用し、カーボネート形成性化合物としてホスゲンを使用し、モノフェノール類としてp−t−ブチルフェノールを使用した場合、前記低分子化合物は、下記式(2)で表される化合物である。(以下、この化合物を「PBP」と略記することがある。)
【0015】
【化3】
【0016】
本願発明では、PC樹脂中に存在する前記低分子化合物の量が、0.2〜2重量%であることが必須であり、好ましくは0.3〜2重量%、さらに好ましくは0.3〜0.7重量%、最も好ましくは、0.3〜0.5重量%である。前記範囲未満とするには、アセトン抽出等の特殊な操作が必要となり、また、前記範囲を超過する場合は、光学情報記録媒体用基板としての特性が得られない。前記低分子化合物量を低減する為には、普通、製造後抽出等の特殊な操作が必要となるが、本発明においては、このような操作は特段必要では無く、従ってPC樹脂中の前記低分子化合物量を特に必要以上に下げる必要はない。
【0017】
さて、前記本発明の第1の要旨に従うPC樹脂は、350℃、1mmHgの真空下で20分間加熱したときの揮発物としての前記一般式(1)で表される低分子化合物の量が、加熱前の該低分子化合物の含有量の0.2重量%以下であることが必須であり、好ましくは0.15重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下とするのが有利である。即ち、前記式(1)で表される低分子化合物のPC樹脂中の割合は勿論であるが、同時にその揮発量が問題となるのである。揮発物としての前記低分子化合物の量が前記範囲を超過する場合は、光学情報記録媒体用基板としての特性が得られない。従来のアセトン抽出等による方法では、低分子化合物全般の量は低減されるものの、存在する低分子化合物のうちの揮発割合については全く効力がなかった。
【0018】
なお、上記の揮発量の試験においては、試験温度を下げたり、あるいは試験時間を短縮すれば、揮発してくる前記低分子化合物量は少なくなり、加熱前の含有量に対する割合が低下することになる為、この試験条件を厳密に再現することが判定する上で重要な因子となる。
【0019】
次に前記本発明の第2の要旨に従うPC樹脂は、400℃、1mmHgの真空下で30分間加熱したときの揮発物としての前記一般式(1)で表される低分子化合物の量が、加熱前の該低分子化合物の含有量の2重量%以下であることが必須であり、好ましくは1.5重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下とするのが有利である。即ち、前記式(1)で表される低分子化合物のPC樹脂中の割合は勿論であるが、同時にその揮発量も問題となるのである。揮発物としての前記低分子化合物の量が前記範囲を超過する場合は、光学情報記録媒体用基板としての特性が得られない。従来のアセトン抽出等による方法では、低分子化合物全般の量は低減されるものの、存在する低分子化合物のうちの揮発割合については全く効力がなかった。
【0020】
さらに前記本発明の第3または第4の要旨に従うPC樹脂は、10g/ショットのディスクをシリンダー温度350℃にて5000ショット射出成形した後のスタンパーに付着した前記低分子化合物の量が、成形に使用された全樹脂量の1ppb以下であるか、シリンダー温度380℃としたときに4ppb以下であること、のいずれかが必須である。この範囲を超過する場合は、光学情報記録媒体用の基板として好適なものとはならない。
【0021】
さて、本発明でPC樹脂の原料として使用される芳香族ジオール類は、一般式HO−Z−OHで表され、ここで、Zは1個またはそれ以上の芳香核であり、核の炭素と結合する水素は、塩素、臭素等のハロゲン原子、脂肪族の基または脂環式の基等の置換基で置換することができる。複数の芳香核は、それぞれ異なった置換基を有することもできる。また、複数の芳香核は、架橋基で結合されていてもよい。この架橋基には、脂肪族の基、脂環式の基、ヘテロ原子またはそれらの組合せが含まれる。
【0022】
具体的には、ヒドロキノン、レゾルシン、ビフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ジアルキルベンゼン、及び核にアルキルまたはハロゲン置換基をもったこれらの誘導体が挙げられる。もちろん、これらの芳香族ジオール類の2種以上を併用することも可能である。
【0023】
これらの芳香族ジオール類及び他の適当な芳香族ジオール類は、例えば米国特許第4,982,014号、同第3,028,365号、同第2,999,835号、同第3,148,172号、同第3,275,601号、同第2,991,273号、同第3,271,367号、同第3,062,781号、2,970,131号、及び同第2,999,846号の明細書、ドイツ特許公開第1,570,703号、同第2,063,050号、同第2,063,052号、及び同第2,211,956号の明細書、並びにフランス特許第1,561,518号の明細書等に記載されている。
【0024】
特に好適な芳香族ジオール類には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが含まれる。
【0025】
本発明でPC樹脂の原料として使用されるカーボネート形成性化合物としては、芳香族ジオール類と反応してカーボネート結合を生じるものであれば特に制限はなく、ホスゲン、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等各種のものが採用できる。好ましくは、ジフェニルカーボネート及びホスゲンであり、ホスゲンを原料とするのが特に好ましい。ここで、「ホスゲンを原料とする」とは、ホスゲンをPC樹脂の直接の原料とする場合だけでなく、ホスゲンを原料として例えばジフェニルカーボネート等を製造しそれを用いてPC樹脂を製造する等の場合をも含む。
【0026】
本発明者らは、最終製品として得られるPC樹脂中の低分子化合物の揮発性に関し鋭意検討した結果、驚くべきことに、この揮発性と原料ホスゲン中に不純物として含有される塩素とに相関がある事が判明した。すなわちホスゲン中に含有される不純物塩素はポリカーボネート製造工程における初期の芳香族ジオール類のアルカリ金属塩水溶液とホスゲンとの反応段階で芳香族ジオール類の特定箇所を何らかの形で塩素化し、最終工程まで変化しないまま残存し、後の成形工程において、通常より過酷な条件に置かれた場合、徐々に分解してくるような形態のものである事が判明した。
【0027】
しかしてこの原料ホスゲン中に含有される不純物塩素を可能な限り少ない状態まで除去すればする程、成形時の溶融熱安定性が向上し、結果的に低分子オリゴマーが揮発し難くなる事を知得した。例えばその手段として使用される原料であるホスゲンの精製目的で一旦液化したホスゲンを更に活性炭塔を通液させ、不純物として微量含有されるCl2を吸着除去したホスゲンを使用して製造したポリカーボネート樹脂は、やはり得られる低分子化合物の含有量に変化は無いものの、同化合物の熱安定性が異なり、結果として高温成形した際に揮発し難いという現象として発現される。
【0028】
従来から、有機溶媒の存在下、芳香族ジオール類のアルカリ金属塩水溶液とホスゲンとの反応によりポリカーボネートを得る二相界面縮合法において使用されるホスゲン、及び有機溶媒の不存在下、芳香族ジオール類とジアリールカーボネートとの反応によりポリカーボネートを得る溶融法でジアリールカーボネートの原料として使用されるホスゲン、中の不純物は多く研究され、ホスゲン中に含有される塩素量として数百ppmのオーダーを数十ppm迄低減する技術も紹介され、これがポリカーボネートにとって良い事も指摘されている。
【0029】
例えば、米国特許第3,230,253号や同第3,331,873号の明細書には、ホスゲンの製造後、フェノール類や活性炭を経由させ不純物として含有される塩素を吸着除去しているが、含有される塩素量として数百ppmのオーダーを数十ppm迄低減する技術として紹介されているだけで、具体的に同ホスゲンをポリカーボネートの製造に利用した訳ではない。
【0030】
一方、特開昭62−297320号や特開昭62−297321号の公報には、ホスゲン中の不純物としてホスゲンより高沸点の四塩化炭素が挙げられ、成形時に加熱した場合に塩酸を発生させる為、ホスゲン中の四塩化炭素含有量を一定量以下とすることが記載されている。
さらにホスゲン製造反応は、一般に活性炭を触媒にCOとCl2から実施する。しかもこの反応は、最終段階で平衡状態に到達する為、ホスゲン中の含有Cl2量を低減しようとすると、CO/Cl2比をCO過剰の方向に振る事も可能である。しかしCOを大過剰とすると、COガスの損失になると同時にCOガスに同伴されてオフガスとして排出されるホスゲン量が多く、原単位を極端に悪化させる結果となる。従って多くのホスゲンプラントでは、ホスゲン損失が抑えられるギリギリまでCO過剰量を抑えて運転するのが通常であり、結果として極微量のCl2に関しては、測定手段及び測定精度の事もあり、無視されてきたのが現実である。
【0031】
本発明のPC樹脂を製造するためには、「ホスゲンを原料とする」場合、ホスゲンとして塩素含有量が1500ppb以下、好ましくは1000ppb以下、さらに好ましくは500ppb以下、最も好ましくは100ppb以下のものを使用するのが好ましい。
しかして、上記のように原料ホスゲン中に含有される塩素を十分に除去すれば、最終的に得られるPC樹脂の成形時の溶融熱安定性が向上し、結果的に、優れた特性を有する光学情報記録媒体用の基板に好適なPC樹脂となる。例えば、液体ホスゲンを活性炭処理して含有塩素量を十分に低減させたホスゲンを使用してPC樹脂を製造した場合、ホスゲン量を低減させないホスゲンを使用したPC樹脂に比べ、前記一般式(1)で表される化合物の含有量に差がなくても、揮発試験時の低分子化合物の揮発量或いは射出成形時にスタンパーに付着する量は極めて少なくなる。
【0032】
本発明者らの知見によれば、例えば従来の二相界面縮合法や溶融法でのPC樹脂の製造においては、PC樹脂中に存在しうる塩素の由来としてはホスゲン中の塩素以外にも塩化メチレン等の反応溶媒に由来するものや洗浄に使用する塩酸に由来するもの等多種のものが考えられるが、ホスゲン中の塩素量が圧倒的に、PC樹脂からの低分子化合物の揮発量或いはスタンパーに付着する低分子化合物の量を左右するのであり、これは実に驚くべき知見である。
【0033】
「ホスゲンを原料とする」場合、ホスゲンは液状またはガス状で使用されるが、温度管理の面からは液状であるのが好ましく、特に後述する塩素を吸着除去する場合に有利である。
ホスゲン中の塩素の濃度を上記範囲にするための方法には特に制限はなく、はじめから塩素の残存しないホスゲンの製造方法を採用する方法や、通常の方法にて塩素を多量に含有するホスゲンを製造し、それを精製して塩素を除去する方法が例示できる。工業的には後者の方法が好ましい。ホスゲン中の塩素の除去方法は、活性炭等の吸着剤による吸着除去や沸点差を利用した蒸留による分離除去等があり、いずれの方法で除去してもかまわない。但し蒸留除去の場合、除去オーダーが極めて低い数値であって相当の蒸留段数を要すため、この点から吸着除去の方が有利である。
【0034】
ホスゲン中の塩素を吸着除去する場合に使用する吸着剤としては、活性炭の外、フェノール類等各種のものを使用できる。
活性炭を使用する場合、活性炭の種類としては、酸性ガス用、塩基性ガス用、一般ガス用等各種のものが使用できるが、塩素の吸着能力の点から好適な活性炭は、酸性ガス用活性炭である。好ましい活性炭の特性は以下のようである。
【0035】
粒度 :2〜60メッシュ、より好ましくは30〜60メッシュ
真密度 :1.9〜2.2g/cc、より好ましくは2.0〜2.1g/cc
空隙率 :33〜75%、より好ましくは45〜75%
比表面積:700〜1500m2 /g、より好ましくは900〜1300m2 /g
細孔容積:0.5〜1.4cc/g、より好ましくは0.7〜1.4cc/g
平均孔径:1〜40Å、さらに好ましくは15〜40Å
液状のホスゲンを活性炭にて処理する場合、活性炭への通液条件としては、通常、空間速度(SV)=2〜10程度、好ましくは2〜5程度、更に好ましくは、2〜4程度で処理する。SV値が大きすぎると活性炭塔出口での吸着塩素の微量リークが認められる様になり、好ましくない。また、通液温度は通常0〜5℃程度で120g−塩素/kg−活性炭程度の吸着容量を保持できる。
【0036】
本発明のPC樹脂を製造するには、PC樹脂の分子量調節剤(連鎖停止剤)としてモノフェノール類を使用することが必須である。モノフェノール類は、フェノール性水酸基の数以外、前記の芳香族ジオール類と同様の構造のものを採用することができるが、その種類によって、PC樹脂中の低分子化合物の生成量が若干異なる場合がある。
【0037】
適当なモノフェノール類には、種々のフェノール類、例えば、通常のフェノールのほか、p−t−ブチルフェノール及びp−クレゾールのようなC1 〜C10のアルキルフェノール、並びにp−クロロフェノール及び2,4,6−トリブロモフェノールのようなハロゲン化フェノールが含まれる。なかでも、フェノール、イソプロピルフェノール、イソオクチルフェノール及びp−t−ブチルフェノール等アルキルフェノール類が、好適である。モノフェノール類の使用量は、目的とする縮合体の分子量によっても異なるが、通常、芳香族ジオール類に対して、0.5〜10重量%の量で使用される。
【0038】
モノフェノール類の使用時期(添加時期)によっても、光学情報記録媒体としての特性は変化しうるが、例えばカーボネート形成性化合物の共存下でモノフェノール類を添加すると、モノフェノール類同志の縮合物(炭酸ジフェニル類)が多く生成し好ましくないことがある。またモノフェノール類の添加を極端に遅らせた場合、分子量制御が困難となりあまり現実的ではない。結局、停止剤の添加は、カーボネート形成性化合物の消費が終了した直後から、分子量伸長が始まる前での間が好ましいと言える。
【0039】
本発明においては、任意の分岐剤もPC樹脂の原料とすることができる。使用される分岐剤は、3個またはそれ以上の官能基を有する種々の化合物から選ぶことができる。適当な分岐剤としては、3個またはそれ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物が挙げられ、例えば、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン及び1,4−ビス(4,4′−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼンが挙げられる。また、3個の官能基を有する化合物である、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌルも使用しうる。中でも、3個またはそれ以上のフェノール性ヒドロキシ基を持つものが好適である。分岐剤の使用量は、目的とする分岐度によっても異なるが、通常、芳香族ジオール類に対し、0.05〜2モル%の量で使用される。
【0040】
本発明のPC樹脂は、通常、1)ホスゲンと芳香族ジオール類とを界面重縮合条件下もしくは溶液重合条件下で反応させる方法、または、2)ホスゲンとフェノールを反応させる等の方法によりジフェニルカーボネートを製造し、これと芳香族ジオール類とを溶融縮合条件下で反応させる方法、で製造することができる。
【0041】
上記2)の典型的な反応としては、精製されたジフェニルカーボネートと芳香族ジオール類とを溶融条件下(〜300℃)、高真空条件(≦50mmHg)でフェノールを蒸留しながらエステル交換により分子量伸張させてゆく。この時、重縮合触媒として種々のタイプのものが使用される。また蒸留されたフェノールは、通常回収して再利用する。
【0042】
他方、上記1)の方法は、芳香族ジオール類の金属塩水溶液とホスゲンとを有機溶媒の存在下で反応させてカーボネートオリゴマーを得る方法が代表的であり、かつ、工業的に最もポピュラーな方法である。そこで、以下上記1)方法について詳細に説明する。
上記方法において、芳香族ジオール類は水及び水溶性の金属水酸化物と共に水相を形成する。金属水酸化物としては、通常水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が用いられる。水相中で芳香族ジオール類は、上記水酸化物と反応して水溶性の金属塩を生じる。この場合、水相中の芳香族ジオール類とアルカリ金属水酸化物のモル比は、1:1.8〜1:3.5が好ましく、更に1:2.0〜1:3.2が好ましい。水相には、ハイドロサルファイト等の還元剤を少量添加してもよい。
【0043】
使用する有機溶媒としては、反応温度及び反応圧力において、ホスゲン及びカーボネートオリゴマー、ポリカーボネート等の反応生成物は溶解するが、水を溶解しない(水と溶液をつくらないという意味で)任意の不活性有機溶媒を含む。代表的な不活性有機溶媒には、ヘキサン及びn−ヘプタンのような脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレンのような塩素化脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びクロロトルエンのような塩素化芳香族炭化水素、その他ニトロベンゼン及びアセトフェノンのような置換芳香族炭化水素が含まれる。中でも、塩素化された炭化水素、例えば塩化メチレンまたはクロロベンゼンが好適に使用される。これらの不活性有機溶媒は、単独であるいは他の溶媒との混合物として使用することができる。
【0044】
ホスゲンの好ましい使用量は、反応条件、特に反応温度及び水相中の芳香族ジオール金属塩の濃度によっても影響は受けるが、芳香族ジオール類1モルに対するホスゲンのモル比で、通常1.0〜2.0、好ましくは1.0〜1.5、さらに好ましくは1.0〜1.2、最も好ましくは1.05〜1.15である。この比が大きすぎると、ホスゲンの損失が多く好ましくない。一方、小さすぎると、CO基が不足し、適切な分子量伸長が行われなくなり好ましくない。
【0045】
縮合触媒の供給は、ホスゲンとの接触に先立って行うこともできるし、また好ましい。もちろん、望むならば、縮合触媒の供給を、ホスゲンとの接触時に行ってもよい。縮合触媒としては、二相界面縮合法に使用されている多くの縮重合触媒の中から、任意に選択することができる。中でも、トリアルキルアミン、N−エチルピロリドン、N−エチルピペリジン、N−エチルモルホリン、N−イソプロピルピペリジン及びN−イソプロピルモルホリンが適しており、特にトリエチルアミン及びN−エチルピペリジンが特に適している。
【0046】
得られるポリカーボネート樹脂中の低分子化合物の揮発原因物質を出来るだけ低減させるという意味で、ポリカーボネート樹脂自体の純度を可能な限り向上させる事が、生成した低分子化合物の揮発を抑制する重要な因子である事は説明したが、この意味での純度を向上させる為の手段として、例えば1)先に示した様に原料中の不純物を極力排除する事、及び2)ホスゲン化反応を極力副生物を避けて実行する事等が挙げられる。
【0047】
後者の方法では、例えば有機相と水相を乳化し、あらかじめ界面積を増加させた乳濁液を、ホスゲンと接触させ、ホスゲンの溶媒への溶解を極力回避し、その間でホスゲンを消費する方向でオリゴマーを得る。このオリゴマーに停止剤を反応させた場合、得られる低分子化合物の含有量に変化は無いものの、同化合物の熱安定性が異なり、結果として高温成形した際に揮発し難いという現象として発現されることが判った。
【0048】
有機相と水相との接触条件が、何故影響を与えるかについてはおよそ以下のように考えられる。
両末端が停止剤で停止された化合物は、停止剤をフェノールの状態で使用し、使用段階でホスゲンが残存していない環境下であると、その前駆体としては、ビスクロロフォーメート体に限定され、このビスクロロフォーメート体を製造する手法の相違が、高温成形した時の揮発現象を支配し、上記の様な乳化条件下で製造したビスクロロフォーメート体は熱的に安定でポリカーボネート融体中にも安定に存在し得る一方、乳化をしない条件下で製造したビスクロロフォーメート体は、反応溶媒中に溶解したホスゲンによる交換反応を受け(ホスゲノリシス反応)、基本的に同じ物質ではあるが、熱的に不安定で劣化し易いものに変化し、この様なビスクロロフォーメート体から両末端停止された化合物は、ポリカーボネート融体中にも安定に存在し得ず、高温成形した際に容易に揮発してくると推定される。
【0049】
さらにCl2等不純物を除去したホスゲンを使用して製造したポリカーボネートオリゴマーと極微量の不純物を含有したままのホスゲンを使用して製造したポリカーボネートオリゴマーは、やはり熱的な安定性が異なり、前者のオリゴマーの方が後者のオリゴマーより揮発し難い現象として現われる。
すなわち、二相界面縮合法において、使用される原料の純度を向上させるべく使用ホスゲン中の低沸点不純物であるフリー塩素を吸着除去、精製した後、別の原料である塩化メチレン(有機相)と芳香族ジオール類のアルカリ金属塩(水相)を乳化し、あらかじめ界面積を増加させた乳濁液を、ホスゲンと接触させることによって、界面で生成するオリゴマーは、水相から芳香族ジオール類のアルカリ金属塩の供給が潤沢であるので、ホスゲンの反応消費が加速され、ホスゲンの溶媒中に溶解する機会が激減し、結果的にモノクロロホーメート体の生成が優勢となり、ビスクロロフォーメート体がホスゲンにより交換反応することは殆ど無くなり、結果熱的に安定なオリゴマーを得る事ができるようになり、更に使用されるホスゲンもCl2等不純物を殆ど含有しないものを使用する為、ポリマー、オリゴマーが部分的に塩素化されて熱的に不安定のなる事もなく、停止剤が両末端に付加した低分子化合物も熱的に安定となることを知得した。
【0050】
上記のように、本発明においては二相界面縮合法を採用した場合、ホスゲンとの接触に先立って有機相と水相とを接触させ、乳濁液を形成させるのが特に好ましい。乳濁液を形成させるためには、通常の撹拌翼を有する撹拌機の外、ホモジナイザ、ホモミキサ、コロイドミル、フロージェットミキサ、超音波乳化機等の動的ミキサや、静的ミキサ等の混合機を使用するのが好ましい。乳濁液は通常、0.01から10μmの液滴径を有し、乳化安定性を有する。
【0051】
乳化の状態は通常ウェーバー数或いはP/qで表現できる。ウェーバー数としては、好ましくは10000以上、さらに好ましくは20000以上、最も好ましくは35000以上である。また、上限としては1000000以下程度で十分である。また、P/qとしては、好ましくは200kg・m/リットル以上、さらに好ましくは500kg・m/リットル以上、最も好ましくは1000kg・m/リットル以上である。
【0052】
乳濁液とホスゲンとの接触は、前記乳化条件よりも弱い混合条件下で行うのがホスゲンの有機相への溶解を抑制する意味で好ましく、ウェーバー数として10000未満、好ましくは5000未満、さらに好ましくは2000未満である。また、P/qとしては、200kg・m/リットル未満、好ましくは100kg・m/リットル未満、さらに好ましくは50kg・m/リットル未満である。ホスゲンとの接触は、管型反応器や槽型反応器にホスゲンを導入することによって達成することができる。また、接触時の温度は、通常80℃以下、好ましくは70℃以下、さらに好ましくは10〜65℃である。
【0053】
ホスゲンとの接触によってオリゴマー化が進行する。オリゴマーを得る段階での有機相中のオリゴマーの濃度は、得られるオリゴマーが可溶な範囲であればよく、具体的には、10〜40重量%程度である。また、有機相の割合は、芳香族ジオール類のアルカリ金属水酸化物水溶液、即ち水相に対して0.2〜1.0の容積比であることが好ましい。このような縮合条件下で得られるオリゴマーの平均分子量(Mv)は、通常500〜10,000程度、好ましくは1600〜4500であるが、この分子量に制限されない。
【0054】
このようにして得られたオリゴマーは、常法に従い、重縮合条件下で、高分子のポリカーボネートとする。好ましい実施態様においては、このオリゴマーの溶存する有機相を水相から分離し、必要に応じ、前述の不活性有機溶媒を追加し、該オリゴマーの濃度を調整する。すなわち、重縮合によって得られる有機相中のポリカーボネートの濃度が5〜30重量%となるように、溶媒の量が調整される。しかる後、新たに水及びアルカリ金属水酸化物を含む水相を加え、さらに重縮合条件を整えるために、好ましくは前述の縮合触媒を添加して、二相界面縮合法に従い、所期の重縮合を完結させる。重縮合時の有機相と水相の割合は、容積比で、有機相:水相=1:0.2〜1:1程度が好ましい。
【0055】
重縮合完結後は、残存するクロロフォーメート基が0.1μeq/g以下になるまで、水酸化ナトリウムのようなアルカリで洗浄処理する。その後は、電解質が無くなるまで、有機相を洗浄し、最終的には有機相から適宜不活性有機溶媒を除去、ポリカーボネートを分離する。このようにして得られるポリカーボネートの平均分子量(Mv)は、通常10,000〜100,000程度である。
【0056】
上記の反応において、縮合触媒や分岐剤の添加時期に特に制限はないが、ホスゲンの消費が終了した直後から、分子量伸長が始まる前までの間が好ましい。
なお、本願において、平均分子量(Mv)とは、オリゴマーまたはポリカーボネートの濃度(C)0.6g/dl塩化メチレン溶液を用いて、温度20℃で測定した比粘度(ηsp)から、下記の両式を用いて算出した値である。
【0057】
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η] =1.23×10−5Mv0.83
以上の方法で得られるPC樹脂には、これを反応器から分離する途中、またはこれを加工する前またはその間において、種々の添加剤、例えば安定剤、型抜き剤、燃焼遅延剤、帯電防止剤、充填剤、繊維、衝撃強度向上剤等の有効量を加えることができる。
【0058】
本発明のPC樹脂を製造するための方法は特に制限はなく、通常のPC樹脂の製造法に上記好ましい方法を組み合わせる等の手段により、当業者にとって容易に実施できる。例えば、原料としてホスゲンを用いる場合にはホスゲン中の塩素を測定値以下にする手段を用いたり、二相界面縮合法を用いる場合に水相と有機相とを乳化した後ホスゲンと接触させる手段を用いたり、さらにはモノフェノール類の添加位置をホスゲンの消費が終了した直後から分子量伸長が始まる前までの間とする等の手段を単独或いは組み合わせることが好ましい。上記の方法等本発明のPC樹脂を得るための方法のうちいくつかの方法自体は、PC樹脂の製造法として公知であるが、これらの文献に具体的に記載されている方法自体では本発明のPC樹脂を得ることはできない。
【0059】
本発明のPC樹脂は、射出成形、押出成形などによって種々の成形品、例えばフィルム、糸、板等に加工することもできるし、種々の技術的分野、例えば電気部品または建築産業において、また照明器具用材料及び光学的機器材料、特に灯火のハウジング、光学レンズ、光学ディスク及びオーディオディスク等に使用される。特に高温成形を余儀なくされる光学分野に好ましく使用される。
【0060】
光学情報記録媒体は一般に、ポリカーボネート樹脂層からなるディスク基板の部分と蒸着、スパッタリング等により形成されるFe、Co等の遷移金属類、Tb、Gd、Nd、Dy等の希土類を組み合わせて成る情報記録層、及び同記録層を保護するための保護層としてシリコン系セラミック等が中間層として使用され、最後に表面にオーバーコート層として紫外線硬化樹脂等を用いた層構成が一般的である。この様にして形成した光学情報記録媒体は、主に追記及び書き換え型として用いる。
【0061】
【実施例】
以下、実施例に従って、本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらによって限定されるものではない。
実施例1〜5
ビスフェノールA(以下「BPA」とも記す)16.31kg/時、水酸化ナトリウム5.93kg/時、及び水101.1kg/時を、ハイドロサルファイト0.018kg/時の存在下に、35℃で溶解した後、25℃まで冷却した水相、並びに5℃に冷却した塩化メチレン68.0kg/時の有機相を、各々内径6mm、外径8mmのステンレス製配管に供給し、同配管内で混合し、さらにホモミキサー(特殊機化株式会社製、製品名T.KホモミックラインフローLF−500型)を用いて、乳化し、乳濁液を調製した。
【0062】
このようにして得られた、ビスフェノールAのナトリウム塩(以下「BPA−Na」とも記す)水溶液(水相)と塩化メチレン(有機相)の乳濁液を、ホモミキサーから分岐する内径6mm、外径8mmの配管で取出し、これに接続する内径6mm、長さ34mのテフロン製パイプアクターにおいて、ここに別途導入される0℃に冷却したパイプより供給された液化ホスゲン7.5kg/時と接触させた。この液化ホスゲンは、直径:55mm、高さ:500mmの円筒型容器に、粒度30〜60メッシュ程度、真密度:2.1g/cc、空隙率:40%、比表面積:1200m2 /g、細孔容積:0.86cc/gの活性炭(ヤシコールS、大平化学製)を充填し、−5℃、7.2kg/hr、SV=3で通液処理し、表−1に示す通りの塩素含有量の液化ホスゲンを、活性炭塔出口で、表−1に示す様な塩素含有量まで低下させたものである。
【0063】
上記乳濁液はホスゲンとパイプリアクター内を1.7m/秒の線速にて20秒間流通する間に、ホスゲン化、オリゴマー化反応を行った。この時、反応温度は、それぞれ60℃になるように調整しいずれも次のオリゴマー化槽に入る前に35℃まで外部冷却を行った。
このようにしてパイプリアクターより得られるオリゴマー化された乳濁液を、さらに内容積50リットルの撹拌機付き反応槽に導き、窒素ガス雰囲気下30℃で撹拌し、オリゴマー化することで、水相中に存在する未反応のBPA−Naを完全に消費させた後、水相と有機相を静置分離し、オリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。オリゴマー化に際し、触媒トリエチルアミン0.005kg/時、及び分子量調節剤のp−t−ブチルフェノール0.65kg/時を、各々、オリゴマー化槽に導入した。
【0064】
上記オリゴマーの塩化メチレン溶液のうち23kgを、内容積70リットルのファウドラー翼付き反応槽に仕込み、これに希釈用塩化メチレン10kgを追加し、さらに25重量%水酸化ナトリウム水溶液2.2kg、水6kg、及びトリエチルアミン2.2gを加え、窒素ガス雰囲気下30℃で撹拌し、60分間重縮合反応を行って、ポリカーボネートを得た。
【0065】
この反応液に、塩化メチレン30kg及び水7kgを加え、20分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。分離した有機相に、0.1N塩酸20kgを加え15分間撹拌し、トリエチルアミン及び小量残存するアルカリ成分を抽出した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。さらに、分離した有機相に、純水20kgを加え、15分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。この操作を抽出排水中の塩素イオンが検出されなくなるまで(3回)繰り返した。
【0066】
得られた精製ポリカーボネート溶液をニーダーで粉化し、乾燥後粒状粉末(フレーク)を得た。このフレークを、30mm二軸押出機(池貝鉄鋼製)、樹脂温290℃にてN2雰囲気下混練後、ペレット化した(15kg/hr)。この時、操作上不純物の混入が懸念される点(人の手や汗及び冷却に使用するH20)に関し、十分の注意を払いながら処理した。
【0067】
各実施例で得られたポリカーボネート樹脂について、平均分子量(Mv)及び分子量分布(Mw/Mn)、色調、低分子化合物含有量、及び射出成形時の揮発低分子化合物量、並びに射出成形性及び成形品物性等を、以下の方法によりそれぞれ測定、評価し、結果を表1に示した。
【0068】
(1)分子量分布(Mw/Mn)
GPC装置(東ソー株式会社製、製品名HLC−8020)を使用し、テトラヒドロフランを溶離液とし、4種の高速GPC用充填材(東ソー株式会社製、製品名TSK 5000HLX、4000HLX、3000HLX、及び2000HLX)を充填した4本のカラムで分離し、屈折率差により検出して得られたチャートより、Mw及びMnをポリスチレン換算で求め、Mw/Mnを算出した。
【0069】
(2)色調(YI)
フレークを、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、製品名FS80S−12ASE)を用い、280℃で可塑化後、シリンダー内で15秒滞留させ、厚さ3.2mm、60mm角の見本板を成形した。また、可塑化後、シリンダー内での滞留時間を5分とした見本板も成形した。
【0070】
これらの見本板について、色差計(スガ試験機株式会社製、製品名SM−4−CH)を用いて、色調(YI値)を測定した。測定値のうち、15秒滞留のYI値が小さいのは、定常成形時の色調が良好であることを示し、15秒滞留と5分滞留のYI値の差(ΔYI)が小さいのは、高温における熱安定性が良好であることを示す。
【0071】
(3)分解・揮発物測定
得られたポリカーボネートペレット20gを、真空下(1mmHg)にガラス封管し、ペレットの部分のみ350℃で20分間、または400℃で30分間、加熱し、空冷されたガラス気相部(150℃〜50℃)に付着してきたもののみを全量、テトラヒドロフラン(THF)に溶解した。
【0072】
同溶液を液体クロマトグラフィにより測定した(条件:THF/水(1/1)溶媒→THF100%へ変化、検出器:UV270nm、測定機種:シマズLC−9A)。
液体クロマトグラフにより展開された化合物を、それぞれLC−MS法により同定した。
【0073】
一方、同定された化合物の内、分解生成してくる化合物のうちPBP、下記式(3)で表される化合物(C−PTBP)、及び下記式(4)で表わされる化合物(PB)の量を比較した。
【0074】
【化4】
【0075】
【化5】
【0076】
(4)ディスク成形時のスタンパー付着低分子化合物量
住友重機械製 DISK3成形機を使用し、シリンダー温度:350℃、金型温度:103℃/98℃、充填時間:0.34秒、冷却時間:4.5秒、圧縮力:22.5−13.8−10トン、ショット数:5000(10g−PC樹脂/ショット)の条件下で、3.5インチ基板を成形した。スタンパーは230MB(ISO/IEC 13963規格)を使用した。
【0077】
この条件にて成形した後、スタンパーに付着した低分子化合物をTHFにて全量溶解、抽出し、上記同様液体クロマトグラムにて測定、付着低分子化合物量の比較を行った。付着低分子化合物は、測定チャート上PBPが主成分と判ったので、PBPに関し絶対検量線法により、抽出液中PBP濃度を求め、昇華PBP重量に換算後、成形に使用した樹脂量当たりに計算し直した。
【0078】
さらに、シリンダー温度を380℃にする以外、上記と同様条件にて成形し、同様にスタンパーに付着した低分子化合物量を求めた。
(5)射出成形性、及び基板特性
ピットずれは1000ショット毎に各3面、内外周のSFP部、及び外周7,8,9バンドを光学顕微鏡で観察した。
【0079】
離型ムラは1000ショット毎に各25面、反射及び透過光で目視観察した。また、オーク製作所製自動複屈折測定装置ADR−130Nを使用し、面内複屈折及び垂直複屈折を測定し、その最大値と最小値を示した。
基板の機械特性は、光ディスクの規格(ISO/IEC 13963)に従って評価し、十分余裕をもってクリアするものを○、ぎりぎりであるがクリアするものを△で表した。
【0080】
比較例1
実施例5において、ホスゲンを活性炭塔を通液処理しない以外は実施例5と同様の操作を行った。
比較例2
実施例5において、ビスフェノールA、水酸化ナトリウム、及び水の水相と、塩化メチレンの有機相とをホモミキサーを使用する代わりに、内径2mmのオリフィスを通過させることによって混合した後、ホスゲンと接触反応させた以外は、実施例5と同様の操作を行った。
【0081】
比較例3
比較例2の手法で分子量調節剤のp−t−ブチルフェノールをホスゲン添加と同時に添加した以外、比較例2と同様の操作を行った。
比較例4
比較例2の手法で分子量調節剤のp−t−ブチルフェノールを縮合工程後期、即ちオリゴマーの塩化メチレン溶液のうち、23kgを、内容積70リットルのファウドラー翼付き反応槽に仕込み、これに希釈用塩化メチレン10kgを追加し、さらに25重量%水酸化ナトリウム水溶液2.2kg、水6kg、及びトリエチルアミン2.2gを加え、窒素ガス雰囲気下30℃で撹拌し、15分間重縮合反応を行って、分子量調節剤のp−t−ブチルフェノールを添加し、更に15分間撹拌を継続、ポリカーボネートを得た以外、比較例2と同様の操作を行った。
【0083】
比較例5
実施例5において、高塩素含量のホスゲンを使用し、SV=20で活性炭塔を通液処理した以外実施例5と同様の操作を行った。これらの比較例についても、実施例1〜5と同様に諸特性を評価し、その結果を表−2に示した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
【発明の効果】
本発明によって得られるPC樹脂は、PC樹脂固有の優れた物性を有するだけでなく、高温成形における熱安定性が著しく向上して、低分子揮発物が少なく、着色の少ない成形品を得ることができるので、従来品に比べ、その用途範囲を大きく拡大できる利点を有する。特に、これを光学情報記録媒体の基板として用いると、特性に優れた光学情報記録媒体を得ることができる。
Claims (9)
- 芳香族ジオール類とカーボネート形成性化合物とをモノフェノール類を分子量調節剤として重合させて得られるポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表される低分子化合物の含有量が、0.2〜2重量%であり、該ポリカーボネート樹脂を400℃、1mmHgの真空下で30分間加熱した時、揮発してくる上記低分子化合物の割合がポリカーボネート樹脂中に含有されている該低分子化合物の2重量%以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
- 芳香族ジオール類とカーボネート形成性化合物とをモノフェノール類を分子量調節剤として重合させて得られるポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表される低分子化合物の含有量が、0.2〜2重量%であり、かつ、10g/ショットのディスクをシリンダー温度350℃にて5000ショット射出成形した後のスタンパーに付着した上記低分子化合物の量が、成形に使用された全樹脂量の1ppb以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
- 芳香族ジオール類とカーボネート形成性化合物とをモノフェノール類を分子量調節剤として重合させて得られるポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表される低分子化合物の含有量が、0.2〜2重量%であり、かつ、10g/ショットのディスクをシリンダー温度380℃にて5000ショット射出成形した後のスタンパーに付着した上記低分子化合物の量が、成形に使用された全樹脂量の4ppb以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
- カーボネート形成性化合物が、塩素含有量が1500ppb以下のホスゲン、又は該ホスゲンを原料としたカーボネート化合物である請求項1〜4のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂。
- ホスゲンの塩素含有量が1000ppb以下である、請求項5に記載のポリカーボネート樹脂。
- 有機溶媒を含む有機相と、水及び芳香族ジオール類の金属塩を含む水相とを、乳化条件下で接触させて乳濁液を生成させた後、この乳濁液をホスゲンと、縮合反応条件下、上記乳化条件よりも弱い混合条件下で接触させてオリゴマーを得る工程を経て得られたものである、請求項1〜6のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂。
- 請求項1〜7のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂からなる光学情報記録媒体用基板。
- 請求項1〜7のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂からなる基板上に光学記録層が設けられてなる光学情報記録媒体。
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