JP3678485B2 - 高強度高信頼性回路基板およびその製造方法 - Google Patents

高強度高信頼性回路基板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化珪素(Si34)焼結体を絶縁体層として用いた高強度高信頼性回路基板およびそれを用いた半導体装置ならびに高強度高信頼性回路基板の製造方法に関する。特に絶縁体層と導体層とを一体焼結させることによって得られる、一層配線または多層配線を有する高強度高信頼性回路基板等に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器の小型化にともない、回路基板に実装される半導体素子からの発熱をいかに効率良く放熱するかが重要な問題となっている。また、電力用半導体素子の実装の場合も放熱は重要な問題である。
【0003】
従来から、回路基板用の絶縁材料としてはAl23 セラミックスが広く用いられている。ここで、Al23 は熱伝導率が最高でも20W/mKと低いため、放熱性に問題がある。また、特開昭60−178688号公報において、電気絶縁性等の絶縁体としての電気的諸特性に優れ、かつ熱伝導性に優れたAlNセラミックスの回路基板への応用が検討されている。
【0004】
しかしながら、AlNやAl23 は、半導体素子からの発熱に起因する熱応力に対して弱く、AlNセラミックスは4点曲げ強度で300MPa 程度と強度が低く熱応力が集中すると割れが発生するという問題がある。これはAlNに限った現象ではなく、Al23 でも焼結体強度が低いという理由によるもので同様の割れ現象が見られる。また、AlNセラミックスは耐水性や耐酸性、耐アルカリ性などの耐薬品性が悪く、また外部端子を銀ろうや半田で接合する際の金属との熱膨張係数の差により生ずる応力のために、電気的な金属端子であるピン、リードやボールとの接着部分が破壊されやすいなどの問題もある。
【0005】
このような問題が概ね解決されたセラミック基板が、特開平4−212441号公報に示された。このセラミック基板は、Si34 から構成され、アルミナ基板よりも熱放散性が高く、耐環境性、機械的強度や電気的特性に優れたものである。
【0006】
ところで電子機器の小型化、高密度化を考慮すると回路基板の配線にも高密度化が要求され、多層化は必須の技術となっている。しかしながら、既存の多層化技術はAl23 セラミック絶縁層やAlNセラミック絶縁層と導体層とを一体焼結するものであり、Si34 セラミック板と導体層の多層化技術は未だ確立していない。また、既存の多層化技術においては、Si34 用の最適な導体層が開発されていないために、多層化技術により作製された回路基板あるいは半導体装置においては、高抵抗な導体層、絶縁層と導体層の収縮率ミスマッチングによる低い位置精度、反りの発生、導体回路の断線、あるいは剥離などという問題が存在する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低抵抗な導体層、絶縁層と導体層の収縮率がマッチングした高い位置精度、導体層と絶縁体層との密着性が強固で、反りや断線等の生じにくいという高信頼性を有する高強度のSi34 セラミックスを用いた回路基板およびそれを用いた半導体装置ならびに高強度高信頼性回路基板の製造方法、特に同時焼結による一層配線や多層配線を有する高強度高信頼性回路基板等を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、少なくとも絶縁体層と導体層を含む回路基板において、全絶縁体層のうち少なくとも一層が、β−Si34 を主成分とし、希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される一種以上の元素を含有する焼結体であり、かつ全導体層のうち少なくとも一層が、Mo、Wの少なくとも一種を主成分とし、周期律表のVIII族元素から選択される一種以上の元素を更に含むことを特徴とする高強度高信頼性回路基板およびそれを用いた半導体装置が、上記課題を解決し得ることを見いだした。また、全導体層のうち少なくとも一層は、更に、希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される一種以上の元素や、Si34 、AlNの少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0009】
また、本発明者らは、少なくとも絶縁体層と導体層とを含む回路基板において、全絶縁体層のうちの少なくとも一層が、β−Si34 を主成分とし、希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される一種以上の元素を含有する焼結体であり、かつ全導体層のうちの少なくとも一層が、Mo、Wの少なくとも一種を主成分とし、更にAlNを含むことを特徴とする回路基板およびそれを用いる半導体装置も、上記課題を解決し得ることを見いだした。
【0010】
ここで、「全絶縁体層のうち少なくとも一層が、β−Si34 を主成分とし」とは、β−Si34 の絶縁層(少なくとも一層)に占める含有率が、50wt%以上かつ50vol%以上であることを意味する。
つまり、α−Si34 や粒界成分、さらに着色成分等のβ−Si34 以外の相の合計含有率が50wt%以下かつ50vol%以下であることを意味する。
【0011】
また、「全導体層のうちの少なくとも一層が、Mo、Wの少なくとも一種を主成分とし」とは、導体層(少なくとも一層)に占めるWとMoとの合計含有率が、50wt%以上かつ50vol%以上であることを意味し、Mo、Wは両成分が入っている必要はなく、WあるいはMoの一方が0wt%(0vol%)であってもよい。つまり、他の成分、具体的にはSi34 、AlN、VIII元素成分等の導体層中のWとMo以外の合計含有率が、50wt%以下かつ50vol%以下であることを意味する。
【0012】
更に、本発明者らは、α−Si34 に焼結助剤として希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される一種以上の元素を添加した後、これを焼結して絶縁体層を形成させる工程;Mo、Wの少なくとも一種元素に、周期律表のVIII族に属する元素より選択される一種以上の元素を添加して導体層を形成させる工程;および絶縁体層と導体層とを同時焼結する工程を含むことを特徴とする回路基板の製造方法が、上記課題を解決し得ることを見いだした。
【0013】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に係る回路基板中の絶縁体層について説明する。
絶縁体層は、β−Si34 を主成分とする多結晶焼結体である。この絶縁体層の強度は、700MPa 以上であることが好ましく、組成や焼結条件の最適化によりこの強度を1,000MPa 以上とするのがより好ましい。
【0014】
また、熱伝導率は、アルミナのそれよりも高い30W/mK以上であることが好ましく、70W/mK以上であることがより好ましい。例えば、70W/mKの熱伝導率を有する絶縁体層は、酸素含有量の少ないSi34 の原料粉末を用いたり、Al23 やSiO2 を添加したりして得られる。Al23 等を添加する場合、添加量は0.8重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.25重量%以下である。当業者が容易に行い得る範囲内で最適化を行うと、130W/mK以上の熱伝導率を有するSi34 絶縁体層を得ることができる。
【0015】
次に、この絶縁体層の製造方法を説明する。まず、Si34 グリーンシートを作製する。このグリーンシートは、Si34 粉末、焼結助剤、結合剤(バインダ)等を溶剤と共に十分混合したものを用いて、例えばドクターブレード法等により作製し得る。
【0016】
用いるSi34 粉末に関し、特に制限はないが、絶縁体層の熱伝導率を考慮すると、酸素量が3.0重量%以下のα−Si34 粉末を用いることが好ましい。より好ましくは酸素量が2.0重量%未満であり、更に好ましくは1.5重量%未満である。焼結体中の酸素量が少ないほど熱伝導率が高くなるからである。
【0017】
また、用いるSi34 粉末は、粒子径が小さいものが揃っているほうが好ましく、平均粒子径は2μm 未満であるものが好ましい。より好ましくは1μm 未満であり、0.8μm 未満が更に好ましい。特に1μm 未満の粒子を70体積%以上含む粉末が最適である。また、Si34 原料粉末は結晶系がαタイプを用いるのが好ましいが、βタイプの粉末が50体積%以下ならば使用することが可能である。また、陽イオン不純物は3,000ppm 未満であることが好ましい。より好ましくは1,500ppm 未満、更に好ましくは900ppm 未満である。陽イオン不純物を多量に含有すると、焼結体が高い熱伝導率を持たなくなるという欠点が生じる。酸素以外の陰イオン不純物は2,000ppm 未満であることが好ましい。より好ましくは1,000ppm 、更に好ましくは500ppm 未満である。酸素以外の陰イオン不純物も陽イオン不純物と同様に多量に含有すると、焼結体が高い熱伝導率をもたなくなるという欠点が生じる。
【0018】
次に、添加する焼結助剤は、希土類元素やアルカリ土類元素から選択される一種以上の元素を、単体、化合物の少なくとも一種の形で添加すればよい。例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Be、Mg、Ca、Sr、Baがいずれも使用できる。これらY、Ce、La、Sc、Be、Mg等の希土類元素およびアルカリ土類元素は、Si34 セラミックスの緻密化に寄与すると共に、Si34 粉中の酸素を粒界の副構成相にトラップし、高熱伝導化に大きく貢献する。特に好ましい元素は、このような効果の大きいY、Ce、La、Yb、Sc、Be、Mg元素である。
【0019】
これら元素を含有する化合物の形態としては、酸化物の形態が特に好ましく、焼結条件下で酸化物となる化合物も用いてもよい。つまり、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、水酸化物なども使用することが可能である。このような焼結助剤は、酸化物以外の、ハロゲン化物、酸ハロゲン化物、アセチリド化合物、炭化物、水素化物、窒化物、硼化物、ケイ化物、硫化物等の形で添加してもよい。これら希土類元素およびアルカリ土類元素の添加量は、原料粉末中に含まれる酸素量との兼ね合いで最適量を決定すべきではあるが、酸化物換算で0.01〜15重量%であることが望ましい。好ましくは0.1〜10重量%、更に好ましくは1〜8重量%である。また、希土類元素およびアルカリ土類元素を含む化合物を両方添加するか、両類の元素を含有する複合化合物を添加すると低温で焼結することが可能となり、焼結開始温度を最大で200℃低下させることができる。
【0020】
また、焼結の補助添加物として、Si元素を含有する化合物を添加すると焼結性が向上することがあり、必要ならば添加する。具体的な一例としては、酸素量が少ないSi34 原料粉末を用いた場合、焼結性向上のためにSiO2 を添加すると容易に緻密な焼結体を得ることができる。また、Al元素を含む化合物を添加すると、粒界成分が結晶化し強度の高いSi34 焼結体が得られる。例えばAl23 やAlNが挙げられる。
【0021】
更に、回路基板は用途に応じて、着色、つまり、遮光性が求められる。この場合には、周期律表のIVa、Va、VIa、VII a、VIII族元素を、単体、化合物の少なくとも一種の形態で添加すれば近紫外域から赤外域までの遮光が可能となる。好ましい添加量は、元素換算で0.03〜5重量%であり、より好ましくは0.1〜3重量%、更に好ましくは0.2〜1重量%である。
【0022】
これらの焼結助剤等の添加物は、予め原料粉末に添加すればよい。ただし、添加物の種類によっては、含浸等の方法で後に添加してもよい。
【0023】
用いる結合剤は、1,400℃以下の温度で分解する有機高分子体が好ましい。具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートブチレート、セルロース等の酸素含有有機高分子体を1〜3種、あるいはそれ以上混合したものを用いることができる。バインダの種類や量ならびに溶剤量等の選択はSi34 原料粉末の特性や、作製したいシートの厚み等で随意選択する。また、脱バインダは、N2 、Ar、H2 等の非酸化性雰囲気中で行えばよい。更に、脱バインダ後のカーボンを少なくしたい場合にはH2 Oを含有させてもよい。
【0024】
以上のようなSi34 粉末、焼結助剤や結合剤等を含有するグリーンシートを焼結すると絶縁層が形成されるが、好ましい焼結条件については後述する。
【0025】
次に、本発明に係る回路基板中の導体層について説明する。
【0026】
本発明の第一の態様は、この導体層の主成分がMo、Wの少なくとも一種であり、更に周期律表のVIII族元素から選択される一種以上の元素を含むものである。
【0027】
周期律表のVIII族元素であるNi、Co、Fe元素を添加すると、導体層の主成分であるMo、Wの焼結性が著しく向上する。これは、導体層中に液相が焼結途中に生成しMo、Wが液相焼結により焼結が促進されるためである。これらNi、Co、Fe元素は単体金属の粉末で添加してもよいし、化合物の形で添加してもよい。化合物の形で添加する際には、酸化物で添加するのが最も好ましいが、焼結途中に酸化物となる化合物を添加してもよい。具体的には、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、硫酸塩等がある。更に酸化物以外の化合物、例えば、硼化物、ケイ化物、水素化物、弗化物、窒化物、炭化物、リン化物、硫化物等の形で添加してもよい。
【0028】
添加量は、一酸化物換算で、0.01〜5重量%の範囲が好ましい。0.01重量%未満の添加の場合には、導体層中に十分な量の液相が生成しないためにMo、Wの焼結が十分促進されない場合がある。つまり、導体の相対密度が低い値で焼結は停止してしまう。したがって、相対密度が低く、収縮率が小さいために絶縁層と収縮率ミスマッチングが発生し、反りの発生や、位置精度の低い回路基板となってしまう。更にはHeリーク特性も悪くなる。また5重量%を超える添加を行うと、焼結途中に生成する液相が多すぎて、液相の蒸発により導体層中に膨れが発生すると共に、高抵抗の合金相が多量生成してしまい、導体全体の抵抗率が高くなる場合がある。添加量はより好ましくは0.03〜1重量%、更に好ましくは0.05〜0.6重量%である。0.01〜5重量%の範囲でVIII族元素を添加する場合には導体層の相対密度は90%以上となり、抵抗率も50μΩcm以下になる。条件を最適化すれば相対密度が95%以上で抵抗率が20μΩcm以下の緻密で低抵抗な導体が得られる。更に最適化すれば15μΩcm以下の低抵抗な導体も得られる。その結果得られる回路基板は、絶縁層と導体層の収縮率マッチングが達成されているために、各部分の位置精度は±1%以内、最適化したものでは±0.5%以下の位置精度を有する。更に反りの発生が抑制され、20μm/10mm対角線以下になる。最適化を行うと5μm/10mm対角線の反り量にまで小さくなる。更に周期律表のVIII族を添加した導体にNiメッキを施す場合には、導体層とメッキ層の接合強度が大きな値となる。
【0029】
導体形成に用いるMo、W粉末の粒度が1.5μm 以上のものを使用するときに、周期律表のVIII族を添加すると大きい効果が得られる。また、1,750℃以下の低焼結温度で回路基板を作製するときにも、周期律表のVIII族を添加すると、導体の収縮が促進され好ましい。
【0030】
更に、導体層に、絶縁層の主成分であるSi34 を共材という形で添加すると、絶縁層部分の収縮率と導体部分の収縮率とのマッチングが容易に達成される。添加するSi34 は絶縁体であるために、多量の添加は導体層の抵抗率の上昇に結び付くために好ましくない。また添加量が少ないとSi34 の共材添加の効果が小さくなるので好ましくない。共材の添加量が、0.1〜10重量%の範囲にある場合、上記の効果が得られる。好ましくは0.5〜5重量%の範囲であり、更に好ましくは1〜3重量%の範囲である。Si34 共材を添加した回路基板は、絶縁体層と導体層間の収縮率マッチングが達成されるために反りの発生が極端に抑制される。そのために、焼結後の反りを無くすための反り直しの工程を行う必要もない。また、その結果、位置精度も±1%以下、添加量を最適化すると容易に±0.5%以下にすることができる。更に、Mo、W導体はSi34 共材が添加されると収縮が促進され緻密な導体となるために、低抵抗な導体が得られる。
【0031】
また、絶縁層にAl元素を含む化合物を添加すると、粒界相成分が結晶化し、強度の高いSi34 焼結体が得られる。例えばAl23 やAlNが挙げられるが、導体層にAlNを添加すると、絶縁体層の粒界相成分と密着性が高まるために、絶縁体層と導体層の密着性が高まる。この場合は、Si34 に、希土類元素化合物やアルカリ土類元素化合物とこの化合物とを一緒に添加するとより大きい効果が得られる。AlNの添加量は、0.005〜0.2重量%が好ましい。
【0032】
本発明の導体層中には、更に、アルカリ土類元素および希土類元素から選択される一種以上の元素が含まれてもよい。これらを単体、化合物の少なくとも一種の形で添加すると、ヘリウムリーク試験で確認できるように緻密な導体が得られる。希土類元素およびアルカリ土類元素としては、例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Be、Mg、Ca、Sr、Baが挙げられる。特に、工業的には、Y、Ce、La、Sc、Be、Mgが好ましい。これら元素の酸化物は特に好ましく、焼結条件下で酸化物となる化合物も用い得、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、水酸化物なども使用することが可能である。このような添加物は、酸化物以外の、ハロゲン化物、酸ハロゲン化物、アセチリド化合物、炭化物、水素化物、窒化物、硼化物、ケイ化物、硫化物等の形でもよい。希土類元素およびアルカリ土類元素の導体層中での含有量は、酸化物換算で0.01〜15重量%が好ましい。あまり多いと導体層の導電率が低下し、少ないと導体層の剥離防止、基板の反り防止などの効果を得ることができない場合があるからである。
【0033】
導体層中に、更に、Si、Al元素の少なくとも一種を含有する単体もしくは化合物を添加すると、無添加時と比較して、相対密度が大きな緻密な導体層が得られ、導体層の剥離防止および接合強度の向上、基板の反り防止などの効果が得ることができる。例えば、Si元素を含有する化合物としてはSiO2 が挙げられ、また、Al元素を含有する化合物はAl23 が挙げられる。
このような添加物は、同時焼結時にアルミネート液相やシリケート液相を形成する。また、同時焼結時に絶縁体層中にもアルミネート液相やシリケート液相が生じる。このように、導体層中にアルミネート液相やシリケート液相が生じることにより、絶縁体層に生じる液相の導体層による吸い上げが防止され、このような吸い上げによる絶縁体層中の組成の不均一を防止し、基板の反りを防止することができる。
【0034】
この導体層は、周期律表のIVaおよびVa族元素から選択される元素を、単体、化合物の少なくとも一種の形態で副導体成分として含有してもよく、更に微量の低融点貴金属元素(Au、Ag、Cu、Pt、Pd等)を含有してもよい。
【0035】
本発明の第二の態様は、この導体層の主成分がMo、Wの少なくとも一種であり、更にAlNを含むものである。この導体層は、第一の態様で述べたようなアルカリ土類元素や希土類元素、共材としてのSi34 、Si、Al元素の少なくとも一種を含有する化合物、VIII族元素を含有してもよい。また、周期律表のIVaおよびVa属元素から選択される元素を、単体、化合物の少なくとも一種の形態で副導体成分として含有してもよく、更に微量の低融点貴金属元素(Au、Ag、Cu、Pt、Pd等)を含有してもよい。
【0036】
導体層にAlNを添加すると、絶縁層部分の収縮率と導体部分の収縮率とのマッチングが可能となるばかりでなく、AlNとW、Moは反応を起こさないため、導体層の抵抗率の上昇が抑制される。しかし、多量の添加は、導体成分の量的減少に起因した抵抗率の上昇に結び付くために好ましくない。AlNの添加量が0.1〜10重量%の範囲にある場合、上記効果が得られる。好ましくは0.5〜5重量%の範囲であり、更に好ましくは1〜3重量%の範囲である。AlNを添加した回路基板は絶縁体層と導体層間の収縮率マッチングが達成されるために反りの発生が抑制される。そのために、焼結後の反りを無くすための反り直しの工程を行う必要もない。またその結果、位置精度も±1%以下にすることができる。更に、Mo、W導体は、AlNが添加されると、収縮が促進され緻密な導体となるばかりでなく、ケイ化物等が生成しないため、低抵抗な導体層が得られる。抵抗率は30μΩcm以下になる。条件を最適化すれば、20μΩcm以下、更に最適化すれば15μΩcm以下の低抵抗な導体層が得られる。
【0037】
以下に、本発明の回路基板の製造方法について述べる。
【0038】
はじめに、本発明の第一の態様に係る回路基板の製造方法について述べる。
まず、同時焼結した後も導電性を維持し得る、具体的にはMoおよびWを主成分とし、周期律表のVIII族元素の単体、その酸化物などの化合物の少なくとも一種を粉末にしたものをペースト化し、Si34 グリーンシート上に所望のパターンで印刷する。また、ペースト化する際、副導体成分として、周期律表のIVaおよびVa族元素から選択される一種以上の元素を、単体、化合物の少なくとも一種の形態で添加してもよい。この際、グリーンシートにはパンチングマシーンなどを用いてビアホールを形成しておき、予め焼結後導体となる導電ペーストを圧入やメタルマスクなどを用いて印刷充填などにより充填しておく。このビアホールによりグリーンシートをはさむ上下導体間の電気的接続を行う。
【0039】
この導体ペーストに、Si34 やAlNセラミック粉末を添加してもよい。更に、希土類元素およびアルカリ土類元素から選択される一種以上の元素を、単体、化合物の少なくとも一種の形態で、更にはSi、Al元素の少なくとも一種を含有する単体や化合物を添加してもよい。
【0040】
なお、導体の体積が大きくなるビアホール部分にのみ、Si34 等を添加しても基板の反りが発生しないことがある。すなわち、基板の大きさや、設計で決めた導体層の配置によっては、少なくとも一部分の導体層に添加すれば反りの少ない回路基板が得られる場合がある。
【0041】
Si元素やAl元素を、希土類元素を含有する単体もしくは化合物と共に、混合物の形態で添加する場合には、アルミネートやシリケートを形成するような比率で混合することが好ましい。例えば、Al元素を含む化合物としてアルミナを添加する場合、アルミナの量はアルミネートを形成できるように0.03〜10重量%であることが好ましい。より好ましくは0.05〜5重量%であり、更に好ましくは0.1〜1重量%である。また、Si元素を含む化合物としてSiO2 を添加する場合、SiO2 の量はシリケートを形成できるように0.03〜10重量%であることが好ましい。より好ましくは0.05〜5重量%であり、更に好ましくは0.1〜1重量%である。
【0042】
希土類元素やアルカリ土類元素から選択される元素は、Si34 セラミックスの焼結助剤と同種のものを用いることが好ましい。
異種のものを用いても、絶縁層中と導体層中にアルミネートやシリケートは生成するが、同種のものを用いると絶縁層中と導体層中に同一のアルミネートやシリケートが生成し、より組織の不均一化が防止され吸い上げが防止される。したがって、基板の反りが更に防止されることになる。
【0043】
このような成分を含有する導電ペーストを塗布した多層グリーン成形体を脱バインダした後、焼結工程に供する。この焼結工程は特に限定されず公知の窒化珪素で行われる焼結方法がそのまま採用される。焼結炉にセットする際のセッターの材質は、グラファイト、BN、AlN等を用いると回路基板の焼結は可能となるが、最も好ましいのはSi34 でできたセッターであり、これを用いると高温で焼結しても、焼結体の一部で起こりやすい反応(セッターと被焼結物間の反応)が全く起こらず、焼結上りの表面粗さは非常に小さなものとなり良好な回路基板が得られる。表面粗さは、平均表面粗さRaで1.0μm 以下になる。より良好な表面をもつものでは0.5μm 以下、更に良好な表面をもつものでは0.3μm 以下になる。一般には、常圧下、加圧下、減圧下の非酸化性雰囲気下、例えば窒素雰囲気やアルゴン雰囲気の下で1,350℃〜1,950℃の温度で焼結を実施すればよい。焼結温度を高い温度に設定すると、珪化物が一部生成するが、焼結温度を1,850℃以下に設定すると、珪化物の生成は少なくなる。より好ましくは1,800℃以下であり、更に好ましくは1,700℃以下である。焼結に必要な時間は焼結に供される成形体の厚さや焼結温度などの諸条件によって異なるが、一般に、0.5時間〜100時間の範囲から選択する。これらの条件は実施に先立ち諸条件に応じて適当な範囲を予め決定して実施するのが好ましい。
【0044】
得られるSi34 回路基板を高熱伝導で緻密、更には高強度にするためには、特に1,000℃以上の高温部で平均昇温速度を1〜40℃/minの範囲とすることが好ましい。より好ましくは、5〜30℃/min、更に好ましくは8〜25℃/minの範囲とすることが好ましい。上記焼結により、相対密度が95%以上のSi34 絶縁層が得られる。より緻密なものとして98%以上、更には99%以上の絶縁層が得られる。
【0045】
このようにして製造された本発明の第一の態様に係る回路基板は次のような特性を有する。
【0046】
まず、この本発明の回路基板は、表裏平行度が非常に小さな値となっており、反りやうねりが非常に小さく、外部端子の数が非常に多い(例えば1,000端子以上の)回路基板でも実装時に半田接続が容易に行うことができる。基板の反りやうねりの有無を表す表裏平行度は、焼結体多層回路基板の対角線10cm当たりを基準にして中央部と周縁部との反りの最大値を測定して求めた場合、0.2mm以下の非常に小さな値となる。大面積の回路基板の場合には、表裏平行度が0.05mm以下の本発明に係る基板を用いれば実装が可能となる。
【0047】
また、この回路基板の内部抵抗は、表面抵抗および内部抵抗が50μΩcm以下と良好な値となる。更に最適化を行うと20μΩcm以下の値となる。周期律表のVIII族元素を含有させて導体層を形成させるために、導体の密度が高くなり、珪化物の生成も抑制され、低抵抗な導体が作製される。珪化物の生成を抑制する方法として、導体層中にAlNをフィーラーとして添加してもよい。更に、Si34 を導体層に添加する場合には、絶縁体層と導体層の収縮挙動がほぼ同一のものとなり、収縮率のマッチングが達成されて、±1%以下の位置精度が達成される。更に好ましいものでは±0.5%以下の位置精度が達成される。このような位置精度と平坦性を有する回路基板では、フリップチップ実装も容易に行うことができる。
【0048】
更に、この回路基板中の絶縁体層と導体層の接合強度は、5 kg/2mm×2mm以上の値となる。5 kg/2mm×2mm未満の値では、外部端子にピンを用いた場合、接合強度としては不足であり、Si34 と導体間でピンの脱落が生じる。とくに、BGA(ボールグリッドアレイパッケージ)の場合に、プリント配線板のような熱膨張率の大きな有機材料に、ボール間隔が狭ピッチで表面実装を行うときには、更に高強度な接合強度が要求される。そのときには6 kg/2mm×2mm以上の接合強度を有する導体層組成を選択すればよい。更に最適化することで7 kg/2mm×2mm以上の接合強度を有するものが得られる。
【0049】
次に、本発明の第二の態様に係る回路基板の製造方法について述べる。
まず、同時焼結した後も導電性を維持し得る、具体的にはMoおよびWを主成分とし、AlN粉末と混合したものをペースト化し、Si34 グリーンシート上に所望のパターンで印刷する。また、ペースト化する際、副導体成分として、周期律表のIVaおよびVa族元素から選択される一種以上の元素を、単体、化合物の少なくとも一種の形態で添加してもよい。この導体層は、第一の態様で述べたようなアルカリ土類元素や希土類元素、共材としてのSi34 、Si、Al元素の少なくとも一種を含有する化合物、VIII属元素を含有しても良い。この際、グリーンシートにはパンチングマシーンなどを用いてビアホールを形成しておき、予め焼結後導体となる導電ペーストを圧入やメタルマスクなどを用いて印刷充填などにより充填しておく。このビアホールによりグリーンシートをはさむ上下導体間の電気的接続を行う。
この導体ペーストには、AlNセラミック粉末が添加されている。
【0050】
なお、導体の体積が大きくなるビアホール部分にのみ、AlNを添加しても基板の反りが発生しないことがある。すなわち、基板の大きさや、設計で決めた導体層の配置によっては、少なくとも一部分の導体層に添加すれば反りの少ない回路基板が得られる場合がある。
【0051】
Si元素やAl元素を、希土類元素を含有する単体もしくは化合物と共に、混合物の形態で添加する場合には、アルミネートやシリケートを形成するような比率で混合することが好ましい。例えば、Al元素を含む化合物としてアルミナを添加する場合、アルミナの量はアルミネートを形成できるように0.03〜10重量%であることが好ましい。より好ましくは0.05〜5重量%であり、更に好ましくは0.1〜1重量%である。また、Si元素を含む化合物としてSiO2 を添加する場合、SiO2 の量はシリケートを形成できるように0.03〜10重量%であることが好ましい。より好ましくは0.05〜5重量%であり、更に好ましくは0.1〜1重量%である。
【0052】
希土類元素やアルカリ土類元素から選択される元素は、Si34 セラミックスの焼結助剤と同種のものを用いることが好ましい。この元素は導体中のAlNの焼結助剤としても働く。
異種のものを用いても、絶縁層中と導体層中にアルミネートやシリケートは生成するが、同種のものを用いると絶縁層中と導体層中に同一のアルミネートやシリケートが生成し、より組織の不均一化が防止され吸い上げが防止される。したがって、基板の反りが更に防止されることになる。
【0053】
このような成分を含有する導電ペーストを塗布した多層グリーン成形体を脱バインダした後、焼結工程に供する。この焼結工程は特に限定されず公知の窒化珪素で行われる焼結方法がそのまま採用される。焼結炉にセットする際のセッターの材質は、グラファイト、BN、AlN等を用いると回路基板の焼結は可能となるが、最も好ましいのはSi34 でできたセッターであり、これを用いると高温で焼結しても、焼結体の一部で起こりやすい反応(セッターと被焼結物間の反応)が全く起こらず、焼結上りの表面粗さは非常に小さなものとなり良好な回路基板が得られる。表面粗さは、平均表面粗さRaで1.0μm 以下になる。より良好な表面をもつものでは0.5μm 以下、更に良好な表面をもつものでは0.3μm 以下になる。一般には、常圧下、加圧下、減圧下の非酸化性雰囲気下、例えば窒素雰囲気やアルゴン雰囲気の下で1,350℃〜1,950℃の温度で焼結を実施すればよい。焼結温度を高い温度に設定すると、珪化物が一部生成するが、焼結温度を1,850℃以下に設定すると、珪化物の生成は少なくなる。より好ましくは1,800℃以下であり、更に好ましくは1,700℃以下である。焼結に必要な時間は焼結に供される成形体の厚さや焼結温度などの諸条件によって異なるが、一般に、0.5時間〜100時間の範囲から選択する。これらの条件は実施に先立ち諸条件に応じて適当な範囲を予め決定して実施するのが好ましい。
【0054】
得られるSi34 回路基板を高熱伝導で緻密、更には高強度にするためには、特に1,000℃以上の高温部で平均昇温速度を1〜40℃/minの範囲とすることが好ましい。より好ましくは、5〜30℃/min、更に好ましくは8〜25℃/minの範囲とすることが好ましい。上記焼結により、相対密度が95%以上のSi34 絶縁層が得られる。より緻密なものとして98%以上、更には99%以上の絶縁層が得られる。
【0055】
このようにして製造された本発明の第二の態様に係る回路基板は次のような特性を有する。
【0056】
まず、この本発明の回路基板は、表裏平行度が非常に小さな値となっており、反りやうねりが非常に小さく、外部端子の数が非常に多い(例えば1,000端子以上の)回路基板でも実装時に半田接続が容易に行うことができる。基板の反りやうねりの有無を表す表裏平行度は、焼結体多層回路基板の対角線10cm当たりを基準にして中央部と周縁部との反りの最大値を測定して求めた場合、0.2mm以下の非常に小さな値となる。大面積の回路基板の場合には、表裏平行度が0.05mm以下の本発明に係る基板を用いれば実装が可能となる。
【0057】
また、この回路基板の内部抵抗は、表面抵抗および内部抵抗が30μΩcm以下と良好な値となる。最適化を行うと20μΩcm以下の値、さらに最適化を行うと15μΩcm以下の値となる。AlN粉末を含有させて導体層を形成させるために、導体の密度が高くなり、珪化物の生成も抑制され、低抵抗な導体が作製される。更に、Si34 を導体層に添加する場合には、絶縁体層と導体層の収縮挙動がほぼ同一のものとなり、収縮率のマッチングが達成されて、±1%以下の位置精度が達成される。更に好ましいものでは±0.5%以下の位置精度が達成される。このような位置精度と平坦性を有する回路基板では、フリップチップ実装も容易に行うことができる。
【0058】
更に、この回路基板中の絶縁体層と導体層の接合強度は、5 kg/2mm×2mm以上の値となる。5 kg/2mm×2mm未満の値では、外部端子にピンを用いた場合、接合強度としては不足であり、Si34 と導体間でピンの脱落が生じる。とくに、BGA(ボールグリッドアレイパッケージ)の場合に、プリント配線板のような熱膨張率の大きな有機材料に、ボール間隔が狭ピッチで表面実装を行うときには、更に高強度な接合強度が要求される。そのときには6 kg/2mm×2mm以上の接合強度を有する導体層組成を選択すればよい。更に最適化することで7 kg/2mm×2mm以上の接合強度を有するものが得られる。
【0059】
本発明の回路基板を用いた好適な半導体装置を、図2および図3を参照しながら説明する。この半導体装置は、基板上面12aにECLなどの(特に素子の種類は限定されるものではない)半導体素子6が搭載され、この半導体素子と電気的に接続された配線パターンを有する多層セラミック回路基板12と、前記配線パターンと電気的に接続されると共に、多層セラミック回路基板12の基板下面12bに形成された外部端子と、半導体素子6を覆うように、多層セラミック回路基板の基板上面12aに接合された高熱伝導性封止部材13とを備えている。ただし、外部端子と半導体素子が同一の一主面にあっても特に問題なく使用することができる。なお、外部端子は、好ましくは図2に示されるようにリードピン7であり、あるいは図3に示されるように半田ボール15(BGAボールグリッドアレイ)でもよい。また、Si素子は、回路基板の位置精度が良好であり、平坦性も良好であるので、フリップチップタイプの実装方法も容易に行うことができる。また、高熱伝導性封止部材は、100W/mK以上の熱伝導率を有する窒化珪素あるいは窒化アルミニウム焼結体や、合金を含む金属から構成するとよい。
【0060】
上記構成に係る半導体装置によれば、半導体素子において発生する熱が、効率良く、放熱フィンなど(フィンを用いない場合もある)に伝達され、優れた放熱性を発揮させることができる。
【0061】
また、半導体装置を構成する上で、外部端子の接合面と対向する窒化珪素回路基板の他の主面に半導体素子を搭載した場合には、多ピン化に対応しているうえに半導体装置を小形化することができ、高速の半導体装置としてより好ましい。また、半導体が作動しているときと作動停止したときの温度変化が生じた場合に、回路基板の絶縁層が窒化珪素で構成されているため、外部端子のピンや半田ボール部分に応力がかかる。しかし、強度が高いために、割れなどの不具合は発生しない。更に、一つの回路基板に多数の半導体を搭載するマルチチップモジュール(MCM)の形で半導体装置を構成すると、広い面積で外部端子をボードに接合しなければならないが、この場合にも耐熱応力の点で十分使用できるだけの信頼性が得られる。
【0062】
本発明を更に具体的に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明する。
実施例1
α−Si34 を95%含有し、他はβ相であり、不純物として酸素を1.4重量%含有し、平均粒径が0.6μm のSi34 粉末、焼結助剤として平均粒径0.6μm のY23 、平均粒径が0.6μm のα−Al23 および着色剤としてWO3 を、各成分比が94.50:5.0:0.2:0.3(重量%)となるように配合し、Si34 製ボールを用いて24時間湿式混合を行い原料を調整した。ついで、この原料に有機バインダーを有機溶媒と共に分散し、スラリーを作製した。このスラリーを脱泡した後、ドクタープレード法により、100〜800μm 程度の均一なグリーンシートを作製した。次に、このシートを約130mm×130mmの大きさに切断し、各層間の電気回路の接続になるビアホールをパンチングマシーンで100〜300μm φの太さに開けた。
【0064】
一方、平均粒径1.9μm のタングステン、平均粒径0.9μm のNiO、平均粒径が0.6μm であり酸素量1.4重量%のSi34 粉末および平均粒径0.6μm のY23 を、各成分比が97.2:0.3:2.374:0.126(重量%)となるように配合し、有機溶媒と共に混合、分散し、導体ペーストを作製した。ビアホールの形成されたグリーンシート上に、この無機質フィラー添加のタングステンペーストを厚入機を用いて充填し、更にスクリーン印刷機を用いて同一面内の回路を印刷した。これら複数枚を加熱プレスすることで積層過程を終えた。これを100mm×100mmの大きさにカットし、次にN2 +H2 +H2 O雰囲気中、最高温度900℃で脱バインダを行った後、Si34 セッターに脱バインダした成形体を配置し、窒素雰囲気10気圧中1,800℃で12時間加圧焼結し、多層セラミック基板を得た。
【0065】
得られた基板の導体部のない部分から円板(直径10mm、厚さ3.5mm)を切り出し、これを試験片としてレーザーフラッシュ法により熱伝導率を測定した。この結果、100W/mKと高い熱伝導率を示した。
また、基板の反りの有無を表す表裏平行度は、焼結体多層基板の対角線を基準にして中央部と周縁部との反りの最大値を測定することにより求めた。10cm当たりの反り量として求めた表裏平行度は、0.04mmであった。
【0066】
次に、導体層の断面積を算出し、抵抗値から導体層の導体抵抗率を求めた。ただし、表面の配線に関しては、導体層に金属メッキなどを行わずに測定して、無機質フィラーの添加の影響を調べた。この結果、11μΩcmという、極めて低い抵抗率を示した。更に、得られた基板の2mm×2mmの導体部分にNiメッキをしてワイヤー(ピン)を半田付けした後引張強度試験を行い、Si34 基板と導体層間の接着強度を測定した。この結果、8.0kgという、十分に大きい引張強度を有することがわかった。
【0067】
実施例2〜48、参考例1〜2および比較例1〜10
第1表に示すように、Si粉末、焼結助剤粉末、その他添加物および着色剤の種類および添加量、導体成分の種類および添加量、VIII族元素および無機質フィラーの種類および添加量ならびに焼結条件を種々変えて、上記実施例1と同様にしてSi多層セラミック基板を作製した。それぞれについて熱伝導率、引張強度、表裏平行度および導体抵抗率を測定し、結果を第2表に示した。第2表から明らかなように、本発明の実施例2〜44では、比較例と比較して表裏平行度が非常に小さく、低い導体抵抗と導体層の密着強度が向上することがわかる。
【0068】
例えば、実施例2では、引張強度が7.5kg/ 2mm×2mmであるのに対し、比較例1では2.4kg/ 2mm×2mmと、密着強度において著しい差が見られた。また、この実施例2に係る同時焼結体は、反りが少なく、位置精度が高いことが第2表からもわかる。また、この導体層は添加物を含んでいるが、VIII族添加物としてNiOを添加しているので導体層の相対密度が99%と高く、その比抵抗は添加物を含まない他の実施例と比べても同レベルであることがわかる。
【0069】
【表1】
Figure 0003678485
【0070】
【表2】
Figure 0003678485
【0071】
【表3】
Figure 0003678485
【0072】
【表4】
Figure 0003678485
【0073】
【表5】
Figure 0003678485
【0074】
【表6】
Figure 0003678485
【0075】
【表7】
Figure 0003678485
【0076】
【表8】
Figure 0003678485
【0077】
【表9】
Figure 0003678485
【0078】
【表10】
Figure 0003678485
【0079】
実施例51
実施例2と同様な構成の絶縁層と導体層を用い、内部配線層を有する25mm×25mm×2.6mmの窒化珪素多層回路基板を作製した。窒化珪素多層回路基板の他面側に、銀ろうを用いて240本のリードピンを接合した。この後、半導体素子として消費電力10Wのシリコン素子を窒化珪素多層回路基板の上面に接合搭載し、ボンディングワイヤを付設して電気的な接続を完了させた。
【0080】
更に、150W/mKの熱伝導率を有する窒化珪素焼結体を用いて、放熱部材を兼ねる高熱伝導性封止部材を、実施例2の絶縁体部と同様の要領で作成した。そして、窒化珪素多層回路基板の上面にこの封止部材をAu−Sn半田で接合し、更に封止部材上に直径25mmの円形7段構造の放熱フィンを配置して目的とする半導体装置を得た。
この半導体装置の放熱性を評価するために、風速を1.5m/s に設定して△VBE法により熱抵抗を測定したところ、2.7℃/Wと低熱抵抗であり、放熱性の高い半導体装置が得られることが判明した。
【0081】
比較例11
絶縁層にアルミナを用いた以外は実施例36と同様の原料から構成された絶縁体層と導体層を用い、実施例45と同様の方法で半導体装置を作製した。この半導体装置の熱抵抗値は、8℃/Wと、実施例51のものと比較し、著しく高い値を示した。
【0082】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係るSi34 セラミックス回路基板は絶縁体が高熱伝導性を有し、導体層の密着性が強固でかつ焼結過程における基板の変形が少なく、更に、引張強度は十分に実用可能な特性値を示し、導体の抵抗率が低く、位置精度の高いなど種々の優れた性質を有するものであり、その工業的価値は極めて大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多層セラミック回路基板を示す部分切欠斜視図である。
【図2】本発明に係る多層セラミック回路基板を用いた半導体装置(外部端子がリードピンの場合)を示した図である。
【図3】外部端子が半田ボールである、本発明に係る半導体装置の部分断面図である。
【符号の説明】
1,12 多層セラミック回路基板
2,14 絶縁層
3 導体層
4 ビアホール
5 放熱フィン
6 半導体素子
7 リードピン
8 ボンディングワイヤ
9 導体層(内部配線層)
9a ビアホール
10 表面配線層
11 配線パターン
12a 基板上面
12b 基板下面
13 高熱伝導性封止部材
13a 凸状外縁部
13b 凹状部
15 半田ボール
A 接合面

Claims (7)

  1. 少なくとも絶縁体層と導体層とを含む回路基板において、
    全絶縁体層のうち少なくとも一層の絶縁体層が、β−Si34 を主成分とし、希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される一種以上の元素を酸化物換算で1〜8重量%と、0.8重量%以下のAl 、0.8重量%以下のSiO 、および0.3重量%以下のAlNからなる群より選択される一種以上の化合物とを含有する焼結体であり、かつ
    前記少なくとも一層の絶縁体層と接する全導体層のうち少なくとも一層の導体層が、Mo、Wの少なくとも一種を主成分とし、周期律表のVIII族元素から選択される一種以上の元素を更に含むことを特徴とする回路基板。
  2. 前記全導体層のうち少なくとも一層の導体層が、更に希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される一種以上の元素を含む、請求項1記載の回路基板。
  3. 前記全導体層のうち少なくとも一層の導体層が、更にSi34 、AlNの少なくとも一種を含む、請求項1記載の回路基板。
  4. 少なくとも絶縁体層と導体層とを含む回路基板において、
    全絶縁体層のうち少なくとも一層の絶縁体層が、β−Si34 を主成分とし、希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される一種以上の元素を酸化物換算で1〜8重量%と、0.8重量%以下のAl 、0.8重量%以下のSiO 、および0.3重量%以下のAlNからなる群より選択される一種以上の化合物とを含有する焼結体であり、かつ
    前記少なくとも一層の絶縁体層と接する全導体層のうち少なくとも一層の導体層が、Mo、Wの少なくとも一種を主成分とし、更にAlNを含むことを特徴とする回路基板。
  5. 前記絶縁体層の熱伝導率が30W/mK以上である、請求項1から4のいずれか1項記載の回路基板。
  6. 請求項1から5のいずれか1項記載の回路基板上に半導体素子を搭載した半導体装置。
  7. α−Si34 に、焼結助剤として希土類元素およびアルカリ土類元素からなる群より選択される一種以上の元素を酸化物換算で1〜8重量%、ならびに0.8重量%以下のAl 、0.8重量%以下のSiO 、および0.3重量%以下のAlNからなる群より選択される一種以上の化合物を添加した後、これを焼結して絶縁体層を形成する工程;
    Mo、Wの少なくとも一種に、周期律表のVIII族元素より選択される一種以上の元素を酸化物換算で0.1〜5重量%で添加して導体層を前記絶縁体層に接して形成する工程;および
    前記絶縁体層と前記導体層とを同時焼結する工程
    を含むことを特徴とする回路基板の製造方法。
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