JP3619949B2 - 車両用ディスクブレーキのキャリパボディ - Google Patents

車両用ディスクブレーキのキャリパボディ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や自動二輪車等の各種走行車両に用いられるディスクブレーキのキャリパボディであって、詳しくは、キャリパボディのブリッジ部外面に剛性力の向上を目的に設けられる補強リブに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からの一般的な車両用ディスクブレーキでは、ディスクロータと摩擦パッドとの摺接による制動反力が、キャリパボディの作用部と反作用部とを反ディスク方向へ押し返し、キャリパボディがディスクロータ外側のブリッジ部を支点にハの字状に開き変形して、制動力の低下等を招くことがあるため、例えば特開昭62−270835号公報に示される技術が提案されている。
【0003】
このキャリパボディは、シリンダ孔にピストンを内挿した作用部と、反力爪を有する反作用部とをディスクロータの両側部に対向配置し、ディスクロータの外周を跨いで作用部と反作用部とをつなぐブリッジ部の外面に、ディスク軸と平行な3条の補強リブを隆起して設け、中央の補強リブを両側の補強リブよりも外側へ厚肉に形成して、キャリパの剛性力を高めることにより、ハの字変形によるキャリパの撓みを抑えると同時に、鋳造成形時にはサイドリブよりも高位置のセンタリブを利用して湯口を設けるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、キャリパボディの剛性力を高めるために、単に補強リブの本数や面積を増加したり、ブリッジ部自体を厚肉に形成するだけでは、キャリパボディが大型化し、車体のばね下重量が増加して乗り心地の低下を招いたり、材料費が嵩んでコスト高となるため、剛性力を高めながらも極力軽量化することが望まれる。
【0005】
ところで、このようなキャリパボディでは、作用部とブリッジ部との連結部分や、反作用部とブリッジ部との連結部分が折れ曲がり形状であるために、制動反力による応力が集中する。殊に、作用部とブリッジ部との連結部分では、ピストンの重量を支えたり、シリンダ孔底部の液圧室に作動液が供給されるため、反作用部とブリッジ部との連結部分よりも厚肉となって、連結部分内外面の伸縮性が乏しくなることから、キャリパボディの中でも大きな歪みを生じることとなり、また液圧室の体積が膨脹する分だけ液圧が損失して、操作フィーリングが低下する。
【0006】
そこで本発明は、応力が大きく集中する作用部とブリッジ部との連結部分で、ハの字変形に耐える充分な剛性力を確保し、その他の部分では余分な肉厚の増加を極力避けて、操作フィーリングを良好に保ちつつ、軽量化との両立を図った車両用ディスクブレーキのキャリパボディを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的に従って、本発明を図面の符号を括弧書きで付記して説明すると、シリンダ孔(7)にピストン(8)を内挿した作用部(4a)と、反力爪(4d)を有する反作用部(4b)とをディスクロータ(2)の両側部に対向配置し、該ディスクロータ(2)の外周を跨いで配設されるブリッジ部(4c)の両端に前記作用部(4a)と反作用部(4b)とを一体に連結すると共に、作用部(4a)、ブリッジ部(4c)及び反作用部(4b)の外面に亘る補強リブ(4v)センタリブとしてキャリパボディ(4)の中央部にディスク軸方向に隆起して設けた車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、前記補強リブ(4v)は、一端が、ブリッジ部(4c)の外面から作用部側の連結部(4g)を通るシリンダ開口面(4f)の延長線(L)を越えて、作用部(4a)の外面まで延設され、他端が、ブリッジ部(4c)の外面から反作用部側の連結部(4h)を越えて、反作用部(4b)の外面まで延設され、かつ、補強リブ(4v)の前記一端は、ディスク周方向に延びて作用部側の連結部(4g)近傍に補強リブ(4v)の最大断面積を配し、該補強リブ(4v)の断面積を反作用部(4b)へ向かうに従って漸次減少することによって、該補強リブ(4v)を平面視略三角形に形成したことを特徴としている。
【0008】
上述の補強リブは、作用部側の端部でディスク周方向に最大幅をとり、ディスクロータへ向かうに従って次第に幅を狭くしている
【0009】
本発明の構成によれば、摩擦パッドからの制動反力で、応力の最も集中する一方の作用部とブリッジ部との連結部を、補強リブの最大断面積の部分で充分に補強する一方、補強リブの断面積を、作用部とブリッジ部との連結部から遠ざかるに連れて漸減し、補強リブを必要最小限の大きさとすることにより、キャリパボディが極力軽量化される。そしてこのように、作用部とブリッジ部との連結部に剛性力を確保することにより、液圧室の膨脹が極力抑制されるので、操作フィーリングが良好に保たれる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一形態例を図面に基づいて説明する。
ディスクブレーキ1は、ディスクロータ2の一側部で車体に固設されるキャリパブラケット3に、キャリパボディ4がスライドピン5,6を介してディスク軸方向へ移動可能に支持されている。
【0011】
キャリパブラケット3には、ディスク回入側に一方のスライドピン5が突設され、ディスク回出側にディスクロータ2を跨ぐキャリパ支持腕3aが延設されており、キャリパ支持腕3aには、ガイド孔3bと一対のトルク受け段部3c,3cとが設けられている。
【0012】
キャリパボディ4は、シリンダボス部4e内に有底のシリンダ孔7,7をディスク周方向に並設した作用部4aと、3つの反力爪4dを同じくディスク周方向に並設した反作用部4bとをディスクロータ2の両側部に対向配置し、該ディスクロータ2の外周を跨いで配設されるブリッジ部4cの両端に、作用部4aと反作用部4bとを一体に連結した2ポットのピンスライド型で、シリンダ開口面4fの延長線L上に略位置する作用部4aとブリッジ部4cとの連結部(以下、作用部側の連結部という)4gは、シリンダボス部4eや後述するピストン8の重量を支えるため、反作用部4bとブリッジ部4cとの連結部(以下、反作用部側の連結部という)4hよりも厚肉に形成されている。
【0013】
シリンダ孔7,7には、それぞれコップ状のピストン8が、角シール9を介して液密且つ移動可能に内挿され、ピストン8とシリンダ孔7の底部との間にそれぞれ液圧室10が画成されると共に、ピストン8と反力爪4dとの間に、一対の摩擦パッド11,11がディスクロータ2を挟んで対向配置されている。
【0014】
作用部4aの外面中央とディスク回出側には、ユニオンボス部4iとブリーダボス部4jとが突設されており、ユニオンボス部4iにはユニオン孔12が双方の液圧室10に連通して設けられ、該ユニオン孔12を通して別途の図示しない液圧マスタシリンダで昇圧された作動液が液圧室10に供給されると共に、ブリーダボス部4jには、作動液中の混入エアを外部へ排出するためのブリーダスクリュ13が螺着されている。
【0015】
作用部4aの内側中央とディスク回出側には、車体取付け腕4k,4mが突設されており、キャリパボディ4は、キャリパブラケット3に突設した一方のスライドピン5を、車体取付け腕4kのガイド孔14に弾性ブッシュ15を介して挿通し、車体取付け腕4kに突設した他方のスライドピン6を、キャリパ支持腕3aのガイド孔3bに挿通して、前述の如くディスク軸方向へ移動可能に支持されている。
【0016】
作用部4aと反作用部4bのディスク回入側には、パッド支持腕4n,4oが対向して突設され、またブリッジ部4cの内側には、ディスクロータ2と同一中心を持つ円弧状のロータ溝19が、ディスクロータ2と摩擦パッド11,11とを収容する大きさで形成されており、ライニング16をディスクロータ側に向けて配設される摩擦パッド11,11は、裏板17,17のディスク回入側を、パッド支持腕4n,4oに掛け渡されたハンガーピン18にて吊持し、裏板17,17のディスク回出側を、キャリパ支持腕3aのトルク受け段部3c,3cに支承して、ディスクロータ2と共にロータ溝19内に収容され、キャリパボディ4と同様にディスク軸方向へ移動可能に支持されている。
【0017】
また、キャリパボディ4の外面には、7つの補強リブ4p,4q,4r,4s,4t,4u,4vがディスク軸方向に隆起して設けられており、ディスク周方向に長い2ポットのキャリパボディ4に所要の剛性力を持たせている。このうち、6つの補強リブ4p〜4uは、ディスク軸と平行で断面が略矩形の突条に形成され、また他の1つの補強リブ4vは平面視略三角形に形成されており、2条の補強リブ4p,4qをサイドリブとして、キャリパボディ4のディスク回入側と回出側端に、作用部4aと反作用部4bの略両外端に亙って設け、他の2条の補強リブ4r,4sと三角形の補強リブ4vとをセンタリブとして、キャリパボディ4の中央に連続して設けると共に、残りの2条の補強リブ4t,4uを、作用部4a中央のブリーダボス部4iと両サイドリブとの間に配設している。
【0018】
センタリブを構成する補強リブ4r,4s,4vは、ブリッジ部4cの外面に三角形の補強リブ4vが、該補強リブ4vとユニオンボス部4iとの間の作用部4aの外面に一方の補強リブ4rが、反作用部4bの外面に他方の補強リブ4rが、それぞれ設けられている。
【0019】
また補強リブ4vは、一端が、ブリッジ部4cの外面から作用部側の連結部4gを通るシリンダ開口面4fの延長線Lを越えて、作用部4aの外面まで延設され、他端が、ブリッジ部4cの外面から反作用部側の連結部4hを越えて、反作用部4bの外面まで延設されており、更に補強リブ4vの一端では、ディスク周方向に中間の補強リブ4t,4uの外端へ亙る長さを採って、作用部側の連結部4g近傍に補強リブ4vの最大断面積を配し、該補強リブ4vの断面積を反作用部4bへ向かうに従って漸次減少することによって、補強リブ4vを前述の如く平面視略三角形に形成している。
【0020】
これにより、摩擦パッド11からの制動反力で応力の最もかかる作用部側の連結部4gでは、最大断面積を持たせた補強リブ4vの一端によって、必要充分な剛性力が確保される。殊に、補強リブ4vの一端を、作用部側の連結部4gが位置するシリンダ開口面4fの延長線Lを越えて、作用部4aまで到達させたので、補強リブ4vの最大断面積の一端の剛性力は、作用部側の連結部4g全体に作用する。
【0021】
また、作用部側の連結部4g以外のさほど剛性力を要しない部分では、補強リブ4vの断面積を作用部側の連結部4gから遠ざかるに連れて漸次減少して行くので、補強リブ4vの重量が必要最小限に抑えられる。
【0022】
本形態例のディスクブレーキ1は、以上のように構成されており、運転者の制動操作によって、液圧マスタシリンダで昇圧された作動液が双方の液圧室10に供給されると、それぞれのピストン8が、シリンダ孔7をディスクロータ方向へ前進し、作用部側の摩擦パッド11をディスクロータ2の一側面に押圧する。
【0023】
次に、キャリパボディ4が、上述の反作用でスライドピン5,6に案内されながら作用部方向へ移動し、反力爪4dが反作用部側の摩擦パッド11をディスクロータ2の他側面に押圧して、制動作用が行われる。
【0024】
上述の制動時に、ディスクロータ2と摩擦パッド11,11との摺接による制動反力が、ピストン8と反力爪4dを通して作用部4aと反作用部4bに作用し、これら作用部4aと反作用部4bを反ディスク方向へ押し返して、ブリッジ部4cを支点にキャリパボディ4をハの字変形させようとするが、制動反力で最も応力かかる作用部側の連結部4gでは、補強リブ4vの最大断面積によって必要充分な剛性力が確保されているので、歪みや変形が生じにくくなり、キャリパボディ4の耐久性を向上することができる。また、作用部側の連結部4gに必要な剛性力を確保したことにより、作用部4aの反ディスク方向への変形が極力抑制され、液圧室10の膨脹による液圧損失が小さく抑えられるので、良好な操作フィーリングを維持することができる。
【0025】
更に、作用部側の連結部4g以外のさほど剛性力を要しない部分では、補強リブ4vの断面積を、作用部側の連結部4gから遠ざかるに連れて漸次減少して、ばね下荷重につながる補強リブ4vの重量を必要最小限に抑えるので、快適な乗心地を維持することができる。
【0028】
【発明の効果】
以上のように、本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディは、センタリブとしてキャリパボディの中央部にディスク軸方向に隆起して設けた補強リブを、作用部とブリッジ部との連結部を越えて作用部側にまで延設し、該補強リブの断面積を、反作用部側へ向かうに従って漸次減少する平面視略三角形に形成したことにより、摩擦パッドからの制動反力で最も応力かかる作用部側の連結部では、補強リブの最大断面積によって必要充分な剛性力が確保されているので、歪みや変形が生じにくくなり、キャリパボディの耐久性を向上することができる。また、作用部とブリッジ部との連結部に必要な剛性力を確保したことにより、作用部の反ディスク方向への変形が極力抑制され、液圧室の膨脹による液圧損失が小さく抑えられるので、良好な操作フィーリングを維持することができる。
【0029】
更に、作用部とブリッジ部との連結部以外のさほど剛性力を要しない部分では、補強リブの断面積を、作用部とブリッジ部との連結部から遠ざかるに連れて漸次減少したことより、ばね下荷重につながる補強リブの重量を必要最小限に抑えるので、違和感のない快適な乗心地を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一形態例を示すディスクブレーキの平面図
【図2】本発明の一形態例を示すディスクブレーキの正面図
【図3】本発明の一形態例を示す図2のIII −III 断面図
【図4】本発明の一形態例を示すディスクブレーキの背面図
【符号の説明】
1…ディスクブレーキ
2…ディスクロータ
4…キャリパボディ
4a…作用部
4b…反作用部
4c…ブリッジ部
4f…シリンダ開口面
4g…作用部4aとブリッジ部4cとの連結部(作用部側の連結部)
4h…反作用部4bとブリッジ部4cとの連結部(反作用部側の連結部)
4p,4q,4r,4s,4t,4u…補強リブ
4v…補強リブ(本発明の補強リブ)
5,6…スライドピン
7…シリンダ孔
8…ピストン
10…液圧室
11…摩擦パッド
16…ライニング
17…裏板
18…ハンガーピン
L…シリンダ開口面4fの延長線

Claims (1)

  1. シリンダ孔(7)にピストン(8)を内挿した作用部(4a)と、反力爪(4d)を有する反作用部(4b)とをディスクロータ(2)の両側部に対向配置し、該ディスクロータ(2)の外周を跨いで配設されるブリッジ部(4c)の両端に前記作用部(4a)と反作用部(4b)とを一体に連結すると共に、作用部(4a)、ブリッジ部(4c)及び反作用部(4b)の外面に亘る補強リブ(4v)センタリブとしてキャリパボディ(4)の中央部にディスク軸方向に隆起して設けた車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、前記補強リブ(4v)は、一端が、ブリッジ部(4c)の外面から作用部側の連結部(4g)を通るシリンダ開口面(4f)の延長線(L)を越えて、作用部(4a)の外面まで延設され、他端が、ブリッジ部(4c)の外面から反作用部側の連結部(4h)を越えて、反作用部(4b)の外面まで延設され、かつ、補強リブ(4v)の前記一端は、ディスク周方向に延びて作用部側の連結部(4g)近傍に補強リブ(4v)の最大断面積を配し、該補強リブ(4v)の断面積を反作用部(4b)へ向かうに従って漸次減少することによって、該補強リブ(4v)を平面視略三角形に形成したことを特徴とする車両用ディスクブレーキのキャリパボディ。
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