JP3614872B2 - 焼結チタン基炭窒化物合金とその製造方法 - Google Patents

焼結チタン基炭窒化物合金とその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は主元素としてチタンを有し、旋削、フライス削り及びドリル加工等の金属工作用の切削工具のインサート材料として使用されたときに、特に改良物性を発揮する炭窒化物合金の焼結体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
焼結チタン基炭窒化物合金、所謂サーメットは、今日、金属切削工作業界でインサート材料として確立され、殊に仕上加工に使用されている。この合金はバインダ相に埋設した炭窒化物硬質構成分(物質)を主として含有している。この硬質構成分のグレンは、一般にコアとそれとは別の組成のリムに取り囲まれた複合構造を有している。グレンサイズは通常は1−2μmである。
【0003】
Tiに加えて、IVa、Va及びVIa族のこれとは別の金属、即ちZr、Hf、V、N、Ta、Cr、Mo及び/或いはWは炭窒化物硬質構成分中に見いだされるが、これは炭化物の及び/或いは窒化物の硬質構成分としても現われ得る。バインダ相は一般に、ニッケル同様にコバルトを含有している。バインダ相の含有量は一般に3−30重量%である。
【0004】
別種のコア−リム構造がチタン基炭窒化物合金に異なる合金化元素を加えることにより生成し得ることは知られている。コア−リム構造を変えることにより、例えば焼結を容易にするためにぬれ性を変えること等が可能である。また、焼結体の物性を変える、例えば米国特許3,971,656、同4,857,108及びスウェーデン特許出願8902306−3に開示されているように、塑性変形に対する抵抗力或いはタフネス強度を高めることも可能である。
【0005】
上述のリム相の肯定的(正の)作用効果はリム相がコア相のように脆性であるがコア相のように硬質ではないという事実と釣合をとらせる必要がある。これはリムにクラツク伝播を生じる結果をもたらすと信じられている。
【0006】
リムは焼結中に生成される。コア上に成長するリムの量は焼結温度に依存し、且つコア合金の化学組成に依存する。コア上に生成したリムの量は合金中の窒素量が増大するに従い減小すると一般に信じられている。N/(C+N)>0.5の成分比を有する合金では、殆んど如何るリムも生成されない。
【0007】
米国特許4,957,548は50体積%以下の、コア−リム構造になっていないN≧Cの関係にあるTiN或いはTiCNの粒子を含むチタン基炭窒化物合金を開示している。出発原料は従来法で磨砕されて、角のあるグレン形態を有している。
【0008】
グレン成長は液相焼結中に、オストウォール(Ostwall)熟成法により駆動される。この指向成長はチタン基炭窒化物合金にも存在する。この指向成長があるのは、主としてTi含有コア上のリムである。これは角のあるTi含有コアが見られる図1の顕微鏡写真から明白である。コア−リムのインターフェース(界面)は直線/面であり、これらインターフェースは特定の低エネルギーの結晶面に配向する。コアの頂面においては、リムは直線インターフェース上に成長している。リムとバインダ相のインターフェースも、角があり、低エネルギーインターフェース面を有している。このことは、TEM顕微鏡写真(図2と図3)に良く示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は先行技術の問題を回避或いは軽減することにある。更に、旋削、フライス削り、ドリル加工等の金属工作用の切削工具のインサートの材料として使用したとき、改良物性を発揮する、主要素としてチタンを有する炭窒化物合金の焼結体を製造する方法を実現することにある。更に、主要素としてチタンを有する炭窒化物合金の焼結体を改良することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の1面によれば、Ti、Zr、Hf、V、N、Ta、Cr、Mo及び/或いはWに基づいた、N/(C+N)<0.5の関係を満す窒素含有分とCo及び/或いはNi基の3−30重量%のバインダ相を有する硬質構成分を含有する金属切削目的の焼結チタン基炭窒化物合金において、当該合金には本質的に非コア−リム構造であって0.8−5μmの平均グレンサイズを有している富チタン硬質構成分のグレンが、1−2μmの硬質構成分の平均グレンサイズを有する従来のコア−リム炭窒化物合金母材(マトリックス)中に50重量%良好に分散されており、しかも当該富チタン硬質構成分グレンが本質的に丸い非角形グレンであって、<0.23logμmの標準偏差を有するlogスケールにおいて概して正規分布のグレンサイズを有している。
【0011】
本発明の別の面によれば、Ti、Zr、Hf、V、N、Ta、Cr、Mo及び/或いはWに基づくものであって、Co及び/或いはNi基の3−30重量%バインダ相を有する硬質構成分を含有する焼結チタン基炭窒化物合金の製造方法において、少くとも丸い、非角形でグレンサイズ分布が狭い斯かる富Ti硬質構成分の粉末を磨砕(ミリング)し、それからバインダ相を加え、得られた混合物を加圧し、そして焼結する。
【0012】
【作用】
驚くべき作用として、リム相の生成が抑制され、所定組成の配向グレン成長が減じられることが判明した。この作用の結果、所定組成における相関係とバインダ相中の合金元素の溶液とが変化する。これは、全体組成を変えることにより、或いは組成は不変に維持しながら原材料の組成だけを変えることにより相関係を変える従来の方法と対比されるべきものである。
【0013】
本発明によれば、今や、向上したタフネス強度とフランク摩耗抵抗とを発揮する、N/(C+N)<0.5の関係を満足させる窒素含有分を有するチタン基炭窒化物合金が提供されるに至った。この合金は1−2μmの硬質構成分の平均グレンサイズを有する従来のチタン基炭窒化物合金の母材中に、10−50重量%、好ましくは20−40重量%の充分分散された、非コア−リム構造の平均グレンサイズが0.8−5μmである富Ti硬質構成分のグレンを含有して成る微構造(マイクロ構造)を特徴としている。コア−リム構造がマイクロ構造中に出現する度合に関していえば、数重量%のコアにのみリム構造が出現し、このリム構造の出現したコアは通常のものより一段と肉薄になる。これに加えて、ミクロ構造には、殆んど完全に角形の富Tiコアが存在せず、あっても僅かな重量%に過ぎない。酸素含有量は、不可避不純物に加えて最大限0.5重量%の低いレベルに抑えられるべきである。本発明の合金は、いづれも同一組成の従来合金に較べ相対的に10−25重量%低減したリム相と相対的に10−15重量%増加した富Tiコアを有している。
【0014】
「富Ti」なる用語は、ここでは硬質構成分中の金属含有量が>95重量%であることを意味している。
【0015】
富Ti硬質構成分のグレンは炭窒化物であって、丸い非角形グレンであり、<0.23logμmの標準偏差を有するlogスケールの正規グレンサイズ分布を有している。これに加え、このグレンは金属の浸炭浸窒や酸化により製造される。
【0016】
好ましい例では、富Ti硬質構成分はC≧Nの関係にあるTiCNから成る。
【0017】
本発明は粉末冶金法によるチタン基炭窒化物合金の製法に関するものである。バインダ相生成粉末と硬質構成分生成粉末を所望組成の混合粉体にする。この粉体を加工し、次いで焼結して合金体にする。本発明の合金製造においては、>90重量%、好ましくは>95重量%の富Ti原料は、狭いグレンサイズ分布で、丸い非角形グレンの粉末として加える。この粉末は残分の他の従来原料と、グレンの丸形態が阻害されないように、且つ均質混合物になるように、注意深く混和する。従来の硬質構成分に関し、その原料とは、ここでは最終グレンサイズに磨砕されている材料を意味している。
【0018】
合金組成は、TiC、WC、TaN等の単純な炭化物や窒化物を混和し、或いは(Ti,Ta)C、(Ti,Ta)(C,N)等の複合炭化物、窒化物及び/或いは炭窒化物を混和し、或いはこれら2種の出発原料の組合せ物を混和することにより得られる。
【0019】
富Ti原料(単数或いは複数)は、FSSS法(Fisher Sub Sieve Sizer−Method)により0.3と5μm の間、好ましくは0.5と2μmの間の平均グレンサイズを有するようにする。このグレンサイズ分布は、例えば沈降法により測定すると、概略log 正規分布になり、その標準偏差は0.23logμmより小さい。グレン形態は本質的に丸い、非角形グレンである。許容されるグレン形態は図4に示されており、許容出来ないグレン形態は図5に示されている。富Ti原料はTiのみの及び/或いはTi並びに少量、即ち<5重量%のZr、Hf、V、N、Ta、Cr、Mo及びWの1種以上の炭化物、窒化物及び/或いは炭窒化物である。
【0020】
原料の混合は、2種の方法で行うことが出来る。1の方法は富Ti原料を除く全ての原料を、先ず適宜の溶剤、例えばエタノールに加えたプレス用添加物と共に磨砕する。所望グレンサイズが得られたならば、次にこれに富Ti標準原料を加えて、極めて短時間だけ磨砕して、この富Ti材料を均等に分布させる。
【0021】
他の混合法は、全ての標準原料と適宜の溶剤、例えばエタノールに加えたプレス用添加物を混合し、それからこれを上述の最終混合状態に混合するものである。この後者の方法は、富Ti標準原料の形態を破壊せずに均等分布を得るために、全ての標準原料を加えることに要求の力点がある。
【0022】
本発明は、下記の例により、更に説明されるが、その特定事項に限定されるものではない。
【0023】
例1
2種の合金A、Bを、各々が下記組成を重量%において、有するように製造された。
23%Ti(C、N);23%(Ti、Ta)C;15%(Ti、Ta)(C、N);18%WC;5%MoC;8%Co;及び8%Ni
合金Aは、図5に示す形態の従来原料から製造した。原料は、ボールミルで20時間、共に磨砕した。
合金Bは、FSSS法による測定で1.4μmの平均グレンサイズと沈降法による測定で0.19logμmの標準偏差を有するグレンサイズ分布とを有する、図4に示すものに類似した形態のTi(C、N)原料を用いて製造した。その他の硬質構成分原料は図5に示すものと類似の形態を有していた。原料は、Ti(C、N)を除き、ボールミルで14時間磨砕し、次いでこれにTi(C、N)を加えて、磨砕を続行した。その後、2種の混合物は同じように処理した。即ち公知の技法で噴霧乾燥し、加圧固化し、そして焼結した。
【0024】
得られた従来品の合金Aのマイクロ構造は、図6に示され、本発明品の合金Bのマイクロ構造は図7に示される。留意すべき点は、両合金A、B間にある富Ti相(暗色)の大きな量上の相違と硬質相の形態上の相違である。大ざっぱな定量的相分析は、概略体積%で表して以下の通りである。
Figure 0003614872
【0025】
例2
合金AとBを2種の切削テストで比較した。
テスト1では、フライス削り時のタフネス強度を測定した。各合金当り15個の切刃を増大させる送り速度で試験操作した。チッピング/破壊を生じたときの送り速度を記録した。切削条件データは切削深さ2.0mm、及び切削速度129mm/minであった。工作物の材質は硬度320HBのSS2541であった。
【0026】
テスト結果では、合金Aの切刃の50%が1刃あたり0.3mm/回転の送り速度において破壊され、合金Bの場合には50%破壊が1刃あたり0.41mm/回転の送り速度で生じた。
【0027】
テスト2においては、フライス工作でフランク摩耗抵抗を測定した。切削条件データは切削深さ2.0mm、切削速度459m/min及び送り速度1刃あたり0.12mm/回転であった。工作物の材質は硬度215HBのSS1672であった。
【0028】
このテストによれば、本発明品の合金Bは従来品の合金Aに較べ、相対的に10%低減したフランク摩耗と10%延長した工具寿命を有していた。
【0029】
結論的には、本発明品の合金によればタフネス強度と摩耗抵抗が増大することを切削テストは示しているといえる。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、焼結チタン基炭窒化物合金による切削工具のタフネス強度と摩耗抵抗が大きく向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】代表的なチタン基炭窒化物合金の結晶構造を示す、図面に代わる6000倍の顕微鏡写真であり、Aはコア、Bはリムを示す。
【図2】代表的なチタン基炭窒化物合金の結晶構造を示す、図面に代わる35000倍の顕微鏡写真であり、Cはコア、Dはリムを示す。
【図3】図2の合金の結晶構造を示す、図面に代わる40000倍の顕微鏡写真であり、Cはコア、Dはリムを示す。
【図4】原料粉末の粒子構造を示す図面に代わる3000倍の顕微鏡写真である。
【図5】図4のものとは別の原料粉末の粒子構造を示す図面に代わる3000倍の顕微鏡写真である。
【図6】従来品合金の結晶構造を示す、図面に代わる8000倍の顕微鏡写真である。
【図7】本発明品合金の結晶構造を示す、図面に代わる8000倍の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
A、C…コア
B、D…リム

Claims (7)

  1. N/(C+N)<0.5の関係式を満す窒素含有分と、Co基及びNi基の少なくとも1種の3−30重量%のバインタ相とを有し、且つTi、Zr、Hf、V、N、Ta、Cr、Mo及びWから成る群から選択された少なくとも一つの硬質構成分を含有する金属切削用の焼結チタン基炭窒化物合金であって、
    当該合金が、平均グレンサイズ1−2μmの硬質構成分を有する従来のコア−リム構造の炭窒化物合金母材中に0.8−5μmの平均グレンサイズを有し、且つコア−リム構造を含まない充分分散されて成り、前記合金の全組成の10−50重量%の富Ti硬質構成分の粒を含有し、且つ
    当該富Ti硬質構成分の粒は、グレンサイズ分布が0.23logμmより小さい標準偏差のlog正規分布を有する丸くて角形状でない粒である、
    ことを特徴とする焼結チタン基炭窒化物合金。
  2. 母材の該コア−リム構造には、角形状の富Tiコアを含まないことを特徴とする、請求項1に記載の合金。
  3. 該富Ti硬質構成分の粒が、金属及び該金属の酸化物を浸炭浸窒化することにより直接に生成されていることを特徴とする請求項1に記載の合金。
  4. 該富Ti硬質構成分がTiCであるか、該富Ti硬質構成分がC>Nの関係にあるTiCNであるいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の合金。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属切削用の焼結チタン基炭窒化物合金の製造方法であって、
    くとも狭いグレンサイズ分布の丸くて角形状でない粒から成る富Ti硬質構成分粉末を磨砕し、バインダ金属を添加し、得られた混合物を加圧し、焼結することを特徴とする焼結チタン基炭窒化物合金の製造方法。
  6. 該狭いグレンサイズ分布が<0.23logμmの標準偏差を有する対数目盛りの正規分布であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
  7. 該硬質構成分の粒が、金属及び該金属の酸化物を浸炭浸窒化することにより生成することを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
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