JP3618422B2 - 高強度回路基板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化珪素(Si )焼結体を絶縁体層として用いた高強度回路基板およびそれを用いた半導体装置ならびに高強度回路基板の製造方法に関する。特に、絶縁体層と導体層とが一体焼結された一層配線または多層配線を有する高強度回路基板等に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器の小型化にともない、回路基板に実装される半導体素子からの発熱をいかに効率良く放熱するかが重要な問題となっている。また、電力用半導体素子の実装の場合も放熱は重要な問題である。
【0003】
従来から、回路基板用の絶縁材料としてはAl セラミックが広く用いられている。ここで、Al は熱伝導性が最高でも20W/mKと低いため、放熱性に問題がある。また、特開昭60−178688号公報において、電気絶縁性等の絶縁体としての電気的諸特性に優れ、かつ熱伝導性に優れたAlNセラミックの回路基板への応用が検討されている。
【0004】
しかしながら、AlNやAl は、半導体素子からの発熱に起因する熱応力に対して弱く、AlNセラミックスは4点曲げ強度で300MPa 程度と強度が低く熱応力が集中すると割れが発生するという問題がある。これはAlNに限った現象ではなく、Al でも焼結体強度が低いという理由によるもので同様の割れ現象が見られる。また、AlNセラミックスは耐水性や耐酸性、耐アルカリ性などの耐薬品性が悪く、また外部端子を銀ろうや半田で接合する際の金属との熱膨張係数の差により生ずる応力のために、電気的な金属端子であるピン、リードやボールとの接着部分が破壊されやすいなどの問題もある。
【0005】
このような問題が概ね解決されたセラミック基板が、特開平4−212441号公報に示された。このセラミック基板は、Si から構成され、アルミナ基板よりも熱放散性が高く、耐環境性、機械的強度や電気的特性に優れたものである。
【0006】
ところで電子機器の小型化、高密度化を考慮すると回路基板の配線にも高密度配線化が要求され、多層化は必須の技術となっている。しかしながら、既存の多層化技術はAl セラミック板やAlNセラミック板と導体層とを一体焼結するものであり、Si セラミックス板と導体層の多層化技術は未だ確立されていない。また、既存の多層化技術においては、それにより形成された回路基板或いは半導体装置においては、反りの発生、導体回路の断線、或いは剥離等という問題が存在する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、導体層と絶縁体層との密着性が強固で、反りや断線等の生じにくいSi セラミックスを用いた回路基板およびそれを用いた半導体装置ならびに回路基板の製造方法、特に同時焼結による一層配線や多層配線を有する高接合強度回路基板等を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、
少なくとも絶縁体層と、少なくとも導体層を含む回路基板において、
全絶縁体層のうち少なくとも1層が、β−Si を主成分とし、希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される1種以上の元素を含有する焼結体であり、かつ
全導体層のうち少なくとも1層が、周期律表のIVa、VaおよびVIa族に属する元素より選択される1種以上の元素と、希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される1種以上の元素を含有する
ことを特徴とする回路基板およびそれを用いる半導体装置が、上記課題を解決し得ることを見いだした。
【0009】
また、本発明者らは、
焼結助剤として希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される元素を含有する化合物の少なくとも1種を添加した後、α−Si を焼結して絶縁体層を形成させる工程;
周期律表のIVa、VaおよびVIa族に属する元素より選択される1種以上の元素に、希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される1種以上の元素を添加して導体層を形成させる工程;および
絶縁体層と導体層とを同時焼結する工程
を含むことを特徴とする回路基板の製造方法が、上記課題を解決し得ることを見いだした。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に係る回路基板中の絶縁体層について説明する。
絶縁体層は、β−Si を主成分とする多結晶焼結体である。この絶縁体層は、強度が700MPa 以上と高い。ここで、強度は、組成や焼結条件の最適化により1,000MPa 以上とするのが好ましい。
【0011】
また、熱伝導率はアルミナのそれよりも高い30W/mK以上であることが好ましく、70W/mK以上であることがより好ましい。例えば、70W/mKの熱伝導率を有する絶縁体層は、Si の原料粉末に含まれる酸素量が少ないものを用いる。Al を添加する場合、添加量は0.8重量%以下が好ましく、0.25重量%以下がより好ましい。最適化を行うと、130W/mK以上の熱伝導率を有する絶縁体層が得られる。
【0012】
次に、この絶縁体層の製造方法を説明する。まず、Si グリーンシートを作成する。このグリーンシートはSi 粉末と焼結助剤、結合剤(バインダ)などを溶剤と共に十分混合し、例えばドクターブレード法等により得ることができる。
【0013】
用いるSi 粉末に関し、特に制限はないが、絶縁体層の熱伝導率を考慮すると、酸素量が3.0重量%以下のα−Si 粉末を用いることが好ましい。より好ましくは酸素量が2.0重量%未満であり、さらに好ましくは1.5重量%未満である。
【0014】
また、用いるSi 粉末は、粒子径が小さいものが揃っているほうが好ましく、平均粒子径は2μm 未満であるものが好ましい。より好ましくは1μm 未満である。さらに好ましくは0.8μm 未満である。特に1μm 未満の粒子を70体積%以上含む粉末が最適である。また、Si 原料粉末は結晶系がαタイプを用いるのが好ましいが、βタイプの粉末が50体積%以下ならば使用することが可能である。また、陽イオン不純物は3,000ppm 未満であることが好ましい。より好ましくは1,500ppm 、さらに好ましくは900ppm 未満である。陽イオン不純物を多量に含有すると、焼結体が高い熱伝導率を持たなくなるという欠点が生じる。酸素以外の陰イオン不純物は、2,000ppm 未満であることが好ましい。より好ましくは1,000ppm 、さらに好ましくは500ppm 未満である。酸素以外の陰イオン不純物も多量に含有すると、焼結体が高い熱伝導率を持たなくなるという欠点が生じる。また、焼結体中の酸素量も少なければ少ないほど熱伝導率が高くなるので好ましい。
【0015】
次に、添加する焼結助剤は、ScやYなどの希土類元素およびアルカリ土類元素の中から少なくとも一種を単体および/または化合物の形で添加すれば良い。例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Be、Mg、Ca、Sr、Baがいずれも使用できる。これらY、Ce、La、Sc、Be、Mgなどの希土類元素およびアルカリ土類元素は、Si セラミックスの緻密化に寄与すると共に、Si 粉中の酸素を粒界の副構成相にトラップし、高熱伝導化に大きく貢献する。特に好ましい元素は、このような効果の大きいY、Ce、La、Yb、Sc、Be、Mg元素である。
【0016】
これら元素を含有する化合物の形態としては、酸化物の形態が特に好ましく、焼結条件下で酸化物となる化合物も用いてもよい。つまり、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、水酸化物なども使用することが可能である。このような焼結助剤は、酸化物はもとより、ハロゲン化物、酸ハロゲン化物、アセチリド化合物、炭化物、水素化物、窒化物、硼化物、ケイ化物、硫化物等の形で添加される。これら希土類元素およびアルカリ土類元素には、原料粉末中に含まれる酸素量との兼ね合いで最適量を決定すべきではあるが、酸化物換算で0.01〜15重量%であることが望ましい。好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは1〜8重量%であることが望ましい。また、希土類元素およびアルカリ土類元素を含む化合物を両方添加するか、両類元素を含有する複合化合物を添加すると低温で焼結することが可能となり、焼結開始温度を最大で200℃低下することができる。
【0017】
また、焼結の補助添加物として、Si元素を含有する化合物を添加すると焼結性が向上することがあり、必要ならば添加する。具体的な一例としては、酸素量が少ないSi 原料粉末を用いた場合、焼結性向上のためにSiO を添加すると容易に緻密な焼結体を得ることができる。また、Al元素を含む化合物を添加すると、粒界成分が結晶化し強度の高いSi 焼結体が得られる。AlNを添加しても同様の効果が得られる。
【0018】
更に、回路基板は用途に応じて、着色、つまり遮光性が求められる。この場合には、周期律表のIVa、Va、VIa、VII a、VIII族元素単体或いは化合物を添加すれば近紫外域から赤外域までの遮光が可能となる。添加量は、元素換算で0.03〜5重量%添加すれば良い。より好ましくは0.1〜3重量%、さらに好ましくは、0.2〜1重量%添加すれば良い。
【0019】
これら焼結助剤等の添加物は、予め原料粉末に添加すれば良い。ただし、添加物の種類によっては、含浸等の方法で後に添加しても良い。
【0020】
次に、用いる結合剤は、1,400℃以下の温度で分解する有機高分子体が好ましい。具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートブチレート、セルロース等の酸素含有有機高分子体が一種または二種、あるいは三種以上混合したものを用いることができる。バインダの種類や量ならびに溶剤量等の選択はSi 原料粉末の特性や、作製したいシートの厚み等で随意選択する。また、脱バインダは、N 、Ar、H 、等の非酸化性雰囲気中で行えばよい。さらに、脱バインダ後のカーボンを少なくしたい場合にはH Oを含有させてもよい。
以上のようなSi 粉末、焼結助剤や結合剤等を含有するグリーンシートを焼結すると絶縁層が形成されるが、好ましい焼結条件については後述する。
【0021】
次に、本発明に係る回路基板中の導体層について説明する。
【0022】
この導体層中の導電体は特に限定されるものではなく、Si セラミックスの焼結温度に耐え得るものであればよい。好ましくは、周期律表のIVa、Va、VIa族元素単体或いは化合物を含む。導電体の種類として、さらに好ましくはMo、W、Ti、Zr、Nb、Taの単体の金属や、これら元素を含む化合物を使用すると良い。さらに好ましくはMo、W、Ti、Zrである。また、周期律表のIVa、Va、VIa族元素のうち異種元素を混合してもよいし、単体金属と化合物の両者を使用してもよい。さらには、微量の低融点貴金属元素(Au、Ag、Cu、Pt、Pd等)を含有してもよい。
【0023】
本発明の導体層中には、更に、アルカリ土類元素および希土類元素から選択される少なくとも1種の元素が含まれる。希土類元素およびアルカリ土類元素としては、例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Be、Mg、Ca、Sr、Baが挙げられる。特に、工業的には、Y、Ce、La、Yb、Sc、Be、Mgが好ましい。また、焼結条件下で酸化物となる化合物も用い得、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、水酸化物なども使用することが可能である。このような添加物は、酸化物の形態以外にも、ハロゲン化物、酸ハロゲン化物、アセチリド化合物、炭化物、水素化物、窒化物、硼化物、ケイ化物、硫化物等の形態で添加される。
【0024】
希土類元素およびアルカリ土類元素から選択される元素を含有する化合物の導体層中の含有量は、酸化物換算で0.01〜15重量%が好ましい。あまり多いと導体層の導電率が低下し、少ないと導体層の剥離防止、基板の反り防止などの効果を得ることができないからである。
【0025】
導体層中に、更に、Siおよび/またはAl元素を含有する単体もしくは化合物を添加すると、無添加時と比較して、相対密度の大きな緻密な導体層が得られ、導体層の剥離防止および接合強度の向上、基板の反り防止などの効果が得られる。このような添加物は、同時燒結時にアルミネート液相やシリケート液相を形成する。また、同時燒結時に絶縁体層中にもアルミネート液相やシリケート液相が生ずる。このように、導体層中にアルミネート液相やシリケート液相が生じることにより、絶縁体層に生じる液相の導体層による吸い上げが防止され、このような吸い上げによる絶縁体層中の組成の不均一を防止し、基板の反りを防止することができる。この添加は、希土類元素およびアルカリ土類元素から選択される元素を含有する化合物との混合の形態でも、これら元素との複合化合物の形態で行ってもよい。この場合、希土類元素およびアルカリ土類元素から選択される元素を含有する化合物の量と、Siおよび/またはAl元素を含有する単体もしくは化合物の混合物(或いはこれらの元素を含有する複合化合物の形態で)の量の合計では、酸化物換算で0.05〜20重量%が好ましい。
【0026】
次に、本発明の回路基板の製造方法について説明する。
【0027】
まず、同時焼結した後も導電性を維持し得る、具体的には周期律表のIVa、Va、VIa族元素単体或いは化合物の粉末をペースト化し、Si グリーンシート上に所望のパターンで印刷する。この時、グリーンシートにはパンチングマシーンなどを用いてビアホールを形成しておき、予め焼結後導体となる導電ペーストを、圧入やメタルマスクなどを用いて印刷充填などにより充填しておく。このビアホールによりグリーンシートをはさむ上下導体間の電気的接続を行う。
【0028】
この導体ペーストには、希土類元素およびアルカリ土類元素の少なくとも一種を含む単体や化合物、さらには必要に応じてSiおよび/またはAl元素を含有する単体や化合物を添加する。
【0029】
このSi元素やAl元素を、希土類元素等を含有する単体もしくは化合物と共に、混合物の形態で添加する場合には、アルミネートやシリケートを形成するような比率で混合することが好ましい。例えば、Al元素を含む化合物としてアルミナを添加する場合、アルミナの量はアルミネートを形成できるように0.03〜10重量%であることが好ましい。より好ましくは0.05〜5重量%であり、さらに好ましくは0.1〜1重量%である。また、例えば、Si元素を含む化合物としてSiO を添加する場合、SiO の量はシリケートを形成できるように0.03〜10重量%であることが好ましい。より好ましくは0.05〜5重量%であり、さらに好ましくは0.1〜1重量%である。
【0030】
また、導体層中の、希土類元素やアルカリ土類元素から選択される元素は、Si セラミックの焼結助剤と同種のものを用いることが好ましい。
異種のものを用いても、絶縁層中と導体層中に、アルミネートやシリケートは生成するが、同種のものを用いると、絶縁層中と導体層中に同一のアルミネートやシリケートが生成し、より組織の不均一化が防止され、前記吸い上げが防止される。したがって、基板の反りがさらに防止されることになる。
【0031】
なお、導体の体積が大きくなるビアホール部分にのみ上記元素を単体または化合物の形態で添加しても、基板の反りが発生しないことがある。すなわち、基板の大きさや、設計で決めた導体層の配置によっては、少なくとも一部分の導体層に添加すれば反りの少ない回路基板が得られる場合がある。
【0032】
このような成分を含有する導電ペーストを塗布した多層グリーン成形体を脱バインダした後、焼結工程に供する。この焼結工程は特に限定されず公知の窒化ケイ素で行われる焼結方法がそのまま採用される。焼結炉にセットする際のセッターの材質は、グラファイト、BN、AlN等を用いると回路基板の焼結は可能となるが、最も好ましいのはSi でできたセッターであり、これを用いると高温で焼結しても、焼結体の一部で起こりやすい反応(セッターと非焼結物間の反応)が全く起こらず、焼結上りの表面粗さは非常に小さなものとなり良好な回路基板が得られる。表面粗さは、平均表面粗さRaで1.0μm 以下になる。より良好な表面を持つものでは0.5μm 以下、さらに良好な表面を持つものでは0.3μm 以下になる。一般には、常圧下、加圧下または減圧下の非酸化性雰囲気下、例えば窒素雰囲気やアルゴン雰囲気の下で1,500℃〜1,950℃の温度で焼結を実施すればよい。焼結温度を高い温度に設定すると珪化物が一部生成するが、焼結温度を1850℃以下に設定すると、珪化物の生成は少なくなる。より好ましくは1,800℃以下であり、さらに好ましくは1,750℃以下である。焼結に必要な時間は焼結に供される成形体の厚さや焼結温度などの諸条件によって異なるが、一般に、0.5時間〜100時間の範囲から選択をすればよい。これらの条件は実施に先立ち諸条件に応じて適当な範囲を予め決定して実施するのが好ましい。
【0033】
得られるSi 回路基板を高熱伝導で緻密、さらには高強度にするためには、特に1,000℃以上の高温部で平均昇温速度を1〜40℃/minの範囲とすることが好ましい。より好ましくは、5〜30℃/min、さらに好ましくは8〜25℃/minの範囲とすることが好ましい。上記焼結により、相対密度が95%以上のSi 絶縁層が得られる。より緻密なものとして98%以上、さらには99%以上の絶縁層が得られる。
【0034】
このようにして製造された回路基板は次のような特性を有する。
【0035】
まず、この本発明の回路基板は、表裏平行度が非常に小さな値となっており、反りやうねりが非常に小さいので、外部端子の数が非常に多い(例えば1,000端子以上の)回路基板でも実装時に半田接続が容易に行うことができる。基板の反りやうねりの有無を表す表裏平行度は、焼結体多層回路基板の対角線10cm当たりを基準にして中央部と周縁部との反りの最大値を測定して求めたが、この値が0.5mm以下の非常に小さな値となる。大面積の回路基板の場合には、表裏平行度が0.3mm以下の基板を用いれば実装が可能となる。
【0036】
また、この回路基板の内部抵抗は、表面抵抗および内部抵抗が200μΩcm以下と良好な値であった。また、Siおよび/またはAl元素を含有させて導体層を形成させた場合には、導体の密度が高くなり抵抗率が低い導体が得られると共に、珪化物の生成も同時に押さえられ、低抵抗な導体が形成される。この最適化により、50μΩcm以下、場合によっては20μΩcmの抵抗率を有する回路基板が得られた。なお、珪化物の生成を押さえる方法として、導体層中にAlNをフィーラーとして添加してもよい。
【0037】
更に、この回路基板中の絶縁体層と導体層の接合強度は、5 kg/2mm×2mm以上の値となる。5 kg/2mm×2mm未満の値では、外部端子にピンを用いた場合、接合強度としては不足であり、Si と導体間でピンの脱落が生じる。特に、BGA(ボールグリッドアレイパッケージ)の場合に、プリント配線板のような熱膨張率の大きな有機材料にボール間隔が狭ピッチで、表面実装を行うときにはさらに高強度な接合強度が要求される。その時には6 kg/2mm×2mm以上の接合強度を有する、導体層組成を選択すればよい。さらに最適化することで7 kg/2mm×2mm以上の接合強度を有する。
【0038】
本発明の回路基板を用いた好適な半導体装置を、図2及び図3を参照しながら説明する。この半導体装置は、基板上面12aにECLなどの半導体素子6が搭載され、この半導体素子と電気的に接続された配線パターンを有する多層セラミック回路基板12と、前記配線パターンと電気的に接続されるとともに、多層セラミック回路基板12の基板下面12bに形成された外部端子と、半導体素子6を覆うように、多層セラミック回路基板の基板上面12aに接合された高熱伝導性封止部材13とを備えている。ただし、外部端子と半導体素子が同一の一主面にあっても特に問題なく使用することができる。なお、外部端子は、好ましくは図2に示されるようにリードピン7であり、或いは図3に示されるように半田ボール15(BGAボールグリッドアレイ)でもよい。また、高熱伝導性部材は、100W/mK以上の熱伝導率を有する窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム焼結体や、合金を含む金属から構成すると良い。
【0039】
上記構成に係る半導体装置によれば、半導体素子において発生する熱が、効率良く、放熱フィンなど(フィンを用いない場合もある)に伝達され、優れた放熱性を発揮させることができる。
【0040】
また、半導体装置の構造の上で、外部端子の接合面と対向する窒化ケイ素回路基板の他の主面に半導体素子を搭載した場合には、多ピン化に対応させた上で半導体装置を小形化することができ、高速の半導体装置としてもより好ましい。また、半導体が作動している時と作動停止した時の温度変化が生じた時に、回路基板の絶縁層が窒化ケイ素で構成されているため、外部端子のピンや半田ボール部分に応力がかかる。しかし、強度が高いために、割れなどの不具合は発生しない。さらに、一つの回路基板に多数の半導体を搭載するマルチチップモジュール(MCM)の形で、半導体装置を構成すると、広い面積で外部端子をボードに接合しなければならないが、この場合にも耐熱応力の点で十分使用できるだけの信頼性が得られる。
【0041】
本発明をさらに具体的に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
α−Si を95%含有し、他はβ相であり、不純物として酸素を1.4重量%含有し、平均粒径が0.6μm のSi 粉末に、焼結助剤として平均粒径0.7μm のY を5重量%、平均粒径が0.8μm の0.25重量%のα−Al を添加し、着色剤としてWO をW金属換算で0.3重量%添加し、Si 製ボールを用いて24時間湿式混合を行い原料を調整した。ついで、この原料に有機バインダーを有機溶媒と共に分散し、スラリーを作製した。このスラリーを脱泡した後、ドクタープレード法により、100〜800μm 程度の均一なグリーンシートを作製した。次に、このシートを約130mm×130mmの大きさに切断し、各層間の電気回路の接続になるビアホールをパンチングマシーンで100〜300μm φの太さに開けた。
【0043】
一方、平均粒径1.1μm のタングステン97.0重量%と平均粒径0.7μm のY を1.71重量%、平均粒径0.8μm のAl を1.29重量%を有機溶媒と共に混合、分散し、フィラー添加の導体ペーストを作製した。ビアホールの形成されたグリーンシート上に、この無機質フィラー添加のタングステンペーストを圧入機を用いて充填し、さらにスクリーン印刷機を用いて同一面内の回路を印刷した。これら複数枚を加熱プレスすることで積層過程を終えた。これを10mmの大きさにカットし、次にN +H +H O雰囲気中、最高温度900℃で脱バインダを行った後、Si セッターに脱バインダした成形体を配置し、窒素雰囲気10気圧中1,850℃で3時間加圧焼結し、多層セラミック基板を得た。
得られた基板の導体部のない部分から円板(直径10mm、厚さ3.5mm)を切り出し、これを試験片としてレーザーフラッシュ法により熱伝導率を測定した。
【0044】
また、基板の反りの有無を表す表裏平行度は、焼結体多層基板の対角線を基準にして中央部と周縁部との反りの最大値を測定することにより求めた。
【0045】
次に、導体層の断面積を算出し抵抗値から、導体層の導体抵抗率を求めた。ただし表面の配線に関しては導体層に、金属メッキなどを行わずに測定し、無機質フィラーの添加の効果を見た。さらに、得られた基板の2mmの導体部分にNiメッキをした後、ワイヤーを半田付けし、引っ張り強度試験を行い、Si 基板と導体層間の接着強度を測定した。これらの結果を第1表と第2表に示した。
【0046】
Si 粉末の種類、Si 基板の焼結助剤粉末の種類、焼結助剤フィラーの種類、量、導電体および焼結条件を種々に変えて、上記実施例1と同様にして、Si 多層セラミック基板を作製し、それぞれについて、同じく熱伝導率、引っ張り強度、表裏平行度および表面抵抗を測定した。結果を第1表と第2表に示した。第2表から明らかなように本発明に係る回路基板では、導体層の密着強度が向上することがわかる。
【0047】
例えば、実施例1では引っ張り強度が6.8kg/ 2mm×2mmであるのに対し比較例1では3.5 kg/2mm×2mmと密着強度が不十分であった。
また、本発明における同時焼結体は、表裏焼結体で表した反りが少なく、さらに添加量を含んでいるにも拘らずその比抵抗は無添加のものに比べて何等向上しないことが分かる。
【0048】
【表1】
Figure 0003618422
【0049】
【表2】
Figure 0003618422
【0050】
【表3】
Figure 0003618422
【0051】
【表4】
Figure 0003618422
【0052】
【表5】
Figure 0003618422
【0053】
【表6】
Figure 0003618422
【0054】
【表7】
Figure 0003618422
【0055】
【表8】
Figure 0003618422
【0056】
(実施例48)
実施例2と同様な構成の絶縁層と導体層を用い、回路基板を作成した。この回路基板は内部配線層を有する25mm×25mm×2.6mmの窒化ケイ素多層回路基板である。窒化ケイ素多層回路基板の他面側にリードピンを240本Agろうを用いて接合した。この後、半導体素子として消費電力10Wのシリコン素子を窒化ケイ素多層回路基板の上面に接合搭載し、ボンディングワイヤを付設して電気的な接続を完了させた。
さらに、150W/mKの熱伝導率を有する窒化ケイ素焼結体により、放熱部材を兼ねる高熱伝導性封止部材を実施例2の絶縁体部を作製する要領で作成した。そして、この窒化ケイ素多層回路基板の上面にAu−Sn半田により接合し、さらに封止部材上に直径25mmの円形7段構造の放熱フィンを配置して目的とする半導体装置を得た。
この半導体装置の放熱性を評価するために、冷却風速を1.5m/s に設定して△VBE法により熱抵抗を測定したところ、2.7℃/Wと低熱抵抗値であり、放熱性の高い半導体装置が得られることが判明した。
【0057】
(比較例11)
実施例48と同様に行ったが、絶縁層にアルミナを用いた場合、熱抵抗値は、8℃/Wであった。
【0058】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のSi セラミックス回路基板は絶縁体が高熱伝導性を有し、導体層の密着性が強固でかつ焼結過程における基板の変形が少なく、さらに、引っ張り強度は十分に実用可能な特性値を示すなど様々な優れた性質を有するものであり、その工業的価値は極めて大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層セラミック回路基板を示す部分切欠斜視図である。
【図2】本発明の多層セラミック回路基板を用いた半導体装置(外部端子がリードピンの場合)を示した図である。
【図3】外部端子が半田ボールである半導体装置の部分断面図である。
【符号の説明】
1,12 多層セラミック回路基板
2,14 絶縁層
3 導体層
4 ビアホール
5 放熱フィン
6 半導体素子
7 リードピン
8 ボンディングワイヤ
9 導体層(内部配線層)
9a ビアホール
10 表面配線層
11 配線パターン
12a 基板上面
12b 基板下面
13 高熱伝導性封止部材
13a 凸状外縁部
13b 凹状部
15 半田ボール
A 接合面

Claims (10)

  1. 少なくとも絶縁体層と導体層とを含む回路基板において、
    全絶縁体層のうち少なくとも1層が、β−Siを主成分とし、希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される1種以上の元素を含有する焼結体である絶縁体層であり、
    該絶縁層と接する少なくとも1層の導体層が、周期律表のIVa、VaおよびVIa族に属する元素より選択される1種以上の元素と、希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される1種以上の元素と、Al元素およびSi元素から選ばれた少なくとも一方の元素とを含有するものであって、
    前記導体層と前記絶縁体層が、共通の、希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される元素を含有するものであることを特徴とする、回路基板。
  2. 絶縁体層の熱伝導率が、30W/mK以上である、請求項1記載の回路基板。
  3. 希土類元素およびアルカリ土類元素が、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Be、Mg、Ca、Sr、Baである、請求項1又は2に記載の回路基板。
  4. 周期律表のIVa、VaおよびVIa族に属する元素が、Mo、W、Ti、Zr、Nb、Taである、請求項1〜3のいずれか1項記載の回路基板。
  5. 絶縁体層が、更にAl元素を含有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の回路基板。
  6. 絶縁体層中における、希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される1種以上の元素の含有量が、酸化物換算で0.01〜15重量%である、請求項1〜5のいずれか1項記載の回路基板。
  7. 導体層中における、希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される1種以上の元素の含有量が、酸化物換算で0.01〜15重量%である、請求項1〜6のいずれか1項記載の回路基板。
  8. 導体層中における、希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される1種以上の元素の含有量と、Al元素およびSi元素の含有量の合計が、酸化物換算で0.05〜20重量%である、請求項1〜7のいずれか1項記載の回路基板。
  9. 前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の回路基板の製造方法であって、
    焼結助剤として希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される元素を含有する化合物の少なくとも1種を添加した後、α−Siを焼結して絶縁体層を形成させる工程;
    周期律表のIVa、VaおよびVIa族に属する元素より選択される1種以上の元素に、希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される1種以上の元素を添加して導体層を形成させる工程;および
    絶縁体層と導体層とを同時焼結する工程
    を含むことを特徴とする回路基板の製造方法。
  10. 導体層を形成させる工程において、更にAl元素およびSi元素から選ばれた少なくとも一方の元素を添加する、請求項9記載の方法。
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