JP3622485B2 - 水性塗料組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水性塗料組成物に関し、さらに詳しくは、紙、プラスチック、金属、ガラス、セラミックス、木材等の基材に使用することのできる安定性良好な速乾性水性塗料組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、有機溶剤型塗料は省資源、省エネルギー、低公害化、あるいは安全衛生性等の面から水性型塗料への移行が望まれている。水性型塗料に使用される水性樹脂の中でも界面活性剤を用いた水性エマルジョン型樹脂は、高分子量であり、ある程度低温でも優れた塗膜を形成するためあらゆる分野で利用されている。
しかし、通常の水性型塗料は溶媒が水であるため溶剤型塗料に比べ乾燥性が著しく遅い。建築外壁用塗料分野では水性化とともに省力化、工期短縮化が強く要望されている。さらに、塗装後の乾燥性の悪さからくる汚染性や降雨などによる塗料の流出が問題視されている。
【0003】
これらの問題を解決するために、乾燥性を早める方法として低沸点の有機溶剤を添加する方法、アニオン性官能基を含む樹脂に揮発性塩基でブロックしたカチオン性化合物を添加し揮発性塩基の揮発によるイオン結合により乾燥性を早める方法、さらに、樹脂を乾性油で変性し金属ドライヤー等を添加することによる酸化架橋で乾燥性を早める方法も知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの方法には次のような問題がある。低沸点有機溶剤の添加は塗料中の有機溶剤の量が増えて好ましくない。また、イオン結合の導入については建材等に使用されるアルカリ基材に塗装した際の耐アルカリ性に問題がある。さらに、酸化架橋の導入については速乾性という程の性能に至っていないのが現状である。
【0005】
そこで、本発明は低沸点の有機溶剤を添加することなく、建材等に使用されるアルカリ基材に塗装した際についても優れた塗膜物性を保持しつつ極めて速い乾燥性を持つ水性塗料組成物を提供することを課題とする。なお、ここでいう極めて速い乾燥性とは、塗装してから気温5℃、湿度65%の条件下で30分間乾燥後、水の接触に対して塗料が流れ出さない程度をいう。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる水性塗料組成物は、カルボニル基含有不飽和単量体(A)、およびカルボキシル基含有不飽和単量体(B)、およびその他のラジカル重合可能な不飽和単量体(C)の重量比が、(A)0.5〜20%、(B)0.5〜5%、(C)75〜98%であるラジカル重合可能な不飽和単量体を乳化重合して得られる共重合体(D)と、得られた共重合体(D)に含有されるカルボニル基、およびカルボキシル基に対して0.05〜0.5モルの多価金属を添加し、pHが7〜10であることを特徴とする建築外壁用水性塗料組成物であって、
【0007】
前記ラジカル重合可能な不飽和単量体を乳化重合する際に使用する乳化剤が分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を持つ反応性乳化剤であり、前記ラジカル重合可能な不飽和単量体100重量部に対して反応性乳化剤が0.1〜10重量部である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
【0009】
本発明では、カルボニル基含有不飽和単量体、カルボキシル基含有不飽和単量体、およびその他のラジカル重合可能な不飽和単量体を乳化重合して、多価金属を添加することを特徴としている。従来のようにカルボキシル基だけによる金属架橋だとイオン結合であるため耐アルカリ性に問題があったが、カルボニル基を用いることで耐アルカリ性を克服するとともに、極めて速い乾燥性を持つ塗料組成物を見いだすことができた。これは、カルボニル基と多価金属が配位結合によりキレートを形成しているためだと推測する。さらに、カルボキシル基だけの場合、乾燥性を高めるためにカルボキシル基を多く導入すると中和した際に粘度が著しく高くなると言う問題がおきる。このような場合でも、カルボニル基では問題なく乾燥性を高めることができる。
【0010】
本発明に使用するカルボニル基含有不飽和単量体としては、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アクロレイン、N−ビニルホルムアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルアクリレート、アセトアセトキシブチルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレートなどの1種または2種以上から選択することができる。
【0011】
カルボニル基含有不飽和単量体はラジカル重合可能な不飽和単量体100部中に0.5〜20重量%である。カルボニル基含有不飽和単量体が0.5%より少ないと、得られる水性塗料組成物の乾燥性の効果が低下すると同時に、耐アルカリ性に問題が出てくる。一方、20%より多いと、重合安定性、保存安定性が悪くなる。
【0012】
本発明に使用するカルボキシル基含有不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などの重合性不飽和カルボン酸およびそれらの無水物などの1種または2種以上から選択することができる。
【0013】
カルボキシル基含有不飽和単量体はラジカル重合可能な不飽和単量体100部中に0.1〜5重量%である。カルボキシル基含有不飽和単量体が0.1%より少ないと、得られる水性塗料組成物の機械安定性、経時安定性が低下する。一方、5%より多いと、中和時の粘度が高くなるとともに、塗膜の耐水性が悪くなる。
【0014】
その他のラジカル重合可能な不飽和単量体としてはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸エステル類、スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系モノマー、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシ基含有モノマー、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタアクリルアミドなどのN−置換アクリル、メタクリル系モノマー、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有モノマー、並びにアクリロニトリルなどの1種または2種以上から選択することができる。
【0015】
その他のラジカル重合可能な不飽和単量体はラジカル重合可能な不飽和単量体100部中に75〜98重量%であることが望ましいが、これはカルボニル基含有不飽和単量体とカルボキシル基含有不飽和単量体の合計が2〜25重量%であることと意味は等しい。カルボニル基含有不飽和単量体とカルボキシル基含有不飽和単量体の合計が2%より少ないと極めて速い乾燥性と言うには効果が乏しく、25%より多いと経時安定性が悪くなると同時に耐水性も低下する傾向にある
。
【0016】
本発明の水性塗料組成物には、架橋剤として多価金属を配合する。添加方法としては、水に多価金属塩を溶解してから添加する。より好ましくは多価金属塩水溶液に塩基性物質を加えて金属錯体として添加した方がよい。また、多価金属添加前の樹脂溶液もあらかじめpHを高くしておいた方が好ましい。
【0017】
多価金属としては、銅、銀、リチウム、ベリリウム、亜鉛、アルミニウム、コバルト、ニッケル、鉛、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、スズ、ジルコニウム、モリブデン、マグネシウム等が使用できる。また、これらの金属は水もしくは塩基性水に溶解できる酸化物、水酸化物、炭酸化物、塩化物等の形で用いることができる。
【0018】
多価金属の添加量は乳化共重合体に含有されるカルボニル基、カルボキシル基に対して0.05〜0.5モルの金属を添加する。0.05モル以下だと乾燥性の効果が顕著に現れない。また、0.5モル以上だと塗料の安定性が悪くなるとともに、塗膜の耐水性も悪くなる。
【0019】
水性塗料組成物のpHは7〜10である。pHが7より低いと樹脂の保存安定性が悪くなり、凝集物を発生する。また、pHが10を超えると中和に使用した塩基の量が増え揮発するのに時間がかかり結果的に極めて速い乾燥性が得られない。
【0020】
中和する際、アンモニアもしくはトリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン類、2−ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール等のアルコールアミン類、モルホリン等の塩基で中和することができる。ただ、乾燥性に効果が高いのは揮発性の高い塩基であり、最も好ましい塩基はアンモニアである。
【0021】
本発明の反応性乳化剤は分子中にラジカル重合性の不飽和基を1個以上有するものであり、例えばスルフォコハク酸エステル系(市販品としては、例えば花王株式会社製ラテムルS−120,S−180P,S−180A,三洋化成株式会社製エレミノールJS−2等)やアルキルフェノールエーテル系(市販品としては、例えば第一工業製薬株式会社製アクアロンHS−10,RN−20等)がある。
乳化重合に際しては、これらの1種または2種以上を混合してもよい。また、反応性乳化剤の使用量が少なく乳化が不十分である場合は必要に応じて反応性のない乳化剤を併用することも可能である。反応性のない乳化剤としては通常の乳化重合に使用されるアニオン系、ノニオン系の乳化剤を使用することができる。
【0022】
反応性乳化剤は、不飽和単量体100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜7重量部使用する。0.1重量部以下では重合時のエマルジョンの安定性が悪く凝集が起こりやすい。また10重量部以上では粒子径は小さくなるが、多量の乳化剤を使用するため、その悪影響として塗膜の耐水性が悪くなる。
【0023】
乳化重合時に使用する開始剤としては、アンモニウムパーオキサイド、ソディウムパーオキサイド等の無機系過酸化物重合開始剤や水溶性アゾ系開始剤を使用する。これら開始剤は単独で使用することもできるが、エルソルビル酸ナトリウム等の還元剤との併用によるレドックス型で使用してもよい。
【0024】
また乳化重合中に、硫酸第二銅、塩化第二銅等の銅イオンや、硫酸第二鉄、塩化第二鉄等の鉄イオンなどの遷移金属イオンを重合系に10−7〜10−5モ ル/リットルの範囲で添加することができる。
【0025】
さらに緩衝剤として酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等が、また保護コロイドとしてのポリビニルアルコール、水溶性セルロース誘導体等が、連鎖移動剤としてのステアリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類が使用できる。
【0026】
本発明の水性塗料組成物は、上記水性分散体に顔料、染料等の着色剤やフィラー、微粉末シリカ等のチキソ性調整剤、コロイダルシリカ、アルミナゾル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性または水分散性ポリウレタン樹脂、乳化剤、消泡剤、レベリング剤、滑り剤、粘着性付与剤、防腐剤、防黴剤、造膜助剤としての有機溶剤などを必要に応じて配合する。
【0027】
本発明の水性塗料組成物は、建築外壁用塗料として主に使用できるが、印刷インキ、被覆剤、塗料、接着剤、紙加工材、繊維加工材等として使用することができ、紙、プラスチック、金属、ガラス、セラミックス、木材、コンクリート、スレート、不織布、皮革、合成皮革等の基材に塗装して、常温もしくは120℃以下の低温で乾燥することができる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、例中「部」、「%」はそれぞれ「重量部」、「重量%」を示す。
【0029】
製造例1
温度計、滴下ロート、還流冷却管を備え窒素ガスで置換した反応容器に、表1に示す反応釜量のイオン交換水を仕込む。表1の滴下分はあらかじめ混合してプレエマルジョンとしておく。内温を80℃に昇温した後、滴下を開始した。内温を80℃に保ちながらプレエマルジョンを3時間かけて滴下し、さらにその温度で2時間反応した。冷却後、固形分51.0%、粘度2100cps、pH2.2の水性樹脂分散体を得た。
【0030】
【表1】
【0031】
製造例2〜7
表2に示す組成を実施製造例1と同様の方法で重合して、それぞれの水性樹脂分散体を得た。
【0032】
【表2】
【0033】
実施例1〜11
【0034】
さらに得られた製造例1〜7の水性樹脂分散体を用いて表3に示す塗料を作成し、塗膜の物性を評価した。塗料化は下記処方による。また、塗膜の物性の評価も下記に示す。各試験で得られた試料の物性結果も同時に表3に示した。
【0035】
塗料化処方
1.水性樹脂分散体 370部
2.プライマルASE60(日本アクリル社製 増粘剤) 4部
3.ブチルカルビトール 30部
4.サンノプコSN−364(消泡剤) 5部
5.イオン交換水 10部
6.多価金属水溶液
7.アンモニア水(pH調整用)
【0036】
【表3】
【0037】
水性樹脂分散体および塗膜の評価
(1)重合安定性:反応終了後の反応容器への樹脂の付着量および、濾布で濾過後の凝集物の量を目視で評価した。なお、評価基準は次のとおりである。
◎:良好である。
○:実用上問題のないレベルである。
△:若干問題のあるレベルである。
×:不良である。
【0038】
(2)保存安定性:密閉したガラス容器に水性樹脂溶液をいれて40℃で1カ月保存し、粘度の変化率を測定した。さらに、ガラス容器の底の凝集物について目視で評価した。なお、評価基準は次のとおりである。
◎:粘度変化率 ≦±10%、凝集物は認められない。
○:粘度変化率 ≦±10%、凝集物がわずかに認められる。
△:粘度変化率 ±10%〜±30%、もしくは凝集物が一部認められる。
×:粘度変化率 ≧±30%、もしくはかなりの沈降が認められる。
【0039】
(3)耐水白化性:上記で作成した塗料をガラス板上にアプリケーターで塗布して室温で7日間乾燥させて得られた塗膜を50℃の温水に1時間浸して塗膜の白化程度を目視で評価した。なお、評価は5点評価で行った。
5点:全く白化していない。
1点:全面に著しい白化が認められる。
【0040】
(4)耐アルカリ性:上記で作成した塗料をガラス板上にアプリケーターで塗布して室温で7日間乾燥させて得られた塗膜を水酸化カルシウム飽和水溶液に7日間浸して塗膜の変化を目視で評価した。
5点:全く変化していない。
1点:全面に著しい塗膜の剥離、白化、膨れ等が認められる。
【0041】
(5)速乾性:上記で作成した塗料をガラス板上にアプリケーターで塗布してから気温5℃、湿度65%の条件下で乾燥を行う。5分間隔で水を接触させ塗料が流れ出さなくなった時間で評価した。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、保存安定性が良好で、塗装してから気温5℃、湿度65%の条件下で30分間乾燥後、水の接触に対して塗料が流れ出さないという極めて速い乾燥性をもつ水性塗料組成物を得ることができる。この水性塗料組成物はさらに優れた耐水性、耐アルカリ性、基材密着性、耐汚染性、造膜性などの塗膜物性を持つ塗膜が形成でき、建築外壁用塗料として特に有用である。
Claims (1)
- カルボニル基含有不飽和単量体(A)、およびカルボキシル基含有不飽和単量体(B)、およびその他のラジカル重合可能な不飽和単量体(C)の重量比が、(A)0.5〜20%、(B)0.5〜5%、(C)75〜98%であるラジカル重合可能な不飽和単量体を乳化重合して得られる共重合体(D)と、得られた共重合体(D)に含有されるカルボニル基、およびカルボキシル基に対して0.05〜0.5モルの多価金属を添加し、pHが7〜10であることを特徴とする水性塗料組成物であって、
前記ラジカル重合可能な不飽和単量体を乳化重合する際に使用する乳化剤が分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を持つ反応性乳化剤であり、前記ラジカル重合可能な不飽和単量体100重量部に対して反応性乳化剤が0.1〜10重量部であることを特徴とする建築外壁用水性塗料組成物。
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- 1998-03-16 JP JP06489198A patent/JP3622485B2/ja not_active Expired - Fee Related
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