JP3618037B2 - スチレン系樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents

スチレン系樹脂組成物およびその成形体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、包装材料分野、電気機器分野、その他各種の用途に汎用されているスチレン系樹脂の改質技術に係るものであり、詳しくは、添加剤の使用により、成形性、剛性と衝撃強さを両立させたスチレン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリスチレン(GPPS)で代表される汎用量産型のスチレン系樹脂は、成形品の表面外観特に光沢や、剛性、耐熱性に優れ、テレビ、ステレオ等のハウジング、シャーシ、ビデオ、オーディオカセット、冷蔵庫内装材等の電気分野、または、食品包装、OPS、インフレーションフィルム、等の包装材分野その他広汎な分野で用いられている。しかし、衝撃強さに関しては、硬質熱可塑性プラスチック中最低の部類に属し、旧来より、剛性と衝撃強さを両立させる試みが、種々なされてきた。特に、近年、高価なエンジニアリングプラスチックからの切り替え、成形時の省エネルギー化のため、耐熱性、成形性、耐衝撃性を同時に高水準に維持することが強く望まれている。
【0003】
従来、スチレン系重合体の平均分子量を高くすることにより、曲げ強度は向上するが、平均分子量が高くなるにつれて成形性が低下し、成形性を改良するためミネラルオイルなどの可塑剤を添加すると、剛性、耐熱性を損ねる。しかも、金型排気孔付近に可塑剤に起因する付着物が発生し、金型汚損を引き起こし、製品表面にキズとして転写されたり付着したりして、成形品の価値を著しく低下させる。
【0004】
樹脂の耐熱性および剛性を満足できる水準に維持し、かつ流動性を向上させる目的で、樹脂の分子量分布を広くする方法として、高分子量樹脂に低分子量の樹脂をブレンドする方法(特公昭57−30843号)又は、多段重合法を用いることにより分子量分布の広い樹脂組成物を得る方法(特公昭62−61231)が開示されている。しかしながら、後者の方法は製造工程が複雑になり、製造コストが増加するだけでなく、十分な水準の衝撃強度が得られないという問題もある。また、重合反応時に複数のビニル基を含有する化合物を用いることにより得られる樹脂の分子量分布を広げる方法(特開昭48−45590号及び特開平2−170806号)が開示されている。しかしながら、この方法で得られる樹脂組成物は流動性に劣るという問題点を有している。
【0005】
また、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)で代表されるゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂は耐衝撃性および成形加工性に優れ、かつ良好な表面光沢を示すことから、各種成形品の材料として幅広く利用されている。ゴム変性スチレン系樹脂は耐衝撃性を改良するためにスチレン系樹脂をマトリックスとしてその中にゴム状重合体を微粒状に分散させ、改質したものである。このようなゴム変性スチレン系樹脂(以下、ゴム変性樹脂と略記することもある。)の耐衝撃性をさらに向上させる手段として、(1)ゴム変性樹脂に占めるゴム状重合体の含有量を増やす、(2)ゴム変性樹脂における分散相を形成するゴム粒子径を衝撃強度が発現する範囲内で大きくする、(3)ゴム変性樹脂におけるマトリックス相を形成するポリスチレンの分子量を高くする、といった方法が挙げられる。しかしながら、(1)の方法では、耐衝撃性が改善できるものの、ゴム状重合体の使用量が多いため重合時のハンドリングが悪く、経済性にも劣る。さらに、ゴム粒子数が増加するため成形品の剛性と表面外観特性が低下する。また、(2)のようにゴム粒子径を大きくすると、成形品を得た場合堪えがたい表面外観不良を招く。(3)では、樹脂の流動性低下が甚だしく、成形加工性に劣る。
【0006】
さらに、有機ポリシロキサンをスチレン系樹脂に添加することで衝撃強度を改善する方法(特開昭57−170949、特開平7−179692)があるが、成形加工性、成形品の表面外観特性とのバランスを考えた場合、少量しか添加できず十分な衝撃強度が得られない。しかも、有機ポリシロキサンを添加する方法では、落錘衝撃試験で測定されるような面衝撃強度への改善効果が小さい。一方、グラフト共重合体系シリコーンゴムを耐衝撃性改良剤として用いる方法(特開昭60−252613)、さらに、シリコーンゴム粉末を使用してポリスチレンを変性する方法(特開平8−67817)も開示されているが、他の特長を損わない程度の少量添加では、耐衝撃性は改良されず、増量すると表面外観特性が低下するという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来の技術では、スチレン系樹脂の成形性、剛性等の特長を可変的に維持して、かつ衝撃強さは、むしろ、若干でも向上させることは至難の課題であった。
【0008】
本発明者らは、このような難問に取り組み、鋭意、研究を重ねてきた結果、シリコーンパウダーの添加、特にゴム変性スチレン系樹脂とシリコーンパウダーとの併用により好適な結果が得られ、さらにゴム変性樹脂中の分散ゴムの粒子径と含有量を特定することにより耐衝撃性が改善されることを見出すに至り、本発明に到達した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者はスチレン系樹脂、特に、特定のゴム粒子径のゴム変性ポリスチレンにある特定なシリコーンパウダーの特定量を添加するスチレン系樹脂組成物が上記課題を解決することを見出だし本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は(1)透明スチレン系樹脂100重量部に対して、シリコーンパウダーを0.0001〜0.1重量部配合してなる透明スチレン系樹脂組成物であって、該シリコーンパウダーが、シリコーンゴム微粒子の表面をシリコーンレジンで被覆した複合構造のシリコーンパウダーである改質された透明スチレン系樹脂組成物、()シリコーンパウダーの体積平均粒子径が0.1〜25μmである(1)に記載の透明スチレン系樹脂組成物、()シリコーンパウダーがビニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンの付加重合体を主成分とするシリコーンゴム粉末である(1)または(2)に記載の透明スチレン系樹脂組成物、()シリコーンパウダーがビニル基含有ジメチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンの付加重合体を主成分とするシリコーンゴム粉末である(3)記載の透明スチレン系樹脂組成物、()シリコーンパウダーのシロキサン結合主鎖が三次元網状に架橋されていることを特徴とする(1)ないし()のいずれか一項に記載の透明スチレン系樹脂組成物、()シリコーンパウダーが、()または()に記載のシリコーンゴム粉末の粒子表面をポリジメチルシルセスキオキサンで被覆したものである(1)ないし()のいずれか一項に記載の透明スチレン系樹脂組成物、()透明スチレン系樹脂が重量平均分子量10×10〜60×10のポリスチレンである(1)ないし()のいずれか一項に記載の透明スチレン系樹脂組成物、()透明スチレン系樹脂がゴム変性ポリスチレンであることを特徴とする(1)ないし()記載の透明スチレン系樹脂組成物、()ゴム変性スチレン系樹脂が体積平均粒子径0.01〜5μmの分散ゴム粒子を1〜30重量%含有するポリスチレンであることを特徴とする(1)ないし()のいずれか一項に記載の透明スチレン系樹脂組成物、(10)(1)ないし()のいずれか一項に記載の透明スチレン系樹脂組成物より得られる成形体、特に射出成形体あるいは押出成形体である。
【0011】
以下に本発明の詳細を説明する。
本発明組成物に用いるスチレン系樹脂は以下に示す単量体を重合して得られる。即ち、スチレン系樹脂を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等)、α−アルキル置換スチレン(例えば、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等)、ハロゲン化スチレン(例えば、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン等)が挙げられる。好ましいスチレン系単量体は、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレンで、特にスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、一種で使用してもよいし、二種以上混合して使用してもよい。
なお、特に好ましくはスチレン系樹脂は重量平均分子量10×10〜60×10のポリスチレンであるのが良い。
【0012】
また、スチレン系単量体には必要に応じて、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステルや、無水マレイン酸、アクリロニトリルなどの共重合可能な単量体と共重合させてもよい。
【0013】
本発明のスチレン系樹脂組成物は、前記スチレン系単量体のうち透明のものを適宜選択し得る。また、透明スチレン系単量体には必要に応じて、例えばアクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステルや、無水マレイン酸、アクリロニトリルといった共重合可能な単量体を透明性を損なわない範囲で共重合させてもよい。
【0014】
また、これらの樹脂は、慣用の重合方法により製造することができ、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、さらには、これらの重合法の組み合わせ方法によって製造することができる。特に、塊状重合法が生産性向上のために好ましい。
【0015】
また、本発明組成物に用いるスチレン系樹脂は、スチレン系単量体にゴム状重合体を溶解した後、重合させるなど公知の方法で得られるゴム変性スチレン系樹脂が含まれる。
【0016】
前記ゴム変性ポリスチレンを用いることにより耐衝撃性、耐熱変形性、成型加工性および成型品の表面外観特性のバランスを兼備えたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0017】
該ゴム変性スチレン系樹脂は上記方法で得られるものであれば特に制限はなく、ゴム状物質としては、ポリブタジエンやスチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体など、一般的なゴム状重合体はすべて使用することができる。これらのゴム状重合体は、一種で、または二種以上混合して使用できる。
【0018】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゴム成分含有量は好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは3〜20重量%、特に好ましくは3〜8重量%である。ゴム成分含有量が1重量%未満では十分な面衝撃強度が得られず、30重量%を超えると外観不良が目立つ。また、ゴム変性スチレン系樹脂中の分散ゴム粒子の体積平均粒子径は好ましくは0.01〜5μm、さらに好ましくは0.1〜4μmである。0.01μm未満であると剛性はあるものの面衝撃強度が向上しない。また、5μmを超えると表面外観が悪くなる。
【0019】
なお、本発明において体積平均粒子径とは、超薄切片法を用い組成物の透過型電子顕微鏡写真を撮影し、ゴム状重合体1000個の円換算粒子径を測定して、次式(I)により算出した値である。
体積平均粒子径=(ΣniDi)/(ΣniDi) (I)
(ni:円換算粒子径Di(μm)を有するゴム状重合体の粒子の個数を示す)
【0020】
ゴム変性スチレン系樹脂の製造は慣用の重合方法により製造することができる。特に、塊状重合法が生産性向上のために好ましい。
【0021】
本発明において、分散しているゴム状重合体の粒子は、そのモルホロジーがサラミ構造を示すものでも、ゴム状重合体のシェルにスチレン系重合体のコアを内包する単一オクルージョン構造を示すものでも良いし、ラテックス状でも良い。また、サラミ構造と単一オクルージョン構造の粒子が混在しても良く、両者は任意の体積割合で混在できる。
【0022】
本発明に用い得るシリコーンパウダーとしてはオイル状のシリコーンを硬化したシリコーンゴム粉末、シリコーンレジンパウダー、シリコーン複合パウダーなどがあげられる。シリコーンパウダーは凝集しにくく、基材への分散性に優れ、スチレン系樹脂に添加したときに耐衝撃性を大幅に改良する。
【0023】
シリコーンパウダーの中で特に柔軟性に富んでいる前記シリコーンゴム粉末を用いることによって、スチレン系樹脂に添加したときの耐衝撃性さらには耐摩耗性の改良も可能である。
【0024】
また、凝集しにくく、分散性が良いシリコーンレジンパウダーを用いることによってスチレン系樹脂に添加した時の耐衝撃性の改良が可能であり、さらには前記シリコーンレジンパウダーは、熱溶融せず、溶剤や石油留分にも侵されないので、これを添加することにより得られるスチレン系樹脂組成物は優れた耐衝撃性を示すと同時に、高温での成形、特に高速射出成形や耐溶剤用途にも好適に用いられる。
【0025】
あるいは柔軟性を有し、かつ分散性が良いシリコーン複合パウダーを用いることによって得られるスチレン系樹脂組成物の耐衝撃性を大幅に改良することができる。
【0026】
シリコーンゴム粉末の組成としては特開平3−93834号公報などに開示されている公知のもので良いが、入手が容易なことより(a)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと(b)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加反応させて硬化させたものが好ましい。
【0027】
成分(a)としては1分子中にケイ素原子に結合したビニル基を少なくとも2個有する物である必要がある。ビニル基は分子のどの部分に存在しても良いが少なくとも分子の末端に存在することが好ましい。ビニル基以外のケイ素原子に結合した有機基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基、などのアルキル基、フェニル基のようなアリール基、β−フェニルエチル基、β−フェニルプロピル基、のようなアラルキル基、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基など1価の置換炭化水素基などが示されるが、スチレン系樹脂に添加したときの耐衝撃性の改良効果が大きい点においてケイ素原子に結合した有機基の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。また、これらの分子構造は直鎖状であっても分岐状であっても良く、これらの混合物であっても良い。
【0028】
成分(a)としては、例えば下記の一般式で示される化合物(1)〜(3)などがあげられる。
Figure 0003618037
(式中、a、bは0または1〜3の整数、c、dは0または1以上の整数であって、a+b=3、2a+d≧2である。)
【0029】
Figure 0003618037
(式中、eは2以上の整数、fは0または1以上の整数であり、かつe+f=4〜8である。)
【0030】
Figure 0003618037
(式(3)は平均組成式として表わされ、式中、gは1〜3の整数、hは0、1または2、i、j、kは1以上の整数であり、かつg+h=3である。)
【0031】
成分(b)としては一分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有することが必要である。成分(b)は成分(a)の架橋剤であり成分(b)のケイ素原子に結合した水素原子が成分(a)中のビニル基と付加反応して硬化する。
水素原子以外のケイ素原子に結合した有機基としては成分(a)と同じものが示されるが、スチレン系樹脂に添加したときの耐衝撃性の改良効果が大きい点においてメチル基であることが好ましい。また本成分の分子構造が特に限定されるものではなく直鎖状、分岐状、環状のいずれであっても良い。
【0032】
成分(b)としては、例えば下記の一般式で示される化合物(4)〜(6)などがあげられる。
Figure 0003618037
(式中、lは0または1、Pは2または3、qは0または1以上の整数、rは1以上の整数であり、かつl+p=3、2l+r≧3である。)
【0033】
Figure 0003618037
(式中、sは0または1以上の整数、tは3以上の整数であり、かつs+t=4〜8である。)
【0034】
Figure 0003618037
(式(6)は平均組成式として表わされ、式中、uは1〜3の整数、vは0、1または2、w、x、yは1以上の整数であり、かつu+v=3である。)
【0035】
これらのシリコーンゴム粉末は、原料液を噴霧乾燥により硬化させる方法、水性乳化液中で硬化させる方法などの公知の製法により得ることができる。
【0036】
また、シリコーンレジンパウダーは、シランを加水分解、縮合して得られる3次元構造を持つもので、特開昭60−13813号公報、特開昭63−77940号公報に開示されているものなどが挙げられる。なかでもシロキサン結合が(CHSiO3/2)で表される3次元網目状に架橋した構造を持つ、いわゆるポリメチルシルセスキオキサンの微粒子が好ましい。これは下の反応式に示すようにメチルトリクロロシラン、またはメチルトリアルコキシシランを水中で加水分解、縮合させる方法によって製造できる。
Figure 0003618037
(式中、XはClまたはアルコキシ基である。)
なお、シリコーンパウダーの粒子径測定は、パーティカルカウンターを用いて行った。
【0037】
各種シリコーンパウダーのうち、とりわけ本発明に好適なものはシリコーンゴム微粒子の表面をシリコーンレジンで被覆した複合構造のシリコーンパウダー(以下シリコーン複合パウダーと称する)である。以降の説明は、全てこのシリコーン複合パウダーに関して行う。
【0038】
シリコーン複合パウダーは、特に製造方法は限定されるものではないが、例えばビニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンの付加重合体、好ましくはビニル基含有ジメチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンの付加重合体を含む原液を噴霧乾燥により硬化させた球状のシリコーンゴム粉末にメチルトリクロロシラン又はメチルトリメトキシシランを加水分解し縮合させてシリコーンゴム粉末の表面をポリジメチルシルセスキオキサンで被覆して製造する方法や上記原液を水性乳化液中で硬化させた球状のシリコーンゴム粉末にメチルトリクロロシラン又はメチルトリメトキシシランを加水分解し縮合させてシリコーンゴム粉末の表面をポリジメチルシルセスキオキサンで被覆して製造する方法などがある。また、シリコーン複合パウダーの体積平均粒子径は0.1〜25μmの範囲にあるもの、好ましくは0.2〜20μmの範囲にあるものが流動性及び耐熱性を損ねずに剛性の優れたスチレン系樹脂組成物を提供する。シリコーン複合パウダーの体積平均粒子径は0.1μm未満の場合は衝撃強度の向上は見られず、25μmをこえる場合も衝撃強度の向上は見られない。 なお、シリコーン複合パウダーの粒子径測定は、パーティカルカウンターを用いて行った。
【0039】
次に、本発明組成物におけるスチレン系樹脂に対するシリコーン複合パウダーの配合量について説明する。シリコーン複合パウダーの添加量はスチレン系樹脂100重量部に対して好ましくは0.0001〜0.1重量部、さらに好ましくは0.005〜0.1重量部である。0.0001重量部未満の場合は十分な衝撃強度は得られず、0.1重量部をこえる場合は透明性を損ねて好ましくない。
【0040】
シリコーン複合パウダーは分散性が極めて優れているため添加方法としては、特に限定されるものではないが例えば、スチレンモノマー液に懸濁させて重合を行う方法又は、重合終了後の脱揮工程前、若しくは脱揮工程後に添加する方法がある。更に、スチレン樹脂とシリコーン複合パウダーをドライブレンドして、単軸、若しくは二軸の押し出し機で溶融混練することもできる。本発明のスチレン系樹脂組成物には、必要に応じて、滑剤、離型剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、充填剤等の添加剤を配合することができる。
【0041】
本発明のスチレン系樹脂組成物は、必要に応じて各種添加剤成分を混練し、各種成形用途に供じることができるが、以下に射出成形、押出成形について説明する。
射出成形体は、通常の射出成形法により成形することができる。この際、一般に射出成形温度は180〜280℃、射出成形圧力は50〜140kg/cm・G、スクリュー回転数は50〜300rpmの範囲で選ばれる。
押出成形体は、例えば押出機によって溶融した後、T−ダイから押し出す方法、押出機よりシート状に押出した後、テンター方式あるいはインフレーション方式によりニ軸延伸する方法が挙げられる。
延伸は一軸延伸、逐次二軸延伸、同次二軸延伸、インフレーション法による二軸延伸でも良い。代表例として逐次二軸延伸の具体例を説明する。例えば、Tダイまたはカレンダを用いて作ったシートを一軸方向(例えば、縦方向)に100〜130℃の温度で2〜5倍の倍率で延伸して、次に上記延伸方向と直角方向(例えば、横方向)に100〜130℃の温度で2〜5倍の倍率で延伸する方法がある。縦方向の延伸は通常ニップロールを用いて行われ、横方向の延伸は通常テンタを用いて行われる。尚、この様な成形方法によって二軸延伸されたシートは必要に応じて熱処理、コロナ放電処理を行っても良い。該シートの厚みはスリット幅、ダイス径、押し出し量、ブロー比、引取り速度など適宜調節できる。通常の厚みは10〜1000μmである。
【0042】
このようにして得られた本発明のスチレン系樹脂組成物は、流動性を損ねずに剛性、衝撃性および成形品の表面外観特性のバランスが優れている、例えば、ICスティック、プリスターパック、食材容器、様々な日用品など広範囲にわたって利用できる。また、本発明のスチレン系樹脂組成物には、必要に応じて、滑剤、可塑剤、離型剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、充填剤などの添加剤を配合することもできる。
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0043】
【実施例】
実施例、比較例、参考例における物性等の測定は以下の方法を用いた。
(1) モールドVノッチ付きおよびノッチ無しアイゾット衝撃強度 日精樹脂工業(株)製PS40ESA型射出成形機を用いて、64mm(l)×12.7mm(t)×6.4mm(b)の規定の試験片をシリンダー温度210℃、金型温度40℃、射出速度3m/sec、射出圧力530kgf/cm で射出成形し、JIS−K7110−1984に準拠して測定した。
【0044】
(2)落錘衝撃強度 日精樹脂工業(株)製PS40ESA型射出成形機を用いて、50mm×90mm×2mmの平板をシリンダー温度210℃、金型温度40℃、射出速度3m/sec、射出圧力530Kgf/cm で射出成形し、ASTM−D1709に準拠して測定した。
【0045】
(3)引張強度 日精樹脂工業(株)製PS40ESA型射出成形機を用いて、JIS−1号試験片をシリンダー温度210℃、金型温度40℃、射出速度3m/sec、射出圧力530kgf/cm で射出成形し、JIS−K7113−1981に準拠して測定した。
【0046】
(4)曲げ強度 日精樹脂工業(株)製PS40ESA型射出成形機を用いて、135mm×11mm×6mmの試験片をシリンダー温度210℃、金型温度40℃、射出速度3m/sec、射出圧力530kgf/cmで射出成形し、ASTM−D790に準拠して測定した。
【0047】
実施例1〜4、参考例1
ポリスチレン樹脂(ダイセル化学工業(株)製 ダイセルスチロール #53Mw=320,000)に、体積平均粒子径5μmのシリコン複合パウダー(信越化学工業(株)製 X−52−1139K 平均粒子径1−20μm)を表1に示した比率(全体で100重量部となる)で添加し、二軸押出機(池貝鉄工所(株)製PCM30型)を用いて再造粒した後、上記の射出成形機を用いて、モールドVノッチ付きアイゾット衝撃強度試験片、及び2mm厚の平板、引張強度試験片、曲げ強度試験片を成形した。
【0048】
実施例5〜8、参考例2
ポリスチレン樹脂(ダイセル化学工業(株)製 ダイセルスチロール #53Mw=320,000)に体積平均粒子径13μmのシリコン複合パウダー(信越化学工業(株)製 X−52−1139G 平均粒子径1−30μm)を表2に示した比率(全体で100重量部となる)で添加し、二軸押出機(池貝鉄工所(株)製PCM30型)を用いて再造粒した後上記の射出成形機を用いて、モールドVノッチ付きアイゾット衝撃強度試験片、及び2mm厚の平板、引張強度試験片、曲げ強度試験片を成形した。
【0049】
比較例1
ポリスチレン樹脂(ダイセル化学工業(株)製 ダイセルスチロール #53Mw=320,000)を二軸押出機(池貝鉄工所(株)製PCM30型)を用いて造粒した後上記の射出成形機を用いて、モールドVノッチ付きアイゾット衝撃強度試験片、及び2mm厚の平板、引張強度試験片、曲げ強度試験片を成形した。
【0050】
上のごとく作製した各試験片を前記各物性試験に供し、それらの結果を表1にまとめて示した。
【表1】
Figure 0003618037
【0051】
【表2】
Figure 0003618037
【0052】
以下にゴム変性ポリスチレンに関する実施例を示す。
(ゴム変性スチレン系樹脂(以下HIPSと略)−1の製造)
連続塊状重合プロセスにおいて、スチレン−ブタジエン共重合体をスチレンに溶解し、攪拌下で重合することによって、ゴム成分含有量8重量%、分散相のゴム状重合体粒子が体積平均粒子径0.2μmで単一オクルージョン構造を示すゴム変性スチレン系樹脂(HIPS−1)を得た。
【0053】
(HIPS−2の製造)
連続塊状重合プロセスにおいて、ポリブタジエンをスチレンに溶解し、攪拌下で重合することによって、ゴム成分含有量10重量%、分散相のゴム状重合体粒子が体積平均粒子径1.8μmでサラミ構造を示すゴム変性スチレン系樹脂(HIPS−2)を得た。
【0054】
(HIPS−3の製造)
連続塊状重合プロセスにおいて、スチレン−ブタジエン共重合体とHIPS−2をスチレンに溶解し、攪拌下で重合することによって、ゴム成分含有量8重量%、分散相に体積平均粒子径0.2μm0の単一オクルージョン構造を示すゴム状重合体粒子と体積平均粒子径1.8μmのサラミ構造を示すゴム状重合体粒子が混在し、ゴム状重合体粒子全体の体積平均粒子径が0.5μmであるゴム変性スチレン系樹脂(HIPS−3)を得た。
【0055】
実施例9〜11
HIPS−1に体積平均粒子径5μmのシリコーン複合パウダー(信越化学工業(株)製X−52−1139K)を表3に示す如く添加し、二軸押出機(池貝鉄工所(株)製PCM30型)にて再造粒した後、上記の射出成形機を用いてアイゾット衝撃試験片、および2mm厚の平板を射出成形、評価した。結果を表3に示す。
【0056】
実施例13
HIPS−1に体積平均粒子径13μmのシリコーン複合パウダー(信越化学工業(株)製X−52−1139G)を0.1重量%添加し、二軸押出機(池貝鉄工所(株)製PCM30型)にて再造粒した後、上記の射出成形機を用いてアイゾット衝撃試験片、および2mm厚の平板を射出成形、評価した。結果を表3に示す。
【0057】
実施例14、15
HIPS−2に体積平均粒子径5μmのシリコーン複合パウダー(信越化学工業(株)製X−52−1139K)を表4に示す如く添加し、二軸押出機(池貝鉄工所(株)製PCM30型)にて再造粒した後、上記の射出成形機を用いてアイゾット衝撃試験片、および2mm厚の平板を射出成形、評価した。結果を表4に示す。
【0058】
実施例16
HIPS−2にシリコーン複合パウダーを添加する以外は実施例5と同様の方法で評価した。結果を表4に示す。
【0059】
実施例17〜19
HIPS−3に体積平均粒子径5μmのシリコーン複合パウダー(信越化学工業(株)製X−52−1139K)を表5に示す如く添加し、二軸押出機(池貝鉄工所(株)製PCM30型)にて再造粒した後、上記の射出成形機を用いてアイゾット衝撃試験片、および2mm厚の平板を射出成形、評価した。結果を表5に示す。
【0060】
実施例20
HIPS−3にシリコーン複合パウダーを添加する以外は実施例5と同様の方法で評価した。結果を表5に示す。
【0061】
比較例4〜6
HIPS−1〜3をそれぞれ二軸押出機にて再造粒した後、射出成形機を用いてアイゾット衝撃試験片、および2mm厚の平板を射出成形、評価した。結果を表5に示す。
【0062】
【表3】
Figure 0003618037
【0063】
【表4】
Figure 0003618037
【0064】
【表5】
Figure 0003618037
【0065】
本発明により、耐衝撃性が著しく改良された透明スチレン系樹脂組成物を得ることができる。即ち、透明性、流動性および耐熱性を損ねずに衝撃強度の優れた透明スチレン系樹脂組成物を提供することができた。また、さらに透明スチレン系樹脂としてゴム変性ポリスチレンを用いることにより耐衝撃性、耐熱変性性、成型加工性および成型品の表面外観特性のバランスが優れる透明スチレン系樹脂組成物を得ることができる。したがって、汎用透明スチレン系硬質熱可塑性樹脂の各種用途特に、射出成形、押出成形等への適応性の向上が可能となり、大きな用途範囲の拡大が期待できる。

Claims (12)

  1. 透明スチレン系樹脂100重量部に対して、シリコーンパウダーを0.0001〜0.1重量部配合してなる透明スチレン系樹脂組成物であって、該シリコーンパウダーがシリコーンゴム微粒子の表面をシリコーンレジンで被覆した複合構造のシリコーンパウダーである改質された透明スチレン系樹脂組成物。
  2. シリコーンパウダーの体積平均粒子径が0.1〜25μmである請求項1に記載の透明スチレン系樹脂組成物。
  3. シリコーンパウダーがビニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンの付加重合体を主成分とするシリコーンゴム粉末である請求項1または2に記載の透明スチレン系樹脂組成物。
  4. シリコーンパウダーがビニル基含有ジメチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンの付加重合体を主成分とするシリコーンゴム粉末である請求項記載の透明スチレン系樹脂組成物。
  5. シリコーンパウダーのシロキサン結合主鎖が三次元網状に架橋されていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載の透明スチレン系樹脂組成物。
  6. シリコーンパウダーが、請求項またはに記載のシリコーンゴム粉末の粒子表面をポリジメチルシルセスキオキサンで被覆したものである請求項1ないしのいずれか一項に記載の透明スチレン系樹脂組成物。
  7. 透明スチレン系樹脂が重量平均分子量10×10〜60×10のポリスチレンである請求項1ないしのいずれか一項に記載の透明スチレン系樹脂組成物。
  8. 透明スチレン系樹脂がゴム変性ポリスチレンであることを特徴とする請求項1ないし記載の透明スチレン系樹脂組成物。
  9. ゴム変性スチレン系樹脂が体積平均粒子径0.01〜5μmの分散ゴム粒子を1〜30重量%含有するポリスチレンであることを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載の透明スチレン系樹脂組成物。
  10. 請求項1ないしのいずれか一項に記載の透明スチレン系樹脂組成物より得られる成形体。
  11. 請求項1ないしのいずれか一項に記載の透明スチレン系樹脂組成物より得られる射出成形体。
  12. 請求項1ないしのいずれか一項に記載の透明スチレン系樹脂組成物より得られる押出成形体。
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