JP3620524B2 - パターン形成方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、紫外線、遠紫外線、X線又は荷電粒子線の如き放射線を用いるパターン形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
集積回路の製造に代表される微細加工の分野においては、集積回路のより高い集積度を得るために、リソグラフィーにおける加工サイズの微細化が進んでおり、近年では、0.5μm以下の微細加工を安定的に行うことのできる技術が必要とされている。そのため、用いられるレジストにおいても、0.5μm以下のパターンを精度良く形成することが必要である。それ故、より波長の短い放射線を利用したリソグラフィー技術が検討されている。
このような放射線としては、i線(365nm)に代表される紫外線、KrFエキシマレーザー(248nm)に代表される遠紫外線、シンクロトロン放射線に代表されるX線、電子線に代表される荷電粒子線等を挙げることができる。近年、これらの放射線に対応するレジストが種々提案されている。
それらのうち特に注目されているのが、放射線の照射によって生成する酸の触媒作用により、現像液に対する溶解性を変化させる反応を起こさせるレジストであり、この種のレジストは、通常、「化学増幅型レジスト」と称されている。
【0003】
レジストを実際に集積回路の製造プロセスに使用する場合、通常、感放射線性成分、被膜形成性樹脂成分等の「レジスト」を構成する感放射線性成分を溶剤に溶解したレジスト溶液を調製し、加工に供される基板上に回転塗布やロールコーターによる塗布を行い、レジスト被膜を形成させる。そのため、レジスト溶液の塗布性や保存安定性といった性能は、高度な微細加工を安定的に行う上で、必要不可欠な性能である。また当該レジスト被膜は、放射線を照射することにより、微細加工に適したパターンを形成するが、この際のパターンの形状が微細加工の精度に重要な影響を与え、矩形の形状が好ましいとされている。
【0004】
従来のリソグラフィーに用いられているノボラック樹脂とナフトキノンジアジド系感光剤を使用したレジストにおいては、レジスト溶液を調製する際の溶媒として、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を用いることが知られている。しかし、「化学増幅型レジスト」については、レジスト溶液を調製する際の溶媒として、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを用いると、保存安定性の面で問題がある。すなわち、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを溶媒として用いると、レジスト溶液調製後の時間経過によってレジスト被膜の感度及び形成されるパターン形状がバラツクという問題がある。
また、近年の集積回路の高集積度化に伴い、集積回路製造時の歩留まりや効率を向上させるため、基板(シリコンウェハー)の口径が、例えば4インチから6インチ、8インチと大きくなってきており、従来からの化学増幅型レジストの溶剤として一般的な、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを用いる化学増幅型レジストでは大口径化された基板に対するスピンコート法による塗布性が必ずしも充分なものとは言えなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、改良されたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いるパターン形成方法を提供することにあり、感度、解像度等に優れた、特に大口径化された基板へのスピンコート法による塗布性に優れた化学増幅型レジストとして好適なポジ型感放射線性樹脂組成物を用いるパターン形成方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、微細加工を安定的に行うことができ、良好なパターン形状を与えるパターン形成方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、レジスト溶液の調製後長時間経過した後においても、良好なレジスト感度を有し、優れたパターン形状を再現性良く形成する、保存安定性の優れたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いるパターン形成方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的及び利点は以下の説明から明らかとなろう。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば本発明の上記目的及び利点は、下記(イ)のポジ型感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布してレジスト被膜を形成し、該レジスト被膜に放射線を照射したのち、現像する工程を有することを特徴とするパターン形成方法により達成される。
【0007】
(イ) (a)酸分解性基で保護されたアルカリ不溶性又はアルカリ難溶性の樹脂で、該酸分解性基が分解したときにアルカリ可溶性となる樹脂(以下、「酸分解性基含有樹脂」という。)、(b) 放射線の照射によって酸を発生する化合物(以下、「感放射線性酸発生剤」という。)、並びに(c)乳酸アルキルエステル(以下、「乳酸系溶剤」という。)と、プロピレングリコールアルキルエーテル(以下、「プロピレングリコールエーテル系溶剤」という。)及び/又はプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート(以下、「プロピレングリコールアセテート系溶剤」という。)とを含有してなる混合溶剤を含有するポジ型感放射線性樹脂組成物(以下、「レジスト組成物(イ)」という。)。
【0008】
以下、レジスト組成物(イ)について説明する。
感放射線性酸発生剤
本発明で用いられる感放射線性酸発生剤、すなわち放射線に感応して酸を発生する化合物としては、例えばオニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、スルホン化合物及びスルホネート化合物等を挙げることができる。より具体的には以下の化合物を挙げることができる。
【0009】
ア)オニウム塩
ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等を挙げることができる。好ましくは、ジフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、(ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウムトルエンスルホネート等である。
【0010】
イ)ハロゲン含有化合物
ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物、ハロアルキル基含有炭化水素化合物等を挙げることができる。好ましくは、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、メトキシフェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ナフチル−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジン等の(トリクロロメチル)−s−トリアジン誘導体や1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタンである。
【0011】
ウ)スルホン化合物
β−ケトスルホン、β−スルホニルスルホン及びそれらのα−ジアゾ化合物等を挙げることができる。好ましくは、フェナシルフェニルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン等である。
【0012】
エ)スルホネート化合物
アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート等を挙げることができる。好ましくは、ベンゾイントシレート、ピロガロールのトリストリフレート、ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート等である。
【0013】
これらの感放射線性酸発生剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0014】
酸分解性基含有樹脂
レジスト組成物(イ)における酸分解性基含有樹脂は、例えば後述するアルカリ可溶性樹脂中のフェノール性水酸基、カルボキシル基等の酸性官能基を、酸の存在下で分解しアルカリ可溶性を発現しうる1種以上の置換基(以下、「酸分解性基」という。)で置換することによって得られるアルカリ不溶性樹脂又はアルカリ難溶性樹脂である。
ここで言う「アルカリ不溶性」又は「アルカリ難溶性」とは、レジスト組成物(イ)を用いて形成されるレジスト被膜からレジストパターンを形成する際に採用されるアルカリ現像条件下で、レジスト組成物(イ)の代わりに酸分解性基含有樹脂のみを用いて形成した被膜を現像した場合に、当該被膜の初期膜厚の50%以上が現像後に残存する性質を意味する。
【0015】
前記酸分解性基は、フェノール性水酸基、カルボキシル基等の酸性官能基を、酸の存在下で分解しうる1種以上の酸分解性基で置換したものであり、酸の存在下に分解し、アルカリ可溶性を示す官能基を形成する基である限り特に限定されるものではないが、例えば置換メチル基、1−置換エチル基、1−分岐アルキル基、シリル基、ゲルミル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、環式酸分解性基等を挙げることができる。
【0016】
前記置換メチル基としては、例えばメトキシメチル基、メチルチオメチル基、エトキシメチル基、エチルチオメチル基、メトキシエトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、ベンジルチオメチル基、フェナシル基、ブロモフェナシル基、メトキシフェナシル基、(メチルチオ)フェナシル基、シクロプロピルメチル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、ブロモベンジル基、ニトロベンジル基、メトキシベンジル基、メチルチオベンジル基、エトキシベンジル基、エチルチオベンジル基、ピペロニル基等を挙げることができる。
【0017】
前記1−置換エチル基としては、例えば1−メトキシエチル基、1−メチルチオエチル基、1,1−ジメトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−エチルチオエチル基、1,1−ジエトキシエチル基、1−フェノキシエチル基、1−フェニルチオエチル基、1,1−ジフェノキシエチル基、1−ベンジルオキシエチル基、1−ベンジルチオエチル基、1−シクロプロピルエチル基、1−フェニルエチル基、1,1−ジフェニルエチル基、αーメチルフェナシル基等を挙げることができる。
【0018】
前記1−分岐アルキル基としては、例えばイソプロピル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基等を挙げることができる。
【0019】
前記シリル基としては、例えばトリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、ジエチルメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、メチルジイソプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジ−t−ブチルメチルシリル基、トリ−t−ブチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。
【0020】
前記ゲルミル基としては、例えばトリメチルゲルミル基、エチルジメチルゲルミル基、ジエチルメチルゲルミル基、トリエチルゲルミル基、ジメチルイソプロピルゲルミル基、メチルジイソプロピルゲルミル基、トリイソプロピルゲルミル基、t−ブチルジメチルゲルミル基、ジ−t−ブチルメチルゲルミル基、トリ−t−ブチルゲルミル基、ジメチルフェニルゲルミル基、メチルジフェニルゲルミル基、トリフェニルゲルミル基等を挙げることができる。
【0021】
前記アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、t−ペンチルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0022】
前記アシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、トルエンスルホニル基、メシル基等を挙げることができる。
【0023】
前記環式酸分解性基としては、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、オキソシクロヘキセニル基、4−メトキシシクロヘキシル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、3−ブロモテトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル基、S,S−ジオキシド基、2−1,3−ジオキソラニル基、2−1,3−ジチオラニル基、ベンゾ−2−1,3−ジオキソラニル基、ベンゾ−2−1,3−ジチオラニル基等を挙げることができる。
【0024】
これらの酸分解性基のうち、t−ブチル基、ベンジル基、t−ブトキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基及びテトラヒドロチオフラニル基等が好ましい。
【0025】
酸分解性基含有樹脂中における酸分解性基の導入率(酸分解性基含有樹脂中の酸性官能基と酸分解性基との合計数に対する酸分解性基の数の割合)は、好ましくは15〜100%、さらに好ましくは20〜100%、特に好ましくは20〜80%である。
【0026】
また、酸分解性基含有樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、好ましくは1,000〜150,000、さらに好ましくは3,000〜100,000である。
【0027】
酸分解性基含有樹脂は、例えば予め製造した1種以上のアルカリ可溶性樹脂に1種以上の酸分解性基を導入することによって、また、1種以上の酸分解性基を有する単量体の重合又は共重合あるいは1種以上の酸分解性基を有する重縮合成分の重縮合又は共重縮合によって製造することができる。
【0028】
これらの酸分解性基含有樹脂は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
レジスト組成物(イ)における感放射線性酸発生剤と酸分解性基含有樹脂との配合割合は、酸分解性基含有樹脂100重量部当たり、感放射線性酸発生剤が、好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜15重量部、特に好ましくは0.5〜10重量部である。感放射線性酸発生剤の配合量が0.05重量部未満では、放射線の照射により発生した酸の触媒作用による化学変化を有効に起こすことが困難となる場合があり、また20重量部を超えると、レジスト組成物(イ)を塗布する際に塗布むらが生じたり、現像時にスカムが発生するおそれがある。
【0030】
アルカリ可溶性樹脂
アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像液と親和性を示す官能基、例えばフェノール性水酸基、カルボキシル基等の酸性官能基を有し、アルカリ現像液に可溶である限り、特に限定されるものではない。
【0031】
このようなアルカリ可溶性樹脂としては、例えばヒドロキシスチレン、ヒドロキシ−α−メチルスチレン、ビニル安息香酸、カルボキシメチルスチレン、カルボキシメトキシスチレン、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ケイ皮酸等の酸性官能基を有する少なくとも1種の単量体の重合性二重結合が開裂した繰返し単位を有するビニル系樹脂や、ノボラック樹脂に代表される酸性官能基を有する縮合系繰返し単位を有する縮合系樹脂等を挙げることができる。
【0032】
アルカリ可溶性樹脂が前記ビニル系樹脂である場合は、該樹脂は前記酸性官能基を有する単量体の重合性二重結合が開裂した繰返し単位のみから構成されていてもよいが、生成した樹脂がアルカリ現像液に可溶である限りでは、必要に応じて、他の繰返し単位をさらに有することもできる。
【0033】
このような他の繰返し単位としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、無水マレイン酸、(メタ)アクリロニトリル、クロトンニトリル、マレインニトリル、フマロニトリル、メサコンニトリル、シトラコンニトリル、イタコンニトリル、(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、マレインアミド、フマルアミド、メサコンアミド、シトラコンアミド、イタコンアミド、ビニルアニリン、ビニルピリジン、ビニル−ε−カプロラクタム、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール等の重合性二重結合を含有する単量体の重合性二重結合部分が開裂した単位を挙げることができる。
【0034】
前記ビニル系樹脂からなるアルカリ可溶性樹脂を製造するための重合又は共重合は、単量体及び反応媒質の種類に応じて、ラジカル重合開始剤、アニオン重合触媒、配位アニオン重合触媒、カチオン重合触媒等の重合開始剤あるいは重合触媒を適宜に選定し、塊状重合、溶液重合、沈澱重合、乳化重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合等の適宜の重合形態で実施することができる。
【0035】
また、アルカリ可溶性樹脂が前記縮合系樹脂である場合、該樹脂は、例えばノボラック樹脂単位のみから構成されていてもよいが、生成した樹脂がアルカリ現像液に可溶である限りでは、他の縮合単位をさらに有することもできる。
このような縮合系樹脂は、1種以上のフェノール類と1種以上のアルデヒド類とを、場合により他の縮合系繰返し単位を形成しうる重縮合成分とともに、酸性触媒の存在下、水媒質中又は水と親水性溶媒との混合媒質中で重縮合又は共重縮合することによって製造することができる。
【0036】
この場合、前記フェノール類としては、例えばo−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール等を挙げることができ、また前記アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド等を挙げることができる。
【0037】
アルカリ可溶性樹脂中における酸性官能基を有する繰返し単位の含有率は、必要に応じて含有される他の繰返し単位の種類により一概に規定できないが、通常、15〜100モル%、さらに好ましくは20〜100モル%である。
【0038】
アルカリ可溶性樹脂は、炭素−炭素不飽和結合を含有する繰返し単位を有する場合、水素添加物として用いることもできる。この場合の水素添加率は、繰返し単位中に含まれる炭素−炭素不飽和結合の、通常、70%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下である。水素添加率が70%を超えると、アルカリ可溶性樹脂のアルカリ現像液による現像特性が低下する傾向がある。
【0039】
溶解制御剤
レジスト組成物(イ)には溶解制御剤を添加することもでき、この場合の溶解制御剤の添加量は、酸分解性基含有樹脂100重量部に対して、50重量部以下が好ましい。
【0040】
溶解制御剤としては、例えばフェノール性水酸基、カルボキシル基等の酸性官能基を、前述の酸分解性基で置換した化合物等を挙げることができる。
【0041】
好ましい溶解制御剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の多価フェノール性化合物、ヒドロキシフェニル酢酸等のカルボン酸化合物に前記酸分解性基を導入した化合物等を挙げることができる。
【0042】
具体的には、以下の化学式(a)又は(b)で示される化合物を挙げることができる。
【0043】
【化1】
【0044】
溶剤
レジスト組成物(イ)に使用される溶剤は、乳酸系溶剤とプロピレングリコールエーテル系溶剤及び/又はプロピレングリコールアセテート系溶剤とを含有してなる混合溶剤である。
かかる溶剤はレジスト組成物(イ)に優れた保存安定性を付与し、レジスト組成物(イ)の調製後、長時間を経過した後においても、良好なレジストパターン形状を再現性良く与えることを可能とする。
【0045】
本発明に用いられる乳酸系溶剤としては、例えば乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸の炭素数1から6のアルキルエステルを好適に使用することができ、さらに好ましくは乳酸エチルを挙げることができる。
【0046】
本発明に用いられるプロピレングリコールエーテル系溶剤は、プロピレングリコールアルキルエーテルであり、さらにプロピレングリコールアルキルエーテルとは、プロピレングリコールモノアルキルエーテル及び/又はプロピレングリコールジアルキルエーテルを意味する。
【0047】
プロピレングリコールエーテル系溶剤におけるプロピレングリコールには、1,2−ジヒドロキシ体と1,3−ジヒドロキシ体の2種類の異性体が存在し、更に1,2−ジヒドロキシ体ではそのモノアルキルエーテルの構造にも2種類の異性体が存在するため、一つのプロピレングリコールモノアルキルエーテルには合計3種類の異性体が存在する。
また、ジアルキルエーテルの場合にも同様に最大3種類の異性体が存在するが、2つのアルキル基が同一の場合、異性体は2種類である。
【0048】
プロピレングリコールのアルキルエーテル基としては、炭素数1〜6の低級アルキルエーテルを好適に用いることができ、アルキルエーテルとして好ましいものは、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテルなどであり、特に好ましいものはメチルエーテル、エチルエーテル等である。
本発明において、プロピレングリコールモノアルキルエーテル又はプロピレングリコールジアルキルエーテルは、アルキルエーテル部分の種類や異性体の種類に関して、単一でも、あるいは何種類かを混合しても、同様に好適に用いることができる。
また、モノエーテル体とジエーテル体を混合しても好適に用いることができる。
【0049】
このような溶剤として、具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等を挙げることができ、好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルを挙げることができる。
プロピレングリコールエーテル系溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0050】
また本発明に用いられるプロピレングリコールアセテート系溶剤は、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートを意味する。
プロピレングリコールエーテル系溶剤と同様に、プロピレングリコールアセテート系溶剤におけるプロピレングリコールにも、1,2−ジヒドロキシ体と1,3−ジヒドロキシ体の2種類の異性体が存在し、更に1,2−ジヒドロキシ体ではそのモノアルキルエーテルアセテートの構造にも2種類の異性体が存在するため、一つのプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートには合計3種類の異性体が存在する。
本発明において、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートは、アルキルエーテル部分の種類や異性体の種類に関して、単一でも、あるいは何種類かを混合しても、同様に好適に用いることができる。
【0051】
プロピレングリコールのアルキルエーテル基としては、プロピレングリコールエーテル系溶剤の例示に挙げた炭素数1〜6の低級アルキルエーテルを好適に用いることができ、アルキルエーテルとして好ましいものは、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル等であり、特に好ましいものはメチルエーテル、エチルエーテル等である。
【0052】
このようなプロピレングリコールアセテート系溶剤としては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールの炭素数1〜6の低級アルキルエーテルのアセテートを好適に用いることができる。特に好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを挙げることができる。
プロピレングリコールアセテート系溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0053】
これらの乳酸系溶剤とプロピレングリコールエーテル系溶剤及び/又はプロピレングリコールアセテート系溶剤との混合割合は、前記混合溶剤合計量100重量部中の乳酸系溶剤の割合が30〜95重量部であることが好ましい。
【0054】
本発明において、乳酸系溶剤とプロピレングリコールエーテル系溶剤及び/又はプロピレングリコールアセテート系溶剤との混合溶剤に他の溶剤を、全溶剤量の、例えば70重量%未満、好ましくは50重量%未満、特に好ましくは30重量%未満の範囲で混合することができる。
【0055】
ここで他の溶剤としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等のエステル類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0056】
また、全溶剤の配合量は酸分解性基含有樹脂100重量部に対して、通常、20〜3,000重量部、好ましくは50〜3,000重量部、さらに好ましくは100〜2,000重量部である。
【0057】
レジスト組成物(イ)には必要に応じて、界面活性剤、増感剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0058】
前記界面活性剤は、レジスト組成物(イ)の塗布性やストリエーション、レジストの現像性等を改良する作用を示す。
このような界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリコールジラウレート、ポリオキシエチレングリコールジステアレートのほか、商品名で、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75,No95(共栄社油脂化学工業製)、エフトップEF301,EF303,EF352(トーケムプロダクツ)、メガファックF171,F172,F173(大日本インキ化学工業製)、フロラードFC430,FC431(住友スリーエム製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−382,SC−101,SC−102,SC−103,SC−104,SC−105,SC−106(旭硝子製)等が挙げられる。
【0059】
界面活性剤の配合量は、レジスト組成物(イ)中の全樹脂成分100重量部当たり、通常、2重量部以下である。
【0060】
前記増感剤は、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを感放射線性酸発生剤に伝達し、それにより酸の生成量を増加させる作用を示すもので、レジスト組成物(イ)を用いて得られるレジストの感度を向上させる効果を有する。増感剤の好ましい具体例を挙げると、アセトン、ベンゼン、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等がある。
【0061】
増感剤の配合量は、レジスト組成物(イ)中の全樹脂成分100重量部当たり、通常50重量部以下、好ましくは30重量部以下である。
【0062】
また、染料あるいは顔料を配合することにより、放射線の照射時のハレーションの影響を緩和でき、また接着助剤を配合することにより、基板との接着性を改善することができる。
さらに、他の添加剤としては、アゾ化合物、アミン化合物等のハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤、形状改良剤等が挙げられる。
【0063】
レジスト組成物(イ)は、例えば固形分濃度5〜50重量%の溶液を、例えば孔径0.2μm程度のフィルターで濾過することによって調製される。
【0064】
パターン形成操作
レジスト組成物(イ)からパターンを形成する操作は、レジスト組成物(イ)を基板上に塗布してレジスト被膜を形成し、該レジスト被膜に放射線を照射したのち、現像する工程を有する。
より具体的には、レジスト組成物(イ)を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の手段によって、例えばシリコンウエハー、アルミニウムで被覆されたウエハー等の基板上に塗布することにより、レジスト被膜を形成し、所望のパターンを形成するように該レジスト被膜に放射線を照射する。その際に使用する放射線は、使用する感放射線性酸発生剤の種類に応じて、i線等の紫外線;エキシマレーザー等の遠紫外線;シンクロトロン放射線等のX線;電子線等の荷電粒子線を適宜選択して使用する。また、放射線量等の放射線照射条件は、レジスト組成物(イ)の配合組成、添加剤の種類等に応じて、適宜選定される。
【0065】
また、レジスト組成物(イ)を用いてパターンを形成する際には、作業雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、レジスト被膜上に保護膜を設けることもできる。
【0066】
また本発明においては、レジスト被膜のみかけの感度を向上させるために、放射線の照射後焼成を行うことが好ましい。その加熱条件は、レジスト組成物(イ)の配合組成、添加剤の種類等により変わるが、通常、30〜200℃、好ましくは50〜150℃である。
【0067】
次いで、アルカリ現像液で現像することにより、所定のパターンを形成する。前記アルカリ現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4,3,0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物を、通常、1〜10重量%、好ましくは2〜5重量%の濃度となるように溶解したアルカリ性水溶液が使用される。
【0068】
また、前記現像液には、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤及び界面活性剤を適量添加することもできる。
なお、このようにアルカリ性水溶液からなる現像液を使用する場合には、一般に、現像後、水で洗浄する。
【0069】
【実施例】
以下実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に何ら制約されるものではない。実施例中、各種の特性は、次のようにして評価した。
【0070】
Mw
東ソー(株)製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ml/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフ法により測定した。
塗布性
感放射線性樹脂組成物を、6インチのシリコンウェハー上にスピンコートし、90℃で2分間のベーキングをした後に、形成されたレジスト被膜を観察した。塗布むら、曇り及び異物がなく、表面平滑性が高い場合を良好とした。
感度
0.5μmのラインアンドスペースパターンが設計通りにパターン形成できる放射線照射量を感度とした。単位はJ/m2 で示した。
膜減り量
テンコール社製α−ステップにて現像前後のレジスト被膜の膜厚を測定して算出した。
【0071】
合成例1
ポリヒドロキシスチレン30gをテトラヒドロフランに溶解して、t−ブトキシカリウム10gを添加し、撹拌下、0℃において、ジ−t−ブチルジカルボネート60gを滴下し、4時間反応させた。反応終了後、この溶液を水中に滴下し、析出した樹脂を真空乾燥器にて50℃で一晩乾燥した。得られた樹脂は、Mwが15,000で、NMR測定の結果からフェノール性水酸基の水素原子の29%がt−ブトキシカルボニル基で置換された構造であった。この樹脂を樹脂(I)とする。
【0072】
実施例1及び比較例1
表1に示される溶剤に、表1に示される他の成分を混合し、0.2μmのフィルターで精密濾過することにより異物を除去して、ポジ型感放射線性樹脂組成物を得た。得られたポジ型感放射線性樹脂組成物を、6インチのシリコンウェハー上に回転塗布した後に、100℃で2分間ベーキングを行い、形成された膜厚1μmのレジスト被膜にマスクを介して放射線照射した。ここで、放射線照射にはアドモンサイエンス社製のKrFエキシマレーザー照射装置(MBK−400TL−N)を用いた。その後110℃で2分間ベーキングを行い、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38重量%水溶液で60秒間、23℃にて現像し、次いで水で30秒間リンスすることにより、パターンを形成した。なお、ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いたパターンの形成は、同一組成物について調製直後と調製30日後のものについて行った。得られた結果を表1に示した。
【0073】
実施例1及び比較例1における各成分と溶剤の混合比(重量比)は、樹脂100、感放射線性酸発生剤3、溶剤420である。
また、表1中の感放射線性酸発生剤及び溶剤は次のとおりである。
感放射線性酸発生剤
▲1▼トリフェニルスルホニウムトリフレート
【0074】
溶剤
EL :乳酸エチル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
ECA :エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
【0075】
【表1】
【0076】
【発明の効果】
本発明のパターン形成方法は、用いられるレジスト組成物(イ)が感度、解像度等に優れ、特に大口径化された基板へのスピンコート法による塗布性に優れ、かつ保存安定性に優れており、微細加工を安定的に行うことができ、良好なパターン形状を与えることができ、また、本発明のパターン形成方法はi線等の紫外線、エキシマレーザー等の遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線といった、放射線のいずれにも対応でき、特に、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造に有利に使用できる。
Claims (4)
- (a)酸分解性基で保護されたアルカリ不溶性又はアルカリ難溶性の樹脂で、該酸分解性基が分解したときにアルカリ可溶性となる樹脂、(b)放射線の照射によって酸を発生する化合物、並びに(c)乳酸アルキルエステルと、プロピレングリコールアルキルエーテル及び/又はプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートとを含有してなる混合溶剤を含有するポジ型感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布してレジスト被膜を形成し、該レジスト被膜に放射線を照射したのち、現像する工程を有することを特徴とするパターン形成方法。
- (c)混合溶剤が乳酸アルキルエステルとプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートとを含有してなる請求項1に記載のパターン形成方法。
- (c)混合溶剤合計量100重量部中の乳酸アルキルエステルの割合が30〜95重量部である請求項1または請求項2に記載のパターン形成方法。
- (c)混合溶剤が乳酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを含有してなる請求項1〜3のいずれかに記載のパターン形成方法。
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