JP6387684B2 - 炭化タングステン基超硬合金粉末、炭化タングステン基超硬合金焼結体及び炭化タングステン基超硬合金製切削工具の製造方法 - Google Patents
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Description
WC基超硬合金製切削工具の耐欠損性を改善するには、超硬合金の物性としての破壊靭性を向上させることが必要であり、それを達成する製法として、粉砕・混合工程における各種の提案がなされている。
また、従来の他の製造法としては、例えば、従来法2(特許文献3)に示すように、原料粉末をアトライターと分散装置との間で循環させて合計5〜10時間混合し、得られた混合粉末を成形し、更に得られた成形体を1320〜1380℃で焼結した後、熱間静水圧プレスを施して、所定の形状のWC基超硬合金を得ていた。
しかし、上記従来法1、2で製造したWC基超硬合金は、切削工具に応用した場合、耐摩耗性にはすぐれるものの、強い負荷-除荷の応力サイクルを伴う条件下の切削加工においては、耐欠損性が十分でないため、工具寿命が短いものであった。
すなわち、WC基超硬合金の組織中にはWC/WC界面、あるいはWC/Co界面の一部に、用いる原料WCの表面の異物(吸着酸素等)を起因とするミクロポアが発生することがあり、これを取り除くことが破壊靭性向上の鍵であること、さらにWC等の硬質粒子同士が直接接触している界面は接着強度が弱く、破壊時のクラックが伝播しやすいため、できるだけWC/WC界面を減らし、主にWC/Co界面から構成される均質組織を得ることも破壊靭性向上の鍵であるとの知見を得た。
なお、破砕処理および解砕処理の方法は球形硬質メディアと液体溶媒を用いて容器内で行うものであれば、いかなる方法でも良く、代表的なものとしてはボールミル、アトライター、ビーズミル等がある。
「(1)WC基超硬合金粉末の製造方法であって、平均粒径1.5μm以下のコバルト粉末を6〜12質量%と、平均粒径が7.0μm以下の4A,5A,6A族元素(但し、タングステンを除く)のうちの1種以上の炭化物もしくは炭窒化物粉末を0.5〜20質量%と、残部が、平均粒径0.5〜7.0μmの炭化タングステン粉末からなる原料粉末を、液体溶媒および球形硬質メディアを用いて容器内で粉砕・混合処理してスラリー化するに際し、
相対的に大きな直径Dを有する球形硬質メディアを用いた破砕処理を20分から1時間実施し、次いで、相対的に小さな直径dを有する球形硬質メディアを用いた解砕処理と前記相対的に大きな直径Dを有する球形硬質メディアを用いた破砕処理を循環させて1〜6時間繰り返し実施し、かつ、破砕処理で使用する直径の相対的に大きな前記球形硬質メディアの直径Dは5.0〜20.0mmφであり、解砕処理で使用する直径の相対的に小さな前記球形硬質メディアの直径dは、d/D=0.08〜0.16の関係を満足することを特徴とするWC基超硬合金粉末の製造方法。
(2)前記(1)に記載の製造方法により得られたWC基超硬合金粉末を成形した後、焼結することを特徴とするWC基超硬合金焼結体の製造方法。
(3)前記(2)に記載の製造方法により得られたWC基超硬合金焼結体を所定サイズ・形状に加工することを特徴とするWC基超硬合金製切削工具の製造方法。」
を特徴とするものである。
コバルト粉末:
コバルト粉末は、WC基超硬合金における結合相形成成分として含有させるが、コバルト含有量が6質量%未満では所望の破壊靭性を得ることができず、一方、コバルト含有量が12質量%を超えると急激に軟化し、WC基超硬合金製切削工具として必要とされる所望の硬さが得られなくなることから、原料粉末中のコバルト粉末の含有割合を6〜12質量%と定めた。
また、コバルト粉末は、平均粒径が1.5μmを超えると混合中に凝着を起こし、混合不良を起こすため、その平均粒径は1.5μm以下と定めた。
上記粉末は、WC基超硬合金中の結合相および/または硬質相形成成分として含有させるものであって、WC相の粒成長を抑制して硬度を上げたり、合金の熱的安定性を高めて耐クレータ摩耗を抑制したりする。しかし、この作用は、含有量が0.5質量%未満では不充分であり、一方、その含有量が20質量%を超えると、炭化物または炭窒化物の凝集相が発生し、抗折力が低下するようになる。
したがって、原料粉末中の4A,5A,6A族元素(但し、タングステンを除く)のうちの1種以上の炭化物または炭窒化物粉末の含有割合は、0.5〜20質量%と定めた。
また、4A,5A,6A族元素(但し、タングステンを除く)のうちの1種以上の炭化物または炭窒化物粉末の平均粒径が7.0μmを超えると混合粉全域に均一分散されず、その結果、焼結後の硬質相粒子径の不均一化を招くため、その平均粒径は7.0μm以下と定めた。
原料粉末中のWC粉末の平均粒径が小さいほど、WC基超硬合金製切削工具におけるWC粒子径も小さくなり、抗折力や耐摩耗性は向上するが、平均粒径が小さすぎると、焼結時に再析出し、粒成長して粗大粒子となり易く、また、WC基超硬合金製切削工具の耐欠損性が低下するので、この発明では、WC粉末の平均粒径の下限値を0.5μmとした。
一方、原料粉末中のWC粉末の平均粒径が7.0μmを超えると、粉砕処理・混合処理を行っても、WC基超硬合金中に粗大なWC粒子が残存する不均一組織となるため、強度が低下し、耐偏摩耗性も低下することから、この発明では、WC粉末の平均粒径の上限値を7.0μmとした。
破砕処理は、球形硬質メディアによって、原料WCの一次粒子を確実に破砕してWC新生面を出現させることを主たる目的とする処理であるが、球形硬質メディアの直径Dが5.0mmφ未満では、破砕力が不足するために、平均粒径0.5〜7.0μmのWC粉末を十分に破砕することができず、一方、球形硬質メディア径Dが20.0mmφを超えると、破砕されたWC粉末の凝集二次粒子の発生、粗大WCの残存等によって、十分な破砕効果が得られなくなることから、破砕処理に用いる球形硬質メディアの径Dは、D=5.0〜20.0mmφとすることが必要である。
解砕処理は、WC/WC界面を減らしてWC/Co界面からなる均質組織を得るために、原料WCの凝集二次粒子を解砕することを主たる目的とする処理であるから、解砕処理に用いる球形硬質メディアの直径dは、破砕処理に用いる球形硬質メディアーメディア間で発生する空隙の長さより小さい必要がある。そして、破砕処理に用いる球形硬質メディアの直径がDである場合に、球形硬質メディアーメディア間で発生する空隙の長さdは、d≒0.16Dであるから、解砕処理に用いる球形硬質メディア径dは、0.16Dを上限とする。一方、径dが0.08Dより小さくなると、原料WCの凝集二次粒子を解砕する解砕力が低下することから、直径dは0.08D以上とすることが必要である。
よって、本発明では、解砕処理に用いる球形硬質メディアの直径dを、0.08D〜0.16Dの範囲とする。
(a)原料粉末として、所定の平均粒径のWC粉末、Co粉末、Wを除く4A,5A,6A族元素のうちの1種以上の炭化物または炭窒化物粉末を所定割合に配合する。
(b)この原料粉末を、まず、直径5.0〜20.0mmφの球形硬質メディアと液体溶媒を用いて容器内で20分から1時間破砕処理を施し、ある程度の均質性をもった混合スラリーを製造する。
(c)次いで、上記混合スラリーを別容器に導き、前記メディア径をDとした時に0.08〜0.16Dmmφの直径をもつ球形硬質メディアと液体溶媒を用いて容器内で解砕処理を施して、(b)の容器に戻す。
(d)さらに、混合スラリーを、上記工程(b)と工程(c)とを循環させることにより、1〜6時間破砕処理と解砕処理を同時に並行して施し、その後、スラリーを乾燥させることによりWC基超硬合金粉末を得る。
(e)次いで、所定形状の圧粉体にプレス成形する。
(f)次いで、所定の雰囲気中、1370〜1450℃の範囲内の所定の温度に保持してWC基超硬合金焼結体を得る。
(g)上記WC基超硬合金焼結体を所望形状・サイズに加工することにより、WC基超硬合金製切削工具を製造する。
ボールミルは、既によく知られているように、直径2.0〜20.0mmφ程度の球形硬質メディアと原料粉末を液体溶媒とともに横型円筒容器に充填して回転させ、球形硬質メディアの落下による衝撃と摩擦で、原料粉末を粉砕・混合する装置である。
アトライターは、直径2.0〜20.0mmφ程度の球形硬質メディアを縦型円筒容器に充填して、アームを具える撹拌軸をこの容器内で高速回転させ、高速回転場でメディア同士を衝突、接触(擦過)させることで、液体に混ぜてスラリー状にした原料粉末を粉砕・混合する装置である。
ビーズミルは、前記アトライターと概ね同様の構成であるが、メディアの大きさがアトライターで用いられるものよりも小さく(直径0.03〜2.0mmφ程度)、また、撹拌軸としてはピンを具える撹拌軸が利用される。
また、工程(d)では破砕処理と解砕処理を1時間から6時間同時に並行して行う。処理時間が1時間未満であると、所望の破壊靭性向上効果が得られず、一方、処理時間が6時間を超えると、WC粒子の微細化が進み過ぎ、合金としての硬さと靭性のバランスが取れなくなってしまうことから、本発明では、工程(d)における処理時間を1〜6時間と定めた。
前記(b)、(c)、(d)の工程で作製した混合原料粉末を、前記(e)の工程において約100MPaの圧力でプレス成形し、所定形状の圧粉体を作製し、次いで、前記(f)の工程において、所定の雰囲気中、1370〜1450℃の範囲内の所定の温度に保持して焼結し、WC基超硬合金焼結体を作製し、次いで、(g)の工程において、所定サイズ・形状に加工することにより、WC基超硬合金製切削工具を製造する。
そして、本発明の製造方法で製造したWC基超硬合金粉末から得たWC基超硬合金焼結体を切削工具として用いた場合には、刃先に強い負荷-除荷の応力サイクルが発生する、厳しい切削条件、例えば、高送りフライス加工や、Ti合金やNi基合金といった難削材の断続加工に使用した場合でも、すぐれた耐欠損性を示すとともに、すぐれた耐摩耗性を発揮するのである。
次いで、上記圧粉体を、実施例1と同一条件で焼結、チャンファホーニング加工することにより、表3に示す比較例のWC基超硬合金製切削工具(以下、「比較例工具」という)1〜8を製造した。
被削材: SCM440
切削速度: 180m/min
切り込み: 2.0mm
一刃送り量: 0.4mm/tooth(通常の送り量は、0.2mm/tooth)
切削油剤: 水溶性
切削時間: 20min
表4に、上記切削試験の結果を示す。
これに対して、比較例工具1〜8は、欠損やチッピングが発生したり、チッピングに至る前のクラックから摩耗幅が異常に進行して、極めて短寿命であった。
その後、100MPaの圧力でプレス成形して、ISO・CNMG120408で規定する形状の圧粉体を作製した。
次いで、上記圧粉体を3Pa以下の真空雰囲気中で1400℃の温度に保持して焼結し、WC基超硬合金焼結体を作製し、次いで、切刃部にR0.03mmのラウンドホーニング加工することにより、表5に示す本発明のWC基超硬合金製切削工具(以下、「本発明工具」という)11〜18を製造した。
次いで、上記圧粉体を、実施例1と同一条件で焼結し、ラウンドホーニング加工することにより、表6に示す比較例のWC基超硬合金製切削工具(以下、「比較例工具」という)11〜18を製造した。
被削材: Ti−6Al−4V 1溝スリット材
切削速度: 50m/min
切り込み: 1.5mm
送り: 0.15mm/rev
切削油剤: 水溶性
切削時間: 16min
表7に、上記切削試験の結果を示す。
これに対して、比較例工具11〜18は、欠損やチッピングが発生したり、チッピングに至る前のクラックから摩耗幅が異常に進行して、極めて短寿命であった。
Claims (3)
- WC基超硬合金粉末の製造方法であって、平均粒径1.5μm以下のコバルト粉末を6〜12質量%と、平均粒径が7.0μm以下の4A,5A,6A族元素(但し、タングステンを除く)のうちの1種以上の炭化物もしくは炭窒化物粉末を0.5〜20質量%と、残部が、平均粒径0.5〜7.0μmの炭化タングステン粉末からなる原料粉末を、液体溶媒および球形硬質メディアを用いて容器内で粉砕・混合処理してスラリー化するに際し、
相対的に大きな直径Dを有する球形硬質メディアを用いた破砕処理を20分から1時間実施し、次いで、相対的に小さな直径dを有する球形硬質メディアを用いた解砕処理と前記相対的に大きな直径Dを有する球形硬質メディアを用いた破砕処理を循環させて1〜6時間繰り返し実施し、かつ、破砕処理で使用する直径の相対的に大きな前記球形硬質メディアの直径Dは5.0〜20.0mmφであり、解砕処理で使用する直径の相対的に小さな前記球形硬質メディアの直径dは、d/D=0.08〜0.16の関係を満足することを特徴とするWC基超硬合金粉末の製造方法。 - 請求項1に記載の製造方法により得られたWC基超硬合金粉末を成形した後、焼結することを特徴とするWC基超硬合金焼結体の製造方法。
- 請求項2に記載の製造方法により得られたWC基超硬合金焼結体を所定サイズ・形状に加工することを特徴とするWC基超硬合金製切削工具の製造方法。
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