JP3618795B2 - コンクリート製品用混和剤組成物 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はコンクリート製品用混和剤組成物に関する。更に詳しくは、コンクリート二次製品の製造時に使用するコンクリート混和剤として用いられ、振動締め固め製品や高流動充填コンクリート製品の表面に発生する気泡の低減および遠心力による締め固め製品の製造において、コンクリートの締め固め性を向上させ、成型時間の短縮を可能とする混和剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、コンクリート製品には、コンクリートの型枠内に注入した後に、内部又は外部振動機で締め固めを行う振動製品とパイル、ポール、ヒューム管のように遠心力による締め固めを行う遠心製品がある。
【0003】
これらの製品に使用されるコンクリートは強度を確保するために、高性能減水剤、例えば、ナフタレン系 (ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物 )、メラミン系 (メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物 )等の混和剤が必須となっている。
【0004】
しかし、高性能減水剤を添加したコンクリートは一定の流動性 (スランプ値)の発現は可能であるが、コンクリートの粘性が高まり、締め固め性が低下する傾向にある。
【0005】
従って、振動製品においてはコンクリートに含まれる気泡と充填時に巻き込んだ気泡が脱泡できずに残り、硬化したコンクリートの表面の美観は著しく悪いものになっている。また、遠心製品は締め固めに要する時間が長く必要となり、生産性が低下する。
【0006】
これらのことから、混和剤組成物として、減水性を損なうことなく、コンクリート粘性を低下させる混和剤が望まれている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、保水性能の大きいアルキレンオキシドを有する分散剤の骨格がコンクリートの粘性の低下に有効であり、しかも、消泡剤を加えた分散剤組成物とすることで、コンクリート材料間の摩擦低減や気泡連行の抑制により、表面気泡の低減と締め固めの向上が可能となることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入した芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(A) とカルボキシル基を有する芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(B) とのホルムアルデヒド共縮合物又はその中和塩(イ)および消泡剤(ロ)を必須成分とするコンクリート製品用混和剤組成物に関する。
【0009】
更に、本発明は、炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入した芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(A) とカルボキシル基を有する芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(B) 及びスルホン酸基を有する芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(C) とのホルムアルデヒド共縮合物又はその中和塩(イ)および消泡剤(ロ)を必須成分とするコンクリート製品用混和剤組成物に関する。
【0010】
本発明の(イ)成分は芳香族ホルムアルデヒド共縮合系に、アルキレンオキシドとカルボキシル基を有した構造であり、一般の芳香族系分散剤に比べて、セメント粒子に対する吸着特性が大きいのが特徴である。
【0011】
本発明のように芳香族ホルムアルデヒド共縮合系にアルキレンオキシド基を導入することで芳香族系本来の電気斥力による分散性にアルキレンオキシド基の立体障壁的な斥力が加わり、分散効果が極めて高まるものであり、(ロ)成分の消泡剤と併用することで減粘性と気泡連行性をさらに改善するものである。
【0012】
本発明に用いる炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入した芳香族化合物(A) としては、炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入したポリオキシアルキレンアルキルフェノール又はポリオキシアルキレンアルキルナフトール類が使用される。一例を挙げれば、フェノール、クレゾール、ノニルフェノール、ナフタレン、メチルナフタレン、ブチルナフタレン、ビスフェノール等へのオキシアルキレン基1〜300 モル付加物である。
【0013】
共縮合性の面から、ベンゼン環誘導体、即ち、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールが好ましく、特に、フェノールのオキシアルキレン基付加物が好ましい。
【0014】
炭素数2〜3のオキシアルキレン基とはエチレンオキシド、プロピレンオキシドを意味し、ランダム状、ブロック状のいずれでもよく、限定されるものではない。また、オキシアルキレン基の末端が水酸基、アルキルエーテル、アルキルエステルのいずれでも使用することができる。
【0015】
フェノールの炭素数2〜3のアルキレンオキシド付加物は、付加モル数が平均1以上であればよく、付加していないものが含有している場合、あるいは付加していないものが配合されている場合のいずれでも使用することができる。しかし、オキシアルキレン基が 300モルを超えると分散性(減粘性)が低下して好ましくない。
【0016】
本発明に用いるカルボキシル基を有する芳香族化合物(B) は、ナフタレン環又はベンゼン環誘導体、例えば、イソフタル酸、オキシナフトエ酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸等やこれらの異性体が使用される。
【0017】
しかし、共縮合性から考慮すると、下記の一般式(a) で表される化合物が好ましい。
【0018】
【化2】
【0019】
即ち、o−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸が好ましい。
【0020】
本発明に用いるスルホン酸基を有する芳香族化合物(C) は、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルフェノールスルホン酸、アニリンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸等で、一例を挙げれば、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、アニリンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの異性体及びすでにこれらの縮合されたものを用いることも可能である。例えば、リグニンスルホン酸やナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を使用することができる。
【0021】
しかし、共縮合性から考慮すると、フェノール誘導体からなるスルホン酸化合物、即ち、アルキルフェノールスルホン酸が好ましく、特にフェノールスルホン酸が好ましい。
【0022】
また、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の共縮合可能な単量体と反応させてもよい。例えば、フェノール、クレゾール等のアルキルフェノールが挙げられる。
【0023】
共縮合物は、酸性のままコンクリート製品用混和剤として用いることもできるが、貯蔵面と使用面からは中和塩として用いることが好ましい。中和塩としては、1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、アミン塩又は置換アミン塩が挙げられる。
【0024】
炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入した芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(A) とカルボキシル基を有する芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(B) とのホルムアルデヒド共縮合物又はその中和塩において、 (A)、(B) の反応モル比としては、 (A)/(B) =1〜99/99〜1の範囲が減粘性に適当であり、10〜50/50〜90の範囲が特に減粘性に優れる。
【0025】
炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入した芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(A) とカルボキシル基を有する芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(B) 及びスルホン酸基を有する芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(C) とのホルムアルデヒド共縮合物又はその中和塩において、(A) 、(B) 、(C) の反応モル比としては、 (A)/(B)/(C) =1〜98/1〜98/1〜98の範囲が減粘性に適当であり、5〜50/5〜90/5〜90の範囲が特に減粘性に優れる。
【0026】
本発明の(イ)成分の共縮合物の標準的な製造法を示すが、これによって本発明は何ら限定されるものではない。
【0027】
共縮合物の製造法としては、例えば、所定量のアルキレンオキシド付加物とカルボキシル基を有する芳香族化合物、又はカルボキシル基を有する芳香族化合物及びスルホン酸基を有する芳香族化合物を反応容器に仕込み、70〜90℃の攪拌下で所定量のホルマリン水を1〜4時間かけて滴下、滴下後、還流下で3〜30時間攪拌して冷却、中和する方法が挙げられる。
【0028】
共縮合系において、縮合粘度と縮合時間をコントロールするために水の添加調整を行う。反応系は酸性下で行い、スルホン酸基を有する芳香族化合物やこれに含まれる未反応の酸によりすでに酸性下になっている場合はこのままの酸性領域で縮合を行う。また、反応系によって、酸性にならない場合は、予め硫酸などを加えてpH2以下にして反応を行う。
【0029】
本発明の(イ)成分の共縮合物又はその中和塩の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフ法/ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算による分子量から縮合度を算出)は 3,000〜100,000 が好ましく、 5,000〜50,000がより好ましい。平均分子量が 3,000未満又は 100,000を超えると減粘性に劣る。
【0030】
また、本発明における消泡剤 (ロ) は特に限定するものではないが、ジメチルポリシロキサンを主成分とするシリコン系消泡剤やポリアルキレングリコール脂肪酸エステルを主成分とする消泡剤が好ましく使用される。
【0031】
シリコン系消泡剤としては乳化タイプの水と相溶性のあるものが好ましく使用される。一例を挙げれば、信越シリコン社製:KM−70,KM−73A等のKMシリーズ、東芝シリコン社製:TSA シリーズ、ダウコーニング社製:FSアンチフォームシリーズ、花王社製:アンチフォームE−20等が挙げられる。
【0032】
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルを主成分とする消泡剤としては、花王社製:レオゾールTWL120、日華化学社製:ニコフィックス、フォームレックス797 等が挙げられる。
【0033】
本発明の混和剤組成物において、共縮合物又はその中和塩 (イ) と消泡剤 (ロ) の配合比は、 (イ) / (ロ) = 100/0.01〜5.0(固形分重量比) 程度であり、100/0.1〜1.0が好ましく使用される。100/0.01未満では消泡効果が充分ではなく、100/5.0 を超えると分散性が低下傾向となる。
【0034】
本発明の共縮合物又はその中和塩 (イ) の添加量は、セメントに対して固形分で0.02〜1.0 重量%程度が使用範囲であり、 0.1〜0.5 重量%が好ましく使用される。
【0035】
また、本発明の混和剤組成物の添加は、共縮合物又はその中和塩 (イ) と消泡剤 (ロ) を予め配合したものを添加しても、あるいは別々に添加してもよく、限定されるものではない。
【0036】
本発明の混和剤組成物の使用に当たっては他の分散剤との併用が可能である。該分散剤とは、一般にコンクリート用分散剤として使用されているものであれば良いが、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、ポリカルボン酸もしくはそのエステルもしくはその塩、精製リグニンスルホン酸もしくはその塩、ポリスチレンスルホン酸塩、フェノール骨格を有するセメント分散剤(例えば、フェノールスルホン酸と共縮合可能な他の単量体とのホルムアルデヒド共縮合物)、アニリンスルホン酸を主成分とするセメント分散剤(例えば、アニリンスルホン酸と共縮合可能な他の単量体とのホルムアルデヒド共縮合物)など、従来高性能減水剤と称されるものが好ましく使用される。
【0037】
併用割合としては本発明の混和剤組成物に対して、5〜95重量%が適当である。
【0038】
本発明の混和剤組成物は、振動機による締め固めを行うコンクリート製品の製造や、重力加速度3G〜60G の遠心力を加えて成型するコンクリート製品の製造に用いる。
【0039】
更に、近年振動機を使用しない自己充填性のコンクリートである高流動コンクリートの研究が行われているが、これらのコンクリートを用いたコンクリート製品の製造に混和剤組成物として用いることができる。ここで、高流動コンクリートとは、コンクリートが45cm (JIS A−1101スランプ試験に準ずるフロー値) 程度以上の流動性を示すコンクリートを表わす。
【0040】
本発明の対象となるコンクリートは、セメント、細骨材、粗骨材を主成分とするものであるが、各種の高炉スラグ、フライアッシュ等の各種混和材料を使用することができる。更に、公知の添加剤 (材) と併用することができる。例えば、AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、発泡剤、増粘剤、防水剤、防泡剤等が挙げられる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の例における「%」は、特に、ことわりのない限り、「重量%」である。
【0042】
また、実施例中で示す共縮合物又はその中和塩 (イ) の平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ法/ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算による分子量から求めたものである。
【0043】
共縮合に使用した炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入した芳香族化合物(A) 、カルボキシル基を有する芳香族化合物(B) 、スルホン酸基を有する芳香族化合物(C) の内容を以下に示す。尚、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドを、数値は平均の付加モル数を表わす。
【0044】
芳香族化合物 (A)
A−1;フェノール EO 10モル付加物
A−2;フェノール EO 25モル付加物
A−3;フェノール EO 75モル付加物
A−4;フェノール EO 120 モル付加物
A−5;フェノール EO 250 モル・PO 20 モルブロック付加物
A−6;ナフトール EO 2モル付加物
A−7 (比較) ;フェノール EO 370 モル付加物。
【0045】
芳香族化合物 (B)
B−1;p−ヒドロキシ安息香酸
B−2;o−ヒドロキシ安息香酸
B−3;オキシナフトエ酸。
【0046】
芳香族化合物 (C)
C−1;フェノールスルホン酸
C−2;p−クレゾールスルホン酸
C−3;ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物 (分子量4500) 。
【0047】
以下に、共縮合物又はその中和塩 (イ) の製造例を示す。
【0048】
製造例1 ( (イ)成分の記号D−1 )
攪拌付き反応容器にA−1を 0.3モル、B−1を 0.7モル、硫酸を 0.5モル、水を4モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して10時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して静置する。静置後、二層分離した上層をとり、水を加えて固形分を30%に調整して、分子量21,000の共縮合物を得た。
【0049】
製造例2 ( (イ)成分の記号D−2 )
攪拌付き反応容器にA−3を 0.2モル、B−1を 0.7モル、B−2を 0.1モル、硫酸を 0.5モル、水を5モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して12時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して静置する。静置後、二層分離した上層をとり、水を加えて固形分を30%に調整して、分子量19,000の共縮合物を得た。
【0050】
製造例3 ( (イ)成分の記号D−3 )
攪拌付き反応容器にA−4を 0.1モル、B−1を 0.9モル、硫酸を 0.5モル、水を4モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して10時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して静置する。静置後、二層分離した上層をとり、水を加えて固形分を30%に調整して、分子量42,000の共縮合物を得た。
【0051】
製造例4 ( (イ)成分の記号D−4 )
攪拌付き反応容器にA−1を 0.3モル、B−1を 0.6モル、C−1を 0.1モル、硫酸を 0.3モル、水を4モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して10時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して静置する。静置後、二層分離した上層をとり、水を加えて固形分を30%に調整して、分子量12,000の共縮合物を得た。
【0052】
製造例5 ( (イ)成分の記号D−5 )
攪拌付き反応容器にA−2を 0.3モル、B−1を 0.6モル、C−2を 0.1モル、水を5モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して12時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を30%に調整して、分子量17,000の共縮合物を得た。
【0053】
製造例6 ( (イ)成分の記号D−6 )
攪拌付き反応容器にA−3を 0.2モル、B−1を 0.7モル、C−3を 0.1モル (ナフタレン骨格としてのモル数) 、水を5モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して8時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を20%に調整して、分子量25,000の共縮合物を得た。
【0054】
製造例7 ( (イ)成分の記号D−7 )
攪拌付き反応容器にA−4を 0.2モル、B−2を 0.5モル、C−1を 0.3モル、水を5モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して12時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を20%に調整して、分子量31,000の共縮合物を得た。
【0055】
製造例8 ( (イ)成分の記号D−8 )
攪拌付き反応容器にA−5を 0.1モル、B−2を 0.5モル、C−1を 0.4モル、水を6モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して15時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を20%に調整して、分子量33,000の共縮合物を得た。
【0056】
製造例9 ( (イ)成分の記号D−9 )
攪拌付き反応容器にA−6を 0.3モル、B−2を 0.3モル、C−1を 0.4モル、水を6モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して25時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を20%に調整して、分子量11,000の共縮合物を得た。
【0057】
製造例 10 ( (イ)成分の記号D− 10)
攪拌付き反応容器にA−4を 0.1モル、B−2を 0.6モル、C−1を 0.3モル、水を6モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して18時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を20%に調整して、分子量26,000の共縮合物を得た。
【0058】
製造例 11 ( (イ)成分の記号D− 11)
攪拌付き反応容器にA−3を 0.1モル、B−3を 0.1モル、C−1を 0.6モル、水を3モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して25時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を30%に調整して、分子量11,000の共縮合物を得た。
【0059】
製造例 12 ( (イ)成分の記号D− 12)
攪拌付き反応容器にA−7を 0.1モル、B−2を 0.5モル、C−1を 0.4モル、水を7モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して15時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を20%に調整して、分子量41,000の共縮合物を得た。
【0060】
比較例に使用した分散剤の内容
・記号NS;ナフタレン系混和剤 (マイテイ150 :花王(株)製)
・記号MS;メラミン系混和剤 (マイテイ150V−2:花王(株)製) 。
【0061】
実施例に使用した消泡剤 (ロ) の内容と記号を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
コンクリート試験の評価方法
コンクリートの配合条件を表2〜4に示す。尚、表2は振動締め固めコンクリート製品用配合、表3は遠心力締め固めコンクリート製品用配合、表4は高流動コンクリート製品用配合を表わす。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
1.振動締め固めコンクリート製品の評価
表2に示すコンクリート配合で本発明の混和剤組成物と比較混和剤を添加してスランプ値を10±1cmに調整した。その後、マシン油を剥離剤として塗布した直径15cm、高さ30cmの円柱型枠にコンクリートを詰め、テーブルバイブレーターにて15秒間振動充填を行い、試験体を成型した。硬化後のコンクリート表面にある直径2mm以上の気泡の個数を100cm2の面積について数えて表面美観性を次のように判定した。
○ − 4個以下
△ − 5〜19個
× − 20個以上
更に、JIS A 1101法によりコンクリート製造直後のスランプ値を測定した。
試験結果を表5に示す。
【0068】
【表5】
【0069】
2.遠心締め固めコンクリート製品の評価
表3に示すコンクリート配合で、本発明の混和剤組成物と比較混和剤を添加してスランプ値を3±1cmに調整した。その後、φ20cm、高さ30cmの遠心成型用型枠にコンクリートを13kg投入して、遠心締め固めを行った。締め固め時間による硬化コンクリートの強度測定とコンクリートの締まり程度を肉眼で観察した。
遠心条件は重力加速度5Gで1分、次いで 15Gで2分、次いで 30Gで2分後、4分後、6分後の締まり程度を測定した。
コンクリートの締まり程度
○ − 平滑的に締まっている。
△ − 内面または外面の平滑性がやや悪い。
× − 砂利が露出し、内面または外面の平滑性が著しく悪い。
更に、スランプ値と圧縮強度を以下のように測定した。
・スランプ値:JIS A 1101法によりコンクリート製造直後の値を測定した。
・圧縮強度:直径10cm、高さ20cmの円筒上供試体を作成し、28日後の強度をJISA 1108法にて測定した。
測定結果を表6に示す。
【0070】
【表6】
【0071】
3.高流動コンクリート製品の評価
表4に示すコンクリート配合で本発明の混和剤組成物と比較混和剤を添加してスランプ値55±5cmに調整した。その後、マシン油を剥離剤として塗布した直径15cm、高さ30cmの円柱型枠にコンクリートを詰め、試験体を成型した。硬化後のコンクリート表面にある直径2mm以上の気泡の個数を100cm2の面積について数えて表面美観性を次のように判定した。
○ − 4個以下
△ − 5〜19個
× − 20個以上
更に、JIS A 1101法によりコンクリート製造直後のスランプ値を測定した。
試験結果を表7に示す。
【0072】
【表7】
【0073】
評価結果
表5、7で明らかなように、本発明の混和剤組成物から製造された硬化コンクリートは表面気泡の低減が顕著であり、表面美観が著しく改善される。また、表6で明らかなように遠心時間の短縮が可能となる。従って、表面気泡の補修不要、遠心時間の短縮が可能となり、生産の合理化が計れるものである。
【産業上の利用分野】
本発明はコンクリート製品用混和剤組成物に関する。更に詳しくは、コンクリート二次製品の製造時に使用するコンクリート混和剤として用いられ、振動締め固め製品や高流動充填コンクリート製品の表面に発生する気泡の低減および遠心力による締め固め製品の製造において、コンクリートの締め固め性を向上させ、成型時間の短縮を可能とする混和剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、コンクリート製品には、コンクリートの型枠内に注入した後に、内部又は外部振動機で締め固めを行う振動製品とパイル、ポール、ヒューム管のように遠心力による締め固めを行う遠心製品がある。
【0003】
これらの製品に使用されるコンクリートは強度を確保するために、高性能減水剤、例えば、ナフタレン系 (ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物 )、メラミン系 (メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物 )等の混和剤が必須となっている。
【0004】
しかし、高性能減水剤を添加したコンクリートは一定の流動性 (スランプ値)の発現は可能であるが、コンクリートの粘性が高まり、締め固め性が低下する傾向にある。
【0005】
従って、振動製品においてはコンクリートに含まれる気泡と充填時に巻き込んだ気泡が脱泡できずに残り、硬化したコンクリートの表面の美観は著しく悪いものになっている。また、遠心製品は締め固めに要する時間が長く必要となり、生産性が低下する。
【0006】
これらのことから、混和剤組成物として、減水性を損なうことなく、コンクリート粘性を低下させる混和剤が望まれている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、保水性能の大きいアルキレンオキシドを有する分散剤の骨格がコンクリートの粘性の低下に有効であり、しかも、消泡剤を加えた分散剤組成物とすることで、コンクリート材料間の摩擦低減や気泡連行の抑制により、表面気泡の低減と締め固めの向上が可能となることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入した芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(A) とカルボキシル基を有する芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(B) とのホルムアルデヒド共縮合物又はその中和塩(イ)および消泡剤(ロ)を必須成分とするコンクリート製品用混和剤組成物に関する。
【0009】
更に、本発明は、炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入した芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(A) とカルボキシル基を有する芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(B) 及びスルホン酸基を有する芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(C) とのホルムアルデヒド共縮合物又はその中和塩(イ)および消泡剤(ロ)を必須成分とするコンクリート製品用混和剤組成物に関する。
【0010】
本発明の(イ)成分は芳香族ホルムアルデヒド共縮合系に、アルキレンオキシドとカルボキシル基を有した構造であり、一般の芳香族系分散剤に比べて、セメント粒子に対する吸着特性が大きいのが特徴である。
【0011】
本発明のように芳香族ホルムアルデヒド共縮合系にアルキレンオキシド基を導入することで芳香族系本来の電気斥力による分散性にアルキレンオキシド基の立体障壁的な斥力が加わり、分散効果が極めて高まるものであり、(ロ)成分の消泡剤と併用することで減粘性と気泡連行性をさらに改善するものである。
【0012】
本発明に用いる炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入した芳香族化合物(A) としては、炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入したポリオキシアルキレンアルキルフェノール又はポリオキシアルキレンアルキルナフトール類が使用される。一例を挙げれば、フェノール、クレゾール、ノニルフェノール、ナフタレン、メチルナフタレン、ブチルナフタレン、ビスフェノール等へのオキシアルキレン基1〜300 モル付加物である。
【0013】
共縮合性の面から、ベンゼン環誘導体、即ち、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールが好ましく、特に、フェノールのオキシアルキレン基付加物が好ましい。
【0014】
炭素数2〜3のオキシアルキレン基とはエチレンオキシド、プロピレンオキシドを意味し、ランダム状、ブロック状のいずれでもよく、限定されるものではない。また、オキシアルキレン基の末端が水酸基、アルキルエーテル、アルキルエステルのいずれでも使用することができる。
【0015】
フェノールの炭素数2〜3のアルキレンオキシド付加物は、付加モル数が平均1以上であればよく、付加していないものが含有している場合、あるいは付加していないものが配合されている場合のいずれでも使用することができる。しかし、オキシアルキレン基が 300モルを超えると分散性(減粘性)が低下して好ましくない。
【0016】
本発明に用いるカルボキシル基を有する芳香族化合物(B) は、ナフタレン環又はベンゼン環誘導体、例えば、イソフタル酸、オキシナフトエ酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸等やこれらの異性体が使用される。
【0017】
しかし、共縮合性から考慮すると、下記の一般式(a) で表される化合物が好ましい。
【0018】
【化2】
【0019】
即ち、o−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸が好ましい。
【0020】
本発明に用いるスルホン酸基を有する芳香族化合物(C) は、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルフェノールスルホン酸、アニリンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸等で、一例を挙げれば、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、アニリンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの異性体及びすでにこれらの縮合されたものを用いることも可能である。例えば、リグニンスルホン酸やナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を使用することができる。
【0021】
しかし、共縮合性から考慮すると、フェノール誘導体からなるスルホン酸化合物、即ち、アルキルフェノールスルホン酸が好ましく、特にフェノールスルホン酸が好ましい。
【0022】
また、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の共縮合可能な単量体と反応させてもよい。例えば、フェノール、クレゾール等のアルキルフェノールが挙げられる。
【0023】
共縮合物は、酸性のままコンクリート製品用混和剤として用いることもできるが、貯蔵面と使用面からは中和塩として用いることが好ましい。中和塩としては、1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、アミン塩又は置換アミン塩が挙げられる。
【0024】
炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入した芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(A) とカルボキシル基を有する芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(B) とのホルムアルデヒド共縮合物又はその中和塩において、 (A)、(B) の反応モル比としては、 (A)/(B) =1〜99/99〜1の範囲が減粘性に適当であり、10〜50/50〜90の範囲が特に減粘性に優れる。
【0025】
炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入した芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(A) とカルボキシル基を有する芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(B) 及びスルホン酸基を有する芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(C) とのホルムアルデヒド共縮合物又はその中和塩において、(A) 、(B) 、(C) の反応モル比としては、 (A)/(B)/(C) =1〜98/1〜98/1〜98の範囲が減粘性に適当であり、5〜50/5〜90/5〜90の範囲が特に減粘性に優れる。
【0026】
本発明の(イ)成分の共縮合物の標準的な製造法を示すが、これによって本発明は何ら限定されるものではない。
【0027】
共縮合物の製造法としては、例えば、所定量のアルキレンオキシド付加物とカルボキシル基を有する芳香族化合物、又はカルボキシル基を有する芳香族化合物及びスルホン酸基を有する芳香族化合物を反応容器に仕込み、70〜90℃の攪拌下で所定量のホルマリン水を1〜4時間かけて滴下、滴下後、還流下で3〜30時間攪拌して冷却、中和する方法が挙げられる。
【0028】
共縮合系において、縮合粘度と縮合時間をコントロールするために水の添加調整を行う。反応系は酸性下で行い、スルホン酸基を有する芳香族化合物やこれに含まれる未反応の酸によりすでに酸性下になっている場合はこのままの酸性領域で縮合を行う。また、反応系によって、酸性にならない場合は、予め硫酸などを加えてpH2以下にして反応を行う。
【0029】
本発明の(イ)成分の共縮合物又はその中和塩の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフ法/ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算による分子量から縮合度を算出)は 3,000〜100,000 が好ましく、 5,000〜50,000がより好ましい。平均分子量が 3,000未満又は 100,000を超えると減粘性に劣る。
【0030】
また、本発明における消泡剤 (ロ) は特に限定するものではないが、ジメチルポリシロキサンを主成分とするシリコン系消泡剤やポリアルキレングリコール脂肪酸エステルを主成分とする消泡剤が好ましく使用される。
【0031】
シリコン系消泡剤としては乳化タイプの水と相溶性のあるものが好ましく使用される。一例を挙げれば、信越シリコン社製:KM−70,KM−73A等のKMシリーズ、東芝シリコン社製:TSA シリーズ、ダウコーニング社製:FSアンチフォームシリーズ、花王社製:アンチフォームE−20等が挙げられる。
【0032】
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルを主成分とする消泡剤としては、花王社製:レオゾールTWL120、日華化学社製:ニコフィックス、フォームレックス797 等が挙げられる。
【0033】
本発明の混和剤組成物において、共縮合物又はその中和塩 (イ) と消泡剤 (ロ) の配合比は、 (イ) / (ロ) = 100/0.01〜5.0(固形分重量比) 程度であり、100/0.1〜1.0が好ましく使用される。100/0.01未満では消泡効果が充分ではなく、100/5.0 を超えると分散性が低下傾向となる。
【0034】
本発明の共縮合物又はその中和塩 (イ) の添加量は、セメントに対して固形分で0.02〜1.0 重量%程度が使用範囲であり、 0.1〜0.5 重量%が好ましく使用される。
【0035】
また、本発明の混和剤組成物の添加は、共縮合物又はその中和塩 (イ) と消泡剤 (ロ) を予め配合したものを添加しても、あるいは別々に添加してもよく、限定されるものではない。
【0036】
本発明の混和剤組成物の使用に当たっては他の分散剤との併用が可能である。該分散剤とは、一般にコンクリート用分散剤として使用されているものであれば良いが、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、ポリカルボン酸もしくはそのエステルもしくはその塩、精製リグニンスルホン酸もしくはその塩、ポリスチレンスルホン酸塩、フェノール骨格を有するセメント分散剤(例えば、フェノールスルホン酸と共縮合可能な他の単量体とのホルムアルデヒド共縮合物)、アニリンスルホン酸を主成分とするセメント分散剤(例えば、アニリンスルホン酸と共縮合可能な他の単量体とのホルムアルデヒド共縮合物)など、従来高性能減水剤と称されるものが好ましく使用される。
【0037】
併用割合としては本発明の混和剤組成物に対して、5〜95重量%が適当である。
【0038】
本発明の混和剤組成物は、振動機による締め固めを行うコンクリート製品の製造や、重力加速度3G〜60G の遠心力を加えて成型するコンクリート製品の製造に用いる。
【0039】
更に、近年振動機を使用しない自己充填性のコンクリートである高流動コンクリートの研究が行われているが、これらのコンクリートを用いたコンクリート製品の製造に混和剤組成物として用いることができる。ここで、高流動コンクリートとは、コンクリートが45cm (JIS A−1101スランプ試験に準ずるフロー値) 程度以上の流動性を示すコンクリートを表わす。
【0040】
本発明の対象となるコンクリートは、セメント、細骨材、粗骨材を主成分とするものであるが、各種の高炉スラグ、フライアッシュ等の各種混和材料を使用することができる。更に、公知の添加剤 (材) と併用することができる。例えば、AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、発泡剤、増粘剤、防水剤、防泡剤等が挙げられる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の例における「%」は、特に、ことわりのない限り、「重量%」である。
【0042】
また、実施例中で示す共縮合物又はその中和塩 (イ) の平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ法/ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算による分子量から求めたものである。
【0043】
共縮合に使用した炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入した芳香族化合物(A) 、カルボキシル基を有する芳香族化合物(B) 、スルホン酸基を有する芳香族化合物(C) の内容を以下に示す。尚、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドを、数値は平均の付加モル数を表わす。
【0044】
芳香族化合物 (A)
A−1;フェノール EO 10モル付加物
A−2;フェノール EO 25モル付加物
A−3;フェノール EO 75モル付加物
A−4;フェノール EO 120 モル付加物
A−5;フェノール EO 250 モル・PO 20 モルブロック付加物
A−6;ナフトール EO 2モル付加物
A−7 (比較) ;フェノール EO 370 モル付加物。
【0045】
芳香族化合物 (B)
B−1;p−ヒドロキシ安息香酸
B−2;o−ヒドロキシ安息香酸
B−3;オキシナフトエ酸。
【0046】
芳香族化合物 (C)
C−1;フェノールスルホン酸
C−2;p−クレゾールスルホン酸
C−3;ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物 (分子量4500) 。
【0047】
以下に、共縮合物又はその中和塩 (イ) の製造例を示す。
【0048】
製造例1 ( (イ)成分の記号D−1 )
攪拌付き反応容器にA−1を 0.3モル、B−1を 0.7モル、硫酸を 0.5モル、水を4モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して10時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して静置する。静置後、二層分離した上層をとり、水を加えて固形分を30%に調整して、分子量21,000の共縮合物を得た。
【0049】
製造例2 ( (イ)成分の記号D−2 )
攪拌付き反応容器にA−3を 0.2モル、B−1を 0.7モル、B−2を 0.1モル、硫酸を 0.5モル、水を5モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して12時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して静置する。静置後、二層分離した上層をとり、水を加えて固形分を30%に調整して、分子量19,000の共縮合物を得た。
【0050】
製造例3 ( (イ)成分の記号D−3 )
攪拌付き反応容器にA−4を 0.1モル、B−1を 0.9モル、硫酸を 0.5モル、水を4モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して10時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して静置する。静置後、二層分離した上層をとり、水を加えて固形分を30%に調整して、分子量42,000の共縮合物を得た。
【0051】
製造例4 ( (イ)成分の記号D−4 )
攪拌付き反応容器にA−1を 0.3モル、B−1を 0.6モル、C−1を 0.1モル、硫酸を 0.3モル、水を4モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して10時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して静置する。静置後、二層分離した上層をとり、水を加えて固形分を30%に調整して、分子量12,000の共縮合物を得た。
【0052】
製造例5 ( (イ)成分の記号D−5 )
攪拌付き反応容器にA−2を 0.3モル、B−1を 0.6モル、C−2を 0.1モル、水を5モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して12時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を30%に調整して、分子量17,000の共縮合物を得た。
【0053】
製造例6 ( (イ)成分の記号D−6 )
攪拌付き反応容器にA−3を 0.2モル、B−1を 0.7モル、C−3を 0.1モル (ナフタレン骨格としてのモル数) 、水を5モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して8時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を20%に調整して、分子量25,000の共縮合物を得た。
【0054】
製造例7 ( (イ)成分の記号D−7 )
攪拌付き反応容器にA−4を 0.2モル、B−2を 0.5モル、C−1を 0.3モル、水を5モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して12時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を20%に調整して、分子量31,000の共縮合物を得た。
【0055】
製造例8 ( (イ)成分の記号D−8 )
攪拌付き反応容器にA−5を 0.1モル、B−2を 0.5モル、C−1を 0.4モル、水を6モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して15時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を20%に調整して、分子量33,000の共縮合物を得た。
【0056】
製造例9 ( (イ)成分の記号D−9 )
攪拌付き反応容器にA−6を 0.3モル、B−2を 0.3モル、C−1を 0.4モル、水を6モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して25時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を20%に調整して、分子量11,000の共縮合物を得た。
【0057】
製造例 10 ( (イ)成分の記号D− 10)
攪拌付き反応容器にA−4を 0.1モル、B−2を 0.6モル、C−1を 0.3モル、水を6モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して18時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を20%に調整して、分子量26,000の共縮合物を得た。
【0058】
製造例 11 ( (イ)成分の記号D− 11)
攪拌付き反応容器にA−3を 0.1モル、B−3を 0.1モル、C−1を 0.6モル、水を3モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して25時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を30%に調整して、分子量11,000の共縮合物を得た。
【0059】
製造例 12 ( (イ)成分の記号D− 12)
攪拌付き反応容器にA−7を 0.1モル、B−2を 0.5モル、C−1を 0.4モル、水を7モル仕込み、37%ホルムアルデヒド 0.9モルを80℃で3時間で滴下する。滴下終了後、 105℃に昇温して15時間反応した後、冷却して50%水酸化ナトリウムでpH8に調製して水を加えて固形分を20%に調整して、分子量41,000の共縮合物を得た。
【0060】
比較例に使用した分散剤の内容
・記号NS;ナフタレン系混和剤 (マイテイ150 :花王(株)製)
・記号MS;メラミン系混和剤 (マイテイ150V−2:花王(株)製) 。
【0061】
実施例に使用した消泡剤 (ロ) の内容と記号を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
コンクリート試験の評価方法
コンクリートの配合条件を表2〜4に示す。尚、表2は振動締め固めコンクリート製品用配合、表3は遠心力締め固めコンクリート製品用配合、表4は高流動コンクリート製品用配合を表わす。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
1.振動締め固めコンクリート製品の評価
表2に示すコンクリート配合で本発明の混和剤組成物と比較混和剤を添加してスランプ値を10±1cmに調整した。その後、マシン油を剥離剤として塗布した直径15cm、高さ30cmの円柱型枠にコンクリートを詰め、テーブルバイブレーターにて15秒間振動充填を行い、試験体を成型した。硬化後のコンクリート表面にある直径2mm以上の気泡の個数を100cm2の面積について数えて表面美観性を次のように判定した。
○ − 4個以下
△ − 5〜19個
× − 20個以上
更に、JIS A 1101法によりコンクリート製造直後のスランプ値を測定した。
試験結果を表5に示す。
【0068】
【表5】
【0069】
2.遠心締め固めコンクリート製品の評価
表3に示すコンクリート配合で、本発明の混和剤組成物と比較混和剤を添加してスランプ値を3±1cmに調整した。その後、φ20cm、高さ30cmの遠心成型用型枠にコンクリートを13kg投入して、遠心締め固めを行った。締め固め時間による硬化コンクリートの強度測定とコンクリートの締まり程度を肉眼で観察した。
遠心条件は重力加速度5Gで1分、次いで 15Gで2分、次いで 30Gで2分後、4分後、6分後の締まり程度を測定した。
コンクリートの締まり程度
○ − 平滑的に締まっている。
△ − 内面または外面の平滑性がやや悪い。
× − 砂利が露出し、内面または外面の平滑性が著しく悪い。
更に、スランプ値と圧縮強度を以下のように測定した。
・スランプ値:JIS A 1101法によりコンクリート製造直後の値を測定した。
・圧縮強度:直径10cm、高さ20cmの円筒上供試体を作成し、28日後の強度をJISA 1108法にて測定した。
測定結果を表6に示す。
【0070】
【表6】
【0071】
3.高流動コンクリート製品の評価
表4に示すコンクリート配合で本発明の混和剤組成物と比較混和剤を添加してスランプ値55±5cmに調整した。その後、マシン油を剥離剤として塗布した直径15cm、高さ30cmの円柱型枠にコンクリートを詰め、試験体を成型した。硬化後のコンクリート表面にある直径2mm以上の気泡の個数を100cm2の面積について数えて表面美観性を次のように判定した。
○ − 4個以下
△ − 5〜19個
× − 20個以上
更に、JIS A 1101法によりコンクリート製造直後のスランプ値を測定した。
試験結果を表7に示す。
【0072】
【表7】
【0073】
評価結果
表5、7で明らかなように、本発明の混和剤組成物から製造された硬化コンクリートは表面気泡の低減が顕著であり、表面美観が著しく改善される。また、表6で明らかなように遠心時間の短縮が可能となる。従って、表面気泡の補修不要、遠心時間の短縮が可能となり、生産の合理化が計れるものである。
Claims (18)
- 炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入した芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(A) とカルボキシル基を有する芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(B) とのホルムアルデヒド共縮合物又はその中和塩(イ)および消泡剤(ロ)を必須成分とするコンクリート製品用混和剤組成物。
- 炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入した芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(A) とカルボキシル基を有する芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(B) 及びスルホン酸基を有する芳香族化合物の中から選ばれる1種又は2種以上(C) とのホルムアルデヒド共縮合物又はその中和塩(イ)および消泡剤(ロ)を必須成分とするコンクリート製品用混和剤組成物。
- (A) 、(B) の反応モル比が (A)/(B) =1〜99/99〜1である請求項1記載のコンクリート製品用混和剤組成物。
- (A) 、(B) 、(C) の反応モル比が (A)/(B)/(C) =1〜98/1〜98/1〜98である請求項2記載のコンクリート製品用混和剤組成物。
- 炭素数2〜3のオキシアルキレン基1〜300 モルを導入した芳香族化合物がベンゼン環誘導体である請求項1〜4の何れか1項に記載のコンクリート製品用混和剤組成物。
- ベンゼン環誘導体がフェノールのオキシアルキレン基付加物である請求項5記載のコンクリート製品用混和剤組成物。
- カルボキシル基を有する芳香族化合物がナフタレン環又はベンゼン環誘導体である請求項1〜6の何れか1項に記載のコンクリート製品用混和剤組成物。
- スルホン酸基を有する芳香族化合物がフェノール誘導体である請求項2または4−8の何れか1項に記載のコンクリート製品用混和剤組成物。
- フェノール誘導体がフェノールスルホン酸である請求項9記載のコンクリート製品用混和剤組成物。
- 共縮合物の中和塩が、1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、アミン塩又は置換アミン塩である請求項1〜10の何れか1項に記載のコンクリート製品用混和剤組成物。
- 共縮合物又はその中和塩の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフ法/ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)が 3,000〜100,000 である請求項1〜11の何れか1項に記載のコンクリート用混和剤組成物。
- 共重合体 (イ) と消泡剤 (ロ) の配合比が、 (イ) / (ロ) = 100/0.01〜5.0(固形分重量比) である請求項1〜12の何れか1項に記載のコンクリート製品用混和剤組成物。
- 消泡剤 (ロ) の主成分がジメチルポリシロキサンである請求項1〜13の何れか1項に記載のコンクリート製品用混和剤組成物。
- 消泡剤 (ロ) の主成分がポリアルキレングリコール脂肪酸エステルである請求項1〜13の何れか1項に記載のコンクリート製品用混和剤組成物。
- 振動機による締め固めを行うコンクリート製品の製造に用いることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載のコンクリート製品用混和剤組成物。
- 重力加速度3G〜60G の遠心力を加えて成型するコンクリート製品の製造に用いることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載のコンクリート製品用混和剤組成物。
- 振動機を使用しないで高流動コンクリートの状態で充填成型するコンクリート製品の製造に用いることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載のコンクリート製品用混和剤組成物。
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