JP3619744B2 - 非水電解液電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒型非水電解液一次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
負極にリチウム又はリチウム合金の活物質を用いた非水電解液電池として、正極板と負極板とを、間にセパレータを介在させて渦巻状に巻回して形成された渦巻状電極体を有するものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この非水電解液電池では、放電反応は、負極のリチウム活物質を消耗しながら進行する。しかしながら、この放電反応は、正極との全ての対向面で必ずしも一様ではなく、負極リチウムの消耗状態は負極の位置によって異なる。
このため、既にリチウムが消耗してしまった部分が存在することにより、リチウムが残存する部分どうしの間が分断される結果、リチウム活物質の残存部と負極集電リードとの電気的接続状態が切り離されることになり、電極の対向面積が減少して、放電電圧の急激な低下を招く不都合があった。
【0004】
図1は、円筒型非水電解液電池の概略構成を示しており、(42)は負極端子を兼ねる電池ケース、(41)は正極端子を兼ねる封口体である。正極板(10)と負極板(20)は、セパレータ(30)を介して渦巻状に巻回されており、負極側の集電リード片(21)は電池ケース(42)に、正極側の集電リード片(11)は封口体(41)に夫々、溶接されている。
【0005】
図2は、電池が完全に放電したときの負極板(20)におけるリチウム活物質の残存状態を示す図であって、紙面左側が巻き初め側、紙面右側が巻き終わり側である。図中、(9)は負極の集電リード片(21)を固定するための粘着テープであり、(3)(4)(5)(6)がリチウム残存部を示している。
(3)は、負極の最外周に位置する部分が正極と片面対向になるために生じたリチウム残存部である。
(4)は、極板を巻回したとき、正極板(10)の集電リード片(11)に貼着された粘着テープと対向する位置にある部分で、集電リード片(11)及び粘着テープの存在が障害物となって放電反応を妨げることにより生じたリチウム残存部である。
(5)は、極板を巻回したとき、負極板(20)の集電リード片(21)に貼着された粘着テープ(9)と対向する位置にある部分で、集電リード片(21)及び粘着テープ(9)の存在が障害物となって放電反応を妨げることにより生じたリチウム残存部である。
(6)は、渦巻体の最も内側に位置する部分で、反応速度が他の部分に比べて遅いために生じたリチウム残存部である。
【0006】
これらのリチウム残存部中、(3)の部分についてはこれまでに種々の方策が講じられている。
(4)(5)(6)のリチウム残存部分についても有効に利用することができれば、急激な電圧低下の抑制や、容量の増加に寄与することができる。
その対策として、リチウム残存部と負極の集電リード片との電気的接続状態がが切り離されないように、粘着テープを貼着したり、セパレータに目潰しを形成して、放電時に反応しない未反応部分を作る方法がある。なお、セパレータは、ポリプロピレン等の合成樹脂製不織布等から作られているので、目潰しは、セパレータの一部を加熱溶融することにより容易に形成される。
この方法は、粘着テープ又は目潰し部分によって作られる負極リチウムの筋が残存して電気的な橋渡しを行なうものであるが、リチウム残存部と集電リード片との電気的な橋渡しを確実に行なうには、橋渡し部のリチウム活物質が放電時に消費されることを見越した幅が必要である。このため、貼着テープ幅又は目潰し幅にはおよそ2mm程度が必要となり、正極と負極が対向する部分の面積が減少する不都合がある。
【0007】
粘着テープの貼着又は目潰しの代わりに、負極全体に不織布を貼り付ける方法がある。これは、放電反応を全体的に遅らせることにより、リチウム消耗部によって、リチウム残存部の間で分断が起こる状況を遅延させようとするものであるが、反応速度の低下により、電池特性を損なう不都合がある。
このように、(4)(5)(6)のリチウム残存部分の有効利用法については、十分な満足を得られていないのが実情である。
【0008】
本発明は、上記不都合を解消するものであり、負極活物質にリチウム又はリチウム合金を用いた非水電解液電池において、電池特性を損なわずに、リチウム活物質のまだ放電可能な部分を殆んど残存させないようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、正極板、セパレータ、負極板及びセパレータを積層したものを渦巻状に巻回して形成された渦巻状電極体を具え、正極板の集電リード片が、正極端子を兼ねる封口体に溶接され、負極板の集電リード片が、負極端子を兼ねる電池ケースに溶接されてなる非水電解液電池において、セパレータと負極板の間のどちらか一方に、極板の巻回方向に延びる細長い導電部材を配備し、該導電部材が、負極板の集電リード片と電気的に接続されるようにしたものである。
【0010】
【作用及び効果】
集電リード片等の障害物の存在の有無や、反応速度に違いがあるため、放電反応では、負極の位置によってリチウム活物質の消耗速度が異なる。このため、放電反応が進行すると、リチウムが完全に消費されてしまう部分と、リチウムが残存する部分を生ずる。
しかしながら、本発明では、集電リード片と電気的に接続された導電部材を設けているから、リチウム活物質が完全に消費された部分が生じたときでも、導電部材が、リチウム活物質の残存部分と集電リード片との間で電気的に橋渡しする働きをする。このため、残存した活物質が電池反応を続けている限り、導電部材及び集電リード片を介して、電池容量を取り出すことができる。従って、リチウム活物質を多く残したままで放電反応を終了してしまう虞れはない。
なお、導電部材は幅が小さく面積が小さいため、導電部材を設けたことによる正極と負極の対向面積の低下は少なく、電池特性の低下を招くことはない。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図3は、セパレータ(30)の上に、導電部材(1)と負極板(20)を取り付けた状態を示している。
セパレータ(30)は、例えばポリエチレン製の多孔性フィルムからなる長尺帯状であり、中心線A−Aに関して、一方の側に負極板(20)、他方の側に導電部材(1)が夫々配置される。
【0012】
負極板(20)は、金属リチウム又はリチウム合金(例えば、Li−Al)を帯状にしたもので、その巻き終わり端から、外周1巻分ほど離れた位置に、集電リード片(21)が圧着等により取り付けられる。この集電リード片(21)は、例えばニッケル薄板から作られ、電池ケース(42)に取付け可能な長さにて負極板(20)から突出している。集電リード片(21)は、この突出部分を除いて、該リード片を覆うように、合成樹脂製の粘着テープ(9)を用いて負極板に貼り付けられる。
負極板(20)は、集電リード片(21)側がセパレータ(30)と対向するように載置され、その幅方向の両縁部を粘着テープ(32)(32)で貼り付けることにより、セパレータ(30)に固定される。
【0013】
導電部材(1)は、長さは、負極板(20)の全長よりも少し短くし、幅は、可能な限り小さくして、面積を小さくすることが好ましい。幅があまり大きくなると、正極との対向面積が少なくなり、高率放電特性の低下を招くためである。下限は、所望の導電性を得て、取扱いを容易ならしめるために、約0.1mm以上とすることが望ましい。
なお、導電部材の幅が大きくても、導電部材内に多数の孔を設けることにより、正極との対向面積を少なくできるものであれば、そのようなものでも構わない。
導電部材(1)の厚さは、使用する材質によっても異なるが、例えば後記する金属箔を用いる場合、約0.01〜0.2mmが適当である。
【0014】
導電部材(1)として、カーボン薄膜、導電性塗料を塗布した薄膜、導電性高分子薄膜、導電性金属箔が好適に用いられる。
導電性塗料として、黒鉛の粉と水ガラスの混合物等を挙げることができる。
導電性高分子として、ポリアニリン、ポリピロール等を挙げることができる。導電性金属箔として、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔等を挙げることができる。
【0015】
導電部材(1)は、その裏面に粘着剤又は接着剤が塗布又は貼着され、セパレータ(30)の中心線A−Aに関して、負極板(20)の反対側に配置され、セパレータを2つ折りにしたときに、集電リード片(21)と交差するように取り付けられる。一般的には、セパレータ(30)の幅方向の略中央部に取り付けられる。
【0016】
図4は、中心線A−Aにてセパレータ(30)を2つ折りにしたときの状態を示しており、導電部材(1)と負極板(20)は、セパレータ(30)によって包まれている。図2で示したリチウム活物質の残存部(3)(4)(5)(6)を描いたものを図5に示しており、導電部材(1)は、(4)(5)(6)で示す部分と繋がるように配備されている。
放電反応時における反応の遅れにより、反応が速い負極部分で活物質が枯渇した状態になっても、このリチウム残存部で電池反応が行われている限り、導電部材(1)を介して集電リード片(21)へ放電させることができる。従って、本発明では、リチウム活物質が反応している限り、殆んど最後まで使い切ることができる。
【0017】
正極板(10)を得るには、まず、正極活物質としての二酸化マンガン、導電剤としての黒鉛、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及び水を所定の割合に混合、混練し、適度の粘性を有する正極合剤を調製する。この正極合剤をステンレス製のエキスパンドメタルに塗布し、ローラで圧延して正極板シートを作製する。この正極板シートを所定の大きさに切断し、乾燥処理して正極板が作製される。
次に、正極板(10)の長さ方向の略中央部にて、正極合剤の一部を剥離して、エキスパンドメタルを露出させた後、集電リード片(11)をスポット溶接により取り付ける。この集電リード片(11)は、例えばステンレス薄板から作られ、封口体(41)に取付け可能な長さにて正極板(10)から突出している(図6参照)。
なお、集電リード片(11)の正極板(10)への取付けは、粘着テープを貼り付けて行なうこともできる。
【0018】
図4に示すように、セパレータを2つ折りにした状態では、セパレータ(30)、負極板(20)及びセパレータ(30)が積層され、セパレータ(30)と負極板(20)の間の一方には導電部材(1)が介在している。この積層体を、図6で示す正極板(10)と共に巻回することにより、渦巻状電極体が形成される。なお、代表的な電池では、負極板(20)が外周側に位置するように巻回される。
このようにして形成された渦巻状電極体において、導電部材(1)は、負極板(20)を介して、集電リード片(21)と電気的に伝導可能な状態にある。
【0019】
この渦巻状電極体は、図1に示されるように、下部絶縁板(45)及び上部絶縁板(44)と共に、ニッケルメッキを施した鉄製の電池ケース(42)に挿入する。次に、電池ケース(42)の開口部付近に形成した嵌合用溝(48)に、ポリプロピレン製のガスケット(47)をあてがう。負極側の集電リード片(21)を電池ケース(42)の底部にスポット溶接し、正極側の集電リード片(11)をステンレス製封口体(41)にスポット溶接する。次に、電池ケース(42)内に非水電解液を注入した後、電池ケース(42)の開口部付近を封口体(41)にかしめることにより、非水電解液電池が作製される。
【0020】
なお、非水電解液は、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の高誘電率溶媒と、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン等の低沸点溶媒との混合溶媒に、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等の溶質を溶解することによって調製することができる。
【0021】
【実施例】
発明例
負極板は、Li−Alの板を所定の寸法に切断し、その一部分にニッケル薄板からなる集電リード片を圧着した。集電リード片が外れないようにするため、極板から突出する先端部分以外の部分を覆うように、粘着テープを負極板に貼り付けた。
この負極板を、ポリエチレン製多孔性フィルムからなるセパレータの所定位置に、集電リード片の側がセパレータと対向するように載置して、粘着テープで固定した。
セパレータの長手方向中央部に関して、負極固定位置と反対側の位置に幅0.5mm、厚み0.07mmの銅箔を貼り付けた。銅箔の貼付け位置は、セパレータの幅方向の略中央部にて、セパレータを2つ折りにした時、集電リード片と交差する位置とする。
【0022】
非水電解液は、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、1,2−ジメトキシエタン(DME)と体積比15:15:70となる割合で混合した溶媒に、溶質としてトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)を0.5mol/Lとなる割合で溶解した。
【0023】
正極板は、活物質に二酸化マンガン、導電剤に黒鉛、結着剤にフッ素樹脂及び水を所定の割合で混合し、スラリー状とし、ステンレス製エキスパンドメタルにコーティングし、ローラで圧延、切断、乾燥させることにより作製した。次に、活物質の一部分を剥離し、ステンレス製の集電リード片をスポット溶接した。
【0024】
導電部材と負極板を間に挟んでセパレータを2つ折りにし、正極板と共に、負極板が外周側に位置するように渦巻状に巻回して渦巻状電極体を形成した。
この渦巻電極体を用いて、前述した要領にて、供試用の非水電解液電池を作製し、これを発明例とする。
【0025】
比較例1
導電部材としての銅薄板を貼り付けなかった以外は、発明例と全く同様にして、比較例1の供試用電池を作製した。
【0026】
比較例2
銅薄板を貼り付けた位置に対応するセパレータの部分を0.5mm幅で目潰しを行った以外は、発明例と同様にして比較例2の供試用電池を作製した。
【0027】
比較例3
比較例2の目潰し幅を2mmに変更した以外は、発明例と同様にして比較例の供試電池を作製した。
【0028】
200Ω定抵抗放電試験
発明例と比較例1〜比較例3の供試電池について、200Ωの定抵抗を接続して放電試験を行なった。これはいわゆるローレートでの放電状態を調べる試験であり、その試験結果を図7に示している。
発明例は導電部材を設けたことにより、負極全体と集電リード片との間で電気的な橋渡しが行われており、リチウム残存部が殆んど形成されることなく、良好な放電特性を示した。
なお、比較例3の電池についても、2mm幅の目潰し部分によって負極リチウムの大きな筋が電気的な橋渡しを行なっているので、発明例と同じように、良好な放電特性が得られている。しかし、比較例2は目潰し幅が0.5mmであるから、十分な電気的橋渡し効果を得られず、また、比較例1は、目潰し幅が全くないため、集電リード片への電気的橋渡し効果が全くなく、放電特性において最も劣る結果となっている。
【0029】
1 . 2Aパルス放電試験
次に、発明例と比較例1乃至比較例3の供試電池について、23℃と−20℃にて、1.2Aを3秒間通電し、通電停止を7秒間とするサイクルのパルス放電試験を行ない、電池電圧が1.3Vになるまでのサイクル回数を求めた。これはいわゆるハイレートでの放電状態を調べるもので、その試験結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
23℃と−20℃とも、正極と負極の対向面積が多いほど良好な結果を示している。発明例と比較例2は、導電部材と目潰しの面積が同じであるから、ほぼ同様の特性を示している。なお、幅寸法が両方とも0.5mmと小さいため、放電特性に及ぼす影響は小さく、比較例1と比べてもあまり差がない結果を示している。これに対し、比較例3は目潰し幅が2mmもあるため、放電特性に劣っており、特に低温での特性低下が著しい。
【0032】
このように、比較例1及び比較例2は、ローレートでの放電特性に劣り、比較例3はハイレートでの放電特性に劣っているのに対し、発明例では、両方の放電特性にすぐれている。
すなわち、発明例の電池では、リチウム活物質の残存量が少なく、急激な電圧低下を引き起こすことがないので、電池反応に有効な未放電部分を残したまま放電が終了する虞れがなく、放電特性にすぐれている。また、この放電特性を向上させるにあたり、電池特性を低下させることはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】非水電解液電池の概略構成を示す断面図である。
【図2】完全放電状態における負極の活物質残存部を示す説明図である。
【図3】導電部材と負極板をセパレータへ取り付けた状態を説明する平面図である。
【図4】図3に示すセパレータを2つ折りにした状態を説明する平面図である。
【図5】リチウム活物質が残存し易い部分を説明するための図である。
【図6】集電リード片が取り付けられた正極板の平面図である。
【図7】供試電池の200Ω定抵抗放電試験の試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
(1) 導電部材
(3)(4)(5)(6) 活物質残存部
(10) 正極板
(11) 正極の集電リード片
(20) 負極板
(21) 負極の集電リード片
(30) セパレータ
Claims (2)
- 正極板(10)、セパレータ(30)、負極板(20)及びセパレータ(30)を積層したものを渦巻状に巻回して形成された渦巻状電極体を具え、正極板(10)は集電リード片(11)を介して、正極端子を兼ねる封口体(41)に接続され、負極板(20)は集電リード片(21)を介して、負極端子を兼ねる電池ケース(42)に接続されてなる非水電解液電池であって、正極と負極の間に放電反応を妨げる障害物が存在し、該障害物に起因して負極活物質の消耗速度が相違する結果、放電反応の進行により、負極活物質が完全に消耗する部分と、負極活物質が残存する部分を生ずるものにおいて、セパレータ(30)と負極板(20)の間のどちらか一方に、負極板 (20) の活物質の残存部分と集電リード片 (11) との間を電気的に橋渡しする細長い導電部材 (1) が、極板の巻回方向に延びるように配備されていることを特徴とする非水電解液電池。
- 導電部材(1)は、カーボン薄膜、導電性塗料を塗布した薄膜、導電性高分子薄膜及び導電性金属箔からなる群から選択される請求項1に記載の非水電解液電池。
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